特許第6191704号(P6191704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6191704流入量予測装置、流入量予測方法および流入量予測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191704
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】流入量予測装置、流入量予測方法および流入量予測プログラム
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/00 20060101AFI20170828BHJP
   E02B 7/20 20060101ALI20170828BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20170828BHJP
【FI】
   E02B7/00 Z
   E02B7/20 105
   G06Q50/06
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-89(P2016-89)
(22)【出願日】2016年1月4日
(65)【公開番号】特開2017-122309(P2017-122309A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2016年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】谷 祐志
(72)【発明者】
【氏名】安達 明博
(72)【発明者】
【氏名】木曽 俊哉
【審査官】 袴田 知弘
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5014522(JP,B1)
【文献】 特開2015−049177(JP,A)
【文献】 特開2000−055703(JP,A)
【文献】 特開2008−184838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/00
E02B 7/20
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水施設への水の流入量を予測する流入量予測装置であって、
蒸散量を考慮せずに前記流入量の略予測値を算出するための第1モデルと、前記第1モデルの出力および前記蒸散量に基づき前記流入量の予測値を算出するための第2モデルと、を記憶するモデル記憶手段と、
過去の単位期間毎の降水量、日射量、温度、湿度、前記第1モデルの出力および前記流入量のそれぞれの実績値を記憶する実績値記憶手段と、
前記第1モデルに今回の前記単位時間における前記降水量の実績値を適用して算出される前記流入量の蒸散量を考慮しない略予測値と、前回の前記単位時間における前記第1モデルの出力の実績値との差を第1残差として、該第1残差のべき乗が最小となるように前記第1モデルにおける第1パラメータ群を設定する第1設定処理手段と、
前記第2モデルに前記日射量、前記温度または前記湿度のそれぞれの実績値を適用して算出される前記流入量の予測値と前記流入量の実績値との差を第2残差として、該第2残差のべき乗が最小となるように前記第2モデルにおける第2パラメータ群を設定する第2設定処理手段と、
前記第1パラメータ群を設定した前記第1モデルに予想降水量を適用して、前記流入量の蒸散量を考慮しない略予測値を該第1モデルの出力として算出する第1予測手段と、
前記第2パラメータ群を設定した前記第2モデルに前記第1モデルの出力、予想日射量、予想温度または予想湿度を適用して、前記流入量の予測値を算出する第2予測手段と、
を備えることを特徴とする流入量予測装置。
【請求項2】
前記第1モデルはタンクモデルであり、前記第1パラメータ群は、タンクの側面孔の高さ、流出係数および透過係数を含み、
前記第2モデルは重回帰モデルであり、前記第2パラメータ群は、前記第1モデルの出力、前記予想日射量、前記予想温度または前記予想湿度に、それぞれ乗じる係数を含むことを特徴とする請求項1に記載の流入量予測装置。
【請求項3】
前記流入量の実績値には、単位期間毎の流入量データの移動平均を採った値が用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の流入量予測装置。
【請求項4】
蒸散量を考慮せずに貯水施設への水の流入量の略予測値を算出するための第1モデルと、前記第1モデルの出力および前記蒸散量に基づき前記流入量の予測値を算出するための第2モデルと、を記憶するモデル記憶手段と、
過去の単位期間毎の降水量、日射量、温度、湿度、前記第1モデルの出力および前記流入量のそれぞれの実績値を記憶する実績値記憶手段と、
を備えた流入量予測装置における流入量予測方法であって、
前記第1モデルに今回の前記単位時間における前記降水量の実績値を適用して算出される前記流入量の蒸散量を考慮しない略予測値と、前回の前記単位時間における前記第1モデルの出力の実績値との差を第1残差として、該第1残差のべき乗が最小となるように前記第1モデルにおける第1パラメータ群を設定する第1設定処理ステップと、
前記第2モデルに前記日射量、前記温度または前記湿度のそれぞれの実績値を適用して算出される前記流入量の予測値と前記流入量の実績値との差を第2残差として、該第2残差のべき乗が最小となるように前記第2モデルにおける第2パラメータ群を設定する第2設定処理ステップと、
前記第1パラメータ群を設定した前記第1モデルに予想降水量を適用して、前記流入量の蒸散量を考慮しない略予測値を該第1モデルの出力として算出する第1予測ステップと、
前記第2パラメータ群を設定した前記第2モデルに前記第1モデルの出力、予想日射量、予想温度または予想湿度を適用して、前記流入量の予測値を算出する第2予測ステップと、
を備えることを特徴とする流入量予測方法。
【請求項5】
蒸散量を考慮せずに貯水施設への水の流入量の略予測値を算出するための第1モデルと、前記第1モデルの出力および前記蒸散量に基づき前記流入量の予測値を算出するための第2モデルと、を記憶するモデル記憶手段と、
過去の単位期間毎の降水量、日射量、温度、湿度、前記第1モデルの出力および前記流入量のそれぞれの実績値を記憶する実績値記憶手段と、
を備えたコンピュータに、
前記第1モデルに今回の前記単位時間における前記降水量の実績値を適用して算出される前記流入量の蒸散量を考慮しない略予測値と、前回の前記単位時間における前記第1モデルの出力の実績値との差を第1残差として、該第1残差のべき乗が最小となるように前記第1モデルにおける第1パラメータ群を設定する第1設定処理ステップと、
前記第2モデルに前記日射量、前記温度または前記湿度のそれぞれの実績値を適用して算出される前記流入量の予測値と前記流入量の実績値との差を第2残差として、該第2残差のべき乗が最小となるように前記第2モデルにおける第2パラメータ群を設定する第2設定処理ステップと、
前記第1パラメータ群を設定した前記第1モデルに予想降水量を適用して、前記流入量の蒸散量を考慮しない略予測値を該第1モデルの出力として算出する第1予測ステップと、
前記第2パラメータ群を設定した前記第2モデルに前記第1モデルの出力、予想日射量、予想温度または予想湿度を適用して、前記流入量の予測値を算出する第2予測ステップと、
を実行させるための流入量予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流入量予測装置、流入量予測方法および流入量予測プログラムに関し、特に、容易に入手可能な気象データを用いて精度良く流入量を予測し得る流入量予測装置、流入量予測方法および流入量予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電用のダムにおいて、降雨時のダム流入量の変化を予測することは、効率的な発電運用行う上で必要不可欠である。しかしながら、降雨時の流入量変化はダムの地形等によりまちまちであり,長年の経験や推測に基づく予測では精度が悪く、無効放流(発電とならない水量)が増加して、効率的な発電運用が難しいという事情があった。
【0003】
このような課題の解決手法として、例えば特許文献1には、流入量予測モデルとして、一般化貯留関数モデル、1段タンク型貯留関数モデルおよび2段タンク型貯留関数モデルの3種を用意し、これらの中から発生洪水に最も適合するモデルを自動選択してダム流入量を予測する手法が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、4段タンクモデルに設定するパラメータの設定値を低水重視および出水重視の重視ポイントに対応付けて記憶し、低水重視および出水重視の設定値をパラメータに設定したタンクモデルのそれぞれに基づいて流入量を予測する技術が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、過去のGPVデータ、過去のアメダスデータおよび過去の流入量の増分の実績値ならびに回帰式から回帰係数を推計して予測式を作成し、最新のGPVデータおよびアメダスデータを予測式に適用して流入量の増分の予測値を求め、流入量の増分の予測値に最新の流入量の実績値を加算して流入量の予測値を求める手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−184838号公報
【特許文献2】特許第5014522号公報
【特許文献3】特許第5823459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、3種のモデルを用意する必要があり、処理が複雑となって多くの計算量を必要とすることから、その実現には高性能のコンピュータシステムが要求され、装置コストの観点から実用的でないという事情がある。
【0008】
また、特許文献2では、タンクモデルへの入力として蒸散量が必要であり、パラメータの設定には蒸散量の実績値が、流入量の予測には蒸散量の予測値がそれぞれ必要となる。一般的に蒸散量の実績値および予測値を入手することは難しく、他の気象データ等に基づき経験的な推定式等で算出することになるが、経験的な推定式等には精度に限界があり、実運用化のためには精度良く蒸散量を取得する手法の検討が課題となる。
【0009】
さらに、特許文献3では、回帰式に基づく予測式を用いているため、線形的な予測しかできず誤差が大きくなるという課題がある。
【0010】
そこでこの発明は、容易に入手可能な気象データを用いて精度良く流入量を予測し得る流入量予測装置、流入量予測方法および流入量予測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、貯水施設への水の流入量を予測する流入量予測装置であって、蒸散量を考慮せずに前記流入量の略予測値を算出するための第1モデルと、前記第1モデルの出力および前記蒸散量に基づき前記流入量の予測値を算出するための第2モデルと、を記憶するモデル記憶手段と、過去の単位期間毎の降水量、日射量、温度、湿度、前記第1モデルの出力および前記流入量のそれぞれの実績値を記憶する実績値記憶手段と、前記第1モデルに今回の前記単位時間における前記降水量の実績値を適用して算出される前記流入量の蒸散量を考慮しない略予測値と、前回の前記単位時間における前記第1モデルの出力の実績値との差を第1残差として、該第1残差のべき乗が最小となるように前記第1モデルにおける第1パラメータ群を設定する第1設定処理手段と、前記第2モデルに前記日射量、前記温度または前記湿度のそれぞれの実績値を適用して算出される前記流入量の予測値と前記流入量の実績値との差を第2残差として、該第2残差のべき乗が最小となるように前記第2モデルにおける第2パラメータ群を設定する第2設定処理手段と、前記第1パラメータ群を設定した前記第1モデルに予想降水量を適用して、前記流入量の蒸散量を考慮しない略予測値を該第1モデルの出力として算出する第1予測手段と、前記第2パラメータ群を設定した前記第2モデルに前記第1モデルの出力、予想日射量、予想温度または予想湿度を適用して、前記流入量の予測値を算出する第2予測手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の流入量予測装置において、前記第1モデルはタンクモデルであり、前記第1パラメータ群は、タンクの側面孔の高さ、流出係数および透過係数を含み、前記第2モデルは重回帰モデルであり、前記第2パラメータ群は、前記第1モデルの出力、前記予想日射量、前記予想温度または前記予想湿度に、それぞれ乗じる係数を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の流入量予測装置において、前記流入量の実績値には、単位期間毎の流入量データの移動平均を採った値が用いられることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、蒸散量を考慮せずに貯水施設への水の流入量の略予測値を算出するための第1モデルと、前記第1モデルの出力および前記蒸散量に基づき前記流入量の予測値を算出するための第2モデルと、を記憶するモデル記憶手段と、過去の単位期間毎の降水量、日射量、温度、湿度、前記第1モデルの出力および前記流入量のそれぞれの実績値を記憶する実績値記憶手段と、を備えた流入量予測装置における流入量予測方法であって、前記第1モデルに今回の前記単位時間における前記降水量の実績値を適用して算出される前記流入量の蒸散量を考慮しない略予測値と、前回の前記単位時間における前記第1モデルの出力の実績値との差を第1残差として、該第1残差のべき乗が最小となるように前記第1モデルにおける第1パラメータ群を設定する第1設定処理ステップと、前記第2モデルに前記日射量、前記温度または前記湿度のそれぞれの実績値を適用して算出される前記流入量の予測値と前記流入量の実績値との差を第2残差として、該第2残差のべき乗が最小となるように前記第2モデルにおける第2パラメータ群を設定する第2設定処理ステップと、前記第1パラメータ群を設定した前記第1モデルに予想降水量を適用して、前記流入量の蒸散量を考慮しない略予測値を該第1モデルの出力として算出する第1予測ステップと、前記第2パラメータ群を設定した前記第2モデルに前記第1モデルの出力、予想日射量、予想温度または予想湿度を適用して、前記流入量の予測値を算出する第2予測ステップと、を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、蒸散量を考慮せずに貯水施設への水の流入量の略予測値を算出するための第1モデルと、前記第1モデルの出力および前記蒸散量に基づき前記流入量の予測値を算出するための第2モデルと、を記憶するモデル記憶手段と、過去の単位期間毎の降水量、日射量、温度、湿度、前記第1モデルの出力および前記流入量のそれぞれの実績値を記憶する実績値記憶手段と、を備えたコンピュータに、前記第1モデルに今回の前記単位時間における前記降水量の実績値を適用して算出される前記流入量の蒸散量を考慮しない略予測値と、前回の前記単位時間における前記第1モデルの出力の実績値との差を第1残差として、該第1残差のべき乗が最小となるように前記第1モデルにおける第1パラメータ群を設定する第1設定処理ステップと、前記第2モデルに前記日射量、前記温度または前記湿度のそれぞれの実績値を適用して算出される前記流入量の予測値と前記流入量の実績値との差を第2残差として、該第2残差のべき乗が最小となるように前記第2モデルにおける第2パラメータ群を設定する第2設定処理ステップと、前記第1パラメータ群を設定した前記第1モデルに予想降水量を適用して、前記流入量の蒸散量を考慮しない略予測値を該第1モデルの出力として算出する第1予測ステップと、前記第2パラメータ群を設定した前記第2モデルに前記第1モデルの出力、予想日射量、予想温度または予想湿度を適用して、前記流入量の予測値を算出する第2予測ステップと、を実行させるための流入量予測プログラムである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、請求項4および請求項5の発明によれば、蒸散量を考慮せずに流入量の略予測値を算出するための第1モデルと、第1モデルの出力および(日射量、温度および湿度に基づき表現される)蒸散量に基づき流入量の予測値を算出するための第2モデルと、を用いる構成としたので、精度に限界がある経験的な推定式等を用いることなく、実運用化のための蒸散量を取得手法の検討も不要となり、結果として、容易に入手可能な気象データを用いて精度良く流入量を予測することが可能となる。また、第1モデルの第1パラメータ群を降水量の実績値を適用して設定し、第2モデルの第2パラメータ群を日射量、温度または湿度それぞれの実績値を適用して設定するので、パラメータ間の整合性を高めることができ、より適切なパラメータ設定が可能となり、第1モデルに予想降水量を適用して算出される流入量の略予測値、並びに、第2モデルに予想日射量、予想温度または予想湿度を適用して算出される流入量の予測値の予測精度を向上させることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、第1モデルとしてタンクモデルを用いることにより、非線形のモデリングが可能となり、予測精度を向上させることができる。また、第2モデルとして第1モデルの出力、日射量、温度および湿度に基づく重回帰モデルを用いることにより、蒸散量の推定精度を向上させることができると共に、流入量の予測値の予測精度を向上させることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、流入量の実績値に、単位期間毎のダム流入量データの移動平均を採った平滑化された値を用いるので、(発電機の運転/停止等の影響で発生する)ノイズを取り除くことができ、より実態に沿った流入量の予測が可能となり、流入量の予測値の予測精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明の実施の形態に係る流入量予測装置1の構成図である。
図2】実施の形態の4段タンクモデルを例示する説明図である。
図3】各種データベースのデータ構造を例示する説明図であり、(a)は実績値データベース、(b)は条件データベース、(c)はパラメータデータベースである。
図4】データ処理部によるダム流入量データの平滑化処理を例示する説明図である。
図5】設定処理部におけるパラメータ群設定処理手順を説明するフローチャートである。
図6】予測部における予測処理手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0021】
図1は、この発明の実施の形態に係る流入量予測装置1の構成図である。この流入量予測装置1は、処理部2、記憶部3、入出力部4および通信インタフェース部5を備え、各構成要素がシステムバス7を介してバス結合された構成である。なお、図中の6は、他のネットワーク等と情報の送受信を行う通信手段である。
【0022】
入出力部4は情報の入出力を行うもので、情報を入力する入力手段として、例えばキーボード、マウス、タッチパネル、マイクロフォンなどが含まれ、情報を出力する出力手段として、例えばディスプレイやプリンタ、スピーカなどが含まれる。また、通信インタフェース部5は、通信手段6に接続するためのインタフェースであり、例えばイーサネット(登録商標)に接続するためのアダプタ、公衆電話回線網に接続するためのモデム、無線通信を行うための無線通信機、シリアル通信のためのUSB(Universal Serial Bus)コネクタやRS232Cコネクタなどである。
【0023】
記憶部3は、各種のデータやプログラムを記憶するもので、記憶部3を具現化するデバイスとして、例えばハードディスクドライブやソリッドステートドライブ、フラッシュメモリなどが含まれる。また、記憶部3には各種データベース31が構成されており、この実施の形態では、各種データベース31として、モデルデータベース(モデル記憶手段)32、実績値データベース(実績値記憶手段)33、条件データベース34およびパラメータデータベース35を備える。
【0024】
処理部2はCPU等のプロセッサで具現され、記憶部3に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより各種機能を実現する。この実施の形態では、処理部2の機能的構成要素として、データ処理部21と、第1パラメータ群設定処理部(第1設定処理手段)23および第2パラメータ群設定処理部(第2設定処理手段)24を持つ設定処理部22と、第1予測部(第1予測手段)26および第2予測部(第2予測手段)27を持つ予測部25と、を備える。
【0025】
次に、各種データベース31について具体的に説明する。まず、モデルデータベース32は、蒸散量を考慮せずに流入量の略予測値を算出するための第1モデルと、第1モデルの出力および蒸散量に基づき流入量の予測値を算出するための第2モデルと、を記憶する。
【0026】
この実施の形態では、第1モデルとして4段タンクモデルを用いる。図2は具体的な4段タンクモデルを例示する説明図である。1段目タンクの上側側面孔が表面流出、1段目タンクの下側側面孔および2段目タンクの側面孔が中間流出、3段目タンクおよび4段目タンクの側面孔が基底流出(地下水流出)に対応付けされている。各タンクの側面孔からの流出が河川等への流出を表し、タンク底面の浸透流出孔からの流出は、下方帯水層への浸透を表す。
【0027】
各タンクの側面孔から、ある単位期間t(以下では、1日または1時間として説明するが、例えば6時間、1週間など任意の値とすることができる。)の間に流出する水量の合計がダム流入量の予測値となる。具体的に、1段目タンクの上側側面孔からの表面流出量をQF(t)、1段目タンクの下側側面孔からの中間流出量をQ1(t)、2段目タンクの側面孔からの中間流出量をQ2(t)、3段目タンクの側面孔からの基底流出量をQ3(t)、4段目タンクの側面孔からの基底流出量をQ4(t)とするとき、これらの総和q(t) [mm]は、q(t)=QF(t)+Q1(t)+Q2(t)+Q3(t)+Q4(t)であり、タンクの集水面積をA[m]、流量換算係数をKとすると、ダム流入量の略予測値QTは次式で得られる。
QT(t)=qA/K (1)
【0028】
また、各側面孔からの流出量QF(t)およびQ1(t)〜Q4(t)は、それぞれ次式で得られる。
QF(t)=αF・(X1(t)−HF) (2)
Q1(t)=α1・(X1(t)−H1) (3)
Q2(t)=α2・(X2(t)−H2) (4)
Q3(t)=α3・(X3(t)−H3) (5)
Q4(t)=α4・X4(t) (6)
ここで、αFおよびα1〜α4は各側面孔の流出係数であり、X1(t)〜X4(t)は日時tにおける各タンクの貯留高であり、HFおよびH1〜H3は各側面孔の高さである。なお、H4=0とした。
【0029】
また、各タンクの貯留高X1(t)〜X4(t)は、それぞれ次式で得られる。
X1(t)=X1(t-1)−β1・X1(t-1)−QF(t-1)−Q1(t-1)+R (7)
X2(t)=X2(t-1)+β1・X1(t-1)−β2・X2(t-1)−Q2(t-1) (8)
X3(t)=X3(t-1)+β2・X2(t-1)−β3・X2(t-1)−Q2(t-1) (9)
X4(t)=X4(t-1)+β3・X3(t-1)−Q4(t-1) (10)
ここで、Rは日時tにおける降水量[mm/d]または[mm/h]であり、β1〜β3は各浸透流出孔の浸透係数である。また、ここで留意すべきは、式(7)〜式(10)に蒸散量が反映されていない点である。すなわち、この4段タンクモデル(第1モデル)は、蒸散量を考慮せずに流入量の略予測値を算出するモデルとなっている。
【0030】
また、この実施の形態では、4段タンクモデルの出力QT(t)および蒸散量に基づき流入量の予測値を算出する第2モデルとして重回帰モデルを用いる。また、蒸散量E(t)を表現するために、日射量S(t)、温度T(t)および湿度P(t)を用いる。すなわち、予測値算出係数をA、タンクモデルの出力QT(t)に乗ずる係数をB、日射量S(t) に乗ずる係数をC、温度T(t) に乗ずる係数をD、湿度P(t) に乗ずる係数をE、とそれぞれするとき、ダム流入量の予測値Q(t)は次式で得られる。
Q(t)=A+B・QT(t)−(C・S(t)+D・T(t)+E・P(t)) (11)
【0031】
次に、図3(a)は、実績値データベース33のデータ構造を例示する説明図である。同図に示すように、実績値データベース33は、日時毎に降水量、日射量、温度、湿度、ダム流入量および第1モデル出力(タンクモデル出力)の実績値を記憶する。なお、降水量、日射量、温度および湿度は、例えば気象庁や気象会社などから気象データとして提供される場合には、通信インタフェース部5を介してそれらデータを取得し、実績値データベース33に登録するようにして良い。また、各種の気象データ、河川や貯水施設で測定した測定値などに基づいて計算するようにしても良い。
【0032】
なお、この実施の形態では、単位期間tを1日または1時間として扱えるようにしていることから、1日分のデータとして0時から23時までの24個の時間データと、その日付に対応した1個の日データの、計25個のデータが存在する。また、降水量、日射量、温度および湿度についての日データの決定方法については、所定の時刻の値、或いは平均値を採用するなど、予め決定ルールとして設定されているものとする。
【0033】
また、条件データベース34は、第1パラメータ群の設定処理に用いる条件を記憶する。図3(b)は、条件データベース34のデータ構造を例示する説明図である。同図に示すように、条件データベース34には、パラメータ制約条件として、側面孔の高さHFおよびH1〜H3、側面孔の流出係数αFおよびα1〜α4、並びに、浸透流出孔の浸透係数β1〜β3の第1パラメータ群について、その下限値および上限値が予め設定されている。
【0034】
さらに、パラメータデータベース35は、第1パラメータ群設定処理部23により設定される第1パラメータ群、並びに、第2パラメータ群設定処理部24により設定される第2パラメータ群を記憶する。ここで、第2パラメータ群は、式(11)の重回帰モデルで扱われる各係数A〜Eである。
【0035】
次に、処理部2の各機能的構成要素について説明する。まず、データ処理部21は、通信インタフェース部5を介して、気象庁や気象会社からの気象データ、或いは、河川や貯水施設に設置されている測定器からの測定値を受信して、実績値データベース33に、日時毎の降水量、日射量、温度および湿度の実績値として登録する。また、予測部25からの予測値取得要求に応じて、予測対象期間についての日時毎の降水量、日射量、温度および湿度の気象予測データを、通信インタフェース部5を介して気象庁や気象会社から受信して、予測部25に渡す。なお、これら予測値について、別途予測値データベースを各種データベース31内に構成し、定期的な更新登録を行うようにして、予測部25から予測値取得要求があった時には、該予測値データベースから読み出した値を予測部25に渡すようにしても良い。
【0036】
また、データ処理部21は、第2パラメータ群設定処理部24により第2パラメータ群を設定する際に、単位期間毎のダム流入量データについて、移動平均を採って平滑化し、ダム流入量の実績値として移動平均値を第2パラメータ群設定処理部24に渡す。
【0037】
図4に、データ処理部21によるダム流入量データの平滑化処理を例示する。図中、101はダム流入量の実データであり、102は移動平均による平滑化処理を行った後のデータである。また、移動平均を算出する期間は、単位期間tに1日または1時間の何れを採るかによって、また、第2パラメータ群設定処理における設定対象期間によって、選択的に設定される。単位期間tが1時間の場合には、例えば6時間移動平均、12時間移動平均、24時間移動平均、48時間移動平均等が用いられ、単位期間tが1日の場合には、例えば5日移動平均、30日移動平均等が用いられる。
【0038】
このように、ダム流入量の実績値に、単位期間毎のダム流入量データの移動平均を採った平滑化された値を用いることにより、(発電機の運転/停止等の影響で発生する)ノイズを取り除くことができ、より実態に沿った流入量の予測が可能となり、流入量の予測値の予測精度を向上させることができる。
【0039】
次に、設定処理部22では、与えられる設定対象期間について、第1パラメータ群設定処理部23により第1パラメータ群を設定し、第2パラメータ群設定処理部24により第2パラメータ群を設定して、設定した第1パラメータ群および第2パラメータ群をそれぞれパラメータデータベース35に登録する。ここで、設定対象期間は、後で予測部25によって行われる予測対象期間に応じて、オペレータが選択的に設定するものである。例えば、単位期間tが1日で、予測対象期間を6月1日から10日までとする場合には、気候条件が似ている前年の同一期間を含む30日の期間、或いは、直近の60日の期間といったように、オペレータ判断によって決定される。
【0040】
より具体的に、第1パラメータ群設定処理部23では、タンクモデルに降水量の実績値を適用して算出されるダム流入量の蒸散量を考慮しない略予測値とタンクモデル出力(第1モデル出力)の実績値との差を第1残差として、所定の設定対象期間における該第1残差のべき乗和が最小となるようにタンクモデルにおける第1パラメータ群を設定する。
【0041】
ここで、実績値データベース33の第1モデル出力には、前回の予測部25による予測処理において、第1予測部26で算出されたダム流入量の略予測値が登録されており、タンクモデル出力(第1モデル出力)の実績値としてこれを用いる。
【0042】
また、第2パラメータ群設定処理部24では、重回帰モデルにタンクモデル出力(第1モデル出力)の実績値、並びに日射量、温度および湿度の実績値をそれぞれ適用して算出されるダム流入量の予測値とダム流入量の実績値(移動平均値)との差を第2残差として、該第2残差のべき乗が最小となるように前記第2モデルにおける第2パラメータ群を設定する。
【0043】
次に、予測部25では、与えられる予測対象期間について、第1予測部26により、タンクモデルを用いてダム流入量の蒸散量を考慮しない略予測値を算出し、第2予測部27により、重回帰モデルを用いてダム流入量の予測値を算出する。
【0044】
より具体的に、第1予測部26では、第1パラメータ群を設定したタンクモデルに予想降水量を適用して、ダム流入量の蒸散量を考慮しない略予測値を該タンクモデルの出力として算出する。なお、ここで算出したダム流入量の略予測値は、第2予測部27に渡されると共に、実績値データベース33の第1モデル出力に、日時に応じて登録される。
【0045】
また、第2予測部27では、第2パラメータ群を設定した重回帰モデルにタンクモデルの出力、予想日射量、予想温度および予想湿度を適用して、ダム流入量の予測値を算出する。
【0046】
次に、以上の構成を備えた流入量予測装置1における流入量予測方法、並びに、処理部2上で実行される流入量予測プログラムについて、図5および図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0047】
図5は、設定処理部22におけるパラメータ群設定処理手順を説明するフローチャートである。
【0048】
まず、設定処理部22は、モデルデータベース32からタンクモデルを取得し、パラメータ群の設定処理に必要な諸元情報を取得する(ステップS11)。ここで、諸元情報は、タンクの集水面積、並びに設定対象期間の開始日および終了日(または開始日時および終了日時)の各情報である。
【0049】
次に、設定処理部22の第1パラメータ群設定処理部23は、実績値データベース33から設定対象期間の降水量の実績値およびタンクモデル出力(第1モデル出力)の実績値を取得する(ステップS12)。
【0050】
ここで、第1パラメータ群設定処理部23によるステップS12〜S16の処理に並行して、データ処理部21は、設定対象期間並びに該期間の開始日(または開始日時)から所定の移動平均算出期間だけ遡った期間について、実績値データベース33からダム流入量の実績値を読み出し、所定の移動平均を採ってダム流入量データを平滑化し、移動平均値をダム流入量の実績値として第2パラメータ群設定処理部24に渡す(ステップS13)。
【0051】
次に、設定処理部22の第1パラメータ群設定処理部23は、条件データベース34から第1パラメータ群の制約条件(側面孔の高さHFおよびH1〜H3、側面孔の流出係数αFおよびα1〜α4、並びに、浸透流出孔の浸透係数β1〜β3についての下限値および上限値)を取得する(ステップS14)。
【0052】
次に、タンクモデルに降水量の実績値を適用して算出されるダム流入量の略予測値とタンクモデル出力(第1モデル出力)の実績値との差を第1残差として、所定の設定対象期間における該第1残差のべき乗和が、制約条件の範囲内で最小となる第1パラメータ群を求める(ステップS15)。そして、求められた第1パラメータ群をパラメータデータベース35に登録する(ステップS16)。
【0053】
次に、設定処理部22の第2パラメータ群設定処理部24は、パラメータ群の設定処理に必要な諸元情報を取得すると共に、モデルデータベース32から重回帰モデルを取得する(ステップS21)。
【0054】
次に、第2パラメータ群設定処理部24は、実績値データベース33から日射量、温度および湿度の実績値、並びにタンクモデル出力(第1モデル出力)の実績値を取得すると共に、データ処理部21からダム流入量の実績値(移動平均値)を取得する(ステップS12)。
【0055】
次に、第2パラメータ群設定処理部24は、重回帰モデルにタンクモデル出力(第1モデル出力)の実績値、並びに日射量、温度および湿度の実績値をそれぞれ適用して算出されるダム流入量の予測値とタンクモデル出力(第1モデル出力)の実績値との差を第2残差として、所定の設定対象期間における該第2残差のべき乗和が最小となる第2パラメータ群を求める(ステップS23)。そして、求められた第2パラメータ群をパラメータデータベース35に登録する(ステップS24)。
【0056】
次に、図6は予測部25における予測処理手順を説明するフローチャートである。
【0057】
まず、予測部25は、ダム流入量の予測処理に必要な諸元情報を取得する(ステップS31)。ここで、諸元情報は、タンクの集水面積、並びに予測対象期間の開始日および終了日(または開始日時および終了日時)の各情報である。
【0058】
次に、予測部25は、データ処理部21に対して予測値取得要求を出力して、予測対象期間についての日時毎の降水量、日射量、温度および湿度の気象予測データを、気象庁や気象会社から受信するよう要求する。そして、データ処理部21を介して、予測対象期間についての日時毎の降水量、日射量、温度および湿度の予測値を取得する。このとき、第1予測部26では、これらの内の降水量について予測対象期間の予測値を取得する(ステップS32)。
【0059】
次に、第1予測部26は、モデルデータベース32からタンクモデルを取得すると共に、パラメータデータベース35から第1パラメータ群の設定値を取得する(ステップS33)。そして、第1パラメータ群を設定したタンクモデルに降水量の予測値を適用して、ダム流入量の略予測値を該タンクモデルの出力として算出する(ステップS34)。なお、ここで算出した予測対象期間のダム流入量の略予測値は、第2予測部27に渡されると共に、実績値データベース33における第1モデル出力の実績値として、日時に応じて登録される。
【0060】
次に、第2予測部27は、予測部25がデータ処理部21を介して得た予測値の内、予測対象期間についての日射量、温度および湿度の予測値を取得する(ステップS35)。
【0061】
次に、第2予測部27は、モデルデータベース32から重回帰モデルを取得すると共に、パラメータデータベース35から第2パラメータ群の設定値を取得する(ステップS36)。そして、第2パラメータ群を設定した重回帰モデルに、ステップS34で得られたタンクモデルの出力、並びに、日射量、温度および湿度のそれぞれの予測値を適用して、ダム流入量の予測値を算出する(ステップS37)。こうして得られた予測対象期間についてのダム流入量の予測値は、入出力部4のディスプレイ等の出力手段を介して、オペレータに報知される。
【0062】
以上説明したように、この実施の形態の流入量予測装置、流入量予測方法および流入量予測プログラムによれば、蒸散量を考慮せずに流入量の略予測値を算出するためのタンクモデルと、タンクモデルの出力、日射量、温度および湿度に基づき流入量の予測値を算出するための重回帰モデルと、を用いる構成としたので、従来のように精度に限界がある経験的な推定式等を用いること必要が無く、また、実運用化のための蒸散量を取得手法の検討も不要となる。その結果として、容易に入手可能な気象データを用いて精度良くダム流入量を予測することが可能となる。
【0063】
また、タンクモデルの第1パラメータ群を降水量の実績値を適用して設定し、第2モデルの第2パラメータ群を日射量、温度または湿度それぞれの実績値を適用して設定するので、パラメータ間の整合性を高めることができ、より適切なパラメータ設定が可能となる。その結果として、第1モデルに予想降水量を適用して算出される流入量の略予測値、並びに、第2モデルに予想日射量、予想温度または予想湿度を適用して算出される流入量の予測値の予測精度を向上させることができる。
【0064】
また、この実施の形態によれば、第1モデルとしてタンクモデルを用いることにより、非線形のモデリングが可能となり、予測精度を向上させることができる。また、第2モデルとしてタンクモデルの出力、日射量、温度および湿度に基づく重回帰モデルを用いることにより、蒸散量の推定精度を向上させることができると共に、流入量の予測値の予測精度を向上させることができる。
【0065】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0066】
例えば、タンクモデル(第1モデル)は、上記の4段タンクモデルの態様に限定されることなく、1段目タンクの側面孔を1個として、式(2)のQFをゼロとし、式(3)を次式で置き換えたモデルとしても良い。
Q1(t)=α1(X1(t)−H1)5/3 (3’)
また、4段に限らず3段タンクモデルを用いても良い。
【0067】
また、上記実施の形態では、第2モデルとして4段タンクモデルの出力、日射量、温度および湿度に基づく重回帰モデルを用いて、蒸散量を日射量、温度および湿度で表現するモデルとしたが、蒸散量を、日射量のみで、日射量および温度で、或いは、日射量および湿度で、それぞれ表現するようにしても良い
【0068】
また、上記実施の形態では、予測対象期間に応じてオペレータが設定対象期間を選択的に設定する、としたが、処理部2に、降水量変化や温度変化の推移をパターンマッチングするなどして、予測対象期間の気候条件と類似した期間の候補をサーチする機能を持たせ、オペレータの選択設定の際に該候補を提示するようにしても良い。また、オペレータの選択設定の際に、降水量変化や温度変化などの時間推移を補助情報として、オペレータに提示するようにしても良い。
【0069】
さらに、上記実施の形態では、降水量、日射量、温度および湿度の気象データについて、一地点の実績値および予測値を用いたが、複数地点の降水量、日射量、温度および湿度の気象データに基づき、実績値および予測値それぞれについて代表値を求めるようにしても良い。
【0070】
この場合、実測値は、気象庁の提供するアメダスデータとする。アメダスデータには、降水量、日射量、温度および湿度が含まれるものとする。また予測値は、気象庁から提供される数値予報による予報値(GPV;Grid Point Value;格子点値;GPVデータ)とする。GPVデータは、所定の格子間隔(たとえば1[km]、5[km]、20[km]などである。)で格子状に区切られた各格子における気象について、全球数値用法モデル(GSM(登録商標);Global Spectral Model)、メソ数値予報モデル(MSM;Meso Scale Model)、局地数値予報モデル(LFM;Local Forecast Model)などのモデルを用いてコンピュータにより計算されるものであるが、どのモデルにより計算されたものであるかは問わない。ここで、GPVデータには、降水量、日射量、温度および湿度が含まれるものとする。
【0071】
気象庁からアメダスデータを受信して、データ処理部21により、例えば、所定の複数地点の降水量、日射量、温度または湿度に基づく所定の重み付き加算により重み付き平均を算出して、これを降水量、日射量、温度または湿度の実績値として実績値データベース33に登録するようにすれば良い。予測値の場合も同様に、気象庁からGPVデータを受信して、データ処理部21により、例えば、所定の複数地点の降水量、日射量、温度または湿度に基づく所定の重み付き加算により重み付き平均を算出して、これを降水量、日射量、温度または湿度の予測値として、別途各種データベース31に構成される予測値データベースに登録するようにすれば良い。
【0072】
このように、複数地点の降水量、日射量、温度および湿度の気象データに基づく実績値および予測値を用いることにより、流入量の予測精度をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 流入量予測装置
2 処理部
3 記憶部
4 入出力部
5 通信インタフェース部
6 通信手段
7 システムバス
21 データ処理部
22 設定処理部
23 第1パラメータ群設定処理部(第1設定処理手段)
24 第2パラメータ群設定処理部(第2設定処理手段)
25 予測部
26 第1予測部(第1予測手段)
27 第2予測部(第2予測手段)
31 各種データベース
32 モデルデータベース(モデル記憶手段)
33 実績値データベース(実績値記憶手段)
34 条件データベース
35 実績値データベース(実績値記憶手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6