(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191716
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】アンギュラ玉軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/38 20060101AFI20170828BHJP
F16C 33/66 20060101ALI20170828BHJP
F16C 19/16 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
F16C33/38
F16C33/66 Z
F16C19/16
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-49996(P2016-49996)
(22)【出願日】2016年3月14日
(62)【分割の表示】特願2012-104828(P2012-104828)の分割
【原出願日】2012年5月1日
(65)【公開番号】特開2016-106207(P2016-106207A)
(43)【公開日】2016年6月16日
【審査請求日】2016年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】剱持 健太
(72)【発明者】
【氏名】勝野 美昭
【審査官】
日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−286296(JP,A)
【文献】
特開2006−329218(JP,A)
【文献】
特開2009−275722(JP,A)
【文献】
実開平5−30554(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00−19/56,33/30−33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
前記外輪軌道面と前記内輪軌道面との間に接触角を持って配置される複数の玉と、
前記複数の玉をそれぞれ保持する複数のポケットを有する保持器と、
を備え、グリース潤滑されるアンギュラ玉軸受であって、
前記保持器は、その径方向内側且つ軸方向中央部分に形成される、前記玉のピッチ円直径よりも内径が小さい凸部と、前記保持器の径方向内側で、且つ、該凸部の軸方向両側部分に形成される周溝部と、を有し、
前記保持器は、その断面形状において、前記保持器の軸方向中央位置から前記凸部の起立開始点までの軸方向距離が、前記玉の中心点から前記軸受回転軸への垂線から、前記起立開始点の径方向位置における前記玉の接触角線の位置までの軸方向距離よりも大きく、且つ、前記玉の中心点から前記軸受回転軸への垂線から、前記凸部の起立開始点の径方向位置と、前記玉の転動面の起立開始点側端線との交点までの軸方向距離よりも大きく、
前記保持器は、その断面形状において、前記保持器の軸方向中央位置から前記周溝部の軸方向外側の溝底開始点までの距離が、前記保持器の軸方向中央位置から前記ポケットの軸方向端部壁面までの距離よりも大きいことを特徴とするアンギュラ玉軸受。
【請求項2】
前記保持器の軸方向中央位置において、前記凸部の内径端の内径が前記玉のピッチ円直径よりも小さく、且つ、前記ポケットの壁面と交差する外径部分の外径が前記玉のピッチ円直径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のアンギュラ玉軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンギュラ玉軸受に関し、より詳細には、工作機械用スピンドルや、ボールねじ軸端支持を含む、鉄道、航空、一般産業機械、自動車等に適用されるアンギュラ玉軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、転がり軸受には様々な潤滑方法が使用されている。中でも、グリース潤滑はメンテナンスが不要であり、外部装置を必要としないことから、非常に安価であり、多くの場面で用いられている。
【0003】
グリース潤滑では、一般的に、その機械を分解しない限り、外部からグリースが補給できないため、初期封入グリースによるグリース寿命を如何に延長させるかが、常に課題となっている。
【0004】
グリースは、軸受の発熱や摩耗(転がり接触面(転動面)や滑り接触面の経時的、経年的な摩耗)により劣化し、その潤滑性能は徐々に低下していく。そのため、グリース寿命を延長させるためには、軸受の発熱、摩耗を可能な限り抑制することが重要となる。
【0005】
転がり軸受の潤滑において、発熱、摩耗を抑制するためには、常に適正量を転動面に供給する必要がある。潤滑油の供給量が多い場合、潤滑油の攪拌抵抗により発熱し、少ない場合には、転動面に油膜が形成されず、金属接触が生じ、摩耗、発熱を生じさせる。特に、グリース潤滑では、油潤滑と比較して流動性が低いため、転動面への潤滑油供給量が安定せず、軸受の摩耗、発熱が生じやすい。
【0006】
また、軸受運転時、封入されたグリースは軸受の軌道輪や保持器に堆積することになるが、堆積箇所や堆積量は、それらの形状によりランダムとなってしまい、転動面への潤滑油供給量が安定しない一因となっている。
【0007】
特許文献1及び2では、グリース潤滑される転がり軸受において、保持器にグリースを堆積させて潤滑性能の向上を図ることが考案されている。特許文献1に記載の円筒ころ軸受のソリッド型保持器では、保持器ポケットの内周面に、グリース溜りとなる円周溝を形成して、ころ端面と軌道輪鍔部や保持器との滑り接触部における潤滑性能の向上を図っている。また、特許文献2に記載の転がり軸受用保持器では、保持器ポケットの内周面において、端部内周面部分の内径が中央部内周面部分の内径より小さな寸法とされるようにして、転動体の近傍に多くのグリースを堆積させて、高速用途における潤滑の信頼性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平5−30554号公報
【特許文献2】特開2006−329218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載の円筒ころ軸受では、保持器の内周面に堆積するグリースにおいて、ころ端面と軌道輪鍔部や保持器との滑り接触部に供給されるグリース量の増大を図ったものであり、グリースの転動体転動面へのグリース供給量に対しては考慮されていない。
【0010】
また、特許文献2に記載の転がり軸受用保持器では、保持器の内周面の中央により多くのグリースを堆積させ、グリース寿命を延長させることを目的としており、堆積可能なグリース量は増大するが、同時に転動体へのグリース供給量が過多となり、異常発熱を引き起こし、グリース寿命が低下する可能性がある。
【0011】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、保持器に堆積するグリースに着目し、保持器から転動面へ供給されるグリース量を安定させ、グリース寿命の延長が可能な保持器を備えたアンギュラ玉軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
前記外輪軌道面と前記内輪軌道面との間に接触角を持って配置される複数の玉と、
前記複数の玉をそれぞれ保持する複数のポケットを有する保持器と、
を備え、グリース潤滑されるアンギュラ玉軸受であって、
前記保持器は、その径方向内側且つ軸方向中央部分に形成される、前記玉のピッチ円直径よりも内径が小さい凸部と、前記保持器の径方向内側で、且つ、該凸部の軸方向両側部分に形成される周溝部と、を有し、
前記保持器は、その断面形状において、前記保持器の軸方向中央位置から前記凸部の起立開始点までの軸方向距離が、前記玉の中心点から前記軸受回転軸への垂線から、前記起立開始点の径方向位置における前記玉の接触角線の位置までの軸方向距離よりも大きく、且つ、
前記玉の中心点から前記軸受回転軸への垂線から、前記凸部の起立開始点の径方向位置と、前記玉の転動面の起立開始点側端線との交点までの軸方向距離よりも大きく、
前記保持器は、その断面形状において、前記保持器の軸方向中央位置から前記周溝部の軸方向外側の溝底開始点までの距離が、前記保持器の軸方向中央位置から前記ポケットの軸方向端部壁面までの距離よりも大きいことを特徴とするアンギュラ玉軸受。
(2) 前記保持器の軸方向中央位置において、
前記凸部の内径端の内径が前記玉のピッチ円直径よりも小さく、且つ、前記ポケットの壁面と交差する外径部分の外径が前記玉のピッチ円直径よりも大きいことを特徴とする
(1)に記載のアンギュラ玉軸受。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアンギュラ玉軸受によれば、保持器の径方向内側且つ軸方向中央部分に凸部を有する構成とし、凸部の起立開始点を玉の転動面との関係で規定したので、保持器から玉へのグリース供給位置を非転動面として、保持器から転動面へ供給されるグリース量を安定させ、グリース寿命の延長が可能となる。
また、保持器の径方向内側で、且つ、該凸部の軸方向両側部分に形成される周溝部を有し、保持器の軸方向中央位置から周溝部の軸方向外側の溝底開始点までの距離が、保持器の軸方向中央位置からポケットの軸方向端部壁面までの距離よりも大きくしたので、グリースの堆積可能量を大幅に増加できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は、本発明の第1実施形態に係るアンギュラ玉軸受の断面図であり、(b)は、保持器の断面図である。
【
図3】第1実施形態のアンギュラ玉軸受において、保持器の断面形状と、玉の転動面とのより好ましい関係を説明する断面図である。
【
図4】(a)は、
図1のアンギュラ玉軸受において、グリースが保持器に堆積した状態を示す断面図であり、(b)は、グリースが玉に供給される様子を示す、玉を(a)のIV方向から見た図である。
【
図5】(a)は、従来のアンギュラ玉軸受において、グリースが保持器に堆積した状態を示す断面図であり、(b)は、グリースが玉に供給される様子を示す、玉を(a)のV方向から見た図である。
【
図6】(a)及び(b)は、第1実施形態の変形例を示す保持器の断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るアンギュラ玉軸受の断面図である。
【
図8】(a)〜(c)は、本発明の変形例に係る冠型保持器の断面図である。
【
図9】本発明の変形例に係るアンギュラ玉軸受の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るアンギュラ玉軸受について図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、第1実施形態のアンギュラ玉軸受10は、内周面に外輪軌道面11aを有する外輪11と、外周面に内輪軌道面12aを有する内輪12と、外輪軌道面11aと内輪軌道面12aとの間に接触角αを持って配置される複数の玉13と、複数の玉13をそれぞれ保持する複数のポケット21を有する玉案内形式の保持器20と、を備える。また、アンギュラ玉軸受10は、内輪回転で使用され、初期封入によりグリース潤滑される。
【0017】
保持器20は、軸方向両端部に一対の円環部22、22と、一対の円環部22、22間に、周方向に所定の間隔で設けられ、一対の円環部22、22を連結するように軸方向に延びる複数の柱部23と、を備え、軸方向中央位置に対して対称に形成されている。また、ポケット21は、一対の円環部22、22と、隣接するポケット21、21によって画成され、円筒形状に形成されている。
【0018】
また、保持器20は、その径方向内側且つ軸方向中央部分に形成される凸部24と、保持器20の径方向内側で、且つ、凸部24の軸方向両側部分に形成される一対の周溝部25、25と、を有する。即ち、凸部24は、柱部23の周溝部25、25が形成される溝底面25aから内径側に突出し、柱部23の軸方向中央部分に周方向に亙って形成される。
【0019】
図2にも併せて示すように、通常、保持器20のポケット21は、玉13に対して、ある隙間を与えられて設計される。このとき、隙間を定めるためには、玉13とポケット21の壁面が接触した点における接線と、ポケット21の壁面が平行となる。つまり、玉13がポケット21の壁面に接触する際、常に玉13の大円(最大径部分=赤道位置)が接触位置となる必要がある。従って、保持器20の軸方向中央位置において、ポケット21の壁面と交差する内径部分の内径d1が玉13のピッチ円直径PCDよりも小さく、且つ、ポケット21の壁面と交差する外径部分の外径d3が玉13のピッチ円直径PCDよりも大きくなる必要がある。そのため、凸部24は、玉13のピッチ円直径PCDよりも内径d1が小さく設定される(d1<PCD)。また、保持器20は、半径方向に対して動き量Δd1(直径隙間)を持っているため、d1(d2)<PCD−Δd1/2、且つ、d3>PCD+Δd1/2を満たすことが必要となる。
【0020】
また、グリースは、基本的に、保持器20の内周面の最も遠心力の大きい部位、つまり、内径の最も大きい部位を中心に堆積する。即ち、本実施形態では、グリースは、保持器20の周溝部25、25に堆積する。また、周溝部25、25に堆積したグリースは、遠心力による流動によって、玉13に接触することで、玉13を通じて転動面に供給される。
【0021】
このとき、転動面となっている玉13の円周上に直接グリースが供給されると、グリース供給過多となり、発熱を引き起こすことから、玉13の非転動面のみにグリースを供給するように、凸部24と周溝部25、25との境界、即ち、凸部24の起立開始点24aを設定している。
【0022】
即ち、保持器20は、その断面形状において、保持器20の軸方向中央位置から凸部24の起立開始点24aまでの軸方向距離Aが、玉13の中心点から軸受回転軸への垂線Vから、起立開始点24aの径方向位置における玉13の接触角線Lの位置までの軸方向距離A´よりも大きくなるように設定される(A>A´)。なお、接触角線Lは、玉13と外輪軌道面11a及び内輪軌道面12aとの接触点を結ぶ線である。このとき、起立開始点24a(=溝底径)をd2とすると、A´=|(PCD−d2)tanα/2|となる。
【0023】
また、玉13と外輪軌道面11a及び内輪軌道面12aとの接触は、接触楕円となることから、転動面は必ず幅Cを持つ。このため、A>A´´とすることが好ましい。このとき、A´´は、玉13の中心点から軸受回転軸への垂線Vから、起立開始点24aの径方向位置と、転動面の起立開始点側端線(溝底側端線)との交点pまでの軸方向距離であり、A´´=|(PCD−d2)tanα/2+C/(2cosα)|となる。これにより、玉13の非転動面のみにより確実に供給することができる。
【0024】
なお、
図3は、上記A、A´、A´´の関係を満足するのに加え、凸部24の起立面に付着したグリースも直接転動面に供給されないように考慮した場合の、保持器20の形状を有するアンギュラ玉軸受10aを示している。この場合、保持器20は、その断面形状において、保持器20の軸方向中央位置から凸部24の起立完了点24bまでの軸方向距離Dが、玉13の中心点から軸受回転軸への垂線Vから、起立完了点24bの径方向位置(凸部24の先端面)における玉13の接触角線Lの位置までの軸方向距離D´よりも大きくなるように設定されることが好ましい(D>D´)。また、上記と同様に、接触楕円を考慮すると、D´´は、玉13の中心点から軸受回転軸への垂線Vから、起立完了点24bの径方向位置(凸部24の先端面)と、転動面の起立開始点側端線(溝底側端線)との交点qまでの軸方向距離となり、D>D´´とすることがさらに好ましい。
【0025】
また、グリースは、保持器20の周溝部25、25に堆積するため、周溝部25、25が大きいほどグリースの堆積可能量が大きくなる。具体的には、保持器20の軸方向中央位置から軸方向外側の溝底開始点25bまでの距離Bと、保持器20の軸方向中央位置からポケット21の軸方向端部壁面までの距離B´は、B>B´となることが望ましい。これにより、周溝部25、25のうち、幅方向においてB−B´間に相当する領域は、円環となるので、グリースの堆積可能量が大幅に増加する。
【0026】
図4は、本実施形態の保持器20を備えたアンギュラ玉軸受10において、保持器20に堆積したグリースGが玉13に供給される様子を示し、
図5は、凸部や周溝部を有しない標準的な保持器20´を備えたアンギュラ玉軸受10´において、保持器20´に堆積したグリースGが玉13に供給される様子を示している。
【0027】
従って、
図5に示すように、標準的な保持器20´では、保持器20´の内周面全体にグリースGが堆積するため、玉13へのグリース供給位置はランダムとなる。そして、玉13の転動面に直接グリースGが供給される場合、供給過多による異常発熱を引き起こす可能性がある。それに対して、
図4に示す、本実施形態の保持器20では、凸部24及び周溝部25、25によって、周溝部25、25にほとんどのグリースGが堆積するため、非転動面のみにグリースGが供給される。そして、非転動面に供給されたグリースGは、玉13の自転による遠心力によって引き伸ばされながら転動面(玉周速最大位置)に向かって拡がっていく。このとき、グリースGの拡散速度は、玉13の自転速度に応じて上昇するが、基本的に転がり軸受が高速になるほど、必要なグリース量は増大するため、適正量を維持しやすい。また、非転動面にグリースGが供給されるため、断続的に供給されたときにおいても、供給後、拡散中のグリースGに混ざるため、転動面への供給量の変動が抑制できる。
【0028】
なお、上記実施形態では、凸部24の壁面、及び周溝部25の壁面が、周溝部25の溝幅が内径側で徐々に広がるように、傾斜して形成されているが、凸部24の壁面、及び周溝部25の壁面は、
図6(a)に示す変形例のように、回転軸に対して垂直に沿って形成されてもよく、
図6(b)に示す変形例のように、曲面によって形成されてもよい。即ち、保持器20は、凸部24が内周面の最小内径、周溝部25が内周面の最大内径となることで、上記効果を奏することができる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るアンギュラ玉軸受10Aについて、
図7を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、保持器の形状において第1実施形態と異なるのみであるため、第1実施形態と同等部分については、同一符号を付して説明を省略或いは簡略化する。
【0030】
第2実施形態における保持器20aは、第1実施形態と同様に、凸部24を有する一方、その軸方向外側に、周溝部を有しておらず、保持器20の軸方向端部から凸部24の起立開始点24aまで一様内径の内周面で構成されている。基本的に、内輪回転軸受では、グリースは保持器20の内周面に堆積するため、周溝部を有しない構成であっても、十分なグリース量を確保することができる。また、周溝部を有しないことにより、保持器20の軸方向両端の内径を調節することによって、保持器20の軽量化や剛性向上が可能となる。
その他の構成、及び作用については、第1実施形態のものと同様である。
【0031】
尚、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、本発明は、
図8に示すような冠型保持器にも適用可能である。冠型保持器20bは、その構造上、保持器20bのポケット21は保持器軸方向に対して、片方が開口している必要がある。本発明の保持器では、少なくとも内径最小となる凸部24を形成すれば、その効果が発揮できるため、冠型保持器20bにも適用可能となっている。また、冠型保持器20bにおいても、
図8(a)に示すような、周溝部25を凸部24の両端部に形成するものが、最もグリース堆積可能量が大きくなり望ましいが、
図8(b)に示すような片側のみに周溝部25を有するものや、
図8(c)に示すような周溝部なしの形状であっても、十分に効果を発揮することができる。
【0032】
また、保持器の案内形式は、上記実施形態の玉案内方式に限定されず、外輪案内方式や内輪案内方式であってもよく、また、ポケット面は、円筒形状に限定されず、玉の球面に沿った形状であってもよい。さらに、保持器の材料についても、任意のものを適用することができる。
【0033】
また、本発明のアンギュラ玉軸受では、上記実施形態のように、内輪12の軸方向両側の肩部外径が同一寸法であってもよいし、
図9に示すように、軸方向一方側の肩部が他方の肩部に対して小径に形成されていてもよい。なお、
図1の断面図では、凸部24の内径d1が、内輪12の肩部外径よりも小さく示されているが、組立性の観点から、内輪12の少なくとも軸方向一方側の肩部外径は、凸部24の内径d1よりも小さく設計されている必要がある。
【符号の説明】
【0034】
10、10A アンギュラ玉軸受
11 外輪
11a 外輪軌道面
12 内輪
12a 内輪軌道面
13 玉
20、20a、20b 保持器
21 ポケット
22 円環部
23 柱部
24 凸部
25 周溝部
C 転動面