(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の実施形態に係る変位センサについて、図を参照して説明する。
図1は本実施形態の変位センサ10の外観斜視図である。
図2(A)は変位センサ10の平面図であり、
図2(B)はその側面図である。
図2(B)に示す側面図は、変位センサ10の長手方向が図の横方向となるように見た(短手方向の端面を見た)側面図である。
【0015】
変位センサ10は、平板状の弾性体20と、平膜状の圧電素子30とを備える。弾性体20は、所定の厚みを有し、平面視して、一方向に長く、この方向に直交する方向に短い、長手方向と短手方向を有する矩形状からなる。弾性体20は、ポリエチレンテレフタレート(PET)やアクリル樹脂(PMMA)等の比較的強度が高いポリマーで形成されている。この場合、弾性体20の厚みは、例えば0.5mm〜2mm程度にするとよい。なお、弾性体20は、圧電素子30を構成する圧電性シート300の機械的強度よりも、少なくとも高い機械的強度を有するものであればよい。
【0016】
圧電素子30は、弾性体20と同様の矩形状からなる圧電性シート300を備える。圧電性シート300は、L型ポリ乳酸(以下、PLLAと称する。)によって形成されている。なお、圧電性シート300は、D型ポリ乳酸(以下、PDLAと称する。)によって形成されていてもよい。
【0017】
圧電性シート300の第1主面には、略全面に電極301が形成されている。圧電性シート300の第2主面には、略全面に電極302が形成されている。電極301,302には、ITO、ZnO、ポリチオフェンを主成分とする有機電極、ポリアニリンを主成分とする有機電極のいずれかを用いるのが好適である。これらの材料を用いることで、電極301,302は、透光性の高いものとなる。これにより、高い透光性を有する変位センサを実現することができる。
【0018】
さらに、電極301,302に、ポリチオフェンを主成分とする有機電極、ポリアニリンを主成分とする有機電極のいずれかを用いれば、透光性を有するとともに、曲げによる電極の破損が殆ど生じず、より好適である。また、透光性を有する必要がない場合には、蒸着やめっきにより形成された金属被膜や銀ペーストによる印刷電極膜で電極301,302を形成してもよい。特に、アルミ蒸着被膜は安価に形成でき好適である。
【0019】
電極301には外部接続端子41が接続されており、電極302には外部接続端子42が接続されている。
【0020】
このような構成からなる変位センサ10の圧電性シート300に用いられるPLLAは、キラル高分子であり、主鎖が螺旋構造を有する。このPLLAシートは、一軸延伸され、分子が配向すると、圧電性を有する。一軸延伸されたPLLAの圧電定数は、高分子中で非常に高い部類に属する。
【0021】
なお延伸倍率は3〜8倍程度が好適である。延伸後に熱処理を施すことにより、ポリ乳酸の延びきり鎖結晶の結晶化が促進され圧電定数が向上する。尚、二軸延伸した場合はそれぞれの軸の延伸倍率を異ならせることによって一軸延伸と同様の効果を得ることが出来る。例えばある方向をX軸としてその方向に8倍、その軸に直交するY軸方向に2倍の延伸を施した場合、圧電定数に関してはおよそX軸方向に4倍の一軸延伸を施した場合と同等の効果が得られる。単純に一軸延伸したフィルムは延伸軸方向に沿って裂け易いため、前述したような二軸延伸を行うことにより幾分強度を増すことが出来る。
【0022】
また、PLLAは、延伸のみで圧電性を生じ、PVDF等の他のポリマーや圧電セラミックスのように、ポーリング処理を行う必要がない。すなわち、強誘電体に属さないPLLAの圧電性は、PVDFやPZT等の強誘電体のようにイオンの分極によって発現するものではなく、分子の特徴的な構造である螺旋構造に由来するものである。このため、他の強誘電性の圧電体で生じる焦電性は、PLLAには生じない。さらに、PVDF等は経時的に圧電定数の変動が見られ、場合によっては圧電定数が著しく低下する場合があるが、PLLAの圧電定数は経時的に極めて安定している。
【0023】
このように、PLLAを用いれば、焦電性による影響を受けない。したがって、検出時、検出位置の温度に依存することなく、変位量のみに応じた出力電圧を得ることができる。また、PLLAはポリマーであり、柔軟性を有するので、圧電セラミックスのように、大きな変位で破損することがない。したがって、変位量が大きくても、当該変位量を確実に検出することができる。
【0024】
また、PLLAは比誘電率が約2.5と非常に低いため、dを圧電定数とし、ε
Tを誘電率とすると、圧電出力定数(=圧電g定数、g=d/ε
T)が大きな値となる。
【0025】
ここで、誘電率ε
33T=13×ε
0,圧電定数d
31=25pC/NのPVDFの圧電g定数は、上述の式から、g
31=0.2172Vm/Nとなる。一方、圧電定数d
14=10pC/NであるPLLAの圧電g定数をg
31に換算して求めると、d
14=2×d
31であるので、d
31=5pC/Nとなり、圧電g定数は、g
31=0.2258Vm/Nとなる。したがって、圧電定数d
14=10pC/NのPLLAで、PVDFと同様の十分なセンサ感度を得ることができる。そして、本願発明の発明者らは、d
14=15〜20pC/NのPLLAを実験的に得ており、当該PLLAシートを用いることで、非常に高感度のセンサを実現している。
【0026】
さらに、PLLAは圧電性が異方性を有するため、次に示すような一軸延伸後の原反からの切り出しを行う。
図3は印加電界方向、延伸方向とPLLAを用いた圧電性シートの伸縮状態との関係を示す図である。なお、ここでは、説明を分かりやすくするために、電界印加前の圧電性シート390を正方形とした場合を示す。
【0027】
図3の破線390で示す正方形状の圧電性シートは、
図3の矢印シンボル901に示す方向(
図3における横方向)に一軸延伸されている。この圧電性シート390に対して、
図3の電界シンボル911の方向(
図3の紙面手前から紙面奥に向かう方向)の電界が印加されると、d
14の効果により、実線392で示す平行四辺形に変形する。この際、圧電性シートが最も伸びる方向は一軸延伸方向に対して反時計回りに45°の方向となり、最も短くなる方向は一軸延伸方向に対して反時計回りに−45°の方向となる。
【0028】
したがって、
図3の二点鎖線391に示すように、一軸延伸方向に対して45°方向を長手方向として圧電性シートを切り出す。これにより、上述の圧電性シート300を、伸縮に対して最も高感度状態で形成することができる。
【0029】
このように、本実施形態の圧電性シート300は、長手方向に対して、一軸延伸方向が45°の角度を成すように形成されている。このような形状からなる圧電性シート300の両面に、上述のように電極301,302が形成された圧電素子30は、図示しない透光性接着剤により、弾性体20の第1主面に取り付けられる。
【0030】
なお、正確な45°に限ることなく、略45°であってもよい。略45°とは、例えば45°±10°程度を含む角度をいう。これらの角度は、変位センサの用途に基づき、曲げの検知精度など全体の設計に応じて、適宜決定されるべき設計事項である。
【0031】
このような形状からなる変位センサ10は、
図4に示すように、一軸延伸方向に対して45°を成す長手方向に沿った曲げを検出できる。
図4(A)は曲げ変位が0の状態での変位センサの概略側面形状を示す図であり、
図4(B)は所定の曲げ変位が生じた状態での変位センサ10の概略側面形状を示す図である。
【0032】
曲げ変位が0の場合、すなわち変位センサ10に対して曲げを生じさせる力が外部から加わっていない場合、弾性体20は
図4(A)の記号10STに示すように、主面が平坦な状態となる。この場合、圧電素子30は伸縮せず、電圧が生じない。
【0033】
曲げ変位が所定値の場合、すなわち変位センサ10に対して曲げを生じさせる力が外部から加わった場合、弾性体20は
図4(B)の記号10CSに示すように、主面の長手方向に沿って湾曲した状態となる。この場合、圧電素子30は、曲げ量に応じて長手方向に沿って伸びる。これにより、圧電素子30の電極301,302間に、伸張量に応じた電圧が発生する。この電圧を検出することで、圧電素子30の伸張、すなわち変位センサ10の曲がり量を検出することができる。
【0034】
以上のように、本実施形態の構成を用いれば、曲げ量を検出することができるが、さらに、
図5に示すような回路を構成するとよい。
図5は変位センサ10を含む変位検出装置100の等価回路図である。
図6は変位検出装置100の出力特性を示す。
図6(A)は変位発生から変位解除までの出力電圧変化を示し、
図6(B)は変位−電圧特性を示す。
【0035】
図5に示すように、変位センサ10の一方の外部接続端子は、可変抵抗VRの可変制御端子に接続する。可変抵抗VRは、定抵抗R1,R2間に接続されており、これら定抵抗R1,R2、可変抵抗VRの直列回路の定抵抗R1側の端部には駆動電圧Vccが印加され、定抵抗R2側の端部はグランドに接続されている。
【0036】
変位センサ10の他方の外部接続端子は、オペアンプOPの非反転入力端子に接続している。オペアンプOPの出力端子には、直流電圧検出器101が接続されている。オペアンプOPの出力端子は、オペアンプOPの反転入力端子にフィードバック接続されている。オペアンプOPにも駆動電圧Vccが供給されている。
【0037】
さらに、変位センサ10には、コンデンサCoが並列接続されている。この際、コンデンサCoは例えば0.2μF程度のものを用いる。
【0038】
このような構成からなる変位検出装置100を用いることで、変位センサ10の出力電圧を、
図6(A)に示しているように変位の生じている間、略持続することができる。これは、変位センサ10単体では、変位が生じたタイミングで電圧が発生し、急速に意図しないリーク電流等により出力電圧値が低下してしまうが、コンデンサCoを変位センサ10に並列接続することにより、この電圧低下の時定数を長くすることができる。これにより、より確実に出力電圧を検出できる。
【0039】
また、本実施形態の構成を用いれば、
図6(B)に示すように、変位量に対して略線形に出力電圧値が変化するので、変位量を正確に検出することができる。
【0040】
なお、オペアンプOPは入力インピーダンスが非常に大きいため、コンデンサCoを用いなくても、電圧低下の時定数を長くすることは可能である。したがって、コンデンサCoを省略することも可能である。
【0041】
以上のように、本実施形態の変位センサ10および変位検出装置100を用いれば、所定方向(本実施形態では長手方向)に沿った曲げ量を、正確且つ高感度に検出することができる。さらに、PLLAは圧電性に異方性を有し、本実施形態の構成では長手方向の曲げ(伸縮)のみ検出するので、被検出方向である長手方向と異なる方向の曲げや捻れの影響を受けることなく、被検出方向である長手方向の曲げのみを正確に検出することができる。
【0042】
次に、第2の実施形態に係る変位センサについて、図を参照して説明する。
図7(A)は本実施形態に係る変位センサ10Aの平面図であり、
図7(B)はその側面図であり、
図7(C)はその裏面図である。
【0043】
本実施形態の変位センサ10Aは、弾性体20、本発明の第1平膜型圧電素子に相当する第1の圧電素子31、および、本発明の第2平膜型圧電素子に相当する第2の圧電素子32を備える。弾性体20は第1の実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0044】
第1の圧電素子31は、弾性体20の第1主面に取り付けられている。第1の圧電素子31は、矩形状の圧電性シート310を備える。圧電性シート310は、第1の実施形態の圧電性シート300と同様に、一軸延伸方向と長手方向とが45°を成すように形成されている。圧電性シート310の両主面にはそれぞれ電極311,312が略全面に形成されている。電極311には外部接続端子41Aが接続され、電極312には外部接続端子42Aが接続されている。
【0045】
第2の圧電素子32は、弾性体20の第1主面に対向する第2主面に取り付けられている。第2の圧電素子32は、矩形状の圧電性シート320を備える。圧電性シート320も、圧電性シート310および第1の実施形態の圧電性シート300と同様に、一軸延伸方向と長手方向とが45°を成すように形成されている。圧電性シート320の両主面にはそれぞれ電極321,322が略全面に形成されている。電極321には外部接続端子41Bが接続され、電極322には外部接続端子42Bが接続されている。
【0046】
第1の圧電素子31と第2の圧電素子32とは、弾性体20の主面に直交する方向から見て、一軸延伸方向が90°を成すように、弾性体20に取り付けられる。
【0047】
このような構成にすることで、例えば、第1の圧電素子31の圧電性シート310が長手方向に沿って伸びるような曲げが生じた場合、第2の圧電素子32の圧電性シート320は縮む。そして、これら第1、第2の圧電素子31,32を同素材、同形状で形成すれば、曲げの中立面が弾性体20の厚み方向の中心軸になるので、第1の圧電素子31が伸ばされる力と第2の圧電素子32を縮ませる力との絶対値が等しくなる。これにより、第1の圧電素子31と第2の圧電素子32とに、絶対値が同じで逆特性の電圧が生じる。
【0048】
したがって、外部接続端子の接続パターン等により、第1の圧電素子31の出力電圧と、第2の圧電素子32の出力電圧との特性(正負)を一致させて加算すれば、第1の実施形態に示した一つの圧電素子を用いる場合の二倍の出力電圧を得ることができる。また、第1の圧電素子31の出力電圧と、第2の圧電素子32の出力電圧との特性(正負)を一致させて平均値処理すれば、誤差の少ない出力電圧を得ることができる。
【0049】
なお、本実施形態では、第1の圧電素子31の圧電性シート310の一軸延伸方向と、第2の圧電素子32の圧電性シート320の一軸延伸方向とが、主面に直交する方向から見て、90°をなすようにしたが、平行になるように、第1の圧電素子31と第2の圧電素子32とを取り付けてもよい。この場合、第1の圧電素子31と第2の圧電素子32とで同特性の出力電圧が得られる。
【0050】
次に、第3の実施形態に係る変位センサについて、図を参照して説明する。
図8(A)は本実施形態の変位センサ10Bの平面図であり、
図8(B)はその側面図である。
【0051】
変位センサ10Bは、導電性を有する弾性体21を備える。弾性体21は、上述の各実施形態に示した弾性体20と同様に、長尺な矩形状からなる。弾性体21は、例えば金属から形成したり、絶縁性の弾性体(PETやPMMA等)の表面を金属メッキしたものであってもよい。弾性体21はグランドに接続されている(接地されている)。
【0052】
弾性体21の第1主面には、圧電性シート330が取り付けられている。圧電性シート330は、第2の実施形態に示した圧電性シート310と同じ材質、同じ形状、同じ一軸延伸方向を有する。圧電性シート330の弾性体21と対向する面には、電極331が形成されている。電極331には、外部接続端子41Aが接続されている。これら圧電性シート330、当該圧電性シート330を挟んで配置される電極331と導電性の弾性体21により、第3の圧電素子33(本発明の第1平膜型圧電素子に相当する)が構成される。
【0053】
弾性体21の第1主面に対向する第2主面には、圧電性シート340が取り付けられている。圧電性シート340は、第2の実施形態に示した圧電性シート320と同じ材質、同じ形状、同じ一軸延伸方向を有する。圧電性シート340の弾性体21と対向する面には、電極341が形成されている。電極341には外部接続端子41Bが接続されている。これら圧電性シート340、当該圧電性シート340を挟んで配置される電極341と導電性の弾性体21により、第4の圧電素子34(本発明の第2平膜型圧電素子に相当する)が構成される。
【0054】
このような構成であっても、上述の第2の実施形態と同様に、長手方向の曲げによる変位を検出することができる。さらに、本実施形態の構成にすることで、二個の圧電素子の一方の電極が導電性の弾性体21によって兼用されるので、変位センサ10Bの構成が簡素化され、さらに外的要因によるノイズを抑圧することができる。
【0055】
次に、第4の実施形態に係る変位センサについて、図を参照して説明する。
図9(A)は本実施形態の変位センサ10Cの平面図であり、
図9(B)はその側面図であり、
図9(C)はその裏面図である。
【0056】
本実施形態の変位センサ10Cは、弾性体20、本発明の第1平膜型圧電素子に相当する第5の圧電素子35、および、本発明の第2平膜型圧電素子に相当する第6の圧電素子36を備える。弾性体20は第1の実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0057】
第5の圧電素子35は、弾性体20の第1主面に取り付けられている。第5の圧電素子35は、矩形状の圧電性シート350を備える。圧電性シート350は、第1の実施形態の圧電性シート300と同様に、一軸延伸方向と長手方向とが45°を成すように形成されている。圧電性シート350の両主面にはそれぞれ電極351,352が略全面に形成されている。電極351には外部接続端子41Aが接続され、電極352には外部接続端子42Aが接続されている。
【0058】
第6の圧電素子36は、弾性体20の第1主面に対向する第2主面に取り付けられている。第6の圧電素子36は、矩形状の圧電性シート360を備える。圧電性シート360は、一軸延伸方向と長手方向とが平行(成す角=0°)になるように形成されている。
【0059】
なお、正確な0°に限ることなく、略0°であってもよい。略0°とは、例えば0°±10°程度を含む角度をいう。これらの角度は、変位センサの用途に基づき、曲げの検知精度など全体の設計に応じて、適宜決定されるべき設計事項である。
【0060】
圧電性シート360の両主面にはそれぞれ電極361,362が略全面に形成されている。電極361には外部接続端子41Bが接続され、電極362には外部接続端子42Bが接続されている。
【0061】
第5の圧電素子35と第6の圧電素子36は、圧電性シート350の一軸延伸方向と圧電性シート360の一軸延伸方向とが45°を成し、且つ圧電性シート360の長手方向(=一軸延伸方向)が弾性体20の長手方向を平行になるように、弾性体20に取り付けられている。
【0062】
図10(A)は、捻れ変位が0の状態での第6の圧電素子36のみを配置した変位センサの概略斜視形状を示す図であり、
図10(B)は所定の捻れ変位が生じた状態での第6の圧電素子36のみを配置した変位センサの概略斜視形状を示している。
図10では、図および原理の説明を分かりやすくするために、第6の圧電素子36のみを弾性体20へ配設した変位センサを示しているが、上述の
図9に示した形状のものにも当該原理は適用できる。なお、
図10では、弾性体20の長手方向の一方端となる端辺ABを固定端辺とし、他方端となる端辺CDに捻れが生じた場合を図示している。言い換えれば、固定端辺ABの両端となる角部Aおよび角部Bが固定された角部となり、端辺CDの両端となる角部Cおよび角部Dが、弾性体20の主面に略直交する方向で、且つ互いに逆方向へ変位した場合を示している。
【0063】
捻れ変位が0の場合、すなわち弾性体20に対して捻れを生じさせる力が外部から加わっていない場合、弾性体20は
図10(A)の記号10STtに示すように、主面が平坦な状態となる。この場合、第6の圧電素子36も伸縮せず、第6の圧電素子36の両面の電極間に電圧が生じない。
【0064】
捻れ変位が所定値の場合、すなわち弾性体20に対して捻れを生じさせる力が外部から加わって弾性体20の固定端辺ABに対向する端辺CDが捻れる場合、弾性体20は
図10(B)の記号10TOtに示すように、固定角部A,Bに対向する角部C,Dが平坦状態と比較して、主面(平坦面)に直交する方向へ所定距離離間した状態となる。この際、角部Cと角部Dは、主面を基準として、互いに逆方向へ移動する。
【0065】
この場合、第6の圧電素子36は、角部Dおよびその付近においては一軸延伸方向に対して+45°の方向へ伸張し、角部Cおよびその付近においては一軸延伸方向に対して−45°の方向へ収縮する。したがって、第6の圧電素子36を構成する圧電性シート300の一軸延伸方向に対して−45°および+45°の方向に沿って収縮/伸張(
図10(B)の実線太矢印記号参照)が発生するので、この収縮/伸張の量に応じた電圧が、第6の圧電素子36を構成する電極間に発生する。この電圧を検出することで、変位センサの捻れ量を検出することができる。
【0066】
なお、この構成においては、角部Cと角部Dが互いに逆方向へ等量変位するため、曲げに応じて発生した電圧は相殺される。したがって、捻れ量のみを分離して、高精度に検出することができる。
【0067】
このように、本実施形態を用いれば、弾性体20の第1主面に取り付けられた第5の圧電素子35で曲げの変位を検出し、第2主面に取り付けられた第6の圧電素子36で捻れの変位を検出できる。そして、これら曲げの変位と捻れの変位を独立して同時に検出することができる。
【0068】
なお、本実施形態では、捻れを検出する第6の圧電素子36の一軸延伸方向と、弾性体20の長手方向とが平行になるようにしたが、第6の圧電素子36の一軸延伸方向が、当該長手方向に直交する、すなわち短手方向に平行になるように、第6の圧電素子36を形成してもよい。
【0069】
また、本実施形態に、第3の実施形態に示した弾性体側の電極共通化の構成を用いることもできる。これにより、構成が簡素化され、外部要因のノイズに強い、曲げと捻れを同時に検出できる薄型の変位センサを実現することができる。
【0070】
さらに、上述の
図10に示すように、捻れのみを検出するのであれば、弾性体20に対して第6の圧電素子36のみを形成すればよい。
【0071】
また、上述の第2の実施形態に示した弾性体の両主面に同方向の変位を検出する圧電素子を配設する構成や、上述の第4の実施形態に示した弾性体の両主面にそれぞれ異なる方向の変位を検出する圧電素子を配設する構成の場合、両主面に配設する圧電素子の強度が同じであれば、弾性体を省略することも可能である。この場合、変位センサの構成を簡素化することができ、より薄型化することができる。ただし、変位の検出感度を向上させるためには、弾性体を有する方が好適である。
【0072】
また、上述の曲げ、捻れを区別することなく、変位センサに生じる変位の有無を検出するだけでよい場合には、弾性体の長手方向と一軸延伸方向との角度を、上述の0°、45°、90°以外の角度にしてもよい。この場合、好ましくは、長手方向と一軸延伸方向との角度を略22.5°、略67.5°にするとよい。なお、変位センサの用途に基づき、全体の設計に応じて、弾性体の長手方向と一軸延伸方向との角度をそれぞれ22.5°±10°、67.5°±10°程度の範囲に設定しても、同様の効果が得られる。この場合、上述の曲げによる変位の有無も捻れによる変位の有無も1枚のPLLAの圧電性シートで検出することができる。なお、1枚でも曲げ及び捻れの有無を検出できるが、弾性体の両面にこれらの圧電素子を備えることで、出力電圧を二倍にできたり、二つの出力電圧の平均値を得られる。これにより、より正確に曲げ及び捻れの有無を検出できる。
【0073】
このように、ポリ乳酸を用いて一軸延伸することにより、一軸延伸方向の配設される向きに応じて、様々な変位を自在に且つ効果的に検出することが可能になる。このため、一軸延伸方向と検出したい変位の方向(所定方向)との角度を適宜設定すれば、弾性体の所定方向への変位(例えば、上述の曲げ、捻れ等)を効果的に検出することが可能になる。すなわち、ポリ乳酸は、圧電性が異方性を有することから、単に圧電性シートの変位が検出できるだけではなく、所定方向の変位を効果的に検出することができる。
【0074】
以上の各実施形態では、平板状の弾性体20に生じる変位を検出する構成を示したが、次の実施形態に示すように、平板以外の変位を検出することもできる。
【0075】
第5の実施形態に係る変位センサについて、図を参照して説明する。
図11は本実施形態の変位センサ10Dのシャフト22への取り付け状態を示す図である。
【0076】
被検出体であるシャフト22は、円柱形状であり、その中心軸線(断面の円の中心点)を回転中心として回転する。
【0077】
シャフト22の円周面には、変位センサ10Dとなる圧電素子37が取り付けられている。
【0078】
圧電素子37は、シャフトに取り付ける前の状態で、長尺な矩形状の圧電性シート370を備える。圧電性シート370は、長手方向が一軸延伸方向と平行になるように形成されている。圧電性シート370の両主面には、電極371,372が形成されている。これらの電極371,372は、図示しない外部接続端子にそれぞれ接続されている。
【0079】
このような形状からなる圧電素子37は、長手方向がシャフト22の円周方向に一致するように、取り付けられる。これにより、一軸延伸方向(
図11の矢印シンボル903)と円周方向が一致する。なお、圧電素子37の長手方向の長さは、シャフト22の円周の長さよりも短くてもよいが、等しくすることが好ましい。圧電素子37は、シャフト22に対して、絶縁性接着剤によって接着されている。この絶縁性接着剤は、固着後の強度が圧電素子37の圧電性シート370以上であるものがよい。
【0080】
このような構成とすることで、シャフト22に捻れが生じると、圧電性シート370が対角線方向に伸び、圧電素子37は、伸び量に応じた出力電圧を発生する。これにより、シャフト22の捻れを検出することができる。
【0081】
なお、上述の各実施形態では、一枚の圧電性シートの両面に電極を形成した単層の圧電素子を用いたが、これらを複数層積層してなる圧電素子を用いてもよい。このように複数層積層した構造を用いることで、出力電圧を向上させることができる。
【0082】
また、上述の各実施形態では、特に詳細に記載していないが、各圧電素子の表面を覆うように、絶縁性の保護膜を形成してもよい。この場合、保護膜は、圧電素子を構成する圧電性シートよりヤング率の低いものを用いる。さらに、保護膜の装着により、曲げや捻れの中立点が圧電素子内にならないように設計すればよい。
【0083】
上述の平膜状の変位センサは、次に示すような各種の操作デバイスに利用される。
【0084】
(i)ゲームの操作入力デバイス(ゲーム用コントローラ)の場合
図12は、上述の変位センサを用いたゲーム用コントローラ201の概略構成を示す図であり、
図12(A)は平面図、
図12(B)は側面断面図を示す。
図13(A)はゲーム用コントローラ201を曲げた状態を示し、
図13(B)はゲーム用コントローラ201を捻った状態を示している。なお、
図13では操作入力ボタン220,230の図示は省略し、形状も簡素化している。
【0085】
ゲーム用コントローラ201は、略矩形状の筐体210を備える。筐体210の表面壁には、複数の操作入力ボタン220,230が配設されている。筐体210は、空間211を有し、当該空間211内に、操作入力ボタン220,230の操作検出部(図示せず)や、外部のゲーム機本体との通信制御を行う通信制御部(図示せず)が備えられている。
【0086】
また、筐体210の裏面壁の空間211側には、上述の第4の実施形態で示した変位センサ10Cが配設されている。この際、変位センサ10Cは、自身の長手方向が筐体210の長手方向と略一致するように配設されている。
【0087】
ここで、筐体210を、所定の弾性を有し、ユーザによって曲げたり、捻ったりできるような材質で形成する。
【0088】
このような構造からなるゲーム用コントローラ201の筐体210に対して、
図13(A)のシンボル910に示すように、長手方向の中央が表面側に変位し、長手方向の両端が裏面側に変位するように、ユーザが外力を加える。これにより、筐体210および変位センサ10Cの各平膜状の圧電素子は、
図13(A)のシンボル911Cに示すように、長手方向に沿って湾曲する。変位センサ10Cは、上述のように、このような長手方向の曲げを検出して検出電圧を発生する。
【0089】
図示しない通信制御部は、この検出電圧を取得し、当該検出電圧に応じたコマンドをゲーム機本体(本発明の「プログラム実行部」に相当する。)へ送信する。これにより、ゲーム機では、ユーザのコントローラ曲げ操作に応じた処理をゲームプログラムで実行することができる。
【0090】
次に、ゲーム用コントローラ201の筐体210に対して、
図13(B)のシンボル920に示すように、ゲーム用コントローラ201の長手方向に沿った短手方向の中心を通る軸を基準軸として、ゲーム用コントローラ201の長手方向の両端を互いに逆回転となるように、ユーザが外力を加える。これにより、筐体210および変位センサ10Cの各平膜状の圧電素子は、
図13(B)のシンボル921tに示すように、一方の対角線に沿って収縮し、他方の対角線に沿って伸延する。変位センサ10Cは、上述のように、このような捻れを検出して検出電圧を発生する。
【0091】
図示しない通信制御部は、この検出電圧を取得し、当該検出電圧に応じたコマンドをゲーム機本体へ送信する。これにより、ゲーム機では、ユーザのコントローラ捻れ操作に応じた処理をゲームプログラムで実行することができる。
【0092】
この際、上述のように、変位センサ10Cは、圧電性シートとしてPLLAを用いているので、焦電性が無く、ユーザがゲーム用コントローラ201を保持することによって、変位センサ10Cに熱が伝導しても、検出電圧に影響を及ぼさない。したがって、曲げ操作や捻れ操作を正確に反映したアプリケーションの実行が可能になる。
【0093】
なお、変位センサ(ゲーム用コントローラ内蔵)とアプリケーションの実行部(ゲーム機本体)とを別体にしているが、これらを一体化することもできる。
【0094】
なお、ここでは、ゲーム用コントローラを例に説明したが、他の携帯型操作入力装置(例えば、各種AV機器のリモコン装置等)にも、同様の構成を適用でき、同様の作用効果を得ることができる。また、変位センサに変位を生じさせるための操作は、曲げや捻れに限らず、接触、押圧、振動など変位センサに外力を作用させることができるものであればよい。
【0095】
(ii)モニタ機能付き装着品(シューズ)の場合
図14は、上述の変位センサを用いたモニタ機能付きシューズ301の概略構成を示す図である。モニタ機能付きシューズ301は、シューズ本体310のソール311内に、上述の変位センサ10Cが埋め込まれている。この際、変位センサ10Cは、主面がユーザの足400の足の裏面、すなわちソール311の表面と略平行になるように配置されている。なお、
図14では、足指の付け根付近に変位センサ10Cを配置する例を示したが、土踏まず付近、踵の付近等に配置してもよい。もちろん、これら複数の箇所に配置してもよい。
【0096】
変位センサ10Cは、同じくソール311内に配設された配線ライン135を介して、通信制御部131に接続されている。通信制御部131は例えばマイクロプロセッサで構成され、電池132から電源供給用ライン134を介して電源供給されている。通信制御部131は、変位センサ10Cの曲げや捻れに基づく検出電圧を、外部の表示機器等(本発明の「プログラム実行部」に相当する。)に送信する。
【0097】
このような構成では、ユーザが歩行やジョギング等を行った場合、着地時のシューズの底面の傾きや、ユーザによる地面の蹴り出し姿勢を、変位センサ10Cで検出することができる。これにより、ユーザの歩行状況やランニング状況を正確に検出することができ、例えば、ユーザの歩行フォームや、ジョギングフォームの矯正等に利用することもできる。
【0098】
また、上述の平膜状のPLLAを用いた変位センサ10Cを採用することで、ソールの厚みを厚くすることなく、従来のセラミック圧電体(PZT)を用いる場合よりも重量を軽くできる。また、PLLAは可撓性を有するため、表面に形成する電極を、PLLAと同様の可撓性を有する有機材料にすれば、ジョギングや歩行による足からの負荷や衝撃によって割れることもない。また、PLLAであることで、環境負荷も軽減できる。
【0099】
なお、
図13では、シューズ本体310のソール311内に変位センサ10Cを埋め込む態様を示したが、着脱可能な中敷きに埋め込む態様にしてもよい。
【0100】
また、プログラム実行部は、外部の表示機器等に限られず、シューズ内に歩数カウンタや発音部等を設けて、変位センサの検出電圧を利用したプログラムを実行させることも可能である。
【0101】
また、上述の(i)から(ii)の応用例では、曲げと捻れを個別に検出できる変位センサを用いる場合を示したが、曲げ、捻れの一方を検出するだけの場合や、曲げ、捻れの有無を検出するだけの場合には、上述の他の実施形態に示した変位センサを用いることも可能である。
【0102】
(iii)リモコン装置の場合
図15は、上述の変位センサを用いたリモコン装置401の概略構成を示す図であり、
図15(A)は外観斜視図、
図15(B)は
図15(A)のA−A’断面図を示す。
【0103】
リモコン装置401は、上述の第4の実施形態に示した変位センサ10Cの構造を基本構造としている。したがって、概略的な構造のみを説明する。
【0104】
透明のアクリル等からなる平板状の弾性体420の第1主面には、平膜状の圧電素子431が配設される。圧電素子431は、PLLAからなる平膜状の圧電性シート4310を備え、圧電性シート4310の対向する両主面にそれぞれ電極4311,4312が形成されている。
【0105】
弾性体420の第2主面には、平膜状の圧電素子432が配設される。圧電素子432は、PLLAからなる平膜状の圧電性シート4320を備え、圧電性シート4320の対向する両主面にそれぞれ電極4321,4322が形成されている。
【0106】
このような構成からなる複合構造体の各電極に接続するように、制御回路部410が形成されている。制御回路部410は、例えば、圧電素子431を構成する電極4311の表面に、図示しない絶縁体層を介して形成されている。制御回路部410は、電池、上述の電圧検出回路、および赤外線等により外部機器へ信号を送信する送信制御部を備える。
【0107】
そして、これら弾性体420、圧電素子431,432および制御回路部410は、絶縁性保護層440によって、全面が覆われている。
【0108】
このような構造とすることで、リモコン装置401の本体を単に曲げたり捻ったりするだけで、曲げや捻れに応じた各種の制御信号を送信することができる。具体的には、操作デバイスのアプリケーション実行部としてテレビジョン装置(TV装置)を採用し、リモコン装置401を当該TV装置に付属するリモコン装置として利用する場合、例えば、曲げによる検出電圧をチャンネルの切り替え用の制御信号に利用し、捻れによる検出電圧をボリューム調整用の制御信号に利用することが可能になる。
【0109】
より具体的には、例えば、圧電素子431側が伸び圧電素子432側が縮むようにリモコン装置401を曲げた場合にチャンネルを「+1」し、圧電素子431側が縮み圧電素子432側が伸びるようにリモコン装置401を曲げた場合にチャンネルを「−1」するように設定する。また、長手方向の一方端を時計回りに捻り他方端を反時計回りに捻る場合にボリュームを「+1」上昇させ、長手方向の一方端を反時計回りに捻り他方端を時計回りに捻る場合にボリュームを「+1」低下させるように設定する。曲げ量や捻り量に応じてチャンネルやボリュームの加算量や減算量が可変する様にしてもよい。
【0110】
なお、上述の構造からなるリモコン装置401の変位センサは、押圧力および押圧時間に応じた電圧レベルの検出電圧を出力できるので、押圧力や押圧時間に応じて、チャンネルの連続切り替え速度やボリューム調整量の増減を調整することもできる。
【0111】
さらに、曲げおよび捻れによる検出電圧の組合せを電源制御用の制御信号に利用することが可能になる。
【0112】
より具体的には、TV装置の電源オフ状態の時に、曲げ、捻れを連続的に行った場合に電源オンを行うように設定する。また、TV装置の電源オン状態の時に、上述する二種類の捻れを連続的に行った場合に電源オフを行うように設定する。
【0113】
このように上述の構成を用いれば、ユーザは従来のようにボタン位置を確認せずとも、手の感覚だけで、電源制御、チャンネル切り替え、ボリューム調整を行うことができる。これにより、高齢者や視覚障害者(TVプログラムの音声のみを聞くような場合)であっても、電源制御、チャンネル切り替え、ボリューム調整を容易に行うことができる。
【0114】
また、ボタンを必要としないためリモコン装置のデザイン性の自由度が向上し、さらに透明であれば、より革新的なリモコン装置を実現できる。例えば、ファッショナブルであり、近未来的なイメージのリモコン装置を実現できる。
【0115】
なお、制御回路部410に用いる電池をボタン電池やポリマー電池にすることで、制御回路部410を小型化でき、リモコン装置のデザイン性の低下を抑えることができる。
【0116】
また、(iii)の応用例では、TV装置を例に説明したが、磁気録画再生機、光ディスク録画再生機、オーディオプレイヤー等の他のAV機器のリモコン装置にも適用することができる。
【0117】
(iv)タッチパネルセンサの場合
図16は、上述の変位センサを用いたタッチパネルセンサ501の概略構成を示す図であり、
図16(A)は外観斜視図、
図16(B)は
図16(A)のB−B’断面図を示す。
【0118】
タッチパネルセンサ501は、平板状のタッチパネル部511と平板状の圧電素子512とが、互いの平板面(主面)が平行になるように積層した構造からなる。
【0119】
圧電素子512は、PLLAからなる平膜状の圧電性シート5120を備え、圧電性シート5120の対向する両主面にそれぞれ押圧力検出用電極5121,5122が形成されている。
【0120】
圧電素子512の押圧力検出用電極5121の表面(圧電性シート5120と反対側の面)には、弾性体からなる絶縁層513が積層されている。
【0121】
絶縁層513の圧電素子512と反対側の面には、タッチパネル部511が積層されている。タッチパネル部511は、所定の誘電率を有する誘電体からなる基材層5110を備え、当該基材層5110の両主面に静電容量検出用電極5111,5112が形成されている。タッチパネル部511の静電容量検出用電極5112の表面(基材層5110と反対側の面)は、上述の絶縁層513に当接している。
【0122】
タッチパネル部511の静電容量検出用電極5111の表面(基材層5110と反対側の面)には、絶縁性保護層514が積層されている。
【0123】
このような構造にすることで、絶縁性保護層514側をユーザインターフェース側とするタッチパネルセンサ501が構成される。
【0124】
そして、このタッチパネルセンサ501は、外部から押圧力が加わった場合、可視が容易ではない程度であるが、平板面(主面)が湾曲する。したがって、圧電素子512の圧電性シート5120も湾曲し、圧電素子512は湾曲量すなわち押圧力に応じた検出電圧を出力することができる。これにより、このタッチパネルセンサ501を用いれば、操作位置(押圧位置)を検出するとともに、この際の押圧力を同時に検出することができる。
【0125】
したがって、このタッチパネルセンサ501を、各種AV機器のリモコン装置に用いれば、押圧位置と押圧力に応じた制御を行うことができる。例えば、ボリューム調整位置が押圧された場合、押圧力に応じてボリューム調整速度を変化させることができる。また、早送りや巻き戻しの操作位置が押圧されれば、押圧力に応じた速度で早送りや巻き戻しをする制御を行うことができる。
【0126】
なお、(iv)の説明では、タッチパネル部511がユーザインターフェース側になる例を示したが、タッチパネル部511が抵抗膜方式のタッチパネルの場合には、圧電素子512がユーザインターフェース側になるようにしてもよい。
【0127】
また、上述の平膜状の変位センサを各種の操作デバイスに利用する態様において、ゲーム用コントローラ201、リモコン装置401、タッチパネルセンサ501のように、太陽光や、当該太陽光に類似する波長のその他の光波が照射されるような状況で利用するものでは、
図17に示す構造を用いることもできる。
図17は太陽電池450を備えるリモコン装置401Aの側面断面図である。なお、
図17では、リモコン装置を例に示したが、ゲーム用コントローラ、タッチパネルセンサ等の他の操作入力デバイスにも、
図17の構成を適用することができる。
【0128】
図17に示すリモコン装置401Aは、
図15に示したリモコン装置401に対して、弾性体420に替えて、弾性体420U、太陽電池450、弾性体420Dの積層体を用いたものであり、他の構成は、リモコン装置401と同じである。
【0129】
弾性体420U,420Dは、平膜状であり、例えばアクリル樹脂等からなる。そして、太陽電池450の受波面側となる弾性体は、高い透光性を有する材質で形成されることが好ましい。
【0130】
太陽電池450は、平膜状であり、フレキシビリティを有する材質からなる。太陽電池450は、弾性体420Uと弾性体420Dの間に平板面が一致するように狭持されている。なお、ここでは、太陽電池と称しているが、光波を受波して起電力を発生したり、当該発生した起電力を充電できる充電部(二次電池)を備える平膜状の素子であってもよい。
【0131】
平膜状の圧電素子431は、弾性体420Uにおける太陽電池450と反対側の面に配設される。平膜状の圧電素子432は、弾性体420Dにおける太陽電池450と反対側の面に配設される。
【0132】
これら、圧電素子432、弾性体420D、太陽電池450、弾性体420U、圧電素子431がこの順に積層された複合積層体は、保護層440Aによって覆われている。
【0133】
このような構成とすれば、太陽光を受波して太陽電池450が発電した起電力や、当該起電力により充電された二次電池からの電力により、制御信号を生成することができる。これにより、ニッケル電池等の一般的な化学反応型の電池を備えないリモコン装置を実現することができる。もちろん、この際、化学反応型の電池(ボタン電池)等を併設してもよく、化学反応型の電池を併設することで、太陽電池の充電が十分でない場合でも、制御信号を出力することができる。
【0134】
また、上述の構成では、太陽電池350を弾性体420U,420D間に狭持する構成を示したが、太陽電池350をリモコン装置401Aの表面側に配置することも可能である。ただし、上述のように太陽電池350を弾性体420U,420D間に狭持する構成とすれば、太陽電池350の層を曲げや捻れの中立層とすることができ、より確実に変位を検出することができる。また、上述の構成では、リモコン装置401Aを平面視した全面に太陽電池350を配設しているが、部分的に配設することもできる。
【0135】
また、上述の二次電池と、圧電素子の検出電圧出力用の電極とを接続し、検出電圧の一部を二次電池に充電する機能部を設けてもよい。このような機能部を設ければ、リモコン装置401Aの制御信号の生成に必要十分な電圧レベル以上の検出電圧が得られた場合に、余剰な電圧分を、二次電池へ充電することができる。特に、上述のように、平膜状の弾性体420U,420Dの略全面に圧電素子431,432の圧電性シート4311,4321を配設するような態様であれば、検出電圧を大きくでき、二次電池への充電可能な構成に好適となる。さらに、上述のように、圧電性シートにPLLAを用いれば、さらに好適である。
【0136】
なお、上述のように、圧電性シートにPLLAを用いた圧電素子を変位センサとすることが、上述の各実施形態において非常に好適な態様であるが、曲げ、捻れを検出し、なんらかの制御信号に利用するという観点から考慮すると、次に示す、他の圧電性を有する材料による変位センサや、圧電性を有さない材料による変位センサを用いることも可能である。
【0137】
他の圧電性を有する材料としては、圧電定数d
14を利用するものや、圧電定数d
31を利用するものがある。
【0138】
(A)圧電定数d
14を利用するものとしては、次のものが挙げられる。
【0139】
・ポリ−γ−メチル−L−グルタメート
・ポリ−γ−ベンジル−L−グルタメート
・セルロース
・コラーゲン
・ポリ−D−プロピレンオキシド
・PDLA(D型ポリ乳酸)
これらの圧電定数d
14を利用するものは、上述のPLLAを用いた圧電素子と同様の構造で、上述の変位センサや各種デバイスを実現することができる。
【0140】
(B)圧電定数d
31を利用するものとしては、ポーリング型高分子によるもの、強誘電性高分子によるもの、無機系のものがあり、それぞれ次のものが挙げられる。
【0141】
<ポーリング型高分子>
・ナイロン11
・ポリフッ化ビニル
・ポリ塩化ビニル
・ビニリデンシアニド−酢酸ビニル共重合体
・ポリ尿酸
<強誘電性高分子>
・ポリフッ化ビニリデン
・フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体
<無機系>
・チタン酸バリウム(BaTiO
3)
・水晶(SiO
2)
・チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)
・酸化亜鉛(ZnO)
(C)圧電性を有さない材料による変位センサ
図18は圧電性を有さない材料による変位センサ60の概略構成および変位検出概念を説明するための図である。
図18(A)は変位センサ60の平面図であり、
図18(B)は変位検出概念を説明するための拡大図である。
【0142】
図18(A)に示すように、変位センサ60は弾性体601および変位検出用電極602を備える。弾性体601は、高分子フィルム等からなり、平膜状である絶縁性を有する。
【0143】
変位検出用電極602は、弾性体601の一方主面上に形成されている。変位検出用電極602は、ミアンダ状電極と、当該ミアンダ状電極を外部へ接続する引き回し電極とを備える。変位検出用電極602は、弾性体601の長手方向に沿って当該弾性体601の変位が生じると、
図18(B)に示すように、ミアンダ状電極を形成する複数の直線部の長さが長くなる。すなわち、弾性体601が長手方向に沿って変位する前には、弾性体601の長手方向に沿った長さがLoであったミアンダ状電極の各直線部が、変位に応じて、長さLs(>Lo)となる。これに伴い、ミアンダ状電極の各直線部は幅も狭くなる。したがって、変位検出用電極602のミアンダ状電極は、変位に応じて抵抗値が変化する。この抵抗値変化を検出することで、変位検出対象物の変位を検出することができる。
【0144】
ここで、上述の(B),(C)からなるグループの変位センサを用いる場合、変位検出対象物に対する検出すべき方向(曲げ方向や捻れ方向)に応じて、変位センサを適宜設置すればよい。例えば、変位検出対象物である平板状の装置(上述のリモコン装置等)の捻れを検出する場合には、
図19に示すような構成を用いればよい。
図19は、平板状の装置の捻れを検出する変位センサの一設置態様を示す平面図である。
【0145】
図19に示すように、平板状の装置701は、矩形で平板状(平膜状)の主体720と、矩形で平膜状の圧電素子731A,731Bとを備える。主体720は弾性体等の外力により捻れが生じる材質からなる。圧電素子731A,731Bは、主体720の捻れに対する変位感度が高くなるように、主体720の主面上に配置されている。例えば、具体的に
図19の場合、圧電素子731A,731Bの長手方向と、主体720の長手方向とが、主体720の主面に直交する方向から見て、略45°の角度をなすように、圧電素子731A,731Bが主体720へ設置されている。この際、圧電素子731A,731Bは、互いの長手方向が略90°の角度をなすように、主体720へ設置されている。
【0146】
このような構成とすれば、上述の(B),(C)からなるグループの変位センサであっても、特定方向(曲げ、捻れ)を検出し、これに応じた制御信号を出力する装置(リモコン装置等)を実現することができる。なお、上述のPLLAおよび(A)のグループの変位センサを、
図19に示すような構造で取り付けることも可能である。
【0147】
上述のゲームコントローラのように筐体内に圧電素子を配置して操作デバイスを形成する場合には、次に示す態様を用いることもできる。
図20は操作デバイス801における圧電素子30の配置を示す図である。
図20(A)は、操作デバイス801の平面図であり、
図20(B)は、
図20(A)のA−A’断面図である。なお、
図20では、筐体810と圧電素子30のみを図示しており、操作デバイス801を構成する他の構成要素は図示を省略している。
【0148】
筐体810は、平面視して、一方向が長く(以下、当該方向を長手方向とする。)、当該長手方向に直交する方向が短い(以下、当該方向を短手方向とする。)、直方体形状からなる。筐体810は、表面壁812F、裏面壁812Rが間隔を空けて対向する構造からなり、表面壁812Fの外周と裏面壁812Rの外周とに沿って、長手方向側壁821,822、短手方向側壁823,824が形成されている。この構造により、筐体810は、内部空間811を備える。内部空間811には、図示しない操作デバイス801を構成する各種の構成要素とともに、圧電素子30が配置されている。
【0149】
圧電素子30は、上述の第1の実施形態に示した変位センサ10に用いた圧電素子30と同じである。
【0150】
具体的には、圧電素子30は、平膜状で矩形状からなる圧電性シート300を備える。圧電性シート300は、PLLAによって形成されている。なお、ここでは、PLLAを用いているが、d14の圧電定数を有し、圧電性が異方性を有するものであれば、他の材質であってもより。圧電シート300は、当該圧電シート300の長手方向に対して、一軸延伸方向が45°の角度を成すように形成されている。
【0151】
圧電性シート300の第1主面には、略全面に電極301が形成されている。圧電性シート300の第2主面には、略全面に電極302が形成されている。電極301,302の材料は、第1の実施形態に示したものを用いればよく、例えば、ITO、ZnO、ポリチオフェンを主成分とする有機電極、ポリアニリンを主成分とする有機電極、蒸着やめっきにより形成された金属被膜や銀ペーストによる印刷電極膜を用いればよい。
【0152】
このような構造からなる平膜状の圧電素子30は、筐体810を平面視して、長手方向の略中央で、且つ、短手方向の端部付近に配置されている。
図20の例であれば、圧電素子30は、裏面壁812Rにおける長手方向側壁821の中央部付近で、且つ、長手方向側壁821に当接するように、配置されている。この際、圧電素子30は、当該圧電素子30の長手方向の側面が、長手方向側壁821に当接するように、配置されている。言い換えれば、圧電素子30の長手方向と筐体810の長手方向とが略一致するように、圧電素子30は、筐体810に配置されている。
【0153】
このような圧電素子30の配置構造を採用することで、筐体810の表面壁812Fや裏面壁812Rが押し込まれたことを、効率的に検出することができる。
【0154】
これは、次の原理によるものである。
図21は、矩形状の筐体810の表面壁812Fの中央を押し込んだ場合における筐体810の長手方向(X方向)の歪み率DrXの分布図である。
図22は、矩形状の筐体810の表面壁812Fの中央を押し込んだ場合における筐体810の短手方向(Y方向)の歪み率DrYの分布図である。
図23は、矩形状の筐体810の表面壁812Fの中央を押し込んだ場合における歪み差DrXYの分布図である。歪み差DrXYは、長手方向の歪み率DrXと短手方向の歪み率DrYとの差によって算出されている。また、
図21、
図22、
図23において、X0は、
図20における長手方向側壁821,822の中間部に相当する。X1は、
図20における長手方向側壁821,822の短手方向側壁823側の端部に相当する。X2は、
図20における長手方向側壁821,822の短手方向側壁824側の端部に相当する。Y0は、
図20における短手方向側壁823,824の中間部に相当する。Y1は、
図20における短手方向側壁823,824の長手方向側壁821側の端部に相当する。Y2は、
図20における短手方向側壁823,824の長手方向側壁822側の端部に相当する。
【0155】
図21、
図22に示すように、筐体810の表面壁812Fの中央を押し込んだ場合、長手方向の歪み率DrX、短手方向の歪み率DrYは位置によって変化する。具体的には、次のように変化する。
【0156】
(長手方向の歪み率DrX(
図21参照))
長手方向の歪み率DrXは、長手方向、短手方向に関係なく、表面壁812Fの中心に近づくほど「+」方向へ大きくなる。また、長手方向の歪み率DrXは、長手方向側壁821,822に近接する領域では、長手方向に沿った位置に関係なく、「0」に近い値となる。この際、長手方向の中央では、小さく「+」となる。
【0157】
また、長手方向の歪み率DrXは、短手方向の中央では、長手方向に沿って大きく変化する。具体的には、中央付近では大きく「+」になり、両端部(短手方向側壁823,824に当接する部分)では、大きく「−」になる。
【0158】
また、長手方向の歪み率DrXは、角部では「0」となる。
【0159】
(短手方向の歪み率DrY(
図22参照))
短手方向の歪み率DrYは、長手方向、短手方向に関係なく、表面壁812Fの中心に近づくほど「+」方向へ大きくなる。また、短手方向の歪み率DrYは、短手方向側壁823,824に近接する領域では、短手方向に沿った位置に関係なく、「0」に近い値となる。この際、短手方向の中央では、小さく「+」となる。
【0160】
また、短手方向の歪み率DrYは、長手方向の中央では、短手方向に沿って大きく変化する。具体的には、中央付近では大きく「+」になり、両端部(長手方向側壁821,822に当接する部分)では、大きく「−」になる。
【0161】
また、短手方向の歪み率DrYは、角部では「0」となる。
【0162】
したがって、歪み差DrXYは、
図23に示すように、長手方向、短手方向に関係なく、表面壁812Fの中心で略「0」になる。また、歪み差DrXYは、長手方向側壁821,822の長手方向に沿った略中央付近で、且つ長手方向側壁821,822に近接する位置で、大きく「+」となる。また、歪み差DrXYは、短手方向側壁823,824の短手方向に沿った略中央付近で、且つ短手方向側壁823,824に近接する位置で、大きく「−」となる。
【0163】
ここで、圧電素子30の圧電シート300はd14の圧電定数を有するので、圧電シート300(圧電素子30)の一軸延伸方向と筐体810の長手方向および短手方向とが45°の角度を成すように圧電素子30が筐体810に配置されていれば、歪み差DrXYの絶対値が最も大きな領域に配置することで、押し込み量に応じた電圧が高くなる。
【0164】
図24は、筐体810に対する圧電素子30の配置態様例を示す図である。
図24(A)〜
図24(F)は、それぞれ同じ形状の筐体810に同じ形状の圧電素子30を配置する例を示している。
図24において、O点は、筐体810を平面視した中心である。このO点を、表面壁812F側から押し込んだ場合に圧電素子30が発生する電荷量を各図に示している。
【0165】
図24は、長手方向の長さが80mm、短手方向の長さが60mmの筐体810であって、長手方向の長さが30mm、短手方向の長さが10mmのPLLAの圧電シート300を用いた場合を示している。また、電荷量は、表面壁812Fを1kgfで押した場合を示している。
【0166】
図24(A)、
図24(B)、
図24(C)は、圧電素子30の長手方向と筐体810の長手方向が略平行な場合を示す。
【0167】
図24(A)の場合、圧電素子30は、筐体810の短手方向の中央で、筐体810の長手方向の中心と短手方向側壁823との中間位置に配置されている。この場合、電荷量は+4.3nCである。
【0168】
図24(B)の場合、圧電素子30は、筐体810の中央に配置されている。この場合、電荷量は+1.8nCである。
【0169】
図24(C)の場合、圧電素子30は、筐体810の長手方向の中央で、長手方向側壁821に当接する位置(短手方向の端部)に配置されている。この場合、電荷量は+7.0nCである。
【0170】
図24(D)、
図24(E)、
図24(F)は、圧電素子30の長手方向と筐体810の長手方向が略垂直な場合を示す。
【0171】
図24(D)の場合、圧電素子30は、筐体810の長手方向の中央で、中心O点と長手方向側壁821との間に配置されている。この場合、電荷量は、−4.0nCである。
【0172】
図24(E)の場合、圧電素子30は、筐体810の中央に配置されている。この場合、電荷量は+0.61nCである。
【0173】
図24(F)の場合、圧電素子30は、筐体810の短手方向の中央で、短手方向側壁823に当接する位置(長手方向の端部)に配置されている。この場合、電荷量は+3.8nCである。
【0174】
このように、圧電素子30を筐体810に配置する場合、歪み差DrXYの絶対値が最も大きな領域に配置することで、より絶対値の大きな電荷量を得られることが分かる。
【0175】
したがって、上述の説明および
図20に示すように、圧電素子30を筐体810に配置することで、押し込み(変位)に対する出力電圧感度を向上させることができる。これにより、圧電素子30の大きさが制限されていても、押し込み操作に対する感度が高い、操作デバイスを実現することができる。
【0176】
なお、
図20の示す配置態様は一例であり、圧電素子30を歪み差の絶対値が大きい領域に配置すれば、他の配置態様を用いてもよい。ただし、圧電素子30が配置される領域内に、符号が異なる(「+」と「−」)領域が混在する場合、それぞれの領域で生じた電荷がキャンセルされてしまうため、圧電素子30としての発生電荷量が小さくなってしまう。したがって、圧電素子30が配置される領域内では、できる限り同じ符号の電荷(電圧)が発生するように、言い換えれば電荷分布の極性ができる限り同じになるように、圧電素子30を筐体810へ配置するとよい。
【0177】
なお、上述の
図20では、圧電素子30を歪み差の大きな領域に配置する例を示したが、圧電性シートを筐体810の裏面壁812Rの内側の全体に配置し、歪み差の大きな領域にのみ電極を形成する構成にしてよい。
【0178】
図25は、筐体810を平面視して、圧電性シート380を筐体810の略全面に貼り付けられる場合の一例を示す図である。圧電素子38は、筐体810を平面視した内部空間の略全面に配置された圧電性シート380と、圧電性シート380の所定領域に形成された電極381とを備える。圧電性シート380の電極381と反対側の面には、電極381に対向するように、もう一つの電極が形成されている。
【0179】
圧電性シート380は、長手方向および短手方向と一軸延伸方向とが略45°の角度を成すように形成されている。
【0180】
電極381は、長手方向に沿った中央の電極幅(短手方向に沿った長さ)が短く、長手方向に沿った両端の電極幅が長くなるように、長手方向に沿って電極幅が徐々に広くなる形状で形成されている。このような構成とすることで、電極381は、上述の歪み差DrXYが大きく、同符号(「−」符号)の領域の略全ての領域に亘るように、形成される。したがって、筐体810の表面壁812Fへの押し込みに対する出力電圧感度を、さらに高くすることができる。
【0181】
なお、
図25では、略全面に圧電性シート380を配置する例を示したが、電極381と同じ形状の圧電性シートを配置してもよい。この場合、圧電素子を筐体810に配置した際に、圧電性シートの一軸延伸方向が、筐体810の長手方向および短手方向に対して略45°の角度を成すように、圧電性シートを切り出せばよい。
【0182】
また、さらに、
図26に示すように、さらなる電極を形成してもよい。
図26は、筐体810を平面視して、圧電性シート380を筐体810の略全面に貼り付け、複数の電極を形成する場合の一例を示す図である。
【0183】
圧電素子38Aは、上述した圧電素子38に対して、電極3821,3822を追加したものである。電極3821は、圧電性シート380の長手方向に沿った中央付近で、短手方向に沿った一方端付近(長手方向側壁821に近接する領域)に形成されている。電極3822は、圧電性シート380の長手方向に沿った中央付近で、短手方向に沿った他方端付近(長手方向側壁822に近接する領域)に形成されている。電極3821,3822は、電極381に接続していない。なお、図示していないが、電極3821,3822の圧電性シート380に対向する反対面にも、同じ形状の電極が形成されている。
【0184】
このような構成の場合、電極3821,3822で生じる電荷は、電極381で生じる電荷と逆符号(電荷分布の極性が逆)になる。したがって、単に加算すると電荷の総量が小さくなってしまう。すなわち、電極3821,3822で生じる電圧と、電極381で生じる電圧を単純加算すると、電圧が低くなってしまう。したがって、このような構成の場合、電極3821,3822で得られる電圧と、電極381で得られる電圧とを相殺しないように加算する(極性が一致した状態で加算される)構成を備えればよい。このような構成とすれば、さらに、電荷を検出する面積が広くなり、出力電圧感度を、さらに高くすることができる。
【0185】
上述の操作デバイスの実施形態では、表面壁に対する押し込み検出を行う例を示したが、裏面壁の押し込み検出にも利用することができる。
【0186】
なお、これまでの図は説明のために寸法関係が誇張されており、例えば積層体の断面図では、各部の厚みは図に示されている比率に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲において適宜設計変更が可能である。