特許第6191744号(P6191744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191744
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】歩行型管理機
(51)【国際特許分類】
   A01B 33/08 20060101AFI20170828BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20170828BHJP
   B60K 17/28 20060101ALI20170828BHJP
   B60K 23/02 20060101ALI20170828BHJP
   B60K 23/04 20060101ALI20170828BHJP
   B62D 51/06 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   A01B33/08 A
   A01B69/00 302
   B60K17/28 B
   B60K23/02 K
   B60K23/04 C
   B62D51/06 A
   B62D51/06 C
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-157754(P2016-157754)
(22)【出願日】2016年8月10日
(62)【分割の表示】特願2012-261283(P2012-261283)の分割
【原出願日】2012年11月29日
(65)【公開番号】特開2017-12183(P2017-12183A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2016年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】黒田 恭正
(72)【発明者】
【氏名】中川 秀明
(72)【発明者】
【氏名】平岡 通
(72)【発明者】
【氏名】富久 聡
(72)【発明者】
【氏名】宮内 正男
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 昭悟
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−211993(JP,A)
【文献】 特開2010−215089(JP,A)
【文献】 特開2005−000097(JP,A)
【文献】 特開平06−141601(JP,A)
【文献】 特開平07−008005(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0142788(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 33/00−33/16
A01B 69/00−69/08
B60K 23/00−23/08
B60K 17/28−17/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミッションケース(2)内に、エンジン(14)からの動力を走行装置(6)に伝達する伝動系と作業装置(9)に伝達する伝動系とを夫々内装し、走行装置(6)への伝動系にデフ機構(35)を備え、作業装置(9)への伝動系には作業クラッチ機構(48)を備えるとともに、単一の操作レバー(56)を備え、この操作レバー(56)にデフロック連繋機構(D)を介してデフロック機構(41)を連動すると共にクラッチ連繋機構(C)を介して作業クラッチ機構(48)を連動し、単一の操作レバー(56A)を、デフロック機構(41)をデフロック状態とし作業クラッチ機構(48)をクラッチ入りに連動する位置と、デフロック機構(41)をデフロック解除状態とし作業クラッチ機構(48)をクラッチ切りに連動する位置と、デフロック機構(41)をデフロック解除状態とし作業クラッチ機構(48)をクラッチ入りに連動する位置に切替操作可能に構成した歩行型管理機。
【請求項2】
操作レバー(56A)の前後操作により、作業クラッチ機構(48)をクラッチ入り・切りに切り替え、操作レバー(56A)の左右操作によりデフロック機構(41)をデフロック入り・デフロック解除に切り替える請求項1に記載の歩行型管理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耕耘装置等の作業機を装着した歩行型管理機に係り、特に走行部にデフ機構を備えた歩行型管理機に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンからの動力を車輪へ伝達する走行系伝動装置と、耕耘ロータリ等の作業装置へ伝達する作業系伝動装置を備え、走行伝動装置にデフ機構を設け、作業系伝動装置に作業クラッチを介在する歩行型管理機において、デフ機構と作業クラッチに連動連結する単一の操作レバーによってデフロック状態でかつ作業クラッチを入りとする作業位置と、デフロック解除状態で作業クラッチを切りとする非作業走行位置に切り替える構成とし、操作忘れや誤操作がなく作業位置と非作業走行位置に切替える構成が公知であり、作業中の直進性を確保し圃場端での旋回中作業機各部の回転を停止して安全にデフロック解除の状態で旋回できる構成が公知である(特許文献1)。
【0003】
また、単にデフロック状態でかつ作業クラッチを入りとする作業位置と、デフロック解除状態で作業クラッチを切りとする非作業走行位置の切り替えのみならず、作業クラッチ切り状態でデフロック状態を具現することで、作業機の畦越え時や歩み板によるトラックへの積み下ろし時にデフロックで直進させることができるように改良した構成がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−63224号公報
【特許文献2】特開2012−200154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2のいずれの構成においても、作業クラッチ入り状態でデフロック解除の作業形態を選択できないため、作業中に曲進走行したい場合、例えば曲線の畦際に沿っての作業走行において不向きである。この発明は、このような欠点を解消しようとし、曲進走行状態での圃場作業の容易化を図り、あわせて構成の簡単化や操作性の向上を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
【0007】
請求項1に記載の発明は、ミッションケース2内に、エンジン14からの動力を走行装置6に伝達する伝動系と作業装置9に伝達する伝動系とを夫々内装し、走行装置6への伝動系にデフ機構35を備え、作業装置9への伝動系には作業クラッチ機構48を備えるとともに、単一の操作レバー56を備え、この操作レバー56にデフロック連繋機構Dを介してデフロック機構41を連動すると共にクラッチ連繋機構Cを介して作業クラッチ機構48を連動し、単一の操作レバー56Aを、デフロック機構41をデフロック状態とし作業クラッチ機構48をクラッチ入りに連動する位置と、デフロック機構41をデフロック解除状態とし作業クラッチ機構48をクラッチ切りに連動する位置と、デフロック機構41をデフロック解除状態とし作業クラッチ機構48をクラッチ入りに連動する位置に切替操作可能に構成した歩行型管理機とする。
【0008】
【0009】
請求項2に記載の発明は、操作レバー(56A)の前後操作により、作業クラッチ機構(48)をクラッチ入り・切りに切り替え、操作レバー(56A)の左右操作によりデフロック機構(41)をデフロック入り・デフロック解除に切り替える請求項1に記載の歩行型管理機とする。
【0010】
【0011】
請求項又は請求項のように構成すると、曲線状畦際に沿って走行しながらの圃場作業中において差動走行が必要な場合には、操作レバー56Aを、デフロック機構41をデフロック解除状態とし作業クラッチ機構48をクラッチ入りに連動する位置にシフトすることにより、デフロック解除状態で圃場作業を行うことができる。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【発明の効果】
【0020】
【0021】
請求項又は請求項に記載の発明によると、曲線状畦際に沿って走行しながらの圃場作業中において差動走行が必要な場合には、操作レバー56Aを、デフロック機構41をデフロック解除状態とし作業クラッチ機構48をクラッチ入りに連動する位置にシフトすることにより、デフロック解除状態で圃場作業を行うことができる。
【0022】
【0023】
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】全体側面図
図2】一部を省略した全体側面図
図3】走行装置伝動系を示す背断面図
図4】作業装置伝動系を示す背断面図
図5】デフロック連繋機構を示す平面図
図6】作業装置クラッチ連繋機構及びクラッチ連繋切替機構を示す平断面図(A)、その作用を示す側面図(B)、その正面図(C)
図7】作業装置クラッチ連繋機構及びクラッチ連繋切替機構を示す平断面図(A)、その作用を示す側面図(B)、その正面図(C)
図8】作業機クラッチ機構の作用説明図(A)(B)
図9】デフロック連繋切替機構を示す側面図(A)(B)
図10】連繋切替機構の別例を示す側面図
図11】その背面図(A)(B)
図12】ガイド溝一例を示す平面図(A)(B)
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【0026】
図1図2は歩行型管理機の側面図であり、機体1は、側面視へ字型に形成されたミッションケース2と該ミッションケース2の前側に設ける支持フレーム3等を備える。このうちミッションケース2の前側ケース2a下部には車軸4を突設し左右車輪5L,5Rを支持して走行装置6を構成し、後側ケース2b下部には耕耘軸7を突設して耕耘爪8,8…を設けて耕耘装置9を構成する。耕耘装置9の上面はロータリカバー10で覆う構成であり、後面は後部カバー11で覆う構成としている。耕耘装置9の後端側には支持柱11を介して尾輪12を上下高さ調節自在に設けている。
【0027】
前記支持フレーム3にはエンジン14を設け、ベルト伝動機構を介してエンジン出力をミッションケース2内伝動機構に伝達する構成である。15はベルト伝動機構を覆うベルトカバーである。
【0028】
次いでミッションケース2内伝動構成について説明する。
【0029】
前記エンジン14の出力軸(図示せず)とミッションケース2内の入力軸としての第1軸20とをベルト伝動機構の伝動ベルト21によって連動し、該第1軸20に第1シフトギヤ22を嵌合している。
【0030】
走行装置6への伝動系について、主にミッションケース2の前側ケース2aにおいて第1軸20と平行に第2軸23を設け、上記第1軸20にて中立位置のシフトギヤ22を挟んで対称に第1走行カウンタギヤ24、及び第2走行カウンタギヤ25を固着し、その外側には第1耕耘カウンタギヤ26、第2耕耘カウンタギヤ27を設ける。なお第2耕耘カウンタギヤ27は第2軸23に遊転自在に支持されている。
【0031】
そして、上記の第2軸23上の第1,第2走行カウンタギヤ24,25と択一的に噛合する広幅の第2シフトギヤ28を遊転自在に支持する第3軸29を設ける。この第3軸29には、広幅に成形した第3耕耘カウンタギヤ30を設ける。なおこの第3耕耘カウンタギヤ30は前記第2軸23の第2耕耘カウンタギヤ27に常時噛合する構成である。
【0032】
前記第1軸〜第3軸と平行で中央に走行用駆動スプロケット31を固着した第4軸32には、大径の第3走行カウンタギヤ33を配設する。なおこの走行カウンタギヤ33は、第2軸23の中央径大部に形成したギヤ部23aに常時噛合し、前記第3軸29の第2シフトギヤ28の摺動により噛合可能に配設されている。
【0033】
ミッションケース2の前側ケース2aの下部に左右同軸に支持する左右の車軸4L,4Rの該前側ケース2a内における対向部分にはデフ機構35を構成している。即ち、従来周知のベベルギヤ機構群を相互に噛合させて内装し車軸4L,4Rのうち一方の車軸4Rに支持されたデフケース35aに、該デフケース35aと一体に被動スプロケット36を設けている。前記駆動スプロケット31と該被動スプロケット36間をチェン37で連結し、デフ機構35により左右車軸4L,4Rを差動回転可能に構成する。なお、デフ機構35のデフケース35aの一側には係合爪38aを形成し、車軸4L側にスプライン支持された摺動体39に該係合爪38aと噛合う被係合爪38bを形成する。そして摺動体39は常時は係合爪38aに対して被係合爪38bを離反すべくバネ40をデフケース35aと摺動体39との間に介在する。これらデフケース35aの係合爪38a,摺動体39,被係合爪38b及びバネ40によりデフロック機構41を構成するものである。バネ40に抗して摺動体39を摺動し係合爪38aと被係合爪38bを係合させると差動を拘束し左右車軸4L,4Rは一体的に回転するものとなる。
【0034】
ミッションケース2の後側ケース2bにおいては主に耕耘伝動系を設ける。前記第1軸20,第2軸23と平行に耕耘用駆動スプロケット42を支持する第5軸43を設ける。この第5軸43に正転耕耘カウンタギヤ44と逆転耕耘カウンタギヤ45を設けてなる。前記耕耘軸7には耕耘用被動スプロケット46を設け、耕耘用駆動スプロケット42との間にチェン47を掛け渡し動力を耕耘軸7に伝達する構成であり、該耕耘軸7は左右一体のため同一回転する構成である。
【0035】
前記耕耘用駆動スプロケット42を支持する第5軸43上には作業クラッチ機構としての耕耘クラッチ機構48を構成する。具体的には、耕耘用駆動スプロケット42の側部に係合爪48aを形成し、第5軸43にスプライン嵌合して摺動する摺動体49に被係合爪48bを備えてなる。もってこれら係合爪48aと被係合爪48bとが噛合うと、第5軸43に遊動状態に支持される耕耘用駆動スプロケット42が該第5軸43と一体回転するクラッチ入り状態となる。
【0036】
前記第1軸の第1シフトギヤ22は第1シフターステー50のアーム50aに係合して左右に変速作動する。また前記第3軸29の第2シフトギヤ28は第2シフターステー51のアーム51aに係合して左右に変速作動する。
【0037】
すなわち、図3及び図4の状態はいずれも中立位置を示すが、この位置から第1シフターステー50を矢印Z1方向に摺動させて、第1シフトギヤ22が第1走行カウンタギヤ24に噛合うと低速前進(F1)となり、さらに摺動させて第1シフトギヤ22が第1耕耘カウンタギヤ26とも噛合うと低速前進(F1)の正転耕耘となる。なお、走行動力は、第1軸20,第1シフトギヤ22,第1走行カウンタギヤ24,第2軸23,ギヤ部23a,第3走行カウンタギヤ33,第4軸32、デフ機構35を経由して左右車軸4L,4Rを駆動する。また、耕耘動力は、第1軸20,第1シフトギヤ22,第1耕耘カウンタギヤ26,正転耕耘カウンタギヤ44,第5軸43,耕耘クラッチ機構48を経由して耕耘軸7を正転駆動する。
【0038】
上記第1シフターステー50を反矢印Z1方向に摺動すると、第1シフトギヤ22が第2走行カウンタギヤ25及び第3耕耘カウンタギヤ30に同時に噛合い、低速前進の逆転耕耘となる。この場合、走行動力は、第2走行カウンタギヤ25が受け持ち、耕耘動力は、第1軸20,第1シフトギヤ22,第3耕耘カウンタギヤ30,第2耕耘カウンタギヤ27,逆転耕耘カウンタギヤ45,第5軸43,耕耘クラッチ機構48を経由して耕耘軸7を逆転駆動する。
【0039】
一方第2シフターステー51を矢印Z2方向に摺動すると、第2シフトギヤ28は第1走行カウンタギヤ24に噛合い、走行動力は、第1軸20,第1シフトギヤ22,第2シフトギヤ28,第1走行カウンタギヤ24,第2軸23,ギヤ部23a,第3走行カウンタギヤ33,第4軸32、デフ機構35を経由して左右車軸4L,4Rを後進駆動する(低速後進(R))。また、反矢印Z2方向に摺動すると、第2シフトギヤ28は直接第3走行カウンタギヤ33に噛合い、走行動力は、第1軸20,第1シフトギヤ22,第2シフトギヤ28,第3走行カウンタギヤ33,第4軸32、デフ機構35を経由して左右車軸4L,4Rを前進駆動する(高速前進(F2))。
【0040】
前記ミッションケース2から後方上方に向けてハンドル55を設け、操縦者手元には操作レバー56を設ける。該操作レバー56は前後に揺動可能に横支軸57によって支持され、所謂支点越えスプリング(図示せず)を設けて前後位置で固定できる構成としている。この操作レバー56には操作ワイヤ58の一端が連結されるが、該操作ワイヤ58の他端は二股用金具59を介して2本の副操作ワイヤ60,61を連繋している。
【0041】
上記2本の副操作ワイヤのうち第1の副操作ワイヤ60は、前記デフロック機構41を作動すべく連繋され、第2の副操作ワイヤ61は前記耕耘クラッチ機構48を作動すべく連繋される。すなわち、第1副操作ワイヤ60の先端は、ミッションケース2の前側ケース2aの側部に延長しており、デフロック連繋機構Dの作動アーム63に連繋される。デフロック連繋機構Dは、前側ケース2aの壁部に左右軸心にて回動すべく支持された支持軸62、この支持軸62に一体で前側ケース2aの外側に位置する作動アーム63、支持軸62の前側ケース2a内端部側に取り付けられた短寸の被動アーム64、前記デフ機構35の摺動体39に係合して支軸65回りに揺動自在に設けるデフロックアーム66、被動アーム64とデフロックアーム66との間を連結するリンクアーム67を備える。このため、副操作ワイヤ60のインナ部が引かれると、作動アーム63,支持軸62,被動アーム64,リンクアーム67,デフロックアーム66を経て摺動体39はバネ40に抗してデフケース35a側に押されて係合爪38aは被係合爪38bに係合し、デフロック状態とするものである。
【0042】
また、第2副操作ワイヤ61の先端は、ミッションケース2の上面に構成するクラッチ連繋機構Cの中間アーム67に連繋されている。即ち、クラッチ連繋機構Cは、縦支軸68回りに回動可能に設けられた該中間アーム67、支持軸69回りに揺動自在に設けるクラッチアーム70、このクラッチアーム70と係合してシフト軸上を直線的に往復動する作動アーム71、上記第2副操作ワイヤ61の引張操作力を伝達するバネ72等からなり、この引張操作力によってクラッチアーム70を回動し作動アーム71を介して摺動体49を作動して耕耘クラッチを入りに連動できる構成である。なお、ミッションケース2固定側と作動アーム71との間にクラッチ切り側に付勢するバネ73を備えている。
【0043】
上記クラッチ連繋機構Cはミッションケース2の上面に固定される板金枠74の一側に形成するホルダ74aに縦支軸68を支持し、他側に延設すると取付部74bにクラッチ切り側バネ73の一端を支持する構成である。さらに、該板金枠74の一側には中間アーム67と一部重合しうる固定アーム部材75を固着し、中間アーム67が第2副操作ワイヤ61に引かれてクラッチ入り側姿勢にある状態を維持すべく重合状態の中間アーム67と固定アーム部材75とを共通のピン部材76で連結可能に設けている。通常はピン部材76を抜いて作業するものであるが(図6)、上記のように重合状態ではクラッチ入りとなり、ピン部材76を装着することによって、このクラッチ入りの保持状態を維持できる。
【0044】
すなわち、このピン部材76を挿通・離脱させることにより、固定アーム部材75に対して中間アーム67が非作動又はフリーに切り替わり、もってクラッチ切りを規制し、又はこれを解除する切替えを行なうクラッチ連繋切替手段、換言すると、前記操作レバー56の操作に基づき作業クラッチ機構48を入り又は切りに連動する状態と操作レバー56が前記他方側へ操作されてもクラッチ入りを保持する状態に切り替えるクラッチ連繋切替手段S1としている。したがって、ピン部材76を挿通して固定アーム部材75に中間アーム67を固定すると(図7)、耕耘クラッチ機構48をクラッチ入り・デフロック機構41をデフロック解除とする状態を具現でき、圃場の曲線状の畦際に沿って耕耘作業を行う場合にはデフロック解除となって左右輪が差動走行でき、この曲線状畦際に沿っての走行操作が容易である。
【0045】
なお、図6図7による実施例では、固定アーム部材75の下面にピン部材76のホルダ77を固着し、このホルダ76aに保持されたピン部材76の外周にバネ78を巻回し、ホルダ77の下部にはピン部材76の下端のL型部76aを90度向き変更した位置に係止できる凹部76bを形成し、この凹部76b位置にL型部76aを係止するとピン部材76を下方退避の状態に保持するため、中間アーム67を規制することなく自由に回動作動し得る状態となし、90度回動してL型部76aを凹部76bから外すと、ピン部材76の上端側が中間アーム67の回動圏に突出するため、中間アーム67が第2副操作ワイヤ61に引かれるとこの圏内に達して、バネ78に抗してピン部材76を押し下げ、さらに回動すると中間アーム67に形成した係止孔に係止すべくバネ78の付勢力で中間アーム67を重合状態に係止する(図7)。この状態では常時クラッチ入りとされるが、ピン部材76のL型部76aを摘んで下方に引き、凹部76bに係止すると(図6)、第2副操作ワイヤ61に連動する中間アーム67の作動によってクラッチ入りまたは切りに連動できる。
【0046】
上記実施例のピン部材76は、端部のL型部76bが摘みに代用でき、係止凹部76bに係止するクラッチ切り規制解除の状態と、係止凹部76bから外したクラッチ切り規制の状態に切替るクラッチ連繋切替手段S1の構成であるから、簡単な構成で外付け可能の上、操作が確実である。このピン部材76に代替して単なるピン部材として中間アーム67と固定アーム部材75との重合部に人為的に挿通又は離脱させて行なう形態でもよい。
【0047】
側面視において、ハンドル55の上方には変速レバー80を備える。該変速レバー80は、ミッションケース2内に前後左右に揺動自在に設けられ、先端部は前記第1,第2シフターステー50,51の各先端に形成する係合凹部50a,51aに択一的に係合でき、左右に揺動することによって前記走行変速乃至耕耘変速を行なう構成としている。
【0048】
前記の構成において、圃場内作業を行う場合には、変速レバー80を所定に変速操作し、低速前進の正転耕耘、又は低速前進の逆転耕耘を選択するとともに、操作レバー56を前側に倒し操作しておく。操作レバー56の操作によって、操作ワイヤ58及び第1,第2副操作ワイヤ60,61が引かれるため、デフロック連繋機構を経てデフロック機構41はデフロック状態とされ、一方クラッチ連繋機構の作用によって耕耘クラッチ機構48はクラッチ入りとなる。従って、機体1はゆっくりと前進するがデフロックとされて左右車軸4L,4Rを同一回転状態とし、耕耘軸7が駆動されて耕耘できる。このため、圃場でハンドル55をとられて蛇行するようなことはなく直進性を確保しながら耕耘作業を行える。
【0049】
また、圃場端で旋回する場合には、操作レバー56を後方に倒し操作する。これによって、操作ワイヤ58及び第1,第2副操作ワイヤ60,61の緊張は解かれ、デフロック機構41によるデフロック解除状態で車軸4L,4Rは夫々差動状態となり、及び耕耘クラッチ機構48はクラッチ切り状態となって耕耘軸7の回転を停止し、旋回を容易にかつ安全に行うことができる。
【0050】
図8に示すように、耕耘クラッチ機構48において、被動側係合爪48aと駆動側係合爪48bとの対向面はこれらを支持する第5軸43の軸線に対して角度α(図例では約5度)傾斜状に形成している。具体的には、駆動側となる係合爪48bの爪先端が基部に対して回転方向において先行する状態に傾斜させていて、被動側係合爪48aはこれに沿う形状に設けてなる。このように構成すると、耕耘作業中耕耘爪8,8…が土中にあると、耕耘軸7を介して伝達される耕耘負荷は、操作レバー56をクラッチ切り側に操作してもなお、クラッチ切り側に付勢するバネ73に抗してクラッチ入り状態を保ち、機体旋回とともに耕耘装置9を上げて耕耘爪8,8…が土中から脱すると、この負荷が抜けてクラッチ切りに作用し、耕耘軸7が停止する。このため、実質的な耕耘作業の中断のときにクラッチが切れることになって、操作レバー56を事前操作できるため、旋回操作に余裕をもって行うことができる。
【0051】
なお、前記クラッチ連繋切替手段S1は、本発明の連繋切替手段Sの一例を示すもので、クラッチ連繋機構Cに介在させたが、同じくデフロックを解除しながら耕耘クラッチ機構48をクラッチ入りの状態を具現する構成として、図9に示すように、デフロック機構へのデフロック連繋機構Dの途中、例えば作動アーム63と第1副操作ワイヤ60との間にバネ79を介在し、該作動アーム63を該バネ79に抗してデフロック解除位置で、ピン部材あるいは螺子部材76Aによってミッションケース2の前側ケース2aの側面に回動不能に固定することにより(図9(B))、操作レバー56の前後回動操作に関わらず常時デフロック解除状態を具現して、特に操作レバー56を前側に操作すると、デフロック解除・耕耘クラッチ入り状態を具現でき、曲線畦際に沿う耕耘作業を容易に方向修正しながら実施できる。このように、デフロック連繋機構D途中に、連繋切替手段Sとしてのデフロック連繋切替手段S2を構成することにより、前記クラッチ連繋切替手段S1と同等の効果を得る。なお、螺子部材76Aをもって作動アーム63をミッションケース2外壁に固定する状態では、操作レバー56を前側に倒してもデフロック連繋機構Dに付加構成したバネ79の伸長によって作動力を吸収してデフロック入りに切り替わらず、デフロック解除状態を保持する。
【0052】
上記デフロック連繋切替手段S2を採用する場合には、操作レバー56の前後操作のうち前側に倒すと上記のように走行クラッチが入って、デフロック解除でかつ走行クラッチ入りを具現し、後方に倒すと走行クラッチが切れるため、耕耘装置9を跳ね上げる旋回動作においても安全に行える。
【0053】
図10図12は、前記操作レバー56Aによる操作により、デフロックを解除しながらクラッチ入りを保持する状態を設定できるもので、連繋切替手段Sとしてのクラッチ連繋切替手段S1やデフロック連繋切替手段S2の代替例を示すものである。
【0054】
ハンドル55の操縦者手元に設ける操作レバー56Aは、Hパターンのガイド溝に沿って移動する構成である。即ち、ハンドル55に一体的に支持アーム81を介してガイド溝82を形成したガイドパネル83を設け、このガイドパネル83には操作レバー56Aに連動する揺動軸84を左右横軸芯まわりに回動自在に設け、この揺動軸84の先端にコ型の中間部材85を介して前後方向軸芯回りに回動自在に操作レバー56Aの基部を支持している。このため、操作レバー56Aの前後操作に連れて揺動軸84が前後に揺動し、あわせて該操作レバー56Aは内方向き(図例では左側方)には中間部材85の接当部85aに当たる範囲で回動支軸85b回りに左右操作可能に設けている。揺動軸84の下方突出部には支点越えリンク機構86を構成し、操作レバー56Aの前・後側操作に伴って支点越えしてその位置を保持しうる構成としている。この揺動軸84には操作レバー56Aの前・後側操作で前記耕耘クラッチ機構48をクラッチ入り又は切りに連動する耕耘クラッチ用操作ワイヤ87のインナーワイヤ一端を連結している。又、操作レバー56Aの途中部にデフロック機構41をデフロック又はデフロック解除するデフロック用操作ワイヤ88のアウターワイヤ端を連結し、該デフロック用操作ワイヤ88のインナーワイヤ端は上記揺動軸84と一体的に設ける基板89に連結している。従って、操作レバー56Aを回動支軸85b回りに内方向き(図例では左側方)に回動すると、アウターワイヤ端を操作レバー56Aが連れて回動するため他方側において、デフロック機構41のデフロックアーム66はインナーワイヤ他端に引かれて作動するものである。
【0055】
従って、前記ガイドパネル83のガイド溝82は、平面視で図12に示すように、Hパターンの左側前方位置82aにおいて耕耘クラッチ入り・デフロック入り状態、右側後方位置82bにおいて耕耘クラッチ切り・デフロック解除状態、及び右側前方位置82cにおいて耕耘クラッチ入り・デフロック切り状態を単一の操作レバー56Aにて操作できる。通常は耕耘作業にあたってはガイド溝82a位置に、圃場での旋回走行にてはガイド溝82b位置に、夫々に操作レバー56Aを往復操作する。また、曲線状畦際に沿って蛇行しながら耕耘作業を行うなど作業中において差動走行が必要な場合には、操作レバー56Aをガイド溝82cにシフトしてデフロック解除状態で耕耘作業を行うことができる。このように、連繋切替手段Sを単一の操作レバー56Aに組み込んでこの操作レバー56Aの操作で上記の切替を行なうことができ、いちいち前記のようなピン部材76の抜き差しを行なう必要がなく切替操作が容易である。
【0056】
なお、図10図12における実施例では、Hパターンの左側後方位置のガイド溝82dを形成し、耕耘クラッチ切り・デフロック入り状態を構成できる。このため、圃場間の畦越えやトラックへの積み下ろしの際に直進走行を行なえて安全である。
【0057】
また、ガイドパネル83の下側に沿ってけん制プレート90を左右にスライド固定自在に設け、ガイド溝82のうち、ガイド溝82cおよびガイド溝82dのシフトをけん制できる構成としている(図12(B))。このように構成すると、一般的な往復耕耘作業走行と旋回走行とに必要なガイド溝82a,82bの2位置のみ操作可能で、操作を容易化できる上、誤操作をなくする。
【0058】
上記の実施例ではHパターンとしてガイド溝82a〜82dの4位置にシフトできる構成としたが、ガイド溝82a〜82cの3位置としてもよい。
【符号の説明】
【0059】
2 ミッションケース
6 走行装置
9 耕耘装置(作業装置)
35 デフ機構
41 デフロック機構
48 耕耘クラッチ機構(作業クラッチ機構)
48a 被動側係合爪
48b 駆動側係合爪
56 操作レバー
56A 操作レバー(連繋切替手段)
67 中間アーム
73 バネ
75 固定アーム部材
76 ピン部材
76A 螺子部材
C クラッチ連繋機構
D デフロック連繋機構
S 連繋切替手段
S1 クラッチ連繋切替手段(連繋切替手段)
S2 デフロック連繋切替手段(連繋切替手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12