(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態のディーゼルエンジン1の制御装置を示す概略構成図である。以下、必要に応じて、ディーゼルエンジンをエンジンと称する。
図2A及び
図2Bは、エンジン1の主要部及びターボ過給機3を取り出して示す概略構成図である。
図2Aはガス流動停滞域においてEGR弁12を開く前の状態を示し、
図2Bはガス流動停滞域においてEGR弁12を開いた後の状態を示す。
【0009】
図1及び
図2Aに示すように、ディーゼルエンジン1の吸気通路2には、ターボ過給機3の吸気コンプレッサ3bが設けられる。吸入空気は、吸気コンプレッサ3bによって過給され、インタークーラ4で冷却される。冷却された吸気は、スロットル弁5を通過した後、吸気コレクタ6を経て、各気筒のシリンダ41内へ流入する。本実施形態によるターボ過給機3は、
図2A,
図2Bにも示したように可変ノズル3cを備えているが、この可変ノズル3cは必ずしも必要ではない。
【0010】
燃料は、コモンレール式燃料噴射装置によりエンジン1に供給される。すなわち、燃料は、高圧燃料ポンプ7により高圧化されてコモンレール8に送られ、各気筒の燃料噴射弁9からシリンダ41内へ直接噴射される。シリンダ41内に流入した空気と噴射された燃料は、混合気となり、シリンダ41内で圧縮着火により燃焼する。排気は、シリンダ41から排気通路10へと流出する。
【0011】
排気通路10に流出した排気の一部は、EGRガスとして、EGR通路11を通じて吸気側に還流される。EGR通路11には、流量調整用のEGR弁12が設置される。吸気通路2は、
図2A,
図2Bに示すように、吸気コンプレッサ3b上流の吸気管2a、吸気コンプレッサ3bとインタークーラ4の入口を連通する吸気管2b、インタークーラ4の出口と吸気コレクタ6を連通する吸気管2c等から構成されている。EGR通路11は、スロットル弁5下流で吸気コレクタ6に近い吸気管2cから分岐している。排気の残りは、ターボ過給機3の排気タービン3aを通り、排気タービン3aを駆動する。
図2A,
図2Bにおいて「Fexh」はガスの流れを示している。
【0012】
EGR通路11にはEGRクーラ31が備えられる。EGRクーラ31はEGRガスを冷却水や冷却風を用いて冷却するものである。また、EGRクーラ31をバイパスするバイパス通路32の分岐部には、EGRガスの流路を切換える流路切換弁33が設けられる。流路切換弁33は、例えば非通電時にバイパス通路32を遮断してEGRガスをEGRクーラ31に流し、通電時にはEGRクーラ31側の通路を遮断してEGRガスをバイパス通路32に流す。これらバイパス通路32及び流路切換弁33を設けている理由は低温時のHC対策である。
【0013】
本実施形態のエンジン1は、4気筒エンジンを例示している。
図2A及び
図2Bに示すように、エンジン1において上から#1気筒、#2気筒、#3気筒、#4気筒とする。EGR通路11は、#4気筒の外側に#4気筒用シリンダ41に隣接して設けられている。
【0014】
図1に示すように、エンジンコントローラ21には、アクセルセンサ22からのアクセル開度(アクセルペダルの踏込量)ACC、クランク角センサ23からのエンジン回転速度Neの各信号が入力される。エンジンコントローラ21は、エンジン負荷(アクセル開度)及びエンジン回転速度Neに基づいて、メイン噴射の燃料噴射時期及び燃料噴射量Qdrvを算出し、これらに対応する開弁指令信号を燃料噴射弁9に出力する。また、エンジンコントローラ21は、目標EGR率と目標吸入空気量とが得られるようにEGR制御と過給圧制御を協調して実行する。なお、エンジンコントローラ21は中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成されている。
【0015】
排気通路10の排気タービン下流には、排気中のパティキュレートを捕集するフィルタ(Diesel Particulate Filter)13が配置される。フィルタ13のパティキュレート堆積量が所定値に達すると、エンジンコントローラ21はフィルタ13の再生処理を実行する。例えばメイン噴射直後の膨張行程あるいは排気行程でポスト噴射を行うことにより排気をパティキュレートの燃焼する温度まで上昇させてフィルタ13の再生処理を行う。このようにフィルタ13に堆積しているパティキュレートを燃焼除去することで、フィルタ13が再生される。ポスト噴射量及びポスト噴射時期は、目標となる再生温度が得られるようにエンジン運転条件(負荷及び回転速度)に応じて予め定められている。
【0016】
フィルタ13に堆積しているパティキュレートの全てが燃焼除去される完全再生を実行するには、再生処理時にフィルタ13の許容温度を超えない範囲で、少しでもパティキュレートの燃焼温度を高める必要がある。本実施形態では、フィルタ13の上流に貴金属からなる酸化触媒14が配置されており、酸化触媒14によりポスト噴射によって流入する排気成分(HC、CO)を燃焼させて排気温度を高めることで、パティキュレートの燃焼が促進される。なお、フィルタ13を構成する担体に酸化触媒をコーティングしてもよい。この場合には、パティキュレートが燃焼する際の酸化反応が促進され、これによりフィルタ13のベッド温度を上昇させることでき、パティキュレートの燃焼をより促進させることができる。
【0017】
なお、触媒は酸化触媒14に限られない。酸化機能を備える触媒であれば、酸化触媒に代えることができる。
図1は酸化触媒14として三元触媒(TWC)を採用する場合である。
【0018】
酸化触媒14とフィルタ13との間には、NOxトラップ触媒(LNT)15が設けられる。NOxトラップ触媒15は、酸素雰囲気で排気中のNOx(窒素酸化物)を吸着し、還元雰囲気ではトラップしていたNOxを脱離して排気中のHCを還元剤として用いて還元・浄化する。酸素雰囲気はシリンダ41から出た排出ガスの空気過剰率が1.0(理論空燃比相当の値)より大きいときに得られる。一方、還元雰囲気はシリンダ41から出た排出ガスの空気過剰率が1.0以下のときに得られる。
【0019】
このため、NOxトラップ触媒15のNOx堆積量が所定値に到達したときには、NOxトラップ触媒15を流れる排気を酸素雰囲気から還元雰囲気へと切換えるため、リッチスパイク処理を行う必要がある。リッチスパイク処理は、メイン噴射直後の膨張行程あるいは排気行程でポスト噴射を行って、排気通路10に排出される未燃のHC量を増やし、HCを還元剤としてNOxトラップ触媒15に供給する処理である。
【0020】
ディーゼルエンジン1では、通常運転時に1.0(理論空燃比相当の値)よりも大きな値の空気過剰率(リーン側空燃比)で運転するので、ポスト噴射の実行だけでは排気の空気過剰率を1.0へと切換えることができない。このため、通常運転時に全開位置にあるスロットル弁5をリッチスパイク処理時に閉じてやることでシリンダ41に流入する吸入空気量(シリンダ吸入空気量)Qacを減らし、これによって、シリンダ41から出た排出ガスの空気過剰率を1.0以下へと切換える。つまり、メイン燃料噴射量とポスト噴射量の合計の燃料噴射量Qfuelと、シリンダ吸入空気量Qacとで定まる空気過剰率が1.0以下となるように、ポスト噴射量とスロットル弁開度(吸入空気量)とを定めるのである。
【0021】
また、エンジンコントローラ21は、所定の時間毎にNOxトラップ触媒15にトラップされる所定時間当たりのNOx量を算出し、所定時間当たりのNOx量を加算してNOxトラップ触媒15に堆積するNOx堆積量を算出する。このNOx堆積量と、予め定めてある閾値とを比較し、NOx堆積量が閾値以上となったときに、NOxトラップ触媒15を再生するためのポスト噴射(リッチスパイク処理)が実行される。
【0022】
このようにして、通常運転時にNOx堆積量が閾値以上となったとき、スロットル弁開度を全開状態から所定のスロットル弁開度へと絞り、これに併せてポスト噴射を開始する。そして、一定期間経過後にポスト噴射を終了し、スロットル弁5は全開位置へと戻される。
【0023】
さて、エンジンコントローラ21では、エンジン運転条件に応じた目標エンジントルク及び目標空気過剰率が定められているが、車両発進時や当該車両の登坂時等においては目標駆動トルクが得られないという問題がある。なお、エンジンコントローラ21は、アクセル開度とエンジン回転速度から目標駆動トルクを定めており、この目標駆動トルクに基づいて目標エンジントルクを算出している。
【0024】
ここで、車両発進時や登坂時の運転条件は、いずれも低回転速度高負荷の領域(非EGR領域)にある。
図7に示したように、運転領域はEGR領域と非EGR領域とに分割されている。
図7において「Cnd1」とある部分が車両の発進時や登坂時の運転条件を表している。以下では、Cnd1の領域を、車両発進時と表現する。
【0025】
車両発進時にドライバの望む加速感が得られないのであるから、エンジントルクを増加させるため、エンジン1に供給する燃料量(メイン燃料噴射量Qdrv)を増やすことが考えられる。この燃料増量によってシリンダ41から出る燃焼ガスの温度、圧力が上昇し、排気タービン3aに流入する排気エネルギが増す。この増した排気エネルギによって排気タービン3aの回転速度が増し、同軸の吸気コンプレッサ3bの回転速度が増す。すると、過給圧が高くなり、シリンダ41内により多い新気を押し込むことが可能となるため、さらにシリンダ41に供給する燃料を増やすことができる。このように、ターボ過給機3が良好に働くことによってエンジントルクが増加するのであるが、エンジントルクの増加にも限界がある。すなわち、燃料増量によって空気と燃料の混合であるシリンダ41内ガスの空気過剰率λが大きい値から小さくなって1.0に近い値(例えば1.1や1.05)になると、これ以上燃料増量してもエンジントルクが上がらない状態が出現する。
【0026】
これは、ターボ過給機3に原因がある。すなわち、シリンダ41内のガスの空気過剰率λが1.0に近付くと、シリンダ41内のガスの酸素が不足し、燃料が不完全燃焼となって、燃焼ガスの温度、圧力が上昇しなくなる。燃焼ガスの温度、圧力が上昇しないと、排気タービン3aに流入する排気エネルギが増加しなくなり、ガス流動が停滞し、排気タービン3aの回転速度が一定値へと落ち着いてしまう。タービン回転速度が一定値に落ち着くと、過給圧が上昇せず、シリンダ41内に押し込まれる吸気も増えないため、燃料を増量してもエンジントルクの増加に結びつかない。上述の通り、ターボ過給機3を備えるエンジン1では、車両発進時に目標駆動トルクが得られず、望みの加速感を得られないことがある。なお、シリンダ41内のガスの空気過剰率を1.0より大きい値から1.0に近づけると、酸素の不足で煤(HC)が発生するが、1.1や1.05の空気過剰率では煤は問題ないレベルであることが確認されている。
【0027】
そこで、本実施形態では、車両発進時のように燃料を増量してもターボ過給機3に起因してエンジントルクが上がらない状態にあるか否かをエンジン1の運転条件に基づいて判断する。つまり、エンジン1の運転条件がガス流動停滞域にある条件を新たに定める。そして、このガス流動停滞域にある条件が成立するとき、EGR弁12を開きEGR通路11を介して、スロットル弁5下流の吸気管2cの新気を排気タービン3a上流の排気通路10に流入させる。ここで、「新気」とは、EGRガスを含まない吸入空気をいうものとする。
【0028】
上記のガス流動停滞域にある条件は、次の〈1〉〜〈3〉の条件を満たすことである。
【0029】
〈1〉酸化触媒14の上流における排気に含まれる酸素の濃度が5%未満であること。
【0030】
〈2〉インタークーラ4の下流の吸気圧(過給圧)が排気タービン3aの上流の排気圧よりも大きいこと。
【0031】
〈3〉排気タービン3aの上流の排気温度が700℃以上であること。
【0032】
図3は、車両発進時に空気過剰率、エンジントルク、過給圧、排気温度、EGR弁開度、メイン燃料噴射量Qdrvがどのように変化するのかを検証したときのタイミングチャートである。
【0033】
現状のエンジンでは車両発進時が低回転速度高負荷域(非EGR領域)に含まれているため、エンジンコントローラは車両発進時にEGR弁を全閉状態に維持することとなる。この場合、車両発進時に供給するメイン燃料噴射量Qdrvは一定としている。また、車両発進時のような低回転速度高負荷の条件では実際の過給圧が排気タービン上流の排気圧より高くなっている。一方、本実施形態のエンジン1では、エンジンコントローラ21は、車両発進時を含んでいる非EGR領域において、EGR弁12を開き、吸気コンプレッサ3b下流の新気を排気通路10に供給する。
【0034】
なお、現状及び本実施形態の各エンジンとも、車両発進時を含んでいる非EGR領域で流路切換弁
33がEGRクーラ31側の通路を遮断しているものとする。このため、本実施形態で車両発進時を含んでいる非EGR領域でEGR弁12を開いたとき、スロットル弁5下流の吸気管2cの新気は、EGR通路11,バイパス通路32を経て排気マニホールド10aに流入することとなる(
図2B参照)。ただし、EGRクーラ31、バイパス通路32、流路切換弁33を備えないエンジンにも本発明を適用することができる。以下では、流路切換弁33が常時全閉状態にあるとして述べる。
【0035】
排気温度は、#4気筒の排気ポート出口温度と、排気タービン3aの入口温度の2つを温度センサにより検出している。ここで、排気通路10は、
図2A,
図2Bにも示したように排気マニホールド10a、排気マニホールド10aの集合部と排気タービン3aの入口を連通する排気管10b、排気タービン3aの出口と酸化触媒14の入口を連通する排気管10cなどから構成されている。
【0036】
#4気筒の排気ポート出口温度を検出する温度センサは、
図2A,
図2Bに示すAの位置に取り付けられている。また、排気タービン3aの入口温度を検出する温度センサは、
図2A,
図2Bに示す排気管10bのBの位置に取り付けられている。
【0037】
#1〜#3気筒の排気ポート出口温度ではなく、#4気筒の排気ポート出口温度を検出するのは、次の理由からである。すなわち、インタークーラ4下流の吸気管2cの新気が排気マニホールド10aの集合部に流入するポイントに最も近く、このポイントの温度によってインタークーラ4下流の吸気管2cの新気が排気マニホールド10aに流入したか否かを確認するためである。排気タービン3aの入口温度を採用するのは、排気マニホールド10aに出た排出ガス中の未燃燃料に後燃えが生じているか否かを確認するためである。
【0038】
まず、現状のエンジンについて説明する。現状のエンジンでは、
図3の第3段目破線に示すように、車両発進時に実過給圧が目標過給圧に到達していない。実過給圧の不足のため、シリンダ41内のガスの実空気過剰率は1.0に近い1.05になっており、目標空気過剰率の1.2に到達していない(
図3の最上段破線参照)。このため、車両発進時の実際のエンジントルクは目標エンジントルクに到達していない(
図3第2段目破線参照)。
【0039】
現状のエンジンでは、1.0に近いシリンダ41内のガスの実空気過剰率、及び不足する実過給圧の影響を受けて、車両発進時に#4気筒の排気ポート出口温度は670℃、排気タービン3a入口温度は700℃であり、その温度差は30℃であった。この程度の温度差は微々たるものであるが、排気マニホールド10aに出た排出ガス中の未燃燃料に後燃えがわずかに生じていることを表している。
【0040】
ターボ過給機3を備えるエンジン1では、アクセルペダルを一定量だけ踏み込んで車両を発進させたとき、車両発進時の運転条件の変化により、エアクリーナ17から酸化触媒14までのガス流動が変化している間は、排気タービン3aの回転速度が上昇する。アクセルペダルを一定量だけ踏み込んだ状態が継続すると、やがてエアクリーナ17から酸化触媒14までのガス流動が停滞するところで、排気タービン3aの回転速度が一定値に落ち着く。つまり、ターボ過給機3の動きが安定状態となる。
図3において、t1以前の状態が、ガス流動が停滞している状態を表している。
【0041】
このようにガス流動が停滞している状態では、
図3第3段目に破線で示したように、実過給圧が目標過給圧より低いところで一定値に落ち着き、このときの実過給圧に応じて、
図3第2段目に破線で示したように実エンジントルクが定まる。この実エンジントルクでは、目標エンジントルクが得られていない。
【0042】
一方、本実施形態ではガス流動が停滞しているt1のタイミングで、EGR弁12の開度が所定値TVO1まで開かれ、
図2Bに示したようにインタークーラ4下流の新気が排気マニホールド10aに流入する。排気マニホールド10aへの新気の流入によって、本実施形態ではシリンダ41内のガスの実空気過剰率と、排気マニホールド10a内の燃焼ガスの実空気過剰率が相違してくる。すなわち、本実施形態では、排気マニホールド10a内の排出ガスの実空気過剰率が
図3第1段目に一点鎖線で示したようにt1より大きくなり、t3のタイミングで目標空気過剰率の1.2と一致している。また、
図3第3段目に一点鎖線で示したように、実過給圧がt1より上昇し、t3のタイミングで目標過給圧と一致している。また、
図3第2段目に一点鎖線で示したように、実過給圧の上昇に合わせて実エンジントルクがt1より増大し、t3のタイミングで目標エンジントルクに一致している。上記の通り、現状のエンジンでは車両発進時に望みの加速感が得られないが、本実施形態のエンジン1では望みの加速感が得られる。
【0043】
ここで、車両発進時を含んでいる非EGR領域でEGR弁12を開くことによって過給圧が上昇した理由について説明する。EGR弁12を開くことで、#4気筒の排気ポート出口温度は670℃から580℃へと低下し、排気タービン3aの入口温度は700℃から670℃へと低下している。このように、両者の温度差がEGR弁12を開く前の30℃から90℃へと拡大している。#4気筒の排気ポート出口温度が670℃から580℃へと低下した理由は、インタークーラ4下流の吸気管2cの新気がEGR通路11を介して#4気筒の排気ポート出口に最も近い位置の排気マニホールド10aに流入したためである。排気マニホールド10aへの新気の流入によって、シリンダ41内のガスの実空気過剰率が1.05であっても、排気マニホールド10a内の燃焼ガスの実空気過剰率が大きくなり目標空気過剰率の1.2へと到達している。そして、排気が#4気筒の排気ポート出口から排気タービン3aまでを流れる間に、排気温度が90℃も上昇している。この理由は、#4気筒の排気ポートの出口近くの排気マニホールド10aに流入した新気よって、シリンダ41から排気マニホールド10aへと出た排出ガス中の未燃燃料が後燃え(再燃焼)し、これにより排気温度が上昇したためである。
【0044】
排気マニホールド10aへの新気の導入による後燃えによって排気タービン3a上流の排気の温度が上昇するときには、排気タービン3a上流の排気の圧力も上昇する。そして、温度及び圧力の上昇すると、後燃えした新気の体積膨張も重なり排気エネルギが増す。この排気のエネルギは、温度及び圧力が上昇する前の排気より増加する。排気タービン3a上流における排気エネルギの増加によって排気タービン3aの回転速度が増え、排気タービン3aと同軸の吸気コンプレッサ3bの回転速度が増加することで、実過給圧が上昇する。つまり、排気マニホールド10aへの新気の流入によって、ガス流動が停滞している状態が一時的に解けてガス流動が再び活発化し、これによってターボ過給機3が働いて実過給圧が上昇するのである。
【0045】
次に、非EGR領域ではエンジンコントローラ21(EGR弁制御機能)がもともとEGR弁12を全閉状態としている。一方、本実施形態では、エンジンコントローラ21が非EGR領域でEGR弁12を開くこととなる。従って、EGR弁制御機能との干渉を避けるため、本実施形態ではエンジンコントローラ21がEGR弁制御機能に優先してEGR弁12を開かせるよう制御する。
【0046】
図4は、
図3に示したと同じ車両発進時の条件で、EGR弁開度を0%から100%まで変化させた場合において、実過給圧及び実エンジントルクがどのように変化するのかを検証したものである。
図4を見れば、EGR弁開度を増加させるほど実過給圧が上昇し、この実過給圧の上昇に応じて実エンジントルクは上昇することがわかる。
【0047】
図5のフローチャートを参照し、エンジンコントローラ21で実行される上述の制御を説明する。
図5は、EGR弁12を開閉制御するためのフローチャートである。この制御は、一定時間毎(例えば10ms毎)に実行される。
【0048】
ステップ1では、エンジンコントローラ21は、メイン燃料噴射量Qdrv(エンジン負荷相当量)、エンジン回転速度Ne、過給圧Pin、排気タービン3a上流の排気圧Pexh、排気タービン3a上流の排気管10bのO
2濃度、排気タービン3a上流の排気温度Texhを読み込む。ここで、メイン燃料噴射量Qdrvは、アクセル開度とエンジン回転速度Neに基づいて算出される。例えば、
図6に示したように、アクセル開度とエンジン回転速度Neをパラメータとするメイン燃料噴射量のマップを予め作成しておき、このマップを検索することによりメイン燃料噴射量Qdrvを算出する。エンジン回転速度Neは、クランク角センサ23からの信号に基づいて算出される。
【0049】
インタークーラ4下流の吸気圧である過給圧Pinは、インタークーラ4下流の吸気コレクタ6に設けた吸気圧センサ51により検出される。吸気圧センサ51を設ける位置は、吸気コレクタ6に限られるものでなく、吸気コンプレッサ3bの下流であればかまわない。排気タービン3a上流の排気圧Pexhは、排気マニホールド10aに設けた排気圧センサ52により検出される。排気圧センサ52を設ける位置は、排気マニホールド10aに限られるものでなく、排気タービン3aの上流であればかまわない。排気タービン3a上流の排気通路10のO
2濃度は、排気タービン3a上流の排気管10bに設けたO
2濃度センサ53により検出される。O
2濃度センサ53を設ける位置は、
排気マニホールド10aの出口から酸化触媒14の入口までの間であればどこでもかまわない。排気タービン3a上流の排気温度Texhは、排気タービン3a上流の排気管10bに設けた排気温度センサ54により検出される。排気温度センサ54を設ける位置は、排気管10bに限られるものでなく、排気タービン3aの上流であればかまわない。
【0050】
過給圧Pin、排気圧Pexh、排気中のO
2濃度、排気温度Texhをセンサにより検出しているが、これらの値をエンジン運転条件に関する各種パラメータを用いて推定してもよい。
【0051】
ステップ2では、エンジンコントローラ21は、トルク増大許可フラグをみる。トルク増大許可フラグは、エンジン始動時にはゼロに初期設定されている。
【0052】
トルク増大許可フラグが0の場合には、ステップ3において、エンジンコントローラ21は、QdrvとNeから定まるエンジン運転条件が非EGR領域にあるか否かを判定する。
【0053】
EGR領域は
図7に示したように、エンジン回転速度Neとメイン燃料噴射量Qdrvをパラメータとするマップ上に予め定められている。EGR領域では、排気の一部を吸気コレクタ6に導入することで、シリンダ41内のガスの燃焼速度を相対的に緩慢にし、これによって燃焼速度が相対的に大きいときに発生するNOxを抑制している。ここで、排気の一部を吸気コレクタ6に導入するためには、排気タービン3a上流の排気圧が過給圧より高いことが必要である。つまり、EGR領域では、排気タービン3a上流の排気圧が過給圧より高いのであるから、インタークーラ4下流の吸気管2cの新気を排気マニホールド10aに流入させることができない。逆に言うと、非EGR領域であれば、排気タービン3a上流の排気圧が過給圧より低くなり、インタークーラ4下流の吸気管2cの新気を排気マニホールド10aに流入させることが可能となる。車両発進時のような非EGR領域では、エンジンコントローラ21がEGR弁12を開くことで、インタークーラ4下流の吸気管2cの新気の一部を排気マニホールド10aに流入させる。そこで、非EGR領域であるか否かによって、車両発進時であるか否かを判定する必要がある。エンジンコントローラ21は、エンジン運転条件がEGR領域にあると判断した場合に、ステップ9でEGR弁12を全開に制御する。
【0054】
エンジン運転条件が非EGR領域にあるときには、エンジンコントローラ21はステップ4の処理を実行する。ステップ4〜6は、ガス流動停滞域にあるか否かを判定する処理である。ステップ4〜6では、エンジンコントローラ21は、次の〈1〉〜〈3〉の条件を満たすか否かを見て、全ての条件を満たすときにガス流動停滞域にあると判断する。そして、運転条件がガス流動停滞域である場合には、エンジンコントローラ21は、エンジントルクの増大を許可するため、ステップ7でトルク増大許可フラグ=1とし,ステップ8でEGR弁12を全開に制御する。
【0055】
〈1〉非EGR領域での酸化触媒14上流の排気中のO
2濃度が5%未満であること。
【0056】
〈2〉過給圧Pinが排気タービン3a上流の排気圧Pexhより高いこと。
【0057】
〈3〉排気タービン3a上流の排気温度Texhが700℃以上であること。
【0058】
上記〈1〉を条件とするのは次の理由からである。すなわち、非EGR領域での酸化触媒14上流の排気中のO
2濃度が5%未満のO
2濃度になると、それ以上燃料増量しても、シリンダ41内ガス中の酸素不足でシリンダ41内のガス中の燃料の燃焼が不良となり、排気タービン3aに流入するガス流動が停滞してタービン回転速度が一定となる。タービン回転速度が一定となれば、排気タービン3aと同軸の吸気コンプレッサ3bがそれ以上吸気を圧縮することができず実過給圧も一定値へと落ち着く。実過給圧が一定値に落ち着くと、実エンジントルクがそれ以上増加しなくなる。5%はそれ以上燃料増量しても実エンジントルクがそれ以上増加しないO
2濃度範囲のうちの上限値である。逆にいうと、非EGR領域での酸化触媒14上流の排気中のO
2濃度が5%以上のO
2濃度範囲では、シリンダ41内のガス中の酸素が不足することがない。シリンダ41内のガス中の酸素が不足することがない状態において燃料増量すると、シリンダ41内のガス中の燃料が良好に燃焼してエンジントルクが増加するのであるから、わざわざEGR弁12を開いて新気を流入させる必要がないのである。
【0059】
上記〈1〉の条件では、非EGR領域での酸化触媒14上流の排気中のO
2濃度に基づいて、燃料増量してもエンジントルクがそれ以上増加しないか否かを判定しているが、この場合に限られない。非EGR領域におけるシリンダ41内のガスの空気過剰率に基づいて、燃料増量してもエンジントルクがそれ以上増加しないか否かを判定してもかまわない。例えば、非EGR領域での酸化触媒14上流の排気中のO
2濃度5%は、非EGR領域におけるシリンダ41内のガスの空気過剰率が1.05に相当する値である。そこで、1.05をしきい値として定め、非EGR領域におけるシリンダ41内のガスの実空気過剰率としきい値の1.05を比較させる。そして、非EGR領域におけるシリンダ41内のガスの実空気過剰率が1.05未満のとき、燃料増量してもエンジントルクがそれ以上増加しないと判断させることができる。ここで、非EGR領域におけるシリンダ41のガスの実空気過剰率λrealは、次式により算出される。
【0060】
λreal=Qa/Qdrv/14.5 ・・・(1)
Qa: エアフローメータ55により検出される吸入空気量
Qdrv:メイン燃料噴射量、
【0061】
ディーゼルエンジン1に用いられる燃料はC(炭素)とH(水素)の数が様々な値を取り得る炭化水素の集合体であるので、上記(1)式により算出される実空気過剰率λrealが同じ1.0であっても、使用燃料によりシリンダ41内のガス中のO
2濃度は相違する。算出した実空気過剰率が1.0のとき、実験に用いた燃料で実際にO
2濃度を検出してみると2%程度あった。このように、市販の燃料では、上記(1)式により算出される実空気過剰率と、O
2濃度センサにより検出される実際のO
2濃度とが必ずしも正確に対応するものでなく、ある許容範囲を持ってばらつく。すなわち、上記5%のO
2濃度は代表値として挙げたにすぎず、実際には0%から5%のあいだの適当な値に設定される。また、上記しきい値としての1.05の空気過剰率も代表値として挙げたにすぎず、実際には1.0から1.1までの間の適当な値がしきい値として選択される。本実施形態では、実際に検出されるO
2濃度に着目し、検出したO
2濃度に基づいて、燃料増量してもエンジントルクがそれ以上増加しないガス流動停滞域にあるか否かを判定している。
【0062】
上記〈2〉を条件とするのは次の理由からである。すなわち、過給圧Pinが排気タービン3a上流の排気圧Pexh以下であると、インタークーラ4下流の吸気管2cの新気がEGR通路11、バイパス通路32を介して排気マニホールド10aに流れ込むことができない。上記〈2〉の条件は、インタークーラ4下流の吸気管2cの新気が排気マニホールド10aに流れ込む条件を定めるものである。
【0063】
上記〈3〉を条件とするのは次の理由からである。すなわち、シリンダ41より排気マニホールド10aに出た排出ガス中の未燃燃料が、排気マニホールド10aに導入される新気を用いて後燃えするには、後燃えするガスの雰囲気温度が相対的に高いほうが好都合である。後燃えが良好に生じ得るのは700℃以上の温度域のときである。上記〈3〉の条件は、シリンダ41より排気マニホールド10aに出た排出ガス中の未燃燃料の後燃えが確実に生じる温度条件である。なお、後燃えするガスの雰囲気温度が相対的に低く700℃未満でも後燃えは生じ得るので、ステップ6を省略することができる。
【0064】
エンジンコントローラ21は、上記〈1〉〜〈3〉の条件を全て満足したときエンジン運転条件がガス流動停滞域にあると判断し、ステップ8の処理を実行する。
【0065】
ステップ8は、エンジンコントローラ21が優先的にEGR弁12の制御を実行する処理である。この処理の実行時にはエンジン運転条件は非EGR領域にあるから、EGR弁制御機能によれば、EGR弁12は全閉制御されるところであるが、ステップ8ではEGR弁12は全開制御される。ここで、「優先的に」とは、EGR弁制御機能によるEGR弁12の全閉制御を行わせることなく、EGR弁12の全開制御を行わせることを意味する。EGR弁12を開くと、
図2Bに示したようにインタークーラ4下流の新気がEGR通路11,バイパス通路32を介し排気マニホールド10aに供給される。インタークーラ4下流の吸気管2cの新気がシリンダ41を介さずに排気マニホールド10aに供給されるのであるから、シリンダ41から排気マニホールド10aに出た排出ガス中の未燃燃料は新気を用いて後燃えする。これによって、新気を排気マニホールド10aに導入しない場合よりも、排気タービン4aに流入する排気の温度及び圧力を上昇させることができる。排気タービン
3aに流入する排気の温度及び圧力が上昇すると、後燃えした新気の体積膨張も重なり排気タービン3aの仕事量が増すため、排気タービン3aと同軸の吸気コンプレッサ3bの回転速度が上昇し、その分だけ実過給圧が上昇する。実過給圧が上昇すると、シリンダ41内に流入する新気量が増えるため、シリンダ41内のガス中の燃料の燃焼状態がよくなり、実エンジントルクが増大する。
【0066】
ステップ8でEGR弁12を開くときのEGR弁開度は、予め設定された適切な開度に調整される。エンジンコントローラ21が実行する図示しない制御フローでは、エンジン運転条件に応じて目標過給圧が定められる。そして、吸気圧センサ51により検出される車両発進時の実過給圧Pinが目標過給圧と一致するように可変ノズル3cの開度(開口割合)がフィードバック制御される。しかしながら、車両発進時のようなガス流動停滞域では目標過給圧が得られなくなる(
図3第3段目参照)。そこで、EGR弁12を開くことによって排出ガス中の未燃燃料の再燃焼が行われ、ガス流動の停滞が一時的に解かれて実過給圧が増大したとき、その実過給圧が目標過給圧に到達し得るように、EGR弁12を開いたときのEGR弁開度は設定される。
【0067】
あるいは、シリンダ41内のガスの実空気過剰率が目標空気過剰率と一致するように新気量や燃料量をフィードバック制御するものもある。しかしながら、車両発進時のようなガス流動停滞域では、目標空気過剰率が得られなくなる(
図3第1段目参照)。そこで、EGR弁12を開くと、排気マニホールド10a内排出ガスの実空気過剰率がシリンダ41内のガスの実空気過剰率より大きくなる側に変化し、排出ガス中の未燃燃料の再燃焼が行われ、ガス流動の停滞が一時的に解かれて実際の過給圧が増大する。このとき、その変化した排気マニホールド10a内の排出ガスの実空気過剰率は目標空気過剰率と一致するようにEGR弁開度は設定される。
【0068】
上記〈1〉〜〈3〉のいずれかの条件を満たさない場合には、エンジンコントローラ21は、エンジン運転条件がガス流動停滞域にないと判断し、ステップ10においてEGR弁12を全閉状態に制御する。
【0069】
ところで、トルク増大許可フラグ=1となっているときには、エンジンコントローラ21は、ステップ2の実行後にステップ11の処理を実行する。ステップ11〜14は、エンジントルクの増大を許可した後に、トルク増大の許可を解除する条件を定める処理である。ステップ11〜14では、エンジンコントローラ21は、以下の〈11〉〜〈14〉の条件を満たすか否かを判定し、いずれかの条件を満たす場合にトルク増大の許可を解除する条件であると判断する。解除条件成立時には、エンジンコントローラ21は、ステップ15でトルク増大許可フラグ=0に戻し、ステップ16でEGR弁12を全閉状態に制御する。
【0071】
〈12〉非EGR領域での酸化触媒14上流の排気に含まれる酸素濃度が5%以上であること。
【0072】
〈13〉過給圧Pinが排気タービン3a上流の排気圧Pexh以下であること。
【0073】
〈14〉排気タービン3a上流の排気温度Texhが700℃未満であること。
【0074】
上記〈11〉〜〈14〉のいずれの条件も満足しないときには、エンジンコントローラ21は、トルク増大の許可を解除する条件になっていないと判断し、ステップ7,8の処理を実行する。なお、ステップ6を削除してもよいことを前述したが、ステップ6を削除するときにはステップ14も併せて削除することができる。
【0075】
本実施形態では、エンジントルクの増大を許可した後にトルク増大の許可を解除する条件を満足したときに、EGR弁12を全閉としているが、これに限られるものでない。例えば、エンジントルクの増大を許可したタイミングから予め定めた一定時間が経過した場合に、EGR弁12を全閉状態に制御してもよい。一定時間は、車両発進時にドライバが加速感を望む時間として設定される。あるいは、トルク増大の許可を解除する条件であることを満足するか、エンジントルクの増大を許可したタイミングから一定時間が経過したかのいずれかが成立した場合に、EGR弁12を全閉状態に制御してもよい。
【0076】
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
【0077】
本実施形態のエンジン1は、ターボ過給機3と、EGR通路11及びEGR弁12からなる新気・2次空気供給装置と、エンジンコントローラ21と、を備える。ターボ過給機3は、吸気コンプレッサ3bと排気タービン3aを同軸で結合し、排気タービン3aに流入する排気のエネルギで吸気コンプレッサ3bを駆動して吸気コンプレッサ3bに流入する吸気を加圧する。新気・2次空気供給装置11,12は、排気マニホールド10aに新気を供給可能に構成されている。エンジンコントローラ21は、エンジン運転条件がガス流動停滞域にあるか否かを判定し、エンジン運転条件がガス流動停滞域にあるときに新気・2次空気供給装置11,12を作動させ、排気マニホールド10aに新気を供給する。
【0078】
本実施形態によれば、エンジン1の運転条件がガス流動停滞域にあるときに、排気マニホールド10aに新気を供給することで、実過給圧が新気を供給する前より上昇する。実過給圧が上昇すると、その上昇分だけ実エンジントルクを増大させることができる。これによって車両発進時などのガス流動停滞域であっても、望みの加速感を得ることができる。
【0079】
本実施形態では、新気・2次空気供給装置11,12はEGR制御装置の一部を構成する。EGR制御装置は、EGR通路11と、常閉のEGR弁12と、エンジンコントローラ21と、を備えている。EGR通路11は排気の一部を吸気通路2に還流させる。EGR弁12はEGR通路11を開閉する。エンジンコントローラ21は、エンジン運転条件がEGR領域と、ガス流動停滞域が含まれる非EGR領域とのいずれにあるかを判定する。エンジンコントローラ21は、エンジン運転条件がEGR領域にある場合にEGR弁12を開き、エンジン運転条件が非EGR領域にある場合にEGR弁12を閉じる。また、エンジンコントローラ21は、エンジン運転条件がガス流動停滞域にある場合にEGR弁12を開き、インタークーラ4下流の新気を排気マニホールド10aに供給する。この場合、エンジンコントローラ21は、EGR弁制御機能によるEGR弁12の全閉制御よりも、このエンジン運転条件がガス流動停滞域にある場合のEGR弁12の全開制御を優先させる。
【0080】
本実施形態によれば、EGR制御装置11,12,21を利用して新気を排気マニホールド10aに供給するので、EGR制御装置11,12,21がエンジン1に既設であれば、コストアップの上昇を回避することができる。
【0081】
本実施形態のエンジン1は、O
2濃度センサ53と、吸気コンプレッサ3b下流の吸気圧Pinと排気タービン3a上流の排気圧Pexhとを比較するエンジンコントローラ21を備えている。エンジンコントローラ21は、排気中のO
2濃度が少なくともゼロであり、かつ吸気コンプレッサ3b下流の吸気圧Pinが排気タービン3a上流の排気圧Pexhより高い場合に、エンジン運転条件がガス流動停滞域にあると判定する。または、エンジンコントローラ21は、シリンダ内のガスの空気過剰率が少なくとも1.0であり、かつ吸気コンプレッサ3b下流の吸気圧が排気タービン3a上流の排気圧より高い場合に、エンジン運転条件がガス流動停滞域にあると判定する。これによって、エンジン運転条件がガス流動停滞域にあるか否かをエンジン運転条件(排気中のO
2濃度、シリンダ内ガスの空気過剰率、吸気圧Pin、排気圧Pexh)に基づいて精度良く判定することができる。
【0082】
本実施形態では、エンジンコントローラ21が、排気タービン3a上流の排気温度が排出ガス中の未燃燃料の後燃えが確実に生じる温度である700℃より高い場合に、エンジン運転条件がガス流動停滞域にあると判定する。これによって、シリンダ41より排気マニホールド10aに出た排出ガス中の未燃燃料の後燃えを確実に生じさせることができる。
【0083】
本実施形態では、ガス流動停滞域に車両発進時が含まれる。これによって、車両発進時に望みの加速感を得ることができる。
【0084】
本実施形態では、ターボ過給機3が可変ノズル3cを有している。また、エンジンコントローラ21は、エンジン運転条件に応じた目標過給圧を設定し、実過給圧が目標過給圧と一致するように可変ノズル3cの開度をフィードバック制御する。そして、エンジンコントローラ21は、EGR弁12を開いたとき、実過給圧が目標過給圧と一致するようにEGR弁12を開いたときのEGR弁開度を設定している。これによって、車両発進時のような低回転速度高負荷域であっても望みの過給圧(目標過給圧)を得ることができる。
【0085】
(第2実施形態)
図8A,
図8Bは、第2実施形態のエンジン1の主要部及びターボ過給機3を取り出して示す概略構成図である。
図8Aはターボ過給機3の状態がガス流動停滞域にあるときにEGR弁12を開く前の状態を示し、
図8Bはターボ過給機3の状態がガス流動停滞域にあるときにEGR弁12を開いた後の状態を示している。第1実施形態の
図2A,
図2Bと同一部分には同一の符号を付している。
【0086】
第1実施形態では、エンジンコントローラ21は、上記〈1〉〜〈3〉の条件を全て満たすか否かによって、エンジン運転条件がガス流動停滞域にあるか否かを判定した。第2実施形態では、エンジンコントローラ21は、排気タービン3aの作動点がタービン性能曲線図(排気タービン性能曲線特性)上に予め設けてあるガス流動停滞域にあるか否かにより、ターボ過給機3の状態がガス流動停滞域にあるか否かを判定する。さらに述べると、第1実施形態はエンジン運転条件がガス流動停滞域にあるか否かを判定するものであったのに対し、第2実施形態はターボ過給機3の状態がガス流動停滞域にあるか否かを判定するものである。
【0087】
排気タービン3aの作動点とは、
図10に示したタービン性能曲線図において膨張比及びガス流量から定まる排気タービン3aの作動点のことである。排気タービン3aの作動点を知るには、排気タービン3aの膨張比及び排気タービン3aを流れるガス流量Qexhが必要となる。排気タービン3aの膨張比は、排気タービン3a入口圧Ptinと排気タービン3a出口圧Ptoutの比、つまり次式により算出される。
【0088】
膨張比=Ptin/Ptout ・・・(2)
【0089】
ここで、排気タービン3a入口圧Ptinは、
図8A,
図8Bに示したように排気マニホールド10aに設けた
排気圧センサ52により検出される。排気タービン3a出口圧Ptoutは、
図8A,
図8Bに示したように排気管10cに設けた出口圧センサ61により検出される。排気タービン3aを流れるガス流量Qexhは、
図8A,
図8Bに示したように排気管10bに設けたガス流量センサ62により検出される。これらセンサ52,61,62により検出される排気タービン3a入口圧Ptin、排気タービン3a出口圧Ptout、ガス流量Qexhはエンジンコントローラ21に入力している。
【0090】
図9を参照して、エンジンコントローラ21で実行される制御について説明する。
図9はEGR弁12を開閉制御するためのフローチャートである。この制御は、一定時間毎(例えば10ms毎)に実行される。第1実施形態の
図5のフローチャートと同一処理には同一の符号を付している。
【0091】
第1実施形態の
図5のフローチャートと相違する処理は、ステップ21〜25の処理である。第1実施形態との関係では、第1実施形態の
図5のステップ4〜6に第2実施形態の
図9のステップ22,23が置き換わる。また、第1実施形態の
図5のステップ12〜14に第2実施形態の
図9のステップ24,25が置き換わる。
【0092】
図9に示すように、ステップ21ではエンジンコントローラ21は、メイン燃料噴射量Qdrv、エンジン回転速度Ne、排気タービン3a入口圧Ptin、排気タービン3a出口圧Ptout、排気タービン3aを流れるガス流量Qexhを読み込む。排気タービン3a入口圧Ptinは
排気圧センサ52により、排気タービン3a出口圧Ptoutは出口圧センサ61により、排気タービン3aを流れるガス流量Qexh[g/s]はガス流量センサ62により検出される。排気タービン3aを流れるガス流量Qexhは、エンジン運転状態を示すパラメータを用いて推定されてもよい。
【0093】
ステップ3でエンジン運転条件が非EGR領域にあると判定された場合には、ステップ22において、エンジンコントローラ21は排気タービン3a入口圧Ptinと、排気タービン3a出口圧Ptoutから排気タービン3aの膨張比[無名数]を上記(2)式により算出する。
【0094】
ステップ23では、エンジンコントローラ21は、排気タービン3aの膨張比と排気タービン3aを流れるガス流量とから定まる排気タービン3aの作動点が
図10に示したタービン性能曲線図上のガス流動停滞域Rstb1(ハッチング領域参照)にあるか否かを判定する。
【0095】
ここで、タービン性能曲線図は横軸に排気タービン3aの膨張比[無名数]を、縦軸に排気タービン3aを流れるガス流量[g/s]を採ったもので、エンジン運転条件の違いにより排気タービン3aの作動点がどのように変化するのかを示すものである。現状のエンジン及び本実施形態のエンジン1で用いている排気タービン3aでは、エンジン運転条件の変化により、例えば
図10に示した四角のマークの位置を排気タービン3aの作動点が移動する。現状のエンジンでは車両発進時の排気タービン3aの作動点は膨張比及びガス流量とも小さいC点の位置にある。このため、現状のエンジンの車両発進時の排気タービン3aの作動点(C点)及びそれより膨張比、ガス流量が小さい側の領域が含まれるようにガス流動停滞域Rstb1は予め定められる。なお、
図10ではC点より膨張比、ガス流量が少し大きい側の領域までをカバーするようにガス流動停滞域Rstb1が設定されている。これは、車両発進時の排気タービン3aの作動点にバラツキがあるので、そのバラツキを考慮したものである。
【0096】
図9に戻り、膨張比及びガス流量から定まる排気タービン3aの作動点が
図10に示したガス流動停滞域Rstb1にないときには、ステップ10においてエンジンコントローラ21はEGR弁12を全閉状態に制御する。
【0097】
一方、ステップ23で膨張比及びガス流量から定まる排気タービン3aの作動点が
図10に示したガス流動停滞域Rstb1にあると判定された場合には、エンジンコントローラ21はターボ過給機3の状態がガス流動停滞域にあると判定する。このときには、エンジントルクの増大を許可するためステップ7,8に進み、トルク増大許可フラグ=1とし、EGR弁12を開く。
【0098】
ところで、ステップ2においてトルク増大許可フラグが1であると判定された場合には、エンジンコントローラ21はステップ11の処理を実行する。ステップ11でエンジン運転条件が非EGR領域にあると判定された場合には、エンジンコントローラ21は、ステップ24の処理を実行し、ステップ22と同様にして排気タービン3aの膨張比を算出する。ステップ25では、エンジンコントローラ21は、膨張比及びガス流量から定まる排気タービン3aの作動点が
図10に示したガス流動停滞域Rstb1にあるか否かを判定する。排気タービン3aの作動点がガス流動停滞域Rstb1にある場合には、エンジンコントローラ21は、ターボ過給機3の状態がガス流動停滞域に継続してあると判断し、ステップ7,8の処理を実行する。
【0099】
ステップ8でEGR弁12を開くと、
図8Bに示したようにインタークーラ4下流の吸気管2cの新気がEGR通路11、バイパス通路32を介し排気マニホールド40aに流入する。シリンダ41から排気マニホールド
10aに出た排出ガス中の未燃燃料が、この新気によって後燃えし、排気タービン3aに流入する排気の温度及び圧力が上昇する。つまり、EGR弁12を開く前より排気タービン3a入口圧(膨張比)が大きくなり、かつ排気タービン3aを流れるガス流量が大きくなる。このことは、車両発進時の排気タービン3aの作動点が、
図10において膨張比がC点よりも大きくなり、かつC点よりも排気タービン3aを流れるガス流量が大きくなるD点の位置に移ることを意味する。D点では、C点よりもガス流量が大きくなるので、その分だけ排気タービン3aの回転速度が増し、排気タービン3aと同軸の吸気コンプレッサ3bの回転速度が増加する。その結果、実過給圧が目標過給圧へと上昇し、実エンジントルクが増加する。
【0100】
一方、ステップ25でタービン作動点がガス流動停滞域Rstb1から外れていると判定された場合には、エンジンコントローラ21は、ステップ15でトルク増大許可フラグ=0とし、ステップ16でEGR弁12を全閉状態に制御する。
【0101】
第2実施形態では、エンジントルクの増大を許可した後にターボ過給機3の状態がガス流動停滞域Rstb1から外れたときに、EGR弁12を全閉としているが、これに限られるものでない。例えば、エンジントルクの増大を許可したタイミングから予め定めた一定時間が経過した場合に、EGR弁12を全閉状態に制御してもよい。一定時間は、車両発進時にドライバが加速感を望む時間に設定される。あるいは、ターボ過給機3の状態がガス流動停滞域Rstb1を外れるか、エンジントルクの増大を許可したタイミングから一定時間が経過したかのいずれかが成立した場合に、EGR弁12を全閉状態に制御してもよい。
【0102】
第2実施形態では、エンジン1は、ガス流量センサ62と、エンジンコントローラ21と、を備えている。エンジンコントローラ21は、膨張比を算出し、算出した膨張比とガス流量をパラメータとするタービン性能曲線図(排気タービン性能曲線特性)を記憶している。エンジンコントローラ21は、算出された膨張比及び検出されたガス流量から定まる排気タービン3aの作動点がタービン性能曲線図上に予め設けてあるガス流動停滞域にあるか否かにより、ターボ過給機3の状態がガス流動停滞域にあるか否かを判定する。これによって、O
2濃度センサ53のような高価なセンサを用いることなく、あるいはエンジン運転条件に基づくことなく、ターボ過給機3の状態がガス流動停滞域にあるか否かを判定することができる。
【0103】
なお、エンジン1は、ターボ過給機3の運転を管理するために、センサ52,61,62とエンジンコントローラ21から構成される排気タービン3aのモニタ装置を備えている。この排気タービン3aのモニタ装置は、センサ52,61,62及びエンジンコントローラ21により、膨張比とガス流量を求め、膨張比とガス流量より定まる排気タービン3aの作動点が、
図10に示したタービン性能曲線図上でどの点にあるかをモニタしている。このため、排気タービン3aのモニタ装置がエンジン1に既設であればソフトウエア(
図9のフロー)を追加するだけで、ターボ過給機3の状態がガス流動停滞域にあるか否かを判定することができ、コストアップの上昇を回避することができる。
【0104】
(第3実施形態)
図11A,
図11Bは、第3実施形態のエンジン1の主要部及びターボ過給機3を取り出して示す概略構成図である。
図11Aはターボ過給機3の状態がガス流動停滞域にあるときにEGR弁12を開く前の状態を示し、
図11Bはターボ過給機3の状態がガス流動停滞域にあるときにEGR弁12を開いた後の状態を示している。第1実施形態の
図2A,
図2Bと同一部分には同一の符号を付している。
【0105】
第1実施形態では、エンジンコントローラ21は、上記〈1〉〜〈3〉の条件を全て満たすか否かによって、つまりエンジンの運転条件がガス流動停滞域にあるか否かを判定した。一方、第3実施形態では、エンジンコントローラ21は、吸気コンプレッサ3bの作動点がコンプレッサ性能曲線図(吸気コンプレッサ性能曲線特性)上に予め設けてあるガス流動停滞域にあるか否かにより、ターボ過給機3の状態がガス流動停滞域にあるか否かを判定する。さらに述べると、第1実施形態はエンジン運転条件がガス流動停滞域にあるか否かを判定するものであったのに対し、第3実施形態も第2実施形態と同じにターボ過給機3の状態がガス流動停滞域にあるか否かを判定するものである。ここで、「ターボ過給機3の状態がガス流動域にある」とは、吸気コンプレッサの作動点がコンプレッサ性能曲線図上のガス流動停滞域にある場合と、排気タービンの作動点がタービン性能曲線図上のガス流動停滞域にある場合とを含んだ概念である。
【0106】
吸気コンプレッサ3bの作動点とは、
図13に示したコンプレッサ性能曲線図において圧力比及びコンプレッサ流量から定まる吸気コンプレッサ3bの作動点のことである。吸気コンプレッサ3bの作動点を知るには、吸気コンプレッサ3bの圧力比及びコンプレッサ流量(吸気コンプレッサ3bを流れる流量)が必要となる。ここで、吸気コンプレッサ3bの圧力比は、吸気コンプレッサ3b出口圧Pcoutと吸気コンプレッサ3b入口圧Pcinの比、つまり次式により算出される。
【0107】
圧力比=Pcout/Pcin ・・・(3)
【0108】
このため、吸気コンプレッサ3b出口圧Pcoutは、
図11A,
図11Bに示したように吸気コンプレッサ3b下流でインタークーラ4上流の吸気管2bに設けた出口圧センサ72により検出される。吸気コンプレッサ3b入口圧Pcinは、
図11A,
図11Bに示したようにエアフローメータ55下流で吸気コンプレッサ上流の吸気管2aに設けた入口圧センサ71により検出される。コンプレッサ流量Qcmpは、
図11A,
図11Bに示したようにエアフローメータ55により検出される。これらセンサ72,71,55により検出される吸気コンプレッサ3b出口圧Pcout、吸気コンプレッサ3b入口圧Pcin、コンプレッサ流量Qcmpはエンジンコントローラ21に入力している。
【0109】
図12を参照して、エンジンコントローラ21で実行される制御について説明する。
図12は、第3実施形態のEGR弁12を開閉制御するためのフローチャートである。この制御は、一定時間毎(例えば10ms毎)に実行される。第1実施形態の
図5のフローチャートと同一部分には同一の符号を付している。
【0110】
第1実施形態の
図5のフローと相違する処理はステップ31〜35の処理である。第1実施形態との関係では、第1実施形態の
図5のステップ4〜6に第3実施形態の
図12のステップ32,33が置き換わる。また、第1実施形態の
図5のステップ12〜14に第3実施形態の
図12のステップ34,35が置き換わる。
【0111】
図12に示すように、ステップ31においてエンジンコントローラ21は、メイン燃料噴射量Qdrv、エンジン回転速度Ne、吸気コンプレッサ3b出口圧Pcout、吸気コンプレッサ3b入口圧Pcin、コンプレッサ流量Qcmpを読み込む。吸気コンプレッサ3b出口圧Pcoutは出口圧センサ72により、吸気コンプレッサ3b入口圧Pcinは入口圧センサ71により、コンプレッサ流量Qcmp[g/s]はエアフローメータ55により検出される。
【0112】
ステップ3でエンジン運転条件が非EGR領域にあると判定された場合には、エンジンコントローラ21はステップ32の処理を実行し、吸気コンプレッサ3b出口圧Pcoutと、吸気コンプレッサ3b入口圧Pcinから吸気コンプレッサ3bの圧力比[無名数]を上記(3)式により算出する。
【0113】
ステップ33では、エンジンコントローラ21は、吸気コンプレッサ3bの圧力比とコンプレッサ流量とから定まる吸気コンプレッサ3bの作動点が
図13に示したコンプレッサ性能曲線図上のガス流動停滞域Rstb2(ハッチング領域参照)にあるか否かを判定する。
【0114】
ここで、コンプレッサ性能曲線図は横軸にコンプレッサ流量[g/s]を、縦軸に吸気コンプレッサ3bの圧力比[無名数]を採ったもので、エンジンの運転条件の違いにより
吸気コンプレッサ3bの作動点がどのように変化するのかを示すものである。
図13において「Leffi」は等コンプレッサ効率線を、「Lrot」は排気タービン3a回転速度が一定の線を表している。現状のエンジン及び本実施形態のエンジン1で用いている吸気コンプレッサ3bでは、エンジン1の運転条件の変化により、例えば
図13に示した四角のマークの位置を吸気コンプレッサ3bの作動点が移動する。現状のエンジンでは車両発進時のコンプレッサ作動点は圧力比及びコンプレッサ流量とも小さいE点の位置にある。このため、現状のエンジンの車両発進時の吸気コンプレッサ3bの作動点(E点)及びそれより圧力比、コンプレッサ流量が小さい側の領域が含まれるようにガス流動停滞域Rstb2は予め定められている。なお、
図13ではE点より圧力比、コンプレッサ流量が少し大きい側の領域までをカバーするようにガス流動停滞域Rstb2は設定されている。これは、車両発進時の吸気コンプレッサ3bの作動点にバラツキがあるので、その作動点のバラツキを考慮したものである。
【0115】
図12に戻り、ステップ33で吸気コンプレッサ3bの作動点が
図13に示したガス流動停滞域Rstb2にないと判定された場合には、ステップ10においてエンジンコントローラ21はEGR弁12を全閉状態に制御する。
【0116】
一方、ステップ33で吸気コンプレッサ3bの作動点が
図13に示したガス流動停滞域Rstb2にあると判定された場合には、エンジンコントローラ21はターボ過給機3の状態がガス流動停滞域にあると判定する。この場合には、エンジンコントローラ21は、エンジントルクの増大を許可するために、ステップ7でトルク増大許可フラグ=1とし、ステップ8でEGR弁12を開く。
【0117】
ところで、ステップ2においてトルク増大許可フラグが1であると判定された場合には、エンジンコントローラ21はステップ11の処理を実行する。ステップ11でエンジン運転条件が非EGR領域にあると判定された場合には、エンジンコントローラ21は、ステップ34においてステップ32と同様に吸気コンプレッサ3bの圧力比を算出する。ステップ35では、エンジンコントローラ21は、圧力比及びコンプレッサ流量から定まるコンプレッサ作動点が
図13に示したガス流動停滞域Rstb2にあるか否かを判定する。吸気コンプレッサ3bの作動点が
図13に示したガス流動停滞域Rstb2にある場合には、エンジンコントローラ21はターボ過給機3の状態がガス流動停滞域に継続してあると判断する。この場合には、エンジンコントローラ21は、ステップ7,8の処理を実行する。
【0118】
ステップ8でEGR弁12を開くと、
図11Bに示したようにインタークーラ4下流の吸気管2cの新気がEGR通路11、バイパス通路32を介し排気マニホールド40aに流入する。シリンダ41から排気マニホールド
10aに出た排出ガス中の未燃燃料が、この新気によって後燃えし、排気タービン3aに流入する排気の温度及び圧力が上昇する。つまり、EGR弁12を開く前よりタービン入口圧(膨張比)が大きくなり、かつ排気タービン3aを流れるガス流量が大きくなる。これによって、その分排気タービン3aの回転速度が高くなり、排気タービン3aと同軸の吸気コンプレッサの回転速度が高くなる。すると、EGR弁12を開く前より吸気コンプレッサ3b出口圧(圧力比)が大きくなり、かつコンプレッサ流量が大きくなる。このことは、第3実施形態では、
図13において車両発進時の吸気コンプレッサ3bの作動点が、E点よりも圧力比が大きくなり、かつE点よりもコンプレッサ流量が大きくなるF点の位置に移ることを意味する。F点の作動点では、E点よりコンプレッサ流量が大きくなるので、その分だけ吸気コンプレッサ3bの回転速度が増し、実過給圧が目標過給圧へと上昇し、実エンジントルクが増加する。なお、F点の作動点では、E点よりコンプレッサ効率が大きく、これによってターボ過給機3を効率よく運転することが可能となる。
【0119】
一方、ステップ35で
コンプレッサ作動点がガス流動停滞域Rstb2から外れたと判定された場合には、エンジンコントローラ21は、ステップ15でトルク増大許可フラグ=0とし、ステップ16でEGR弁12を全閉状態に制御する。
【0120】
第3実施形態では、エンジントルクの増大を許可した後にターボ過給機3の状態がガス流動停滞域Rstb2から外れたときに、EGR弁12を全閉としているが、これに限られるものでない。例えば、エンジントルクの増大を許可したタイミングから予め定めた一定時間が経過した場合に、EGR弁12を全閉状態に制御してもよい。一定時間は、車両発進時にドライバが加速感を望む時間に設定される。あるいは、ターボ過給機3の状態がガス流動停滞域Rstb2を外れるか、エンジントルクの増大を許可したタイミングから一定時間が経過したかのいずれかが成立した場合に、EGR弁12を全閉状態に制御してもよい。
【0121】
第3実施形態では、エンジン1は、エアフローメータ55と、エンジンコントローラ21と、を備えている。エンジンコントローラ21は、圧力比を算出し、算出した圧力比とコンプレッサ流量をパラメータとするコンプレッサ性能曲線図(吸気コンプレッサ性能曲線特性)を記憶している。エンジンコントローラ21は、圧力比及びコンプレッサ流量Qcmpから定まるコンプレッサ作動点が吸気コンプレッサ性能曲線特性上に予め設けてあるガス流動停滞域にあるか否かにより、ターボ過給機3の状態がガス流動停滞域にあるか否かを判定する。これによって、O
2濃度センサ53のような高価なセンサを用いることなく、あるいはエンジン運転条件に基づくことなく、ターボ過給機3の状態がガス流動停滞域にあるか否かを判定することができる。
【0122】
なお、エンジン1は、ターボ過給機3の運転を管理するために、センサ55,71,72とエンジンコントローラ21から構成される吸気コンプレッサ3bのモニタ装置を備えている。吸気コンプレッサ3bのモニタ装置では、センサ55,71,72及びエンジンコントローラ21により圧力比とコンプレッサ流量を求め、圧力比とコンプレッサ流量より定まる吸気コンプレッサ3bの作動点が、
図13に示したコンプレッサ性能曲線図上でどの点にあるかをモニタしている。このため、吸気コンプレッサ3bのモニタ装置がエンジン1に既設であればソフトウエア(
図12のフロー)を追加するだけで、ターボ過給機3の状態がガス流動停滞域にあるか否かを判定することができ、コストアップの上昇を回避することができる。
【0123】
また、第3実施形態と第2実施形態とは組み合わせてもよい。この場合には、エンジンコントローラ21は、排気タービン3aの作動点に基づいてターボ過給機3の状態がガス流動停滞域にあるか否かを判定すると共に、吸気コンプレッサ3bの作動点に基づいてターボ過給機3の状態がガス流動停滞域にあるか否かを判定する。そして、いずれかによりターボ過給機3の状態がガス流動停滞域にあると判定した場合、又はともにターボ過給機3の状態がガス流動停滞域にあると判定した場合に、エンジンコントローラ21はEGR弁12を開弁する。
【0124】
(第4実施形態)
図14A,
図14Bは、第4実施形態のエンジン1の主要部及びターボ過給機3を取り出して示す概略構成図である。
図14Aはエンジンの運転条件がガス流動停滞域にあるときにバイパス弁82を開く前の状態を示し、
図14Bはエンジンの運転条件がガス流動停滞域にあるときにバイパス弁82を開いた後の状態を示している。第1実施形態の
図2A,
図2Bと同一部分には同一の符号を付している。
【0125】
第1実施形態では、ガス流動停滞域でEGR弁12を開くことによって、吸気コンプレッサ
3b下流の吸気管2cの新気を排気マニホールド10aに流入させている。
図14A,
図14Bに示したように、第4実施形態によるエンジン1は、EGR通路11とは別に、シリンダ41をバイパスして吸気コレクタ6と排気マニホールド10aを連通するバイパス通路81と、バイパス通路81を開閉する常閉のバイパス弁82とを備えている。
図14A,
図14Bでは、バイパス通路81を#1気筒シリンダ41の外側に#1気筒シリンダ41に沿って設けているが、バイパス通路81を設ける位置はこれに限定されるものでない。
【0126】
第4実施形態は、第1実施形態と同じにエンジン運転条件がガス流動停滞域にあるか否かを判定するものである。エンジンコントローラ21は、エンジン運転条件が車両発進時のようなガス流動停滞域にある場合に、バイパス弁82を開くことによって、吸気コンプレッサ
3b下流の新気を排気マニホールド10aに流入させる。
【0127】
図15を参照して、エンジンコントローラ21で実行される制御について説明する。
図15は、第4実施形態のEGR弁12及びバイパス弁82を開閉制御するためのフローチャートである。この制御は、一定時間毎(例えば10ms毎)に実行される。第1実施形態の
図5のフローチャートと同一部分には同一の符号を付している。
【0128】
第1実施形態の
図5のフローチャートと相違する処理はステップ41,42の処理である。
【0129】
図15に示すように、エンジンコントローラ21は、ステップ4,5,6においてエンジン運転条件がガス流動停滞域にあると判断した場合に、エンジントルクの増大を許可するためステップ7,41の処理を実行する。エンジンコントローラ21は、ステップ7でトルク増大許可フラグ=1とし、ステップ41でバイパス弁82を全開状態に制御する。第1実施形態ではエンジンコントローラ21がEGR弁12を開弁制御するが、第4実施形態ではEGR弁12に代えてバイパス弁82を開くので、EGR弁12の開弁制御を実行する必要がない。
【0130】
図14Bに示すようにバイパス弁82を開くと、インタークーラ4下流の吸気管2cの新気がバイパス通路81を介し排気マニホールド10aに供給される。インタークーラ4下流の吸気管2cの新気がシリンダ41を介さずに排気マニホールド10aに供給されるため、シリンダ41から排気マニホールド10aに出た排出ガス中の未燃燃料がこの新気を用いて後燃えする。これによって、新気を排気マニホールド10aに導入しない場合よりも、排気タービン3aに流入する排気の温度及び圧力が上昇する。排気タービン3aに流入する排気の温度及び圧力が上昇すると、後燃えした新気の体積膨張も重なり排気タービン3aの仕事量が増すため、排気タービン3aと同軸の吸気コンプレッサ3bの回転速度が上昇し、その分だけ実過給圧が上昇する。実過給圧が上昇すると、シリンダ41内に流入する実空気量が増えるため、シリンダ41内のガス中の燃料の燃焼状態がよくなり、実エンジントルクが増大する。
【0131】
ところで、ステップ2においてトルク増大許可フラグが1であると判定された場合には、エンジンコントローラ21はステップ11の処理を実行する。ステップ11〜14は、エンジントルクの増大を許可した後にトルク増大の許可を解除する条件を定める処理である。ステップ11〜14では、エンジンコントローラ21は、前述した〈11〉〜〈14〉の条件を満たすか否かを判定し、いずれかの条件を満たすときにトルク増大の許可を解除する条件であると判断する。解除条件成立時には、エンジンコントローラ21は、ステップ15でトルク増大許可フラグを0に戻し、ステップ42でバイパス弁82を全閉状態に制御する。
【0132】
解除条件が成立していない場合には、エンジンコントローラ21はステップ7,41の処理を継続する。
【0133】
第4実施形態では、エンジントルクの増大を許可した後にトルク増大の許可を解除する条件を満足したときに、バイパス弁82を全閉状態に制御しているが、これに限られるものでない。例えば、エンジントルクの増大を許可したタイミングから予め定めた一定時間が経過した場合に、バイパス弁82を全閉状態に制御してもよい。一定時間は、車両発進時にドライバが加速感を望む時間に設定される。あるいは、トルク増大の許可を解除する条件であることを満足するか、エンジントルクの増大を許可したタイミングから一定時間が経過したかのいずれかが成立した場合に、バイパス弁82を全閉状態に制御してもよい。
【0134】
第4実施形態では、新気・2次空気供給装置は、バイパス通路81と、バイパス通路81を開閉する常閉のバイパス弁82とから構成されている。バイパス通路81は、吸気コンプレッサ3b下流の吸気通路と排気マニホールド10aとをシリンダ41をバイパスして連通する。エンジンコントローラ21は、エンジン運転条件がガス流動停滞域にある場合に、バイパス弁82を開き吸気コンプレッサ3b下流の新気を排気マニホールド10aに供給するようにバイパス弁制御を実行する。第4実施形態においても、第1実施形態と同様に、ガス流動停滞域で排気マニホールド10aに新気を供給することで、実過給圧が新気を供給する前より上昇する。実過給圧が上昇すると、その上昇分だけ実エンジントルクを増大させることができる。
【0135】
(第5実施形態)
図16A,
図16Bは、第5実施形態のエンジン1の主要部及びターボ過給機3を取り出して示す概略構成図である。
図16Aはエンジンの運転条件がガス流動停滞域にあるときに2次空気供給弁102を開く前の状態を示し、
図16Bはエンジンの運転条件がガス流動停滞域にあるときに2次空気供給弁102を開いた後の状態を示している。第1実施形態の
図2A,
図2Bと同一部分には同一の符号を付している。
【0136】
第1から第4までの各実施形態では、車両発進時のようなガス流動停滞域でターボ過給機3により生じる加圧空気を排気マニホールド10aに流入させた。一方、第5実施形態では、
図16A,
図16Bに示すように、エンジン1を搭載する車両が、フルエアブレーキ91を備えている7.5トンクラスの大型トラックや大型バスである場合を対象としている。
【0137】
図17を参照して、フルエアブレーキ91について説明する。
図17は、フルエアブレーキ91の概略構成図である。
【0138】
図17に示すように、フルエアブレーキ91は、エアコンプレッサ92、エアタンク93、ブレーキバルブ96、ブレーキペダル97、エアチャンバ94、ホイールブレーキ98から構成される。なお、エアチャンバ94及びホイールブレーキ98は、車両の各車輪に装備されている。
【0139】
エアコンプレッサ92は、エンジン1によりギアあるいはチェーンを介して駆動される。エアコンプレッサ92により加圧された空気は、エアタンク93に一定圧で蓄えられる。エアタンク93とエアチャンバ94を結ぶエア通路95には、常閉のブレーキバルブ96が設置されている。
【0140】
図17に示すように構成されるフルエアブレーキ91では、ブレーキペダル97を踏み込むと、ブレーキペダル97の踏み込み量(ストローク)に応じた分だけブレーキバルブ96が開き、ブレーキペダル97の踏み込み量に応じた加圧空気がエアタンク93から各車輪のエアチャンバ94に圧送される。各車輪のエアチャンバ94に加圧空気が供給されると、加圧空気により各車輪のホイールブレーキ98が作動して車両を制動する。
【0141】
エアタンク93内の加圧空気の圧力は、非EGR領域での排気マニホールド10aの排気圧(ガス流動停滞域での排気タービン上流の排気圧)よりも高いので、エアタンク93内の加圧空気を2次空気として利用することができる。
【0142】
そこで、第5実施形態によるエンジン1は、
図16A,
図16B,
図17に示したように、エア通路95から分岐して排気マニホールド10aに合流する2次空気
供給通路101と、2次空気
供給通路101を開閉する常閉の2次空気供給弁102と、を備えている。なお、
図16A,
図16Bでは、エア通路95から分岐して2次空気
供給通路101を設けているが、これに限定されるものでない。例えば、エアコンプレッサ92と排気マニホールド10aを連通するように2次空気通路を設けてもよい。
【0143】
第5実施形態も、第1実施形態と同じにエンジン運転条件がガス流動停滞域にあるか否かを判定するものである。エンジンコントローラ21は、エンジン運転条件が車両発進時のようなガス流動停滞域にある場合に2次空気供給弁102を開くことによって、エアタンク93内の加圧空気を2次空気として排気マニホールド10aに流入させる。
【0144】
図18を参照して、エンジンコントローラ21で実行される制御について説明する。
図18は、第5実施形態のEGR弁12及び2次空気供給弁102を開閉制御するためのフローチャートである。この制御は、一定時間毎(例えば10ms毎)に実行される。第1実施形態の
図5のフローと同一部分には同一の符号を付している。
【0145】
第1実施形態の
図5のフローチャートと相違する処理はステップ51,52の処理である。
【0146】
図18に示すように、ステップ4,5,6においてエンジン運転条件がガス流動停滞域にあると判定された場合には、エンジンコントローラ21は、エンジントルクの増大を許可するためステップ7,51の処理を実行する。エンジンコントローラ21は、ステップ7でトルク増大許可フラグ=1とし、ステップ51で2次空気供給弁102を開く。第1実施形態ではエンジンコントローラ21がEGR弁12を開弁制御するが、第5実施形態ではEGR弁12に代えて2次空気供給弁102を開くので、EGR弁12の開弁制御を実行する必要がない。
【0147】
図16Bに示したように2次空気供給弁102を開くと、エアタンク93内の加圧空気(2次空気)の圧力のほうが排気マニホールド10aの排気圧より高いので、2次空気が2次空気供給通路101を通じて排気マニホールド10aに供給される。2次空気がシリンダ41を介さずに排気マニホールド10aに供給されるのであるから、シリンダ41から排気マニホールド10aに出た排出ガス中の未燃燃料がこの新気(2次空気)を用いて後燃えする。これによって、新気を排気マニホールド10aに導入しない場合より排気タービン3aに流入する排気の温度及び圧力が上昇する。排気タービン3aに流入する排気の温度及び圧力が上昇すると、後燃えした新気の体積膨張も重なり排気タービン3aの仕事量が増すため、排気タービン3aと同軸の吸気コンプレッサ3bの回転速度が上昇し、その分だけ実過給圧が上昇する。実過給圧が上昇すると、シリンダ41内に流入する実空気量が増えるため、シリンダ41内ガス中の燃料の燃焼状態がよくなり、実エンジントルクが増大する。
【0148】
ところで、ステップ2においてトルク増大許可フラグが1であると判定された場合には、エンジンコントローラ21はステップ11の処理を実行する。ステップ11〜14は、エンジントルクの増大を許可した後にトルク増大の許可を解除する条件を定める処理である。ステップ11〜14では、エンジンコントローラ21は、前述した〈11〉〜〈14〉の条件を満たすか否かを判定し、いずれかの条件を満たすときにトルク増大の許可を解除する条件であると判断する。解除条件成立時には、エンジンコントローラ21は、ステップ15でトルク増大許可フラグを0に戻し、ステップ52で2次空気供給弁102を全閉状態に制御する。
【0149】
解除条件が成立していない場合には、エンジンコントローラ21はステップ7,51の処理を継続する。
【0150】
第5実施形態では、エンジントルクの増大を許可した後にトルク増大の許可を解除する条件を満足したときに、2次空気供給弁102を全閉状態に制御しているが、これに限られるものでない。例えば、エンジントルクの増大を許可したタイミングから予め定めた一定時間が経過した場合に、2次空気供給弁102を全閉状態に制御してもよい。一定時間は、車両発進時にドライバが加速感を望む時間に設定される。あるいは、トルク増大の許可を解除する条件であることを満足するか、エンジントルクの増大を許可したタイミングから一定時間が経過したかのいずれかが成立した場合に、2次空気供給弁102を全閉状態に制御してもよい。
【0151】
第5実施形態では、新気・2次空気供給装置は、エアタンク93と、2次空気供給通路101と、この2次空気供給通路101を開閉する常閉の2次空気供給弁102とから構成される。エアタンク93は、ガス流動停滞域での排気マニホールド10aの排気圧(排気タービン上流の排気圧)より高い一定圧の空気を貯留する。2次空気供給通路101は、エアタンク93と排気マニホールド10a(排気タービン上流の排気通路)とを連通する。エンジンコントローラ21は、エンジンの運転条件がガス流動停滞域にある場合に、2次空気供給弁102を開きエアタンク93内の加圧空気を2次空気として排気マニホールド10aに供給するように2次空気供給弁制御を実行する。
【0152】
第5実施形態によれば、エアタンク93内の加圧空気を2次空気としてガス流動停滞域で排気マニホールド10aに供給することで、実過給圧が2次空気を供給する前より上昇する。実過給圧が上昇すると、その上昇分だけ実エンジントルクを増大させることができる。大型のトラックやバスでは車両の制動用に用いるエアタンク93は既設であるので、コストアップの上昇を回避することができる。
【0153】
第5実施形態では、フルエアブレーキ91を備えている大型トラックの場合で説明したが、これに限られるものでない。車両に、エアコンプレッサ92と、エアタンク93と、エアタンク93及び排気マニホールド10aを接続する2次空気
供給通路101と、2次空気
供給通路101を開閉する常閉の2次空気供給弁102と、を別途設けてもよい。
【0154】
なお、第4、第5のいずれかの実施形態と第2、第3のいずれかの実施形態とを組み合わせてもよい。例えば、第5実施形態と第3実施形態を組み合わせた場合には、圧力比及びコンプレッサ流量から定まる吸気コンプレッサ3bの作動点が
図13に示したガス流動停滞域にあるときに、2次空気供給弁102が開かれ、新気が排気マニホールド10aに供給される。例えば、第4実施形態と第2実施形態を組み合わせた場合には、膨張比及びガス流量から定まる排気タービン3aの作動点が
図10に示したガス流動停滞域にあるときに、バイパス弁82が開かれ、2次空気が排気マニホールド10aに供給される。これら組み合わせの場合には、EGR制御装置は不要となる。
【0155】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨でない。