(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電子部品を実装するための配線パターン形状のリードフレームに形成した導体板と、前記導体板の前記配線パターン形状のリードフレーム間に設けられた絶縁材とにより構成され、前記導体板の電子部品配置面の板面と前記絶縁材の電子部品配置面側の板面とを同一面上に形成し、
前記導体板の前記電子部品配置面の裏面の板面と前記絶縁材の電子部品配置面側の裏面の板面とを同一面上に形成した電子部品搭載用放熱基板であって、
前記配線パターン形状のリードフレームは、少なくとも2種類以上の相互に異なる厚さを有し、厚みの厚い前記リードフレームは大電流信号用とし、厚みの薄い前記リードフレームは小電流信号用として用い、
前記配線パターン形状のリードフレームの前記電子部品配置面の裏面の板面と前記絶縁材の電子部品配置面側の裏面の板面とは、前記リードフレームのうち最も厚みを有する前記リードフレームの前記電子部品配置面の裏面の板面に合わせて、同一面上に形成し、
前記相互に異なる厚さを有するリードフレームは、異なる厚さ毎に相互に異なる配線パターンを、相互に交差や重なり合いを生ずることなく形成すると共に、前記電子部品が実装されることにより、前記相互に異なる厚みを有するリードフレームが電子回路を形成するように構成され、
前記厚みの薄いリードフレームの配線幅は前記厚みの厚いリードフレームの配線幅よりも狭く形成されると共に、前記電子部品配置面を上面から見た場合に厚みの厚いリードフレームの間に厚みの薄いリードフレームが配置され、
前記リードフレームの両側面は、前記電子部品配置面の板面の表面から裏面にかけて前記板面に垂直な平面に形成される電子部品搭載用放熱基板であって、
前記電子部品搭載用放熱基板の両面を電子部品配置面とし、
前記電子部品搭載用放熱基板には少なくとも同様の2系統の回路からなる冗長回路が形成され、
前記電子部品配置面の一方の面には前記2系統のうちの1系統の回路が形成され、
前記電子部品配置面の他の一方の面には前記2系統のうちの他の1系統の回路が形成され、
前記2系統の回路からなる冗長回路のうち、回路配線を共用する部分については、前記電子部品配置面の一方と他の一方の面とで共通の前記リードフレームを用いることを特徴とする電子部品搭載用放熱基板。
前記リードフレームの電子部品配置面の裏面の板面であって、前記電子部品配置面のうち前記電子部品を配置しない部分の裏面に当たる部分に、前記裏面の板面に裏面側凹部を設けて前記絶縁材により被覆し、
前記裏面側凹部を被覆する前記絶縁材の表面は、前記リードフレームの電子部品配置面の裏面の板面と前記絶縁材の前記電子部品配置面側の裏面側の表面とで連続した一つの面を形成した請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子部品搭載用放熱基板。
前記導体板に形成した配線パターン形状のリードフレームの一部は、前記絶縁材の周縁より内側又は外側で、その一部を前記導体板の板面に対して上方又は下方に屈曲した形状を有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電子部品搭載用放熱基板。
前記導体板に形成した配線パターン形状のリードフレームの全部又は一部は、前記絶縁材の周縁より外側で、折り曲げ可能に形成された請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電子部品搭載用放熱基板。
前記導体板に形成した配線パターン形状のリードフレームの全部又は一部は、前記絶縁材の周縁より外側で、熱伝導体に当接される請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電子部品搭載用放熱基板。
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電子部品搭載用放熱基板又は請求項10に記載のパワーモジュールに用いるシャント抵抗の接続構造であって、前記電子部品搭載用放熱基板は、前記最も厚みを有するリードフレーム上に、前記シャント抵抗の2つの端子を接続する2つの接続部を有し、
前記厚みの薄いリードフレームの一端を、前記2つの接続部の一部にそれぞれ設けられた切り欠き部に配置するか、若しくは、前記2つの接続部のそれぞれの近傍に配置し、
前記シャント抵抗の2つの端子の接続は、前記最も厚みを有するリードフレームの前記2つの接続部、及び、前記2つの接続部の、前記切り欠き部に配置された、前記厚みの薄いリードフレームの一端の上に、若しくは、前記2つの接続部及び前記2つの接続部の前記近傍に配置された、前記厚みの薄いリードフレームの一端の上に、前記シャント抵抗の2つの端子をそれぞれ載置して接続した構造を有するシャント抵抗の接続構造。
電子部品を実装するための配線パターン形状のリードフレームに形成した導体板と、前記導体板の前記配線パターン形状のリードフレーム間に設けられた絶縁材とにより構成され、前記導体板の電子部品配置面の板面と前記絶縁材の電子部品配置面側の板面とを同一面上に形成し、
前記導体板の前記電子部品配置面の裏面の板面と前記絶縁材の電子部品配置面側の裏面の板面とを同一面上に形成した電子部品搭載用放熱基板であって、
前記配線パターン形状のリードフレームは、少なくとも2種類以上の相互に異なる厚さを有し、厚みの厚い前記リードフレームは大電流信号用とし、厚みの薄い前記リードフレームは小電流信号用として用い、
前記配線パターン形状のリードフレームの前記電子部品配置面の裏面の板面と前記絶縁材の電子部品配置面側の裏面の板面とは、前記リードフレームのうち最も厚みを有する前記リードフレームの前記電子部品配置面の裏面の板面に合わせて、同一面上に形成し、
前記電子部品搭載用放熱基板の厚みの薄いリードフレームが設けられた基板面とは異なる側の基板面には、
前記厚みの薄いリードフレームの前記基板面の裏面側から前記異なる側の基板面にかけて、複数のピン状の空洞を備える電子部品搭載用放熱基板。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明の実施形態を、車両に搭載される電動パワーステアリング装置の制御装置に用いた場合を例として説明する。
【0036】
ここで、上記電動パワーステアリング装置は、車両のステアリング機構に電動モータの回転力で操舵補助力(アシスト力)を付与するものであり、モータの駆動力を減速機構を介してギア又はベルト等の伝達機構により、ステアリングシャフト或いはラック軸に操舵補助力を付与するようになっている。そして、このような電動パワーステアリング装置(EPS)は、操舵補助力のトルクを正確に発生させるため、モータ電流のフィードバック制御を行っている。
【0037】
かかるフィードバック制御は、操舵補助指令値(電流指令値)と電動モータ電流検出値との差が小さくなるように電動モータ印加電圧を調整するものであり、電動モータ印加電圧の調整は、一般的にPWM(パルス幅変調)制御のデューティ(Duty)の調整で行っている。
【0038】
上記の電動パワーステアリング装置の一般的な構成を
図1に示して説明すると、ハンドル1のコラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)2は減速機構3の減速ギア、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ピニオンラック機構5、タイロッド6a,6bを経て、更にハブユニット7a,7bを介して操向車輪8L,8Rに連結されている。また、コラム軸2には、ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ10及び操舵角θを検出する舵角センサ14が設けられており、ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が減速機構3の減速ギア(ギア比n)を介してコラム軸2に連結されている。
【0039】
そして、上記の電動パワーステアリング装置を制御する制御装置30であるコントロールユニット(ECU)は、マイクロコントロールユニット(MCU)を基幹部品として構成され、バッテリ13から電力が供給されると共に、イグニションキー11を経てイグニションキー信号が入力される。
【0040】
このように構成される制御装置30では、トルクセンサ10で検出された操舵トルクThと車速センサ12で検出された車速Velとに基づいてアシスト(操舵補助)指令の電流指令値の演算を行い、電流指令値に補償等を施した電圧制御指令値Vrefによって電動モータ20に供給する電流を制御する。なお、舵角センサ14は必須のものではなく、配設されていなくても良く、電動モータに連結されたレゾルバ等の回転位置センサから操舵角を取得することも可能である。
【0041】
また、上記制御装置30には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)50が接続されており、車速VelはCAN50から受信することも可能である。また、制御装置30には、CAN50以外の通信、アナログ/ディジタル信号、電波等を授受する非CAN51も接続されている。
【0042】
そして、上記のような制御装置30の上記MCU内部においてプログラムで実行される一般的な機能を示すと、例えば
図2に示されるような構成となっている。
【0043】
図2を参照して制御装置30のコントロールユニットの機能及び動作を説明すると、トルクセンサ10からの操舵トルクTh及び車速センサ12からの車速Velは電流指令値演算部31に入力され、電流指令値演算部31は操舵トルクTh及び車速Velに基づいてアシストマップ等を用いて電流指令値Iref1を演算する。演算された電流指令値Iref1は加算部32Aで、特性を改善するための補償部34からの補償信号CMと加算され、加算された電流指令値Iref2が電流制限部33で最大値を制限され、最大値を制限された電流指令値Irefmが減算部32Bに入力され、モータ電流検出値Imと減算される。
【0044】
減算部32Bでの減算結果I(=Irefm−Im)はPI制御部35でPI(比例積分)制御され、PI制御された電圧制御値Vrefが変調信号(キャリア)CFと共にPWM制御部36に入力されてデューティを演算され、デューティを演算されたPWM信号でインバータ37を介してモータ20をPWM駆動する。モータ20のモータ電流値Imはモータ電流検出手段38で検出され、減算部32Bに入力されてフィードバックされる。
【0045】
補償部34は、検出若しくは推定されたセルフアライニングトルク(SAT)を加算部344で慣性補償値342と加算し、その加算結果に更に加算部345で収れん性制御値341を加算し、その加算結果を補償信号CMとして加算部32Aに入力し、特性改善する。
【0046】
また、上記モータ20が3相ブラシレスモータの場合、PWM制御部36及びインバータ37の詳細は例えば
図3に示すような構成となっており、PWM制御部36は、電圧制御値Vrefを所定式に従って3相分のPWMデューティ値D1〜D6を演算するデューティ演算部36Aと、PWMデューティ値D1〜D6で駆動素子としてのFETのゲートを駆動すると共に、デッドタイムの補償をしてON/OFFするゲート駆動部36Bとで構成されている。デューティ演算部36Aには変調信号(キャリア)CFが入力されており、デューティ演算部36Aは変調信号CFに同期してPWMデューティ値D1〜D6を演算する。
【0047】
また、インバータ37は、U相の上段FET1及び下段FET4で成る上下アームと、V相の上段FET2及び下段FET5で成る上下アームと、W相の上段FET3及び下段FET6で成る上下アームとで成る3相ブリッジで構成されており、上記各FETがPWMデューティ値D1〜D6でON/OFFされることによってモータ20を駆動する。
【0048】
なお、インバータ37とモータ20との間には、アシスト制御停止時等に電流の供給を遮断するためのモータ開放スイッチ23が介挿されている。モータ開放スイッチ23は、各相に介挿された寄生ダイオード付きのFET7〜9で構成されている。
【0049】
そして、上記のように構成される電動パワーステアリング装置において、上記制御装置30の内部に設けられる、本発明の電子部品搭載用放熱基板は、次のように構成されている。なお、以下の説明では、同一の構成要素については、他の形態を採り得るものについても同一の記号を用い、重複する説明や構成については、一部省略する場合がある。また、図面に示す各構成要素の大きさや比率などは説明の便宜のため実際のものと異なる場合が有る。
【0050】
図4は、本発明の電子部品搭載用放熱基板100(s)の例を図示したものであり、(A)は上面図、(B)は側面図である。本発明の上記電子部品搭載用放熱基板100(s)は、例えば、上記
図4で示したように、基本的には配線パターン形状に打ち抜き等の手段により形成されたリードフレーム110と、このリードフレーム110の間に一体成型された絶縁材130とにより構成されている。なお、上記
図2において白い閉曲線で囲まれた部分がリードフレーム110を表しており、
図4(A)の灰色の網掛け部分乃至
図4(B)の斜線部分が絶縁材130を表している。
【0051】
上記本発明の電子部品搭載用放熱基板100(s)のうち、リードフレーム110は、導体板により形成されるため、全体としては平板状に形成されており、上面側から見て、電子部品が実装される回路の配線パターン形状に形成されている。そして、上記導体板の配線パターン形状のリードフレーム110への成形手段は、特に限定を設けるものではないが、例えば、プレス加工や打ち抜き加工、又はレーザで加工切断された金属製(例えば、アルミニウム製や銅製)等の板材等のようなものを採用することが可能である。
【0052】
また、上記成形をエッチングによって行うことも可能ではあるが、本発明では、上記導体板の板厚を厚くすることで、当該導体により形成されるリードフレーム110の厚さを増加させ、配線抵抗の減少を図っている。そのため、上記エッチングにより加工を行う場合であっても、材質が銅である場合には、少なくとも70μm程度の厚さ以上に形成することによって、従来のエッチングにより回路パターンを形成した基板よりも放熱特性が改善される。また更に、上記エッチングにより加工を行わず、プレス加工や打ち抜き加工等により上記配線パターン形状のリードフレーム110を形成する場合には、上記導体板の板厚としては、例えば、銅を使用した場合には、少なくとも300μm以上であることが更に望ましい。
【0053】
また、本発明では、上記導体板の板厚は任意に設定することが可能であるため、上記導体板により形成されるリードフレームの信号線を、小電流を流すものと大電流を流すものとで厚さの異なるものを混在させて用いることが可能であり、その場合には、上記プレス加工等における送りさん幅を板厚により変更して加工することも可能である。
【0054】
そのため、上記のように高電流を使用する電子部品に対しては、基板表面上の面積の大小(例えば、リードフレーム110の線幅の大小)などの調整により、線幅の狭い小電流用のリードフレーム110(l)や線幅の広い大電流用のリードフレーム110(h)として対応することも可能ではあるが、これに限らず、上記板厚を増加させることによる体積の増加によって、配線抵抗を減少させると共に放熱性をも改善させる対応が可能であり、その結果として、部品の実装密度を一層向上させることが可能である。
【0055】
そして更に、本発明では、上記導体板として、少なくとも2種類以上の相互に異なる厚さのものを用いるなどして、少なくとも2種類以上の相互に異なる厚さを有する配線パターン形状のリードフレーム110を形成することも可能である。そしてその場合には、これら相互に異なる厚さを有するリードフレームは、相互に混在して配置することも可能である。
【0056】
したがって、上記のように板厚の異なるリードフレームを混在させて用いる構成を採用した場合には、実装される電子部品に通電される電流量に応じたリードフレームを高密度に配置することが可能であり、使用材料や寸法の縮小等を通じて関連コストの削減を図ることも可能である。
【0057】
すなわち、リードフレームを上述のように、例えば、抜き加工で行う場合には、ブランキングと呼ばれる、プレス加工でリードフレーム配線部の輪郭形状を作る作業を行う。そして上記ブランキングの際には材料は最終成形品よりも大きくしたものが用いられ、その大きくした部分は,さん(bridge)と呼ばれ、上記さんには「送りさん幅」と「縁さん幅」とが有る。そして、一般的に上記さん幅の必要最小幅は、板厚をt(mm)とした場合には、「送りさん幅」は1.0t〜1.5tmm程度であり、「縁さん幅」は1.5×「送りさん幅」となっており、上記さん幅を小さくし過ぎると正常な抜きが出来なくなり、パンチ、ダイの摩耗が早まりバリ発生の原因になるといわれている。
【0058】
そこで本発明では、大電流用と小電流(小信号)用のリードフレームとして同じ板厚のものを用いることに代えて、
図5に示したように、上記各電流に対応する複数のリードフレームを用いてこれを混在させることも可能である。なおここで、上記
図5(A)は同一の厚さを有するリードフレームにより構成される本発明の基板の上記リードフレームの延伸方向から見た断面図を示したものであり、
図5(B)は異なる厚さを有するリードフレームにより構成される本発明の基板の上記リードフレームの延伸方向から見た断面図を示したものである。
【0059】
図5(A)で示したように、2つの大電流用のライン110H(幅はそれぞれ、W4、W6)と小信号用のライン110L(幅W5)とに、同一の厚さを有するリードフレーム110を用いた場合には、上記リードフレーム間の間隔は、上記リードフレーム110の厚みt(ここではt=A)に応じた送りさん幅γが必要とされる。そのため、例えば、
図5(A)に示した例では、上記複数のリードフレーム110の幅と上記送りさん幅(充填剤が充填される部分)の配列の合計は概ねα(α≒2γ+W4+W5+W6)となる。
【0060】
その一方、
図5(B)で示したように、2つの大電流用のライン110H(幅はそれぞれ、W1、W3)と小信号用のライン110L(幅W2)とに、異なる厚さ(大電流用のラインの厚さt=A、小電流用のラインの厚さt=B)を有するリードフレーム110を用いた場合には、上記複数のリードフレーム間の相互間隔は、上記大電流ライン110Hの間に小電流ライン110Lを配置することができる為に、上記複数のリードフレーム110の幅と上記送りさん幅(充填剤が充填される部分)の配列の合計は概ねβ(β≒γ+W1+W3)となる。
【0061】
そのため、上記のように構成する結果、上記複数のリードフレーム110と前縁材とにより形成される幅を比較すると、α>βとなり、上記小信号用のライン110Lの厚みを大電流用のライン110Hよりも薄くすることにより、配線密度を高くすることが可能であり、上記小電流ラインのためのリードフレーム110Lは、より板厚の薄い導体板を使用することができる為、使用材料等の節約によるコストの削減等も図ることが可能である。
【0062】
そのため、例えば、リードフレームを作成するための導体板として、板厚tがt=A(但し、A=1.0mm)とt=B(但し、B=0.25mm)を用いた場合に、大電流用のライン110Hを上記板厚がAのもので加工し、小信号用のライン110Lを上記板厚がBのもので加工して、これらを組み合わせて本発明の基板に用いることにより、上記基板の小型化を図ることが可能である。
【0063】
したがって、これを更に具体的な例により説明すると、例えば、
図6及び次に示すように、上記基板に実装される回路を緻密化して、単一の厚さのリードフレームを用いた基板よりも小型化を図ることが可能である。
【0064】
ここで、
図6(A)は単一種類の厚みを有するリードフレーム110を用いて、本発明の電子部品搭載用放熱基板300に回路を構成した上面図であり、
図6(B)は上述したような異なる厚みと幅を有するリードフレーム110Hと110Lとの2種類を用いて、本発明の電子部品搭載用放熱基板350に同様の回路を構成した例を示す上面図である。
【0065】
なお、上記
図6では、上記基板に電子部品EC等を実装した状態を示しており、上記回路は、上述した電動パワーステアリング装置に用いられる3相ブラシレスモータのインバータ回路の例を示している。
【0066】
上記
図6(A)で示したように、上記回路において使用されるFET等の比較的大電流が流れる配線系と、これらの制御の信号に用いられる比較的小電流が流れる配線系とを単一種類の厚み(例えば、1mm)を有するリードフレーム110を用いて、構成した場合には、例えば上記のようにFETを10個搭載した例では、基板表面積は概ね4800mm
2程度になる。
【0067】
その一方、上記
図6(B)で示したように、異なるリードフレーム110を用いて、上記回路において使用されるFET等の比較的大電流が流れる配線系に厚みの厚い(例えば、1mm程度)大電力用のリードフレーム110Hを用い、これらの制御の信号に用いられる比較的小電流が流れる配線系に厚みの薄い(例えば、0.25mm程度)小電力用のリードフレーム110Lを用いた場合には、上記リードフレームの厚みに応じたリードフレームの幅の縮小も可能となるため、上記と同様の回路の基板表面積を概ね4032mm
2程度に小型化することが可能である。
【0068】
そのため、上記のように異なる厚みのリードフレームを用いることにより、上記基板350では、上記基板300よりも15パーセント程度の表面積の削減が可能である。
【0069】
なお、上記リードフレームを形成する導体板の素材は、上記の様な銅やアルミニウム等の比較的安価な金属の良導体などで形成されコストの低減等を図ることが可能であるが、上記導体板はリードフレーム110を形成し、電子部品をはんだ付け等で実装するものであるから、熱伝導性が高いと同時に上記電子部品の実装に当たり適合性の良いものであることが望ましい。
【0070】
図4に戻って説明を続けると、上記本発明の電子部品搭載用放熱基板100(s)のうち、絶縁材130は、上記導体板により形成される配線パターン形状のリードフレーム110間の隙間の空間を埋めるように構成されており、上記リードフレーム間の隙間に充填することで上記リードフレームを相互に接着し、全体の構造を基本的には平板上に安定的に保持するようになっている。
【0071】
そして、上記
図4に示した実施形態100(s)のように、上記導体板から形成される上記リードフレーム110の板厚が相互に同じ場合には、上記リードフレーム110の電子部品を実装する側を上記
図4(A)の紙面に垂直な手前の方向(
図4(B)の場合には上記図の上側方向)を上面側とした場合には、上記リードフレーム110の上面側の板面と上記絶縁材130の上面側の板面(表面)とは、同一の平面を構成するように形成されており、また、上記リードフレーム110が構成する板面の裏面と上記絶縁材130の裏面も同様に同一平面を構成するように形成されている。なお、上記の電子部品を実装する側は任意に選択することが可能であり、上記電子部品搭載用放熱基板100の両面に上記電子部品を実装する構成とする事も可能である。
【0072】
また、
図7に示した実施形態100(d)のように、上記導体板から形成される上記リードフレーム110の板厚が相互に異なる場合には、上記
図4の実施形態100(s)の場合と同様に、上記リードフレーム110の電子部品を実装する側を上記
図7(A)の紙面に垂直な手前の方向(
図7(B)の場合には上記図の上側方向)を上面側とした場合には、上記リードフレーム110の上面側の板面と上記絶縁材130の上面側の板面とは、同一の平面を構成するように形成されている。
【0073】
その一方、上記リードフレーム110の電子部品を実装する側とは裏面側の板面については、上記のようにリードフレーム110の厚さが異なることから、上記リードフレーム110により構成される裏面相互間では同一の平面を構成できない。そこで、前記導体板により形成されるリードフレーム110の前記部品配置面の裏面の板面と前記絶縁材130の部品配置面側の裏面側の板面(表面)とについては、前記リードフレームのうち最も厚みを有するリードフレームの前記部品配置面の裏面の板面に合わせて、前記絶縁材の充填を行い、上記板厚の最も厚いリードフレームの裏面側の板面と前記絶縁体により形成される裏面側の板面とが同一面上に形成されるようになっている。その結果、上記複数の厚みを有するリードフレームを用いた場合の上記基板の裏面は、上記最も厚みの厚いリードフレームの部品配置面の裏面と上記絶縁材とにより同一の平面を構成するように形成されることになる。なお、上記の電子部品を実装する側は任意に選択することが可能であり、例えば、
図5(C)や
図7(C)に例示したように、上記電子部品搭載用放熱基板100(s)若しくは100(d)(以下これらを総称して100(s、d)若しくは100という)の両面に上記電子部品を実装する構成とする事も可能である。
【0074】
また、上記絶縁材130とリードフレーム110との構成は、上記のようにリードフレーム110間に絶縁材130を設ける構成に限られず、
図8及び次に示すような、上記リードフレーム110の部品配置面側の部品実装箇所以外に凹部113を設けて、上記凹部113をも上記絶縁体130により被覆する構成を採用することも可能である。なおここで、上記
図8(A)はリードフレーム110に凹部113を設けた場合の構成例を示す斜視図であり、
図8(B)は上記(A)のX―X線を通る断面を同図中の矢印の方向から見た断面図である。また、上記
図8では、基板全体を示さず、リードフレーム110と絶縁材130との一部の例についてのみ示しており、基板全体に関しては、後述する
図10において、その構成例500を示している。
【0075】
上記
図8に記載する構成例では、リードフレーム110の電子部品ECを実装する部品配置面の板面(上記
図8(A)の斜視図に示す上側の面)のうち、上記電子部品ECを配置しない部分には、上記
図8(B)に示したように、上記部品配置面の板面に表面側凹部113(u)を設けて、上記表面側凹部113(u)に絶縁材130を充填することにより、上記表面側凹部113(u)を上記絶縁材130により被覆する構成を採用している。
【0076】
そして、上記表面側凹部113(u)を被覆する上記絶縁材130の表面は、上記リードフレーム110の部品配置面の板面と上記絶縁材130の上記部品配置面側の表面とで連続した一つの面を形成するように構成されている。
【0077】
また、同様に、上記
図8に記載する構成例では、上記リードフレーム110の電子部品ECを実装する部品配置面の裏面の板面(上記
図8(A)の斜視図に示す下側の面)であって、上記部品配置面のうち上記電子部品ECを配置しない部分の裏面に当たる部分には、上記
図8(B)に示したように、上記部品配置面の裏面の板面に裏面側凹部113(d)を設けて上記絶縁材130により被覆し、併せて、上記裏面側凹部113(d)を被覆する上記絶縁材130の表面は、上記リードフレーム110の部品配置面の裏面の板面と上記絶縁材130の上記部品配置面側の裏面側の表面とで連続した一つの面を形成するように構成されている。なお、ここで、上記のような凹部113の形成方法については特に限定を設けるものではないが、上記リードフレーム110を成形する際に、プレス等の手段により同時に成形することが可能である。
【0078】
そのため、上記
図8に記載する構成例では、上記絶縁材130は上記リードフレーム110間の側面に充填されてこれと接合されるのみならず、上記リードフレーム110の軸方向(例えば上記
図8(A)に記載のX−X線に沿った方向)に垂直な方向で、上記リードフレーム110の両側面から上記絶縁材130を連通させることが可能なため、上記リードフレーム110の上面乃至下面側においても上記リードフレームと接触して接合されることが可能となっている。そして上記絶縁材130は、上記凹部113に充填されるものを含めて、上記のようにリードフレーム110の部品配置面の板面とその裏面側とで同一の平面を構成するように形成されている。
【0079】
したがって、本発明に係る上記
図8に示したような構成例では、上記のようにリードフレーム110と絶縁材130との接触面が拡大される結果として、上記リードフレーム110と絶縁材130との接合強度の向上を図ることが可能である。
【0080】
また更に、本発明に係る上記
図8に示したような構成例では、上記のようにリードフレーム110の部品配置面の板面と上記絶縁材130の表面とが上記凹部113に充填されるものを含めて同一の平面を構成するように形成されていることから、上記各種の電子部品ECを実装するに当たり、ディップ(Dip)式半田供給ではなく、メタルマスクによる半田供給が可能となり半田付け範囲の制御を容易に行うことが可能となる。
【0081】
なお、上記凹部113の構成例はその一例を示したものであるため、上記基板により形成する電子回路に応じて、適切な配置を行うことが可能である。そのため、上記凹部113の形態や配置は上記電子回路に応じて、上記
図8に示したような構成例に限らず、一部の電子部品近傍に配したり、表面側凹部113(u)又は裏面側凹部113(d)のみを配したり、或いは、上記凹部113の輪郭等の構成も曲線等により形成されるものであっても構わない。また、上記凹部の凹面の深さは上記リードフレーム110との接着性や放熱性等を考慮して定めることが可能である。
【0082】
図4に戻って説明を続けると、上記絶縁材130の構成要素は、放熱性のポリカーボネートやエンジニアリングプラスチック等の複合絶縁樹脂材等で成形されるが、これらに限られるものではなく、絶縁性や放熱性、さらに、リードフレーム110を構成する導体板の素材との適合性等を考慮して選択することが可能である。
【0083】
また、本発明では、上記絶縁材130を上述のように、上記導体板による配線パターン形状のリードフレーム110間の空間及びその周囲に充填する構造となっている。そのため、上記絶縁材130により、上記電子部品搭載用放熱基板100全体の剛性を向上させることが可能であり、上記リードフレーム110と共に、上記のように実装される電子部品からの熱を効果的に放熱することが可能である。
【0084】
そして、本発明の上記電子部品搭載用放熱基板100(s、d)では、上記配線パターン状に形成されたリードフレーム110と上記絶縁材130とを例えばインサート成形等の手法により一体化して形成し、上記電子部品搭載用放熱基板100(s、d)を構成する事が可能である。そしてその際、上記のように厚さの異なるリードフレームを用いる場合には、上記のように相互に厚さの異なるリードフレームを相互に混在して上記基板100(d)を構成することも可能である。したがって、厚さの厚い上記リードフレームと厚さの薄い上記リードフレームとを交互に配置したり、或いは、厚さの厚い上記リードフレームの間に厚さの薄い上記リードフレームを複数配置したりするなど、回路構成等や発熱領域の分散等を考慮した配置が可能である。
【0085】
そのため、本発明の電子部品搭載用放熱基板100(s、d)では、上記電子回路の配線パターン形状のリードフレーム110をプレス成型等により形成することができるためタクト削減によるコスト削減を図ることが可能である。また、同様の理由によりターミナル等の実装が不要となるため、部品削減によるコストダウン等も図ることが可能である。また、本実施形態では、トランスファ成形は用いられないが、本発明では上記トランスファ成形によるものと比較して、高温対策が必要な電解コンデサやチョークコイルを同列に配置可能である点や、ワイヤボンディングの工程が不要となる他、急な発熱による基板のソリの発生などを効果的に防止できるため、トランスファモジュールなどに使用されるような、高価なセラミック基板が不要となるという利点がある。
【0086】
次に、
図9(A)は上記のようにして形成された本発明の電子部品搭載用放熱基板100(s、d)の上面側に電子部品EC等を実装した例を図示したものであり、
図9(B)、(C)はその側面図である。なお、ここで、上記
図9(A)は、上記のようなリードフレーム110の厚さが相互に同じもの100(s)を用いた場合であっても、或いは、相互に異なるもの100(d)を用いた場合であっても同様に構成することが可能である。また、上記
図9(B)については上記のようなリードフレーム110の厚さが相互に同じ基板100(s)の場合を例示し、上記
図9(C)については上記のようなリードフレーム110の厚さが相互に異なる基板100(d)の場合を例示している。
【0087】
ここで上記電子部品搭載用放熱基板100(s、d)の上面側に実装される上記電子部品EC等には、電流制御用の半導体スイッチング素子や、制御電流検出用のシャント抵抗や、大容量電解コンデンサ等の発熱性の部品が含まれており、その他に、必要に応じて、上記リードフレーム間等を接続する、銅やアルミニウム等の金属板などからなる銅製コネクタなどのバスバーbbや、ジャンパーピン等も含まれる。また、上記電子部品ECはパッケージされたものに限らず、ベアチップ実装により実装されるものであっても良い。
【0088】
そして、上記
図9に示したように、本発明の電子部品搭載用放熱基板100(s、d)では、上記電子回路の配線パターン形状に形成したリードフレーム110に直接上記電子部品ECを配置して、実装することが可能である。
【0089】
また、上記
図9では図示しないが、搭載電子部品ECのミラー配置等も可能であるため、特に電動パワーステアリング装置の制御装置に用いた場合には、右ハンドルや左ハンドル等の仕様に容易に対応が可能である。さらに、本発明の上記電子部品搭載用放熱基板100(s、d)によれば、上記導体板により形成されるリードフレーム110の上面及び下面の双方に電子部品ECを実装することも可能である。そのため、立体的な基板の配置が可能になるという利点も存する。
【0090】
また、
図10は、上述した
図8に関して説明したように、リードフレーム110に凹部113を設けて、上記リードフレーム110の間のみならず上記凹部113にも上記絶縁材130を充填して基板500の板面を形成した例を示した斜視図であり、上記
図10(A)は上記絶縁材130の充填前のリードフレーム110の状態を示す斜視図であり、上記
図10(B)は上記絶縁材130の充填後の基板500の状態を示す斜視図である。なお、ここで上記凹部113については、表面側凹部113(u)のみが表示されているが、裏面側凹部113(d)を設けることも可能である。また、上記リードフレーム110は、後述する
図14の例と同様に、基板外縁で上方に屈曲させている。
【0091】
本発明では、上記
図10(A)に記載したように、上記基板500を構成するリードフレーム110のうち上記絶縁材130で補強したい部分に予め凹部113を設ける一方、上記リードフレーム110のうち電子部品ECを実装する半田コントロール部分はそのままにすることにより、上記リードフレーム材110の厚みを部分的に変更することが可能である。
【0092】
そして、
図10(B)に示すように、上記リードフレーム110の間及び上記凹部113に上記絶縁材130を充填した後は、上記リードフレーム110と上記絶縁材130とが同一の平面を構成することで、上記電子部品ECを実装する部分のみが基板500上に露出し、Dip式半田供給ではなく、メタルマスクによる半田供給が可能となり且つ、半田付範囲のコントロールを容易に行うことが可能となる。
【0093】
また、
図11は本発明の基板の外縁に、次に示す縁取り部を設けた電子部品搭載用放熱基板200(s、d)の例を示したものであり、
図11(A)はその上面図であり、
図11(B)は上記基板200(s)として同一の厚さを有するリードフレームを用いた場合の側面図であり、(C)は上記基板200(d)として相互に異なる厚さを有するリードフレームを用いた場合の側面図である。なお、上記基板200(d)では、上記リードフレームとして大電流用の厚みを有するもの110Hと、小信号用の厚みを有するもの110Lと、これらの中間程度の電流が通電する中電流用の厚みを有するもの110Mの3種類を含んだものを表示している。
【0094】
上記
図11に記載した電子部品搭載用放熱基板200(s、d)は、上記本発明を構成する絶縁材130の周縁部分に、前記絶縁体130により上記電子部品搭載用放熱基板200の部品配置面側に閉曲線状に構成された縁取り部150を形成したものである。なお、ここでは上記閉曲線状の縁取り部150は、上記絶縁体130の外縁の輪郭に合わせて長方形状に形成しているが、上記輪郭は、選択する基板の形態に合わせて、任意に選択して構成することも可能である。
【0095】
本発明の上記構成では、上記のように縁取り部150を構成して設けることにより、上記リードフレーム110と絶縁材130との接合部分の剥離を一層生じないようにすると共に、上記電子部品搭載用放熱基板200(s、d)の剛性を一層向上させることが可能である。
【0096】
また、上記
図11に記載した電子部品搭載用放熱基板200(s、d)に、
図12に記載するように樹脂をモールドすることも可能である。ここで、上記
図12(A)は上記
図10に示した基板に部品を実装した場合の上面図であり、(B)は上記基板に同一の厚さを有するリードフレームを用いた場合の側面図であり、(C)は上記基板に相互に異なる厚さを有するリードフレームを用いた場合の側面図である。
【0097】
上記
図12に記載した例は、上記電子部品搭載用放熱基板200(s、d)に
図9(A)〜(C)に示すように電子部品ECを実装した後に、上記のように形成された縁取り部150の内側(
図12(B)及び
図12(C)の点線で示した部分の下側)に上記TIMによる放熱材等をモールドして上記電子部品に直接接触させる構成としたものである。
【0098】
そのため、本発明では、上記のような構成を採用することにより、更に上記電子部品からの放熱性の向上を図ることも可能である。なお、上記実施形態では、上記縁取り部150を上記電子部品搭載用放熱基板200(s、d)の上面側にのみ設けているが、上面側のみならず下面側に設けることも可能であり、或いは、下面側のみに設けることも可能である。
【0099】
また、本発明の電子部品搭載用放熱基板は、上記の様な電動パワーステアリング装置等の制御装置の筐体に収納するなどして用いることが可能であるが、本発明の基本思想に基づけば、上記制御装置の筐体の一部を良熱伝導体により構成し、上記電子部品搭載用放熱基板の上記電子部品配置側の裏面と上記制御装置の筐体の上記良熱伝導体からなる部分とを、良熱伝導体からなるTIM等の絶縁膜を介して相互に面接触するように配置するような制御装置の放熱構造を採用することも可能である。
【0100】
そのため、そうした構造を採用した場合には、上記制御装置の放熱構造との相乗効果により、本発明の電子部品搭載用放熱基板による放熱性を更に改善することが可能である。
【0101】
そして、
図13(A)は上記の様な本発明の電子部品搭載用放熱基板100(s)を上記の様な制御装置1000の筐体に収納した場合を例示した側断面図であり、
図13(B)は、従来型の基板5000を上記制御装置2000に収納した場合の例を示す側断面図である。
【0102】
上記
図13(B)に示すような従来型の基板5000を収納した制御装置2000の場合には、基本的な積層構造は、上側から、1.電子部品(FET等)の放熱面、2.半田層、3.銅箔パターン層、4.絶縁層、5.アルミ・ベース基板、6.TIM層1100、7.制御装置1000のケースと放熱器を兼ねるアルミダイカスト1300となっている。それに対して、上記
図13(A)に示すような本発明の電子部品搭載用放熱基板100(s)を収納した制御装置1000の場合には、基本的な積層構造は、1.電子部品(FET等)の放熱面、2.半田層、3.配線パターン(板厚0.3mm〜1mm程度の銅)、4.TIM層110、5.制御装置1000のケースと放熱器を兼ねるアルミダイカスト1300となっている。
【0103】
そのため、本発明の電子部品搭載用放熱基板100(s)によれば、従来型の基板5000と比べて、積層構造を単純化すると同時に導体板から形成される配線パターン形状のリードフレーム110の板厚を増加させることが可能であり、発熱性のある電子部品ECからの放熱を一層効果的に行うことが可能である。なお、上記の例では電子部品搭載用放熱基板として、リードフレーム110の厚さが相互に同じものを使用した基板100(s)の例を用いたが、リードフレーム110の厚さが相互に異なるものを使用した基板100(d)の場合も同様である。
【0104】
また、本発明では、例えば、
図14(A)に斜視図で示したように、上記の導体板により形成される配線パターン形状のリードフレーム110の一部を、上記絶縁体の内周側や外周側で、前記導体板の板面に対して上方又は下方の任意の方向に屈曲させて形成することも可能である。そのため、このように形成した場合には、上記電子部品搭載用放熱基板100(s、d)の外部に存在する接続端子や他の基板等との接続を容易化することが可能である。
【0105】
更に、本発明では、上記のようにリードフレームを予め屈曲させずに、上記電子部品搭載用放熱基板を形成した後でも、前記導体板に形成した配線パターン形状のリードフレームの全部又は一部を、前記絶縁体の周縁より外側で、折り曲げ可能に形成することも可能である。そして、
図15は、上記リードフレーム110をそのように形成した、電子部品搭載用放熱基板800の例を示す斜視図であり、
図15(A)は上記基板800の部品配置面の上方にリードフレームを折り曲げた例を示す斜視図であり、
図15(B)は上記基板800の部品配置面の下方にリードフレームを折り曲げた例を示す斜視図である。(なおここでは、上記基板800は上記EPS用の3相制御インバータのパワーモジュールを想定している。)
本発明では、このように、後加工により上記リードフレーム110を折り曲げることを可能とする事により、次のような利点を有する。
【0106】
すなわち、一般的に複数の電子部品を一つのパッケージにまとめて樹脂などでモールドされたモジュール基板は、通常これとは別の樹脂基板などとリードを介して電気的に接続することになる。この時、上記モジュール基板の上記リード部は事前に決められた方向に向いており、後で自由に向きを変えられるようにはなっていない。そのため、設計や取り扱いの自由度が阻害されていた。
【0107】
その一方、本発明の上記実施形態では、上記リード部(リードフレーム110の絶縁体の周縁より外側の部分)は、後加工で任意の方向に折り曲げられることを特徴としている。
【0108】
そのため、本発明の上記実施形態によれば、最初に上記リード部を折り曲げない状態で形成し、上記電子部品搭載用放熱基板を共通部品として提供することが可能であり、上記電子部品搭載用放熱基板を他の基板と組み合わせて使用する場合や、制御装置内に収納する場合等に、後から、これらの仕様に合わせて、上記リード部の折り曲げが可能である。その結果、いろいろな上記ECU等との組み合わせが可能となり、上記電子部品搭載用放熱基板の搭載位置を決定する際の設計自由度を持たせることが可能となる。
【0109】
なお、上記の構成において、上記リードフレーム110を折り曲げ可能に形成する手段乃至構造については特に限定を設けるものではないが、上記リードフレーム110の材質等を考慮し、少なくとも数度の折り曲げによる脆性破壊を生じないものであることが望ましい。
【0110】
また、
図14に戻って説明を続けると、本発明では、
図14(B)、(C)に断面図を示したように、上記配線パターン形状のリードフレーム110の前記絶縁材130側の側面に上記絶縁材130と係合する係止部115を設ける構成とする事も可能である。上記係止部115は、上記リードフレーム110の側面側から上記絶縁材側130にかけて構成され、上記係止部115の上記絶縁材130側では上記係止部115の上記リードフレーム110の側面側よりも上記リードフレーム110の側面側から見た面積が大きくなるように構成されている。そのため、上記係止部115により、上記リードフレーム110と上記絶縁材130の接合部分の接合を強化して、上記リードフレーム110と上記絶縁材130との熱膨張率の違いなどに基づく剥離等が容易に生じない構成とすることが可能である。
【0111】
また、上記
図14(C)に示したように、リードフレーム110の表面側又は裏面側のいずれか一方又はその双方に係止部115を設ける構成とした場合には、リードフレーム110の伝熱面積が更に拡大され、これにより放熱性を更に向上させることも可能である。
【0112】
また、更に
図16に断面図を示したように、上記配線パターン形状のリードフレーム110の前記絶縁材130側の側面に上記絶縁材130と係合する係止部115を設ける構成として、上記配線パターン形状のリードフレーム110をプレス加工で量産することを前提とした形状とする事も可能である。ここで、上記リードフレーム110の係止部115の外形形状は全て直線を組み合わせる事を特徴して、側面縁部の全域にわたりテーパー形状から始まり中心部の突出し部まで直線形状で終わることを特徴としている。これにより上記配線パターン形状のリードフレーム110の表面積を増加させられるので、伝熱および放熱面の拡大が可能であり、上記絶縁材130との係止面積も増加が可能で、結合がより密になる効果がある。これにより結合強度と放熱性をさらに向上させることも可能である。
【0113】
また、上記係止部115については、更に上記
図16(B)から(I)及び次に記載するような形態を採ることも可能である。なお、上記
図16(B)から(D)は上記リードフレームの係止部115を上記リードフレームの板面の両側の側面が見えるように断面図で表したものであり、上記
図16(E)から(H)は同じく、上記リードフレームの板面の片側の側面が見えるように断面図で表したものであり、上記
図16(I)は上記リードフレームの板面の側面側を上面図で表したものである。
【0114】
上記のうち
図16(B)及び
図16(C)に記載した例は、上記リードフレームの側面の表面側と裏面側から前記側面の中央部側にかけて上記絶縁材側に突出して形成される斜面により形成され、上記斜面は断面が三角形状であるものであって、上記斜面の結合部に断面が円形状や楕円形状等の係止形状を前記斜面から滑らかに形成したものである。すなわち、例えば、上記のうち
図16(B)に記載した例は、上記配線パターン形状のリードフレーム110の前記絶縁材130側の側面に上記絶縁材130と係合する係止部115を設ける構成として、上記配線パターン形状のリードフレーム110をプレス加工で量産することを前提とした形状としたものである。そして、上記リードフレーム110の係止部外形形状はヘチマ形状をしており複数の曲線を組み合わせた事を特徴しており、側面縁部の全域にわたりヘチマ形状の曲面形状により、係止部115の周辺に絶縁材130がスムーズに行き渡ることにより絶縁材130と係止部の結合がより強固になる事を特徴としている。また、上記のうち
図16(C)に記載した例では、リードフレーム110の係止部外形形状はダルマ形状をしており複数の曲線を組み合わせた事を特徴しており、上記の場合と同様に、側面縁部の全域にわたりダルマ形状の曲面形状により、係止部115の周辺に絶縁材130がスムーズに行き渡ることにより絶縁材130と係止部の結合がより強固になる事を特徴としている。そのため、上記
図16(B)や
図16(C)に記載した例では、上記のようにヘチマ形状やダルマ形状を採用することにより、配線パターン形状のリードフレーム110の表面積を増加させられるので、伝熱および放熱面の拡大が可能であり、上記絶縁材130との係止面積の増加とヘチマ形状の中心部の窪み部がリードフレーム110と絶縁材130の結合を密になるように働いている。
【0115】
また、上記のうち
図16(D)に記載した例は、前記リードフレームの一方の板面から他の一方の板面にかけて形成された斜面と他の一方の板面と平行に形成された係止片(階段状の段差で形成された突き出し部)とから上記係止部を形成したものである。すなわち、上記の例も上述のもの等と同様に、配線パターン形状のリードフレーム110をプレス加工で量産することを前提とした形状としたものであり、リードフレームの係止部外形形状は全て直線を組み合わせる事を特徴として、側面縁部のほぼ中央からのびた階段状の段差で構成された突き出し部まで直線形状で終わることを特徴としている。
【0116】
また、上記のうち
図16(E)と(F)に記載した例は、前記リードフレームの側面の表面側と裏面側に前記絶縁材との間に段差を設けることにより係止部を形成したものである。上記係止部の段差の深さ(すなわち、前記リードフレームの側面部から前記段差の形状により前記リードフレームの板面の中央方向まで絶縁材が延伸して形成される長さ)は、前記リードフレームの側面の表面側と裏面側とで異なるものとしても良く、例えば、前記係止部の段差の深さは、
図16(F)に示したように、前記リードフレームの側面の裏面側が大きいものであるように構成するものであっても良い。
【0117】
また、上記のうち
図16(G)と(H)に記載した例は、前記係止部を、前記リードフレームの側面の表面側と裏面側から前記側面の中央部側にかけて前記絶縁材側に突出して形成される斜面により形成したものであり、上記
図16(G)では、前記斜面の断面が三角形状であるものを表示し、上記
図16(H)では、前記斜面の表面側と裏面側からの基点部を上記表面側と裏面側とで上記リードフレームの板面の垂直線上の位置からずらして形成したものである。
【0118】
以上のように、上記
図16(A)から(H)までに記載したような係止部は、上記のようにプレス加工などによる成形が容易であり、係止面積の増加による放熱性や機械的な結合強度の増加が図れると共に、上記のようなリードフレームと絶縁材の境界面にダルマ状の形状やヘチマ状の形状又は上記階段状の段差部などを形成することにより、基板に生ずる結露などによる湿気進入の抑制効果なども持たせることが可能である。
【0119】
また、上記のうち
図16(I)に記載した例は、前記係止部を、前記リードフレームの側面に、前記リードフレームの板面に沿って凹部を形成することによって設けたものであり、上記
図16(I)に示した例では、前記凹部は、前記凹部の解放端側よりも奥側(すなわち前記リードフレームの板面の中心方向)で広く形成されている。そのため、このように係止部をいわば鍵穴状に形成した場合、上記係止部が上記リードフレームの板面を上面から見た場合に板面の側面に沿って形成されているため、プレス加工などによる成形が容易であり、上記のように係止面積の増加による放熱性や機械的な結合強度の増加を図ることが可能である。
【0120】
なお、上記記載のものは係止部の一例を示したものであり、上記記載の係止部のパラメータ(例えば、上記段差の深さ等)を適宜変更することにより、上記リードフレームにより構成しようとする回路の特性などに合わせて調整することが可能である。
【0121】
また、本発明では、
図16(J)や
図16(K)に記載したように、上記リードフレームの板面の側面から内側寄りに形成された、前記リードフレームの表面と裏面とを貫通する樹脂封止形状Rsを設けることも可能である。ここで、上記16(J)の上側の図は上記リードフレームの板面の上面図であり、上記16(J)の下側の図は、上記上面図のX−X線部分での断面図を示し、上記16(K)の上側の図は上記リードフレームの板面の上面図であり、上記16(K)の下側の図は、上記上面図のY−Y線部分での断面図を示している。上記樹脂封止形状Rsは、上述のようにリードフレームの表面と裏面とを貫通するように形成された穴であり、上記
図16(J)、(K)のように長方形状のものであっても或いは円形状のもの等であって良く、特に大きさや形状に限定を設けるものではない。本発明では、上記のような樹脂封止形状Rsを設けることにより、上記リードフレームと上記絶縁材を構成する樹脂等との接合強度を向上させることが可能であるが、特に本発明により上記リードフレームに構成される凹部や上記係止部と組み合わせる事により更に効果的に用いることが可能である。すなわち、例えば、
図16(K)の例は、上述の
図16(E)や(F)の例で示した段差状の係止部の内側に上記樹脂封止形状Rsを形成した例であるが、上記のような構成を併用することにより、更に効果的に上記リードフレームと上記絶縁材との機械的結合強度を向上させることが可能である。
【0122】
また、本発明では、上記リードフレーム110を介して、
図17に記載したように上記電子部品搭載用放熱基板からの放熱を促進する構造を採用することも可能である。ここで上記
図17は、本発明による電子部品搭載用放熱基板800のリードフレーム110に、絶縁材130の周縁より外側で、熱伝導体8000を当接した例を示す斜視図である。なお上記
図17では、上記熱伝導体8000としてはリードフレーム110の形成する2つの列に沿って、8000Aと8000Bとが設けられており、8000Bについては(上記基板800との関係が明瞭になるように)点線により示している。そして、上記リードフレーム110は末端で、他の基板などと接続されるため、上記熱伝導体8000は、上記リードフレーム110に当接しつつ、上記リードフレーム110の末端では接触しない構成となっている。
【0123】
また、上記熱伝導体8000は、任意の熱伝導材料により構成することが可能であるが、基本的には、上記リードフレーム110との絶縁性を確保するために、少なくとも上記リードフレームとの当接部分で電気的絶縁性が確保されるように形成されることが必要である。そのため、上記熱伝導体全体を絶縁体により構成するか、或いは、上記熱伝導体全体を導体で構成する場合であっても、上記熱伝導体の表面に絶縁性のある熱伝導材料(TIM)を用いることが必要である。但し、上記構成はこれに限らず、上記熱伝導体8000と当接される上記リードフレーム110との絶縁性が確保されれば良いため、上記熱伝導体8000が導体により形成されている場合であっても、上記熱伝導体8000に当接する部分の上記リードフレーム110に絶縁性のコーティングを施す等の手段により、熱伝導性と絶縁性とを確保するものであっても構わない。
【0124】
上記
図17に示した構成例では、電子部品ECから発生した熱は次のように伝達される。すなわち、本発明に係る電子部品搭載用放熱基板800には部品配置面上の上記リードフレーム110に電子部品ECが実装されている。そのため、上記
図17に記載したように、上記導体板に形成した配線パターン形状のリードフレーム110の全部又は一部を、前記絶縁体130の周縁より外側で、熱伝導体8000に当接させる構造を採用することにより、上記電子部品ECから発生した熱を上記熱伝導体8000を介して外部へ伝導することが可能である。
【0125】
なお、ここで、上記リードフレーム110を熱伝導体8000に当接させる構造については、特に限定を設けるものではないが、上記
図17に記載したように、上記リードフレーム110の列が構成する板面に沿って上記熱伝導体8000を当接した場合には伝熱面積が大きくなるために熱伝導を効率的に行うことが可能である。
【0126】
また、上記
図17の例では、上記基板800の周縁の2つの側面に立設するように2つの熱伝導体(8000A、8000B)が設けられているが、上記基板800の周縁の4つの側面にリードフレーム110を延伸させて、上記4つの側面に上記熱伝導体8000を設ける構成とする事も可能である。
【0127】
また、同じく、上記
図17に示した例では、上記リードフレーム110を上方に折り曲げているが、必ずしも、上記リードフレーム110を折り曲げているか否か、或いは、上方乃至下方のいずれかに折り曲げているかに拘らず、上記リードフレーム110に上記熱伝導体8000を当接させて熱伝導を行うことが可能である。また、上記基板を収納する筐体や他の基板との組合わせを考慮する必要がある場合などには、上記リードフレーム110の一部に上記熱伝導体8000を当接する構造とする事も可能である。
【0128】
更に、本発明では、上記電子部品搭載用放熱基板の両面を部品配置面とし、前記電子部品搭載用放熱基板には少なくとも同様の2系統の回路からなる冗長回路を形成する構成となっている。
【0129】
そして、その場合には、上記電子部品搭載用放熱基板の部品配置面の一方の面には前記2系統のうちの1系統の回路が形成され、前記部品配置面の他の一方の面には前記2系統のうちの他の1系統の回路が形成され、前記2系統の回路からなる冗長回路のうち、回路配線を共用する部分については、前記部品配置面の一方と他の一方の両面で共通の前記リードフレームを用いるようにすることにより、後述するクロス駆動等により、耐故障性を向上させることが可能であり、上記電子部品に係る電流を抑制することも可能である。
【0130】
すなわち、例えばこれを、上述した電動パワーステアリング装置の3相ブラシレスモータで構成される電動モータのインバータ回路を例に、
図18及び
図19を用いて説明すると、次のようなものとなる。
【0131】
上記
図18は、
図3に示したような電動パワーステアリング装置における3相ブラシレスモータに用いる上記インバータ回路37とモータ開放スイッチ23とを冗長化した例の回路図を示したものである。
【0132】
上記
図18に示した回路では、
図3に示した回路でU,V,Wの各相のそれぞれを構成していた上段FET及び下段FETで成る上下アームとこれに接続されるモータ開放スイッチ23との各相に対応するFETの組みが、冗長回路として、それぞれ2系統設けられている。そのため、
図3のU相を例にとって比較すると、ゲート駆動部36Bからの出力線が
図18ではU−HiとU−Loとして上記2系統の上下アームのそれぞれに接続されており、また、
図3のモータ20への出力線は、
図18では上記2系統の上下アームのそれぞれからU1とU2との2系統が設けられていて、同様の構成がV相、W相についても採用されている。なお、
図18中のシャント抵抗Shは、モータ電流検出手段38に接続されている。
【0133】
したがって、本発明の上記実施形態では、このように上記電動パワーステアリング装置の電源とプリドライバとを1系統にまとめた上で、インバータ回路とモータ配線とを2系統として部分的な冗長系を構成している。そのため、完全なフェイルセーフ(冗長)は満たさないが、故障事象によっては、後述するクロスする通電等により、部分的に上記電動パワーステアリング装置のモータによるアシストを継続することが可能である。また、1系統におけるパワーデバイス(FET)の最大電流定格を50%程度削減できるため、上記パワーデバイスをより小型化することが可能である。
【0134】
また、
図19は上記のように構成される冗長回路の一部の実装例を図示したものであり、
図19(A)は上記
図18に示した3相のうちのW相の部分の冗長回路を抜き出して示した回路図であり、
図19(B)は本発明の電子部品搭載用放熱基板900において、上記W相部分と、上記W相部分で共通して用いられる回路配線部分について共通するリードフレームと、を用いた具体的な例を示す側断面図である。
【0135】
上記
図19(A)でW相の例を示したように、本発明の上記
図18に回路図を示す実施形態では、
図3に示した上記W相を駆動する上段FET3(図中のIで示す部分)と下段FET6からなる上下アームとこれに接続されるモータ解放スイッチのFET9(図中のIIIで示す部分)との組に対して、冗長系として、上段FET3´(図中のIIで示す部分)と下段FET6´からなる上下アームとこれに接続されるモータ解放スイッチのFET9´(図中のIVで示す部分)との組が設けられている。
【0136】
そして、上記
図19(A)に示した回路のうち、図中に両端に矢印の付いた鎖線で示すαの回路配線は電源からの回路配線であるため、上記冗長回路で回路配線を共用することができる部分であり、同様に示す(β、β´)と、(γ、γ´)も機能的にそれぞれ上記冗長回路で回路配線を共用することができる部分である。
【0137】
そこで、本発明では、上記
図19(B)に例示するように、本発明の電子部品搭載用放熱基板900の上面(図中の上側の面)には前記2系統のうちの1系統の回路を構成する上記上段FET3(図中のIで示す部分)と、モータ解放スイッチのFET9(図中のIIIで示す部分)を形成し、上記基板900の下面には前記2系統のうちの他の1系統の回路を構成する上段FET3´(図中のIIで示す部分)と、モータ解放スイッチのFET9´(図中のIVで示す部分)とを組み合わせて形成している。(なお、上記
図19(B)において、上記FETについてはベアチップを用いており、上記各FETやバスバーbb等の基板への実装は半田Soを用いている。)
そして更に上記
図19(B)の例では、上記のような冗長回路で回路配線を共用することができる上記部分(α、(β、β´)、(γ、γ´))をそれぞれリードフレーム110(α)、リードフレーム110(β)、リードフレーム110(γ)、を用いて、上下に配置した冗長回路のそれぞれで共有して用いる構成を採用している。
【0138】
そのため、上記のような構成によれば、電流ルートを2系統に分けるなどにより、電流を冗長系の2系統の回路配線で2分の1ずつ分担して動作させる事が出来る他、通常の電流ルートでは、上記IからIII又はIIからIVであるところ、上記冗長回路に故障が生じた場合には、FETの故障モードによっては、IからIV又はIIからIIIへ(上下面をクロスして)通電することが可能である。
【0139】
そのため、本発明の上記実施形態によれば、上記のように、上記3相を構成する上記基板900の両面に実装された冗長回路を上記基板900の両面の一方の面と他方の面とに構成された冗長回路を組み合わせて使用して、上記のように回路を2系統設けることにより、通常の状態では回路にかかる電流を分散し、故障による障害が発生した場合には、かかる障害を低減乃至回避することが可能である。
【0140】
次に、本発明に係る電子部品搭載用放熱基板を用いれば、次のようなシャント抵抗の接続構造を採用することが可能である。
【0141】
ここで、シャント抵抗とは、一般的には、負荷にかかる電流を検出するための抵抗器(分流器)のことを言う。上記シャント抵抗は、例えば、上述したような電動パワーステアリング装置の場合には、操舵補助トルクを正確に発生させることを目的としたモータ電流のフィードバック制御のための電動モータ電流値(電動モータ電流検出値)の検出等に用いられており、上記フィードバック制御は、操舵補助指令値(電流指示値)と上記電動モータ電流検出値との差が小さくなるように電動モータ印加電圧を調整して行われる。
【0142】
そして、上記のような電動パワーステアリング装置の制御装置30に用いられるような従来の回路基板では、上記シャント抵抗は基板に搭載される際には、上記のように電動モータへ接続する伝送線路に実装されており、上記シャント抵抗を介した電流検出を行う電流検出回路への伝送線路(信号線)に対しては、ワイヤボンディング等により、ワイヤなどの細線により接続されていた。
【0143】
そのため、上記のような従来の基板では、上記シャント抵抗を上記電流検出回路への信号線に電気的に接続するためのボンディング作業が別途必要となるという課題があり、更に、上記接続に用いられるボンディングワイヤなどの細線の抵抗による測定誤差も生じるという課題もあった。
【0144】
そこで、本発明に係る電子部品搭載用放熱基板を用いれば、
図20及び次に構成例を示すようなシャント抵抗の接続構造を採用することにより、これらの課題を解決することが可能である。なお、ここで、上記
図20は、本発明によるシャント抵抗SRの接続構造を図示した斜視図であり、(A)は本発明に係る電子部品搭載用放熱基板100(d)へ、シャント抵抗SRを接続する前の構成を示した斜視図であり、(B)は上記基板100(d)へシャント抵抗SRを接続した後の構成を示した斜視図である。また、上記
図20においては、上記電子部品搭載用放熱基板100(d)については、その一部のみを表示している。
【0145】
本発明の上記構成例では、上記
図20(A)に示したように、上述した、上記電子部品搭載用放熱基板100(d)は、相互に異なる厚みを有するリードフレーム110を備えており、更に言えば、これらのリードフレーム110は、比較的大電流を通電することを想定する厚みの厚いリードフレーム110Hと、比較的小電流を通電することを想定する厚みの薄いリードフレーム110Lとから構成されている。
【0146】
そして、上記厚みの厚いリードフレーム110H上には、上記
図20(A)内に点線で示した枠のように、上記シャント抵抗SRの2つの端子をそれぞれ接続する2つの接続部CPを有している。なお、ここで、上記接続部CPは上記シャント抵抗SRを接続する部分として設定した領域であり、回路配置に応じて適切な位置が決定される。
【0147】
また、上記リードフレーム110H上に設定した接続部CPの一部であって、相互に対向する位置には、それぞれ切り欠き部LPが設けられており、上記切り欠き部LPには上記厚みの薄いリードフレーム110Lの一端が配置されている。そして、上記厚みの薄いリードフレーム110Lは信号線として、上記シャント抵抗SRを用いた電流検出回路に接続されている。
【0148】
そして、上記のように構成される基板100(d)の上記接続部CPに、
図20(B)に示すように、シャント抵抗SRを配置する場合には、上記接続部CPにおける切り欠き部LPの上に上記シャント抵抗の2つの端子が上から覆いかぶさるように載置して接続することにより、上記シャント抵抗SRを上記基板100(d)の上記2種類のリードフレーム110Lと110Hとに実装することが可能である。また、上記接続は、上記厚みの厚いリードフレーム110Hと厚みの薄いリードフレーム110Lとの部品実装面側の上面が同一の平面上にあることから、上記接続部CP及び切り欠き部LPに半田を印刷することも可能であり、SMT(表面実装:(Surface Mount Technology))後にリフローすることで半田接続することが可能である。
【0149】
このため、以上のように構成される本発明に係る電子部品搭載用放熱基板を用いるシャント抵抗の接続構造によれば、上記シャント抵抗SRからダイレクトに電流検出信号を引き出せるため、SMT後のリフローのみでワイヤボンディング工程を必要とせず安価に供給することが可能である。また上記のように電流検出にワイヤ等の細線を用いないために、電流検出精度を一層向上させることも可能である。また、更に、本発明では、上記のように半田により基板面に直接実装することで強固な構造を形成することができる為、上記のようなワイヤボンディングや、ワイヤボンディングを行った後に、樹脂で埋めて固定するという方法が不要となり、上記ワイヤボンディング等による接続に比べて格段に耐久性が向上するため、例えば、電動パワーステアリング装置のECUが備えられる車両などから伝わる、車体や路面からの不規則な振動や温度変化の大きい過酷な環境においても、長期にわたって安定的な構造を維持することが可能である。
【0150】
なお、上述の電子部品搭載用放熱基板を用いるシャント抵抗の接続構造は、その構成例の一例を示したものであって、本発明の趣旨の範囲で他の構成例を用いることも可能である。そのため、上記のように接続部CPに切り欠き部LPを設けずに、
図21に示したように、上記接続部CPの近傍に、上記厚みの薄いリードフレーム110Lの一端を配設する構成としても構わない。なお、ここで上記
図21は、上記他の構成例を上記
図20の場合と同様に示したものである。
【0151】
そして、この場合でも、上記シャント抵抗SRの2つの端子との接続は、上記リードフレーム110Hの上面側に設定した2つの接続部の上に上記シャント抵抗の2つの端子をそれぞれ載置することにより行うが、その際には、上記厚みの薄いリードフレーム110Lの一端も上記シャント抵抗SRの2つの端子のそれぞれの下部に直接接続するように行うことが望ましい。(これは、上記厚みの薄いリードフレーム110Lの一端を上記厚みの厚いリードフレーム110Hに接続することで上記シャント抵抗SRを間接的に上記電流検出回路に接続することも可能ではあるが、その場合には配線抵抗が増加して測定誤差を生ずるおそれがあるためである。)
そのため、上記近傍とは、上記シャント抵抗の2つの端子を上記リードフレーム110Hとの接続部に接続部に配置した場合に、上記シャント抵抗の2つの端子の下方に上記リードフレーム110Lの一端が配設されるように構成可能な領域であって、上記シャント抵抗と上記リードフレーム110Lとの直接接続が可能な領域のことを意味している。
【0152】
したがって、以上のように、本発明に係る電子部品搭載用放熱基板を用いるシャント抵抗の接続構造の他の構成例によっても、上記のようにコストの削減と電流検出精度の向上とを達成することが可能である。
【0153】
そのため本発明では、以上のような構成を備える事により、大電流が流れるようなパワー半導体等を用いた回路であっても、大電力動作による配線抵抗の低減と放熱性の向上とを図ることが可能であり、本発明の電子部品搭載用放熱基板を上記電動パワーステアリング装置等に用いることにより、これらの装置の更に効果的な運用が可能である。
【0154】
なお、本発明によるリードフレーム110と絶縁材130により構成される基板は、
図23から
図26の記載を参照して説明すると、例えば、次のようにして形成することが可能である。
【0155】
ここで、上記
図23から
図26は上記基板のうちリードフレーム110の厚さが異なる場合の基板の作成例を説明する図であり、
図23(A)は厚みの厚いリードフレーム110Hを形成した後にキャリア(Car)を上記フレームの両末端側に残した場合を示す上面図であり、(B)は、同様に厚みの薄いリードフレーム110Lを形成した後にキャリア(Car)を上記フレームの両末端側に残した場合を示す上面図であり、(C)は上記(B)と(C)に記載した2種類のリードフレームを上記キャリアを介して組み合わせた場合の上面図である。また、上記
図24(A)は
図23(C)のように組み合わせた2種類のリードフレームを金型に組み込んで、樹脂材などの絶縁材130と相互に組み合わせる例を図示した側断面図であり、(B)は上記金型による成形後の側断面図であり、(C)は上記組合せ後に上記キャリアを外した後の上面図である。但し上記
図24(C)では、絶縁材130は省略して表示している。また、
図25は厚みの厚いリードフレーム110Hと厚みの薄いリードフレーム110Lを基板両面に配置する場合に、絶縁材130を充填する場合の手段を示すためのものであり、
図25は、一つの基板の両面に、厚みの厚いリードフレーム110Hと厚みの薄いリードフレーム110Lが配置され、そこにFETなどの電子部品が実装される場合の上面図について下面側を透視した状態で示した図である。なお、上記
図25では、上記一つの基板の裏面側のリードフレームとFETについては点線で表示しており、上記一つの基板の両面に実装されるFETからの端子はゲート端子のみを表示している。また、上記FETは厚みの厚いリードフレーム110Hに実装されると同時に、上記FETのゲート(Gate)端子は上記基板上で厚みの薄いリードフレーム110Lに接続されるようになっている。また、
図26は、厚みの薄いリードフレームと厚みの薄いリードフレームとを組み合わせた基板(多重リードフレーム基板)を形成する場合のフローチャートを示したものである。
【0156】
本発明では、上記のように、厚みの厚いリードフレーム110Hと厚みの薄いリードフレーム110Lとを組み合わせた基板を作成する場合には、
図26に記載したフローチャートに示すように、最初に導体板などにより、リードフレームの形状に加工する(ステップS1)。そして、その際には
図23(A)及び
図23(B)に示すように、厚みの厚いリードフレーム110Hと厚みの薄いリードフレーム110Lとを別個に作成しておき、それぞれのリードフレームの両側端側には、後の加工のためにキャリアCarを形成しておく。上記キャリアCarは、上記に図示するようにリードフレームの両側端側に形成される帯状の部分であり、上記各リードフレーム110を絶縁材130に結合させる前の形態の維持や後述するリードフレーム相互間の位置合せなどのために形成されている。
【0157】
そして、上記のようにそれぞれのリードフレームが形成された後には、
図23(A)及び
図23(B)に示すような、異なる厚さの上記リードフレームの位置合せが行われる(ステップS2)。上記位置合せは、
図23(C)に示すように、上記異なる厚さのリードフレームを重ね合わせて位置を固定するものであり、例えば、上記
図23(A)及び
図23(B)に示すような2つのリードフレームのキャリアCarに、予め位置決めのための加工をしておき、その加工箇所を利用してキャリアCar部分をカシメて位置ずれを生じないように固定することで、位置ずれを防止する(ステップS3)。
【0158】
そして、次に、上記のように位置の固定を行ったリードフレームを
図24(A)に示すように、樹脂成型用金型にセットする(ステップS4)。上記樹脂成型金型は上側と下側の金型(上型、下型)から構成されており、絶縁材130を構成する樹脂などを充填する際に上記リードフレームの形状の保持を図るものである。そのため、上記リードフレームのうち厚みの薄いリードフレーム110Lの下側には、上向きのピン(高さ方向位置出しピン(P23))が併せて配設され、上記厚みの薄いリードフレーム110Lを下側から上側に向かって、押さえることができるように構成されている。
【0159】
そして、次には、上記のようにリードフレームをセットした金型に絶縁材130を構成する樹脂を流し込んで成形が行われ(ステップS5)、上記成形が行われた後に上記金型を外して(ステップS6)、
図24(B)や
図24(C)に示したように、完成した本発明の基板を得ることが可能である。なお、この際、上記ピンP23を配設した部分には絶縁材130が形成されないが、本発明による基板を用いる用途や他の構成要素との組み合わせに応じて、上記部分に新たに絶縁材130を充填してもよく、あるいは充填しない選択も可能である。また、基板表面(部品実装面)にバリが生じている場合には、必要に応じて、上記バリの除去を行って完成した基板を得る事も可能である(ステップS7)。
【0160】
また、本発明では、上述のようにして、本発明による基板を形成させることが可能であるが、更に、
図5(C)や
図7(C)に示したように、本発明の基板両面に厚さの薄いリードフレームを構成する場合には、例えば、次のように形成することが可能である。
【0161】
すなわち、上記のステップS6に記載するように、金型に上記厚みの薄いリードフレーム110Lをセットする際に、
図25に記載するように、上側の基板と下側の基板の、FETなどの部品実装面となる板面を、上記基板の板面を通る垂直線上の位置が完全には重ならないように、言い換えれば、上面から裏面を透視して見た場合に相互に完全には重ならないように、予め上記リードフレーム110Lを多少シフトして形成しておく。
【0162】
そして、そのシフトした部分、すなわち、前記のようにシフトしたことにより前記電子部品搭載用放熱基板の表面から裏面を透視して見た場合に相互に完全に重ならない部分を利用して、
図25に示すように、下側(裏面側)のリードフレーム110Lを上記上側の金型から新たに設けた下向きのピンP23´により保持し、同様に、
図25(B2)に示すように、上記シフトした部分を利用して、上側(表面側)のリードフレーム110Lを上記下側の金型に設けた上向きのピンP23により保持するような構造として、上記樹脂などからなる絶縁材130を充填することが可能である。
【0163】
そのため、このような形成方法により、上記下向きのピンP23´と上記上向きのピンP23を用いて、上記基板の表面側と裏面側にそれぞれ厚みの薄いリードフレーム110Lを保持する事が可能となり、上記絶縁材130を充填することで、本発明の基板両面に厚みの薄いリードフレーム110Lが配置された構成を実現する事が可能である。