特許第6191787号(P6191787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191787
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】圧電振動部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 3/02 20060101AFI20170828BHJP
   H03H 9/02 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   H03H3/02 B
   H03H9/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-568275(P2016-568275)
(86)(22)【出願日】2015年9月8日
(86)【国際出願番号】JP2015075417
(87)【国際公開番号】WO2016111047
(87)【国際公開日】20160714
【審査請求日】2017年5月1日
(31)【優先権主張番号】特願2015-2484(P2015-2484)
(32)【優先日】2015年1月8日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】能登 和幸
(72)【発明者】
【氏名】上 慶一
(72)【発明者】
【氏名】大石橋 秀和
【審査官】 橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−307396(JP,A)
【文献】 特開2013−168863(JP,A)
【文献】 特開2003−218662(JP,A)
【文献】 実開昭60−20146(JP,U)
【文献】 特開2014−197615(JP,A)
【文献】 特開2013−145964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 3/02
H03H 9/02
H01L 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子が実装される主面を有する基板を準備する工程と、
前記主面に対向するように開口された凹部及び前記凹部の周縁に設けられた縁部を有するリッドを準備する工程と、
前記主面に絶縁膜を形成する工程と、
前記縁部に第1の絶縁接着層を形成する工程と、
前記第1の絶縁接着層に重ねて第2の絶縁接着層を形成する工程と、
前記圧電振動子を前記凹部と前記主面との間の空間に密閉封止するように前記第1及び第2の絶縁接着層を接合する工程と、
を備える圧電振動部品の製造方法。
【請求項2】
請求項に記載の圧電振動部品の製造方法であって、
前記第1の絶縁接着層を形成する工程は、前記第1の絶縁接着層を仮硬化させる工程を含む、圧電振動部品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧電振動部品の製造方法であって、
前記第1及び第2の絶縁接着層を接合する工程は、前記第1及び第2の絶縁接着層を硬化させる工程を含む、圧電振動部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発振子や帯域フィルタとして圧電振動子が広く用いられている。従来の圧電振動子の一態様として、例えば特開2013−62712号公報では、水晶振動子を外気から密封するための構造を有する表面実装水晶振動子が提案されている。同公報で提案されている表面実装水晶振動子は、水晶振動子が実装されるセラミック基板と、水晶振動子を囲繞するようにセラミック基板の表面に環状形成された絶縁膜と、絶縁膜に重ねて形成された樹脂等からなる封止材と、絶縁膜及び封止材を介してセラミック基板に接合する金属リッドとを備えている。封止材を加熱溶融しながら金属リッドをセラミック基板に圧着することにより、水晶振動子を金属リッド内部に密閉封止することができる(同文献段落0050,0054)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−62712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、封止材を加熱溶融しながら金属リッドをセラミック基板に圧着して接合すると、封止材の加熱時に封止材と金属リッドとの間に隙間が生じる場合がある。この隙間が進行すると、封止材と金属リッドとの間の接着強度が不足し、金属リッドがセラミック基板から外れてしまう虞がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、圧電振動子を基板に密閉封止するためのリッドと絶縁接着層との間の接着力を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る圧電振動部品は、圧電振動子が実装される主面を有する基板と、主面に形成された絶縁膜と、主面に対向するように開口された凹部及び凹部の周縁に設けられた縁部を有するリッドと、リッドと基板の間に設けられた第1の絶縁接着層及び第2の絶縁接着層と、を備え、第1及び第2の絶縁接着層は、圧電振動子を凹部と主面との間の空間に密閉封止するように縁部と絶縁膜の間において接合されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、圧電振動子を基板に密閉封止するためのリッドと絶縁接着層との間の接着力を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る圧電振動部品の分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る圧電振動部品の製造過程の部分断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る圧電振動部品の製造過程の部分断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る圧電振動部品の製造過程の部分断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る圧電振動部品の製造過程の部分断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る圧電振動部品の製造過程の部分断面図である。
図7】本発明の実施形態の変形例に係る圧電振動部品の製造過程の部分断面図である。
図8】本発明の実施形態の変形例に係る圧電振動部品の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る圧電振動部品40の分解斜視図である。同図に示すように、圧電振動部品40は、主に、圧電振動子20と、圧電振動子20が実装される主面11を有する基板10と、圧電振動子20を外気から密閉するためのリッド30とを備えている。圧電振動子20は、厚み方向に対向する二つの面を有する平板状の圧電板21と、圧電板21の一方の面に形成された励振電極22と、圧電板21の他方の面に形成された励振電極23とを備えている。励振電極22,23に交流電圧を印加すると、圧電板21は、厚みすべりモードで振動する。圧電板21は、圧電特性を示す圧電材質(例えば、水晶板や圧電セラミックスなど)からなる。励振電極22,23は、例えば、金、クロム、ニッケル、アルミニウム、チタン等の導電性薄膜からなる。
【0010】
基板10は、その厚み方向に対向する二つの面を有する平板状をなしており、二つの面のうち圧電振動子20が実装される面を主面11と称する。主面11には、導電性接着剤12を介して励振電極23に導通する配線13と、導電性接着剤15を介して励振電極22に導通する配線16と、配線13,16とリッド30との間の電気絶縁を十分に確保するための絶縁膜50が形成されている。絶縁膜50は、圧電振動子20の周囲を囲繞するように略矩形環状(略矩形枠状)に形成されている。絶縁膜50として、例えば、ガラス薄膜を用いることができる。ガラス薄膜によれば、高い電気絶縁を確保できる。基板10は、適度な機械的強度及び電気絶縁性を有する材質(例えば、アルミナ等の絶縁セラミックス、合成樹脂、金属板の表面を絶縁層で被覆した複合材など)からなる。なお、基板10は、コーナー部分(角部分)の一部を円筒曲面状に切り欠くように形成された切欠き部14,17を有しており、配線13,16は、それぞれ、切欠き部14,17から主面11の裏面まで延在して外部回路に接続することができる。
【0011】
リッド30は、圧電振動子20を外気から密閉するための有底蓋部材であり、図6に示すように、主面11に対向するように開口された凹部31と、凹部31の周縁を略矩形環状に囲繞する枠状の縁部32とを有する。凹部31は、リッド30の内部に陥没する有底凹部であり、圧電振動子20を封止するために必要十分な開口面積と開口深さを有している。縁部32は、リッド30が主面11に接合する面を提供する。なお、図8の変形例に示すように、縁部32は、凹部31の開口中心から開口縁に向かって突出するようにフランジ状に形成されてもよい。リッド30は、金属材質、絶縁材質(例えば、セラミック)、或いは複合材(例えば、絶縁部材の表面を金属薄膜で被覆してなる複合材など)からなるものでもよい。リッド30は、縁部32に形成された第1の絶縁接着層61と、絶縁膜50に重ねて形成された第2の絶縁接着層62とを介して、基板10に接合される。第1及び第2の絶縁接着層61,62は、絶縁性の接着剤であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、加熱処理により硬化して接着作用を示す非導電性接着剤を用いることができる。このような接着剤として、例えば、エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ系接着剤を用いることができる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などの二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂などを使用することができる。また、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂または脂環式エポキシ樹脂など、一般に知られているものも適用することができる。第1及び第2の絶縁接着層61,62として用いられるエポキシ系接着剤は、エポキシ樹脂の硬化を促進させるための硬化剤を含有してもよい。硬化剤は、低温での貯蔵安定性に優れ、室温では殆ど硬化反応を起こさないが、熱や光等により速やかに硬化反応を行う硬化剤である。なお、第1及び第2の絶縁接着層61,62は、互いに同じものでもよく、或いは異なるものでもよい。リッド30は、キャップ、カバー或いはパッケージ部材と称することもできる。
【0012】
次に、図2乃至図6を参照しながら、圧電振動部品40の製造工程について説明する。まず、図2に示すように、基板10及びリッド30を準備する。次に、図3に示すように、基板10の主面11に絶縁膜50を形成する。絶縁膜50としてガラス薄膜を用いる場合、主面11にガラスペーストを印刷しこれを焼成すればよい。絶縁膜50が形成される位置は、リッド30の縁部32が主面11に接合する位置に整合するように調整される。なお、絶縁膜50を主面11に形成した後で、圧電振動子20を主面11に実装してもよく、或いは絶縁膜50を主面11に形成する前に、圧電振動子20を主面11に実装してもよい。次に、図4に示すように、凹部31の縁部32に第1の絶縁接着層61を形成する。このとき、第1の絶縁接着層61が縁部32に均一に塗れ広がるように、第1の絶縁接着層61を均一の膜厚で塗布するのが好ましい。第1の絶縁接着層61は、縁部32に沿って略矩形環状に形成され、その平面形状は、絶縁膜50の平面形状とほぼ同一である。なお、第1の絶縁接着層61を形成する工程は、液体状態の第1の絶縁接着層61を縁部32に塗布する工程と、液体状態の第1の絶縁接着層61を仮硬化させる工程とを含んでもよい。仮硬化とは、加熱によってゲル化はするが凝固はしない状態を意味し、具体的には、液体状態と硬化状態との間の半硬化状態を意味する。第1の絶縁接着層61を仮硬化させるには、例えば、硬化反応を途中で強制的に停止させればよい。第1の絶縁接着層61を予め仮硬化の状態にしておくことで、第1の絶縁接着層61の液だれを抑制できる。
【0013】
次に、図5に示すように、絶縁膜50に重ねて第2の絶縁接着層62を形成する。第2の絶縁接着層62は、絶縁膜50に沿って略矩形環状に形成され、その平面形状は、第1の絶縁接着層61の平面形状とほぼ同一である。第2の絶縁接着層62を形成する工程は、液体状態の第2の絶縁接着層62を絶縁膜50に重ねて塗布する工程を含むが、第2の絶縁接着層62を仮硬化させる工程は含まなくてもよい。なお、第2の絶縁接着層62の形態態様は上記に限定されるものではなく、例えば、図7に示すように、第2の絶縁接着層62をリッド30の縁部32に設けた第1の絶縁接着層61に重ねて形成してもよい。この場合、基板10とリッド30を接合する前に、第1及び第2の絶縁接着層61,62をいずれも仮硬化させてもよい。
【0014】
次に、図6に示すように、圧電振動子20を凹部31と主面11との間の空間に密閉封止するように第1の絶縁接着層61と第2の絶縁接着層62とを接合する。この接合工程では、第1の絶縁接着層61と第2の絶縁接着層62とを圧着した後に(或いは圧着しながら)熱を加えることで、分子間の結合(架橋化)を促進し、第1の絶縁接着層61及び第2の絶縁接着層62を共に硬化状態に移行させる。このとき、第1の絶縁接着層61及び第2の絶縁接着層62は、押圧方向に対して垂直な方向にやや押し潰されながら両者の界面で結合する。このように、基板10の主面11に第2の絶縁接着層62を形成するだけでなく、リッド30の縁部32にも第1の絶縁接着層61を予め形成しておくことにより、縁部32の表面の微小な凹凸の隙間に第1の絶縁接着層61が十分に入り込みやすくし、縁部32の表面の濡れ性や親和性を高めることができる。これにより、リッド30の縁部32と第1の絶縁接着層61との間に、接着性に優れた接着界面の形成を促すことができる。第1の絶縁接着層61が縁部32の表面の微小な凹凸の隙間に入り込んだ状態で第1の絶縁接着層61が硬化すると、投錨効果(アンカー効果)やファンデルワールス力等が複合的に作用し、リッド30と第1の絶縁接着層61との間の接着力を高めることができる。
【0015】
なお、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0016】
10…基板
11…主面
12…導電性接着剤
13…配線
14…切欠き部
15…導電性接着剤
16…配線
17…切欠き部
20…圧電振動子
21…圧電板
22…励振電極
23…励振電極
30…リッド
31…凹部
32…縁部
40…圧電振動部品
50…絶縁膜
61…第1の絶縁接着層
62…第2の絶縁接着層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8