(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191811
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】燃料管接合構造
(51)【国際特許分類】
F16L 11/04 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
F16L11/04
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-220692(P2012-220692)
(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公開番号】特開2014-74421(P2014-74421A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】荒井 大樹
(72)【発明者】
【氏名】古賀 佑介
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真冬
(72)【発明者】
【氏名】中島 克哉
【審査官】
黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−80091(JP,U)
【文献】
実開昭61−163735(JP,U)
【文献】
実開平3−70529(JP,U)
【文献】
特開平11−210959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/00 − 11/26
B60K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が燃料タンクの近傍且つ側面にラップする位置に配される燃料管と、
一端側に前記燃料管の先端側が挿入されて互いに接合されるとともに、他端側が前記燃料タンクの側面に接続される可撓性の燃料ホースとからなる燃料管接合構造であって、
前記燃料管の先端側は、前記燃料管の基端側の外径よりも径が大きい大径部を有し、該大径部を構成する壁部の壁部端面が前記燃料管の端面を構成しないように、前記壁部端面を前記燃料管の内側に向かって屈曲させた屈曲部が形成され、
前記壁部端面が、前記燃料管の基端側の内壁面よりも外側に位置する
ことを特徴とする燃料管接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料管接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の燃料タンクには、燃料タンクに燃料を供給するためのフィラーパイプや、燃料タンクへの燃料の入れすぎを防止するためのレベリングパイプ等の燃料管が、それぞれフィラーホース又はレベリングホース等の燃料ホースを介して接続されている。
【0003】
特許文献1では、燃料タンクと給油口との間を接続するフィラーパイプの端部には、可撓性を有するフィラーホースが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−290188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば車両が衝突されると燃料タンクや燃料管等が衝撃により移動してしまうおそれがある。この場合に、上記のように燃料タンクと燃料パイプとの間の燃料ホースは、燃料タンクと燃料管の移動量や移動方向が異なると変形してしまう。そうすると、燃料ホースの変形状態によっては燃料管の先端がホースを内側から傷つけてしまうことが考えられる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決することにあり、燃料ホースの変形時であっても燃料ホースを内側から傷つけてしまうことを防止した燃料管接合構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の燃料管接合構造は、先端が燃料タンクの近傍且つ側面にラップする位置に配される燃料管と、一端側に前記燃料管の先端側が挿入されて互いに接合されるとともに、他端側が前記燃料タンクの側面に接続される可撓性の燃料ホースとからなる燃料管接合構造であって、前記燃料管の先端側は、前記燃料管の基端側の外径よりも径が大きい大径部を有し、該大径部を構成する壁部の壁部端面が前記燃料管の端面を構成しないように、前記壁部端面を前記燃料管の内側に向かって屈曲させた屈曲部が形成され
、前記壁部端面が、前記燃料管の基端側の内壁面よりも外側に位置することを特徴とする。
【0008】
前記燃料管を構成する壁部の端面が前記燃料管の端面を構成しないように前記壁部の端部が屈曲されて屈曲部が形成されていることで、燃料ホースの変形時に燃料ホースの内壁面に接触するのは屈曲部であり、壁部の端面ではないので燃料ホースを内側から傷つけてしまうことを防止することができる。
そして、前記壁部端面が、前記燃料管の基端側の内壁面よりも外側に位置しているので、燃料管における燃料の流路を阻害することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の燃料管接合構造によれば、燃料ホースの変形時であっても燃料ホースを内側から傷つけてしまうことを防止できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の燃料管接合構造を説明するための模式図である。
【
図2】本実施形態の燃料管接合構造を説明するための断面模式図である。
【
図3】衝突時における本実施形態の燃料管接合構造を説明するための(a)模式図(b)要部断面図である。
【
図4】衝突時における従来の燃料管接合構造を説明するための(a)模式図(b)要部断面図である。
【
図5】別の実施形態にかかる燃料管接合構造を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の燃料管接合構造を用いた燃料管及び燃料ホース、並びに燃料タンクの関係を説明するための模式図である。燃料タンク1には、燃料ホースであるレベリングホース2を介して燃料管であるレベリングパイプ3が接続されている。レベリングホース2は可撓性を有する材料から構成されている。なお、
図1では説明のため燃料タンク1に接続される他のパイプについては省略する。
【0015】
レベリングパイプ3は、他端側(基端側)32が図示しないセパレータに接続されている。レベリングパイプ3の一端側(先端側)31は、レベリングホース2の一端側21に挿入されて接続されている。詳しくは後述するが、レベリングパイプ3の一端側31は本実施形態にかかる燃料管接合構造Iを適用しており、レベリングパイプ3の先端がレベリングホース2を突き破ることがないように構成されている。レベリングホース2の他端側22は、燃料タンク1のレベリングバルブ11に接続されている。
【0016】
これらのレベリングパイプ3、レベリングホース2及びレベリングバルブ11により燃料が流通する流路4が形成されている。燃料は、給油口からセパレータを介してレベリングパイプ3の流路4に導入され、レベリングホース2及びレベリングバルブ11を通過して燃料タンク1内に導入される。
【0017】
レベリングパイプ3及びレベリングホース2の燃料管接合構造Iについて
図2を用いて詳細に説明する。レベリングホース2の一端側21の内部には、レベリングパイプ3の一端側31が挿入されている。なお、本実施形態では、レベリングパイプ3及びレベリングホース2についてはクランプ5によりレベリングパイプ3がレベリングホース2に挿入された状態で固定されている。
【0018】
レベリングパイプ3の一端側31には、レベリングパイプ3を構成する壁部33が外周側に隆起してレベリングパイプ3の他の部分(基端側)よりも外径が大きい大径部34が形成されている。レベリングパイプ3の壁部33が外周側に隆起していることで、可撓性を有するレベリングホース2もこれに従って外側に向かって隆起し、レベリングホース2からレベリングパイプ3が抜けにくくなるように構成されている。
【0019】
レベリングパイプ3の大径部34では、大径部34を構成する壁部33の端部がさらに内側に屈曲されて屈曲部35が形成されている。このように本実施形態のレベリングパイプ3は、端部がレベリングパイプ3の内側に向かって曲げられている。
【0020】
この屈曲部35により、レベリングパイプ3の端面Pが形成されている。そして、レベリングパイプ3の一端側31に位置する壁部33の壁部端面36は、端面Pに臨まない。即ち、レベリングパイプ3の一端側31の壁部33の壁部端面36が端面Pを構成しないように、レベリングパイプ3の端部は屈曲されている。具体的には、レベリングパイプ3の壁部端面36が、レベリングパイプ3の延設方向に対して平行な面よりも基端側を向くように屈曲されている。
【0021】
さらに、レベリングパイプ3の一端側31に位置する壁部33の壁部端面36が、レベリングパイプ3の壁部33の内壁面よりも外側に位置するようにレベリングパイプ3の端部は屈曲されている。
【0022】
本実施形態では、レベリングパイプ3の端部がこのように構成されていることで、衝突時に燃料タンク1やレベリングパイプ3が移動してレベリングホース2が変形したとしてもレベリングパイプ3の壁部端面36がレベリングホース2に接触しない。従って、レベリングホース2を内側から傷つけることがない。この点について、
図3を用いて説明する。
【0023】
図3は、衝突時に燃料タンク1が
図1に示す位置から移動した状態を示すものである。燃料タンク1が移動したことで、レベリングパイプ3と燃料タンク1とを接続するレベリングホース2が大きく変形する。即ち、燃料タンク1とレベリングパイプ3との間のレベリングホース2は、燃料タンク1とレベリングパイプ3の移動量や移動方向が異なると大きく変形する。このような場合に、レベリングホース2とレベリングパイプ3の壁部端面36が燃料管の端面を構成しないので、レベリングホース2の壁面と壁部端面36とは接触しない。
【0024】
即ち、本実施形態では、レベリングホース2の変形によってもレベリングパイプ3の壁部端面36がレベリングホース2に接触してレベリングホース2の内側を傷つけてしまわないように、レベリングパイプ3の壁部端面36はレベリングパイプ3の屈曲部35により構成されている。このように構成されていることで、燃料タンク1やレベリングパイプ3が移動したことによりレベリングホース2が変形したとしても、レベリングホース2に接触するのは屈曲部35であり、レベリングパイプ3の壁部端面36ではない。従って、レベリングパイプ3の壁部端面36がレベリングホース2を内部から傷つけることを防止できる。
【0025】
また、壁部端面36が壁部33の内壁面よりも外側に位置するように壁部33が屈曲されていることで、屈曲部35周辺で燃料の流れを阻害することがない。壁部端面36が壁部33の内壁面よりも内側に位置すると、流路4に壁部33の端部がせり出すことになり、これにより流路4の抵抗が変わって燃料の流れを阻害するおそれがあるからである。
【0026】
図4は、レベリングパイプ3及びレベリングホース2の燃料管接合構造Iが適用されていない従来の構造を示している。即ち、レベリングパイプ3’の端部は屈曲されておらず、レベリングパイプ3’の壁面の壁部端面36’は端面P’を構成している。この場合に、燃料タンク1’が移動することでレベリングホース2’が変形すると、レベリングパイプ3’の壁部端面36’がレベリングホース2’に接触し、レベリングホース2’を内部から傷つけてしまう虞があるため、好ましくない。
【0027】
従って、本実施形態では、レベリングパイプ3の壁部端面36がレベリングパイプ3の端面Pを構成しないで、レベリングパイプ3の端面Pが屈曲部35により構成されていることで、レベリングホース2の変形によってもレベリングパイプ3の壁部端面36がレベリングホース2に接触してレベリングホース2の内側を傷つけてしまわないように構成しているのである。
【0028】
本実施形態のようにレベリングパイプ3の端面Pが壁部端面36により構成されなければ、屈曲部35及び大径部34の形状は本実施形態に示されたものに限定されない。
【0029】
本発明の別の実施形態について、
図5を用いて説明する。
図5に示す実施形態では、レベリングパイプ3Aは壁部33Aの端部が外側に曲げられて大径部34Aを形成している点が上述した実施形態とは異なっている。
【0030】
図5に示すように、レベリングパイプ3Aの端部は外側に曲げられて大径部34Aを形成している。この場合に、レベリングパイプ3Aの端面PAは、大径部34Aを構成する屈曲部35Aにより構成される。レベリングパイプ3Aの壁部33Aの壁部端面36Aは、レベリングパイプ3Aに向かっている。
【0031】
このように、本実施形態ではレベリングパイプ3Aは壁部33Aの端部が外側に曲げられて大径部34Aを形成しつつ、壁部端面36Aが端面PAを構成しないように壁部端面36Aが曲げられている。本実施形態では、レベリングパイプ3Aの端面PAは、大径部34Aを構成する屈曲部35Aにより構成されている。これにより、本実施形態であっても衝突時においてレベリングホース2Aが変形したとしても、レベリングホース2Aには壁部端面36Aでなく屈曲部35Aが接触することで、レベリングホース2Aを内側から傷つけることが防止される。
【0032】
上述した各実施形態では、大径部を設けたが、これに限定されない。大径部は設けていなくても良い。
【0033】
上述した各実施形態では、レベリングパイプ3、3A及びレベリングホース2、2Aを例として燃料管接合構造を説明したがこれに限定されない。例えばフィラーパイプ及びフィラーホース等の他の燃料管接続構造についても本発明の燃料管接合構造を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の燃料管接合構造は、燃料管が燃料ホースを内側から傷つけることが防止されている。従って、車両製造業分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 燃料タンク
2、2A レベリングホース
3、3A レベリングパイプ
4 流路
5 クランプ
11 レベリングバルブ
21 一端側
22 他端側
31 一端側
32 他端側
33、33A 壁部
34、34A 大径部
35、35A 屈曲部
36、36A 壁部端面
I 燃料管接合構造
P、PA 端面