特許第6191818号(P6191818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191818
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】デシカント式車両空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 3/00 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   B60H3/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-154473(P2013-154473)
(22)【出願日】2013年7月25日
(65)【公開番号】特開2015-24707(P2015-24707A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】沖中 和見
(72)【発明者】
【氏名】沼波 伸伍
【審査官】 石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−156350(JP,A)
【文献】 特開2010−137598(JP,A)
【文献】 特開2010−260474(JP,A)
【文献】 特開2011−121516(JP,A)
【文献】 特開平08−067136(JP,A)
【文献】 米国特許第05556028(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源から車載バッテリを充電可能な車両に搭載され、
車室外から車室内へ空気を導入する空気導入経路と、
前記空気導入経路に設けられ、前記空気導入経路を通過する空気から水分を吸収する吸湿材と、
前記吸湿材の下流側の前記空気導入経路に設けられたヒータと、
前記ヒータを通過した空気を前記吸湿材の上流側の前記空気導入経路に還流させる還流路と、
前記ヒータにより温めた空気を前記還流路を介して前記吸湿材の上流側に還流させ、前記吸湿材に吸収された水分を蒸発させ、当該水分を含んだ空気を前記車室内に排出して、前記吸湿材の水分吸収性能を回復させる再生制御手段と、
を備えたデシカント式車両空調装置であって、
前記再生制御手段は、前記車載バッテリの充電期間の開始時期に前記ヒータを作動させて前記吸湿材に吸収された水分の一部を蒸発させる第1の再生を行い、前記充電期間の終了時期に前記吸湿材に吸収された水分の残りを蒸発させる第2の再生を行うことを特徴とするデシカント式車両空調装置。
【請求項2】
前記第2の再生の実行時間は、前記第1の再生の実行時間より短く設定されることを特徴とする請求項1に記載のデシカント式車両空調装置。
【請求項3】
前記空気導入経路を通過して前記車室内に排出する空気の流量を可変させる空気流量可変手段と、
前記車両の外気温度を検出する外気温度検出手段と、を備え、
前記再生制御手段は、更に、前記第2の再生において、前記外気温度検出手段により検出された外気温度に基づいて前記空気流量可変手段を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のデシカント式車両空調装置。
【請求項4】
前記再生制御手段は、前記外気温度検出手段により検出された外気温度が所定温度より高い場合には、前記第1の再生を行わず、前記第2の再生によって前記吸湿材の再生を行うことを特徴とする請求項3に記載のデシカント式車両空調装置。
【請求項5】
設定時刻に基づいて自動的に空調を行うプレ空調制御手段を有し、
前記充電期間の前記終了時期は、前記プレ空調制御手段における前記設定時刻に基づいて設定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のデシカント式車両空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デシカント式車両空調装置における吸湿材の再生制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、吸湿材を用いることで、消費エネルギーを抑えて除湿が可能なデシカント式車両空調装置が開発されている。
例えば、特許文献1には、デシカント式車両空調装置が開示されている。特許文献1のデシカント式車両空調装置は、車外からの空気取り入れ口と車室内への空気排出口とを連通する空気導入経路と、車室内または車外の空気を取り入れ車外に排出する再生用経路を備えている。空気導入経路にはヒータ及び冷房用の熱交換器が配置されている。更に、空気導入経路と再生用経路とを隣接させた位置に吸湿材(吸湿ロータ)を備え、吸湿材を回転させて空気導入経路と再生用経路との間を移動可能に構成している。吸湿材は、空気導入経路に位置する部位で空気内の水分を吸収して除湿を行い、その後再生用経路に移動して再生用経路を通過する空気に水分を排出することで、吸湿性能を回復させる再生が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−240573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のようにデシカント式車両空調装置を電気自動車に搭載することで、除湿時の電力消費を抑えることができる。
更に、車両空調装置の小型化を図るために、吸湿材を空気導入経路のみに固定して配置し、ヒータ通過後の空気の一部を再生用経路によって吸湿材に導入可能な構造として、例えば車載バッテリの充電期間中に、外気を導入しながら、ヒータで温めた空気の一部を再生用経路を介して吸湿材に導入し通過させて、吸湿材の水分を除去する車両空調装置が開発されている。
【0005】
しかしながら、このような構成の車両空調装置では、吸湿材から排出された水分を含む空気が車室内に排出されるので、車室内の湿度が上昇してしまう。
したがって、このように車室内の湿度が上昇した状態では、車両の窓ガラスが結露する虞があり、例えば車載バッテリの充電期間が終了し発進しようとしても、すぐには発進できないといった問題が発生してしまう。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、車載バッテリの充電期間における吸湿材の再生制御を適切に行い、充電期間終了時における車室内の結露を抑制するデシカント式車両空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するべく、請求項1のデシカント式車両空調装置は、外部電源から充電可能な車両に搭載され、車外から車室内へ空気を導入する空気導入経路と、空気導入経路に設けられ、空気導入経路を通過する空気から水分を吸収する吸湿材と、吸湿材の下流側の空気導入経路に設けられたヒータと、ヒータを通過した空気を吸湿材の上流側の空気導入経路に還流させる還流路と、ヒータにより温めた空気を還流路を介して吸湿材の上流側に還流させ、吸湿材に吸収された水分を蒸発させ、当該水分を含んだ空気を車室内に排出して、吸湿材の水分吸収性能を回復させる再生制御手段と、を備えたデシカント式車両空調装置であって、再生制御手段は、車載バッテリの充電期間の開始時期にヒータを作動させて吸湿材に吸収された水分の一部を蒸発させる第1の再生を行い、充電期間の終了時期に吸湿材に吸収された水分の残りを蒸発させる第2の再生を行うことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2のデシカント式車両空調装置は、請求項1において、第2の再生の実行時間は、第1の再生の実行時間より短く設定されることを特徴とする。
また、請求項3のデシカント式車両空調装置は、請求項1または2において、空気導入経路を通過して車室内に排出する空気の流量を可変させる空気流量可変手段と、車両の外気温度を検出する外気温度検出手段と、を備え、再生制御手段は、更に、第2の再生において、外気温度検出手段により検出された外気温度に基づいて空気流量可変手段を制御することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4のデシカント式車両空調装置は、請求項3において、再生制御手段は、外気温度検出手段により検出された外気温度が所定温度より高い場合には、第1の再生を行わず、第2の再生によって吸湿材の再生を行うことを特徴とする。
また、請求項5のデシカント式車両空調装置は、請求項1から4のいずれか1項において、設定時刻に基づいて自動的に空調を行うプレ空調制御手段を有し、充電期間の終了時期は、プレ空調制御手段における設定時刻に基づいて設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1のデシカント式車両空調装置によれば、車載バッテリの充電期間において再生制御手段によって吸湿材の再生が行われるが、当該再生が充電期間の開始時期と終了時期との2つの期間に分けて行なわれるので、充電期間の終了時期に行う第2の再生における吸湿材からの水分の蒸発量を抑制することができる。これにより、第2の再生において吸湿材から蒸発した水分を含む空気が車室内に排出されても、車両の窓ガラスの結露を抑制することができる。したがって、充電期間終了時にすぐに車両の発進を可能にすることができる。
【0011】
また、第2の再生終了時での吸湿材の顕熱を、その後の暖房に利用することができ、当該暖房による消費エネルギーを低減させることができる。
請求項2のデシカント式車両空調装置によれば、第2の再生の実行時間が第1の再生の実行時間より短く設定されるので、充電期間の終了時期に実行される第2の再生での吸湿材からの水分の蒸発量をより少なくすることができ車両の窓ガラスの結露を更に抑制することができる。
【0012】
請求項3のデシカント式車両空調装置によれば、第2の再生において、外気温度に基づいて車室内に排出される空気の流量が可変制御されるので、外気温度に応じて変化する結露限界を超えないように車室内に流入する空気の流量を制御することができ、車両の窓ガラスの結露を確実に防止することができる。
請求項4のデシカント式車両空調装置によれば、外気温度が所定温度より高い場合には、第1の再生を行わず、第2の再生のみによって吸湿材の再生を行うので、第2の再生での車両の窓ガラスの結露を抑制しつつ、第2の再生終了時での吸湿材の顕熱を増加させ、その後の暖房における消費エネルギーを更に低減させることができる。
【0013】
請求項5のデシカント式車両空調装置によれば、プレ空調制御手段において空調を自動的に行う設定時刻に基づいて、車両の窓ガラスの結露を抑制しつつ第2の再生を行って吸湿材の再生を完了させることができる。したがって、プレ空調制御手段における設定時刻に吸湿材の性能が回復された状態にして、すぐに車両の発進を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る車両空調装置の室内ユニットの概略構成図である。
図2】本実施形態に係る車両空調コントロールユニットでの再生制御要領を示す。
図3】外気温度の低温時での充電期間におけるヒータ、ブロアファンの作動状況の一例を示すタイムチャートである。
図4】外気温度の高温時での充電期間におけるヒータ、ブロアファンの作動状況の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態に係る車両空調装置1は、吸湿材8により除湿を行うデシカント式車両空調装置であって、電気自動車(以下、車両という)に搭載されている。
本実施形態に係る車両は、車両に搭載された図示しない車載バッテリから電力を供給して走行モータを駆動し走行する。車両には、充電コードを介して外部から供給された電力によって車載バッテリを充電する充電機が搭載されており、例えば深夜のように車両を使用していない時間帯で、車載バッテリの充電が行われる。
【0016】
本実施形態の車両空調装置1には、公知のプレ空調機能が備えられている。 プレ空調機能は、あらかじめ設定した設定時刻に車室内の温度が設定温度になるように、設定時刻より前から自動的に空調を作動開始させる機能である。乗員が設定時刻に車両に乗り込んだときにあらかじめ車室内の温度を設定温度にしておくことで、快適性を高めることができる。なお、当該プレ空調機能は、車両空調コントロールユニット30によって制御され、本願発明のプレ空調制御手段に該当する。
【0017】
図1は、本実施形態における車両空調装置1の室内ユニット2の概略構造図である。
図1に示すように、本実施形態に係る室内ユニット2は、車両のインストルメントパネル内に設置されており、空気導入経路3と再生用経路4(還流路)の2つの空気流路を有している。
空気導入経路3は、空気取り入れ口5と、車室内への空気排出口6との間を連通する通路であり、その内部には、ブロアファン7(空気流量可変手段)、吸湿材8、ヒータ9及び図示しない冷媒循環路が接続された熱交換器を備えている。
【0018】
空気取り入れ口5は、車室外から外気を導入する外気導入口10と車室内の空気を導入する内気導入口11の2つを有し、内外気切換ダンパ12によって、外気導入口10及び内気導入口11の開口面積を可変制御し、外気及び内気の空気導入経路3への流入量を可変可能に構成されている。
内外気切換ダンパ12の下流の空気導入経路3には、上流側から順番にブロアファン7、吸湿材8、ヒータ9が配置されている。
【0019】
ブロアファン7は、空気取り入れ口5から下流側の空気排出口6へ向かって空気を送る機能を有する。
吸湿材8は、空気導入経路3を通過する空気から水分を吸収する機能を有する公知のフィルタ状の部材であって、空気導入経路3を通過する空気の全量が吸湿材8を通過するように配置されている。
【0020】
ヒータ9は、暖房用に用いられるヒータであって、空気導入経路3の流路面積の一部に配置されている。なお、ヒータ9は、例えば電気ヒータ、ヒートポンプや燃焼式ヒータである。
ヒータ9の上流側の空気導入経路内には、温調ダンパ13が設けられている。温調ダンパ13は、吸湿材8を通過した空気の殆どがヒータ9に流入する第1の位置P1と、吸湿材を通過した空気の殆どがヒータ9に流入しない位置P2との間で移動可能であって、吸湿材8を通過した空気のヒータ9への流量を制御する機能を有する。
【0021】
空気導入経路3の下流側端部にある空気排出口6は、クーラ吹出口20、デフロスタ吹出口21及びヒータ吹出口23の3つから構成されている。
クーラ吹出口20は、ヒータ9を通過しない空気がスムーズに排出されるように、ヒータ9の位置から空気導入経路3の流路方向に対して垂直方向にずれて配置されている。
デフロスタ吹出口21は、クーラ吹出口20に隣接して配置されている。
【0022】
ヒータ吹出口23は、ヒータ9を通過した空気がスムーズに排出するように、ヒータ9に面してその下流側に配置されている。
空気導入経路3の下流側端部には、クーラ吹出口20とデフロスタ吹出口21との分岐部に、第1のモード切換ダンパ24が設けられている。第1のモード切換ダンパ24は、クーラ吹出口20の開口面積及びデフロスタ吹出口24の開口面積を可変制御し、空気導入経路3からクーラ吹出口20及びデフロスタ吹出口21への空気の排出量を調整する機能を有する。
【0023】
また、空気導入経路3の下流側端部には、ヒータ吹出口23を開閉する第2のモード切換ダンパ25が設けられている。
再生用経路4は、空気導入経路3のヒータ9より下流側から分岐して、内外気切換ダンパ12とブロアファン7との間の空気導入経路3に接続されている。再生用経路4の入口26は、ヒータ吹出口23に隣接し、ヒータ9を通過した空気の多くが流入するように、ヒータ9に面して下流側に配置されている。
【0024】
また、空気導入経路3の下流側端部には、再生用経路4の入口26を開閉する流路切換ダンパ27が設けられている。
ブロアファン7、ヒータ9、内外気切換ダンパ12、温調ダンパ13、第1のモード切換ダンパ24、第2のモード切換ダンパ25、流路切換ダンパ27は、夫々車両空調コントロールユニット30によって作動制御される。
【0025】
更に、本実施形態の車両には、外気温度を検出する外気温度センサ31(外気温度検出手段)を備えている。
車両空調コントロールユニット30は、公知の車両空調コントロールユニットと同様に、車両の空調操作装置から設定温度、内外気切り換え、設定風量等の信号、及び車室内温度を入力し、ブロアファン7、ヒータ9、内外気切換ダンパ12、温調ダンパ13、第1のモード切換ダンパ24、第2のモード切換ダンパ25及び図示しない冷媒循環路の冷媒循環用ポンプ等を作動制御して、車室内の暖房及び冷房等の空調を行う機能を有する。なお、このような車室内の空調時には、流路切換ダンパ27は、再生用経路4の入口26を閉じるように作動制御される。
【0026】
上記のように、吸湿材8を備えた車両空調装置1では、空気導入経路3を通過する空気が吸湿材8を通過する際に、空気中の水分が吸収され、湿度が低下する。したがって、冷房及び暖房の両方を作動させて除湿させるような吸湿材8のない車両空調装置と比較して、除湿時において電力消費を大幅に低下させることができる。
上記再生用経路4は、吸湿材8に吸収された水分を排出し、吸湿材8の水分吸収性能を回復させる吸湿材8の再生時に使用される。
【0027】
車両空調コントロールユニット30は、吸湿材8の再生時に、再生用経路4の入口26を開くように流路切換ダンパ27を制御するとともに、外気導入口10を若干開くように内外気切換ダンパ12を制御する。更に、吸湿材8を通過した空気の一部がヒータ9に流入するように温調ダンパ13を中間位置P3に制御し、デフロスタ吹出口21が閉じるように第1のモード切換ダンパ24を制御する。そして、ヒータ9及びブロアファン7を作動させる。なお、この吸湿材8の再生時における制御を行う車両空調コントロールユニット30が本発明の再生制御手段に該当する。
【0028】
これにより、ヒータ9を通過して温められた空気が再生用経路4を介して空気導入経路3のブロアファン7の上流側に還流される。そして、この温められた空気と当該空気よりも湿度の低い外気とが混合して吸湿材8を通過することによって、吸湿材8に吸着されている水分を蒸発させる。水分を含んだ空気の一部は、クーラ吹出口20あるいはヒータ吹出口23から車室内に排出される。
【0029】
このようにして、本実施形態では、暖房用のヒータ9を用いて吸湿材8から水分を蒸発させ、吸湿材8の水分吸収性能を回復させる再生が可能となっている。
したがって、本実施形態では、吸湿材8を空気導入経路3のみに固定して設置すればよく、引用文献1のように吸湿材8を再生用経路4にも移動可能とする移動機構を不要とし、吸湿材8を小型化でき、再生用のヒータを新たに設ける必要もなく、コンパクトに車両空調装置1を構成することができる。
【0030】
そして、吸湿材8の再生は、吸湿材8において水分の吸収量が限界に近づいたときに必要とされるが、本実施形態では、車載バッテリの充電期間に行うように設定されている。なお、この車載バッテリの充電期間とは、充電が可能となる期間、具体的には例えば充電コードを接続したときから、充電コードを外して車両を発進させるまでの期間である。
図2は、本実施形態に係る車両空調コントロールユニット30での再生制御要領を示す。
【0031】
車両空調コントロールユニット30は、再生制御として、外気温度センサ31から外気温度Tを、バッテリ充電コントロールユニット40から車載バッテリの充電率(SOC:State Of Charge)情報を入力するとともに、プレ空調機能における設定時刻を入力し、ブロアファン7、ヒータ9及び内外気切換ダンパ12を作動制御する。
本実施形態の再生制御は、バッテリ充電コントロールユニット40から車載バッテリの充電開始信号(車載バッテリの充電が開始要求されたことを示す信号、例えば充電コードの接続信号等)が入力して、制御を開始する。
【0032】
図2に示すように、始めに、ステップS10では、外気温度センサ31から外気温度Tを入力し、当該外気温度Tが所定温度T1以下であるか否かを判別する。所定温度T1は、上記吸湿材8の再生を行って車室内に水分を排出しても、車両の窓ガラスに結露が発生しないような温度に設定すればよい。外気温度Tが所定温度T1以下である場合には、ステップS20に進む。外気温度Tが所定温度T1より大きい場合には、ステップS60に進む。
【0033】
ステップS20では、吸湿材8の再生(第1の再生)を開始する。吸湿材8の再生は、上記のように、再生用経路4の入口26、外気導入口10、クーラ吹出口20が開くように、流路切換ダンパ27、内外気切換ダンパ12、第1のモード切換ダンパ24の作動を制御するとともに、吸湿材8を通過した空気の一部がヒータ9に流入するように温調ダンパ13を中間値P2に制御し、更にヒータ9及びブロアファン7を作動させることで行われる。そして、ステップS30に進む。
【0034】
ステップS30では、再生が略完了したか否かを判別する。ここで再生の略完了とは、吸湿材8に未だ水分が少し残っている状態であって、例えば吸湿材8に吸収されていた水分の90パーセントが蒸発した状態である。このような状態は、例えば吸湿材8の前後の空気温度差を検出して判定してもよいし、簡易的に再生時間が所定の設定時間に到達したことによって判定してもよい。再生が略完了した場合には、ステップS50に進む。再生がまだ略完了の状態に達していない場合には、ステップS40に進む。
【0035】
ステップS40では、再生を継続する。そして、ステップS30に戻る。
ステップS50では、第1の再生を終了、即ち再生を中断する。詳しくは、ブロアファン7及びヒータ9の作動を停止する。そして、ステップS60に進む。
ステップS60では、車載バッテリの充電を開始するように、バッテリ充電コントロールユニット40に充電開始許可信号を出力する。そして、ステップS70に進む。
【0036】
ステップS70では、バッテリ充電コントロールユニット40から車載バッテリの充電状態(SOC)を入力し、当該SOCが所定値S1以上であるか否かまたはプレ空調が開始されているか否かを判別し、SOCが所定値S1以上であるか、またはプレ空調が開始されている場合には、ステップS90に進む。SOCが所定値S1未満であり、かつプレ空調開始が開始されていない場合には、ステップS80に進む。なお、所定値S1は、例えば90パーセント程度に設定すればよい。
【0037】
ステップS80では、充電を継続するようにバッテリ充電コントロールユニット40に信号を出力する。そして、ステップS70に戻る。
ステップS90では、吸湿材の再生(第2の再生)を開始する。なお、このときの再生では、外気温度センサ31から外気温度Tを入力して、当該外気温度Tに基づいて室内の窓ガラスに結露が発生しないように、ブロアファン7の回転速度を可変制御して、車室内への空気の排出量を調整する。当該ブロアファン7の回転速度は、外気温度Tに基づいてあらかじめ確認して記憶しておいた値を用いればよい。そして、ステップS100に進む。
【0038】
ステップS100では、再生が完了したか否かを判別する。再生の完了とは、例えば吸湿材8に保持されている水分が100パーセント蒸発した状態である。再生が完了した場合には、ステップS120に進む。再生がまだ完了していない場合には、ステップS110に進む。
ステップS110では、再生を継続させる。そして、ステップS100に戻る。
【0039】
ステップS120では、所定時間経過後、再生を終了させる。詳しくは、再生が完了と判定されてから更に所定時間T2再生を行った後に、ブロアファン7及びヒータ9の作動を停止する。そして、ステップS130に進む。なお、この所定時間T2は、再生が確実に完了するように念のため行うものであり、例えば数分程度に設定すればよい。
ステップS130では、バッテリ充電コントロールユニット40から車載バッテリの充電状態(SOC)を入力し、当該SOCが所定値S2以上であるか否かを判別する。SOCが所定値S2以上である場合には、ステップS150に進む。SOCが所定値S2未満である場合には、ステップS140に進む。なお、所定値S2は、例えば100パーセントに近い値に設定すればよい。
【0040】
ステップS140では、充電を継続する。そして、ステップS130に戻る。
ステップS150では、充電を終了する。そして、本制御を完了する。
図3及び4は、充電期間におけるヒータ9、ブロアファン7の作動状況の一例を示すタイムチャートであり、図3は外気温度の低温時、図4は外気温度の高温時を示す。
上記ように、制御することで、車載バッテリの充電期間において、外気温度が所定温度T1以下である低温時には、図3に示すように、充電開始時(充電期間の開始時期)に、初めに第1の再生、即ち再生の全体量のうち若干残して再生を行い、その後充電を行って、充電率SOCが充電完了直前になった時点またはプレ空調開始時に残りの再生である第2の再生を行って完了させる。これにより、充電完了時あるいはプレ空調終了時、即ち充電期間の終了時期には再生が完了する。このように、車載バッテリの充電期間に行う再生を第1の再生と第2の再生の二度に分割して行うので、第2の再生時において車室内に排出される水分量を少なくすることができる。これにより、第2の再生時に車両の窓ガラスの結露を抑制することができる。更に、第2の再生の実行時間は第1の再生の実行時間より短くなっていることで、第2の再生時において車室内に排出される水分量を更に少なくすることができ、第2の再生時に車両の窓ガラスの結露を更に抑制することができる。
【0041】
また、第2の再生において、外気温度Tに基づいてブロアファン7の回転速度を制御することで、車両の窓ガラスの結露を確実に防止することができる。
このように、第2の再生時に車両の窓ガラスの結露が防止されることで、充電完了時あるいはプレ空調完了時には、窓ガラスが結露しておらず、すぐに車両を発進させることができる。また、充電完了時あるいはプレ空調完了時の直前まで再生を行っているので、吸湿材8の顕熱をその後の暖房に利用して、エネルギー消費、即ち車載バッテリの電力消費を抑えることができる。
【0042】
一方、充電期間において、外気温度が所定温度T1より高い高温時には、図4に示すように、第1の再生を行わず、全ての再生を第2の再生によって行う。外気温度が所定温度T1より高い高温時には、このように全ての再生を第2の再生によって行っても、再生時に窓ガラスに結露が発生しない。そして、充電完了時(あるいはプレ空調完了時)における吸湿材の顕熱を増加させ、その後の暖房使用時における電力消費を更に抑制することができる。
【0043】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定するものではない。例えば、上記再生制御のステップS70において、車載バッテリのSOC、あるいはプレ空調開始のいずれかのみを判定してもよい。
また、上記実施形態では、第1の再生後に車載バッテリの充電を開始しているが、第1の再生と同時に充電を行ってもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、第2の再生において、外気温度Tに基づいてブロアファン7の回転速度を制御しているが、各ダンパ12、13、24、25、27を制御して、車室内に排出される空気の流量を制御してもよい。
また、上記実施形態の車両は電気自動車であるが、プラグインハイブリッド車でもよく、外部電源から車載バッテリに充電可能な車両に広く本願発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 車両空調装置
3 空気導入経路
4 再生用経路(還流路)
7 ブロアファン(空気流量可変手段)
8 吸湿材
9 ヒータ
30 車両空調コントロールユニット(再生制御手段、プレ空調制御手段)
31 外気温度センサ(外気温度検出手段)
図1
図2
図3
図4