特許第6191862号(P6191862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191862
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】水素−酸素結合装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 5/00 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   C01B5/00 D
【請求項の数】1
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-140558(P2013-140558)
(22)【出願日】2013年7月4日
(65)【公開番号】特開2015-13768(P2015-13768A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年5月17日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成24年度経済産業省「発電用原子炉等安全対策高度化技術基盤整備事業(水素安全対策高度化)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】谷口 昌司
(72)【発明者】
【氏名】上西 真里
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕久
(72)【発明者】
【氏名】日野 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】上地 優
(72)【発明者】
【氏名】寺田 敦彦
(72)【発明者】
【氏名】西畑 保雄
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−224100(JP,A)
【文献】 特開昭62−083301(JP,A)
【文献】 特開2013−024644(JP,A)
【文献】 特開昭60−086495(JP,A)
【文献】 特開2014−046270(JP,A)
【文献】 特開2014−046271(JP,A)
【文献】 特開2011−230064(JP,A)
【文献】 特開2011−139991(JP,A)
【文献】 特表2006−501989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00−6/34
G21F 9/00−9/36
B01J 21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素および酸素を含むガスが通過するパス部材と、
前記パス部材内に配置され、前記ガスに接触されることにより水素および酸素を結合させる触媒を備える複数の触媒部と
を備え、
複数の前記触媒部は、前記ガスの流れ方向に沿って配置されるとともに、
前記ガスの流れ方向下流側に配置される前記触媒部が、
前記ガスの流れ方向上流側に配置される前記触媒部に比べ、
多くの前記触媒を備えている
ことを特徴とする、水素−酸素結合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素−酸素結合装置、詳しくは、水の分解により生じる水素および酸素を再結合させるための水素−酸素結合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントとして、一般に、沸騰水型原子力プラントが用いられている。この沸騰水型原子力プラントでは、核燃料物質を含む燃料を、原子炉圧力容器内の炉心に装荷し、その核燃料物質の核分裂により生じる熱によって、冷却水を加熱して、蒸気を発生させている。このように発生した蒸気は、タービンに供給され、発電に供される。
【0003】
一方、冷却水は、核分裂により生じる中性子やガンマ線などの放射線によって、水素(ガス)と酸素(ガス)とに分解される場合がある。
【0004】
また、例えば、上記した通常運転の他、設備の故障等によっても水素および酸素が生じる場合があり、具体的には、例えば、炉心融解を伴う事故が生じると、多量の水が分解されることにより、多量の水素および酸素が生じる場合がある。
【0005】
さらに、原子力プラントにおいて生じる放射性廃棄物(汚染水を含む。)は、通常、容器に密閉され、地中に埋設されるが、その容器内において、放射性廃棄物によって水が分解され、水素および酸素が生じる場合がある。
【0006】
このような水素および酸素の混合ガスは可燃性であるため、安全性の観点から、水素および酸素を再結合させ、水に戻すことが要求されており、例えば、水素および酸素を再結合させる再結合触媒を用いることが提案されている。
【0007】
具体的には、例えば、再結合装置内に、水素および酸素を再結合させる触媒を配置するとともに、原子炉において生じる水素および酸素を含むガスをその再結合装置に導入し、再結合装置内において、触媒と接触させ、水素および酸素を再結合させて、水を得ることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
また、例えば、粉末状触媒を放射性廃棄物とともに容器に封入し、放射性廃棄物が水を分解することにより生じる水素と酸素とを、触媒により再結合させて、水を生じさせることが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−230064号公報
【特許文献2】特開2008−298640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載されるように、水素および酸素を結合させ、水を生じさせる場合には、反応熱が生じるため、触媒周辺の温度が上昇して、水素が発火する場合がある。そのため、水素の発火を抑制することが要求されている。
【0011】
そこで、本発明の目的は、水素および酸素を結合させるとともに、水素の発火を抑制することができる水素−酸素結合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の水素−酸素結合装置は、水素および酸素を含むガスが通過するパス部材と、前記パス部材内に配置され、前記ガスに接触されることにより水素および酸素を結合させる触媒を備える複数の触媒部とを備え、複数の前記触媒部は、前記ガスの流れ方向に沿って配置されるとともに、前記ガスの流れ方向下流側に配置される前記触媒部が、前記ガスの流れ方向上流側に配置される前記触媒部に比べ、多くの前記触媒を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水素−酸素結合装置では、水素および酸素を含むガスがパス部材により通過され、そのパス部材内に配置される触媒部において、触媒に接触され、水素および酸素が結合される。
【0014】
また、そのパス部材内には、複数の触媒部が、ガスの流れ方向に沿って配置されるとともに、ガスの流れ方向下流側に配置される触媒部が、ガスの流れ方向上流側に配置される触媒部に比べ、多くの触媒を備えているため、過度に反応熱が生じることを抑制することができ、水素の発火を抑制することができる。
【0015】
より具体的には、水素および酸素が多量に存在するガスの流れ方向上流側では、比較的多量の触媒によりそれらを結合させると、過度に多量の水素および酸素が結合し、過度に反応熱を生じて、水素が発火する可能性がある。一方、本発明では、ガスの流れ方向上流側では、比較的少量の触媒によって水素および酸素が再結合されるため、過度に反応熱が生じることを抑制することができ、水素の発火を抑制することができる。
【0016】
また、水素の発火を抑制するため、触媒の使用量を低減すると、水素および酸素の結合反応を効率よく進行させることができない場合があるが、本発明では、ガスの流れ方向下流側では、比較的多くの触媒によって水素および酸素が再結合されるので、効率よく水素および酸素を結合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の水素−酸素再結合装置の一実施形態を示す概略構成図である。
図2図2は、本発明の水素−酸素再結合装置の他の実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1において、水素−酸素結合装置1は、水素および酸素を含むガスが通過するパス部材2と、パス部材2内に配置される複数(例えば、3つ)の触媒部としての触媒部材3、および、複数(例えば、2つ)の消炎部材4とを備えている。
【0019】
パス部材2は、例えば、長手方向に延びる円筒部材であって、内部に水素および酸素を含むガス(以下、単にガスと称する。)を通過させ、そのガスを触媒部材3に向けて案内(ガイド)するために設けられている。パス部材2のサイズ(内径、長手方向長さなど)は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0020】
なお、詳しくは後述するが、パス部材2の内部には、図1において矢印で示すように、紙面下方から紙面上方に向かって、水素および酸素を含有するガスが供給される。
【0021】
複数(3つ)の触媒部材3は、例えば、最外形状が円筒形状となるように形成されるとともに、図示しない固定部材によって、パス部材2と中心軸線を共有するように配置され、パス部材2内の任意の箇所に、互いに所定間隔を隔てて固定されている。これにより、複数(3つ)の触媒部材3は、ガスの流れ方向に沿って並列配置されている。
【0022】
なお、以下において、各触媒部材3を区別する必要がある場合には、ガスの流れ方向(図1矢印)における上流側(紙面下側)から順に、第1触媒部材3a、第2触媒部材3bおよび第3触媒部材3cと称する。
【0023】
複数(3つ)の触媒部材3は、それぞれ、ガスの流れ方向に貫通する多数の開口セルが形成される多孔部材からなる触媒担体5と、触媒担体5の開口セルの表面上にコート層として形成される触媒6とを備えている。
【0024】
触媒担体5は、例えば、コージェライトなどからなるハニカム状のモノリス担体から形成されている。触媒担体5のサイズは、パス部材2と同様、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、触媒担体5の最外形状が円筒状である場合、その外径は、パス部材2の内径と略同径に形成される。なお、図示しないが、触媒担体5としては、上記のモノリス担体に限定されず、例えば、金属基材など、公知の触媒担体を用いることができる。
【0025】
触媒6は、水素ガスと酸素ガスとを結合させ、水を生成させるための水素−酸素結合触媒であって、触媒担体5に担持されることにより、パス部材2内においてガスと接触可能に配置されている。
【0026】
触媒6としては、例えば、貴金属を含有するペロブスカイト型複合酸化物と、アルミナおよび/またはセリア系複合酸化物とを含む水素−酸素結合触媒が挙げられる。
【0027】
ペロブスカイト型複合酸化物は、例えば、下記一般式(1)で表される。
【0028】
3±δ (1)
(式中、Aは、希土類元素およびアルカリ土類金属から選択される少なくとも1種の元素を示し、Bは、貴金属を除く遷移元素およびAlから選択される少なくとも1種の元素を示す。xは、0.8≦x≦1.3の数値範囲の原子割合を示し、yは、1.0の原子割合を示し、δは、酸素過剰分または酸素不足分を示す。)
一般式(1)におけるペロブスカイト型複合酸化物は、AがAサイトに配位され、BがBサイトに配位される。
【0029】
一般式(1)において、Aで示される希土類元素としては、例えば、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)、Nd(ネオジム)、Pm(プロメチウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユーロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)、Lu(ルテチウム)などが挙げられる。
【0030】
また、Aで示されるアルカリ土類金属としては、例えば、Be(ベリリウム)、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Ra(ラジウム)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0031】
これらは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0032】
また、一般式(1)のAサイトにおいて、xは、0.8≦x≦1.3、好ましくは、0.95≦x≦1.3、より好ましくは、1.00≦x≦1.30の数値範囲のAの原子割合を示す。
【0033】
一般式(1)において、Bで示される貴金属を除く遷移元素としては、例えば、周期律表(IUPAC、1990年)において、原子番号21(Sc)〜原子番号30(Zn)、原子番号39(Y)〜原子番号48(Cd)、原子番号57(La)〜原子番号80(Hg)、および、原子番号89(Ac)以上の各元素(ただし、貴金属(原子番号44〜47および76〜78)を除く)が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0034】
また、一般式(1)において、yで示されるBの原子割合は、1.0である。
【0035】
一般式(1)において、δは、酸素過剰分または酸素不足分を示し、0または正の数で表される。より具体的には、ペロブスカイト型複合酸化物の理論構成比、A:B:O=1:1:3に対して、Aサイトに配位される元素を、過不足にしたことにより生じる、酸素原子の過剰原子割合または不足原子割合を示している。
【0036】
このようなペロブスカイト型複合酸化物は、特に制限されることなく、例えば、特開2004−243305号の段落番号〔0039〕〜〔0059〕の記載に準拠して、複合酸化物を調製するための適宜の方法、例えば、共沈法、クエン酸錯体法、アルコキシド法などの製造方法によって、製造することができる。
【0037】
そして、触媒6において、ペロブスカイト型複合酸化物は、貴金属を含有している。そのようなペロブスカイト型複合酸化物として、具体的には、例えば、貴金属を担持するペロブスカイト型複合酸化物、貴金属を組成として含有するペロブスカイト型複合酸化物が挙げられる。
【0038】
貴金属が担持されたペロブスカイト型複合酸化物は下記一般式(2)で示される。
【0039】
N/A3±δ (2)
(式中、Nは、貴金属から選択される少なくとも1種の元素を示し、Aは、希土類元素およびアルカリ土類金属から選択される少なくとも1種の元素を示し、Bは、貴金属を除く遷移元素およびAlから選択される少なくとも1種の元素を示す。xは、0.8≦x≦1.3の数値範囲の原子割合を示し、yは、1.0の原子割合を示し、δは、酸素過剰分または酸素不足分を示す。)
一般式(2)において、Nで示される貴金属としては、例えば、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)などが挙げられる。好ましくは、Rh、Pd、Ptが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0040】
また、一般式(2)において、Aで示される希土類元素およびアルカリ土類金属、Bで示される貴金属を除く遷移元素およびAlは、上記と同様のものが挙げられる。
【0041】
また、一般式(2)において、x、yおよびδは、上記x、yおよびδと同意義を示す。
【0042】
このような貴金属が担持されたペロブスカイト型複合酸化物は、例えば、上記の方法により製造された一般式(1)で示されるペロブスカイト型複合酸化物に、特開2004−243305号の段落番号〔0063〕の記載に準拠して、貴金属を担持することによって、製造することができる。
【0043】
このようにして得られるペロブスカイト型複合酸化物の貴金属の担持量は、例えば、ペロブスカイト型複合酸化物100質量部に対して、通常、20質量部以下であり、好ましくは、0.2〜5質量部である。
【0044】
一方、貴金属を組成として含有するペロブスカイト型複合酸化物は、下記一般式(3)で示される。
【0045】
1−z3±δ (3)
(式中、Aは、希土類元素およびアルカリ土類金属から選択される少なくとも1種の元素を示し、Bは、貴金属を除く遷移元素およびAlから選択される少なくとも1種の元素を示し、Nは、貴金属から選択される少なくとも1種の元素を示す。xは、xは、0.8≦x≦1.3の数値範囲の原子割合を示し、zは、0<z≦0.5の原子割合を示し、δは、酸素過剰分または酸素不足分を示す。)
一般式(3)におけるペロブスカイト型複合酸化物は、AがAサイトに配位され、BおよびNがBサイトに配位される。
【0046】
また、一般式(3)において、Aで示される希土類元素およびアルカリ土類金属、Bで示される貴金属を除く遷移元素およびAl、Nで示される貴金属は、上記と同様のものが挙げられる。
【0047】
また、一般式(2)において、xおよびδは、上記xおよびδと同意義を示す。
【0048】
また、一般式(3)において、zで示されるNの原子割合は、例えば、0<z≦0.5の範囲であり、好ましくは、0<z≦0.2の範囲である。zが0.5を越えると、Nで示される貴金属が固溶しにくくなる場合があり、また、コストの上昇が不可避となる。
【0049】
一般式(3)において、1−zで示されるBの原子割合は、例えば、0.5≦1−z<1の範囲であり、好ましくは、0.8≦1−z<1の範囲である。
【0050】
このような貴金属が組成として含有されたペロブスカイト型複合酸化物は、例えば、上記したように、特開2004−243305号の段落番号〔0039〕〜〔0059〕の記載に準拠して、製造することができる。
【0051】
このようにして得られるペロブスカイト型複合酸化物の貴金属の含有量は、例えば、ペロブスカイト型複合酸化物100質量部に対して、通常、20質量部以下であり、好ましくは、0.2〜5質量部である。
【0052】
なお、この貴金属が組成として含有されたペロブスカイト型複合酸化物に、さらに、上記のように貴金属を担持させることもできる。
【0053】
上記したペロブスカイト型複合酸化物のなかでは、貴金属を組成として含有しているペロブスカイト型複合酸化物が好ましく用いられる。
【0054】
アルミナとしては、例えば、αアルミナ、θアルミナ、γアルミナなどが挙げられ、好ましくは、θアルミナが挙げられる。
【0055】
αアルミナは、結晶相としてα相を有し、例えば、AKP−53(商品名、高純度アルミナ、住友化学社製)などが挙げられる。このようなαアルミナは、例えば、アルコキシド法、ゾルゲル法、共沈法などの方法によって得ることができる。
【0056】
θアルミナは、結晶相としてθ相を有し、αアルミナに遷移するまでの中間(遷移)アルミナの一種であって、例えば、SPHERALITE 531P(商品名、γアルミナ、プロキャタリゼ社製)などが挙げられる。このようなθアルミナは、例えば、市販の活性アルミナ(γアルミナ)を、大気中にて、900〜1100℃で、1〜10時間熱処理することによって得ることができる。
【0057】
γアルミナは、結晶相としてγ相を有し、特に限定されず、公知のものが挙げられる。
【0058】
また、これらのアルミナにLaおよび/またはBaが含まれるアルミナを用いることもできる。Laおよび/またはBaを含むアルミナは、特開2004−243305号の段落番号〔0073〕の記載に準拠して、製造することができる。
【0059】
また、これらのアルミナには、貴金属を担持することができる。貴金属が担持されたアルミナは、例えば、上記したアルミナに、特開2004−243305号の段落番号〔0122〕、〔0126〕の記載に準拠して、貴金属を担持することによって、製造することができる。
【0060】
このようにして得られたアルミナの貴金属の担持量(複数の貴金属が担持されている場合は、その合計量)は、例えば、アルミナ100質量部に対して、通常、0.01〜5質量部であり、好ましくは、0.02〜2質量部である。
【0061】
セリア系複合酸化物は、例えば、下記一般式(4)で表される。
【0062】
Ce1−(a+b)Zr2−c (4)
(式中、Lは、アルカリ土類金属および/または希土類元素(ただし、Ceを除く。)を示し、aは、Zrの原子割合を示し、bは、Lの原子割合を示し、1−(a+b)は、Ceの原子割合を示し、cは、酸素欠陥量を示す。)
一般式(4)において、Lで示されるアルカリ土類金属および/または希土類元素としては、上記したアルカリ土類金属および希土類元素(ただし、Ceを除く。)と同様のものが挙げられる。アルカリ土類金属として、好ましくは、Mg、Ca、Sr、Baが挙げられ、また、希土類元素として、好ましくは、Sc、Y、La、Pr、Ndが挙げられる。これらアルカリ土類金属および希土類元素は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0063】
また、aで示されるZrの原子割合は、0.2〜0.7の範囲であり、好ましくは、0.2〜0.5の範囲である。
【0064】
また、bで示されるLの原子割合は0〜0.2の範囲である(すなわち、Lは必須成分ではなく任意的に含まれる任意成分であり、含まれる場合には、0.2以下の原子割合である)。0.2を超えると、相分離や他の複合酸化物相を生成する場合がある。
【0065】
また、1−(a+b)で示されるCeの原子割合は、0.3〜0.8の範囲であり、好ましくは、0.3〜0.6の範囲である。
【0066】
さらに、cは酸素欠陥量を示し、これは、Ce、ZrおよびLの酸化物が通常形成するホタル石型の結晶格子において、その結晶格子にできる空孔の割合を意味する。
【0067】
このようなセリア系複合酸化物は、特に制限されることなく、例えば、特開2004−243305号の段落番号〔0090〕〜〔0102〕および〔0109〕の記載に準拠して、複合酸化物を調製するための適宜の方法、例えば、共沈法、クエン酸錯体法、アルコキシド法などの製造方法によって、製造することができる。
【0068】
このようなセリア系複合酸化物は、上記した貴金属を担持するか、または、組成として含有することができる。
【0069】
貴金属が担持されたセリア系複合酸化物は、下記一般式(5)で示される。
【0070】
N/Ce1−(a+b)Zr2−c (5)
(式中、Lは、アルカリ土類金属および/または希土類元素(ただし、Ceを除く。)を示し、Nは、貴金属を示し、aは、Zrの原子割合を示し、bは、Lの原子割合を示し、1−(a+b)は、Ceの原子割合を示し、bは、酸素欠陥量を示す。)
また、上記式(5)において、Nで示される貴金属としては、上記した貴金属が挙げられる。これら貴金属は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0071】
このような、貴金属が担持されたセリア系複合酸化物は、例えば、上記の方法により製造された一般式(4)で示されるセリア系複合酸化物に、特開2004−243305号の段落番号〔0122〕、〔0125〕の記載に準拠して、貴金属を担持することによって、製造することができる。
【0072】
このようにして得られるセリア系複合酸化物の貴金属の担持量は、例えば、セリア系複合酸化物100質量部に対して、通常、0.01〜5質量部であり、好ましくは、0.02〜2質量部である。
【0073】
一方、貴金属が組成として含有されたセリア系複合酸化物は、下記一般式(6)で示される。
【0074】
Ce1−(d+e+f)Zr2−g (6)
(式中、Lは、アルカリ土類金属および/または希土類元素(ただし、Ceを除く。)を示し、Nは、貴金属を示し、dは、Zrの原子割合を示し、eは、Lの原子割合を示し、fは、Nの原子割合を示し、1−(d+e+f)は、Ceの原子割合を示し、gは、酸素欠陥量を示す。)
dで示されるZrの原子割合は、0.2〜0.7の範囲であり、好ましくは、0.2〜0.5の範囲である。
【0075】
また、eで示されるLの原子割合は0〜0.2の範囲である(すなわち、Lは必須成分ではなく任意的に含まれる任意成分であり、含まれる場合には、0.2以下の原子割合である)。0.2を超えると、相分離や他の複合酸化物相を生成する場合がある。
【0076】
また、fで示されるNの原子割合は、0.001〜0.3の範囲であり、好ましくは、0.001〜0.2の範囲である。
【0077】
また、1−(d+e+f)で示されるCeの原子割合は、0.3〜0.8の範囲であり、好ましくは、0.4〜0.6の範囲である。
【0078】
さらに、gは酸素欠陥量を示し、これは、Ce、Zr、LおよびNの酸化物が通常形成するホタル石型の結晶格子において、その結晶格子にできる空孔の割合を意味する。
【0079】
このような貴金属が組成として含有されたセリア系複合酸化物は、例えば、例えば、上記したように、特開2004−243305号の段落番号〔0090〕〜〔0102〕および〔0109〕の記載に準拠して、製造することができる。
【0080】
なお、この貴金属が組成として含有されたセリア系複合酸化物に、さらに、上記のように貴金属を担持させることもできる。
【0081】
このようにして得られるセリア系複合酸化物の貴金属の含有量(担持された貴金属と、組成として含有された貴金属との合計量)は、例えば、セリア系複合酸化物100質量部に対して、通常、0.01〜5質量部であり、好ましくは、0.02〜2質量部である。
【0082】
触媒6において、貴金属を含有するペロブスカイト型複合酸化物と、アルミナおよび/またはセリア系複合酸化物との配合割合は、貴金属を含有するペロブスカイト型複合酸化物100質量部に対して、アルミナおよび/またはセリア系複合酸化物(併用される場合には、それらの総量)が、例えば、50質量部以上、好ましくは、100質量部以上であり、例えば、6000質量部以下、好ましくは、3000質量部以下である。
【0083】
また、アルミナおよびセリア系複合酸化物が併用される場合には、それらの配合割合は、アルミナ100質量部に対して、セリア系複合酸化物が、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上であり、例えば、500質量部以下、好ましくは、200質量部以下である。
【0084】
より具体的には、貴金属を含有するペロブスカイト型複合酸化物100質量部に対して、アルミナが、例えば、50質量部以上、好ましくは、100質量部以上であり、例えば、6000質量部以下、好ましくは、3000質量部以下であり、セリア系複合酸化物が、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上であり、例えば、5000質量部以下、好ましくは、2000質量部以下である。
【0085】
また、触媒6は、さらに、その他の耐熱性酸化物、具体的には、例えば、貴金属を含有しないペロブスカイト型複合酸化物や、ジルコニア系複合酸化物などを含有することができる。
【0086】
貴金属を含有しないペロブスカイト型複合酸化物としては、例えば、上記一般式(1)で示されるペロブスカイト型複合酸化物などが挙げられる。
【0087】
ジルコニア系複合酸化物は、下記一般式(7)で示される。
【0088】
Zr1−(h+i)Ce2−j (7)
(式中、Rは、アルカリ土類金属および/または希土類元素(ただし、Ceを除く。)を示し、hは、Ceの原子割合を示し、iは、Rの原子割合を示し、1−(h+i)は、Zrの原子割合を示し、jは、酸素欠陥量を示す。)
一般式(7)において、Rで示されるアルカリ土類金属および/または希土類元素としては、上記したアルカリ土類金属および希土類元素(ただし、Ceを除く。)と同様のものが挙げられる。これら希土類元素およびアルカリ土類金属は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0089】
また、hで示されるCeの原子割合は、0.1〜0.65の範囲であり、好ましくは、0.1〜0.5の範囲である。
【0090】
また、iで示されるRの原子割合は0〜0.55の範囲である(すなわち、Rは必須成分ではなく任意的に含まれる任意成分であり、含まれる場合には、0.55以下の原子割合である)。0.55を超えると、相分離や他の複合酸化物相を生成する場合がある。
【0091】
また、1−(h+i)で示されるZrの原子割合は、0.35〜0.9の範囲であり、好ましくは、0.5〜0.9の範囲である。
【0092】
さらに、jは酸素欠陥量を示し、これは、Zr、CeおよびRの酸化物が通常形成するホタル石型の結晶格子において、その結晶格子にできる空孔の割合を意味する。
【0093】
このようなジルコニア系複合酸化物は、特に制限されることなく、上記したセリア系複合酸化物の製造方法と同様の製造方法によって、製造することができる。
【0094】
このようなジルコニア系複合酸化物は、貴金属を担持するか、または、組成として含有することができる。
【0095】
貴金属が担持されたジルコニア系複合酸化物は、下記一般式(8)で示される。
【0096】
N/Zr1−(h+i)Ce2−j (8)
(式中、Rは、アルカリ土類金属および/または希土類元素(ただし、Ceを除く。)を示し、Nは、貴金属を示し、hは、Ceの原子割合を示し、iは、Rの原子割合を示し、1−(h+i)は、Zrの原子割合を示し、jは、酸素欠陥量を示す。)
このような、貴金属が担持されたジルコニア系複合酸化物は、例えば、上記の方法により製造された一般式(7)で示されるジルコニア系複合酸化物に、上記したセリア系複合酸化物の担持方法と同様の方法によって貴金属を担持することによって、製造することができる。
【0097】
このようにして得られるジルコニア系複合酸化物の貴金属の担持量は、例えば、ジルコニア系複合酸化物100質量部に対して、通常、0.01〜5質量部であり、好ましくは、0.02〜2質量部である。
【0098】
一方、貴金属が組成として含有されたジルコニア系複合酸化物は、下記一般式(9)で示される。
【0099】
Zr1−(k+l+m)Ce2−n (9)
(式中、Rは、アルカリ土類金属および/または希土類元素(ただし、Ceを除く。)を示し、Nは、貴金属を示し、kは、Ceの原子割合を示し、lは、Rの原子割合を示し、mは、Nの原子割合を示し、1−(k+l+m)は、Zrの原子割合を示し、cは、酸素欠陥量を示す。)
kで示されるCeの原子割合は、0.1〜0.65の範囲であり、好ましくは、0.1〜0.5の範囲である。
【0100】
また、lで示されるRの原子割合は0〜0.55の範囲である(すなわち、Rは必須成分ではなく任意的に含まれる任意成分であり、含まれる場合には、0.55以下の原子割合である)。0.55を超えると、相分離や他の複合酸化物相を生成する場合がある。
また、mで示されるNの原子割合は、0.001〜0.3の範囲であり、好ましくは、0.001〜0.2の範囲である。
【0101】
また、1−(k+l+m)で示されるZrの原子割合は、0.35〜0.9の範囲であり、好ましくは、0.5〜0.9の範囲である。
【0102】
さらに、nは酸素欠陥量を示し、これは、Zr、CeおよびRの酸化物が通常形成するホタル石型の結晶格子において、その結晶格子にできる空孔の割合を意味する。
【0103】
このような貴金属が組成として含有されたジルコニア系複合酸化物は、例えば、上記した貴金属が組成として含有されたセリア系複合酸化物の製造方法と同様の製造方法によって、製造することができる。
【0104】
なお、この貴金属が組成として含有されたジルコニア系複合酸化物に、さらに、上記のように貴金属を担持させることもできる。
【0105】
このようにして得られるジルコニア系複合酸化物の貴金属の含有量(担持された貴金属と、組成として含有された貴金属との合計量)は、例えば、ジルコニア系複合酸化物100質量部に対して、通常、0.01〜5質量部であり、好ましくは、0.02〜2質量部である。
【0106】
また、本発明において、一般式(4)〜(6)で示されるセリア系複合酸化物のCeの原子割合が、一般式(7)〜(9)で示されるジルコニア系複合酸化物のCeの原子割合と重複する場合は、本発明においては、その重複するジルコニア系複合酸化物は、セリア系複合酸化物に属するものとする。
【0107】
また、触媒6は、さらに、Ba、Ca、Sr、Mg、Laの硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩および/または酢酸塩を含有することができる。これら塩のなかでは、BaSOが好ましく用いられる。
【0108】
なお、これら貴金属を含有しないペロブスカイト型複合酸化物、ジルコニア系複合酸化物、上記の硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩などの含有割合は、特に制限されず、必要および用途により、適宜設定される。
【0109】
このような触媒6は、貴金属を含有するペロブスカイト型複合酸化物と、アルミナおよび/またはセリア系複合酸化物とを含むため、比較的低温状態から水素および酸素を結合反応させることができる。
【0110】
具体的には、上記の触媒6の反応開始温度(Hの転化率が10%に達するときのサンプル片の温度)は、例えば、80℃以上、好ましくは、90℃以上であり、例えば、140℃以下、好ましくは、135℃以下である。
【0111】
また、上記の触媒6は、好ましくは、還元処理される。
【0112】
還元処理としては、例えば、上記の触媒6を還元焼成すればよく、具体的には、還元雰囲気(例えば、H−N混合ガス(H濃度1〜10%)など)において、例えば、例えば、600℃以上、好ましくは、800℃以上、例えば、1000℃以下、好ましくは、900℃以下において、例えば、0.1時間以上、好ましくは、0.5時間以上、例えば、10時間以下、好ましくは、5時間以下焼成する。
【0113】
これにより、触媒6を還元処理することができ、反応性の向上を図ることができる。
【0114】
具体的には、還元処理後の触媒6の反応開始温度(Hの転化率が10%に達するときのサンプル片の温度)は、例えば、15℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、90℃以下、好ましくは、85℃以下である。
【0115】
すなわち、このような還元処理された触媒6によれば、より低温状態から水素および酸素を結合反応させることができ、例えば、外部から加熱せずとも、水素と酸素とを結合させ、水を生成することができる。
【0116】
なお、触媒6としては、上記の触媒6に限定されず、例えば、特開2011−230064号公報、特開2008−298640号公報などに記載されるような、公知の水素−酸素結合触媒を用いることもできる。
【0117】
そして、触媒6を触媒担体5の開口セルの表面にコート層として形成するには、例えば、まず、上記した各成分を混合し、水を加えてスラリーとした後、触媒担体5の開口セルの表面にコーティングし、50〜200℃で1〜48時間乾燥し、さらに、350〜1000℃で1〜12時間焼成させる。また、上記した各成分に、水を加えてスラリーとした後、これらスラリーを混合して、触媒担体上にコーティングし、50〜200℃で1〜48時間乾燥し、さらに、350〜1000℃で1〜12時間焼成することもできる。
【0118】
これにより、触媒担体5の開口セルの表面に触媒6を担持させ、触媒部材3を得ることができる。
【0119】
そして、この水素−酸素結合装置1では、ガスの流れ方向下流側に配置される触媒部材3が、ガスの流れ方向上流側に配置される触媒部材3に比べ、多くの触媒6を備えている。
【0120】
具体的には、ガスの流れ方向において最も上流側に配置される第1触媒部材3aの触媒6量は、その他の触媒部材3(第2触媒部材3bおよび第3触媒部材3c)に比べて、触媒6量が最も少なくなるように設計される。
【0121】
また、上流側から2番目に配置される第2触媒部材3bは、第1触媒部材3aの触媒6量よりも、多くの触媒6を備えるように設計される。
【0122】
さらに、最も下流側に配置される第3触媒部材3cの触媒6量は、その他の触媒部材3(第1触媒部材3aおよび第2触媒部材3b)に比べて、触媒6量が最も多くなるように設計される。
【0123】
このように、水素−酸素結合装置1では、ガスの流れ方向上流側から下流側に向かうに従って、各触媒部材3の触媒6量が、順次多くなるように設計される。
【0124】
具体的には、ガスの通過方向において互いに隣接する2つの触媒部材3において、下流側の触媒部材3の触媒6量は、上流側の触媒部材3の触媒6量に対して100質量%を超過しており、例えば、120質量%以上、好ましくは、150質量%以上、より好ましくは、200質量%以上、通常、1000質量%以下である。
【0125】
触媒6量が上記範囲であれば、過度に反応熱が生じることを抑制することができ、水素の発火を抑制することができる。
【0126】
なお、各触媒部材3の触媒6量は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0127】
また、触媒部材3が3つ以上使用される場合、ガスの流れ方向において互いに隣接する各触媒部材3の触媒6量の差は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0128】
具体的には、例えば、隣接する触媒部材3の触媒6量の差が互いに同一であり、各触媒部材3の触媒6量が、ガスの流れ方向上流側から下流側に向かうに従って、規則的(比例的)に多くなるように設計されていてもよく、また、例えば、隣接する触媒部材3の触媒6量の差が互いに異なり、各触媒部材3の触媒6量が、ガスの流れ方向上流側から下流側に向かうに従って、不規則的に多くなるように設計されていてもよい。具体的には、ガスの流れ方向における上流側の触媒部材3の間の触媒6量の差が、下流側の触媒部材3の間の触媒6量の差よりも大きくなるように設計することができ、また、上流側の触媒部材3の間の触媒6量の差が、下流側の触媒部材3の間の触媒6量の差よりも小さくなるように設計することもできる。
【0129】
さらには、ガスの流れ方向下流側の触媒6量が上流側よりも多くなるように設計された少なくとも2つの触媒部材3を備えていれば、例えば、その上流側の触媒部材3と触媒6量が同量の触媒部材3を、さらに上流側に配置することができ、また、下流側の触媒部材3と触媒6量が同量の触媒部材3を、さらに下流側に配置することもできる。
【0130】
また、図示しないが、複数の触媒部材3としては、例えば、触媒担体5を用いることなく、触媒6の粉末をそのまま用いてもよく、例えば、公知の方法により、触媒6を任意の所定形状に成形して用いてもよい。このような場合、複数の触媒部材3は、図示しないが、公知の固定部材によって、パス部材2内に配置および固定される。このような場合にも、上記と同様、複数の触媒部材3では、ガスの流れ方向上流側から下流側に向かうに従って、触媒6量が順次多くなるように設計される。
【0131】
消炎部材4は、パス部材2内に2つ設けられており、触媒部材3に対して、ガスの流れ方向(図1矢印参照)上流側および下流側に配置されている。より具体的には、一方の消炎部材4は、最も上流側の第1触媒部材3aよりもさらに上流側に配置され、他方の消炎部材4は、最も下流側の第3触媒部材3cよりもさらに下流側に配置される。これにより、2つの消炎部材4は、すべての触媒部材3を挟むように1対として設けられ、上流側および下流側の触媒部材3から所定間隔を隔てて、ガスの流れ方向に沿って互いに対向配置されている。
【0132】
このような消炎部材4は、例えば、ガスの流れ方向に貫通する多数の開口セル8が形成される多孔部材から形成されている。
【0133】
なお、開口セル8は、ガスを通過可能に開口されて、その形状は特に制限されず、例えば、円形状、多角形状など、目的および用途に応じて、適宜設計される。
【0134】
また、開口セル8の開口サイズ(開口断面積)は、ガスの通過方向において、均一であってもよく、また、少なくとも一部が異なる開口サイズ(開口断面積)であってもよい。
【0135】
そして、消炎部材4の開口セル8には、消炎領域が区画されている。
【0136】
消炎領域は、触媒部材3の周辺において水素が発火する場合に、消炎機能を発現するための領域であって、開口セル8中の所定の開口断面積(ガスの流れ方向に対して直交する方向における断面積)の部分として区画されている。
【0137】
具体的には、例えば、開口セル8の開口サイズ(開口断面積)が、その全長(ガス流れ方向に沿う方向における全長)において、均一である場合、開口セル8のすべての部分が消炎領域とされる。また、開口セル8の開口サイズ(開口断面積)が均一でない場合、開口セル8内における所定の開口断面積の部分が、消炎領域とされる。
【0138】
具体的には、消炎領域の開口断面積(ガスの流れ方向に対して直交する方向における断面積)は、例えば、0.3mm以下、好ましくは、0.15mm以下であり、通常、0.1mm以上である。
【0139】
消炎領域の開口断面積が上記範囲であれば、良好にガスを通過させるとともに、触媒部材3において、触媒6の反応熱により水素が発火する場合にも、早急に消炎することができる。
【0140】
なお、消炎領域の形状は、特に制限されず、例えば、円形状、多角形状など、目的および用途に応じて、適宜設計される。
【0141】
このような多孔部材としては、特に制限されないが、例えば、上記した触媒担体5と同様のコージェライトなどからなるハニカム状のモノリス担体や、金属メッシュ部材などが挙げられ、好ましくは、触媒担体5と同様のモノリス担体が挙げられる。
【0142】
多孔部材として触媒担体5と同様のモノリス担体を用いれば、部材の種類数を低減できるため、低コスト化を図ることができる。
【0143】
消炎部材4のサイズは、パス部材2と同様、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、消炎部材4の最外形状が円筒状である場合、その外径は、パス部材2の内径と略同径に形成され、パス部材2と中心軸線を共有するように配置される。
【0144】
なお、図示しないが、消炎部材4としては、上記に限定されず、公知の消炎部材を用いることができる。
【0145】
このような水素−酸素結合装置1は、水素と酸素との結合効率の観点から、パス部材2の長手方向が鉛直方向に沿うように配置されるとともに、その鉛直方向下方から、水素および酸素を含有するガスが供給される。
【0146】
すなわち、この水素−酸素結合装置1では、水素と酸素とを結合させるときに、上記した触媒部材3(触媒6)の反応開始温度まで加熱する場合がある。また、水素と酸素との結合反応時には反応熱が生じる。そのため、パス部材2内に上昇流が生じる。
【0147】
その結果、パス部材2の長手方向が鉛直方向に沿うように配置し、その鉛直方向下方から、水素および酸素を含有するガスを供給することにより、効率よくガスを輸送することができ、水素と酸素との結合効率の向上を図ることができる。
【0148】
そして、このような水素−酸素結合装置1において、水素および酸素を含むガスが供給されると、そのガスがパス部材2に通過され、パス部材2内に配置される触媒部材3において、触媒6と接触される。これにより、水素および酸素が結合され、水が生じる。
【0149】
これにより、水素および酸素の混合ガス(可燃性ガス)による爆発事故などを防止することができる。
【0150】
一方、この水素−酸素結合装置1によって、水素および酸素を結合させ、水を生じさせる場合には、反応熱が生じるため、触媒部材3の周辺の温度が上昇して、水素が発火する場合がある。そのため、水素の発火を抑制することが要求されている。
【0151】
この点、上記の水素−酸素結合装置1では、パス部材2内には、複数の触媒部材3が、ガスの流れ方向に沿って配置されるとともに、ガスの流れ方向下流側に配置される触媒部材3が、ガスの流れ方向上流側に配置される触媒部材3に比べ、多くの触媒6を備えているため、過度に反応熱が生じることを抑制することができ、水素の発火を抑制することができる。
【0152】
より具体的には、水素および酸素が多量に存在するガスの流れ方向上流側では、比較的多量の触媒6によりそれらを結合させると、過度に多量の水素および酸素が結合し、過度に反応熱を生じて、水素が発火する可能性がある。
【0153】
一方、上記の水素−酸素結合装置1では、ガスの流れ方向上流側では、比較的少量の触媒6によって水素および酸素が再結合されるため、過度に反応熱が生じることを抑制することができ、水素の発火を抑制することができる。
【0154】
また、水素の発火を抑制するため、触媒6の使用量を低減すると、水素および酸素の結合反応を効率よく進行させることができない場合があるが、上記の水素−酸素結合装置1では、ガスの流れ方向下流側では、比較的多くの触媒6によって水素および酸素が再結合されるので、効率よく水素および酸素を結合させることができる。
【0155】
また、上記の水素−酸素結合装置1では、パス部材2内には、触媒部材3に対して、ガスの流れ方向上流側および下流側に、消炎部材4が備えられている。すなわち、触媒部材3の周辺において生じる炎は、2つの消炎部材4によって挟まれている。
【0156】
そのため、上記の水素−酸素結合装置1では、水素および酸素の結合時において温度上昇し、水素が発火する場合にも、消炎部材4により早急に消炎させることができる。
【0157】
このような水素−酸素結合装置1は、特に制限されないが、水素および酸素を排出する各種工業プラント、好ましくは、原子力プラントにおいて、水素および酸素を結合させるために用いられる。
【0158】
具体的には、例えば、沸騰水型原子力プラントの通常運転中には、冷却水が、核燃料物質の核分裂により生じる中性子やガンマ線などの放射線によって分解され、水素および酸素が生じる場合がある。また、例えば、上記した通常運転の他、設備の故障等によっても水素および酸素が生じる場合がある。さらに、原子力プラントにおいて生じる放射性廃棄物(汚染水を含む。)は、通常、容器に密閉され、地中に埋設されるが、その容器内において、放射性廃棄物によって水が分解され、水素および酸素が生じる場合がある。
【0159】
このような水素および酸素の混合ガスは可燃性であるため、安全性の観点から、原子炉内や、放射性廃棄物の容器内に水素−酸素結合装置1を配置して、上記のように生じる水素および酸素を再結合させ、水を生成させる。
【0160】
このように、水素および酸素を再結合させることにより、それら水素および酸素の混合ガス(可燃性ガス)による爆発事故などを防止することができる。
【0161】
とりわけ、この水素−酸素結合装置1では、ガスの流れ方向下流側に配置される触媒部材3が、ガスの流れ方向上流側に配置される触媒部材3に比べ、多くの触媒6を備えているため、過度に反応熱が生じることを抑制することができ、水素の発火を抑制することができる。
【0162】
なお、上記した説明では、複数の触媒部として複数の触媒部材3を備えたが、図2に示すように、例えば、単数(1つ)の触媒部材3を備えるとともに、その触媒部材3内において、ガスの流れ方向に沿って、複数(例えば、3つ)の触媒部として、複数(例えば、3つ)の触媒領域7を区画することができる(図2破線参照)。なお、以下において、各触媒領域7を区別する必要がある場合には、ガスの流れ方向(図2矢印)における上流側から順に、第1触媒領域7a、第2触媒領域7bおよび第3触媒領域7cと称する。
【0163】
このような場合には、上記と同様に、ガスの流れ方向上流側から下流側に向かうに従って、各触媒領域7の触媒6量が、順次多くなるように設計される。
【0164】
具体的には、ガスの流れ方向において最も上流側に配置される第1触媒領域7aの触媒6量は、その他の触媒領域7(第2触媒領域7bおよび第3触媒領域7c)に比べて、触媒6量が最も少なくなるように設計される。
【0165】
また、上流側から2番目に配置される第2触媒領域7bは、第1触媒領域7aの触媒6量よりも、多くの触媒6を備えるように設計される。
【0166】
さらに、最も下流側に配置される第3触媒領域7cの触媒6量は、その他の触媒領域7(第1触媒領域7aおよび第2触媒領域7b)に比べて、触媒6量が最も多くなるように設計される。
【0167】
また、図示しないが、例えば、触媒部材3内において、領域を区画することなく、ガスの流れ方向上流側から下流側に向かうに従って、徐々に触媒6量が多くなるように設計することもできる。
【0168】
これらの場合にも、ガスの流れ方向下流側によりも、ガスの流れ方向上流側に多くの触媒6が備えられるため、過度に反応熱が生じることを抑制することができ、水素の発火を抑制することができる。
【0169】
また、上記した説明では、触媒部材3に対してガス流れ方向上流側および下流側にそれぞれ1つの消炎部材4を配置したが、例えば、ガス流れ方向上流側および/または下流側に2つ以上(合計3つ以上)の消炎部材4を配置することもできる。
【0170】
また、上記した説明では、パス部材2を円筒状に形成し、略同径の触媒部材3および消炎部材4をパス2と中心軸線を共有するように配置したが、パス部材2は、ガスの流れ方向(長手方向)に延びる中空部材であればよく、触媒部材3および消炎部材4は、好ましくは、その中空部材の中空空間をガスの流れ方向に投影したときの開口形状と同じ形状であり、ガスの流れ方向に貫通する複数の開口セル8を有する多孔部材から形成される。
【0171】
さらには、上記した説明では、触媒部材3と消炎部材4とを、それらが互いに間隔を隔てるように配置したが、例えば、触媒部材3と消炎部材4とを、それらが互いに間隔を隔てることなく、互いに接触するように配置することもできる。また、そのような場合には、触媒部材3および消炎部材4の周側壁が、パス部材2を兼ねる。
【符号の説明】
【0172】
1 水素−酸素結合装置
2 パス部材
3 触媒部材
4 消炎部材
5 触媒担体
6 触媒
7 触媒領域
8 開口セル
図1
図2