(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水蒸発用砂は細砂であり、前記洗浄廃水散布装置から前記砂収容部への洗浄廃水の散布量を、前記砂収容部に収容されている水蒸発用砂の含水比が30〜35%に維持されるように設定することを特徴とする、請求項2に記載の土壌浄化方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1〜14に開示された土壌浄化施設では、ミルブレーカ、トロンメル、サイクロン、シックナ、洗浄液貯槽等を備えた一連の流通系統内を循環する洗浄液が所定濃度(例えば、0.3〜1.0質量%)のキレート剤を含んでいる。他方、土壌浄化装置の一連の流通系統は、大量の洗浄液(例えば、1000〜2000トン)を保留しているので、このような洗浄液の調製に大量のキレート剤を必要とし、土壌の処理コストが上昇するといった問題がある。さらには、何らかの事情で、一連の流通系統内の洗浄液を廃棄又は交換する必要が生じた場合、洗浄液に含まれている大量のキレート剤を処理しなければならないといった問題がある。
【0007】
また、土壌処理施設で分離された砂及び礫は、通常、土木・建築材料として再利用されるが、このようにキレート剤を含む洗浄液が付着している砂又は礫は、土木・建築材料としては好ましくない。また、土壌浄化施設内のキレート剤は、砂及び礫によって持ち去られる分だけ減少してゆくので、キレート剤を再生して繰り返し使用しても、砂及び礫によって持ち去られるキレート剤に相応する量のキレート剤を補充する必要がある。このため、大量の汚染土壌(例えば、1000トン/日)を浄化する土壌浄化施設では、大量のキレート剤を補充し続けなければならず、土壌浄化施設における土壌の処理コストが非常に高くつくといった問題がある。
【0008】
そこで、本願出願人に係る特許文献3、6、9、12に記載された土壌浄化施設では、液体サイクロンから排出されたキレート剤を含む砂及びトロンメルから排出されたキレート剤を含む礫を、すすぎ水で洗浄してキレート剤を除去するようにしている。一方、キレート剤を含む洗浄廃水を、砂収容部内の蒸発用砂により大気中に蒸発させてキレート剤を蒸発用砂に残留・蓄積させ(いわゆる塩田方式)、キレート剤を含む蒸発用砂を土壌処理系統に導入してキレート剤を回収するようにしている。しかし、キレート剤を含む砂及び礫を洗浄するのに大量のすすぎ水を必要とするので、大量の洗浄廃水を蒸発させるための砂収容部の設置に広大な敷地を必要とするといった問題がある。
【0009】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、有害金属等で汚染された土壌をキレート剤を用いて浄化するとともに、該土壌から砂及び礫を分離して再利用するようにしたクローズドシステム型の土壌浄化施設において、土壌浄化施設のキレート剤の保留量ないしは流通量を低減することができ、砂及び礫によってキレート剤が土壌浄化施設外に持ち去られるのを防止又は低減することができ、キレート剤の回収のための設備の敷地面積を低減することを可能にする手段を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するためになされた本発明に係る、礫と砂と土とを含み有害金属等(すなわち有害金属及び/又はその化合物)で汚染された土壌を浄化する土壌浄化システムは、土壌を礫と砂と土とに分級する土壌分級部と、土壌分級部で分離された砂と礫とを、キレート剤と水とを含むキレート洗浄液で洗浄して浄化する砂・礫浄化部とを備えている。
【0011】
この土壌処理システムにおいて、土壌分級部は、混合装置と、トロンメルと、液体サイクロンと、シックナと、フィルタプレスとを有する。ここで、混合装置は、土壌分級部に投入された土壌と洗浄水とを混合する。トロンメルは、混合装置から排出された土壌と洗浄水の混合物から礫を分離する。液体サイクロンは、トロンメルから排出された砂と土と洗浄水の混合物から砂を分離する。シックナは、液体サイクロンから排出された土と洗浄水の混合物を、沈降分離により、上澄水と、土を含むスラッジとに分離する。フィルタプレスは、シックナから排出されたスラッジを濾過して土を分離する。
【0012】
砂・礫浄化部は、砂洗浄部と、礫洗浄部と、キレート剤再生部と、砂すすぎ部と、礫すすぎ部と、キレート剤回収部とを有する。ここで、砂洗浄部は、液体サイクロンから排出された砂をキレート洗浄液で洗浄し、該砂から有害金属等を除去する。礫洗浄部は、トロンメルから排出された礫をキレート洗浄液で洗浄し、該礫から有害金属又はその化合物を除去する。キレート剤再生部は、砂洗浄部及び礫洗浄部から排出されたキレート洗浄液中のキレート剤から有害金属等を除去してキレート洗浄液を再生し、砂洗浄部及び礫洗浄部に返送する。砂すすぎ部は、砂洗浄部から排出された砂をすすぎ水で洗浄してキレート剤を除去する。礫すすぎ部は、礫洗浄部から排出された礫をすすぎ水で洗浄してキレート剤を除去する。キレート剤回収部は、砂すすぎ部及び礫すすぎ部から排出されたキレート剤を含む洗浄廃水からキレート剤を回収する。
【0013】
そして、砂洗浄部は、流通式の混合撹拌器と、振動篩と、真空吸引式ベルトコンベアとを有する。混合撹拌器は、液体サイクロンから排出された砂とキレート洗浄液とを混合して攪拌し、砂に付着又は結合している有害金属等をキレート剤に捕捉させる。振動篩は、混合撹拌器から排出された砂とキレート洗浄液の混合物から(大部分の)キレート洗浄液を除去する。真空吸引式ベルトコンベアは、振動篩から排出されたキレート洗浄液で湿潤した砂を受け入れ、該砂を濾材装着ベルトで搬送しつつ、濾材装着ベルトを介して該砂を真空吸引して該砂のキレート洗浄液含有比を低下させる。
【0014】
礫洗浄部は、キレート洗浄液を保持するキレート洗浄液槽と、礫を収容している礫容器をキレート洗浄液槽内のキレート洗浄液中に浸漬させた状態で水平方向に移動させる礫搬送装置とを有している。ここで、礫容器の底部及び/又は側部は、礫を通過させない寸法の目を有する篩網で形成されている。
【0015】
キレート剤再生部は、砂洗浄部及び礫洗浄部から排出されたキレート洗浄液を、キレート剤よりも錯生成力が高くキレート洗浄液と接触したときに該キレート洗浄液中の有害金属等を吸着する固相吸着材を有し、キレート洗浄液中のキレート剤から有害金属等を除去してキレート洗浄液を再生するキレート洗浄液再生装置を有する。砂すすぎ部は、砂洗浄部から排出された砂にすすぎ水を散布又は噴射して、該砂に保持されているキレート剤を除去する砂すすぎ装置を有する。礫すすぎ部は、礫洗浄部から排出された礫にすすぎ水を散布又は噴射して、該礫に保持されているキレート剤を除去する礫すすぎ装置を有する。
【0016】
キレート剤回収部は、洗浄廃水貯槽と、砂収容部と、屋根と、洗浄廃水散布装置と、洗浄廃水還流機構とを有する。洗浄廃水貯槽は、砂すすぎ部及び礫すすぎ部から排出されたキレート剤を含む洗浄廃水を受け入れて貯留する。砂収容部は、地面に配設され水蒸発用砂を収容する、上側が開かれた容器状のものである。屋根は、砂収容部の上方に配設され、砂収容部への雨水の降下を阻止する。洗浄廃水散布装置は、洗浄廃水貯槽に貯留されている洗浄廃水を、砂収容部に収容されている水蒸発用砂に散布する。洗浄廃水還流機構は、砂収容部に収容されている水蒸発用砂の粒子の間隙を流下した余剰の洗浄廃水を洗浄廃水貯槽に還流させる。
【0017】
本発明に係る土壌浄化システムは、さらに、水蒸発用砂移送手段と、水蒸発用砂供給手段とを備えている。ここで、水蒸発用砂移送手段は、砂収容部に収容されている水蒸発用砂の上に洗浄廃水散布装置から洗浄廃水が所定期間にわたって散布され、水蒸発用砂に散布された洗浄廃水の水分が空気中に蒸発して該水蒸発用砂にキレート剤が蓄積されたときに、砂収容部内のキレート剤が蓄積された水蒸発用砂を砂洗浄部に移送する。水蒸発用砂供給手段は、砂すすぎ部から排出された砂の一部を、水蒸発用砂として砂収容部に供給する。
【0018】
一方、本発明に係る土壌浄化方法は、礫と砂と土とを含み有害金属等で汚染された土壌を浄化する土壌浄化施設ないしは土壌浄化システムにおいて用いられるものである。ここで、本発明に係る土壌浄化方法が用いられる土壌浄化施設ないしは土壌浄化システムは、本発明に係る前記土壌浄化システムとほぼ同様の構成である(水蒸発用砂移送手段及び水蒸発用砂供給手段を除く)。
【0019】
かくして、本発明に係る土壌浄化方法では、砂収容部に収容されている水蒸発用砂の上に洗浄廃水散布装置から洗浄廃水を散布する一方、該水蒸発用砂に付着している洗浄廃水の水分を空気中に蒸発させて砂収容部から除去する。そして、砂収容部で所定の期間用いられてキレート剤が蓄積された水蒸発用砂を砂洗浄部に導入して、水蒸発用砂に蓄積されたキレート剤を回収する一方、砂すすぎ部から排出された砂の一部を、砂収容部に収容する水蒸発用砂として用いる。本発明に係る土壌浄化方法においては、水蒸発用砂として細砂を用い、洗浄廃水散布装置から砂収容部への洗浄廃水の散布量を、砂収容部に収容されている水蒸発用砂の含水比が30〜35%に維持されるように設定するのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る土壌浄化システム又は土壌浄化方法によれば、土壌浄化システム内の一連の流通系統を循環する大量の洗浄水にキレート剤を添加せず、液体サイクロンから排出される砂と、トロンメルから排出された礫とをキレート洗浄液で洗浄するようにしているので、土壌浄化システム内に保持するキレート剤の量を大幅に低減することができる。そして、キレート洗浄液で洗浄された砂及び礫を、それぞれ砂すすぎ部及び礫すすぎ部においてすすぎ水で洗浄するので、キレート剤を含まない再利用に適した砂及び礫を得ることができる。また、砂すすぎ部及び礫すすぎ部から排出される洗浄廃水中のキレート剤が、キレート剤回収部によって砂洗浄部に戻されるので、キレート剤の使用量を大幅に低減することができる。さらに、真空吸引式ベルトコンベアで真空吸引により、キレート洗浄液で湿潤した砂のキレート洗浄液含有比が低下させられるので、砂すすぎ部におけるすすぎ水の使用量、すなわち蒸発させるべき洗浄廃水の量を低減することができ、キレート剤回収部における砂収容部の敷地面積を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る土壌浄化システム及び土壌浄化方法を具体的に説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る、礫と砂と土とを含み有害金属等(すなわち、有害金属及び/又はその化合物)で汚染された土壌を浄化する土壌浄化システムSは、洗浄水を用いて汚染土壌を礫と砂と土とに湿式分級する土壌分級部1と、土壌分級部1で分離された砂と礫とを、キレート剤と水とを含むキレート洗浄液で洗浄して浄化する砂・礫浄化部2とを備えている。
【0023】
図2に示すように、土壌分級部1においては、有害金属等で汚染され、あるいはその他の汚染物質で汚染された地盤の掘削等により採取された土壌(汚染土壌)が、投入ホッパ3に受け入れられる。そして、投入ホッパ3内の土壌はまず容器状の混合器4に投入され、混合器4内で洗浄水と混合される。ここで、土壌は、種々の粒径の礫(粒径が2〜75mm)と、砂(粒径が0.075〜2mm)と、土(粒径が0.075mm以下のシルト又は粘土)とを含むものである。投入ホッパ3内の土壌は有害金属等で汚染され、場合によってはさらにその他の汚染物質で汚染されている。ここで、有害金属等としては、例えばクロム、鉛、カドミウム、セレン、水銀、金属砒素及びこれらの化合物などが挙げられる。後で説明するキレート洗浄液は、このような有害金属等を効果的に捕捉(除去)することができるものである。
【0024】
混合器4で生成された土壌と洗浄水の混合物(以下「土壌・水混合物」という。)はミルブレーカ5に移送される。ミルブレーカ5としては、例えばロッドミルを用いることができる。ロッドミルは、詳しくは図示していないが、ドラムの中に複数のロッドが配置された装置であり、ドラムの回転によってロッドが互いに平行に転動して線接触し、その衝撃力、摩擦力等により礫に付着又は固着している有害金属等を剥離して礫から離脱させる。洗浄水中に離脱した有害金属等の大部分は、砂及び土(細粒土)の粒子の表面に付着する。
【0025】
ミルブレーカ5から排出された土壌・水混合物はトロンメル6に導入される。トロンメル6は、詳しくは図示していないが、洗浄水を貯留することができる受槽と、水平面に対して傾斜して配置された略円筒形のドラムスクリーンとを有する湿式の篩分装置である。ドラムスクリーンは、モータによりその中心軸まわりに回転することができるようになっている。また、ドラムスクリーン内には、洗浄水をスプレー状で噴射することができるようになっている。
【0026】
トロンメル6の回転しているドラムスクリーンの内部を土壌・水混合物が流れる際に、ドラムスクリーンの網目より細かい土壌粒子(砂、土)は、洗浄水とともにドラムスクリーンの網目を通り抜け、ドラムスクリーン外に出て受槽内に入る。他方、ドラムスクリーンの網目より粗い土壌粒子(礫)は、ドラムスクリーンの網目を通り抜けることができないので、ドラムスクリーンの下側の開口端を経由してドラムスクリーン外に排出される。トロンメル6から排出された礫は砂・礫浄化部2(
図3参照)に移送される。
【0027】
ドラムスクリーンの網目の分級径(目開き)は、例えば粒径が2mm未満の土壌粒子(砂、土)がドラムスクリーンの網目を通り抜けるように設定される。したがって、トロンメル6では、粒径が2mm以上の土壌粒子(すなわち、礫)が土壌・水混合物から分離される。なお、トロンメル6のドラムスクリーンの網目の寸法(目開き)は前記のものに限定されるわけではなく、得ようとする比較的粒径が大きい土壌粒子の粒径に応じて、任意に設定することができる。
【0028】
トロンメル6の受槽内に収容された粒径が2mm未満の土壌粒子(砂、土)と洗浄水とを含む土壌・水混合物は液体サイクロン7に導入される。液体サイクロン7は、詳しくは図示していないが、下方に向かって狭まる略円錐状のシリンダ内に土壌・水混合物をポンプで圧送して旋回流を生じさせ、これによって生じる遠心力を利用して、土壌・水混合物を、比較的粒径が小さい土(例えば、粒径が0.075mm未満)と洗浄水の混合物(洗浄水が大半)と、比較的粒径が大きい砂(例えば0.075mm以上)と洗浄水の混合物(洗浄水の割合は小さい)とに分離する。そして土と洗浄水の混合物(以下「土含有水」という。)は液体サイクロン7の上端部から排出され、砂と洗浄水の混合物はサイクロン7の下端部から排出される。そして、土含有水はPH調整槽8に移送される。土含有水に含まれる土は、例えば粒径が0.075mm未満のシルト又は粘土である。液体サイクロン7の下端部から排出された砂と洗浄水の混合物は、例えば振動篩などを用いて洗浄水の割合を低下させた後、砂・礫浄化部2(
図3参照)に移送される。
【0029】
サイクロン7から排出された土含有水はPH調整槽8に導入され、そのpH(水素指数)が、pH調整剤、例えば酸液(例えば、硫酸、塩酸等)及びアルカリ液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液等)を用いて、ほぼ中性又は所定のpH(例えば、pH7〜8)となるように調整される。なお、図示していないが、PH調整槽8では、土含有水のpHはpHメータ等を備えた自動制御装置により自動的に調整される。
【0030】
PH調整槽8でpHが調整された土含有水は凝集槽9に導入される。凝集槽9では、土含有水にポリ塩化アルミニウム液(PAC)と、高分子凝集剤と、pH調整剤(酸液又はアルカリ液)とが添加される。これにより、凝集槽9内に非水溶性の金属水酸化物と土とが混在する多数のフロックが生成される。
【0031】
凝集槽9内の多数のフロックを含む土含有水はシックナ10に導入される。シックナ10は、詳しくは図示していないが、土含有水がほぼ静止している状態でフロックないしは土を重力により沈降させ、下部に位置するスラッジ層(例えば、固形分の比率が5〜10%)と、上部に位置しほとんどフロックないしは土を含まない上澄水(洗浄水)とを形成する。なお、上澄水の表面に浮上油が浮遊している場合は、例えばシックナ10の水面にオイル吸収マットなどを浮遊させて適宜にこのオイル吸収マットを回収することにより、浮上油を除去することができる。
【0032】
シックナ10内の上澄水は、洗浄水貯槽11に導入され、貯留される。洗浄水貯槽11に貯留されている洗浄水は、混合器4とトロンメル6とに供給される。なお、洗浄水貯槽11に貯留されている洗浄水が蒸発等により目減りしたときには、適宜に水(工業用水、水道水等)が補給される。
【0033】
他方、シックナ10の下部に堆積しているスラッジは、中間タンク12に移送され、一時的に貯留される。そして、中間タンク12内のスラッジは、適宜に又は連続的に、フィルタプレス13に移送される。フィルタプレス13は、詳しくは図示していないが、バッチ式又は半連続式の加圧式濾過器であって、中間タンク12から受け入れたスラッジを加圧濾過し、濾過ケーク(土)と濾液(洗浄水)とを生成する。フィルタプレス13の濾過圧力は、例えば濾過ケークの含水率が30〜40%となるように好ましく設定される。ここで、フィルタプレス13の濾液はシックナ10に戻される。このように、洗浄水は、土壌分級部1内で循環使用され、外部には排出されない。すなわち、土壌分級部1は、洗浄水に関してクローズドシステムである。
【0034】
図3に示すように、砂・礫浄化部2は、砂洗浄部14と、礫洗浄部15と、キレート剤再生部16と、砂すすぎ部17と、礫すすぎ部18と、キレート剤回収部19とを有する。ここで、砂洗浄部14は、液体サイクロン7から排出された砂を、キレート剤と水とを含むキレート洗浄液で洗浄し、該砂から有害金属等を除去する。礫洗浄部15は、トロンメル6から排出された礫をキレート洗浄液で洗浄し、該礫から有害金属又はその化合物を除去する。キレート剤再生部16は、砂洗浄部14及び礫洗浄部15から排出されたキレート洗浄液中のキレート剤から有害金属等を除去してキレート洗浄液を再生し、砂洗浄部14及び礫洗浄部15に返送する。砂すすぎ部17は、砂洗浄部14から排出された砂をすすぎ水で洗浄してキレート剤を除去する。礫すすぎ部18は、礫洗浄部15から排出された礫をすすぎ水で洗浄してキレート剤を除去する。キレート剤回収部19は、砂すすぎ部17及び礫すすぎ部18から排出されたキレート剤を含む洗浄廃水からキレート剤を回収する。
【0035】
図4に示すように、砂洗浄部14は、流通式の混合撹拌器21と、振動篩22と、真空吸引式ベルトコンベア23とを備えている。混合撹拌器21は、液体サイクロン7から排出された砂とキレート洗浄液とを混合して攪拌し、砂に付着又は結合している有害金属等をキレート剤に捕捉させるための装置である。振動篩22は、混合撹拌器21から排出された砂とキレート洗浄液の混合物からキレート洗浄液の大半を除去するための装置である。真空吸引式ベルトコンベア23は、振動篩22から排出されたキレート洗浄液で湿潤した砂を受け入れ、該砂を濾材装着ベルト36で搬送しつつ、濾材装着ベルト36を介して該砂を真空吸引して該砂のキレート洗浄液含有比(ないしはキレート洗浄液含有率)を大幅に低下させるための装置である。
【0036】
具体的には、混合撹拌器21は、中心軸が上下方向に伸びる細長い略円筒状の本体部25と、本体部25の内周面に取り付けられた複数の邪魔板26(バッフルプレート)と、本体部25内に配置された攪拌機27と、攪拌機27を回転駆動するモータ28とを備えている。各邪魔板26は、その中心部に穴が形成された基本的には円環状のものであるが、砂の下方への移動を円滑化するために、内側に向かって下降傾斜するテーパ状に形成されている。
【0037】
攪拌機27は、上下方向に伸びる回転軸に取り付けられた複数の撹拌翼ないしはブレードを有している。攪拌翼の形状ないしは寸法は、各邪魔板26の穴を通り抜けることができるように設定されている。ここで、各邪魔板26と攪拌機27の各撹拌翼とは、上下方向に交互に並ぶように配設されている。
【0038】
本体部25の寸法(例えば、直径、高さ等)は、該本体部25内を流れるキレート洗浄液及び砂粒子が、予め設定された滞留時間(例えば、0.1〜0.3時間)を確保することができるように好ましく設定される。また、攪拌機27の各撹拌翼の数、形状、回転速度等は、本体部25内において、砂粒子がキレート洗浄液中にほぼ均一に分散されるような乱流度(例えば、レイノルズ数20000〜100000)が達成されるように好ましく設定される。
【0039】
そして、本体部25の上端開口部に、砂とキレート洗浄液とが供給され、キレート洗浄液と砂粒子とが攪拌機27によって攪拌・混合される。その結果、砂粒子がキレート洗浄液中にほぼ均一に分散されてなる混合物(以下「砂・洗浄液混合物」という。)が生成され、この砂・洗浄液混合物は攪拌機27の複数の撹拌翼によって攪拌されながら本体部25内を、全体的には緩速で下向きに流れる。かくして、混合撹拌器21(本体部25)内では、砂粒子がキレート洗浄液と接触させられ、砂・洗浄液混合物中の砂粒子の表面に付着している有害金属等が除去される。なお、邪魔板26は、本体部25内における砂・洗浄液混合物の乱流度(レイノルズ数)を高め、これにより砂粒子からの有害金属等の除去ないしは離脱が促進される。
【0040】
キレート洗浄液に用いられるキレート剤としては、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、あるいはHIDS(3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸)、IDS(2,2’−イミノジコハク酸)、MGDA(メチルグリシン二酢酸)、EDDS(エチレンジアミンジ酢酸)又はGLDA(L−グルタミン酸ジ酢酸)のナトリウム塩などが挙げられる。これらのキレート剤は、いずれも砂粒子に付着ないしは結合している有害金属等を有効に捕捉する(キレートする)ことができものである。なお、砂に付着ないしは結合している有害金属等の種類に応じて、その処理に適したキレート剤が選択され、又は複数種のキレート剤が用いられる。
【0041】
このように砂から有害金属等が除去された後、砂・洗浄液混合物は、本体部25の下端開口部から振動篩22に導入され、該砂・洗浄液混合物から大部分のキレート洗浄液が分離される。振動篩22としては、予め設定された目開き(口径)の金網30が、ケーシング31内に傾斜して配置された傾斜型振動篩機が用いられる。なお、円型振動篩機等を用いてもよい。また、振動篩ではなく静止型の傾斜篩を用いてもよい。振動篩22の金網30は、砂粒子を通過させない目開き(口径)のものが用いられる。金網30を通過したキレート洗浄液は、管路32を介して洗浄液貯槽33に導入され、貯留される。洗浄液貯槽33に貯留されたキレート洗浄液は、後で説明するキレート剤再生部16に輸送される。
【0042】
他方、振動篩22の金網30を通過しない砂は真空吸引式ベルトコンベア23に導入される。真空吸引式ベルトコンベア23に導入される砂は、キレート洗浄液で湿潤し、そのキレート洗浄液含有比はかなり高くなっている(例えば、20〜40%)。そこで、この該砂を、真空吸引式ベルトコンベア23で真空吸引して該砂のキレート洗浄液含有比を可及的に低下させるようにしている。
【0043】
真空吸引式ベルトコンベア23は、径が互いに同一である第1ローラ34及び第2ローラ35と、第1ローラ34と第2ローラ35とに巻きかけられた輪状ないしは無端(エンドレス)の濾材装着ベルト36とを備えている。ここで、第1ローラ34は従動ローラであり、第2ローラ35はモータ(図示せず)によって駆動される駆動ローラである。第1ローラ34と第2ローラ35とは同じ高さの位置に配置され、濾材装着ベルト36は、第1ローラ34又は第2ローラ35と当接しない部位では、水平方向に走行する。なお、濾材装着ベルト36は、上側の水平走行経路を走行するときには、複数の支持ローラ(図示せず)によって支持される。ここで、濾材装着ベルト36は、振動篩22から供給されるキレート洗浄液で湿潤した砂を水平方向(
図4中の位置関係では右向き)に搬送する。
【0044】
上下方向に関して、濾材装着ベルト36の上側の水平走行経路と下側の水平走行経路の間に減圧室37が設けられている。減圧室37は、上部が開口された容器状のものであり、減圧室37の上部開口部は、上側の水平走行経路を走行する濾材装着ベルト36によって閉じられている。減圧室37は、排気管38を介して真空ポンプ(図示せず)に接続され、減圧室37内の空気は真空ポンプによって吸引・排気され、減圧室37内は減圧状態となっている。
【0045】
また、減圧室37は、排液管39を介して洗浄液貯槽33に接続されている。ここで、排液管39は、減圧室37が減圧状態ないしは真空状態にあるときでも、空気が逆流せず、かつキレート洗浄液が下方に支障なく排出されるように、10m又はこれより長く下向きに伸びている。そして、排液管39の下端部は、減圧室37が減圧状態ないしは真空状態を維持できるように(空気が流入しないように)、洗浄液貯槽33内のキレート洗浄液に浸漬されている。
【0046】
かくして、上側の水平走行経路を走行する部位で濾材装着ベルト36に供給されたキレート洗浄液で湿潤した砂は、搬送されているときに、減圧状態ないしは真空状態にある減圧室37によって吸引され、砂粒子間に保持されているキレート洗浄液の大部分は、濾材装着ベルト36を経由して減圧室37内に吸引される。さらに、砂粒子に残留・付着しているキレート洗浄液は、濾材装着ベルト36上の砂層の粒子間空隙部を通って減圧室37に高速で流入する空気によって減圧室37内に排出される。これにより、濾材装着ベルト36上の砂のキレート洗浄液含有比は非常に小さくなる(例えば、5〜10%)。このようにキレート洗浄液含有比が低下した砂は、スクレーパ40によって掻き取られ、後で説明する砂すすぎ部17に移送される。
【0047】
一方、減圧室37内のキレート洗浄液は、重力で洗浄液貯槽33に流下する。前記のとおり、排液管39は10m又はこれより長く下向きに伸び、その下端部が洗浄液貯槽33内のキレート洗浄液に浸漬されているので、排液管39を介して空気が減圧室37に流入することはない。
【0048】
図5に示すように、礫洗浄部15は、キレート洗浄液を保持するキレート洗浄液槽41と、礫を収容している礫容器44をキレート洗浄液槽41内のキレート洗浄液中に浸漬させた状態で水平方向に移動させる礫搬送装置43とを有している。礫容器44の底部及び側部は、礫を通過させない寸法の目を有する篩網(金網等)で形成されている。
【0049】
礫搬送装置43は、礫を収容している複数の礫容器44を、おおむね矢印Pで示す方向に連続的又は間欠的に搬送し、キレート洗浄液槽41内のキレート洗浄液に浸漬して水平方向に移動させる。なお、礫洗浄部15に関する以下の説明においては、便宜上、礫容器44の搬送方向P(
図5中の位置関係ではおおむね右向き)に関して、礫容器44が進んで行く側(
図5中の位置関係では右側)を「前」といい、これと反対側(
図5中の位置関係では左側)を「後」ということにする。
【0050】
キレート洗浄液槽41は、その後端部に位置する入口側傾斜部41aと、前端部に位置する出口側傾斜部41bと、両傾斜部41a、41b間に位置し深さが一定である水平部41cとを有している。そして、水平部41cの深さは、礫容器44をキレート洗浄液槽41内のキレート洗浄液中に完全に浸漬することができるように設定されている。キレート洗浄液槽41の水平部41cの長さ(前後方向の寸法)は、礫容器44の搬送速度に応じて、礫容器44に収容されている礫から有害金属等をほぼ完全に除去してキレート剤に捕捉させることが可能な浸漬時間を確保することができるように設定されている。キレート洗浄液槽41の幅(水平面内において前後方向と垂直な方向の寸法)は、キレート洗浄液槽41が幅方向に余裕をもって礫容器44を収容することができるように設定されている。
【0051】
礫搬送装置43は、その一部がキレート洗浄液槽41の上方に配置されたレール45と、レール45に沿って走行することができる複数の走行具46と、各走行具46に取り付けられ礫容器44を保持するハンガー47と、各走行具46を牽引してレール45に沿って走行させる牽引チェーン48とを備えている。レール45は、詳しくは図示していないが、平面視ではループをなし、キレート洗浄液槽41の上方では、礫容器44をキレート洗浄液槽41内のキレート洗浄液に浸漬することができるような形態に形成されている。すなわち、キレート洗浄液槽41の上方では、レール45はおおむねキレート洗浄液41の底面の形状に対応して起伏している。したがって、走行具46がレール45に沿っておおむね矢印Pで示す方向に走行すると、礫容器44は、キレート洗浄液槽41内のキレート洗浄液に浸漬される。
【0052】
詳しくは図示していないが、キレート洗浄液槽41の前端部へは、キレート剤再生部16からキレート洗浄液が所定の流量で連続的に供給される一方、キレート洗浄液槽41の後端部からは、礫を洗浄したキレート洗浄液が所定の流量(平均的には供給流量と同一)で連続的に排出される。このように排出されたキレート洗浄液は、キレート剤再生部16に戻される。
【0053】
かくして、キレート洗浄液槽41内には、巨視的には前側から後側に向かうキレート洗浄液の全体流れが生じる。その結果、礫容器44内の礫とキレート洗浄液は、前後方向に関して向流で固液接触する。このとき、キレート洗浄液槽41の前端部近傍では、キレート洗浄液槽41の後部ないし中部ですでに有害金属等の大部分が除去された礫が、有害金属等を捕捉していないキレート洗浄液と接触するので、礫中の有害金属等をほぼ完全に除去することができる。
【0054】
図6に示すように、キレート剤再生部16には、キレート洗浄液ないしはキレート剤を再生する手段として、その内部に固相吸着材粒子、又は固相吸着材が固定された充填物(パッキング)が充填された充填塔51(キレート洗浄液再生装置)が設けられている。また、キレート剤再生部16には、再生すべきキレート洗浄液を貯留する中間貯槽52と、再生されたキレート洗浄液を貯留する再生キレート洗浄液貯槽53と、酸液を貯留する酸液貯槽54と、水を貯留する水貯槽55とが設けられている。
【0055】
中間貯槽52には、洗浄液貯槽33(
図4参照)及びキレート洗浄液槽41(
図5参照)から導入されたキレート洗浄液が一時的に貯留される。そして、キレート洗浄液を再生するときに、中間貯槽52に貯留されたキレート洗浄液を充填塔51に移送する一方、充填塔51で再生されたキレート洗浄液を再生キレート洗浄液貯槽53に移送するためのポンプ56及び一連の複数の管路57〜60が設けられている。さらに、再生キレート洗浄液貯槽53に貯留されたキレート洗浄液を砂洗浄部14(混合攪拌器21)及び礫洗浄部15(キレート洗浄液槽41)に戻すためのポンプ61及び管路62が設けられている。
【0056】
さらに、キレート剤再生部16には、固相吸着材を再生する際に、酸液貯槽54に貯留された酸液を充填塔51に移送する一方、充填塔51から排出された酸液を酸液貯槽54に戻すためのポンプ63及び複数の管路64、65が設けられている。また、キレート剤再生部16には、酸液で再生された固相吸着材を水洗する際に、水貯槽55に貯留された水を充填塔51に移送する一方、充填塔51から排出された水を水貯槽55に戻すためのポンプ66及び複数の管路67、68が設けられている。
【0057】
ここで、充填塔51にキレート洗浄液、酸液又は水を移送するための管路57、58、64、67には、それぞれ、対応する管路を開閉するバルブ71、72、73、74が介設されている。他方、充填塔51からキレート洗浄液、酸液又は水を排出するための管路59、60、65、68には、それぞれ、対応する管路を開閉するバルブ75、76、77、78が介設されている。これらのバルブ71〜74、75〜78の開閉状態を切り換えることにより、充填塔51に対して、キレート洗浄液、酸液又は水のいずれかを給排することができる。なお、これらのバルブ71〜74、75〜78の開閉は、図示していないコントローラによって自動的に制御される。
【0058】
以下、キレート剤再生部16の運転手法の一例を説明する。なお、以下で説明する運転手法は単なる例示であって、本発明に係るキレート剤再生部16の運転手法が以下のものに限定されるものではないのはもちろんである。キレート洗浄液(キレート剤)を再生する際には、管路57〜60に介設されたバルブ71、72、75、76が開かれる一方、他のバルブ73、74、77、78が閉じられ、ポンプ56が運転される。これにより、中間貯槽52内のキレート洗浄液が、充填塔51内を流通して再生キレート洗浄液貯槽53に移送される。
【0059】
かくして、充填塔51内では、有害金属等を捕捉しているキレート剤を含むキレート洗浄液が、キレート剤より錯生成力が高い固相吸着材(固相吸着材粒子)と接触させられる。その結果、キレート剤に捕捉されている有害金属等がキレート剤から離脱させられ、固相吸着材に吸着ないしは抽出される。これにより、キレート洗浄液から有害金属等が除去・回収される一方、キレート剤は再び有害金属等を捕捉することができる状態となり、キレート洗浄液が再生される。再生キレート洗浄液貯槽53に貯留されたキレート洗浄液は、ポンプ61によって、管路62を介して砂洗浄部14及び礫洗浄部15に返送される。
【0060】
キレート剤より錯生成力が高い固相吸着材は、例えばゲル等の固体状のものであり、一般に、金属を捕捉しているキレート剤を含む水溶液と接触したときに、キレート剤と配位結合している金属イオンをキレート剤から離脱させて該固相吸着材に移動させることができる程度の共有結合以外の強い結合力を有しているものである。このような固相吸着材としては、例えばシリカゲルや樹脂等の担体に環状分子を密に担持させ、この環状分子にキレート配位子を修飾させたものなどが挙げられる。このような固相吸着材を用いる場合、隣り合う環状分子及びキレート配位子により、配位結合、水素結合などの複数の様々な結合や相互作用が生じて多点相互作用が生じ、金属イオンに対してキレート剤よりも強い化学結合が生じるとともに環状分子の性状により金属イオンを選択的に取り込むことができる。
【0061】
このようなキレート洗浄液の再生に伴って、固相吸着材における有害金属等の吸着量は経時的に増加してゆくが、固相吸着材の吸着能力には上限がある。このため、固相吸着材における有害金属等の吸着量が飽和状態ないしはその近傍に達したときには、固相吸着材は再生される。すなわち、キレート洗浄液が排除された状態で充填塔51内に酸液を流し、固相吸着材に吸着された有害金属等を酸液により除去して固相吸着材を再生する。かくして、有害金属等が酸液によって回収される一方、固相吸着材は再生されて再び有害金属等ないしはこれらのイオンを吸着又は抽出することが可能な状態となる。なお、固相吸着材は、酸液によって再生された後に水洗され、固相吸着材に付着している微量の酸液が除去される。
【0062】
充填塔51内の固相吸着材の有害金属等の吸着量が飽和状態ないしはその近傍に達して固相吸着材を酸液で再生する際には、管路64、58、59、65に介設されたバルブ73、72、75、77が開かれる一方、他のバルブ71、74、76、78が閉じられ、ポンプ63が運転される。これにより、酸液貯槽54内の酸液が、充填塔51内を流通して酸液貯槽54に還流する。固相吸着材の再生操作を開始する前には、充填塔51内のキレート洗浄液は排除される。なお、複数の充填塔51を並列に配設すれば、一部の充填塔51へのキレート洗浄液の供給が停止されているときでも、キレート洗浄液を連続的に再生することができる。固相吸着材の有害金属吸着量が飽和状態ないしはその近傍に達したか否かは、充填塔51から排出されたキレート洗浄液中の有害金属等の含有量を検出することにより判定することができる。
【0063】
充填塔51内に酸液を流す時間は、充填塔51の寸法ないしは形状、固相吸着材粒子の寸法等に応じて好ましく設定される。酸液は、酸液貯槽54と充填塔51とを循環して流れる。その際、充填塔51内の固相吸着材は酸液と接触し、固相吸着材に吸着されている有害金属等が酸液中に離脱させられる。すなわち、有害金属等が酸液によって回収される一方、固相吸着材は再生されて再び有害金属等を吸着することが可能な状態となる。
【0064】
酸液による固相吸着材の再生が終了した後に固相吸着材を水洗する際には、管路67、58、59、68に介設されたバルブ74、72、75、78が開かれる一方、他のバルブ71、73、76、77が閉じられ、ポンプ66が運転される。これにより、水貯槽55内の水が、充填塔51内を流通して水貯槽55に還流する。このような固相吸着材の水洗操作を開始する前には、充填塔51内の酸液は排除される。水は、水貯槽55と充填塔51との間を循環して流れる。その際、充填塔51内の固相吸着材は水と接触し、固相吸着材に付着している酸液が洗浄される。この後、キレート洗浄液の再生が再開される。
【0065】
図7に示すように、砂すすぎ部17(砂すすぎ装置)は、ベルトコンベア80と、砂供給装置81と、すすぎ水散布装置82と、洗浄廃水受槽83とを備えている。ここで、ベルトコンベア80は、電動機(図示せず)によって回転駆動されるシャフト84aに同軸に取り付けられた略円柱形の駆動ローラ84と、駆動源には接続されていないシャフト85aに同軸に取り付けられた略円柱形の従動ローラ85と、駆動ローラ84と従動ローラ85とに巻き掛けられた輪状ないしは無端(エンドレス)の搬送ベルト86と、搬送ベルト86を支持ないしは案内する多数の支持ローラ87と、該ベルトコンベア80から排出される砂を案内する案内板88とを備えている。
【0066】
駆動ローラ84と従動ローラ85とは、その直径が同一であり、同一の高さの位置に配置されている。搬送ベルト86は、すすぎ水は通過させるが砂の粒子は通過させない輪状に湾曲させることが可能な多孔性材料、メッシュ状材料、繊維状材料ないしは布状材料で形成されている。すすぎ水散布装置82は、搬送ベルト86の移動方向に関して所定の長さ(例えば、1〜2m)の領域において、搬送ベルト86によって搬送されている砂にすすぎ水を散布する。なお、すすぎ水散布装置82からのすすぎ水の散布量は、砂に付着しているキレート洗浄液をほぼ全部洗い流すことができるように好ましく設定される。例えば、砂に付着しているキレート洗浄液の量の1.5〜2.0倍の量のすすぎ水が散布される。具体例としては、例えばキレート洗浄液含有比が10%の砂を1時間あたり5トン(乾燥基準)で搬送する場合は、1時間あたり0.75〜1.0トンのすすぎ水を散布することになる。
【0067】
砂供給装置81は、砂洗浄部14から排出された砂を、従動ローラ85の近傍で搬送ベルト86の上に所定の流量で供給する。このように供給された砂は、搬送ベルト86によって搬送され、駆動ローラ84に対応する位置で案内板88を経由して下方に落下し、砂貯蔵場(図示せず)に貯蔵される。搬送ベルト86によって搬送されている砂には、すすぎ水散布装置82からすすぎ水が散布される。このすすぎ水は、砂の粒子の間隙を通って下方に移動し、搬送ベルト86を通過して洗浄廃水受槽83に、洗浄廃水として流下又は落下する。その際、砂に付着していたキレート洗浄液は、すすぎ水によって下方に洗い流され、洗浄廃水受槽83に流入又は落下する。
【0068】
かくして、砂貯槽場(図示せず)にはキレート剤を含まない砂が貯蔵される。一方、砂すすぎ部17の洗浄廃水受槽83内のキレート剤を含む洗浄廃水は、キレート剤回収部19の洗浄廃水蒸発装置101(
図9参照)に導入される。そして、洗浄廃水蒸発装置101によって、洗浄廃水からキレート剤が回収され、このキレート剤は砂とともに砂洗浄部14に戻される。
【0069】
なお、砂すすぎ部17におけるすすぎ水の使用量すなわち洗浄廃水の排出量をより低減するために、ベルトコンベア80として、
図4に示す砂洗浄部14用の真空吸引式ベルトコンベアと同様のものを用いてもよい。この場合は、濾材装着ベルト上の砂層の粒子間空隙部を通って減圧室に高速で流入する空気によって、すすぎ水ないしは洗浄廃水の下向きの移動が促進されるので、すすぎ水の使用量を大幅に低減することができる。
【0070】
図8に示すように、礫すすぎ部18(礫すすぎ装置)は、ベルトコンベア90と、礫供給装置91と、すすぎ水散布装置92と、すすぎ水受槽93とを備えている。ここで、ベルトコンベア90は、電動機(図示せず)によって回転駆動されるシャフト94aに同軸に取り付けられた略円柱形の駆動ローラ94と、駆動源には接続されていないシャフト95aに同軸に取り付けられた略円柱形の従動ローラ95と、駆動ローラ94と従動ローラ95とに巻き掛けられた輪状ないしは無端(エンドレス)の搬送ベルト96と、搬送ベルト96を支持ないしは案内する多数の支持ローラ97と、該ベルトコンベア90から排出される礫を案内する案内板98と、礫貯蔵所(図示せず)とを備えている。
【0071】
なお、礫すすぎ部18の構成及び機能は、すすぎ水で洗浄する対象が砂ではなく礫である点を除けば、
図7に示す砂すすぎ部17と実質的に同一である。そこで、説明の重複を避けるため、礫すすぎ部18の詳細な説明は省略する。
【0072】
かくして、砂すすぎ部17及び礫すすぎ部18の各すすぎ水受槽83、93に収容された洗浄廃水(キレート剤を含むすすぎ水)は、キレート剤回収部19の洗浄廃水蒸発装置101に導入される。そして、洗浄廃水蒸発装置101によって、洗浄廃水からキレート剤が回収され、砂洗浄部14に戻される。
【0073】
以下、キレート剤回収部19の洗浄廃水蒸発装置101の構成及び機能を具体的に説明する。
図9〜
図11に示すように、キレート剤回収部19の洗浄廃水蒸発装置101には、砂すすぎ部17の洗浄廃水受槽83(
図7参照)及び礫すすぎ部18の洗浄廃水受槽93(
図8参照)から排出されたキレート剤を含む洗浄廃水を、洗浄廃水通路103を介して受け入れる洗浄廃水貯槽104が設けられている。洗浄廃水貯槽104は、地面に埋設された、平面形状が長方形であるコンクリート製の貯水槽である。洗浄廃水貯槽104の上方には、該洗浄廃水貯槽104への雨水の降下を阻止する屋根(図示せず)が設けられている。なお、以下ではキレート剤回収部19ないしは洗浄廃水蒸発装置101における施設ないしは装置の位置関係を簡明に示すため、
図9中において洗浄廃水貯槽104と洗浄廃水通路103とが並ぶ方向(
図9中の位置関係では左右方向)に関して、洗浄廃水貯槽104が位置する側を「左」といい、洗浄廃水通路103が位置する側を「右」ということにする。
【0074】
また、洗浄廃水蒸発装置101には、洗浄廃水貯槽104に対して、左右方向と垂直な方向に適度に離間して、水蒸発用砂を収容する容器状の砂収容部105が配設されている。本実施形態では、このような水蒸発用砂として細砂(粒径が0.075〜0.25mmの砂)を用いている。なお、以下では、キレート剤回収部19ないしは洗浄廃水蒸発装置101における施設ないしは装置の位置関係を簡明に示すため、洗浄廃水貯槽104と砂収容部105とが並ぶ方向(左右方向と垂直な方向)に関して、洗浄廃水貯槽104が位置する側を「前」といい、砂収容部105が位置する側を「後」ということにする。
【0075】
砂収容部105は、前端壁106と後端壁107と左側壁108と右側壁109と底壁110とを有し、左右方向の長さが比較的短く、前後方向の長さが比較的長い長方形の平面形状を有し、適量の水蒸発用砂を収容することができる深さを有する、地上に設置され又は地中に埋設されたコンクリート製の箱状の容器である。さらに、洗浄廃水蒸発装置101には、砂収容部105の上方に配設され該砂収容部105への雨水の降下を阻止する屋根112と、洗浄廃水貯槽104に貯留されたキレート剤を含む洗浄廃水を砂収容部105に収容されている水蒸発用砂に散布する洗浄廃水散布装置113と、砂収容部105の底部の洗浄廃水を洗浄廃水貯槽104に還流させる洗浄廃水還流機構114とを備えている。
【0076】
砂収容部105は、コンクリートで作成され、その上端部近傍部が大気中に露出するようにして地面120に埋設されている。砂収容部105は、平面視では左右方向の長さが比較的短く(例えば20〜50m)、前後方向の長さが比較的長い(例えば100〜200m)長方形の形状を有し、その深さが適量の水蒸発用砂を収容することができるように設定され(例えば0.4〜0.8m)、一体形成された前端壁106と後端壁107と左側壁108と右側壁109と底壁110とを有する箱状(浅いプール状)の容器である。なお、砂収容部105の左右方向及び前後方向の長さは、該砂収容部105で蒸発させる洗浄廃水の量等に応じて適宜に設定される。
【0077】
底壁110の上面には、互いに所定の間隔を隔てて前後方向に平行に伸び、所定の深さ(例えば5〜10cm)を有する複数の排水溝121が設けられている。これらの排水溝121は、砂収容部105の前端部近傍に設けられた集合排水溝122に接続されている。集合排水溝122の前側の端部は洗浄廃水貯槽104に接続されている。なお、排水溝121及び集合排水溝122は洗浄廃水還流機構114の構成要素である。
【0078】
かくして、水蒸発用砂の間隙を流下して各排水溝121内に流入した洗浄廃水(すなわち、蒸発しなかった余剰の洗浄廃水)は、集合排水溝122を介して洗浄廃水貯槽104に重力により自然に還流する。そして、左右方向に関してこれらの排水溝121間に位置する複数の凸部123の上には、洗浄廃水は通過させるが水蒸発用砂は通過させない多孔板124が配設されている。ここで、多孔板124は単一の板状部材ではなく、製作及び運搬に適した寸法の多数の多孔板(例えば、左右1〜2m、前後2〜5m、厚さ5〜10mmの多孔板)で構成されている。そして、多孔板124の上に、所定の厚さ(例えば30〜60cm)の砂層125が形成されている。
【0079】
砂収容部105の左側壁108の上に、前後方向に適当な間隔(例えば、5〜10m)をあけて複数の左側鉛直フレーム127が配設される一方、右側壁109の上に、前後方向に適当な間隔(例えば、5〜10m)をあけて複数の右側鉛直フレーム128が配設されている。なお、左側鉛直フレーム127と右側鉛直フレーム128は、前後方向に関して同一位置に配設されている。そして、前後方向に関して同一位置に配設された左側鉛直フレーム127の上端近傍部と右側鉛直フレーム128の上端近傍部とは、左右方向に水平に伸びる横フレーム129によって連結されている。また、前後方向に隣り合う左側鉛直フレーム127の上端近傍部同士は前後方向に伸びる縦フレーム(図示せず)によって連結され、前後方向に隣り合う右側鉛直フレーム128の上端近傍部同士は前後方向に伸びる縦フレーム(図示せず)によって連結されている。
【0080】
このように、左側鉛直フレーム127と右側鉛直フレーム128と横フレーム129と縦フレーム(図示せず)とによって構成される檻状のフレーム構造の上に、屋根112が取り付けられている。屋根112は、普通の降雨時における砂収容部105への雨水の降下を阻止できるように、砂収容部105に比べてやや大きい平面形状を有している。なお、図示していないが、屋根112上に降った雨は、樋などの雨水排出具により、砂収容部105の外に排出され、洗浄廃水貯槽104には流入しない。
【0081】
洗浄廃水散布装置113は、砂収容部105の上方において屋根112の下側に配置され、前後方向に伸びる複数の送水パイプ131を備えている。詳しくは図示していないが、各送水パイプ131は、固定具を用いて横フレーム129によって支持されている。これらの送水パイプ131は、左右方向に適当な間隔(例えば、1〜2m)を隔てて平行に配置されている。そして、各送水パイプ131には、前後方向に適当な間隔(例えば、1〜2m)を隔てて、下向きに開口する複数の放水ノズル132が取り付けられている。
【0082】
前後方向に伸びる各送水パイプ131の前端部は、左右方向に伸びる中間パイプ133を介して洗浄廃水供給管134の後端部に接続されている。なお、各送水パイプ131の後端部は閉止されている。洗浄廃水供給管134の前端部は洗浄廃水貯槽104内の洗浄廃水に浸漬されている。そして、洗浄廃水貯槽104の近傍において、洗浄廃水供給管134に洗浄廃水供給ポンプ135が介設されている。ここで、洗浄廃水供給ポンプ135は、洗浄廃水供給管134(洗浄廃水供給ポンプ135より洗浄廃水貯槽側の部分)を介して洗浄廃水貯槽104内の洗浄廃水を吸い込んで加圧し、洗浄廃水供給管134(洗浄廃水供給ポンプ135より砂収容部側の部分)と中間パイプ133とを介して各送水パイプ131に供給する。かくして、各放水ノズル132から、砂収容部105内の砂層125(水蒸発用砂)の上面に向かって洗浄廃水を放出することができる。
【0083】
以下、キレート剤を含む洗浄廃水を、キレート剤回収部19ないしは洗浄廃水蒸発装置101により処理してキレート剤を回収する方法を説明する。洗浄廃水受槽83(
図7参照)及び洗浄廃水受槽93(
図8参照)から排出されたキレート剤を含む洗浄廃水は、大気中に自然に蒸発(気化)する水分を除いて、洗浄廃水通路103を介して洗浄廃水貯槽104に流入し、貯留される。
【0084】
洗浄廃水貯槽104内に貯留された洗浄廃水は、洗浄廃水供給ポンプ135により、洗浄廃水供給管134と中間パイプ133とを介して、各送水パイプ131に供給され、各放水ノズル132から砂収容部105内の砂層125の上面に向かっておおむね下向きに滴状又は霧状で放出され、砂層125に万遍なく散布される。このように、放水ノズル132により、砂収容部105内の砂層125の上に洗浄廃水が散布され、砂層125内の砂粒子間には常に洗浄廃水が保持され、あるいは砂粒子が洗浄廃水の薄膜により被覆された飽和水分状態(例えば、含水比30〜35%)に維持される。
【0085】
そして、砂層125中に保持された洗浄廃水は、大気中に蒸発(気化)する。かくして、洗浄廃水貯槽104に流入する洗浄廃水は、すべて砂層125から大気中に蒸発(気化)する。その際、洗浄廃水に含まれているキレート剤は、砂層125内に残留する。したがって、洗浄廃水に含まれているキレート剤は外部に排出されることなく、確実に回収される。なお、洗浄廃水を砂層125から蒸発させるために必要とされる砂収容部105の面積ないしは寸法は、後で説明する。
【0086】
洗浄廃水散布装置113(放水ノズル132)から砂層125への洗浄廃水の散布量は、砂層125からの洗浄廃水の蒸発量よりも多くなるように好ましく設定される(例えば、蒸発予測量の1.2〜2.0倍)。これにより、砂層125を構成する水蒸発用砂は飽和水分状態(例えば、含水比30〜35%)に維持される。ここで、余剰の洗浄廃水は、砂層125内の砂粒子の間隙を流下し、多孔板124を通り抜けて排水溝121に流入する。そして、排水溝121内の余剰の洗浄廃水は、集合排水溝122を介して洗浄廃水貯槽104に還流する。
【0087】
このような洗浄廃水の蒸発処理を繰り返し実施すると、砂収容部105内の砂層125にはキレート剤が次第に蓄積されてゆく。そこで、所定の期間が経過するごとに(例えば2〜6か月ごとに)、砂収容部105内の所定の領域ないしは区画(例えば、100〜200m
2の領域)の水蒸発用砂を除去して砂洗浄部14に導入し、キレート剤を回収する。そして、砂収容部105の水蒸発用砂が除去された区画ないしは領域には、砂すすぎ部17から排出された砂から篩分された細砂を水蒸発用砂として導入する。すなわち、砂収容部105内の所定の区画ないしは領域のキレート剤を含む水蒸発用砂を、キレート剤を含まない砂から篩分された細砂と交換する。よって、土壌浄化システムSから外部へのキレート剤の逸失を防止又は低減することができる。また、砂すすぎ部17から出るキレート剤を含まない砂の一部を、砂収容部105に収容する水蒸発用砂として用いるので、砂収容部105で用いる水蒸発用砂を容易に調達することができる。
【0088】
以下、洗浄廃水を砂層125から蒸発させるために必要とされる洗浄廃水貯槽104及び砂収容部105の仕様(表面積、寸法等)の一例を説明する。例えば、土壌浄化システムSは、1時間あたり100トンの汚染土壌(水分を含む)を浄化し、この汚染土壌は、25トンの礫(乾燥基準)と、30トンの砂(乾燥基準)と、25トンの土(乾燥基準)と、20トンの水とを含むものとする(含水比25%)。そして、この土壌浄化システムSを、1日8時間使用して年間250日稼働させる場合は、洗浄廃水貯槽104及び砂収容部105の仕様を、例えば下記のように設定することができる。なお、ここで説明する仕様は、あくまでも一例であり、土壌処理システムSの土壌処理量、あるいは稼動時間又は稼働日数がこれらと異なる場合でも、同様の手法で洗浄廃水貯槽104及び砂収容部105の仕様ないしは寸法を設定することができるのはもちろんである。
【0089】
<洗浄廃水貯槽104の仕様>
洗浄廃水貯槽104の仕様は、例えば下記のように設定される。
・直方体状貯槽(左右寸法:15m、前後寸法:25m、深さ:3m)
・表面積 375m
2
・最大貯水量 約1000トン
【0090】
<砂収容部105の仕様>
砂収容部105の仕様は、例えば下記のように設定される。
・直方体状(左右寸法:50m、前後寸法:100m、深さ:0.8m)
・上面面積 5000m
2
・砂収容量 約2500m
3
【0091】
<砂すすぎ部17からの洗浄廃水の排出量>
砂洗浄部14の真空吸引式ベルトコンベア23から排出される砂(乾燥基準で30トン/hr)のキレート洗浄液含有比を10%とし、砂すすぎ部17におけるすすぎ水の使用量を、砂に含まれ又は付着しているキレート洗浄液の2.0倍に設定すれば、砂すすぎ部17からのキレート剤を含む洗浄廃水の排出量は、12000トン/年となる。
30トン/hr×0.1×8hr×250日×2.0=12000トン/年
【0092】
<礫すすぎ部18からの洗浄廃水の排出量>
礫洗浄部15から排出される礫(乾燥基準で25トン/hr)のキレート洗浄液含有比を5%とし、礫すすぎ部18におけるすすぎ水の使用量を、礫に含まれ又は付着しているキレート洗浄液の1.2倍とすれば、礫すすぎ部18からのキレート剤を含む洗浄廃水の排出量は、3000トン/年となる。
25トン/hr×0.05×8hr×250日×1.2=3000トン/年
【0093】
<洗浄廃水貯槽104での水蒸発量>
一般に、湖沼や溜池などにおける水面からの水の蒸発量は、水面1m
2あたり年間0.5〜1.0トンであることが知られている。したがって、洗浄廃水貯槽104(表面積375m
2)からは、少なくとも年間187トンの水が蒸発するものと推定される。
0.5トン/m
2・年×375m
2=187トン/年
前記のとおり、洗浄廃水貯槽104の最大貯水容量は約1000トンであるが、これは砂すすぎ部17及び礫すすぎ部18からの洗浄廃水の排出量(15000トン/年、すなわち250日稼働で60トン/日)の約17日分に相当する。他方、洗浄廃水貯槽104内に貯留されている洗浄廃水は、日々砂収容部105で処理されてゆくので、洗浄廃水貯槽104は、洗浄廃水を溢流させることなく十分な余裕をもって貯留することができる。
【0094】
<砂層125における水蒸発量>
例えば非特許文献1の開示内容(研究結果)に鑑みれば、砂収容部105内の砂層125における水の蒸発量は、以下で説明するように3.15トン/m
2・年であるものと推算される。すなわち、非特許文献1には、温度が14.2℃であり、相対湿度が59%であり、空気の流速が250cm/秒であるときにおける、含水比が32.1%(飽和水分状態)の土壌からの水の蒸発速度は11.3×10
−6g/cm
2・秒であると開示されている。また、温度が14.8℃であり、相対湿度が57%であり、空気の流速が170cm/秒であるときにおける、含水比が32.9%(飽和水分状態)の土壌からの水の蒸発速度は7.9×10
−6g/cm
2・秒であると開示されている。
【0095】
このような非特許文献1の開示事項に鑑みれば、日本における平均的な気候状態を、温度15℃、相対湿度60%、風速2m/秒程度と想定したときには、砂収容部105内の飽和水分状態にある砂層125からの平均的な水の蒸発量は、おおむね10.0×10
−6g/cm
2・秒であるものと推定される。この蒸発量は、実用的な単位に換算すれば、3.15トン/m
2・年となる。
10.0×10
−6g/cm
2・秒
=10.0×10
−6×10
−6×10
4トン/m
2・秒=1.0×10
−7トン/m
2・秒
=1.0×10
−7×3600×24×365トン/m
2・年=3.15トン/m
2・年
したがって、砂収容部105内の砂層125(5000m
2)からは年間15750トンの水が蒸発する。
3.15トン/m
2・年×5000m
2=15750トン/年
【0096】
<洗浄廃水蒸発装置101における水の収支>
前記のとおり、砂すすぎ部17からの洗浄廃水の排出量は、年間12000トンと推定される。また、礫すすぎ部18からの洗浄廃水の排出量は、年間3000トンと推定される。他方、洗浄廃水貯槽104では少なくとも年間187トンの水を蒸発させることができ、砂収容部105では年間15750トンの水を蒸発させることができる。したがって、洗浄廃水蒸発装置101では、年間15937トンの水を蒸発させることができるものと推定される。このように、洗浄廃水蒸発装置101では、1年間で全体的には、砂すすぎ部17及び礫すすぎ部18から排出される洗浄廃水の量(年間15000トン)より多量の洗浄廃水を蒸発させることができるので、基本的には、洗浄廃水をすべて蒸発させて処理することができることになる。しかしながら、例えば冬季あるいは梅雨の時期には洗浄廃水の蒸発量が少なくなるので、前記の具体例における砂収容部105の前後方向の寸法(100m)又は左右方向の寸法(50m)を、10〜20%程度長くするのが好ましい。
【0097】
以上、本発明に係る汚染土壌浄化システムSないしは汚染土壌浄化方法によれば、土壌浄化システムS内の一連の流通系統を循環する大量の洗浄水にキレート剤を添加せず、液体サイクロン7から排出される砂及びトロンメル6から排出される礫をキレート洗浄液で洗浄するようにしているので、土壌浄化システムS内に保留するキレート剤の量を大幅に低減することができる。そして、キレート洗浄液で洗浄された砂及び礫を、それぞれ、砂すすぎ部17及び礫すすぎ部18においてすすぎ水で洗浄するので、キレート剤を含まない再利用に適した砂及び礫を得ることができる。また、砂すすぎ部17及び礫すすぎ部18から排出される洗浄廃水中のキレート剤が、キレート剤回収部19によって砂洗浄部14に戻されるので、キレート剤の使用量を大幅に低減することができる。さらに、真空吸引式ベルトコンベア23で真空吸引により、キレート洗浄液で湿潤した砂のキレート洗浄液含有比が低下させられるので、砂すすぎ部17におけるすすぎ水の使用量、すなわち蒸発させるべき洗浄廃水の量を低減することができ、砂収容部105の敷地面積を低減することができる。
【課題】汚染土壌をキレート剤を用いて浄化する土壌浄化施設において、キレート剤の保有量及び使用量を低減するとともに、キレート剤回収のための設備の敷地面積を低減することを可能にする手段を提供する。
【解決手段】土壌浄化システムは、汚染土壌を礫と砂と土とに分級する土壌分級部と、分離された砂及び礫をキレート洗浄液で浄化する砂・礫浄化部2とを有する。砂・礫浄化部2は、砂洗浄部14と、礫洗浄部15と、キレート剤再生部16と、砂すすぎ部17と、礫すすぎ部18と、キレート剤回収部19とを有する。砂洗浄部14及び礫洗浄部15は、それぞれ、砂及び礫をキレート洗浄液で洗浄する。キレート剤再生部16は、キレート洗浄液を再生して砂洗浄部14及び礫洗浄部15に返送する。キレート剤回収部19は、砂すすぎ部17及び礫すすぎ部18から排出された洗浄廃水からキレート剤を回収する。