特許第6191911号(P6191911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6191911トランスファPTOの誤操作警報制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191911
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】トランスファPTOの誤操作警報制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/28 20060101AFI20170828BHJP
   B60K 25/06 20060101ALI20170828BHJP
   B65F 3/00 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   B60K17/28 D
   B60K25/06
   B65F3/00 L
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-175875(P2013-175875)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-44456(P2015-44456A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】303002158
【氏名又は名称】三菱ふそうトラック・バス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小関 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 剛
(72)【発明者】
【氏名】森元 繁幸
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−044345(JP,A)
【文献】 実開昭58−147826(JP,U)
【文献】 特開2013−123924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/28
B60K 25/06
B65F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの動力を、機械式自動変速機の出力軸を介して走行機構部および走行以外の作業機構部に切換えて伝達するトランスファPTOの誤操作警報制御装置において、
前記トランスファPTOは、パーキングスイッチと、前記エンジンからの動力を前記作業機構部に伝達するように前記トランスファPTOに切り換え指令を出すトランスファPTOスイッチと、
該トランスファPTOスイッチの前記トランスファPTOに対する切換え指令を出す操作の有無を判定するPTOスイッチ操作有無判定部と、前記機械式自動変速機がニュートラル位置且つ前記パーキングスイッチオンで前記トランスファPTOスイッチがオンとなっている状態を判定するトランスファPTOスタンバイ状態判定部と、前記パーキングスイッチおよび前記機械式自動変速機のニュートラル操作のAMT操作有無判定部と、前記機械式自動変速機のアクセル操作判定部と、を備えた誤操作警報制御部と、を具備し、
該誤操作警報制御部は、前記PTOスイッチ操作有無判定部において前記トランスファPTOスイッチがオンであると判定され、前記トランスファPTOスタンバイ状態判定部においてトランスファPTOスタンバイ状態でないと判定され、前記AMT操作有無判定部において、前記パーキングスイッチがオンで前記機械式自動変速機がニュートラル位置でないと判定されたとき、トランスファPTO警報を発するトランスファPTO警報部と、
前記アクセル操作判定部によりアクセルオフと判定されたとき強制的にクラッチを遮断する強制クラッチ遮断部と、を備えたことを特徴とするトランスファPTOの誤操作警報制御装置。
【請求項2】
前記誤操作警報制御部は、さらに、トランスファPTOスイッチがオンかまたは前記機械式自動変速機の出力軸の回転を確認するPTOスイッチ操作/エンジン動作有無判定部と、前記パーキングスイッチおよび前記機械式自動変速機のニュートラル操作のAMT操作有無判定部と、始動スイッチ操作判定部と、を具備し、
前記PTOスイッチ操作/エンジン動作有無判定部による前記トランスファPTOスイッチの操作なし、またはエンジン動作なしの判定か、または前記トランスファPTOスイッチの操作あり、またはエンジン動作ありの判定で、且つ前記AMT操作有無判定部による、前記パーキングスイッチおよび前記機械式自動変速機のニュートラル操作ありとの判定で、または、前記パーキングスイッチおよび前記機械式自動変速機のニュートラル操作なしの判定で、前記始動スイッチ操作判定部のオフ操作ありの判定で、前記トランスファPTO警報部におけるトランスファPTO警報をオフとして前記強制クラッチ遮断部によるクラッチ遮断を解除するようにした、
ことを特徴とする請求項1記載のトランスファPTOの誤操作警報制御装置。
【請求項3】
前記トランスファPTO警報部におけるトランスファPTO警報は、音声による警報である、
ことを特徴とする請求項1または2記載のトランスファPTOの誤操作警報制御装置。
【請求項4】
前記トランスファPTO警報部におけるトランスファPTO警報は、画像表示による警報である、
ことを特徴とする請求項1または2記載のトランスファPTOの誤操作警報制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は走行以外の目的でエンジンの動力を取り出すPTO(Power-Take-Off)を備えたトランスファPTOの誤操作警報制御装置に係り、特に機械式自動変速装置(AMT)車輌に、誤操作で意図せず車輌が動き出すことのないように警報を発し、誤操作時に動力伝達を強制的に遮断するようにした、トランスファPTOの誤操作警報制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ごみ収集車やコンクリートミキサー車等の荷役車輌を含む特殊車輌には、走行以外の目的でエンジンの動力を取り出すPTO(Power-Take-Off)を備えたPTO付車輌がある。
【0003】
このようなPTO付車輌においても、通常の乗用車と同様に運転走行の向上を図るために機械式自動変速装置(AMT)が装備されるようになってきている。
すなわち、AMTでは、手動変速機と同様の構造の機械式変速機に、クラッチを自動的に断続可能な自動クラッチ装置や自動的に変速段を選択する自動変速装置等を組み合わせている。
このAMTでは、例えば、発進時には、アクセルペダルを踏込み、アクセル開度(アクセルペダルの踏込量)に応じて、燃料噴射量がエンジンに噴射されてエンジンの回転数が上昇し、エンジンの回転数の上昇に応じて、自動的にクラッチを接続するように制御している。
また停止時には、アクセルペダルの踏込みが無くなり、アクセルオフ状態となり、またはエンジン回転数が所定回転数より小さくなれば、自動的にクラッチを切断するように制御している。
【0004】
ところで、特許文献1では、機関からの動力伝達を受ける流体継手を備えた変速機と、該変速機と機関とを直結する伝動装置と、PTO装置と、該PTO装置と変速機との断続を行う操作手段と、伝動装置の作動切換えを行う切換え制御手段と、PTO装置を作動状態にしたとき、操作信号を受けて、切換え制御手段へ作動信号を出すPTO制御手段を備えた、PTO付き自動変速機搭載車輌のロックアップ制御装置が開示されている。
これにより、PTO動作時に、機関と変速機とが直結するので、流体継手における動力損失を低減させることができるとしている。
【0005】
また、特許文献2では、トルクコンバータを有するPTO付車輌の自動変速装置に関し、PTO使用時のトルクコンバータによる駆動力のロスをなくすことを目的として、プレッシャーバルブとマニュアルバルブとの間に油圧制御バルブを設け、PTO使用モード時に停車状態が検出されたときには、この油圧制御バルブをオフにしてマニュアルバルブを走行不能な状態に制御すると共に、ロックアップクラッチを被発進意思状態の間作動させるように構成している。
これにより、通常の自動変速装置において油圧制御バルブを設けるだけでPTO使用時のトルクコンバータによる駆動力のロスをなくすことができるとしている。
【0006】
また、特許文献3では、作業トラックにおいて、トラックのエンジンの回転数を上げても超低速走行ができるようにするために、トラックのトランスミッションPTOより動力を取出し、油圧駆動ポンプを駆動し発生した油圧により油圧モータを駆動し、この回転をトランスファに伝達して動力を駆動輪に伝え、作業走行するように構成すると共に、普通走行の場合は通常の機械駆動による走行が可能となるように構成している。
これにより、車輌の普通走行時は通常の機械駆動であり、作業時のみ油圧駆動であり、無段階変速が可能なため、作業に最適な速度を選択することができるとしている。
【0007】
また、特許文献4では、補助流体圧ポンプをトルク・トランスファ・ケースから直接に駆動して、補助流体圧ポンプを駆動するための動力取出し装置アダプタの必要をなくすことを目的としている。
そのために、駆動装置を備えた自動車トルク・トランスファ・ケース・ポンプ駆動装置を、トルク・トランスファ・ケースの前部に取付け、補助流体圧ポンプを直接にトランスファ・ケースから駆動して補助流体圧ポンプの駆動に動力取出し装置(PTO)アダプタの必要をなくすことができる。
このように動力取出し装置(PTO)アダプタの必要をなくすことにより、自動車両内のトルク・トランスファ・ケースの装備を簡略化し、空間の問題のある用途においても補助流体圧ポンプ16の使用ができるとしている。
【0008】
さらに特許文献5では、副変速装置、動力取出軸を含めた付加的機能の適用の有無、伝動比の変更等、多様な変更の要請に容易に応えることができる装置を提供するために、駆動源に結合された変速装置の出力軸と、左右駆動輪のためのデファレンシャルギア装置の入力軸とを同一軸線上に配置して主伝動軸線とし、主伝動軸線沿いの伝動を含む動力伝達を行なうトランスファ装置を備え、トランスファ装置を出力軸及び入力軸に脱着可能に結合している。
これにより、駆動源に結合された変速装置の出力軸と、左右駆動輪のためのデファレンシャルギア装置の入力軸とを同一軸線上に配置して主伝動軸線とし、主伝動軸線沿いの伝動を含む動力伝達を行なうトランスファ装置を備え、トランスファ装置を出力軸及び入力軸に脱着可能に結合した構造を有するので、トランスアクスルの仕様変更が容易であり、必要な機能を備えたトランスファ装置を簡便に設定することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60−203535号公報
【特許文献2】特開平5−44831号公報
【特許文献3】特開平8−324267号公報
【特許文献4】特開平11−286330号公報
【特許文献5】特開2002−67718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1〜5のいずれにおいても、誤操作で意図せず車輌が動き出すことのないように、安全性を充分に確保した、トランスファPTOの誤操作警報制御装置を開示しているわけではない。
すなわち、ヒューマンエラーといわれる誤操作はつきもので、誤操作対策として、ドライバに対して警報を発して注意を喚起するばかりでなく、実際に誤操作によって、意図せず車輌が動き出すことを確実に阻止する手段を講ずることは、安全上、必須の対策であるといえる。
本発明は上記背景から提案されたものであって、機械式自動変速装置(AMT)車輌に、動力を切り換えるトランスファPTOを搭載したトランスファPTO搭載車において、誤操作があった場合の安全対策として、警報を発し、さらには意図せず車輌が動き出すことのないように、車輪部への動力伝達を遮断して安全性を充分に確保した、トランスファPTOの誤操作警報制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1記載の本発明では、エンジンからの動力を、機械式自動変速機の出力軸を介して走行機構部および走行以外の作業機構部に切換えて伝達するトランスファPTOの誤操作警報制御装置において、トランスファPTOは、パーキングスイッチと、エンジンからの動力を作業機構部に伝達するようにトランスファPTOに切り換え指令を出すトランスファPTOスイッチと、トランスファPTOスイッチのトランスファPTOに対する切換え指令を出す操作の有無を判定するPTOスイッチ操作有無判定部と、機械式自動変速機がニュートラル位置且つパーキングスイッチオンでトランスファPTOスイッチがオンとなっている状態を判定するトランスファPTOスタンバイ状態判定部と、パーキングスイッチおよび機械式自動変速機のニュートラル操作のAMT操作有無判定部と、機械式自動変速機のアクセル操作判定部と、を備えた誤操作警報制御部と、を具備し、誤操作警報制御部は、PTOスイッチ操作有無判定部においてトランスファPTOスイッチがオンであると判定され、トランスファPTOスタンバイ状態判定部においてトランスファPTOスタンバイ状態でないと判定され、AMT操作有無判定部において、パーキングスイッチがオンで機械式自動変速機がニュートラル位置でないと判定されたとき、トランスファPTO警報を発するトランスファPTO警報部と、アクセル操作判定部によりアクセルオフと判定されたとき強制的にクラッチを遮断する強制クラッチ遮断部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
これにより、PTOスイッチ操作有無判定部において、トランスファPTOスイッチの操作を判定する。
トランスファPTOスイッチがオンであると判定されると、トランスファPTOスタンバイ状態判定部において、機械式自動変速機がニュートラル位置かパーキングスイッチがオンでトランスファPTOスイッチがオンとなっている状態を判定する。
ここで、機械式自動変速機がニュートラル位置でなく、パーキングスイッチがオフでトランスファPTOスイッチがオフとなっていると判定されたとき、AMT操作有無判定部において、パーキングスイッチおよび機械式自動変速機のギヤ操作を判定する。
ここで、パーキングスイッチがオフで機械式自動変速機がニュートラル位置でなければ、トランスファPTO警報部においてトランスファPTO警報を作動させることができる。
これにより、ドライバは誤操作したとして認識することができ、誤操作の停止や操作のやり直しを行う等の手順を講ずることができる。
次に、アクセル操作判定部において、機械式自動変速機のアクセル操作を判定する。すなわち、ドライバはトランスファPTO警報により、ドライバは誤操作したとして認識することができ、アクセル操作を中断する。
これにより、アクセルオフと判定されたとき、強制クラッチ遮断部において、強制的にクラッチを遮断することができる。
このように、誤操作警報を発して、さらに、強制的にクラッチを遮断するので、意図しない車輌の飛び出しを防止することができる。
【0013】
また、請求項2記載の本発明では、誤操作警報制御部は、さらに、トランスファPTOスイッチがオンかまたは機械式自動変速機の出力軸の回転を確認するPTOスイッチ操作/エンジン動作有無判定部と、パーキングスイッチおよび機械式自動変速機のニュートラル操作のAMT操作有無判定部と、始動スイッチ操作判定部と、を具備し、PTOスイッチ操作/エンジン動作有無判定部によるトランスファPTOスイッチの操作なし、またはエンジン動作なしの判定か、またはトランスファPTOスイッチの操作あり、またはエンジン動作ありの判定で、且つAMT操作有無判定部による、パーキングスイッチおよび機械式自動変速機のニュートラル操作ありとの判定で、または、パーキングスイッチおよび機械式自動変速機のニュートラル操作なしの判定で、始動スイッチ操作判定部のオフ操作ありの判定で、トランスファPTO警報部におけるトランスファPTO警報をオフとして強制クラッチ遮断部によるクラッチ遮断を解除するようにした、ことを特徴とする。
【0014】
これにより、誤操作警報制御部は、トランスファPTO警報、および、強制的なクラッチ遮断が引き続き継続状態にある状態から、誤動作警報解除操作を実行する。
アクセル操作判定部において、アクセルオフでないと判定されたとき、PTOスイッチ操作/エンジン動作有無判定部において、トランスファPTOスイッチがオンかまたは機械式自動変速機の出力軸の回転を確認する。
ここで、トランスファPTOスイッチの操作あり、またはエンジン動作ありの判定で、AMT操作有無判定部において、パーキングスイッチおよび機械式自動変速機の操作の判定をする。
ここで、パーキングスイッチおよび機械式自動変速機がニュートラル位置にないとの判定で、始動スイッチ操作判定部において、始動スイッチの操作を判定する。
始動スイッチのオフ操作ありの判定で、トランスファPTO警報をオフとしてクラッチ遮断を解除することができる。
【0015】
また、誤動作警報解除操作は、以下の手順によっても実行することができる。
すなわちPTOスイッチ操作/エンジン動作有無判定部において、トランスファPTOスイッチの操作なし、またはエンジン動作なしの判定により、トランスファPTO警報をオフとしてクラッチ遮断を解除することができる。
【0016】
さらに、PTOスイッチ操作/エンジン動作有無判定部において、トランスファPTOスイッチの操作なし、またはエンジン動作なしの判定で、且つパーキングスイッチおよび機械式自動変速機のニュートラル位置にありとの判定でトランスファPTO警報をオフとしてクラッチ遮断を解除することができる。
【0017】
また、請求項3記載の本発明では、トランスファPTO警報部におけるトランスファPTO警報は、音声による警報である、ことを特徴とする。
【0018】
これにより、ドライバは、音声によって誤操作を容易に把握することができる。
【0019】
また、請求項4に記載の本発明では、トランスファPTO警報部におけるトランスファPTO警報は、画像表示による警報である、ことを特徴とする。
【0020】
これにより、ドライバは、画像によって誤操作を容易に把握することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、トランスファPTOの誤操作状態を適宜ドライバに周知することができる。
また、トランスファPTO誤操作警報発生時は、動力を強制的に遮断するため、意図しない車輌飛び出しを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明を実施するためのトランスファPTOの誤操作警報制御装置を搭載した車輌の一例を示す全体ブロック図である。
図2図1に示す、トランスファPTOの誤操作警報制御装置におけるトランスファPTOに対し、切換え指令を発する操作指令部10の一例を示す回路図である。
図3図2に示す操作指令部10からの切換指令に基づいて実行される、トランスファPTOの切換動作手順の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明にかかる実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0024】
図1に本発明に係るトランスファPTOの誤操作警報制御装置を搭載した車輌1の実施形態の一構成例を示す。
トランスファPTOの誤操作警報制御装置を搭載した車輌1は、エンジン2からの動力を走行機構部3の他、走行以外の目的で利用して作業を実行する作業機構部4を備えている。
エンジン2は、周知のディーゼルエンジンで回転力が機械式自動変速機5(AMT)の出力軸を介して取出されるようになっている。
走行機構部3は、ここでは走行に必要な構成で実質的には、駆動力伝達軸(後述)により差動ギヤ機構(図示省略)を介して回転力が伝達されて回転する車輪部3t(タイヤ)からなる。
作業機構部4は、ここでは、例えばコンクリートポンプを例示している。
そして、車輌1は、エンジン2からの動力を機械式自動変速機5の出力軸を介して走行機構部3と作業機構部4とに切換えて伝達する動力分配機構であるトランスファPTO6を備えている。なお、トランスファPTO6は図1ではT/Fと表記している。
すなわち、この車輌1では、エンジン2とトランスファPTO6とは、機械式自動変速機5(AMT)の出力軸とフロントプロペラシャフトfpsを介して動力的に接続され、トランスファPTO6は、走行機構部3とリアプロペラシャフトrpsを介し、作業機構部4とPTOプロペラシャフトppsを介し接続されている。
そして、トランスファPTO6と作業機構部4とは、PTOプロペラシャフトppsとトランスファPTO6の特定のギヤ段(ギヤ比が高い)、例えば11速で動力伝達可能に結合(直結)するようになっている。
【0025】
トランスファPTO6は、エンジン2からの動力を走行機構部3と作業機構部4とに切換えて伝達するために、ドライバの所定の操作(パーキングブレーキ操作、トランスファPTOスイッチ操作、機械式自動変速機のギヤ操作)を認識して、動作制御モード、すなわちトランスファPTO制御モードまたは通常走行モードに移行して、後述する手順で、走行機構部3または作業機構部4による動作を実行するECU7(切換制御部7a)を備えている。
【0026】
また、トランスファPTO6は、ドライバの所定の操作を行う操作指令部10を有する。すなわち、操作指令部10は、パーキングスイッチ(パーキングSW)11と、トランスファPTOスイッチ12と、トランスファPTOスイッチ12のオンオフ操作から、トランスファPTOスイッチ12の切換え操作状態の信号を検出する切換スイッチ13とを具備する。なお、トランスファPTOスイッチ12は、図2では、T/F PTO SWと表記している。
【0027】
ここで、操作指令部10は、パーキングスイッチ11のオンオフ操作に連動する常開(ノーマルオープン)のパーキングリレー11rlと、トランスファPTOスイッチ12に連動する常開のパワーリレー12rlとを有する。パーキングリレー11rlとトランスファPTOスイッチ12とは直列に接続されている。
また、パワーリレー12rlに切換スイッチ13が、パワーリレー12rlに連動するマグネットバルブ13mv(図2中ではM/V)を介して、トランスファPTOスイッチ12のオンオフにかかるトランスファPTOスイッチ12の操作状態を示す信号を発するようになっている。パワーリレー12rlとマグネットバルブ13mvとは直列に接続されている。
マグネットバルブ13mvは、電磁駆動切換弁(三方弁)でエアタンクからの作動エアを選択的に出力する2つの出力管a1、a2を有している。
切換スイッチ13は、シリンダ13cとシリンダ13c内を軸方向に進退動するシフトロッド13rとを具備する。シフトロッド13rはシリンダ13c内を軸方向に摺動するピストン13rhを有し、かかるピストン13rhを挟んで、マグネットバルブ13mvの出力管a1、a2をシリンダ13c内に連通させている。そして、シフトロッド13rには軸直交方向から押圧接触する接触スイッチLsw1、Lsw2が配設されている。シフトロッド13rには凹部13rdが設けられ、シフトロッド13rが軸方向に移動することで、接触スイッチLsw1、Lsw2が凹部13rdに係合離脱してオンオフするようになっている。
また、かかる接触スイッチLsw1、Lsw2にはそれぞれトランスファPTOスイッチ12のオンオフ状態を点滅で示すインジケータランプL1、L2が接続されている。
また、接触スイッチLsw2の出力側には、接触スイッチLsw2に連動して作動する常開のパワーリレー14rlが接続されている。
そして、パワーリレー14rlには、ECU7が接続されている。
【0028】
そして、ECU7には、誤操作警報制御部7bが含まれ、かかる誤操作警報制御部7bについて説明する。
誤操作警報制御部7bは、操作指令部10におけるトランスファPTOスイッチ12の切換え指令操作の有無を判定するPTOスイッチ操作有無判定部Aと、機械式自動変速機5がニュートラル位置且つパーキングスイッチ11オンでトランスファPTOスイッチ12がオンとなっている状態を判定するトランスファPTOスタンバイ状態判定部Bと、パーキングスイッチ11および機械式自動変速機5のニュートラル操作のAMT操作有無判定部Cと、機械式自動変速機5のアクセル操作判定部Eと、を備えている。
なお、PTOスイッチ操作有無判定部Aは、トランスファPTOスイッチ12の操作有無判定部であり、トランスファPTOスイッチ操作有無判定部Aを、PTOスイッチ操作有無判定部Aと簡略化して表記している。
また、誤操作警報制御部7bは、PTOスイッチ操作有無判定部AにおいてトランスファPTOスイッチ12がオンであると判定され、トランスファPTOスタンバイ状態判定部BにおいてトランスファPTOスタンバイ状態でないと判定され、AMT操作有無判定部Cにおいて、パーキングスイッチ11がオンで機械式自動変速機5がニュートラル位置でないと判定されたとき、トランスファPTO警報を発するトランスファPTO警報部Dと、アクセル操作判定部Eによりアクセルオフと判定されたとき強制的にクラッチを遮断する強制クラッチ遮断部Fと、を備えている。
【0029】
さらに、誤操作警報制御部7bは、トランスファPTOスイッチ12がオンかまたは機械式自動変速機5の出力軸の回転を確認するPTOスイッチ操作/エンジン動作有無判定部Gと、パーキングスイッチ11および機械式自動変速機5のニュートラル操作のAMT操作有無判定部Hと、始動スイッチ操作判定部Iと、を具備する。
【0030】
本発明に係るトランスファPTO搭載の車輌1における誤操作警報制御装置は、以上のように構成されるものであり、先ず、車輌1の動力伝達切換えについて概略、説明する。
ドライバがトランスファPTO搭載の車輌1のエンジン2を始動させるときは、運転席におけるパーキングブレーキ(図示省略)を引いた状態で、キャビン内のエンジンキースイッチ(図示省略)を回し操作し、始動させる。
ここでキャビン内のトランスファPTOスイッチ12をオン操作されなければ、操作指令部10において、パーキングスイッチ11オンでパーキングリレー11rlが閉成されても、トランスファPTOスイッチ12がオフでパワーリレー12rlは励磁されず、したがってマグネットバルブ13mvも励磁されない。エアタンクからの作動エアは2つの出力管a1、a2のうちの出力管a1を通じてシリンダ13c内に送り込まれ、PTOsw側の接触スイッチLsw2がオフのままで、インジケータランプL2が点灯することはなく、パワーリレー14rlは励磁されない。これにより、ECU7には、トランスファPTOスイッチ12はオフのままであるとして、ECU7(切換制御部7a)での制御手順が実行される。
【0031】
切換制御部7aでは、トランスファPTOスイッチ12がオフであると認識して通常走行モードに移行する。ドライバは、機械式自動変速機5をドライブ位置に切り換え、パーキングブレーキを解除すると(パーキングスイッチ11をオフ)、エンジン2の動力は、機械式自動変速機5の出力軸を介して、フロントプロペラシャフトfps、トランスファPTO6、リアプロペラシャフトrpfを通じて走行機構部3に伝達され、車輪部3tを回転させ、走行させることができる。
【0032】
一方、作業機構部4に動力を伝達するときは、ドライバは、キャビン内のトランスファPTOスイッチ(T/FPTOスイッチ)12をオン操作し、パーキングスイッチ11オンで、機械式自動変速機5をニュートラル位置に切り換える。なお、図3では、トランスファPTOスイッチはT/FPTOスイッチと表記している。
このとき操作指令部10において、パーキングスイッチ11オンでパーキングリレー11rlが閉成される。そしてトランスファPTOスイッチ12がオンでパワーリレー12rlが閉成されるため、パワーリレー12rlに連動するマグネットバルブ13mvが励磁される。このため、エア流路が切り換って、エアタンクからの作動エアが2つの出力管a1、a2のうちの出力管a2を通じてシリンダ13c内に送り込まれる。このため、PTOsw側の接触スイッチLsw2がオンとなり、インジケータランプL2が点灯すると共に、パワーリレー14rlが励磁される。これにより、ECU7には、トランスファPTOスイッチ12がオンとなった旨の信号が送られ、切換制御部7aでの制御手順が実行される。
【0033】
切換制御部7aでは、操作指令部10からのトランスファPTOスイッチ12がオンとなった旨の信号により、トランスファPTOスイッチ12がオンとなったと認識しており、パーキングスイッチ11オンで機械式自動変速機5をニュートラル位置に切り換えられていることを条件として、トランスファPTO制御モード実行部へ移行することができる。
このように、パーキングスイッチ11オンで機械式自動変速機5をニュートラル位置に切り換えられていることで初めてトランスファPTO制御モード実行部へ移行することができるので、ドライバが誤ってドライブ位置でトランスファPTOスイッチ12に触れてオンとしても、ドライバの意図に反してクラッチが繋がり、車輌が動き出すことを防止することができる。
【0034】
次に、トランスファPTO6の誤操作警報制御装置の誤操作警報制御手順について図3に示すフローチャートを基に説明する。
誤操作警報制御部7bのPTOスイッチ操作有無判定部Aにおいて、トランスファPTOスイッチ12の操作を判定する(第1ステップS1)。
【0035】
第1ステップS1においてトランスファPTOスイッチ12がオンであると判定されると、トランスファPTOスタンバイ状態判定部Bにおいて、機械式自動変速機5がニュートラル位置かパーキングスイッチ11がオンでトランスファPTOスイッチ12がオンとなっている状態を判定する(第2ステップS2)。
【0036】
第2ステップS2において、機械式自動変速機5がニュートラル位置でなく、パーキングスイッチ11がオフでトランスファPTOスイッチ12がオフとなっていると判定されたとき、AMT操作有無判定部Cにおいて、パーキングスイッチ11および機械式自動変速機5のギヤ操作を判定する(第3ステップS3)。
【0037】
第3ステップS3において、パーキングスイッチ11がオフで機械式自動変速機5がニュートラル位置でなければ、トランスファPTO警報部DにおいてトランスファPTO警報として例えばブザー(図示省略)を鳴動させることができる(第4ステップS4)。これにより、ドライバは誤操作したとして認識することができ、誤操作の停止や操作のやり直しを行う等の手順を講ずることができる。
【0038】
次に、アクセル操作判定部Eにおいて、機械式自動変速機5のアクセル操作を判定する(第5ステップS5)。すなわち、ドライバはトランスファPTO警報により、ドライバは誤操作したとして認識することができ、アクセル操作を中断する。
これにより、第5ステップS5において、アクセルオフと判定されたとき、強制クラッチ遮断部Fにおいて、強制的にクラッチを遮断することができる(第6ステップS6)。
【0039】
以上のように誤操作警報を発して、さらに、強制的にクラッチを遮断するので、意図しない車輌1の飛び出しを防止することができる。
【0040】
次に、誤操作警報制御部7bでは、引き続き、以下のような誤操作警報制御手順にしたがって誤動作警報解除操作を実行することができる。第6ステップS6の終了段階では、トランスファPTO警報、および、強制的なクラッチ遮断が引き続き継続状態にあるからである。
【0041】
第5ステップのアクセル操作判定部Eにおいて、アクセルオフでないと判定されたとき、トランスファPTOスイッチ12の操作またはエンジン動作を判定する(第7ステップ)。すなわち、PTOスイッチ操作/エンジン動作有無判定部Gにおいて、トランスファPTOスイッチ12がオンかまたは機械式自動変速機5の出力軸の回転を確認する。
【0042】
第7ステップにおいて、トランスファPTOスイッチ12の操作あり、またはエンジン動作ありの判定で、AMT操作有無判定部Hにおいて、パーキングスイッチ11および機械式自動変速機5の操作の判定をする(第8ステップ)。
【0043】
第8ステップにおいて、パーキングスイッチ11および機械式自動変速機5がニュートラル位置にないとの判定で、始動スイッチ操作判定部Iにおいて、始動スイッチの操作を判定する(第9ステップ)。
【0044】
そして第9ステップにおいて、始動スイッチのオフ操作ありの判定で、トランスファPTO警報をオフとしてクラッチ遮断を解除することができる(第10ステップ)。以上のようにして一連の誤操作警報制御手順を実行する。
【0045】
また、誤動作警報解除操作は、以下の手順によっても実行することができる。
すなわち、第7ステップのPTOスイッチ操作/エンジン動作有無判定部Gにおいて、トランスファPTOスイッチ12の操作なし、またはエンジン動作なしの判定により、第10ステップのトランスファPTO警報をオフとしてクラッチ遮断を解除することができる。
【0046】
また、第7ステップのトランスファPTOスイッチ12の操作なし、またはエンジン動作なしの判定で、且つ第8ステップにおける、パーキングスイッチ11および機械式自動変速機5のニュートラル位置にありとの判定で、第10ステップのトランスファPTO警報をオフとしてクラッチ遮断を解除することができる。
【0047】
以上のように本発明によれば、トランスファPTO6の誤操作状態を適宜ドライバに周知することができる。
また、トランスファPTO誤操作警報発生時は、動力を強制的に遮断するため、意図しない車輌飛び出しを防止することができる。
【0048】
以上、本発明に係るトランスファPTOの車輌1について、作業機構部4がコンクリートポンプである実施形態を挙げて説明した。勿論、トランスファPTOの車輌1は、ゴミ収集車、コンクリートミキサー車も可能である。
【0049】
さらに、トランスファPTO警報を発するトランスファPTO警報部Dにおいては、トランスファPTO警報としてブザーを鳴動させるとしているが、トランスファPTO警報は勿論これに限らず、他の音声、例えばチャイム、警報メロディなどによる警報も可能である。
さらに、例えばインストルメントパネル上に、画像データとして、メッセージを表示したり、作業状態をシンボル等でステータス表示したりすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、あらゆる仕様のトランスファPTO搭載の車輌に適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 車輌
2 エンジン
3 走行機構部
3t車輪部
4 作業機構部
5 機械式自動変速機
6 トランスファPTO
7 ECU
7a切換制御部
7b誤操作警報制御部
10操作指令部
11パーキングスイッチ
11rlパーキングリレー
12トランスファPTOスイッチ
12rlパワーリレー
13切換スイッチ
13mvマグネットバルブ
13cシリンダ
13rロッド
13rhピストン
13rd凹部
14rlパワーリレー
fpsフロントプロペラシャフト
rpsリアプロペラシャフト
ppsPTOプロペラシャフト
a1、a2出力管
Lsw1、Lsw2接触スイッチ
L1、L2インジケータランプ
A PTOスイッチ操作有無判定部
B トランスファPTOスタンバイ状態判定部
C AMT操作有無判定部
E アクセル操作判定部
D トランスファPTO警報部
F 強制クラッチ遮断部
G PTOスイッチ操作/エンジン動作有無判定部
H AMT操作有無判定部
I 始動スイッチ操作判定部
図1
図2
図3