(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
前記カバー本体部は、四角部分が外側へ出っ張った正面視形状をなし、前記カバーロック部は、前記カバー本体部の四角部分と対向する位置に配置されている。これにより、電線カバーがハウジングからより外れにくい構造となる。
【0010】
前記ハウジングは、前記相手ハウジングに対してボルト締めによって嵌合される。このように、両ハウジングがボルト締めによって嵌合される場合、コネクタが大型になるとともに電線も大径となり易く、電線の振動力が電線カバーに大きく伝わる傾向にあるため、上記構成を適用して電線カバーがハウジングから外れるのを防止する構成とするメリットが大となる。
【0011】
<実施例>
本発明の実施例を
図1〜
図7によって説明する。実施例のコネクタ10は、ハウジング20と、ハウジング20に取り付けられる電線カバー60と、ハウジング20内に収容される端子金具90とを備えている。
図2に示すように、ハウジング20は、相手ハウジング100と嵌合可能とされる。なお、以下の説明において、前後方向については、ハウジング20が相手ハウジング100との嵌合開始時に相手ハウジング100と向き合う面側(後述する嵌合面26側であって、
図1、
図2、
図6及び
図7の下側)を前方とし、上下方向については、各図の左側を上方とし、各図の右側を下方とする。
【0012】
相手ハウジング100は合成樹脂製であって、
図2に示すように、全体として上下方向に細長い形態をなしている。相手ハウジング100の内部には、図示しない相手端子金具が収容され、その中心部にはナット200が取り付けられている。ナット200は、相手ハウジング100に対し、前後方向に位置決めされ、且つ前後方向の軸線まわりの回転を規制された状態に保持されている。
【0013】
ハウジング20は合成樹脂製であって、
図7に示すように、全体として上下方向に細長い形態をなし、ブロック状のハウジング本体部21と、ハウジング本体部21の周囲を取り囲む筒状のフード部22とを有している。
【0014】
図7に示すように、ハウジング本体部21とフード部22との間は、相手ハウジング100が前方から進入する嵌合空間50として前方に開放されている。ハウジング本体部21の外周面にはシールリング300が嵌着されており、両ハウジング20、100の嵌合時には、ハウジング本体部21とフード部22との間にシールリング300が弾性的に挟み込まれ、これによって両ハウジング20、100間が液密にシールされるようになっている。
図4に示すように、フード部22の上下両面と前後両面とには、シールリング300を抜け止めするための係止構造を形成するための突部23が設けられている。また、フード部22の前端には、四角部分と対応する位置に、後述するカバーロック部72と係止可能なハウジングロック部25が設けられている。ハウジングロック部25は、フード部22の前端における他の部分と面一で連続して配置され、特有の形状を有するわけではない。
【0015】
図1及び
図7に示すように、ハウジング20の前面は、嵌合時に相手ハウジング100と対面する嵌合面26として構成され、嵌合面26とは反対側に位置する、ハウジング20の後面は、電線500が引き出される電線引出面27として構成される。そして、ハウジング20は、嵌合面26と電線引出面27との間にてこれら嵌合面26と電線引出面27の面方向と交差する
方向を向いた外周面28を有している。
図7に示すように、ハウジング20の内部には、端子金具90を挿入可能な複数のキャビティ29が設けられている。各キャビティ29は、前後方向に延出してその前後両端がそれぞれ嵌合面26及び電線引出面27に開口する形態とされている。ハウジング20の各キャビティ29内に端子金具90が挿入されると、各端子金具90に接続された電線500が電線引出面27から外部へ引き出される。
【0016】
また、
図7に示すように、ハウジング20には、前後方向に延出して電線引出面27及び嵌合面26のそれぞれの中央部に開口する貫通孔31が設けられている。ハウジング20の電線引出面27の中央部には、貫通孔31を包囲する筒状の台座部32が後方に突出して設けられている。貫通孔31には、ボルト400の軸部410が嵌合状態で取り付けられている。ボルト400は、前後方向に細長く延出する軸部410の後端から背面視六角形の頭部420が径方向に張り出し形成されている。ハウジング20の貫通孔31内にボルト400が取り付けられると、頭部420が台座部32の後端に支持された状態でハウジング20の電線引出面27よりも後方に突出して配置され、軸部410がハウジング20の嵌合面26よりも前方に突出して配置される。
【0017】
軸部410の外周面には、ナット200と螺合可能なねじが切られている。両ハウジング20、100の嵌合時には、まず両ハウジング20、100が浅く嵌合された状態で、ボルト400の軸部410がナット200に挿入される。次いで、ボルト400の頭部420に図示しない工具が嵌合されて、工具が回転させられる。すると、ボルト400の軸部410がナット200にねじ込まれる。これにより、両ハウジング20、100が互いに接近して、
図2に示す正規嵌合状態に至らしめられる。
【0018】
電線カバー60は同じく合成樹脂製であって、全体としてキャップ状の形態とされ、ハウジング20に後方から取り付けられる。具体的には電線カバー60は、
図3及び
図5に示すように、背面又は正面から見た場合に四角部分が外側へ出っ張るような略矩形の外周縁を有するカバー本体部61と、カバー本体部61に一体に連なって下方に突出するガイド部62と、
図5及び
図6に示すように、カバー本体部61に一体に連なって前方に突出する筒状の嵌合筒部63とを備えている。
【0019】
図1〜
図3に示すように、カバー本体部61は、電線カバー60がハウジング20に取り付けられた状態で、ハウジング20の電線引出面27の外周縁から後方(電線引出面27から遠ざかる方向)へ延出する外周壁部64と、外周壁部64の後端に略環状に連なる後壁部65と、後壁部65の内周縁から前方(電線引出面27に近づく方向)へ延出する円筒状の筒状部66とからなる。外周壁部64の下面側には、周方向の一部を切欠させた形態をなす導出口67が開口して形成されている。ガイド部62は、導出口67の開口後縁部から下方へ延出する断面弧状の突片とされている。
図2に示すように、ハウジング20の電線引出面27から引き出された各電線500は、電線カバー60内で転向させられたあと導出口67からガイド部62に沿いつつ電線カバー60の外部へ導出させられる。このとき、各電線500は、ガイド部62にテープ巻きされて固定されるようになっている。
【0020】
筒状部66は、カバー本体部61の外面の中央部を凹ませた形態であり、その凹んだ空間は、ボルト締結のための工具が挿入可能な作業空間68になっている。電線カバー60がハウジング20に取り付けられると、筒状部66の前端開口縁がハウジング20の台座部32の周りを取り囲むように配置される。
【0021】
さて、嵌合筒部63は、外周壁部64の前端のうち導出口67と対応する位置を除く部分から前方へ突出する形態とされ、
図3及び
図5に示すように、その上面と前後両面とに、外側へ膨出する膨出部69を有している。
図1及び
図2に示すように、膨出部69の内面は、外周壁部64の前端に段付き状に連なって配置されている。嵌合筒部63は、電線カバー60がハウジング20に取り付けられた状態で、フード部22の外周面28のうち、導出口67と対応する部位を除く部分のほぼ全体を覆うように嵌合させられる。この場合に、膨出部69は、フード部22の突部23を包囲して配置される。
【0022】
図5及び
図6に示すように、嵌合筒部63には、四角部分のうちガイド部62から離れた上側二角部分を挟んだ周方向両側に、前後方向に延出して前端に開口するスリット71が設けられている。また、嵌合筒部63の四角部分のそれぞれには、周方向で対向するスリット71間とそれらスリット71間と対向する下側二角部分とに、カバーロック部72が撓み可能に設けられている。カバーロック部72は、嵌合筒部63の四角部分に沿うよう弧状に湾曲する断面形状を有している。また、カバーロック部72の前端は、嵌合筒部63の前端におけるその他の部分と同じ前後位置に配置されている。そして、
図5に示すように、カバーロック部72の前端部は、爪状のロック突起73が内側へ突出して設けられている。電線カバー60がハウジング20に取り付けられた状態で、カバーロック部72のロック突起73がフード部22の前端におけるハウジングロック部25に弾性的に当接することにより、電線カバー60がハウジング20に嵌合状態に保持される。なお、
図3に示すように、カバー本体部61の後壁部65の四角部分には、ロック突起73を形成するための図示しない金型が通過することに起因して弧状の型抜き孔75が開口して形成される。
【0023】
次に、実施例のコネクタ10の組み付けについて説明する。
組み付けに際し、ハウジング20の各キャビティ29内に端子金具90が挿入される。キャビティ29内に端子金具90が正規挿入されると、電線引出面27から各電線500が引き出されて配置される。続いて、ハウジング20に電線カバー60が取り付けられる。取り付けの過程では、各カバーロック部72のロック突起73がハウジング20の外周面28を摺動して各カバーロック部72が外側に撓み変形させられる。
図1に示すように、電線カバー60が正規の取り付け位置に至ると、各カバーロック部72が弾性的に復帰し、ロック突起73が対応するハウジングロック部25に係止可能に配置される。このとき、各カバーロック部72のロック突起73は、ハウジング20の嵌合面26の外周側における四角部分に回り込み、ハウジング20は、電線カバー60によって実質的に抱持された状態となる。
【0024】
ところで、ハウジング20の外周面28及び嵌合筒部63が、いずれも四角部分に丸みのある略矩形の、円形以外の断面形状を呈することから、嵌合筒部63は、ハウジング20に外嵌された状態で、ハウジング20に対して前後方向(ハウジング20に対する嵌合筒部63の嵌合方向)の軸まわりに回転するのが規制された状態となる。このため、電線カバー60に対して外力等の衝撃が加わっても、電線カバー60がハウジング20に対して軸周りに位置ずれすることがなく、各カバーロック部72が対応するハウジングロック部25に係止された状態が保持される。
【0025】
とくに、電線カバー60のガイド部62から外部へ引き出された各電線500を持ってコネクタ10が吊られる等して、各電線500が本来の導出方向と交差する方向に大きく傾斜して振られると、電線カバー60にガイド部62を介してハウジング20との相対位置を軸まわりにずれさせる過大なねじれ力が作用することになる。しかるに、実施例によれば、嵌合筒部63がハウジング20の外周面28を覆うように嵌合されて前後方向の軸まわりに回転するのを規制された状態に保たれるため、電線カバー60がねじれ力に抗してハウジング20にしっかりと保持される。したがって、ねじれ力がカバーロック部72にダイレクトに作用することがなく、カバーロック部72とハウジングロック部25との係止状態が安定して維持される。その結果、電線カバー60がハウジング20から不用意に外れることがない。
【0026】
また、実施例によれば、ハウジング20の外周面28のうち電線カバー60の導出口67と対応する部位を除く部分のほぼ全体が嵌合筒部63によって覆われるため、コネクタ10の落下時等に、ハウジング20の外周面28が破損される事態が防止される。
【0027】
さらに、各カバーロック部72のロック突起73がハウジング20の嵌合面26側の外周四角部に弾性的に引っ掛け係止されることにより、電線カバー60がハウジング20に抜け止め状態に安定して保持される。しかも、各カバーロック部72を受けるハウジングロック部25がハウジング20の嵌合面26の外周側にてフード部22の前縁として構成されるに過ぎず、特有の形状を有していないため、ハウジング20の構成を簡素化することができ、従前のハウジング20をそのまま使用することも可能となる。
【0028】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)嵌合筒部にスリットが形成されず、全てのカバーロック部がスリットを介さずに弾性変形する構成であってもよい。逆に、全てのカバーロック部がスリットを介して弾性変形する構成であってもよい。
(2)ハウジングは、ボルト締めによって相手ハウジングと嵌合保持されるのではなく、例えば、通常のコネクタのように、ロックアームとロック突起とによる弾性係止によって相手ハウジングと嵌合保持される構成であってもよい。