特許第6191924号(P6191924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191924
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】プロテクタ
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20170828BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   H02G3/04 018
   B60R16/02 623T
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-135922(P2015-135922)
(22)【出願日】2015年7月7日
(65)【公開番号】特開2017-22791(P2017-22791A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2016年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今 彰大
(72)【発明者】
【氏名】武田 和亜希
(72)【発明者】
【氏名】望月 光一郎
【審査官】 中木 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−27822(JP,A)
【文献】 実開平02−094414(JP,U)
【文献】 特開平09−137822(JP,A)
【文献】 特開平08−149653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を導入する開口部を有し、前記開口部から導入した前記電線を内部に収容するプロテクタ本体と、
前記プロテクタ本体の一側に回動可能に連結され、前記開口部を塞ぐように前記プロテクタ本体に被せられる蓋部と、
前記蓋部とは別に前記プロテクタ本体の一側に回動可能に連結され、前記開口部を開く開放位置から前記蓋部に押されて前記開口部側に変位可能とされており、前記開放位置にて前記プロテクタ本体に対し前記開口部全体を開く方向に傾斜する部分で前記開口部から外側にはみ出た電線を拾う電線拾い部とを備えることを特徴とするプロテクタ。
【請求項2】
前記開口部が上向きに開口する場合に、前記プロテクタ本体の一側に前記電線拾い部が連結される位置が、前記プロテクタ本体の一側に前記蓋部が連結される位置よりも下方に設定されていることを特徴とする請求項1記載のプロテクタ。
【請求項3】
前記電線拾い部には、前記プロテクタ本体の一側から離れた先端部に、前記開放位置にて前記開口部に近づく方向に屈曲する形態をなす返し部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のプロテクタ。
【請求項4】
前記蓋部には、前記電線拾い部を投影した位置に、前記電線拾い部を形成するための型抜き孔が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載のプロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたワイヤハーネス用プロテクタは、底壁と両側壁とで電線挿通空間を囲むプロテクタ本体と、プロテクタ本体の一方の側壁の先端に薄肉ヒンジ部を介して連結され、プロテクタ本体に電線を挿通させた後、電線挿通空間の開口を塞ぐように薄肉ヒンジ部を支点として回動される蓋(以下、蓋部という)とを備えている。プロテクタ本体と蓋部との間で、且つ互いに隣接する薄肉ヒンジ部間の位置には、プロテクタ本体の一方の側壁の先端から突出する可撓性のストッパー片が設けられている。ストッパー片は、閉状態に変位する蓋部に押されて屈曲させられ、電線挿通空間の開口側に変位することで内側に位置する電線を電線挿通空間に誘い込むことが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−268163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のストッパー片は、その屈曲前、側壁の壁面に沿うように垂直方向に起立して配置されている。このため、電線挿通空間の開口から外側にはみ出た電線は、ストッパー片の外側に位置することとなり、閉状態に変位する蓋部とストッパー片との間に電線が噛み込まれるおそれがある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線の噛み込みを防止することが可能なプロテクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプロテクタは、電線を導入する開口部を有し、前記開口部から導入した前記電線を内部に収容するプロテクタ本体と、前記プロテクタ本体の一側に回動可能に連結され、前記開口部を塞ぐように前記プロテクタ本体に被せられる蓋部と、前記蓋部とは別に前記プロテクタ本体の一側に回動可能に連結され、前記開口部を開く開放位置から前記蓋部に押されて前記開口部側に変位可能とされており、前記開放位置にて前記プロテクタ本体に対し前記開口部全体を開く方向に傾斜する部分で前記開口部から外側にはみ出た電線を拾う電線拾い部とを備えるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
開放位置における電線拾い部の傾斜部分で開口部から外側にはみ出た電線が拾われるため、電線拾い部が蓋部に押されて開口部側に変位するときに、はみ出た電線もプロテクタ本体内に収容可能となる。したがって、プロテクタ本体と蓋部との間、及び蓋部と電線拾い部との間における電線の噛み込みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例のプロテクタを含む配線モジュールの平面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3】蓋部が閉状態で、且つ電線拾い部が閉止位置にある状態を示す断面図である。
図4】蓋部が開状態で、且つ電線拾い部が開放位置にある状態を示す断面図である。
図5】開口部から外側にはみ出た電線が電線拾い部に拾われる状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好ましい実施形態を以下に示す。
前記開口部が上向きに開口する場合に、前記プロテクタ本体の一側に前記電線拾い部が連結される位置が、前記プロテクタ本体の一側に前記蓋部が連結される位置よりも下方に設定されている。このような構成であれば、電線拾い部が蓋部で押されて開口部側に変位する際に、電線がプロテクタ本体内に円滑に誘い込まれるため、電線の噛み込みをいっそう確実に防止することができる。
【0010】
前記電線拾い部には、前記プロテクタ本体の一側から離れた先端部に、前記開放位置にて前記開口部に近づく方向に屈曲する形態をなす返し部が設けられている。返し部によって電線拾い部に拾われた電線が外側に抜け出す事態を防止することができる。
【0011】
前記蓋部には、前記電線拾い部を投影した位置に、前記電線拾い部を形成するための型抜き孔が設けられている。蓋部と電線拾い部とがいずれもプロテクタ本体の一側に連結され、開放位置における電線拾い部が開口部から離れる方向に傾斜する部分を有しているため、蓋部と電線拾い部とを成形する金型の構造が複雑になるおそれがある。しかるに上記構成によれば、型抜き孔を介することで、蓋部と電線拾い部とを容易に成形することができる。
【0012】
<実施例>
以下、実施例を図面に基づいて説明する。本実施例の場合、図1に示すように、複数並列に配置される電池パック90に取り付けられる配線モジュール80において、温度検知用の端子金具70に接続された電線60を収容する電線収容溝11を有するプロテクタ本体12を備えたプロテクタ10を例示するものである。
【0013】
この種の電池パック90に取り付けられる配線モジュール80は、通常、高さ方向(図1の紙面厚み方向)の制約が厳しく、低背化が求められるという事情がある。このため、図1に示すように、プロテクタ10は、電線収容溝11に収容された電線60の浮き上がりを規制する蓋部13を備えている。また、プロテクタ10は、蓋部13とは別に、電線60Aを拾って電線収容溝11に導く電線拾い部14を備えている。プロテクタ本体12、蓋部13及び電線拾い部14は、いずれも合成樹脂製であって、互いに一体に構成されている。
【0014】
プロテクタ本体12は、全体として電線60の配索方向に延出する樋状をなし、図3に示すように、幅方向(図3の左右方向)に沿った底壁15と、底壁15の幅方向両端からほぼ垂直に立ち上がる一対の側壁16、17とを備えている。電線収容溝11は、底壁15と両側壁16、17とによって区画されている。図4に示すように、プロテクタ本体12の電線収容溝11の上面は、開口部18として上方に開放されている。
【0015】
また、図1図3及び図4に示すように、プロテクタ本体12は、電線収容溝11と平行に並んで配置されるバスバー収容溝19を有している。バスバー収容溝19の溝幅は、電線収容溝11の溝幅よりも大きくされている。そして、バスバー収容溝19には、図1に示すように、電池パック90の電極端子91と端子金具70とに接続されるバスバー50が収容されている。両側壁16、17のうち、図3及び図4の向かって左側に位置する側壁17は、電線収容溝11とバスバー収容溝19とを仕切る壁として機能している。そして、プロテクタ本体12は、側壁17との間にバスバー収容溝19を区画する対向側壁21を有している。図1に示すように、対向側壁21の外面には、バスバー50の長さ方向(電線60の配索方向でもある)に間隔をあけて、ロック受部22が突出して設けられている。
【0016】
図3及び図4に示すように、蓋部13は、両側壁16、17のうち、図3及び図4の向かって右側に位置する側壁16に連結される薄肉帯状で且つ可撓性を有するヒンジ部23と、ヒンジ部23を介して側壁16に連結される蓋部本体24とで構成されている。ヒンジ部23は、側壁16の上端部の外面に連結され、図1に示すように、電線60の配索方向に間隔をあけて複数設けられている。本実施例の場合、1つの蓋部13に対し3つのヒンジ部23が連結されている。
【0017】
図1に示すように、蓋部本体24は、電線60の配索方向に長い平板状をなし、その側縁に、電線60の配索方向に間隔をあけて、ロック部25が突出して設けられている。図4に示すように、ロック部25は、蓋部本体24の平面方向と直交する方向に突出する形態とされている。
【0018】
ここで、蓋部本体24は、プロテクタ本体12に対しヒンジ部23を中心として開状態と閉状態とに回動可能とされている。図4に示すように、開状態では、電線収容溝11の開口部18全体を開放するように蓋部本体24が開口部18と反対側にほぼ水平に配置される。図3に示すように、閉状態では、電線収容溝11の開口部18を覆うように蓋部本体24が開口部18を塞いでほぼ水平に配置される。そして、閉状態では、バスバー収容溝19の上端開口も蓋部本体24で覆われて塞がれる。また、閉状態では、ロック部25がロック受部22を弾性的に係止し、これによって蓋部13が開口部18を塞ぐ状態を維持することが可能となっている。
【0019】
図4に示すように、蓋部本体24には、電線拾い部14を成形するための図示しない金型が通過することによって型抜き孔26が設けられている。図2に示すように、型抜き孔26は、蓋部本体24の側縁(側壁16の上端に対向する側縁)に開口する形態とされている。蓋部13と電線拾い部14とは同一の金型から成形されるが、成形時には、図4に示すように、蓋部13が水平姿勢(開状態の姿勢)で、且つ電線拾い部14が傾斜姿勢(後述する開放位置の姿勢)をとるようにされ、その状態で、電線拾い部14の全体を垂直下方に投影した範囲に、型抜き孔26が上下方向に貫通して形成されるようになっている。図3に示すように、蓋部本体24がヒンジ部23を中心として閉状態に向けて回動されたときには、蓋部本体24の型抜き孔26の孔縁部(以下、当接部27という)が電線拾い部14と当接する。
【0020】
図3図5に示すように、電線拾い部14は、ヒンジ部23と同じ側壁16に連結される薄肉帯状で且つ可撓性を有する可撓連結部28と、可撓連結部28に連結される拾い部本体29とで構成されている。図1に示すように、電線拾い部14は、電線60の配索方向に並ぶ3つのヒンジ部23のうち、互いに隣接する2つのヒンジ部23間に配置され、詳しくは、電線60の配索方向の端部寄りに位置するヒンジ部23の近くに配置されている。
【0021】
可撓連結部28は、図2に示すように、ヒンジ部23よりも一回り小さくされ、図3及び図4に示すように、側壁16の外面においてヒンジ部23よりも下方の部位に連結されている。側壁16の上端には、可撓連結部28との連結位置まで凹む切欠状の凹部31が設けられている。
【0022】
図2に示すように、拾い部本体29は、蓋部本体24の型抜き孔26の開口内に収まる大きさで形成されている。具体的には、拾い部本体29は、図4及び図5に示すように、矩形平板状の電線受部32と、電線受部32の先端部から内側(開口部18側)へ湾曲状に屈曲する返し部33とで構成されている。電線受部32には、返し部33を成形するための図示しない金型が通過することによって略矩形の貫通孔34が設けられている。
【0023】
拾い部本体29は、プロテクタ本体12に対し可撓連結部28を中心として開放位置(図1図2及び図4を参照)と閉止位置(図3を参照)とに回動可能とされている。図4に示すように、開放位置では、電線収容溝11の開口部18全体を開放するようにして電線受部32が垂直方向(側壁16の起立方向)及び水平方向(底壁15の幅方向)に対し直線状に傾斜する方向に配置される。そして、開放位置では、返し部33が電線受部32の上端からほぼ垂直に立ち上がったあと内側に弧状に屈曲し、その返し部33の屈曲部分を下方へ投影した位置に、電線受部32の貫通孔34が上下方向に貫通する形態で配置される。
【0024】
拾い部本体29は、蓋部本体24の当接部27によって押圧されることで、閉状態に向かう蓋部本体24に応じて開放位置から閉止位置へと回動される。図3に示すように、閉止位置では、蓋部本体24とともに、電線収容溝11の開口部18を覆うように電線受部32が開口部18を塞いでほぼ水平に配置されるようになっている。
【0025】
次に、本実施例のプロテクタ10の作用効果を説明する。
プロテクタ本体12の電線収容溝11に電線60を収容するに際し、蓋部本体24が開状態とされるとともに、拾い部本体29が開放位置に置かれ、開口部18全体が上方に開放される。その状態で、開口部18を通して上方から複数本の電線60が導入される。このとき、図4に示すように、電線60Aが開口部18から外側にはみ出た位置にあると、具体的には、電線60Aが開口部18を上方に延長した領域から外れた位置にあると、そのはみ出た電線60Aは開放位置における拾い部本体29の電線受部32によって受け止められる。また、電線受部32に受け止められた電線60Aは返し部33に当接することで電線受部32から外側に脱落するのが防止される。
【0026】
続いて、蓋部本体24がヒンジ部23を支点として閉状態に向けて回動される。蓋部本体24の回動途中では、当接部27が拾い部本体29の先端部に当接し、閉状態に向かう蓋部本体24とともに拾い部本体29が可撓連結部28を支点として閉止位置に向けて回動される。拾い部本体29が回動されて閉止位置に至るまでの間、電線60Aが電線受部32の傾斜面を滑落等して電線収容溝11に誘い込まれる(図5を参照)。このとき、可撓連結部28がヒンジ部23よりも下方に位置しているため、電線60Aがヒンジ部23に載置されるのを回避することができ、ヒンジ部23と側壁16との間における電線60Aの噛み込みを高い信頼性をもって防止することができる。
【0027】
図3に示すように、蓋部13が閉状態に至ると、ロック部25がロック受部22を弾性的に係止して、蓋部本体24がプロテクタ本体12に固定される。また、蓋部13が閉状態に至るに伴い、電線拾い部14が閉止位置に至り、電線収容溝11の開口部18が蓋部本体24と拾い部本体29とで閉塞されるとともに、バスバー収容溝19の上端開口が蓋部本体24で閉塞される。このとき、電線拾い部14は、図示しない支持手段に支持されることで閉止位置に維持される。
【0028】
以上説明したように、本実施例によれば、開放位置における電線拾い部14の電線受部32によって開口部18から外側にはみ出た電線60Aが拾われるため、電線拾い部14が蓋部13に押されて開口部18側(閉止位置)に変位するときに、はみ出た電線60Aもプロテクタ本体12の電線収容溝11に収容可能となる。したがって、プロテクタ本体12と蓋部13との間、及び蓋部13と電線拾い部14との間における電線60Aの噛み込みを防止することができる。
【0029】
また、側壁16に対する可撓連結部28の連結位置が、側壁16に対するヒンジ部23の連結位置よりも下方に設定されているため、電線拾い部14に拾われた電線60Aがプロテクタ本体12内に円滑に誘い込まれ、電線60Aの噛み込みをいっそう確実に防止することができる。
【0030】
さらに、電線拾い部14の先端部には返し部33が設けられているため、電線拾い部14に拾われた電線60Aが外側に抜け出す事態を防止することができる。さらにまた、蓋部本体24の型抜き孔26を介することで、蓋部13と電線拾い部14とを同一の金型で容易に成形することができ、金型構造が複雑になるのを防止することができる。
【0031】
<他の実施例>
以下、他の実施例を簡単に説明する。
(1)電線拾い部の電線受部の傾斜面が曲面状に形成されるものであってもよい。
(2)電線拾い部の電線受部は、開放位置にて全体として傾斜して配置されていればよく、水平又は垂直領域を含んでいてもよい。
(3)一つの蓋部及びプロテクタ本体に対し、複数の電線拾い部が設けられるものであってもよい。
(4)本発明のプロテクタは、電池パックに取り付けられる配線モジュールに限らず、電線を収容するプロテクタに広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0032】
10…プロテクタ
11…電線収容溝
12…プロテクタ本体
13…蓋部
16…側壁(ヒンジ部と可撓連結部とが連結される壁)
17…側壁(電線収容溝とバスバー収容溝とを仕切る壁)
18…開口部
23…ヒンジ部
24…蓋部本体
26…型抜き孔
28…可撓連結部
29…拾い部本体
33…返し部
60…電線
60A…外側にはみ出た電線
図1
図2
図3
図4
図5