【実施例1】
【0019】
図1〜
図3は、本発明の実施例1を示す。
【0020】
最初に、孔あき部品について説明する。
【0021】
本実施例において対象とされる孔あき部品としては、環状のワッシャやディスタンスピース、ナットなど種々なものがある。ここでは、中央部にねじ孔2を有する鉄製のナット1である。ナット1は、図示していないが、通常の六角形である。
【0022】
つぎに、供給装置について説明する。
【0023】
図2(A)に供給装置の全体構造が示され、符号100が供給装置を示している。進退動作をする供給ロッド3は進退駆動手段であるエアシリンダ4によって進退する。進退駆動手段としては、エアシリンダ4以外に進退出力式の電動モータを採用することも可能である。
【0024】
供給ロッド3は、エアシリンダ4に結合されたガイド筒5内に収容され、ガイド筒5内を摺動する大径部6と、この大径部6に連なっている小径部7によって構成されている。小径部7と大径部6の境界部に押出し面8が形成されている。小径部7がねじ孔2を貫通して押出し面8がナット1の上端面に当たると、ナット1が後述の仮止室から押し出されるようになっている。小径部7はねじ孔2を貫通してナット1を案内するので、後述のようにガイドロッドと記載することもある。
【0025】
上記のような構成によって、供給ユニット9がエアシリンダ4とガイド筒5と供給ロッド3によって形成されている。供給ロッド3と
エアシリンダ4は一直線上に配置され、その軸線O−Oはほぼ鉛直方向の姿勢とされている。なお、後述の動作から明らかなように、鉛直方向が若干傾斜していても孔あき部品1の重力でガイドロッド7に沿って下降できるので、ここでは「ほぼ鉛直方向」と表現し、特許請求の範囲においてもそのように表現している。
【0026】
つぎに、カートリッジについて説明する。
【0027】
カートリッジ10は、管状の部材で作られており、断面形状がナット1を収容するのに適した矩形とされている。この矩形断面は、
図2(D)に示されている。上記管状の部材は、合成樹脂製、ステンレス鋼製、合成樹脂と金属の複合など種々な材料で形成することができる。ここでは、ステンレス鋼製の管部材から成型されている。このようなカートリッジ10内にナット1が整列状態で収容されている。
【0028】
カートリッジ10は、ガイド筒5の先端部に溶接され、この溶接結合部に仮止室11が形成されている。仮止室11に供給ロッド3が進入できるようになっており、ナット1が押し出される出口開口12が形成されている。また、ナット1を受止めるストッパ面13が仮止室11の内面を形成する状態で配置してある。ストッパ面13に受け止められたナット1は、そのねじ孔2が供給ロッド3(ガイドロッド7)と同軸となるように、ストッパ面13の設置箇所が設定されている。ストッパ面13は、カートリッジ10の端部に固定したストッパ部材14に形成され、このストッパ部材14に吸引手段である永久磁石15が埋め込んである。この永久磁石15に換えて、空気吸引口を設けてナット吸引を行ってもよい。
【0029】
カートリッジ10は少なくとも供給ロッド3とほぼ平行な状態とされた起立部17と、この起立部17から仮止室11に向かう湾曲部18によって構成されている。前記永久磁石15は、湾曲部18や仮止室11の手前にあるナット1を仮止室11内へ引き込む役割を果たしている。
【0030】
図2(C)に示すように、ナット1が何らかの原因でカートリッジ10の開口部19から飛び出すことを防止するために、板ばね係止片20が取り付けてある。このような機能を果たす構造は、他にヒンジ形状の端蓋構造とすることも可能である。この板ばね係止片20は、ナット1がカートリッジ10に補給されるときには、板ばねが撓んでナットの通過を許し、それ以外のときには板ばね20が張り出してナット1の逆戻りを防止している。
【0031】
カートリッジ10内に補給されるナット1の個数は、供給目的箇所の個数に合わせて設定される。後述の
図1に示すナット1の供給目的箇所、すなわちボルトが5本なので、
図2(A)に示すカートリッジ10には、5個のナット1が収容されている。
【0032】
つぎに、ナット供給動作について説明する。
【0033】
図2(B)に示すように、自動車のフロアパネルのような鋼板部品21にボルト22が予め溶接してある。このボルト22を用いて部品23が鋼板部品21に固定される。この固定のためにナット1がボルト22に供給されて、ねじ締め機(図示していない)でナット締めがなされる。したがって、このボルト22がナット1の供給目的箇所となる。なお、ボルト22もほぼ鉛直方向に起立している。そして、ボルト22は鋼板部品21の下孔24を貫通しそのフランジ25が鋼板部品21にプロジェクション溶接で溶接されている。
【0034】
上記のナット供給が供給装置100によって行われる。後述のロボット装置によって供給装置100が移動させられて、供給ロッド3がボルト22と同軸になった位置で停止する。その後、供給ロッド3が進出すると、ガイドロッド7がねじ孔2を貫通する。それからさらに供給ロッド3が進出すると、永久磁石15の吸引力に抗して押出し面8がナット1の上面を押し下げ、ナット1は仮止室11から出口開口12を経て送り出される。ナット1が送り出される段階ではガイドロッド7の先端がボルト22の直近で停止している。これにより、ナット1はガイドロッド7に案内されて下降し、ねじ孔2内にボルト22の先端部が相対的に進入する。その後、ねじ締め機のソケット(図示していない)がナット1に合致し、ナット1がボルト22に締め込まれて部品23の取付けが完了する。
図2(B)に2点鎖線で締め込み前と締め込み後のナット位置が示してある。
【0035】
供給ロッド3が進出しているときには、
図2(B)に示すように、つぎのナット1は大径部6によって仮止室11への進入が規制されている。
【0036】
つぎに、ロボット装置と動作システムについて説明する。
【0037】
ロボット装置27は、供給装置100を移動させてナット1をボルト22に供給できるものであればどのような形式でもよい。ここでは通常の6軸タイプのロボット装置である。ロボット装置27の動作アーム28がガイド筒5に
結合されている。【0038】
図1において、矢線は信号を伝達する結線であり、実線は作動空気を給排する空気管である。ロボット装置27を動作させるためのロボット制御装置29が設けられ、ここからの動作信号によって供給装置100が所定の複数の目的箇所へ移動するようになっている。
【0039】
機枠などの静止部材30にパーツフィーダ31が固定され、ここから送り出されたナット1が合成樹脂製の供給ホース32を経て供給管33に送られる。供給管33は静止部材30に固定されて所定位置に待機した状態とされ、ロボット装置27の動作でカートリッジ10の開口部19が供給管33の下端部に合致すると、ナット1がカートリッジ10内に補給されるようになっている。
【0040】
鋼板部品21には、5本のボルト22が符号B1、B2、B3、B4、B5で示す位置に起立しており、カートリッジ10へは5個のナット1が収容される。そのために、パーツフィーダ31の出口箇所にはナット1を1個ずつ送出する空気噴射管34が結合され、1回の空気噴射で1個のナット1が供給管33へ送られるようになっている。カートリッジ10内にナット1が送り込まれるときにナット1の個数をカウントするセンサー35が配置してある。このセンサー35は静止状態で設置されており、ここでは供給管33に結合した支持部材36に固定されている。
【0041】
センサー35とカートリッジ10の開口部19の間隔が、カートリッジ10内に整列して貯留された5個のナット1を検知できるように設定されている。センサー35でナット通過を5回検知する場合や、整列している最後尾の5個目のナット1を検知する場合などが採用できる。このようなセンサー35の位置は、支持部材36の長さを加減することによって求めることができる。
【0042】
鋼板部品21は、静止部材30に結合されたチャック機構26Aと26Bで固定されており、水平状態の2つの平板部21Aと21Bが、傾斜部21Cを介して連続した形状とされている。
図3に示すように、平板部21Aに存在しているボルト22の位置はB1、B2、B3であり、この3本に対する供給装置100の動きは、
図1の紙面の左右方向(X方向)と紙面に垂直な方向(Y方向)が合成された方向に順次移動する。
図3の矢線によってこの動きが示されている。このようなX・Y方向の動きは平板部21BのB4およびB5に対しても同様におこなわれる。
【0043】
位置B3からB4への移動中に傾斜部21Cを通過するのであるが、ここを通過するために供給装置100は上下方向(Z方向)に変位する。供給装置100が上記のようなX・Y・Z方向に移動するように、ロボット制御装置29がロボット装置27を動作させている。
【0044】
図1に示したシステム全体を動作させる制御装置38が配置され、この制御装置38に必要な信号が入力され、この入力信号が処理されて各部へ動作信号が伝達されるようになっている。
【0045】
つぎに、システムの動作を説明する。
【0046】
制御装置38には、ロボット制御装置29とセンサー35および空気切換弁39から信号が入力される。これらの入力信号が制御装置38で処理されて、動作信号の形態で空気切換弁39に伝達される。なお、制御装置38によって動作する機器が他にある場合には、これらの機器を動作させる信号が制御装置38から出力される。
【0047】
最初に、制御装置38からの信号によってロボット制御装置29を経由してロボット装置27が動作し、カートリッジ10の開口部19が供給管33に合致する。それから空気切換弁39が動作して、空気噴射管34から空気噴射が5回行われ、5個のナット1が供給管33からカートリッジ10内に補給される。カートリッジ10内のナット個数が5個に達すると、それをセンサー35が検知し、この検知信号が制御装置38に入力されて、空気噴射管34からの空気噴射が停止する。
【0048】
つぎに、ロボット制御装置29からの信号によってロボット装置27が動作して、供給装置100がB1からB5へ順次ナット供給を行う。ロボット装置27によって供給ロッド3がB1位置のボルト22と同軸状態になると、すなわち軸線O−Oがボルト22と同軸状態になると、この同軸位置でロボット装置27の動きが停止する。この停止信号がロボット制御装置29から制御装置38に入力されると、今度は制御装置38から空気切換弁39に対する動作信号として出力される。
【0049】
これによって空気切換弁39からエアシリンダ4に対する空気給排がなされ、供給ロッド3が進出する。この供給ロッド進出によって、前述のようにしてナット移動がなされ、ナット1がB1位置のボルト22に供給される(
図2(B)参照)。このB1供給が完了すると、空気切換弁39から完了したことが信号として制御装置38に入力される。
【0050】
換言すると、ロボット装置27の動作により、供給ロッド3がナット1の供給目的箇所に合致する箇所に停止したことによって発せられる信号により、エアシリンダ4が駆動されるように構成されている。すなわち、供給ロッド3がボルト22と同軸状態になったことによって、供給ロッド3がナット1の供給目的箇所に合致したこととなり、この状態で発せられるロボット制御装置29からの信号が制御装置38を経由してエアシリンダ4が進出動作を行う。
【0051】
上記のように、B1位置への供給が完了すると、空気切換弁39から完了したことが信号として制御装置38に入力される。この完了信号が制御装置38に入力されることにより、今度は制御装置38からロボット制御装置29に信号が送られる。これによりロボット装置27が動作して供給装置100がB2位置のボルト22に移動する。その後はB1位置の場合と同様にしてナット供給がなされる。上記完了信号によって、カートリッジ10内のナット1が1個減ったことがカウントされて、制御装置38に記憶される。
【0052】
B5位置までナット供給が完了して5個のナットが消費されると、制御装置38の個数カウント信号によってロボット装置27が動作して、カートリッジ10の開口部19が供給管33に合致する。この合致状態の信号がロボット制御装置29から制御装置38に伝えられると、空気噴射信号が空気切換弁39に伝達され、空気切換弁39から空気噴射管34に噴射空気が供給され、5回の空気噴射によってカートリッジ10に5個のナット1が補給される。
【0053】
上記のシステムの動作は、センサー35、ロボット制御装置29、制御装置38、空気切換弁39などの組み合わせで行っているが、このような動作は、一般的に採用されている制御手法で容易に行うことが可能である。制御装置またはシーケンス回路からの信号で動作する空気切換弁や、エアシリンダの所定位置で信号を発して前記制御装置に送信するセンサー等を組み合わせることによって、所定の動作を確保することができる。
【0054】
以上に説明した実施例1の作用効果は、つぎのとおりである。
【0055】
供給ユニット9に結合されているカートリッジ10が管状の部材で構成され、ここに所定個数の孔あき部品であるナット1が整列状態で収容されている。そして、カートリッジ10と供給ユニット9が一体になってロボット装置27によって移動し、5カ所のボルト22にナット1を供給する。しかも、供給装置100をカートリッジ10と供給ユニット9によってコンパクトにまとめることができ、近隣の関連部材に接触することなく、複数箇所へナット1の供給ができる。よって、供給装置100の移動動作が円滑に達成され、複数箇所へのナット供給が効率的に遂行できる。
【0056】
カートリッジ10は管状の部材で構成されているので、供給ユニット9との組み合わせ構造を任意に形成することが行いやすく、供給装置100をコンパクトにまとめる点で効果的である。そして、カートリッジ10は管状構造であるから、管内のナット移動を円滑にすることができる。
【0057】
さらに、前述の従来技術のように、パーツフィーダ31からの供給ホース32を伴わないので、ロボット装置27に作用する供給ホース32の重さや、供給ホース32が湾曲する際の弾性反力が発生せず、ロボット装置27への力学的な負荷が軽減されて、ロボット動作の点で有効である。
【0058】
前記供給ロッド3の軸線O−Oがほぼ鉛直方向とされ、前記カートリッジ10は、少なくとも前記供給ロッド3とほぼ平行な状態とされた起立部17と、この起立部17から前記仮止室11に向かう湾曲部18によって構成され、仮止室11にはナット1を仮止室11内へ引き込む永久磁石15が設けてある。
【0059】
供給ロッド3がほぼ鉛直方向に起立した姿勢で配置されているので、ロボット装置27の動作により、供給の目的箇所であるボルト22の軸線と供給ロッド3が一致すると、ガイドロッド7の貫通を受けたナット1はガイドロッド7に案内されてほぼ真下に移動し、上記ボルト22に供給される。このため、
ナット1はほぼ鉛直方向に下降して、ボルト22に対して確実に到達し、安定した信頼性の高い供給がなされる。また、上述のようにほぼ鉛直方向のナット供給軌跡であるから、1つのナット1の移動距離が最短距離となり、供給時間が最小化されて生産性向上にとって効果的である。さらに、ナット1がガイドロッド7からボルト22に移行するときには、ナット1はそのまま鉛直方向に移動して向きを変えることがない。したがって、ナット1は円滑にボルト22側へ移行し、信頼性の高い動作がえられる。
【0060】
さらに、カートリッジ10の起立部17はほぼ鉛直方向に起立した姿勢とされているので、ナット1にはその重みで湾曲部18を経て仮止室11に向かう推進力が生じる。したがって、ナット1は確実に仮止室11へ押し込まれて、供給ロッド3による確実な供給が達成される。また、起立部17に待機しているナット1が減少してきても、永久磁石15による吸引手段によって確実に仮止室11へ引き込まれる。
【0061】
さらに、上記供給ユニット9は、エアシリンダ4と供給ロッド3の組み合わせで形成されているので、ユニットの形態としては細長いものとなる。このような細長い部材に対して起立部17が供給ユニット9と平行な位置関係で配置されるので、供給装置100としてのまとまりがコンパクト化され、制約された空間部分におけるナット供給が行いやすくなる。
【0062】
前記ロボット装置27の動作により、前記供給ロッド3がナット1の供給目的箇所であるボルト22に合致する箇所に停止したことによって発せられる信号により、前記エアシリンダ4が駆動されるように構成した。
【0063】
ロボット装置27は、通常、コンピュータ装置などの制御装置29で動作するようになっているので、供給ロッド3がナット1の供給目的箇所であるボルト22に合致する箇所で停止すると、この停止状態をトリガーにして前記制御装置29から信号をえる。この信号によって供給ユニット9のエアシリンダ4が起動される。このため、供給ロッド3がナット1の供給目的箇所であるボルト22に合致することに引き続いて、ロボット制御装置29からの信号で前記エアシリンダ4が動作する。したがって、いわゆる位置決め信号発生と進退駆動手段の動作が連続的に展開されて、供給ロッドが所定箇所において確実に動作し、信頼性の高い供給装置がえられる。
【0064】
カートリッジ10の開口部19とセンサー35との間隔が所定の間隔とされているので、カートリッジ10内のナット個数が所定個数に達したことが正確に検知できて、それ以上にナット供給がなされることが確実に防止できる。上記実施例では、ナットがセンサー35の前を通過した信号が5回発せられるか、または5個のナットが整列したら5個目の最後尾のナットを検知するかによって過剰ナットの補給が停止される。
図2(C)に示したものは、最後尾の5個目のナット1を検知する方式である。なお、開口部19とセンサー35との間隔をナット個数に応じたが所定の間隔とするための構成としてはいろいろな構造が採用できる。ここでは、細長い支持部材36である。