特許第6191944号(P6191944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191944
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】タンクのアンカー装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/12 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   B65D90/12 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-75501(P2013-75501)
(22)【出願日】2013年3月30日
(65)【公開番号】特開2014-198598(P2014-198598A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2016年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000147729
【氏名又は名称】株式会社石井鐵工所
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏治
(72)【発明者】
【氏名】平林 幸泰
【審査官】 吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−049283(JP,A)
【文献】 実開昭55−066295(JP,U)
【文献】 実開昭57−085494(JP,U)
【文献】 実開昭63−147498(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/12
B65D 90/22
F17C 13/08
E02D 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上据え置きの平底円筒タンクが、地震や強風によって横滑りや損傷をすることがないように、一方端を底板外周上面に固定部で固定し、他方端を基礎より立設したアンカーボルト上部に取付部で固定した水平連結板で形成したことを特徴とするタンクのアンカー装置において、
上記連結板の中間部に、圧縮荷重に対抗するさや状の補強材を設けた構造とし、
かつ当該補強材を摺動自在に装着した構造であることを特徴とするタンクのアンカー装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地上据え置きの平底円筒タンクが地震や強風によって水平移動、横滑りや転倒などの被害を受けることがないように、底板外周上面から基礎のアンカーボルト上部へ架設する簡便で着脱構造のタンクのアンカー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10は、従来例のタンクの横滑り状況を示す全体側面説明図、図11は、従来例のタンクアンカー取付部近傍の破損状況を示す全体側面説明図である。
図示例に示すように、従来一般的な地上据え置きの中小規模の平底円筒タンク1は、側板2と底板3と屋根4とからなり、地盤5の上に据え置かれている。
タンク1は、地震や強風による水平方向の力HPによって、図10に示す横滑りXや、図11に示すアンカー取付部近傍に損傷Yを生じることがあった。
【0003】
特許文献1の特開昭55−112500号公報「円筒貯槽の滑動防止装置」の発明には、基礎5上に載置する円筒貯槽1の外周縁部下端位置に、多数の滑動防止ロッド6の一端をアニュラープレート4aのジョイント部7に連結し、且つ該各滑動防止ロッド6を、円筒貯槽1外周の接線と平行に近い小さな角度で且つ交互に向きを変えた姿勢にセットし、各滑動防止ロッド6の他端を上記基礎5の支持ボルト8に止めてなる構成が開示されている。
【0004】
特許文献2の実開昭63−147498号公報「平底円筒貯槽のスベリ止め装置」の考案は、地震時に貯槽の軸心に平行する上下方向には動きを拘束しないように貯槽の側板3の下縁近傍に固定したブラケット5,9,11と基礎1に設けたアンカーバー7,12との間に係合したスベリ止め装置の構成が開示されている。
【0005】
特許文献3の特開平11−49283号公報「貯槽の滑動防止装置」の発明には、地震や強風時に、貯槽の垂直方向の動きを拘束することなく水平方向の動きを拘束するように、貯槽1の底板2を貯槽基礎4の埋設アンカー6に直接又は間接に連結した連結具8を有する滑動防止装置の構成が開示されている。
【0006】
特許文献4の実用新案登録第3181060号公報「タンクの滑動防止装置」の考案には、地上据え置きの平底円筒タンクが地震や強風によって転倒や横滑りをしたり、津波や洪水によって浮き上がりや流されたりすることがないようにタンク1の側板2下部外周面に均等な隔接間隔を設けて円周方向に複数個固定した取付部材7と、該取付部材7と対応して固定した複数個の固定部材9とを設けてなり、前記取付部材7と固定部材9とを連結部材8でピン止めヒンジ回動の着脱自在に係合した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭55−112500号公報
【特許文献2】実開昭63−147498号公報
【特許文献3】特開平11−49283号公報
【特許文献4】実用新案登録第3181060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図10及び図11に示す従来一般的な地上据え置きの中小規模の平底円筒タンク1は、地震や強風の水平方向の力HPによる横滑りXや、アンカー取付部近傍の損傷Yへの対応が十分ではなかった。そこで、この水平方向の力HPによる移動を抑制して横滑りXや、損傷Yを防止することが望まれている。
【0009】
特許文献1「円筒貯槽の滑動防止装置」の発明は、コンクリート基礎5に対して多数の滑動防止ロッド6を用いて連結し止めているが、長い部材で構造が煩雑なため施工に手間を要し、水平力が接線方向に掛かる構造のため中心方向の荷重に対しては非効率となる。
【0010】
特許文献2「平底円筒貯槽のスベリ止め装置」の考案は、地震や強風による貯槽の横スベリを防止する装置であるが、スベリ止め装置を貯槽に取り付け固定する部分の側板に過大な応力が発生し、かえって貯槽本体を損傷することも考えられる。さらに、スベリ止め装置が損傷した場合に、着脱して交換する構造ではない。
【0011】
特許文献3「貯槽の滑動防止装置」の発明に開示された、貯槽の底板を貯槽基礎の埋設アンカーに直接又は間接連結した滑動防止装置は、主に空液時に側板外面へ着脱自在に取付けるものであって強風時の滑動防止には一定の効果があるが、地震によるタンクの揺動や水平方向の荷重に対応させた滑動防止装置ではない。
【0012】
また、特許文献4の実用新案「タンクの滑動防止装置」の考案は、タンクが地震や強風によって転倒や横滑りをしたり、津波や洪水によって浮き上がりや流されたりすることがないようにしたものであるが、取付部材7や固定部材9、連結部材8などが損傷したり、タンク側板2の下部外周面が損傷する心配があった。
【0013】
この発明は上述のような従来技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、地上据え置きの平底円筒タンクが地震や強風によって横滑りや損傷をしないように、タンク基礎に連結部材を用いて固定する簡便で着脱構造のタンクのアンカー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明に係るタンクのアンカー装置は、地上据え置きの平底円筒タンクが、地震や強風によって横滑りや損傷をすることがないように、一方端を底板外周上面に固定部で固定し、他方端を基礎より立設したアンカーボルト上部に取付部で固定した水平連結板で形成したことを特徴とするタンクのアンカー装置において、上記連結板の中間部に、圧縮荷重に対抗するさや状の補強材を設けた構造とし、かつ当該補強材を摺動自在に装着した構造であることを特徴とする
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明に係るタンクのアンカー装置は、地上据え置きの平底円筒タンクが、地震や強風によって横滑りや損傷をすることがないように、一方端を底板外周上面に固定部で固定し、他方端を基礎より立設したアンカーボルト上部に取付部で固定した水平連結板で形成したことを特徴とするタンクのアンカー装置において、上記連結板の中間部に、圧縮荷重に対抗するさや状の補強材を設けた構造とし、かつ当該補強材を摺動自在に装着した構造であるので、
地震力および風圧力による水平方向の引張り荷重による滑動、つまり横滑りに対して抵抗力を有し、貯液時の液面揺動に対する抵抗力も有するため、地震対策や強風対策として有効となる。また連結板は構造が簡単で簡便化が図られ、着脱自在で設置が簡単に出来、損傷や破損した場合の取替えが容易である。
引張り荷重に抵抗力を有するのに加えて、さらに圧縮荷重に対しても耐久性を確保することができる。このさや状の補強材は、連結板の中間部へ擦動自在に装着することによって引張り荷重に対しては中間部が対抗し、圧縮方向の荷重に対してはさや状の補強材が対抗するため、連結板の中間部が湾曲したり潰れたりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るタンクのアンカー装置を、平底円筒形タンクに設置した実施形態例を示す全体側面説明図である。
図2図1のA部の説明図である。
図3図1及び図2のA部近傍を左上側方向から見た斜視説明図である。
図4図1のタンク全体平面説明図である。
図5】B部の連結板について、水平方向に働く力と変位の関係を説明する図である。
図6】タンク全体にかかる水平方向に働く力と変位の関係を説明する図である。
図7】対向する連結板A、Bにかかる水平方向に働く力と変位の関係を説明する図である。
図8】連結板にさや状の補強材を装着した平面説明図である。
図9】連結板の固定部構造の実施形態例の側面説明図である。
図10】従来例のタンクの横滑り状況を示す全体側面説明図である。
図11】従来例のタンクのアンカー取付部近傍の損傷状況を示す全体側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るタンクのアンカー装置の実施形態例について図1から図9を参照しながら説明する。本発明は下記の実施形態にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記の実施形態に変更(例えば構成要素の省略または付加、構成要素の形状の変更等)を加えることが出来るのはもちろんである。なお、図は概略を示すもので、一部のみを描き詳細構造は省略した。
【0020】
図1は、本発明に係るタンクのアンカー装置を平底円筒形タンクに設置した実施形態例である。
タンク1は、側板2と底板3と屋根4とからなり、基礎5の上に設置されている。
アンカー装置6は、底板外周上面3aから基礎上面5aに渡って設置する。
このアンカー装置6によって、地震や強風による水平方向の力HPに対応して、タンク1の横滑り移動やタンクアンカー部位の損傷を防止することができる。
【0021】
図2図1のA部、アンカー装置6近傍を拡大して示す説明図で、アンカー装置6は、アンカーボルト10とベースプレート11と連結板7とで形成する。 このアンカー装置6は、連結板7の一方端を底板外周上面3aに固定部8で固定し、他方端は基礎上面5aにベースプレート11を介装してアンカーボルト10上部に取付部9で固定する。
【0022】
図3は、図1のA部近傍を左上側方向から見た図である。 アンカー装置6は、底板外周上面3aから基礎上面5aに渡って円周方向に均等な間隔を設けて複数個の連結板7を設置する。 連結板7の一方端は底板外周上面3aの固定部8で固定し、他方端は基礎上面5aのアンカーボルト10上部に平板状のベースプレート11を介装させてその上に取付部9で固定する。
【0023】
図4は、図1のタンク全体平面説明図で、タンク1の外周の円周方向に間隔をおいてアンカー装置6を複数個設置する事例である。
各連結板7の一方端は底板外周上面3aに固定部8で固定し、他方端は基礎上面5aのアンカーボルト10上部に取付部9で固定する。
このように、アンカー装置6を複数個設置することにより、地震や強風による水平力HPに対応しタンクの横滑りを防止することができる。
また、許容荷重を超える場合は連結板7が降伏破損するため、タンクのアンカー取付部の損傷を防止することができる。
【0024】
図5は、タンク1平面図とB部に示す連結板7単体について、水平方向の力Pと変位δの関係を説明する図である。
アンカー装置6の連結板7単体への引張り力に対する応力(張力)とひずみ(伸び)の関係、圧縮力とひずみの関係を示している。
連結板7は、例えば、断面積が大きい(断面性能が良い)板厚が厚い矩形部7aと楕円形部7bと幅狭で長い中間部7cを組合せて形成する。
この連結板7は、高強度の鋼材を用いて過大な引張り荷重に対しては幅狭の中間部7cで引張降伏するため、水平方向に過大な荷重が作用した場合にこの中間部7cで対抗する。さらに所定以上の過大な荷重が掛かった場合にはこの中間部7cでエネルギーを吸収することによって、タンクの側板や底板が損傷することがない。
このアンカー装置6の連結板7は、構造が簡単で簡便化が図られ、製作施工がし易い。この連結板7は、着脱自在で設置が簡単にでき、損傷や破損した場合の取替えを容易に行うことができる。
【0025】
図6は、タンク全体にかかる水平方向に働く力と変位の関係を説明する図である。 平面図のように、タンク1に横滑りの荷重P1が掛かりひずみδが生じる場合の引張と圧縮の関係を示す。A〜Dにおける各連結板7には、PA,PCの引張力、又はPB,PDの圧縮力が掛かる。 この合計荷重に基づいて、地震対応の場合はグラフに示すように、A〜Dは(イ)中小規模の地震動に、B〜Dは(ロ)大規模の地震動に、C〜Dは(ハ)超大規模の地震動に、それぞれ対応させた設計値とする
【0026】
図7は、タンク直径方向に対向する図6のA、B位置の連結板7にかかる水平荷重と変位の関係を説明する図である。
8aは底板外周上面への固定部穴、9aはアンカーボルト上部への取付部穴、10はアンカーボルトを示す。
タンク直径方向の水平荷重Pと変位δに対して、A位置の連結板7による引張力とB位置の連結板7による圧縮力の合計が抵抗力となる。
【0027】
図8は、連結板にさや状の補強材12を装着した平面説明図である。
アンカー装置6の連結板7の平行な中間部7cに圧縮力が増すように、さや状の補強材12を装着した事例を示す。8aは底板外周上面への固定部穴、9aはアンカーボルト上部への取付部穴である。
このさや状の補強材12は、連結板7の中間部7cへ擦動自在に装着することによって引張り荷重に対しては中間部7cが対抗し、圧縮方向の荷重に対してはさや状の補強材12が対抗するため、連結板7の中間部7cが湾曲したり潰れたりすることがない。
【0028】
図9は、連結板の固定部構造の第2の実施形態例の側面説明図である。 この図示例は、連結板7を基礎上面5aに突出させたアンカーボルト10の上部10aへベース薄板13と弾力材14を介装して、締付ナット15で弾力構造に固定する場合を示す。 この弾力材14によって、鉛直方向の力に対抗して振動を吸収し、連結板7の曲がりを防止する。 また連結板7を固定する底板外周上面3aのボルトの上部は、袋ナット16で固定してカバー17を設けることによって、固定部の腐食防止を図る。
【0029】
このように、固定部8や取付部9で固定することによる着脱自在の連結板7を用いたアンカー装置6は構造が簡単で、取付けの施工がし易く、損傷や破損した場合の取替えも簡単に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
上記横滑り防止と損傷を防止するアンカー装置6は、平底円筒タンクのみならず、地震時の防護対策や耐震性能向上が望まれる種々構造のタンクや貯蔵庫などの構築物にも適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1タンク
2側板
3底板
4屋根
5基礎
6アンカー装置
7連結板
8固定部
9取付部
10アンカーボルト
11アンカーベース板
12補強材
13ベース薄板
14弾力材
15締付ナット
16袋ナット
17カバー

HP:水平方向の力
P:荷重
δ:ひずみ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11