【実施例1】
【0017】
図1〜
図3は、本発明の実施例1を示す。
【0018】
最初に、供給される部品について説明する。
【0019】
部品としては、プロジェクションナット、プロジェクションボルト、通常のボルト、頭部付き軸状部品など種々なものがある。ここでは、通常の鉄製のボルト1が供給対象とされている。各図に示すように、六角形の頭部2に、雄ねじが切られた軸部3が一体化されている。
【0020】
つぎに、全体的な構成を説明する。
【0021】
部品供給制御ユニットは、符号100で示されている。パーツフィーダ4から伸びている合成樹脂製の供給ホース5が、部品供給制御ユニット100に接続されている。パーツフィーダ4には、空気噴射管6が取り付けられ、ここからの噴射空気でボルト1が部品供給制御ユニット100に高速で搬送されるようになっている。部品供給制御ユニット100を通過したボルト1は、合成樹脂製の送出ホース7から低速で、目的箇所へ供給される。
【0022】
つぎに、部品供給制御ユニットについて説明する。
【0023】
本体8は、ほぼ直方体の形状とされた部材であり、真っ直ぐな断面円形の供給通路9が形成してある。本体8は、ステンレス鋼や合成樹脂などの非磁性材料で構成してある。制御部材10は、細長くて平たい厚板材で構成され、本体8に開けたガイド孔11内を摺動するように、ガイド孔11内に挿入してある。ガイド孔11は、制御部材10の断面形状と同じ形状とされ、供給通路9を含む空間形状、すなわち
図1(B)や(C)に示すように、供給通路9の内径よりもガイド孔11の幅の方が大きく設定されている。制御部材10は、進退動作をするもので、その進退方向は供給通路9の中心線に直交している。
【0024】
制御部材10の進退動作は、エアシリンダ12によって行われる。エアシリンダ12は、ブラケット13を介して本体8に結合され、そのピストンロッド14が制御部材10の端部に結合してある。
【0025】
つぎに、制御部材と吸引手段について説明する。
【0026】
前記制御部材10には、停止部15が設けられ、供給通路9を停止部15で閉鎖したり、停止部15を移動させて供給通路9を開通させたりする。停止部15は、制御部材10の一部がそのままの形状とされることによって構成されている。ここでは、供給通路9を開通するために、停止部15に並べて通過孔16が設けてある。制御部材10が進退することにより、停止部15が供給通路9を閉鎖し、通過孔16が供給通路9に合致すると、供給通路9が開通する。
【0027】
吸引手段は、供給通路9内のボルト1を供給通路9の内壁面に吸着して、ボルト移動を拘束する機能を果たしている。このような機能をえるために、種々な構造が採用できるが、この実施例では磁石の吸引力を活用している。
【0028】
制御部材10の上端に、板状の支持部材18がボルト付けまたは溶接などで結合してある。そして、支持部材18は、ボルト1の移送方向で見て上流側に伸ばされている。支持部材18の下面に永久磁石19が、下方に突き出た状態で取り付けてある。永久磁石19は、四角い箱状の容器20内に収容され、この容器20が溶接などで支持部材18の下面に結合してある。このような構造によって、吸引手段は、永久磁石19の配置によって構成されている。したがって、吸引手段である永久磁石19は、支持部材18を介して制御部材10に一体化され、「吸引手段19」なる記載をしている。
【0029】
本体8に凹部21が形成され、ここに容器20が嵌まり込むようになっている。したがって、凹部21の各部の寸法は、容器20の各部の寸法よりもわずかに大きく設定してある。この凹部21の形成によって、本体8に薄肉部22が形成されている。
【0030】
吸引手段19と供給通路9の位置関係は、停止部15が供給通路9を閉鎖している動作位置において、吸引手段19の吸引力がボルト1に作用するとともに、停止部15が移動して供給通路9を開通している動作位置において、吸引手段19の吸引力がボルト1に作用しなくなるように設定されている。
【0031】
すなわち、エアシリンダ12の動作で、
図2に示すように、停止部15が供給通路9を閉鎖しているときには、永久磁石19、すなわち吸引手段19が凹部21内に嵌まり込んでいて、永久磁石19の吸引磁力がボルト1に作用し、ボルト1は供給通路9の内壁面に吸着され、移動できない状態になる。
【0032】
また、エアシリンダ12の動作で、
図1に示すように、停止部15が供給通路9から外れて通過孔16が供給通路9に合致し、供給通路9を開通しているときには、永久磁石19が凹部21から離隔していて、永久磁石19の吸引磁力がボルト1に作用することなく、ボルト1は供給通路9を滑らかに通過する状態になる。
【0033】
通過孔16を設けることなく、停止部15だけの進退で供給通路9を開閉することもできる。この場合には、
図1(A)に2点鎖線で示すように、制御部材10の上部にエアシリンダ12の進退力が伝達されるように構成する。
【0034】
支持部材18の長さを調整することにより、永久磁石19の位置が設定され、これによりボルト1の吸着位置が停止部15の近傍に設定される。
【0035】
符号23は、部品供給制御ユニット100が取付けられる機枠などの静止部材である。
【0036】
つぎに、部品供給制御ユニットの適用事例を説明する。
【0037】
図3は、部品供給制御ユニット100をねじ締め工程に組み込んだ場合である。移行装置25は、スライド板26上に直方体形状の受けブロック27が摺動可能な状態で載せられ、スライド板26に固定したエアシリンダ28によって、受けブロック27が進退する。受けブロック27には、ボルト1の軸部3が挿入される受入孔29が開けられている。受入孔29と同軸の状態で供給管30が配置してある。
【0038】
エアシリンダ28の動作で受けブロック27が2点鎖線で示す位置に進出する。この進出位置における頭部2を、ねじ締め装置(図示していない)のねじ締めロッド31が保持する。そのために、ねじ締めロッド31にソケット32が結合され、頭部2を受け入れる六角孔33が下向きに開けられている。六各孔33の奥に、落下防止用の永久磁石34が固定してある。
【0039】
頭部2が2点鎖線図示の位置に移行されると、今度は、ねじ締めロッド31が下降して頭部2が相対的に六角孔33内に進入し、永久磁石34で保持される。その後、ねじ締めロッド31が移動して目的箇所のねじ孔にボルト1をねじ込む。
【0040】
つぎに、部品供給制御ユニットの動作を説明する。
【0041】
図2は、制御部材10がエアシリンダ12によって引き下げられ、停止部15が供給通路9を閉鎖している状態を示す。この状態では、吸引手段である永久磁石19が収容された容器20が凹部21内に嵌まり込んでおり、永久磁石19の吸引磁力は供給通路9内に及んでいる。そして、通過孔16は供給通路9から外れた位置に待機している。
【0042】
この状態のところへボルト1が空気噴射で搬送されてくると、ボルト1は高速で停止部15に衝突し、その反力で跳ね返されようとするが、跳ね返された直後に、永久磁石19の吸引磁力で供給通路9の内壁面に吸着される。これにより、ボルト1の一旦停止がなされ、ボルト1が高速で移行装置25の受入孔29を直撃することがなく、受入孔29の耐久性向上がなされる。また、部品供給制御ユニット100や移行装置25がロボット装置に付属した状態になっている場合、ロボット装置が上下左右前後に移動しても、ボルト1が供給ホース5の方へ後戻りすることがない。
【0043】
その後、エアシリンダ12が動作すると、
図1に示すように、停止部15が供給通路9から離れ、通過孔16が供給通路9に合致し、さらに、永久磁石19が凹部21から離隔する。この離隔により、永久磁石19の吸引磁力は供給通路9内に作用しなくなるので、供給通路9の内壁面に吸着されていたボルト1は、噴射空気または供給通路9の下り傾斜によって通過孔16を通過し、低速で受入孔29に供給される。その後は、前述のように、ねじ締めロッド31が動作して、ねじ締めがなされる。
【0044】
なお、上記各種のエアシリンダに換えて、進退出力をする電動モータを採用することもできる。また、上記の永久磁石を電磁石に置き換えることも可能である。
【0045】
上述の制御部材10の進退動作や、空気噴射管6からの空気噴射などの動作は、一般的に採用されている制御手法で容易に行うことが可能である。制御装置またはシーケンス回路からの信号で動作する空気切換弁や、エアシリンダの所定位置で信号を発して前記制御装置に送信するセンサー等を組み合わせることによって、所定の動作を確保することができる。
【0046】
以上に説明した実施例1の作用効果は、つぎのとおりである。
【0047】
制御部材10の停止部15が供給通路9を閉鎖しているときには、移動してきたボルト1は停止部15に衝突して停止する。停止部15が供給通路9を開通すると、停止部15によって停止していたボルト1は、通過孔16を通って目的箇所である受入孔29へ移送される。
【0048】
そして、吸引手段19と供給通路9の位置関係は、停止部15が供給通路9を閉鎖している動作位置において、吸引手段19の吸引力がボルト1に作用するとともに、停止部15が移動して供給通路9を開通している動作位置において、吸引手段19の吸引力がボルト1に作用しなくなるように設定されている。
【0049】
停止部15に衝突したボルト1は、停止部15に跳ね返されて後戻りするのであるが、停止部15がボルト停止位置に待機しているときには、吸引手段19が吸引動作状態になっている。このため、跳ね返されたボルト1は吸引手段19の吸引力で供給通路9の内壁面に吸着されて停止し、後戻り距離を許容範囲の短い長さとすることができ、実質的に後戻り防止がなされる。さらに、供給通路9がロボット装置に付属した状態になっているような場合には、ロボット装置が上下左右前後など種々な方向に変位しても、ボルト1は供給通路9の内壁面に吸着されているので、ボルト1の後戻りが確実に防止できる。
【0050】
吸引手段19が制御部材10に取り付けられて一体化されているので、制御部材10の動作位置と吸引手段19の吸引機能位置を適正に合致させることができる。すなわち、制御部材10がボルト停止位置に存在しているときには、吸引手段19がボルト吸引位置となる。したがって、制御部材10と吸引手段19の位置関係が、移送されてきたボルト1の停止機能と、停止後のボルト1の吸着・拘束機能の両機能を果たすこととなる。また、制御部材10と吸引手段19の位置関係が、停止しているボルト1の通過機能と、通過ボルトに対する非吸着・通過許容機能の両機能を果たすこととなる。このように、ボルト停止時の吸引手段19の動作状態と、ボルト通過時の吸引手段19の動作状態が、定形化されているので、誤動作を起こしたりすることがなく、部品供給制御ユニット100としての動作信頼性の向上が実現する。
【0051】
吸引手段19が制御部材10に取り付けられた一体構造となっているので、停止部15と吸引手段19を近づけて配置することができ、これによって、吸引手段19や制御部材10などの主要部材を小型化した組み立て品にすることができ、部品供給制御ユニット100全体のコンパクト化にとって有効である。
【0052】
さらに、吸引手段19が制御部材10に取り付けられた一体構造物が主要な組み立て品になっており、吸引手段19と制御部材10の移動動作で上記のような制御機能を果たす部品供給制御ユニット100であるから、例えば、ねじ締め装置のボルト供給や、電気抵抗溶接機へのプロジェクションボルト供給などの分野において、幅広く活用することができ、汎用性の高い装置がえられる。
【0053】
本体8に凹部21を設け、そこに吸引手段19がはまり込むので、供給通路9内のボルト1に対する吸引力の作用位置が常に均一に設定され、ボルト1の拘束位置が一定になる。また、凹部21を設けることにより、本体8に薄肉部22が形成され、これにより永久磁石19の磁力がより強くボルト1に対して作用し、ボルト拘束が確実に達成される。
【0054】
制御部材10の端部に支持部材18が結合され、その下面に吸引手段19が固定されている。そして、吸引手段19を受け入れる凹部21が吸引手段19に対向した位置関係とされている。したがって、支持部材18の長さを選定することと、支持部材18や凹部21の設置箇所を選定することにより、吸引手段19の吸引力が作用する箇所を自由に選定することができる。これにより、停止部15と吸引力作用箇所の距離がボルト1の寸法に適したものとすることができ、ボルト1の停止箇所を適正なものとすることができる。とくに、ボルト1は、停止部15に衝突した後、跳ね返されるので、この跳ね返し距離の全部または一部を含めて、停止部15と吸引力作用箇所の距離を設定するのが望ましく、上記構成によって、望ましい態様とすることができる。
【実施例2】
【0055】
図4は、本発明の実施例2を示す。
【0056】
この実施例2は、吸引手段19が、前述のように永久磁石19を用いた形式ではなく、空気吸引の形式とされたものである。
【0057】
凹部21の薄肉部22に、複数個の微小な吸引口36が開けられ、この吸引口36によって凹部21と供給通路9が連通している。支持部材18の下面に吸引突起37が溶接またはボルト付けで固定されている。吸引突起37は、四角いブロック状の部材で構成され、その下面に吸引凹部38が下向きに開放した状態で形成されている。吸引突起37の下面が凹部21の底面に密着し、吸引凹部38の空気圧が低圧になると、ボルト1の頭部2が供給通路9の内壁面に吸着される。吸引凹部38は、換言すると、多数の吸引口36からの空気を集合する、集合室の機能を果たしている。
【0058】
吸引凹部38に開口する空気通路39が、吸引突起37と支持部材18に開けられ、支持部材18に結合された空気ホース40が吸引ポンプ(図示していない)に接続してある。それ以外の構成は、図示されていない部分も含めて先の実施例1と同じであり、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
【0059】
上述の制御部材10の進退動作、空気噴射管6からの空気噴射などの動作、吸引突起37の下面が凹部21の底面に密着しているときの空気吸引動作などは、一般的に採用されている制御手法で容易に行うことが可能である。制御装置またはシーケンス回路からの信号で動作する空気切換弁や、エアシリンダの所定位置で信号を発して前記制御装置に送信するセンサー等を組み合わせることによって、所定の動作を確保することができる。
【0060】
図4は、吸引突起37の下面が凹部21の底面に密着し、停止部15が供給通路9を閉鎖している状態であり、このときには空気吸引が行われている。ここで、ボルト1が高速で移送されてくると、ボルト1は停止部15で受け止められ、その直後に、吸引口36に引きつけられて供給通路9の内壁面に吸着される。
【0061】
以上に説明した実施例2の作用効果は、つぎのとおりである。
【0062】
吸引口36の個数、開口密度、開口箇所などを選定することにより、ボルト1に対する吸引力の作用箇所を適確に設定することができ、ボルト1の停止箇所が確実に設定できる。それ以外の作用効果は、先の実施例1と同じである。