(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記超音波トランスデューサが、前記患者に宛がわれた状態における該患者体表に対し被患者体内に斜めに進行する超音波パルスを送波するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波骨折治療器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上掲の特許文献1,2に開示された技術は、超音波を体内に送り込む送信側に検出手段を設けて超音波が体内に送り込まれていることを推定するものであって、超音波が体内に実際に送り込まれていることを確信させるには不充分である。
【0007】
これに対し、上掲の特許文献3,4に開示された技術は、送信用トランスデューサとは別に受信用トランスデューサを備えて反射超音波を受信する構成を備えているため、超音波が体内に実際に送り込まれていることが検出される。しかしながら、これら特許文献3,4に開示されている技術の場合、受信用トランスデューサを送信用トランスデューサとは別に、体表の適正な箇所に宛がう必要がある。このため超音波治療器の取扱いに慣れていない一般の骨折患者にとって取扱いが難しく、ここに開示された技術は病院等に出向いていって治療を受ける治療法にのみ適用可能な技術であり、広く普及させることが難しいという問題がある。
【0008】
また、この特許文献3,4に提案された技術は、反射超音波が存在することは確認でき、したがって患者体内に超音波が照射されたことは確認できるが、その超音波がしっかりと骨折部位に照射されたか否かまでは推定の域を出ない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、超音波が患者体内の狙った部位に確実に照射されていることを判定する超音波骨折治療器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の超音波骨折治療器は、
電気エネルギーと超音波エネルギーとの間でのエネルギーの変換を担う配列された複数の振動子で構成された超音波トランスデューサと、
骨折を患っている患者に宛がわれた前記超音波トランスデューサを構成する複数の振動子に電気パルスを印加して、該超音波トランスデューサに、超音波パルスを該患者体内に送波させる送波部と、
前記患者体内で反射して戻ってきた超音波パルスに起因する前記複数の振動子の振動をピックアップして電気信号に変換する受波部と、
前記受波部で得られた電気信号に基づいて患者体内の断層像を生成する生成部と、
前記超音波トランスデューサから前記患者体内に送波された超音波パルスが該患者体内の骨折部位に印加された状態において前記
受波部で得られた
電気信号を参照波形とし
て記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された参照波形
による断層像と、前記生成部で新たに生成された断層像とを比較して
、該参照波形
による断層像と該新たに生成された断層像が所定の誤差の範囲内で一致するか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を前記患者に向けて通知する通知部と
、
前記参照波形が前記記憶部に記憶された時点からの経過時間を測定する計時部とを備え、
前記判定部が、前記経過時間の増大に応じて前記誤差の範囲を広げて、広げた誤差の範囲内で一致するか否かを判定するものであることを特徴とする。
【0011】
本発明の超音波骨折治療器は、例えば医師や熟練した指導者等により患者の骨折部位に超音波を照射したと
断層像を参照波形として記憶しておき、その参照波形と、患者自身で超音波を当てたときの
新たに生成された断層像が所定の誤差の範囲内で一致するか否かを判定して通知する機能を備えたため、患者自身はこの超音波骨折治療器の取扱いに不慣れであっても、骨折部位に超音波を確実に照射することができる。
【0012】
ここで、本発明の超音波骨折治療器において、参照波形が記憶部に記憶された時点からの経過時間を測定する計時部を備え、判定部が、その経過時間の増大に応じて誤差の範囲を広げて、広げた誤差の範囲内で一致するか否かを判定するものであることが好ましい。
【0013】
骨折は日を追うごとに治癒していき、それに応じて骨折部位からの反射超音波も日を追って変化していく。したがって現状波形が参照波形に対し一致しているか否かを判定するための許容誤差を一定にしておくと、日を追うごとに一致していることの判定が厳しいものとなっていくことが予想される。そこで、上記の経過時間の増大に応じて許容誤差の範囲を広げることで、一層使い勝手の良い超音波骨折治療器となる。
【0014】
また、本発明の超音波骨折治療器において、上記の参照波形
としての断層像と上記の
新たに生成された断層像との双方を表示する表示部を備えることが好ましい。
【0015】
参照波形としての断層像と
新たに生成された断層像とを表示することにより、視覚的にもそれらの波形の一致の程度を通知し、患者に確かに骨折部位に超音波が照射されているという一層の安心感を与えることができる。
【0016】
さらに本発明の超音波骨折治療器において、超音波トランスデューサは、患者に宛がわれた状態における、その患者の体表に対し患者体内に斜めに進行する超音波パルスを送波するものであってもよい。
【0017】
骨折患者は骨折部位の回りにギプス包帯が巻かれ、骨折部位の直近から超音波を照射することができない場合がある。患者体表に対し斜めに進行する超音波パルスを送波する超音波トランスデューサを備えると、ギプス包帯から外れた箇所から骨折部位に超音波を当てることができる。ただし、超音波を斜めに当てるとなると、取扱いに慣れていない患者にとっては骨折部位に超音波をうまく照射できないケースが多発することが考えられる。本発明の超音波骨折治療器はこのような場合に特に有用であり、上記の判定部を備えて判定指示を通知することで、患者に正しい治療が行なわれていることを知らせ、安心感を与えることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上の本発明の超音波骨折治療器によれば、超音波が患者体内の狙った部位に確実に照射されていることが判定され、治療効果をあげることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態の超音波骨折治療器の概略構成を示したブロック図である。
【0022】
この
図1に示す超音波骨折治療器1Aは、治療器本体10と超音波トランスデューサ20とを有する。
【0023】
超音波トランスデューサ20は、患者2の体表に宛がわれ、患者2の体内の骨折部位3に向けて超音波を送波する。またこの超音波トランスデューサ20は体内で反射して戻ってきた超音波により振動しその振動に応じた電気信号を生成する。
【0024】
治療器本体10は、パルス送信器11、コンデンサ12、ダイオード対13、プリアンプ14、可変ゲインアンプ15、A/Dコンバータ16、CPU17、メモリ18および表示器19を備えている。
【0025】
パルス送信器11は、本発明にいう送波部の一例に相当するものである。このパルス送信器11は、CPU17からの指示を受けて、超音波トランスデューサ20に電気パルスを印加する。すると超音波トランスデューサ20は、その電気パルスによる電気エネルギーを超音波振動エネルギーに変換して患者2の体内に超音波を送波する。
【0026】
コンデンサ12およびダイオード対13は、パルス送信器11から出力された電気パルスがそのままプリアンプ14に印加されてプリアンプ14を破壊するのを防止するためのものである。
【0027】
超音波トランスデューサ20から患者2の骨折患部3に送波された超音波は、患者2の体内で反射してその一部が超音波トランスデューサ20に戻る。超音波トランスデューサ20は、この反射超音波により振動してその振動エネルギーを電気エネルギーに変換する。超音波トランスデューサ20で振動がピックアップされることにより得られた電気信号は、プリアンプ14および可変ゲインアンプ15で、次段のA/Dコンバータ16でのA/D変換に適した振幅の信号にまで増幅される。可変ゲインアンプ15で得られた電気信号はアナログの電気信号であって、この電気信号はA/Dコンバータ16に入力されデジタル信号に変換されてCPU17に取り込まれる。本実施形態では、コンデンサ12、ダイオード対13、プリアンプ14、可変ゲインアンプ15、およびA/Dコンバータ16の組が、本発明にいう受波部の一例に相当する。CPU17では、後述する処理が実行され、その処理結果が表示器19に表示される。
【0028】
患者2は、その表示器19に表示された波形を参照することで、超音波が骨折部位に向かい確実に送波されていることを確認することができる。
【0029】
この超音波骨折治療器1Aは、最初は骨折の治療を受けた病院等で使い方の指導を受け、その後この超音波骨折治療器1Aをレンタルして自宅に持ち帰って、例えば一日一回など定期的に患部に超音波を当てるという使用法が想定されている。
【0030】
そこで、病院等で使い方の指導を受け、その指導を受けている時点で超音波が骨折部位3に確実に当てられているという状況が作り出され、その時点の波形を取り込んでメモリ18に記憶させておく。この時点の波形をここでは参照波形と称する。
【0031】
図2は、
図1に示すメモリのメモリマップを示した図である。
【0032】
ここには、参照波形自身のほか、その参照波形をメモリ18に記憶した年月日、および許容誤差が記憶される。指導者は、超音波トランスデューサ20を体表に宛てがっては患者の骨折部位に超音波を照射して超音波トランスデューサ20を体表から離す操作を何度か繰り返し、CPU17にはその繰り返しの間の複数の波形が取り込まれる。このときの波形は、超音波トランスデューサ20を体表に宛てがうたびに少しずつ異なっている。CPU17ではそれら複数の波形のいずれもが骨折部位3に超音波が正しく当てられた波形であるとの認識の下に許容誤差が算出されて、その算出された許容誤差がメモリ18に記憶される。
【0033】
この超音波骨折治療器1Aの取扱い方法について指導を受け、かつ参照波形の記憶処理が行なわれた後、患者はこの超音波骨折治療器1Aを持って自宅に戻る。それ以降は患者自身の操作で骨折部位への超音波の照射が行なわれる。
【0034】
図3は、患者が骨折部位への超音波照射を行なっているときの、CPUでの処理内容を示したフローチャートである。
【0035】
図1に示す超音波骨折治療器1Aに電源が投入されると、先ず、メモリ18に記憶されている参照波形の読出し(ステップS01)、許容誤差の読出し(ステップS02)、およびこのメモリ18に参照波形を記憶させた年月日の読出し(ステップS03)が行なわれる。このCPU17では現在時刻が管理されており、メモリ18から読み出した年月日から本日までの経過日数が算出され(ステップS04)、その経過日数に応じて許容誤差を増大させる方向に補正する(ステップS05)。経過日数に応じて許容誤差をどのように増大させるか、という点については、骨折部位や骨折の複雑度等に応じて医師等の指導者によりあらかじめ設定されている。
【0036】
ここまでの準備が終了すると、超音波トランスデューサ20から超音波を照射すべくパルス送信器11に向けて送波指示が行なわれ(ステップS06)、この送波指示に起因する現状波形の入力待ちとなる(ステップS07)。
【0037】
現状波形が入力されると表示器19への画面表示が行なわれる(ステップS08)。
【0038】
図4は、表示器に表示される表示画面の第1例を示した図である。
【0039】
ここには、メモリ18から読み出された参照波形(破線)と今回入力された現状波形(実線)との双方が示されている。この
図4に示す第1例は、参照波形および現状波形とも反射超音波による超音波トランスデューサ20の振動を表わす波形が採用されている。
【0040】
図5は、表示器に表示される表示画面の第2例を示した図である。この第2例は、超音波トランスデューサ20の振動のエンベロープ波形を採用した図である。この場合も、参照波形(破線)と現状波形(実線)とが表示されている。
【0041】
図3のステップS09では、参照波形に対する現状波形の誤差が算出される。
【0042】
この誤差は、公知の様々な手法のいずれを採用してもよいが、例えば、横軸(時間軸)上の各点における、参照波形の値と現状波形の値との差分の絶対値の総和を誤差とすることができる。
【0043】
このような誤差が算出された後、その算出された誤差と、許容誤差との大小関係が調べられる(ステップS10)。ここで用いられる許容誤差は、ステップS05で補正された後の許容誤差である。ステップS09で算出された誤差が許容誤差以内のときは表示画面上にさらに「OK」マークが表示されて(ステップS11)、ステップS06に戻り次の送波指示が行なわれる。一方、ステップS09で算出された誤差が許容誤差を越えているときは表示画面上に「NG」マークが表示されて(ステップS12)、ステップS06に戻る。この超音波骨折治療器を操作している患者は、「OK」マークが表示されると超音波トランスデューサ20を現状の姿勢、位置に固定する。一方。「NG」マークが表示されたときは、「OK」マークが表示されるまで、超音波トランスデューサ20の位置や姿勢の変更が繰り返される。
【0044】
このように、現状波形が参照波形に許容誤差範囲で一致していることを表示することで、患者に骨折部位に確かに超音波が照射されているという安心感を与えるとともに、実際に骨折部位に超音波を適切に当てられるため治療効果を上げることができる。
【0045】
また患者は、表示器19に表示された現状波形と参照波形を見比べることで、超音波トランスデューサ20の当てかたの工夫等が容易となり、「OK」マーク表示までの時間短縮に繋げることができる。
【0046】
さらに、本実施形態では日数の修正に応じて許容誤差を増大させているため、骨折の治癒に応じて反射超音波の波形が変化しても正しい判定が行なわれる。
【0047】
尚、ここでは「OK」マーク、「NG」マークを「表示」する旨、説明したが表示画面上への表示に代えて、緑色/赤色のランプの点灯、ブザーによる音の変化等、患者に通知が可能なものであればよい。
【0048】
さらに、本実施形態では、表示部に現状波形と参照波形を表示しているが、表示は必ずしも必要ではなく、判定を行なって患者に通知すれば足りる。
【0049】
図6は、本発明の第2実施形態の超音波骨折治療器の概略構成を示したブロック図である。
【0050】
この
図6に示す第2実施形態の超音波骨折治療器1Bにおいて、
図1に示す第1実施形態の超音波骨折治療器1Aの構成要素に対応する構成要素には、
図1において付した符号と同一の符号を付して示し、相違点を中心に説明する。
【0051】
この
図6に示す超音波骨折治療器1Bは、治療器本体30と超音波トランスデューサ40とを備えている。
【0052】
図1に示す超音波骨折治療器1Aの超音波トランスデューサ20は、単板の振動子で構成されているが、この
図6に示す超音波骨折治療器1Bの超音波トランスデューサ40は、複数の振動子41の配列で構成されている。
【0053】
これに対応して、治療器本体30には、パルス送信器11、コンデンサ12、ダイオード対13、プリアンプ14、可変ゲインアンプ15、およびA/Dコンバータ16のセットからなる送受波部100が、配列された振動子41と同数、備えられている。1つの送受波部100は1つの振動子41にそれぞれ対応している。さらにこの
図6に示す超音波骨折治療器1Bは、遅延制御部31と遅延加算部32を備えている。
【0054】
遅延制御部31は、CPU17の指示を受け、所定の遅延プロファイル(後述する)に従って、複数の送受波部100にそれぞれ備えられている各パルス送信器11からの電気パルス出力のタイミングを制御する。すると配列された複数の振動子41の集合からなる超音波トランスデューサ40から、その遅延プロファイルに従った方向であって、かつその遅延プロファイルに従った深さに焦点を持つ超音波パルスビームが送波される。本実施形態では、例えばこの
図6に示されているように、超音波トランスデューサ40から斜め方向に超音波パルスビームを照射することが行なわれる。
【0055】
これは、例えばギプス包帯を避けて骨折部位に斜め方向から超音波を照射するためである。本実施形態ではさらに、斜め方向から超音波を照射することに伴い超音波トランスデューサ40と骨折部位との間の距離が離れるため、ここでは超音波トランスデューサ40と骨折部位3との間の距離に応じ、骨折部位に超音波が集中する(骨折部位3に焦点を合わせた)超音波ビームが照射される。
【0056】
図7は、遅延プロファイルと超音波パルスビームとの関係を示す模式図である。
【0057】
ここには、複数の振動子41a,41b,41c,…,41n―1,41nが配列されている。このとき、患者2の体内の1点O1に焦点を持つ超音波パルスビームを送波することを考える。このとき、焦点O1を中心とし、振動子41a,41b,41c,…,41n―1,41nのうちの焦点O1に最も近い振動子41nと焦点O1とを結ぶ線分を半径とする円弧42を描くと、各振動子41a,41b,41c,…はその円弧42からそれぞれ距離da1,db1,dc1…だけ離れている。
【0058】
そこで、各振動子41a,41b,41c,…には、振動子41nに電気パルスを印加するタイミングよりも、超音波が患者2の体内を距離da1,db1,dc1…だけ進む時間ta1,tb1,tc1…だけそれぞれ先立つ各タイミングで電気パルスを印加する。
【0059】
言い換えると、振動子41aに電気パルスを印加する時刻を基準とすると、超音波が距離差(da1―db1)だけ進む時間(ta1―tb1)だけ遅れたタイミングで振動子41bに電気パルスを印加し、超音波が距離差(da1―dc1)だけ進む時間(ta1―tc1)だけ遅れたタイミングで振動子41cに電気パルスを印加し…,超音波が距離差(da1―0)だけ進む時間(ta1―0)だけ遅れたタイミングで振動子41nに電気パルスを印加する。こうすると、各振動子41a,41b,41c,…,41n―1,41nから送波された超音波パルスが互いに干渉して、焦点O1を通り、その焦点O1で最も細いビーム径を持って患者2の体内を進む超音波パルスビームB1が生成される。このような、各振動子41a,41b,41c,…,41n―1,41nに印加する電気パルスの遅延のセットを送波側の遅延プロファイルと称する。
【0060】
同様に焦点O2を通る超音波パルスビームB2を生成するには、焦点O2を中心とし、焦点O2と焦点O2から最も近い振動子41cの間の距離を半径とする円弧43を描く。そして、この円弧43と各振動子41a,41b,…との間の距離da2,…だけ超音波が進む時間を考慮して遅延プロファイルを決定し、各振動子41a,41b,41c,…に印加する電気パルスをその遅延プロファイルに従って遅延させた上で各振動子41a,41b,41c,…に印加する。こうすることにより焦点O2に向かい、焦点O2で最も細径に絞られた超音波パルスビームB2が生成される。
【0061】
患者2の体内で反射して超音波トランスデューサ40に戻ってきた超音波は、その超音波トランスデューサ40を構成する複数の振動子41のそれぞれでピックアップされて複数の送受波部100にそれぞれ入力され、各電気信号に変換される。それら複数の電気信号は遅延加算部32に入力される。この遅延加算部32は入力された複数の電気信号を所定の遅延プロファイルに従って相対的に遅延して互いに加算する。こうすることで、反射超音波による患者体内の画像を表わす波形が生成される。
【0062】
ここで再び
図7を参照して、受波側の遅延プロファイルについて説明する。
【0063】
点O1(焦点とは限らない)で反射して各振動子41a,41b,41c,…,41n―1,41nに向かって戻ってきた超音波が、それらの振動子41a,41b,41c,…,41n―1,41nのうちのその点O1に最も近い振動子41nに到達したタイミングを考える。このとき振動子41nを除く各振動子41a,41b,41c,…に向かう反射超音波は、各振動子41a,41b,41c,…からそれぞれ距離da1,db1,dc1,…にある。そこで、振動子41nで超音波がピックアップされて得られた電気信号は、超音波が最も遅く到達する振動子41aに超音波が到達するまで遅延させる。また例えば振動子41cに関しては超音波が距離差(da1−dc1)進む時間だけ遅延させ、振動子41bに関しては超音波が距離差(da1−db1)進む時間だけ遅延させる。
【0064】
各振動子41a,41b,41c,…,41n―1,41nで超音波をピックアップして得られた電気信号をそれぞれこのように遅延させて互いに加算すると、点O1での反射情報を捉えた電気信号が生成される。点O2からの反射超音波については円弧42に代わり円弧43を考慮して各振動子41a,41b,41c,…で得られた電気信号の遅延を考えればよい。このような電気信号の遅延のセットを遅延プロファイルと称する。
【0065】
ここで再度、
図6に戻って説明を続ける。
【0066】
遅延制御部31における遅延プロファイルおよび遅延加算部32における遅延プロファイルを循環的に変更して患者の体内を超音波ビームで走査すると、患者体内の断層像を得ることができる。このようにして作成された画像(断層像)を表わす電気信号は表示器19に送られ、その表示器19にその画像(断層像)が表示される。
【0067】
図8は、表示器での表示態様の第5例を示した図である。
【0068】
ここには、患者体内の断層像、すなわち超音波診断装置でいうBモード像が示されている。このBモード像には、患者2の骨折部位3の像3’が含まれている。
【0069】
表示器19にこのようなBモード像を表示すると、骨折部位3の像3’を患者が確認しその骨折部位3に超音波が当てられていること、およびその骨折の治癒の程度を知ることができる。
【0070】
また、この
図8には、
図4,
図5の場合と同様、参照波形による断層像(破線)と現状波形(実線)との双方が示されている。
【0071】
ここでは、参照波形による骨折部位の像3’と現状波形による像3”との比較が行なわれ、現状波形が、骨折部位に超音波が正しく照射されることにより得られた波形か否かの判定が行なわれる。
【0072】
尚、この第2実施形態の超音波骨折治療器1Bでは、配列された複数の振動子41からなる超音波トランスデューサ40とそれに対応した回路構成を備えた治療器本体30とにより、超音波の斜め照射を実現しているが、超音波の斜め照射は、
図1に示すような単板の振動子からなる超音波トランスデューサ20を採用して実現してもよい。例えば単板の振動子の体表に宛てがう面を斜めに向いた凹面とすることなどにより超音波を斜めに照射することが可能である。