(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ユニオン管継手としては、例えば、以下の特許文献1に開示されているものがある。このユニオン管継手は、接続端部の外周に雄ねじが形成されている第1管体と、第1管体の接続端部に接続される第2管体と、第2管体の接続端部が挿入されるユニオンナットと、を備えている。第2管体は、第1管体の接続端部に接続される管本体と、管本体の接続端部の外周から径方向外側に向かって張り出したユニオン鍔部と、を有している。ユニオンナットは、第2管体の接続端部が挿入可能な貫通孔、及び第1管体の雄ねじに螺合可能な雌ねじが形成されている筒部と、貫通孔の端に径方向内側に向かって張り出した環状の内鍔部と、を有している。
【0003】
ユニオンナットは、その内鍔部と第2管体のユニオン鍔部とが対向した状態で、第2管体の接続端部の外周側に回転自在に装着される。このため、ユニオンナットは、第2管体に装着された状態では、内鍔部に対して第2管体のユニオン鍔部が存在する側に抜け止めされている。
【0004】
このユニオン管継手は、第2管体のユニオン鍔部として、第1ユニオン鍔部と、管本体の周方向に鍔無部を挟み且つ管本体の中心軸線である管軸線を基準にして対称な位置に配置されている第2ユニオン鍔部と、を有している。これら第1ユニオン鍔部及び第2ユニオン鍔部は、同一形状で且つ同一サイズである。このため、管本体の周方向における第1ユニオン鍔部の長さと第2ユニオン鍔部の長さとは同じである。
【0005】
第2管体の鍔無部における外径寸法は、ユニオンナットの内鍔部の内径寸法よりも小さい。このため、第2管体の鍔無部に限っては、ユニオンナットの内鍔部の内周側を容易に通過させることができる。一方、第1ユニオン鍔部の外縁と第2ユニオン鍔部の外縁との間の最大距離であるユニオン鍔部の外径寸法は、ユニオンナットの内鍔部の内径寸法よりも大きい。そこで、ユニオンナットの中心軸線であるナット軸線に対して第2管体の管軸線を傾け、ユニオンナットの径方向における第1ユニオン鍔部の外縁と第2ユニオン鍔部の外縁との間の距離を、ユニオンナットの内鍔部の内径よりも短くしてから、ユニオンナットの内鍔部の内周側を、第1ユニオン鍔部及び第2ユニオン鍔部を通過させる。
【0006】
以上のように、このユニオン管継手は、第2管体の製造後であっても、この第2管体に対してユニオンナットを着脱させることができる。このため、このユニオン管継手は、ユニオンナットの組付けのために第2管体の製造手順が制約されず、生産性を向上させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載のユニオン管継手では、ユニオンナットに対して第2管体を傾けて、第2管体の第1ユニオン鍔部をユニオンナットの内鍔部の内周側を通過させた後、第2ユニオン鍔部をユニオンナットの内鍔部の内周側を通過させる際、ユニオンナットに対して第2管体をより傾ける必要がある。これは、第2ユニオン鍔部の周方向における両端が環状の内鍔部に引っ掛からないようにするためである。このため、上記特許文献1に記載のユニオン管継手では、第2管体に対してユニオンナットの着脱を円滑に行うことが難しい、という問題点がある。
【0009】
さらに、上記特許文献1に記載のユニオン管継手では、ユニオンナットの軸線に対して第2管体の軸線を大きく傾けなければ、第2管体に対してユニオンナットを着脱できない。よって、上記特許文献1に記載のユニオン管継手では、ユニオンナットに対して第2管体を大きく傾けた際、ユニオンナットの内鍔部と第2管体における管本体の外周面との干渉を回避するために、第二管体の管本体に、外径及び内径が小さくなる絞部を形成する必要がある。このため、上記特許文献1に記載のユニオン管継手では、製造コストがかさむ、という問題点もある。
【0010】
そこで、本発明は、ユニオンナットを円滑に着脱でき、しかも製造コストを抑えることができるユニオン管継手、及びこれを備えているキャンドモータポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するための発明の一態様としてのユニオン管継手は、
接続端部の外周に雄ねじが形成されている第1管体と、前記第1管体の前記接続端部に接続される管本体と、該管本体の接続端部の外周から径方向外側に向かって張り出したユニオン鍔部と、を有する第2管体と、前記第2管体の前記接続端部が挿入可能な貫通孔、及び前記雄ねじに螺合可能な雌ねじが該貫通孔の内周側に形成されている筒部と、前記貫通孔の端に径方向内側に向かって張り出した環状の内鍔部と、を有するユニオンナットと、を備え、前記第2管体は、前記ユニオン鍔部として、第1ユニオン鍔部と、前記管本体の周方向に鍔無部を挟み且つ管本体の軸線を基準にして該第1ユニオン鍔部と対称な位置に配置されている第2ユニオン鍔部と、を有し、前記管本体の周方向における前記第2ユニオン鍔部の長さが前記第1ユニオン鍔部の長さより短
く、前記第2管体の前記管本体は、曲がり管であり、前記管本体の外周であって、曲がりの内側となる第1外周部に前記第1ユニオン鍔部が形成され、曲がりの外側となる第2外周部に前記第2ユニオン鍔部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
当該ユニオン管継手では、第2管体に対してユニオンナットを着脱する際には、ユニオンナットの中心軸線であるナット軸線に対して第2管体の中心軸線であるの管軸線を傾け、ユニオンナットの径方向における第1ユニオン鍔部の外縁と第2ユニオン鍔部の外縁との間の距離を、ユニオンナットの内鍔部の内径よりも短くしてから、ユニオンナットの内鍔部の内周側を、第1ユニオン鍔部及び第2ユニオン鍔部を通過させる。
【0013】
よって、当該ユニオン管継手は、第2管体の製造後であっても、この第2管体に対してユニオンナットを着脱させることができる。このため、当該ユニオン管継手は、ユニオンナットの組付けのために第2管体の製造手順が制約されず、生産性を向上させることができる。
【0014】
当該ユニオン管継手では、第2管体に装着されているユニオンナットを取り外す際には、第2ユニオン鍔部よりも第1ユニオン鍔部の方が、ナット軸方向において、ユニオンナットの内鍔部に対して相対的に近い状態になるよう、ユニオンナットに対して第2管体を傾ける。次に、ユニオンナットに対して接続管体を傾けた状態で、接続管体をナット軸方向で且つ接続管体の接続端部と反対側の他端部がユニオンナットから離れる側に、接続管体をユニオンナットに対して相対移動させる。この結果、ナット軸方向において、ユニオンナットの内鍔部に対して相対的に近い第1ユニオン鍔部がユニオンナットの内鍔部の内周側を通過する。次に、第2ユニオン鍔部がユニオンナットの内鍔部の内周側を通過して、接続管体からユニオンナットが外れる。
【0015】
当該ユニオン管継手では、管本体の周方向における第2ユニオン鍔部の長さが第1ユニオン鍔部の長さより短い。このため、第1ユニオン鍔部がユニオンナットの内鍔部の内周側を通過した後、第2ユニオン鍔部がユニオンナットの内鍔部の内周側を通過する際、第2ユニオン鍔部の外縁であって周方向の両端部の外縁が、ユニオンンナットの内鍔部に引っ掛かりにくい。よって、当該ユニオン管継手では、接続管体に対してユニオンナットの着脱を円滑に行うことできる。
また、当該ユニオン管継手では、第2管体に装着されているユニオンナットを取り外す際に前述したように傾けると、接続管体の接続端部と反対側の他端部がユニオンナットから離れる側に傾くことになる。よって、当該ユニオン管継手では、ユニオンナットに対して第2管体を相対的に傾ける際、第2管体の他端部がユニオンナットに接触するおそれがなく、容易に、ユニオンナットに対して第2管体を相対的に傾けることができる。
【0016】
ここで、前記ユニオン管継手において、前記第1管体の前記接続端部には、内周側に円柱状空間を形成するインロー雌部が形成され、前記第2管体の前記接続端部であって、前記ユニオン鍔部よりも前記第1管体が接続される側には、前記第1管体のインロー雌部の内周側に嵌り込む円筒状のインロー雄部が形成されていてもよい。
【0017】
当該ユニオン管継手では、第1管体と第2管体との接続部における接続安定性及びシール性を高めることができる。
【0018】
また、前記第2管体に前記インロー雄部が形成されている前記ユニオン管継手において、前記第2管体の前記インロー雄部には、外周側から内周側に向かって凹む環状のシール溝が形成され、環状の前記シール溝に嵌り込む環状のシール部材を備えていてもよい。
【0019】
当該ユニオン管継手では、第1管体と第2管体との接続部におけるシール性をより高めることができる。
【0022】
上記問題点を解決するための発明の一態様としてのキャンドモータポンプは、
以上のいずれかのユニオン管継手と、回転軸線を中心として回転する羽根車と、前記羽根車が内部に配置されているポンプケーシングと、を備え、前記ポンプケーシングは、前記内部に流体を導く吸込開口が形成されている吸込側管体と、前記内部から流体を吐出する吐出開口が形成されている吐出側管体と、を有し、前記吸込側管体と前記吐出側管体とのうち、少なくとも一方の管体が前記ユニオン管継手における前記第1管体と前記第2管体とのうちの一方の管体を成すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ユニオンナットを第2管体に対して円滑に着脱でき、しかも製造コストを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の各種実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
「第一実施形態」
まず、本発明に係るユニオン管継手、これを備えているキャンドモータ型人工心臓ポンプの第一実施形態について、
図1〜
図13を参照して説明する。
【0027】
本実施形態のキャンドモータ型人工心臓ポンプ10は、
図3に示すように、回転軸線Arを中心として円柱状の貫通空間が形成されているポンプケーシング20と、ポンプケーシング20の貫通空間内に固定配置されている静翼部35と、この貫通空間内に回転可能に配置されている羽根車30と、ポンプケーシング20の内に配置されている羽根駆動機構40と、を備えている。
【0028】
ポンプケーシング20の貫通空間は、回転軸線Arを中心として、この回転軸線Arが延びる回転軸方向に長い円柱形状の空間である。このポンプケーシング20における回転軸方向の一方側の端部は、貫通空間内に血液を導く吸込開口21が形成されている吸込側管体20iを成す。また、ポンプケーシング20における回転軸方向の他方側の端部は、貫通空間から血液を吐出する吐出開口22が形成されている吐出側管体20oを成す。吸込側管体20i及び吐出側管体20oは、いずれも、回転軸線Arを中心として円筒形状である。
【0029】
羽根車30は、吸込開口21側に向かって先細りの略円錐状に形成された羽根支持胴体部31と、この羽根支持胴体部31の外周に突設された複数枚の動翼32と、を備えている。羽根車の羽根支持胴体部31の内部には、永久磁石が配置されている。それぞれの動翼32は、羽根支持胴体部31の外周上に螺旋状に延設された捻り羽根である。この羽根車30は、ポンプケーシング20の貫通空間における吸込開口21側の部分に回転自在に配置されている。羽根車30は、回転軸線Arを中心として回転することにより、羽根車30の羽根先の全体がポンプケーシング20の内周面から非接触状態になる。言い換えると、羽根車30は、回転軸線Arを中心として回転することにより、ポンプケーシング20の内周面から浮上する。
【0030】
静翼部35は、羽根車30の羽根支持胴体部31とは逆向きの略円錐状に形成された胴体部36と、この胴体部36の外周に突設された複数枚の静翼37と、を備えている。それぞれの静翼37は、動翼32とは反対方向に螺旋状に延設された捻り羽根である。この静翼部35は、ポンプケーシング20の貫通空間内の吐出開口22側の部分に固定配置されている。
【0031】
羽根駆動機構40は、ポンプケーシング20の内側に回転磁界を発生させて、この回転磁界によって、ポンプケーシング20の貫通空間内で、永久磁石が内蔵されている羽根車30を回転駆動する。
【0032】
回転駆動された羽根車30は、吸込開口21に供給される血液を吐出開口22に圧送する。羽根車30の下流に固定配置されている静翼部35は、羽根車30の回転で流速が上昇して動圧が高まった血液の流速を低下させて静圧を高める。すなわち、静翼部35は、血液の動圧を静圧に変換する。
【0033】
このキャンドモータ型人工心臓ポンプ10は、
図1及び
図2に示すように、さらに、ユニオン管継手70を備えている。このユニオン管継手70は、ポンプケーシング20の吐出側管体(第1管体)20oと、この吐出側管体20oに接続される接続管体(第2管体)50と、ポンプケーシング20の吐出側管体20oと接続管体50との接続に使用されるユニオンナット60と、を備えている。
【0034】
吐出側管体20oの吐出開口22側における接続端部25の外周には、雄ねじ24が形成されている。また、この接続端部25の内周には、ポンプケーシング20の貫通空間の中胴部の内径以上の内径の円柱状空間を形成するインロー雌部26が形成されている。
【0035】
この接続管体50は、
図2、
図4及び
図5に示すように、流路を提供する筒体である管本体51と、この管本体51の一端部である接続端部51aの外周に形成されているユニオン鍔部52と、管本体51の他端部51bに形成されているソケット54と、を備えている。
【0036】
管本体51は、曲り管、いわゆるエルボ管である。このため、この管本体51の中心軸線である管軸線Acも曲がっている。この接続管体50の内側は、前述したように、血液が流れる流路を形成する。この接続管体50の流路径は、ポンプケーシング20の吐出側管体20oにおける接続端部25側の流路径とほぼ一致している。このため、ポンプケーシング20の吐出側管体20oに接続管体50が接続された状態では、吐出側管体20oに対して接続管体50が仮に回転しても、吐出側管体20oの流路と接続管体50の流路との間で段差が生じない。よって、本実施形態では、吐出側管体20oと接続管体50との接続部分において、血栓の発生を抑えることができる。
【0037】
ソケット54は、内径が管本体51の内径よりも大きく且つ外径が管本体51に外径よりも大きい。このソケット54の内周側には、配管又はホース等の端部が装着される。
【0038】
ユニオン鍔部52は、管本体51の接続端部51aにおける他端部51b側の外周に、径方向外側に向かって張り出している。このユニオン鍔部52を基準にして、他端部51bと反対側は、円筒形状のインロー雄部53が形成されている。このインロー雄部53の外径寸法は、吐出側管体20oのインロー雌部26の内径に対応した寸法で、インロー雌部26の内周側にしっかりと嵌り込む。このインロー雄部53には、外周側から内周側に向かって凹む環状のシール溝56が形成されている。
【0039】
ユニオン鍔部52は、
図4〜
図6に示すように、管本体51の接続端部51aの外周で管本体51の曲がりの内側となる第1外周部G1に形成されている第1ユニオン鍔部52aと、曲げ部51cの曲げの外側となる第2外周部G2に形成されている第2ユニオン鍔部52bと、を有する。第2ユニオン鍔部52bは、管本体51の周方向で鍔無部55を挟み、且つ管軸線Acを基準にして第1ユニオン鍔部52aと対称な位置に配置されている。第1ユニオン鍔部52aの外縁形状及び第2ユニオン鍔部52bの外縁形状は、いずれも、管軸線Acを中心として、同一径の円弧形状である。但し、管軸線Acを中心とした周方向における第2ユニオン鍔部52bの長さは、第1ユニオン鍔部52aの長さよりも短い。具体的に、第1ユニオン鍔部52aの周方向の長さは、管本体51の全周の約1/3を占める長さで、管軸線Acを基準とする角度で表すと約120°である。また、第2ユニオン鍔部52bの周方向の長さは、管本体51の全周の約1/4を占める長さで、管軸線Acを基準とする角度で表すと約90°である。
【0040】
ポンプケーシング20と接続管体50との接続に使用されるユニオンナット60は、
図4、
図7及び
図8に示すように、接続管体50の接続端部51aが挿通可能な貫通孔が形成されている筒部61と、この筒部61の内周から径方向内側に向かって張り出した環状の内鍔部63と、を有している。
【0041】
内鍔部63は、筒部61の内周面のうち、筒部61の中心軸線であるナット軸線Anが延びるナット軸方向の一方側の端部に形成されている。また、筒部61の内周面のうち、ナット軸方向の他方側には、吐出側管体20oの雄ねじ24が螺合可能な雌ねじ62が形成されている。筒部61の外周面には、周方向に互いに離間している4つの平坦面64が形成されている。4つの平坦面64のうち、周方向で隣接する2つの平坦面64相互は直交している。
【0042】
ここで、第1ユニオン鍔部52aの外縁と第2ユニオン鍔部52bの外縁との間の最大距離をユニオン鍔部52の外径寸法D(
図6)とする。また、接続管体50で、管軸線Acを基準にして対称な位置に配置されている2つの鍔無部55の各外縁相互間の最大距離を鍔無部55の外径寸法とする。ユニオン鍔部52の外径寸法Dは、ユニオンナット60における環状の内鍔部63の内径寸法d(
図7)より大きい。また、鍔無部55の外径寸法は、接続管体50のインロー雄部53の外径寸法と同じであり、環状の内鍔部63の内径寸法d(
図7)より小さい。よって、接続管体50の鍔無部55に限っては、ユニオンナット60の内鍔部63の内周側を通過させることができる。
【0043】
接続管体50の接続端部51aの外周側にユニオンナット60が装着された状態では、前述したように、ユニオン鍔部52の外径寸法Dがユニオンナット60における環状の内鍔部63の内径寸法dより大きいため、
図1に示すように、接続管体50のユニオン鍔部52と、ユニオンナット60の内鍔部63とが対向している。このため、接続管体50の管軸線Acとユニオンナット60のナット軸線Anとが平行な状態のままでは、ユニオンナット60の内鍔部63の内周側を接続管体50のユニオン鍔部52を通過させることができない。よって、接続管体50のユニオン鍔部52とユニオンナット60の内鍔部63とは、接続管体50に対するユニオンナット60の抜け止めとして機能する。但し、接続管体50の接続端部51aの外周側にユニオンナット60が装着された状態で、ユニオンナット60は、接続管体50の管軸線Acを中心として回転自在である。
【0044】
接続管体50の環状のシール溝56には、
図1に示すように、環状のシール部材81が装着される。ポンプケーシング20と接続管体50との接続作業では、まず、接続管体50にシール部材81及びユニオンナット60を装着する。次に、接続管体50の接続端部51aの開口と、ポンプケーシング20における吐出側管体20oの吐出開口22とを対向させた状態で、接続管体50を吐出側管体20oに近づけつつ、接続管体50に装着されているユニオンナット60を回転させ、
図2に示すように、ユニオンナット60の雌ねじ62に吐出側管体20oの雄ねじ24を螺合させる。この過程で、接続管体50のインロー雄部53がポンプケーシング20のインロー雌部26に嵌合する。さらに、シール部材81の内周側が接続管体50のインロー雄部53に形成されているシール溝56の底面に密着すると共に、シール部材81の外周側がポンプケーシング20のインロー雌部26の内周面に密着する。
【0045】
以上で、ポンプケーシング20と接続管体50との接続作業が終了する。ポンプケーシング20と接続管体50とが接続された状態では、
図2に示すように、ポンプケーシング20の回転軸線Arの延長線上に、接続管体50の管軸線Ac及びユニオンナット60のナット軸線Anが位置する。この接続状態で、ユニオンナット60に螺合している吐出側管体20oは、ユニオンナット60に対して、ポンプケーシング20の回転軸方向のいずれの側にも相対移動不能である。また、ユニオンナット60に対して接続管体50は、ポンプケーシング20の吐出側管体20oから遠ざかる側へ移動不能である。言い換えると、ユニオンナット60に対して接続管体50は、ポンプケーシング20の回転軸方向で吸込開口21側に対する吐出開口22側へ相対移動不能である。よって、吐出側管体20oに対して接続管体50は、ユニオンナット60により、ポンプケーシング20の回転軸方向で吐出開口22側へ相対移動不能である。また、接続管体50の接続端部51aにおける端面が吐出側管体20oのインロー雌部26の穴底面に接しているため、吐出側管体20oに対して接続管体50は、ポンプケーシング20の回転軸方向で吸込開口21側へ相対移動不能である。また、接続管体50のインロー雄部53が吐出側管体20oのインロー雌部26に嵌り込んでいるため、吐出側管体20oに対して接続管体50は、ポンプケーシング20の回転軸線Arに対する径方向に相対移動不能である。
【0046】
よって、この接続状態では、吐出側管体20oに対して接続管体50は、ポンプケーシング20の回転軸方向のいずれの側にも相対移動不能で、且つ回転軸線Arに対する径方向にも相対移動不能である。
【0047】
本実施形態では、接続管体50のインロー雄部53が吐出側管体20oのインロー雌部26に嵌り込むインロー構造で接続管体50と吐出側管体20oと接している。しかも、本実施形態では、インロー雄部53とインロー雌部26との間に、これらの間をシールするシール部材81が装着される。よって、本実施形態では、接続管体50と吐出側管体20oとの間のシール性能の高めることができる。このため、当該ユニオン管継手70をキャンドモータ型人工心臓ポンプ10に採用することで、キャンドモータ型人工心臓ポンプ10における管体相互の接続部のシール性能を高めることができる。
【0048】
以上の接続状態を解除する場合には、ユニオンナット60をポンプケーシング20の吐出側管体20oに対して相対回転させ、ユニオンナット60の雌ねじ62と吐出側管体20oの雄ねじ24との螺合を解除する。続いて、ユニオンナット60をポンプケーシング20の吐出側管体20oに対して、ポンプケーシング20の回転軸方向で吸込開口21側に対する吐出開口22側へ相対移動させ、接続管体50のインロー雄部53を吐出側管体20oのインロー雌部26から引き抜く。
【0049】
以上で、ポンプケーシング20と接続管体50との接続の解除作業が終了する。なお、解除が完了した段階でも、接続管体50に対してユニオンナット60は、抜け止めされ、装着された状態になっている。
【0050】
次に、接続管体50に対するユニオンナット60の取り外し作業について説明する。
【0051】
まず、
図9に示すように、接続管体50の管軸線Acを含む仮想平面内で、接続管体50の管軸線Acに対してユニオンナット60のナット軸線Anを所定角度θ傾ける。この場合、接続管体50の管本体51の曲がりを広げる側M1に、接続管体50の管軸線Acに対してユニオンナット60のナット軸線Anを相対的に傾ける。接続管体50に対してユニオンナット60を相対的に傾けると、ナット軸線Anが延びているナット軸方向において、接続管体50における管本体51の曲がりの内側に形成されている第1ユニオン鍔部52aとユニオンナット60の内鍔部63との距離に対して、接続管体50における管本体51の曲がりの外側に形成されている第2ユニオン鍔部52bとユニオンナット60の内鍔部63との距離が大きくなる。言い換えると、曲がりの外側の第2ユニオン鍔部52bよりも曲がりの内側の第1ユニオン鍔部52aの方が、ナット軸方向において、ユニオンナット60の内鍔部63に対して相対的に近づく。
【0052】
前述したように、接続管体50における鍔無部55の外径寸法は、ユニオンナット60における内鍔部63の内径寸法d(
図7)より小さいため、接続管体50の鍔無部55に限っては、ユニオンナット60の内鍔部63の内周側を容易に通過させることができる。また、前述したように、
図9に示すように、接続管体50の管軸線Acに対してユニオンナット60のナット軸線Anを傾けた結果、ユニオンナット60の径方向における第1ユニオン鍔部52aの外縁と第2ユニオン鍔部の外縁との間の距離D1が、ユニオンナット60の内鍔部63の内径寸法dよりも短くなる。従って、ユニオンナット60に対して接続管体50が傾いていれば、ユニオンナット60の内鍔部63の内周側を接続管体50のユニオン鍔部52を通過させることができる。
【0053】
次に、
図10に示すように、ユニオンナット60に対して接続管体50を傾けた状態で、接続管体50をナット軸方向で且つ接続管体50のソケット54がユニオンナット60から離れる側X1に、接続管体50をユニオンナット60に対して相対移動させる。この結果、ナット軸方向において、ユニオンナット60の内鍔部63に対して相対的に近い第1ユニオン鍔部52aがユニオンナット60の内鍔部63の内周側を通過する。この際、
図12に示すように、ナット軸方向視において、第2ユニオン鍔部52bの全外縁がユニオンナット60の内鍔部63の内周側に位置している。このため、このまま、接続管体50のソケット54がユニオンナット60から離れる側X1に、接続管体50をユニオンナット60に対して相対移動させることで、
図11に示すように、第2ユニオン鍔部52bがユニオンナット60の内鍔部63の内周側を通過して、接続管体50からユニオンナット60が外れる。
【0054】
次に、接続管体50に対するユニオンナット60の取り付け作業について説明する。
【0055】
この場合、
図11に示すように、接続管体50にユニオンナット60が装着されていない状態で、取り外し作業時と同様に、接続管体50の管軸線Acを含む仮想平面内で、接続管体50の管軸線Acに対してユニオンナット60のナット軸線Anを所定角度θ傾ける。接続管体50に対してユニオンナット60が傾いている状態では、曲がりの内側の第1ユニオン鍔部52aよりも曲がりの外側の第2ユニオン鍔部52bの方が、ナット軸方向において、ユニオンナット60の内鍔部63に対して相対的に近い。
【0056】
次に、ユニオンナット60に対する接続管体50の傾きを維持したまま、
図10及び
図9に示すように、接続管体50をナット軸方向で且つ接続管体50のソケット54がユニオンナット60に近づく側に、接続管体50をユニオンナット60に対して相対移動させる。この結果、まず、ナット軸方向において、ユニオンナット60の内鍔部63に対して相対的に近い第2ユニオン鍔部52bがユニオンナット60の内鍔部63の内周側を通過し、その後、第1ユニオン鍔部52aがユニオンナット60の内鍔部63の内周側を通過して、接続管体50に対してユニオンナット60が装着される。
【0057】
以上のように、本実施形態では、接続管体50の製造後であっても、この接続管体50に対してユニオンナット60を着脱させることができる。このため、このユニオン管継手は、ユニオンナット60の組付けのために接続管体50の製造手順が制約されず、生産性を向上させることができる。
【0058】
次に、比較例としてのユニオン管継手について説明する。
【0059】
比較例のユニオン管継手は、上記実施形態のユニオン管継手70における接続管体50のユニオン鍔部の構成が異なっている。
図13に示すように、比較例のユニオン鍔部も、以上の実施形態と同様に、管本体51の接続端部51aの外周で、管軸線Acを基準にして対称な位置に配置されている第1ユニオン鍔部52aと第2ユニオン鍔部52cとを有している。管軸線Acを中心とした周方向における第1ユニオン鍔部52aの長さは、以上の実施形態の第1ユニオン鍔部52aの長さと同じである。一方、周方向における第2ユニオン鍔部52cの長さは、第1ユニオン鍔部52aの長さと同じで、上記実施形態の第2ユニオン鍔部52bの長さより長い。
【0060】
上記比較例のユニオン管継手において、接続管体50cに対するユニオンナット60の取り外し作業する場合も、上記実施形態と同様に、まず、ユニオンナット60に対して接続管体50cを相対的に傾ける。次に、ユニオンナット60に対して接続管体50cを傾けた状態で、接続管体50cをナット軸方向で且つ接続管体50cのソケット54がユニオンナット60から離れる側に、接続管体50cをユニオンナット60に対して相対移動させる。この結果、まず、第1ユニオン鍔部52aがユニオンナット60の内鍔部63の内周側を通過する。この際、
図13に示すように、ナット軸方向視において、第2ユニオン鍔部52cの外縁のうちで、周方向の両端部における外縁がユニオンナット60の内鍔部63の外周側に位置している。このため、このまま、接続管体50cのソケット54がユニオンナット60から離れる側に、接続管体50cをユニオンナット60に対して相対移動させても、第2ユニオン鍔部52cがユニオンナット60の内鍔部63に引っ掛かる。このため、この比較例では、ユニオンナット60に対して接続管体50cを相対的により傾ける必要がある。
【0061】
ユニオンナット60に対して接続管体50cを大きく傾けるためには、ユニオンナット60の内鍔部63と接続管体50cの管本体51の外周面との接触を回避するために、前述した特許文献1のように、接続管体50cの管本体51に、外径及び内径が小さくなる絞部を形成する必要がある。
【0062】
よって、比較例では、接続管体50cに対してユニオンナット60の着脱を円滑に行うことが難しい上に、ユニオン管継手の製造コストがかさんでしまう。これに対して、本実施形態では、先に説明したように、接続管体50に対してユニオンナット60の着脱を円滑に行うことできる上に、接続管体50の管本体51に絞部を形成する必要がないためユニオン管継手70の製造コストを抑えることができる。
【0063】
ここで、仮に、接続管体50における管本体51の曲がりの内側に周方向の長さが短い第2ユニオン鍔部52bを形成し、曲がりの外側に周方向の長さが長い第1ユニオン鍔部52aを形成したとする。この場合も、接続管体50からユニオンナット60を外す際には、周方向の長さが短く、ユニオンナット60の内鍔部63に引っ掛かりにくい第2ユニオン鍔部52bを、第1ユニオン鍔部52aの後からユニオンナット60の内鍔部63の内周側を通過させるとする。これを実現させるには、接続管体50の管本体51の曲がりを狭める側、つまり上記実施形態と逆側に、接続管体50の管軸線Acに対してユニオンナット60のナット軸線Anを相対的に傾けるとことになる。この場合、接続管体50の接続端部51aと反対側の端部に形成されているソケット54がユニオンナット60に近づき、条件によってはソケット54がユニオンナット60等に接触する。よって、接続管体50における管本体51の曲がりの内側に第2ユニオン鍔部52bを形成し、曲がりの外側に第1ユニオン鍔部52aを形成すると、接続管体50の管軸線Acに対してユニオンナット60のナット軸線Anを十分に傾けることができない場合が生じる。
【0064】
一方、本実施形態では、接続管体50に対してユニオンナット60を着脱させる際には、前述したように、接続管体50の管軸線Acを含む仮想平面内で、接続管体50の管本体51の曲がりを広げる側M1に、接続管体50の管軸線Acに対してユニオンナット60のナット軸線Anを相対的に傾ける。この場合、接続管体50の接続端部51aと反対側の端部に形成されているソケット54がユニオンナット60から遠ざかるため、ソケット54がユニオンナット60等に接触するおそれがない。しかも、接続管体50の管本体51の曲がりを広げる側M1に、接続管体50の管軸線Acに対してユニオンナット60のナット軸線Anを相対的に傾けることは、作業者の感覚にも合っている。
【0065】
よって、本実施形態では、この観点からも、接続管体50に対してユニオンナット60の着脱を円滑に行うことできる。
【0066】
「第二実施形態」
次に、本発明に係るユニオン管継手の第二実施形態について、
図14を参照して説明する。
【0067】
本実施形態のユニオン管継手70Xも、キャンドモータ型人工心臓ポンプに使用されるものである。このユニオン管継手70Xは、第一実施形態のユニオン管継手70における接続管体50の代わりに、接続管体50xを使用したものである。
【0068】
接続管体50xは、その管本体51xが直管状である。また、管本体51xで接続端部51aと反対側である他端部51bには、可撓性を有する人工血管57が接続されている。人工血管57は、その先端部57aが管本体51xの他端部51bの外周に嵌合している。さらに、この人工血管57の先端部57aは、この先端部57aの外周側から管本体51xに嵌合するスリーブ58によって、管本体51xに固定されている。
【0069】
本実施形態のユニオン管継手70Xも、接続管体50xの接続端部51aに第1ユニオン鍔部52a及び第2ユニオン鍔部52bが形成され、しかも、周方向における第2ユニオン鍔部52bの長さは、第1ユニオン鍔部52aの長さよりも短い。
【0070】
よって、本実施形態でも第一実施形態と同様に、接続管体50xに対してユニオンナット60の着脱を円滑に行うことできる上に、接続管体50xの管本体51に絞部を形成する必要がないためユニオン管継手の製造コストを抑えることができる。
【0071】
「変形例」
第一実施形態では、接続管体50の他端部にソケット54を形成している。しかしながら、このソケット54を、第一実施形態の吐出側管体20oの吐出開口22側における接続端部25と同一構成のものに変更してもよい。つまり、
図15に示すように、接続管体50の他端部の外周に、雄ネジ54aを形成してもよい。このように変更すると、この接続管体50の他端部に、ユニオンナット60を用いて、さらに、別の接続管体80を接続することができる。
【0072】
以上の各実施形態は、人工心臓ポンプ10の吐出側に、本発明に係るユニオン管継手を採用したものである。しかしながら、人工心臓ポンプの吸込側に、本発明に係るユニオン管継手を採用してもよい。
【0073】
また、以上の各実施形態では、ポンプケーシング20の管体を第1管体とし、ポンプケーシング20の管体に接続される接続管体50にユニオン鍔部52を形成して、この接続管体50を第2管体としている。しかしながら、ポンプケーシング20の管体に接続される接続管体を第1管体とし、ポンプケーシング20の管体にユニオン鍔部を形成して、ポンプケーシング20の管体を第2管体としてもよい。
【0074】
また、以上の各実施形態では、ポンプケーシング20の管体と接続管体50との接続構造としてインロー構造を採用している。しかしながら、ポンプケーシング20の管体と接続管体50との接続構造として、ポンプケーシング20の管体の端面と接続管体50の端面と突き合わされる突き合わせ構造を採用してもよい。
【0075】
また、以上の各実施形態では、キャンドモータ型人工心臓ポンプに本発明に係るユニオン管継手を採用したものであるが、他の流体機械に本発明に係るユニオン管継手を採用してもよいし、単に、管体相互の接続に本発明に係るユニオン管継手を採用してもよい。