特許第6192007号(P6192007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6192007マイクロデバイス及びバイオアッセイシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192007
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】マイクロデバイス及びバイオアッセイシステム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20170828BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20170828BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   C12M1/00
   C12M1/34 A
   G01N37/00 101
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-157665(P2013-157665)
(22)【出願日】2013年7月30日
(65)【公開番号】特開2015-27266(P2015-27266A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2016年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】502100415
【氏名又は名称】マイクロ化学技研株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501061319
【氏名又は名称】学校法人 東洋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】田澤 英克
(72)【発明者】
【氏名】金子 律子
【審査官】 坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−110529(JP,A)
【文献】 特開2010−023710(JP,A)
【文献】 特表2007−517990(JP,A)
【文献】 特開2006−035111(JP,A)
【文献】 Journal of Micromechanics and Microengineering,2006年,Vol.16,p.419-424
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12M 1/34
G01N 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地もしくは薬液の潅流中で細胞を培養するためのマイクロチップを有する培養部と、培地もしくは薬液に含まれる気体の少なくとも一部を捕捉するためのマイクロデバイスとを備えるバイオアッセイシステムであって、
該マイクロデバイスは、
培地もしくは薬液流入口と、
培地もしくは薬液流出口と、
該流入口と流出口の間に備えられた、疎水性表面を有する多孔質の隔壁を備え
該マイクロデバイスは該培養部の上流に設置されることを特徴とする、バイオアッセイシステム
【請求項2】
該隔壁の断面積が、培地もしくは薬液供給流路の断面積の1.1〜100倍である、請求項1記載のバイオアッセイシステム
【請求項3】
該隔壁の疎水性表面が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、及びシリコーン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の疎水性ポリマーから成ることを特徴とする、請求項1又は2記載のバイオアッセイシステム
【請求項4】
該隔壁が、環状ポリオレフィン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリジメチルシロキサン、ポリテトラフロロエチレン、及びポリエーテルエーテルケトン/ポリテトラフロロエチレンアロイからなる群より選ばれる少なくとも一種から成る、請求項3記載のバイオアッセイシステム
【請求項5】
該隔壁の細孔径が0.1μm〜20μmである、請求項1〜4のいずれか1項記載のバイオアッセイシステム
【請求項6】
培地もしくは薬液供給用流路及び試料供給用流路のいずれか一方を培養部につなぐ流路切り替えバルブをさらに備える、請求項1〜5のいずれか1項記載のバイオアッセイシステム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創薬やバイオテクノロジーの研究に使われ、特に細胞を培養しその機能や応答を評価する際に用いられる、マイクロデバイス及びバイオアッセイシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微細加工技術を応用した、マイクロチップと呼ばれる細胞培養用のデバイスの開発が進んでいる。該デバイスは、ガラス、シリコンウェハー、PDMSもしくはその他樹脂基板内に作製されたマイクロ流路を備え、該流路内に培地をμL/分のオーダーの流速で流しながら細胞を培養する。サンプルや試薬および廃液の微量化が可能であるとともに、反応部の比界面積が大きいため、細胞の応答を効率よく行うことが可能である。また、培養部もしくは流路下部に測定器を設置することにより、リアルタイムでの評価を可能としている。
【0003】
マイクロチップを用いた実験で、最も大きい問題の一つが、培地中に含まれる気体の一部がマイクロ流路内において気泡となって、流路を塞いだり、培養された細胞をマイクロチップから剥がしてしまうということである。
【0004】
これを解決するために、マイクロ流路の上側に、端部が大気に開放された撥水性の表面を有する複数の孔を備える気泡分離部を設ける方法(特許文献1)、マイクロチップに液体を供給する供給部に、貯留されている液体の液面より高い位置から液体を滴下させて、液面の上側に空気を除いて脱気する脱気部を備える方法(特許文献2)、及び培地供給用流路と連通したチャンバーを設け、該チャンバー内で培地中の泡をチャンバー上方へと移動させて流路から除く方法(特許文献3、特許文献4)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-223118号公報
【特許文献2】特開2011-163939号公報
【特許文献3】特開2013-106595号公報
【特許文献4】特開2008-82961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記第1の方法は、孔表面の接触角や、孔の大きさの制御が難しい。第2及び第3の方法は、共に一定量の液体を貯留する必要があり、流路の内部容積を大きく増加させるため、マイクロ流路で実験する効果が損なわれるだけでなく、該貯留部の加工も複雑である。
【0007】
そこで、本発明は流路の内部容積を大きく増加させることなく、且つ、加工も容易である、マイクロ流路での泡の発生を防止するためのマイクロデバイス及び該マイクロデバイスを備えるバイオアッセイシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、マイクロチップ内での細胞培養において、培地もしくは薬液に含まれる気体の少なくとも一部を捕捉するためのマイクロデバイスであって、
培地もしくは薬液流入口と、
培地もしくは薬液流出口と、
該培地もしくは薬液流入口と流出口の間に備えられた、疎水性表面を有する多孔質の隔壁を備えることを特徴とする、マイクロデバイスである。
【0009】
また、本発明は、上記マイクロデバイスを備えるバイオアッセイシステムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、泡を流路外へと除き、もしくは泡貯留部を別途設けることなく、隔壁に付着等させた状態で流路内に維持し続ける点で、従来技術の方法と異なる。培地供給流路内に隔壁を導入するだけなので、加工も容易であり、且つ、内部容積が大きく増えることもない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のマイクロデバイスの一態様を示す断面図である。
図2】本発明のマイクロデバイスの他の態様を示す断面図である。
図3】本発明のマイクロデバイスを備えるバイオアッセイシステムの概略図である。
図4】本発明のマイクロデバイスを備えるバイオアッセイシステムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。図中同一の機能又は類似の機能を有するものについては、同一又は類似の符号を付して説明を省略する。但し、図面は模式的なものであるので、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0013】
図1は、本発明のマイクロデバイスの一態様の、培地もしくは薬液(以下、まとめて「培地」という)流路に直角方向の断面図である。該マイクロデバイス10は培地流入口10aと、培地流出口10bと、疎水性表面を有する多孔質の隔壁11とを備え、培地が図上方の矢印の方向に流れる。本態様では、培地流入口10a及び流出口10bの口径は培地流路の口径と略同じであり、例えばフェラルを用いて、デバイス10を培地流路に接続することができる。或いは、培地流路に隔壁11を接着して、デバイス10がバイオアッセイシステムと一体化された形態としてもよい。図1において、白丸は気泡を、中黒丸は何等かの不溶性夾雑物を模式的に表す。同図は、隔壁11の培地流入口側表面に付着されている様子を概念的に表しているが、必ずしも表面である必要はなく、内部であってもよい。驚くことに、泡を流路外へと除き、もしくは泡貯留部を別途設けずとも、培養部での気泡の発生を防止できることが確認された。
【0014】
図2は、隔壁11の断面積が培地流路の断面積よりも大きい場合の態様を示す断面図である。このように隔壁11の断面積を広くして、培地の流れを広げることによって、培地流体の圧力が低下し、気泡が放出され易くなる効果がある。但し、培地供給用流路の内部容積を増やさないことが好ましいので、隔壁11の断面積は、培地供給流路の断面積の1.1〜100倍が好ましく、10〜70倍であることがより好ましい。また、隔壁11の断面形状は、必ずしも円形である必要はなく、例えば四角形等、任意の形状であってよい。また、図2において、培地流入口10aと隔壁11との距離、及び、隔壁11の距離と培地流出口10bとの距離は、隔壁11を固定することができる最も短い距離とすることが好ましい。
【0015】
隔壁11は、疎水性表面を備え、これにより培地内に存在し、もしくは溶存されている気体の少なくとも一部を泡として捕捉して下流に流れないようにすることができる。そのような疎水性表面は、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、及びシリコーン系樹脂からなる群より選ばれる疎水性ポリマーで構成することができる。隔壁全体が疎水性ポリマーである必要はなく、疎水化処理によって、疎水性ポリマー層が表面に形成されたステンレス、チタン等の金属、ガラスもしくはセラミックを用いることもできる。微細加工が可能で、使い捨てもできる点から、好ましくは、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフロロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン/ポリテトラフロロエチレンアロイ(PAT)、又はポリジメチルシロキサン等の疎水性ポリマーの多孔質体が使用される。
【0016】
隔壁11の細孔径は0.1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。孔径が前記下限値未満であると、流体抵抗が高くなる傾向がある。細孔径の上限については特に限定はないが、培地に混入する可能性がある夾雑物を除去する点で、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
【0017】
デバイス10は、培地流路を形成する管状素材、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)に隔壁11を接着するか、隔壁11を、培地流入口側と流出口側との双方側から挟んでネジ等により両側から押し付けて固定する手段を用いて作ることができる。接着には、各種接着剤、例えばUV硬化性樹脂からなる接着剤を用いることができる。また、押し付けて固定する手段としては、例えば市販のフィルターホルダー、又はコネクターを用いることができる。
【0018】
本発明のマイクロデバイス10は、例えば図3に示すバイオアッセイシステム1において好適に用いられる。同システムにおいて、ポンプ33によって、培地が培地供給用流路L3、マイクロデバイス10、次いで流路L2を経由して、マイクロ流路21aが表面に形成された基板(マイクロチップ)21を備える培養部20へと送られた後、廃液流路L4を通って、廃液回収部35で回収される。培地の流速は、通常10μL/分以下、好ましくは1μL/分以下である。
【0019】
一方、細胞等の試料は、例えばシリンジ31から試料供給用流路L1を経由して培養部20へと送られる。培地供給用流路L3及び試料供給用流路L1は、流路切り替えバルブ13によって、いずれか一方が培養部20につながれる。該流路切り替えバルブ13は、隔壁11を通過した培地の流入口、試料流入口、及び流出口の少なくとも3つのポートを備え、バルブを切り替えていずれかの流入口ポートと流出口ポートとをつなぐことによって、内部流路が形成されるようになっていれば、任意の形態のものを使用することができる。内部容積を少なくするため流路内径が0.05〜0.8mm程度のバルブを使用することが好ましい。
【0020】
マイクロデバイス10は、流路切り替えバルブ13と一体化されていてもよく、この場合隔壁11は流路切り替えバルブ13と培地流入口10aの間に備えられ、培地流出口10bが、切り替えバルブ13の一ポートと接続される。
【0021】
図4は、隔壁11と流路切り替えバルブ13とが一体化されたマイクロデバイスを備えるバイオアッセイシステムの斜視図である。隔壁は流路切り替えバルブ13と培地供給用流路L3との間の、図中11で示す位置に内蔵されている。基台60上に配置された培養部20は、基板21と、基板21上に配置されたマイクロ流路21aに対応する箇所に開口部が設けられたフレーム状の固定具23と、固定具23を基台60に取り付ける複数のネジ27a…27dとからなる。固定具23の淵には、マイクロ流路21aにつながる複数の液供給口29a、29b、…29hを供える。なお、マイクロ流路21aの経路パターンは、直線状に制限されることなく用途に応じて種々のパターンを用いることができる。
【0022】
基板21の材質については、細胞培養に悪影響を与えるものでなければ特に制限はされず種々の材料を用いることができる。一般的にはガラス、シリコンウェハー、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、環状オレフィンポリマー、ポリスチレン等の樹脂を用いることができる。マイクロ流路21aの内径は細胞の大きさを考慮すると、直径1mm以下が好ましく、特に100〜500μmが望ましい。
【0023】
本実施形態に使用できる細胞の種類は、マイクロ流路に接着する性能を持つ細胞であれば特に限定はされない。
【0024】
また、薬剤アッセイなどで刺激物を投与する場合、培地供給用流路L3を他のチューブに差し替え、薬剤の入っているシリンジを接続することにより溶液交換を行うことができる。
【0025】
他の態様において、バイオアッセイシステムは、並列に配置された複数の流路切り替えバルブ13を備えても構わない。また培養部20と流路切り替えバルブ13の間にさらに流路切り替えバルブ13を直列に配置しても構わない。培養部20への通液をより確実に止めることができるからである。また培養部20の廃液流路L4側にもマイクロデバイス10を設けても構わない。
【0026】
[実施例]
本発明のマイクロデバイス及びバイオアッセイシステムを用いて、以下の手順により、RF/6A135細胞を培養した。
【0027】
(イ)図2に示すマイクロデバイスを備える、図3に示すバイオアッセイシステムを用意した。隔壁11は、ポリエーテルエーテルケトン製のフリット(商品名:アップチャーチ社フリット A-706)から成り、内径0.64mm、厚み0.16mmであり、隔壁11と培地供給用流路の断面積比は64:3であった。これを、培地供給用流路にコネクターによる押し付けによって固定した。
流路切り替えバルブ13としては、フッ素樹脂を用いて製造したものを用いた。
マイクロチップ21としては、幅0.3mm、深さ0.1mm、長さ60mmの直線状チャネルを持ち、チャネル内はコラーゲンにて予めコーティングしたものを用いた。
【0028】
(ロ)次に、試料供給用流路L1と流路L2が繋がるよう、マイクロデバイス10の流路切り替えバルブ13が所定の位置にあることを確認した後、試料供給用流路L1より10個/mL程度の濃度の細胞懸濁液を、流路切り替えバルブ13を介して基板21に注入した。注入後、細胞を2時間静置することにより細胞をチャネル壁面に接着させた。
【0029】
(ハ)細胞がチャネル壁面に接着したのを確認した後、マイクロデバイス10の流路切り替えバルブ13が所定の位置にあることを確認して、培地供給用流路L3に繋がれているポンプ33を用いて培地を0.1μL/分の流速で灌流させた。48時間後、マイクロチップ21を観察したところ、気泡は認められなかった。
【0030】
[比較例]
マイクロデバイス10を備えないことを除き、実施例と同じバイオアッセイシステムを用いて、培地を0.1μL/分の流速で潅流して、RF/6A135細胞を培養した。約1時間後、マイクロチップ内に気泡が確認され、RF/6A135細胞の剥がれが観察された。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、マイクロチップを用いた細胞培養において培地もしくは薬液を培養部に通液する際に、気泡や夾雑物の流入を防止することができるマイクロデバイス及びバイオアッセイシステムが提供される。
【符号の説明】
【0032】
1:バイオアッセイシステム
10:マイクロデバイス
11:隔壁
13:流路切り替えバルブ
20:培養部
21:基板(マイクロチップ)
21a:マイクロ流路
31:シリンジ
33:ポンプ
35:廃液回収部
L1:試料・薬液供給用流路
L2:流路
L3:培地供給用流路
L4:廃液流路
図1
図2
図3
図4