【文献】
Nat. Biotechnol.,2003年,vol.21, no.7,p.778-84
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0032】
I.定義
本明細書において、「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下で定義するように、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、それらの同じアミノ酸配列を含んでいてもよいし、アミノ酸配列変化を含んでいてもよい。幾つかの実施態様では、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下である。幾つかの実施態様では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
【0033】
「親和性」は、分子(例えば抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)の間の非共有相互作用を合計した力を指す。別段指示がない限り、本明細書で使用する場合、「結合親和性」は、結合ペアのメンバー(例えば抗体と抗原)の間の1:1の相互作用を反映する、固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載のものを含めた、当技術分野で知られている慣用法によって測定することができる。結合親和性の測定に関する具体的な例示的及び代表的な実施態様を以下に記載する。
【0034】
「親和性成熟」抗体は、変更を有さない親抗体と比較して、1つ又は複数の高頻度可変領域(HVR)中に1つ又は複数の変更を有し、そうした変更が抗原に対する抗体の親和性の改善をもたらす、抗体を指す。
【0035】
用語「抗Ly6E抗体」及び「Ly6Eに結合する抗体」は、抗体が、Ly6Eのターゲティングにおいて、診断薬及び/又は治療薬として有用であるように、十分な親和性を有してLy6Eを結合することができる抗体を指す。一実施態様では、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又はスキャッチャード解析、又は例えばBiacoreのような表面プラズモン共鳴によって測定される無関係の非Ly6Eタンパク質への抗Ly6E抗体の結合の程度は、Ly6Eに対する抗体の結合の約10%未満である。ある種の実施態様では、Ly6Eに結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば10
−8M以下、例えば10
−8Mから10
−13M、例えば10
−9Mから10
−13M)の解離定数(Kd)を有する。ある種の実施態様では、抗Ly6E抗体は、様々な種のLy6Eの間で保存されている、Ly6Eのエピトープに結合する。
【0036】
本明細書では、用語「抗体」は、広義で使用され、これらに限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)及び抗体断片を含めた様々な抗体構造を、それらが所望の抗原結合活性を示す限り、包含する。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「抗体薬物コンジュゲート」(ADC)は、用語「イムノコンジュゲート」と同等である。
【0038】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合する、インタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、これらに限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2;ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えばscFv);及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0039】
基準抗体として「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいて、その抗原への基準抗体の結合を50%以上ブロックする抗体を指し、逆に、競合アッセイにおいて、基準抗体は、その抗原への抗体の結合を50%以上ブロックする。例示的な競合アッセイを本明細書で提供する。
【0040】
用語「がん」及び「癌」は、典型的には無秩序な細胞成長/増殖を特徴とする、哺乳動物の生理的条件を指すか又は説明する。がんの例としては、これらに限定されないが、癌腫、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫及び白血病が挙げられる。そうしたがんのより特定の例としては、Ly6Eを過剰発現するがんが挙げられ、これには、例えば、乳がん及び/又は転移性乳がん(Her2陰性乳がん及び/又はトリプルネガティブ乳がんを含む)、膵臓がん、結腸がん、結腸直腸がん、黒色腫、卵巣がん、非小細胞肺がん(扁平及び/又は非扁平の何れか)、胃がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がん、神経膠腫、子宮頚がん、肝臓がん、膀胱がん、ヘパトーム、子宮内膜癌又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝癌、白血病及び他のリンパ増殖性障害、並びに様々なタイプの頭頚部がんが含まれ得る。
【0041】
用語「キメラ」抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部は特定の供給源又は種に由来するが、重鎖及び/又は軽鎖の残部は異なる供給源又は種に由来する抗体を指す。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「細胞傷害剤」は、細胞機能を阻害若しくは妨害する及び/又は細胞死若しくは細胞破壊を引き起こす物質を指す。細胞傷害剤としては、これらに限定されないが、放射性同位元素(例えば、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212及びLuの放射性同位元素);化学療法剤又は化学療法薬(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤);成長阻害剤;酵素及びその断片、例えば核酸分解酵素;抗生物質;毒素、例えば、細菌、真菌、植物又は動物起源の小分子毒素又は酵素的に活性な毒素(それらの断片及び/又は変異体を含む);並びに以下に開示する様々な抗腫瘍性又は抗がん性の薬剤が挙げられる。
【0043】
「エフェクター機能」は、抗体アイソタイプによって異なる、抗体のFc領域に起因し得る生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の上方制御、並びにB細胞活性化が挙げられる。
【0044】
薬剤、例えば薬学的製剤の「有効量」は、所望の治療的又は予防的な結果を達成するのに必要な投薬量及び期間での有効な量を指す。
【0045】
用語「エピトープ」は、抗体が結合する、抗原分子上の特定の部位を指す。
【0046】
本明細書では、用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するのに使用される。この用語には、天然配列Fc領域及び変異体Fc領域が含まれる。一実施態様では、ヒトIgG重鎖のFc領域は、Cys226又はPro230から重鎖のカルボキシル末端まで延びる。しかし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在しても、存在しなくてもよい。本明細書で別段の指定がない限り、Fc領域又は定常領域のアミノ酸残基の番号付けは、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD、1991に記載されているような、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。
【0047】
「フレームワーク」又は「FR」は、高頻度可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に、4つのFRドメイン、すなわちFR1、FR2、FR3及びFR4から成る。したがって、HVR配列及びFR配列は、一般に、VH(又はVL)中の次の配列、FR1−H1(L1)−FR2−H2(L2)−FR3−H3(L3)−FR4に出現する。
【0048】
用語「全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」は、本明細書では、互換的に使用されて、天然の抗体構造と実質的に類似している構造を有する、又は本明細書で定義したFc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0049】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞系統」及び「宿主細胞培養」は、互換的に使用されて、外来性の核酸が導入された細胞(そうした細胞の後代を含む)を指す。宿主細胞には、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これには、初代形質転換細胞、及び継代数とは関係なく、それに由来する後代が含まれる。後代は、核酸の内容が親細胞と完全に同一でなくてもよく、変異を含んでいてもよい。元の形質転換細胞においてスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物活性を有する変異後代は、本明細書に含まれる。
【0050】
「ヒト抗体」は、ヒト若しくはヒト細胞によって産生される、又はヒト抗体レパートリー若しくは他のヒト抗体をコードする配列を利用する非ヒトの供給源に由来する抗体のものに対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体の本定義は、非ヒトの抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。
【0051】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHのフレームワーク配列の選択において、最も一般的に存在するアミノ酸残基に相当するフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。一般に、配列のサブグループは、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、NIH Publication 91−3242、Bethesda MD(1991)、1−3巻と同様のサブグループである。一実施態様では、VLについては、サブグループは、上述のKabatらと同様のサブグループカッパIである。一実施態様では、VHについては、サブグループは、上述のKabatらと同様のサブグループIIIである。
【0052】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基及びヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある種の実施態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、及び典型的には2つの可変ドメインのすべてを実質的に含み、すべて又は実質的にすべてのHVR(例えばCDR)は、非ヒト抗体のものに対応し、すべて又は実質的にすべのFRは、ヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意選択的に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。抗体、例えば非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化された抗体を指す。
【0053】
本明細書で使用する場合、用語「高頻度可変領域」又は「HVR」は、配列が高頻度可変性である、及び/又は構造的に定められたループ(「高頻度可変ループ」)を形成する、各抗体可変ドメイン領域を指す。一般に、天然の4鎖抗体は、6つのHVR、すなわちVH中の3つ(H1、H2、H3)及びVL中の3つ(L1、L2、L3)を含む。HVRは、一般に、高頻度可変ループ由来及び/又は「相補性決定領域」(CDR)由来のアミノ酸残基を含み、後者は、配列変動性が最も高く、及び/又は抗原の認識に関与する。例示的な高頻度可変ループは、アミノ酸残基26−32(L1)、50−52(L2)、91−96(L3)、26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3)で生じる(Chothia及びLesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。例示的なCDR(CDR−L1、CDR−L2、CDR−L3、CDR−H1、CDR−H2及びCDR−H3)は、L1の24−34、L2の50−56、L3の89−97、H1の31−35B、H2の50−65及びH3の95−102のアミノ酸残基で生じる(Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))。VH中のCDR1を除いては、CDRは、一般に、高頻度可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。CDRは、抗原と接触する残基である、「特異性決定残基」又は「SDR」も含む。SDRは、短縮型CDR又はa−CDRと呼ばれるCDR領域内に含まれる。例示的なa−CDR(a−CDR−L1、a−CDR−L2、a−CDR−L3、a−CDR−H1、a−CDR−H2及びa−CDR−H3)は、アミノ酸残基L1の31−34、L2の50−55、L3の89−96、H1の31−35B、H2の50−58及びH3の95−102で生じる(Almagro及びFransson、Front.Biosci.13:1619−1633(2008)を参照されたい)。別段指示がない限り、可変ドメインのHVR残基及び他の残基(例えばFR残基)は、本明細書では、上述のKabatらに従って番号付けする。
【0054】
「イムノコンジュゲート」は、これに限定されないが、細胞傷害剤を含めた、1つ又は複数の異種分子(複数可)にコンジュゲートした抗体である。イムノコンジュゲートは、用語「抗体薬物コンジュゲート」(ADC)と同等である。
【0055】
「個体」又は「対象」は哺乳動物である。哺乳動物としては、これらに限定されないが、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)が挙げられる。ある種の実施態様では、個体又は対象はヒトである。
【0056】
「単離」抗体は、その天然環境の構成成分から分離された抗体である。幾つかの実施態様では、抗体は、例えば電気泳動(例えば、SDS−PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)によって測定した時に95%を越える又は99%の純度に精製される。抗体純度の評価方法の総説については、例えば、Flatmanら、J.Chromatogr.B848:79−87(2007)を参照されたい。
【0057】
「単離」核酸は、その天然環境の構成成分から分離された核酸分子を指す。単離核酸としては、核酸分子を通常含む細胞に含まれる核酸分子が挙げられるが、核酸分子は、染色体外に、又はその天然の染色体上の位置とは異なる染色体上の位置にも存在する。
【0058】
「抗Ly6E抗体をコードする単離核酸」は、抗体の軽鎖及び重鎖(又はその断片)をコードする1種又は複数の核酸分子を指す。これには、単一のベクター又は別々のベクター中のそうした核酸分子(複数可)が含まれ、そうした核酸分子(複数可)は、宿主細胞の1か所又は複数の位置に存在する。
【0059】
本明細書で使用する場合、用語「Ly6E」は、細胞におけるLy6Eの前駆タンパク質のプロセシングによって生じる、任意の天然の成熟Ly6Eを指す。この用語には、別段指示がない限り、霊長類(例えば、ヒト及びカニクイザル又はアカゲザル)などの哺乳動物並びにげっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含めた任意の脊椎動物供給源由来のLy6Eが含まれる。この用語には、天然に存在するLy6Eの変異体、例えば、スプライス変異体又は対立遺伝子変異体も含まれる。シグナル配列(アミノ酸1−20=シグナル配列)を有する例示的なヒトLy6Eの前駆タンパク質のアミノ酸配列を配列番号1に示す。例示的なヒト成熟Ly6Eのアミノ酸配列を、配列番号38に示す。例示的なカニクイザルLy6Eのアミノ酸1−131の配列を、配列番号2に示す。例示的なカニクイザル成熟Ly6Eのアミノ酸配列を、配列番号39に示す。例示的なラットLy6E前駆体(シグナル配列のアミノ酸1−26を有する)のアミノ酸配列及び成熟配列を、それぞれ配列番号37及び42に示す。例示的なマウスLy6E前駆体(シグナル配列のアミノ酸1−26を有する)のアミノ酸配列及び成熟配列を、それぞれ配列番号36及び41に示す。
【0060】
用語「Ly6E陽性のがん」は、その表面でLy6Eを発現する細胞を含むがんを指す。細胞が表面でLy6Eを発現するかどうかの測定においては、Ly6E mRNAの発現が、細胞表面でのLy6E発現と相関すると考えられる。幾つかの実施態様では、Ly6EmRNAの発現は、in situハイブリダイゼーション及びRT−PCR(定量的RT−PCRを含む)から選択される方法によって測定する。あるいは、細胞表面でのLy6Eの発現は、例えば、Ly6Eに対する抗体を使用して、例えば免疫組織化学、FACSなどの方法において測定することができる。幾つかの実施態様では、Ly6E陽性がんは、乳がん、転移性乳がん(Her2陰性乳がん及び/又はトリプルネガティブ乳がんを含む)、膵臓がん、結腸がん、結腸直腸がん、黒色腫、卵巣がん、非小細胞肺がん(扁平及び/又は非扁平の何れか)又は胃がんであって、これらのそれぞれが高レベルのLy6E発現を示すがんを意味する。
【0061】
用語「Ly6E陽性細胞」は、その表面にLy6Eを発現するがん細胞を指す。
【0062】
本明細書で使用する場合、用語「モノクローナル抗体」は、例えば天然に存在する変異を含む又はモノクローナル抗体調製物の産生の間に生じる、あり得る変異体抗体(そうした変異体は、一般に少量存在している)を除いては、実質的に均一な抗体の集団(すなわち、集団を構成する個々の抗体が同一である及び/又は同じエピトープに結合する)から得られる抗体を指す。様々な決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物と対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原の単一決定基に対するものである。したがって、修飾語句「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られたという抗体の性質を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきでない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、これらに限定されないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン座のすべて又は一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含めた種々の手法によって作製することができ、モノクローナル抗体を作製するためのそうした方法及び他の例示的方法は、本明細書に記載されている。
【0063】
「ネイキッド抗体(naked antibody)」は、異種部分(例えば細胞傷害性部分)又は放射標識にコンジュゲートしていない抗体を指す。ネイキッド抗体は、薬学的製剤に存在してもよい。
【0064】
「天然の抗体」は、多様な構造を有する、天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然のIgG抗体は、ジスルフィド結合した2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に、各重鎖は、可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)、続いて3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)を有する。同様にN末端からC末端に、各軽鎖は、可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)、続いて定常軽鎖(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプのうちの1つに帰属させることができる。
【0065】
用語「添付文書」は、治療用製品の商業的なパッケージに慣例上含まれ、そうした治療用製品の使用に関する、適応症、用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌及び/又は注意についての情報を含む、説明書を指すのに使用される。
【0066】
基準ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列を整列させ、必要に応じて最大の配列同一性パーセントを得るためにギャップを導入した後の、いかなる保存的置換も配列同一性の一部としてみなさない、基準ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアライメントは、当技術分野の範囲内の様々な方法で、例えば、公的に利用可能なコンピュータソフトウェア、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して、達成することができる。当業者なら、比較する配列の全長にわたる最大のアライメントを得るために必要とされる任意のアルゴリズムを含めて、配列を整列させるための適切なパラメーターを決定することができる。しかし、本明細書においては、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を使用して得られる。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.によって作製され、ソースコードは、米国著作権庁、Washington D.C.、20559に使用者用書類と共に提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN−2プログラムは、Genentech,Inc.、South San Francisco、Californiaから公的に利用可能であり、又はソースコードからコンパイルすることができる。ALIGN−2プログラムは、使用するために、デジタルUNIX V4.0Dを含めたUNIXオペレーティングシステムでコンパイルする必要がある。すべての配列比較パラメーターはALIGN−2プログラムによって設定され、変更しない。ALIGN−2をアミノ酸配列の比較に用いる場合は、所与のアミノ酸配列Bへの、所与のアミノ酸配列Bとの、又は所与のアミノ酸配列Bに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいはこれは、所与のアミノ酸配列Bへの、所与のアミノ酸配列Bとの、又は所与のアミノ酸配列Bに対する特定のアミノ酸配列同一性%を有する又は含む所与のアミノ酸配列Aと表現することができる)は、以下のように計算される。
分数X/Yの100倍
【0067】
式中、Xは、AとBのプログラムのアライメントにおいて、配列アラインメントプログラムALIGN−2によって、同一一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bのアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さが、アミノ酸配列Bの長さに等しくない場合は、BへのAのアミノ酸配列同一性%は、AへのBのアミノ酸配列同一性%に等しくないであろうことが理解されよう。別段記載のない限り、本明細書で使用するすべてのアミノ酸配列同一性%値は、ALIGN−2コンピュータプログラムを使用して、直前の段落に記載されているように得られる。
【0068】
用語「薬学的製剤」は、その中に含まれる活性成分の生物活性を有効にするような形態であって、製剤を投与することになる対象にとって許容されない毒性を有する追加的な構成成分を含まない調製物を指す。
【0069】
「薬学的に許容可能な担体」は、対象に非中毒性である、薬学的製剤中の活性成分以外の処方成分を指す。薬学的に許容可能な担体としては、これらに限定はされないが、緩衝液、賦形剤、安定化剤又は防腐剤が挙げられる。
【0070】
本明細書で使用する場合、「白金錯体」は、例えば、これらに限定されないが、共有結合的にDNAに結合するその能力に基づいて腫瘍に対して有効性を発揮する、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、イプロプラチン、サトラプラチン、CI−973、AZ0473、DWA2114R、ネダプラチン及びスプリオプラチンなどの抗がん化学療法薬を指す。
【0071】
本明細書で使用する場合、「治療」(及び「治療する」又は「治療すること」などのその文法的バリエーション)は、治療される個体の自然経過を変化させようとする臨床的介入を指し、予防のため又は臨床病理の過程において行うことができる。治療の望ましい効果としては、これらに限定されないが、疾患の出現又は再発の予防、症状の軽減、疾患の任意の直接又は間接的な病理学的帰結の低減、転移の予防、疾患進行速度の低下、病態の回復又は緩和、及び寛解又は改善した予後が挙げられる。幾つかの実施態様では、本発明の抗体は、疾患の発生を遅延させる又は疾患の進行を遅らせるために使用される。
【0072】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する、抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖(それぞれVH及びVL)の可変ドメインは、一般に、各ドメインが、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)及び3つの高頻度可変領域(HVR)を含む、類似した構造を有する(例えば、Kindtら、Kuby Immunology第6版、W.H.Freeman and Co.、p91(2007)を参照されたい)。単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を与えるのに十分であり得る。さらに、抗原に結合する抗体由来のVH又はVLドメインを使用して、それぞれ相補的なVL又はVHドメインのライブラリーをスクリーニングし、特定の抗原を結合する抗体を単離することができる。例えば、Portolanoら、J.Immunol.150:880−887(1993);Clarksonら、Nature 352:624−628(1991)を参照されたい。
【0073】
本明細書で使用する場合、用語「ベクター」は、それに連結された別の核酸を伝搬することができる核酸分子を指す。この用語には、自己複製核酸構造物としてのベクター及びそれが導入されている宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターが含まれる。ある種のベクターは、作動可能に連結された核酸の発現を指令することができる。そうしたベクターを、本明細書では、「発現ベクター」と称する。
【0074】
「アルキル」は、ノルマル、第2級、第3級又は環状の炭素原子を含むC
1−C
18炭化水素である。例は、メチル(Me、−CH
3)、エチル(Et、−CH
2CH
3)、1−プロピル(n−Pr、n−プロピル、−CH
2CH
2CH
3)、2−プロピル(i−Pr、i−プロピル、−CH(CH
3)
2)、1−ブチル(n−Bu、n−ブチル、−CH
2CH
2CH
2CH
3)、2−メチル−1−プロピル(i−Bu、i−ブチル、−CH
2CH(CH
3)
2)、2−ブチル(s−Bu、s−ブチル、−CH(CH
3)CH
2CH
3)、2−メチル−2−プロピル(
t−Bu、
t−ブチル、−C(CH
3)
3)、1−ペンチル(
n−ペンチル、−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
3)、2−ペンチル(−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
3)、3−ペンチル(−CH(CH
2CH
3)
2)、2−メチル−2−ブチル(−C(CH
3)
2CH
2CH
3)、3−メチル−2−ブチル(−CH(CH
3)CH(CH
3)
2)、3−メチル−1−ブチル(−CH
2CH
2CH(CH
3)
2)、2−メチル−1−ブチル(−CH
2CH(CH
3)CH
2CH
3)、1−ヘキシル(−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2CH
3)、2−ヘキシル(−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
2CH
3)、3−ヘキシル(−CH(CH
2CH
3)(CH
2CH
2CH
3))、2−メチル−2−ペンチル(−C(CH
3)
2CH
2CH
2CH
3)、3−メチル−2−ペンチル(−CH(CH
3)CH(CH
3)CH
2CH
3)、4−メチル−2−ペンチル(−CH(CH
3)CH
2CH(CH
3)
2)、3−メチル−3−ペンチル(−C(CH
3)(CH
2CH
3)
2)、2−メチル−3−ペンチル(−CH(CH
2CH
3)CH(CH
3)
2)、2,3−ジメチル−2−ブチル(−C(CH
3)
2CH(CH
3)
2)、3,3−ジメチル−2−ブチル(−CH(CH
3)C(CH
3)
3である。
【0075】
本明細書で使用する場合、用語「C
1−C
8アルキル」は、1から8個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝の、飽和又は不飽和の炭化水素を指す。代表的な「C
1−C
8アルキル」基としては、これらに限定されないが、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−n−ブチル、−n−ペンチル、−n−ヘキシル、−n−ヘプチル、−n−オクチル、−n−ノニル及び−n−デシルが挙げられ、一方で、分枝C
1−C
8アルキルとしては、これらに限定されないが、−イソプロピル、−sec−ブチル、−イソブチル、−tert−ブチル、−イソペンチル、2−メチルブチルが挙げられ、不飽和C
1−C
8アルキルとしては、これらに限定されないが、−ビニル、−アリル、−1−ブテニル、−2−ブテニル、−イソブチレニル、−1−ペンテニル、−2−ペンテニル、−3−メチル−1−ブテニル、−2−メチル−2−ブテニル、−2,3−ジメチル−2−ブテニル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、−アセチレニル、−プロピニル、−1−ブチニル、−2−ブチニル、−1−ペンチニル、−2−ペンチニル、−3−メチル−1ブチニルが挙げられる。C
1−C
8アルキル基は、無置換でもよいし、これらに限定されないが、−C
1−C
8アルキル、−O−(C
1−C
8アルキル)、−アリール、−C(O)R’、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)NH
2、−C(O)NHR’、−C(O)N(R’)
2−NHC(O)R’、−SO
3R’、−S(O)
2R’、−S(O)R’、−OH、−ハロゲン、−N
3、−NH
2、−NH(R’)、−N(R’)
2及び−CN(式中、各R’は、H、−C
1−C
8アルキル及びアリールから独立に選択される)を含めた、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0076】
本明細書で使用する場合、用語「C
1−C
12アルキル」は、1から12個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝の、飽和又は不飽和の炭化水素を指す。C
1−C
12アルキル基は、無置換でもよいし、これらに限定されないが、−C
1−C
8アルキル、−O−(C
1−C
8アルキル)、−アリール、−C(O)R’、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)NH
2、−C(O)NHR’、−C(O)N(R’)
2−NHC(O)R’、−SO
3R’、−S(O)
2R’、−S(O)R’、−OH、−ハロゲン、−N
3、−NH
2、−NH(R’)、−N(R’)
2及び−CN(式中、各R’は、H、−C
1−C
8アルキル及びアリールから独立に選択される)を含めた、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0077】
本明細書で使用する場合、用語「C
1−C
6アルキル」は、1から6個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝の、飽和又は不飽和の炭化水素を指す。代表的な「C
1−C
6アルキル」基としては、これらに限定されないが、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−n−ブチル、−n−ペンチル及び−n−ヘキシルが挙げられ、一方で、分枝C
1−C
6アルキルとしては、これらに限定されないが、−イソプロピル、−sec−ブチル、−イソブチル、−tert−ブチル、−イソペンチル及び2−メチルブチルが挙げられ、不飽和C
1−C
6アルキルとしては、これらに限定されないが、−ビニル、−アリル、−1−ブテニル、−2−ブテニル、及び−イソブチレニル、−1−ペンテニル、−2−ペンテニル、−3−メチル−1−ブテニル、−2−メチル−2−ブテニル、−2,3−ジメチル−2−ブテニル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、及び3−ヘキシルが挙げられる。C
1−C
6アルキル基は、C
1−C
8アルキル基について上で述べるように、無置換でもよいし、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0078】
本明細書で使用する場合、用語「C
1−C
4アルキル」は、1から4個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝の、飽和又は不飽和の炭化水素を指す。代表的な「C
1−C
4アルキル」基としては、これらに限定されないが、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−n−ブチルが挙げられ、一方で、分枝C
1−C
4アルキルとしては、これらに限定されないが、−イソプロピル、−sec−ブチル、−イソブチル、−tert−ブチルが挙げられ、不飽和C
1−C
4アルキルとしては、これらに限定されないが、−ビニル、−アリル、−1−ブテニル、−2−ブテニル及び−イソブチレニルが挙げられる。C
1−C
4アルキル基は、C
1−C
8アルキル基について上で述べるように、無置換でもよいし、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0079】
「アルコキシ」は、酸素に単結合したアルキル基である。例示的アルコキシ基としては、これらに限定されないが、メトキシ(−OCH
3)及びエトキシ(−OCH
2CH
3)が挙げられる。「C
1−C
5アルコキシ」は、1から5個の炭素原子を有するアルコキシ基である。アルコキシ基は、アルキル基について上で述べたように、無置換でもよいし、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0080】
「アルケニル」は、少なくとも1つの不飽和部位、すなわち炭素−炭素、sp
2二重結合を有する、ノルマル、第2級、第3級又は環状の炭素原子を含む、C
2−C
18炭化水素である。例としては、これらに限定されないが、エチレン又はビニル(−CH=CH
2)、アリル(−CH
2CH=CH
2)、シクロペンテニル(−C
5H
7)及び5−ヘキセニル(−CH
2CH
2CH
2CH
2CH=CH
2)が挙げられる。「C
2−C
8アルケニル」は、少なくとも1つの不飽和部位、すなわち炭素−炭素、sp
2二重結合を有する、2から8個のノルマル、第2級、第3級又は環状の炭素原子を含む、炭化水素である。
【0081】
「アルキニル」は、少なくとも1つの不飽和部位、すなわち炭素−炭素、sp三重結合を有する、ノルマル、第2級、第3級又は環状の炭素原子を含む、C
2−C
18炭化水素である。例としては、これらに限定されないが、アセチレン(−C≡CH)及びプロパルギル(−CH
2C≡CH)が挙げられる。「C
2−C
8アルキニル」は、少なくとも1つの不飽和部位、すなわち炭素−炭素、sp三重結合を有する、2から8個のノルマル、第2級、第3級又は環状の炭素原子を含む、炭化水素である。
【0082】
「アルキレン」は、飽和した、分枝又は直鎖又は環状の、1−18個の炭素原子の炭化水素基であって、親アルカンの同じ又は2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を除去することによって得られる一価のラジカル中心を2つ有する炭化水素基を指す。典型的なアルキレン基としては、これらに限定されないが、メチレン(−CH
2−)1,2−エチル(−CH
2CH
2−)、1,3−プロピル(−CH
2CH
2CH
2−)、1,4−ブチル(−CH
2CH
2CH
2CH
2−)などが挙げられる。
【0083】
「C
1−C
10アルキレン」は、式−(CH
2)
1−10−の直鎖の飽和炭化水素基である。C
1−C
10アルキレンの例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オシチレン(ocytylene)、ノニレン及びデカレンが挙げられる。
【0084】
「アルケニレン」は、不飽和の、分枝又は直鎖又は環状の、2−18個の炭素原子の炭化水素基であって、親アルケンの同じ又は2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を除去することによって得られる一価のラジカル中心を2つ有する炭化水素基を指す。典型的なアルケニレン基としては、これに限定されないが、1,2−エチレン(−CH=CH−)が挙げられる。
【0085】
「アルキニレン」は、不飽和の、分枝又は直鎖又は環状の、2−18個の炭素原子の炭化水素基であって、親アルキンの同じ又は2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を除去することによって得られる一価のラジカル中心を2つ有する炭化水素基を指す。典型的なアルキニレン基としては、これらに限定されないが、アセチレン(−C≡C−)、プロパルギル(−CH
2C≡C−)及び4−ペンチニル(−CH
2CH
2CH
2C≡C−)が挙げられる。
【0086】
「アリール」は、炭素環式芳香族基を指す。アリール基の例としては、これらに限定されないが、フェニル、ナフチル及びアントラセニルが挙げられる。炭素環式芳香族基又はヘテロ環式芳香族基は、無置換でもよいし、これらに限定されないが、−C
1−C
8アルキル、−O−(C
1−C
8アルキル)、−アリール、−C(O)R’、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)NH
2、−C(O)NHR’、−C(O)N(R’)
2−NHC(O)R’、−S(O)
2R’、−S(O)R’、−OH、−ハロゲン、−N
3、−NH
2、−NH(R’)、−N(R’)
2及び−CN(式中、各R’は、H、−C
1−C
8アルキル及びアリールから独立に選択される)を含めた1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0087】
「C
5−C
20アリール」は、炭素環式芳香族環中に5から20個の炭素原子を有するアリール基である。C
5−C
20アリール基の例としては、これらに限定されないが、フェニル、ナフチル及びアントラセニルが挙げられる。C
5−C
20アリール基は、アリール基について上で述べたように、置換されていても、無置換でもよい。「C
5−C
14アリール」は、炭素環式芳香族環中に5から14個の炭素原子を有するアリール基である。C
5−C
14アリール基の例としては、これらに限定されないが、フェニル、ナフチル及びアントラセニルが挙げられる。C
5−C
14アリール基は、アリール基について上で述べたように、置換されていても、無置換でもよい。
【0088】
「アリーレン」は、共有結合を2つ有するアリール基であり、以下の構造:
で示すように、オルソ、メタ又はパラ配置で存在することができ、
フェニル基は、無置換でもよいし、これらに限定されないが、−C
1−C
8アルキル、−O−(C
1−C
8アルキル)、−アリール、−C(O)R’、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)NH
2、−C(O)NHR’、−C(O)N(R’)
2−NHC(O)R’、−S(O)
2R’、−S(O)R’、−OH、−ハロゲン、−N
3、−NH
2、−NH(R’)、−N(R’)
2及び−CN(式中、各R’は、H、−C
1−C
8アルキル及びアリールから独立に選択される)を含めた4つまでの基で置換されていてもよい。
【0089】
「アリールアルキル」は、炭素原子、典型的には末端又はsp
3炭素原子に結合した水素原子の1つがアリール基で置き換えられている、非環式のアルキル基を指す。典型的なアリールアルキル基としては、これらに限定されないが、ベンジル、2−フェニルエタン−1−イル、2−フェニルエテン−1−イル、ナフチルメチル、2−ナフチルエタン−1−イル、2−ナフチルエテン−1−イル、ナフトベンジル、2−ナフトフェニルエタン−1−イルなどが挙げられる。アリールアルキル基は6から20個の炭素原子を含み、例えば、アリールアルキル基(アルカニル、アルケニル又はアルキニル基を含む)のアルキル部分、は、1から6個の炭素原子であり、アリール部分は5から14個の炭素原子である。
【0090】
「ヘテロアリールアルキル」は、炭素原子、典型的には末端又はsp
3炭素原子に結合した水素原子の1つがヘテロアリール基で置き換えられている、非環式のアルキル基を指す。典型的なヘテロアリールアルキル基は、これらに限定されないが、2−ベンズイミダゾリルメチル、2−フリルエチルなどが挙げられる。ヘテロアリールアルキル基は、6から20個の炭素原子を含み、例えば、ヘテロアリールアルキル基(アルカニル、アルケニル又はアルキニル基を含む)のアルキル部分は1から6個の炭素原子であり、ヘテロアリール部分は、5から14個の炭素原子、並びにN、O、P及びSから選択される1から3個のヘテロ原子である。ヘテロアリールアルキル基のヘテロアリール部分は、3から7環員(2から6個の炭素原子)を有する単環でもよいし、7から10環員(4から9個の炭素原子並びにN、O、P及びSから選択される1から3個のヘテロ原子)を有する二環でもよく、例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]又は[6,6]系でもよい。
【0091】
「置換されたアルキル」、「置換されたアリール」、及び「置換されたアリールアルキル」は、1つ又は複数の水素原子が、それぞれ独立に置換基で置き換えられた、アルキル、アリール及びアリールアルキルをそれぞれ意味する。典型的な置換基としては、これらに限定されないが、−X、−R、−O
−、−OR、−SR、−S
−、−NR
2、−NR
3、=NR、−CX
3、−CN、−OCN、−SCN、−N=C=O、−NCS、−NO、−NO
2、=N
2、−N
3、NC(=O)R、−C(=O)R、−C(=O)NR
2、−SO
3−、−SO
3H、−S(=O)
2R、−OS(=O)
2OR、−S(=O)
2NR、−S(=O)R、−OP(=O)(OR)
2、−P(=O)(OR)
2、−PO
−3、−PO
3H
2、−C(=O)R、−C(=O)X、−C(=S)R、−CO
2R、−CO
2−、−C(=S)OR、−C(=O)SR、−C(=S)SR、−C(=O)NR
2、−C(=S)NR
2、−C(=NR)NR
2が挙げられ、式中、各Xは独立に、ハロゲン:F、Cl、Br又はIであり、各Rは独立に、−H、C
2−C
18アルキル、C
6−C
20アリール、C
3−C
14ヘテロ環、保護基又はプロドラッグ部分である。上記のアルキレン、アルケニレン及びアルキニレン基も、同様に置換されていてもよい。
【0092】
「ヘテロアリール」及び「ヘテロ環」は、1つ又は複数の環原子がヘテロ原子、例えば、窒素、酸素及び硫黄である環系を指す。ヘテロ環基は、3から20個の炭素原子並びにN、O、P及びSから選択される1から3個のヘテロ原子を含む。ヘテロ環は、3から7環員(2から6個の炭素原子並びにN、O、P及びSから選択される1から3個のヘテロ原子)を有する単環でもよいし、7から10環員(4から9個の炭素原子並びにN、O、P及びSから選択される1から3個のヘテロ原子)を有する二環でもよく、例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]又は[6,6]系でもよい。
【0093】
例示的なヘテロ環は、例えば、Paquette,Leo A.、「Principles of Modern Heterocyclic Chemistry」(W.A.Benjamin、New York、1968)、特に1、3、4、6、7及び9章;「The Chemistry of Heterocyclic Compounds,A series of Monographs」(John Wiley&Sons、New York、1950年から現在まで)、特に13、14、16、19及び28巻;並びにJ.Am.Chem.Soc.(1960)82:5566に記載されている。
【0094】
ヘテロ環の例としては、限定ではなく例として、ピリジル、ジヒドロピリジル(dihydroypyridyl)、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、チアゾリル、テトラヒドロチオフェニル、硫黄酸化テトラヒドロチオフェニル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、チアナフタレニル、インドリル、インドレニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ピペリジニル、4
−ピペリドニル、ピロリジニル、2−ピロリドニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、bis−テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、bis−テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、アゾシニル、トリアジニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、チエニル、チアントレニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチニル(phenoxathinyl)、2H−ピロリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、1H−インダゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、4aH−カルバゾリル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナンスロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソオキサゾリル、オキシインドリル、ベンゾキサゾリニル、及びイサチノイルが挙げられる。
【0095】
限定ではなく例として、炭素結合ヘテロ環は、ピリジンの2、3、4、5若しくは6位、ピリダジンの3、4、5若しくは6位、ピリミジンの2、4、5若しくは6位、ピラジンの2、3、5若しくは6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロール若しくはテトラヒドロピロールの2、3、4若しくは5位、オキサゾール、イミダゾール若しくはチアゾールの2、4、若しくは5位、イソオキサゾール、ピラゾール若しくはイソチアゾールの3、4、若しくは5位、アジリジンの2若しくは3位、アゼチジンの2、3若しくは4位、キノリンの2、3、4、5、6、7若しくは8位、又はイソキノリンの1、3、4、5、6、7若しくは8位で結合する。さらにより典型的には、炭素結合ヘテロ環としては、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、5−ピリジル、6−ピリジル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、5−ピリダジニル、6−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、6−ピリミジニル、2−ピラジニル、3−ピラジニル、5−ピラジニル、6−ピラジニル、2−チアゾリル、4−チアゾリル又は5−チアゾリルが挙げられる。
【0096】
限定ではなく例として、窒素結合ヘテロ環は、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2−ピロリン、3−ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2−イミダゾリン、3−イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H−インダゾールの1位、イソインドール又はイソインドリンの2位、モルホリンの4位、及びカルバゾール又はβ−カルボリンの9位で結合する。さらにより典型的には、窒素結合ヘテロ環としては、1−アジリジル、1−アゼテジル、1−ピロリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル及び1−ピペリジニルが挙げられる。
【0097】
「C
3−C
8ヘテロ環」は、1から4個の環炭素原子が、O、S及びNからなる群からのヘテロ原子に独立に置き換えられている芳香族又は非芳香族のC
3−C
8炭素環を指す。C
3−C
8ヘテロ環の代表的な例としては、これらに限定されないが、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェン、インドリル、ベンゾピラゾリル、クマリニル、イソキノリニル、ピロリル、チオフェニル、フラニル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、キノリニル、ピリミジニル、ピリジニル、ピリドニル、ピラジニル、ピリダジニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル及びテトラゾリルが挙げられる。C
3−C
8ヘテロ環は、無置換でもよいし、これらに限定されないが、−C
1−C
8アルキル、−O−(C
1−C
8アルキル)、−アリール、−C(O)R’、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)NH
2、−C(O)NHR’、−C(O)N(R’)
2−NHC(O)R’、−S(O)
2R’、−S(O)R’、−OH、−ハロゲン、−N
3、−NH
2、−NH(R’)、−N(R’)
2及び−CN(式中、各R’は、H、−C
1−C
8アルキル及びアリールから独立に選択される)を含めた7個までの基で置換されていてもよい。
【0098】
「C
3−C
8ヘテロシクロ」は、ヘテロ環基の水素原子の1つが結合で置き換えられている、上記で定義したC
3−C
8ヘテロ環基を指す。C
3−C
8ヘテロシクロは、無置換でもよいし、これらに限定されないが、−C
1−C
8アルキル、−O−(C
1−C
8アルキル)、−アリール、−C(O)R’、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)NH
2、−C(O)NHR’、−C(O)N(R’)
2−NHC(O)R’、−S(O)
2R’、−S(O)R’、−OH、−ハロゲン、−N
3、−NH
2、−NH(R’)、−N(R’)
2及び−CN(式中、各R’は、H、−C
1−C
8アルキル及びアリールから独立に選択される)を含めた6個までの基で置換されていてもよい。
【0099】
「C
3−C
20ヘテロ環」は、1から4個の環炭素原子がO、S及びNからなる群からのヘテロ原子で独立に置き換えられている、芳香族又は非芳香族のC
3−C
8炭素環を指す。C
3−C
20ヘテロ環は、無置換でもよいし、これらに限定されないが、−C
1−C
8アルキル、−O−(C
1−C
8アルキル)、−アリール、−C(O)R’、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)NH
2、−C(O)NHR’、−C(O)N(R’)
2−NHC(O)R’、−S(O)
2R’、−S(O)R’、−OH、−ハロゲン、−N
3、−NH
2、−NH(R’)、−N(R’)
2及び−CN(式中、各R’は、H、−C
1−C
8アルキル及びアリールから独立に選択される)を含めた7個までの基で置換されていてもよい。
【0100】
「C
3−C
20ヘテロシクロ」は、ヘテロ環基の水素原子の1つが結合で置き換えられている、上記で定義したC
3−C
20ヘテロ環基を指す。
【0101】
「炭素環」は、単環として3から7個の炭素原子、又は二環として7から12個の炭素原子を有する、飽和環又は不飽和環を意味する。単環式炭素環は、3から6個の環原子、さらにより典型的には5又は6個の環原子を有する。二環式炭素環は、例えばビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]若しくは[6,6]系として配置された7から12個の環原子、又はビシクロ[5,6]若しくは[6,6]系として配置された9若しくは10個の環原子を有する。単環式炭素環の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1−シクロペント−1−エニル、1−シクロペント−2−エニル、1−シクロペント−3−エニル、シクロヘキシル、1−シクロヘキサ−1−エニル、1−シクロヘキサ−2−エニル、1−シクロヘキサ−3−エニル、シクロヘプチル及びシクロオクチルが挙げられる。
【0102】
「C
3−C
8炭素環」は、3、4、5、6、7又は8員の飽和又は不飽和の非芳香族炭素環である。代表的なC
3−C
8炭素環は、これらに限定されないが、−シクロプロピル、−シクロブチル、−シクロペンチル、−シクロペンタジエニル、−シクロヘキシル、−シクロヘキセニル、−1,3−シクロヘキサジエニル、−1,4−シクロヘキサジエニル、−シクロヘプチル、−1,3−シクロヘプタジエニル、−1,3,5−シクロヘプタトリエニル、−シクロオクチル及び−シクロオクタジエニルが挙げられる。C
3−C
8炭素環基は、無置換でもよいし、これらに限定されないが、−C
1−C
8アルキル、−O−(C
1−C
8アルキル)、−アリール、−C(O)R’、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)NH
2、−C(O)NHR’、−C(O)N(R’)
2−NHC(O)R’、−S(O)
2R’、−S(O)R’、−OH、−ハロゲン、−N
3、−NH
2、−NH(R’)、−N(R’)
2及び−CN(式中、各R’は、H、−C
1−C
8アルキル及びアリールから独立に選択される)を含めた1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0103】
「C
3−C
8カルボシクロ」は、炭素環基の水素原子の1つが結合で置き換えられている、上記で定義したC
3−C
8炭素環基を指す。
【0104】
「リンカー」は、薬物部分に抗体を共有結合させる共有結合又は原子鎖を含む化学物質部分を指す。様々な実施態様では、リンカーは、2価の基、例えばアルキルジイル、アリールジイル、ヘテロアリールジイル、部分、例えば−(CR
2)
nO(CR
2)
n−、アルキルオキシ(例えばポリエチレンオキシ、PEG、ポリメチレンオキシ)及びアルキルアミノ(例えばポリエチレンアミノ、Jeffamine(商標))の反復単位;並びにコハク酸エステル、スクシンアミド、ジグリコールエステル、マロン酸エステル及びカプロアミドを含めた、二酸エステル及びアミドを含む。様々な実施態様では、リンカーは、バリン、フェニルアラニン、リジン及びホモリジンなどの1つ又は複数のアミノ酸残基を含むことができる。
【0105】
用語「キラル」は、鏡像パートナーの重ね合わせができない特性を有する分子を指し、一方で用語「アキラル」は、その鏡像パートナーに重ね合わせることができる分子を指す。
【0106】
用語「立体異性体」は、同一の化学構造を有するが、原子又は基の空間配置に関して異なる化合物を指す。
【0107】
「ジアステレオマー」は、2つ以上のキラリティー中心を有し、その分子が互いの鏡像でない立体異性体を指す。ジアステレオマーは、様々な物理的特性、例えば、融点、沸点、スペクトル特性及び反応性を有する。ジアステレオマー混合物は、電気泳動及びクロマトグラフィーなどの高分解能の分析法の下で分離することができる。
【0108】
「鏡像異性体」は、互いに重ね合わせることができない鏡像である、化合物の2つの立体異性体を指す。
【0109】
本明細書で使用する立体化学の定義及び慣例は、一般に、S.P.Parker編、McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms(1984)McGraw−Hill Book Company、New York;並びにEliel,E.及びWilen,S.、Stereochemistry of Organic Compounds(1994)John Wiley&Sons,Inc.、New Yorkに従う。多くの有機化合物は、光学的活性型で存在し、すなわちこれらは、平面偏光面を回転させる能力を有する。光学的活性化合物の記載では、接頭辞D及びL又はR及びSは、そのキラル中心(複数可)に関する分子の絶対配置を表示するのに使用される。接頭辞d及びl又は(+)及び(−)は、化合物による平面偏光の回転の徴候を示すのに用いられ、(−)又は1は、化合物が左旋性であることを意味する。(+)又はdが前に付けられた化合物は、右旋性である。所与の化学構造について、これらの立体異性体は、これらが互いの鏡像であることを除いては、同一である。特定の立体異性体は、鏡像異性体と称される場合もあり、そうした異性体の混合物は、鏡像異性混合物と呼ばれることが多い。鏡像異性体の50:50混合物は、ラセミ混合物又はラセミ体と称され、これは、化学反応又は化学過程において立体選択又は立体特異性がなかった場合に生じ得る。用語「ラセミ混合物」及び「ラセミ体」は、光学活性のない2つ鏡像異性種の等モル混合物を指す。
【0110】
「脱離基」は、別の官能基によって置換され得る官能基を指す。ある種の脱離基は当技術分野でよく知られており、例としては、これらに限定されないが、ハライド(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、メタンスルホニル(メシル)、p−トルエンスルホニル(トシル)、トリフルオロメチルスルホニル(トリフレート)及びトリフルオロメチルスルホネートが挙げられる。
【0111】
用語「保護基」は、化合物の他の官能基を反応させている間、特定の官能基性をブロック又は保護するのに一般に用いられる置換基を指す。例えば、「アミノ保護基」は、化合物のアミノ官能基性をブロック又は保護する、アミノ基に結合した置換基である。適切なアミノ保護基としては、これらに限定されないが、アセチル、トリフルオロアセチル、t−ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)及び9−フルオレニルメチレンオキシカルボニル(Fmoc)が挙げられる。保護基及びその使用の概説については、T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley&Sons、New York、1991又はそれ以降の版を参照されたい。
【0112】
II.組成物及び方法
一態様では、本発明は、LY6Eに結合する抗体及びそうした抗体を含むイムノコンジュゲートに部分的に基づく。本発明の抗体及びイムノコンジュゲートは、例えばLY6E陽性がんの診断又は治療に有用である。
【0113】
A.例示的な抗Ly6E抗体
幾つかの実施態様では、本発明は、LY6Eに結合する単離抗体を提供する。ある種の実施態様では、抗LY6E抗体は、少なくとも1つ又は複数の以下の特徴を任意の組み合わせで有する。
(a)配列番号1のアミノ酸21−131内のエピトープに結合する、及び
(b)SPR又はスキャッチャード解析の何れかによって測定される≦7nM、又は≦6nM、又は≦5nM、又は≦4nM、又は≦3nM、又は≦2nM、又は≦1nM、及び任意選択的に、≧0.0001nM、又は≧0.001nM、又は≧0.01nMの親和性でLy6Eに結合する。
【0114】
本発明の非限定的な例示的抗体は、
図4−6で示すマウス9B12、及びそのヒト化変異体、例えば、
図4−6で示すhu9B12.v12などである。幾つかの実施態様では、Ly6EはヒトLy6Eである。幾つかの実施態様では、Ly6Eは、ヒト、カニクイザル、アカゲザル、マウス又はラットのLy6Eから選択される。
【0115】
幾つかの実施態様では、抗Ly6E抗体は、配列番号1のアミノ酸21−131内のエピトープに結合する。幾つかのそうした実施態様では、抗Ly6E抗体は、SPR又はスキャッチャード解析の何れかによって測定される≦7nM、又は≦6nM、又は≦5nM、又は≦4nM、又は≦3nM、又は≦2nM、又は≦1nM、及び任意選択的に、≧0.0001nM、又は≧0.001nM、又は≧0.01nMの親和性でLy6Eに結合する。本発明の非限定的な例示的抗体は、
図4−6で示すマウス9B12、及びそのヒト化変異体、例えば、
図4−6で示すhu9B12.v12などである。幾つかの実施態様では、Ly6EはヒトLy6Eである。幾つかの実施態様では、Ly6EはヒトLy6Eである又はカニクイザルLy6Eである。
【0116】
一態様では、本発明は、(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つのHVRを含む抗Ly6E抗体を提供する。
【0117】
一態様では、本発明は、(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR−H2、及び(c)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR−H3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ又は3つすべてのVH HVR配列を含む抗体を提供する。一実施態様では、抗体は、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む。別の実施態様では、抗体は、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR−H3、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。さらなる実施態様では、抗体は、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR−H3、配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR−L3、及び配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR−H2を含む。さらなる実施態様では、抗体は、(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR−H2、及び(c)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む。
【0118】
別の態様では、本発明は、(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ又は3つすべてのVL HVR配列を含む抗体を提供する。一実施態様では、抗体は、(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。
【0119】
別の態様では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR−H2、及び(iii)配列番号12から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ又は3つすべてのVH HVR配列を含むVHドメイン、及び(b)(i)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は3つすべてのVL HVR配列を含むVLドメインを含む。
【0120】
別の態様では、本発明は、(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)配列番号9から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体を提供する。
【0121】
ある種の実施態様では、上記の抗Ly6E抗体の任意の1つ又は複数のアミノ酸は、以下のHVR位置で置換される。
【0122】
上記実施態様の何れかでは、抗Ly6E抗体はヒト化されている。一実施態様では、抗Ly6E抗体は、上記実施態様の何れかと同様のHVRを含み、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークをさらに含む。別の実施態様では、抗Ly6E抗体は、上記実施態様の何れかと同様のHVRを含み、配列番号20の軽鎖可変ドメインフレームワークFR2配列若しくは配列番号21の軽鎖可変ドメインフレームワークFR3又は配列番号23の重鎖可変ドメインフレームワークFR1若しくは配列番号24の重鎖可変ドメインフレームワークFR2をさらに含む。
【0123】
別の態様では、抗Ly6E抗体は、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。ある種の実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するVH配列は、基準配列に対して、置換(例えば保存的置換)、挿入又は欠失を含むが、その配列を含む抗Ly6E抗体は、Ly6Eに結合する能力を保持する。ある種の実施態様では、配列番号5において、合計で1から10個のアミノ酸が、置換され、挿入され、及び/又は欠失させられる。ある種の実施態様では、置換、挿入又は欠失は、HVRの外側の領域(すなわちFR内)で生じる。任意選択的に、抗Ly6E抗体は、配列の翻訳後修飾を含む配列番号5のVH配列を含む。特定の実施態様では、VHは、(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR−H2、及び(c)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR−H3から選択される、1つ、2つ又は3つのHVRを含む。
【0124】
別の態様では、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、抗Ly6E抗体が提供される。ある種の実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するVL配列は、基準配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失を含むが、その配列を含む抗Ly6E抗体は、Ly6Eに結合する能力を保持する。ある種の実施態様では、配列番号3において、合計で1から10個のアミノ酸が、置換され、挿入され、及び/又は欠失させられる。ある種の実施態様では、置換、挿入又は欠失は、HVRの外側領域(すなわちFR内)で生じる。任意選択的に、抗Ly6E抗体は、配列の翻訳後修飾を含めた、配列番号3のVL配列を含む。特定の実施態様では、VLは、(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、1つ、2つ又は3つのHVRを含む。
【0125】
別の態様では、上記の実施態様のうちの何れかと同様のVH、並びに上記の実施態様のうちの何れかと同様のVLを含む、抗Ly6E抗体が提供される。一実施態様では、抗体は、配列の翻訳後修飾を含めて、配列番号5及び配列番号3のVH及びVL配列を含む。
【0126】
さらなる態様では、本発明は、本明細書で提供する抗Ly6E抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。例えば、ある種の実施態様では、配列番号5のVH配列及び配列番号3のVL配列を含む抗Ly6E抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。ある種の実施態様では、配列番号1のアミノ酸21−131からなるLy6E断片内のエピトープに結合する抗体が提供される。
【0127】
本発明のさらなる態様では、上記実施態様の何れかに記載の抗Ly6E抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体を含めた、モノクローナル抗体である。一実施態様では、抗Ly6E抗体は、抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ又はF(ab’)
2断片である。別の実施態様では、抗体は、全長抗体、例えば、インタクトなIgG1抗体、又は本明細書で定義する他の抗体クラス若しくはアイソタイプである。
【0128】
さらなる態様では、上記実施態様の何れかに記載の抗Ly6E抗体は、以下のセクション1−7に記載されるような特色のうちの何れかを、単独で又は組み合わせて組み込むことができる。
【0129】
アッセイ
抗LY6E抗体が、「配列番号1のアミノ酸21−131内のエピトープに結合する」かどうかを決定するために、N末端及びC末端が欠失したLy6Eポリペプチドを293細胞で発現させ、この切断型ポリペプチドへの抗体の結合をFACSによって試験し、293細胞で発現させた全長Ly6Eへの結合と比較して、切断型ポリペプチドへの抗体の結合のかなりの低減(≧70%低減)又は消失は、抗体がその切断型ポリペプチドに結合しないことを示す。
【0130】
抗Ly6E抗体が「≦6nM、又は≦5nM、又は≦4nM、又は≦3nM、又は≦2nM、又は≦1nMの親和性を有して結合する」かどうかを、実施例4において本明細書に記載のように、スキャッチャード解析によって決定する。あるいは、抗Ly6E抗体の親和性は、例えばBIAcoreアッセイによって、決定することができる。特に、Kdは、BIACORE(登録商標)−3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、NJ)を使用して、表面プラズモン共鳴アッセイによって測定する。BIAcore(商標)研究グレードCM5チップを、供給業者の説明書に従って、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)試薬で活性化する。ヤギ抗ヒトFc IgGを、各フローセルにおいて約10,000応答単位(RU)を得るようにチップに結合させる。未反応の結合基を1Mエタノールアミンでブロックする。カイネティクス測定については、抗Ly6E抗体を、約300RUを得るように捕獲する。ヒトLy6E(例えば、バキュロウイルス系で発現させたHis−Fcに融合したアミノ酸21−131、又はCHO細胞から発現させたFcに融合したアミノ酸21−131;125nMから0.49nM)の2倍階段希釈物を、HBS−P緩衝液(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、0.005%界面活性剤P20)に、30μl/分の流速で25℃で注入する。会合速度(k
on)及び解離速度(k
off)を、1:1ラングミュア結合モデル(BIAcore(商標)評価ソフトウェア3.2版)を使用して計算する。平衡解離定数(Kd)を比率k
off/k
onとして計算する。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによって、オンレート(on-rate)が10
6M
−1s
−1を超える場合は、ストップフロー装備分光光度計(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを有する8000−シリーズSLM−Aminco(登録商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定される、漸増濃度の抗原の存在下において、PBS、pH7.2に入れた20nMの抗抗原抗体(Fab型)の25℃での蛍光発光強度(励起=295nM;発光=340nM、16nMバンドパス)の増大又は低下を測定する蛍光クエンチング法を使用して、オンレート(on-rate)を決定することができる。
【0131】
上記実施態様の何れかでは、抗Ly6E抗体はヒト化されている。一実施態様では、抗Ly6E抗体は、上記実施態様の何れかと同様のHVRを含み、ヒトアクセプターフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークをさらに含む。ある種の実施態様では、ヒトアクセプターフレームワークは、ヒトVLカッパIVコンセンサス(VL
KIV)フレームワーク及び/又はVHフレームワークVH
1である。
【0132】
本発明のさらなる態様では、上記実施態様の何れかに記載の抗Ly6E抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体を含めた、モノクローナル抗体である。一実施態様では、抗Ly6E抗体は、抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ又はF(ab’)
2断片である。別の実施態様では、抗体は、実質的に全長抗体、例えば、IgG1抗体又は本明細書で定義する他の抗体クラス若しくはアイソタイプである。
【0133】
さらなる態様では、上記実施態様の何れかに記載の抗Ly6E抗体は、以下のセクション1−7に記載されているような特色のうちの何れかを、単独で又は組み合わせて組み込むことができる。
【0134】
本発明のさらなる態様では、上記実施態様の何れかに記載の抗Ly6E抗体は、ヒト抗体を含めたモノクローナル抗体である。一実施態様では、抗Ly6E抗体は、抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ又はF(ab’)
2断片である。別の実施態様では、抗体は、実質的に全長抗体、例えば、IgG2a抗体又は本明細書で定義する他の抗体クラス若しくはアイソタイプである。
【0135】
さらなる態様では、上記実施態様の何れかに記載の抗Ly6E抗体は、以下のセクション1−7に記載されているような特色のうちの何れかを、単独で又は組み合わせて組み込むことができる。
【0136】
1.抗体親和性
ある種の実施態様では、本明細書で提供する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nMの解離定数(Kd)を有し、任意選択的に、≧10
−13M(例えば10
−8M以下、例えば10−
8Mから10
−13M、例えば、10
−9Mから10
−13M)である。
【0137】
一実施態様では、Kdは、以下のアッセイに記載されるように、目的のFab型抗体及びその抗原を用いて実施する放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定する。抗原に対するFabの溶液結合親和性は、一連の漸増量の非標識抗原の存在下で、最小濃度の(
125I)標識抗原を用いてFabを平衡化し、次いで、抗Fab抗体をコーティングしたプレートを用いて結合した抗原を捕獲することによって測定する(例えば、Chenら、J.Mol.Biol.293:865−881(1999)を参照されたい)。アッセイ条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)に入れた5μg/mlの捕獲抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、続いて、PBSに入れた2%(w/v)ウシ血清アルブミンを用いて、2から5時間、室温(約23℃)でブロッキングする。非吸着プレート(Nunc#269620)において、100pM又は26pMの[
125I]−抗原を目的のFabの段階希釈物と混合する(例えば、Prestaら、Cancer Res.57:4593−4599(1997)における抗VEGF抗体、Fab−12の評価と一致している)。次いで、目的のFabを一晩インキュベートする。しかしインキュベーションは、確実に平衡状態に達するように、より長期間(例えば約65時間)続けてもよい。その後、この混合物を捕獲プレートに移して、室温で(例えば、1時間)インキュベートする。次いで溶液を除去し、0.1%ポリソルベート20(TWEEN−20(登録商標))のPBS溶液でプレートを8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルのシンチラント(MICROSCINT−20(商標)、Packard)を加え、TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター(Packard)でプレートを10分間カウントする。最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度を選んで、競合的結合アッセイで使用する。
【0138】
別の実施態様によれば、Kdは、実施例4に記載されているようにスキャッチャード解析を使用して測定する。別の実施態様によれば、Kdは、〜10応答単位(RU)で固定化された抗原CM5チップを用いるBIACORE(登録商標)−2000又はBIACORE(登録商標)−3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、NJ)を25℃で使用して、表面プラズモン共鳴アッセイによって測定する。簡単に述べると、供給業者の説明書に従って、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)を、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗原を、10mMの酢酸ナトリウム、pH4.8を用いて、5μg/ml(〜0.2μM)に希釈してから、5μl/分の流速で注入して、約10応答単位(RU)の結合タンパク質を得る。抗原の注入に続いて、1Mエタノールアミンを注入して、未反応基をブロックする。カイネティクス測定については、Fabの2倍階段希釈物(0.78nMから500nM)を、0.05%ポリソルベート20(TWEEN−20(商標))界面活性剤を含むPBS(PBST)に、約25μl/分の流速で25℃で注入する。会合速度(k
on)及び解離速度(k
off)を、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェア3.2版)を使用して、結合センサーグラムと解離センサーグラムを同時に適合することによって計算する。平衡解離定数(Kd)を、比率k
off/k
onとして計算する。例えば、Chenら、J.Mol.Biol.293:865−881(1999)を参照されたい。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによって、オンレート(on-rate)が10
6M
−1S−1を超える場合は、ストップフロー装備分光光度計(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを有する8000−シリーズSLM−AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定される、漸増濃度の抗原の存在下において、PBS、pH7.2に入れた20nMの抗抗原抗体(Fab型)の25℃での蛍光発光強度(励起=295nM;発光=340nM、16nMバンドパス)の増大又は低下を測定する蛍光クエンチング法を使用することによって、オンレート(on-rate)を決定することができる。
【0139】
2.抗体断片
ある種の実施態様では、本明細書で提供する抗体は抗体断片である。抗体断片としては、これらに限定されないが、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)
2、Fv及びscFv断片並びに以下に記載する他の断片が挙げられる。特定の抗体断片の総説については、Hudsonら、Nat.Med.9:129−134(2003)を参照されたい。scFv断片の総説については、例えば、Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻、Rosenburg及びMoore編、(Springer−Verlag、New York)、269−315頁(1994)を参照されたい。国際公開第93/16185号;並びに米国特許第5571894号及び第5587458号も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、in vivoでの半減期が増大したFab及びF(ab’)
2断片の考察については、米国特許第5869046号を参照されたい。
【0140】
ダイアボディは、二価又は二重特異性であり得る、2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、欧州特許第404097号;国際公開第1993/01161号;Hudsonら、Nat.Med.9:129−134(2003);及びHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444−6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディも、Hudsonら、Nat.Med.9:129−134(2003)に記載されている。
【0141】
シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべて若しくは一部、又は軽鎖可変ドメインのすべて若しくは一部を含む抗体断片である。ある種の実施態様では、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体(Domantis,Inc.、Waltham、MA;例えば、米国特許第6248516B1号を参照されたい)である。
【0142】
抗体断片は、これらに限定されないが、本明細書に記載のように、インタクトな抗体のタンパク質消化並びに組換え宿主細胞(例えば大腸菌(E.coli)又はファージ)による産生を含めた様々な手法によって作製することができる。
【0143】
3.キメラ抗体及びヒト化抗体
ある種の実施態様では、本明細書で提供する抗体はキメラ抗体である。特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4816567号;及びMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6851−6855(1984))に記載されている。一例を挙げれば、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ又は非ヒト霊長類、例えばサルに由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる例を挙げれば、キメラ抗体は、クラス又はサブクラスが親抗体のものから変化した「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合性断片を含む。
【0144】
ある種の実施態様では、キメラ抗体はヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトに対する免疫原性を低減するためにヒト化されるが、非ヒト親抗体の特異性及び親和性を保持する。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えばCDR(又はその一部)が非ヒト抗体に由来し、FR(又はその一部)がヒト抗体配列に由来する、1つ又は複数の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、任意選択的に、ヒト定常領域の少なくとも一部も含む。幾つかの実施態様では、例えば、抗体特異性又は親和性を回復する又は改善するために、ヒト化抗体の幾つかのFR残基が、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0145】
ヒト化抗体及びその作製方法は、例えば、Almagro及びFransson、Front.Biosci.13:1619−1633(2008)に概説されており、さらに、例えば、Riechmannら、Nature 332:323−329(1988);Queenら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA86:10029−10033(1989);米国特許第5821337号、第7527791号、第6982321号及び第7087409号;Kashmiriら、Methods 36:25−34(2005)(SDR(a−CDR)グラフティングを記載);Padlan、Mol.Immunol.28:489−498(1991)(「リサーフェシング」を記載);Dall’Acquaら、Methods 36:43−60(2005)(「FRシャッフリング」を記載);並びにOsbournら、Methods 36:61−68(2005)及びKlimkaら、Br.J.Cancer、83:252−260(2000)(FRシャッフリングに対する「誘導選択」アプローチを記載)に記載されている。
【0146】
ヒト化に使用することができるヒトフレームワーク領域としては、これらに限定されないが、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Simsら、J.Immunol.151:2296(1993)を参照されたい)、軽鎖又は重鎖可変領域の特定サブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:4285(1992);及びPrestaら、J.Immunol.、151:2623(1993)を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域又はヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro及びFransson、Front.Biosci.13:1619−1633(2008)を参照されたい)、並びにFRライブラリーのスクリーニングから得られるフレームワーク領域(例えば、Bacaら、J.Biol.Chem.272:10678−10684(1997);及びRosokら、J.Biol.Chem.271:22611−22618(1996)を参照されたい)が挙げられる。
【0147】
4.ヒト抗体
ある種の実施態様では、本明細書で提供する抗体はヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で知られている様々な手法を使用して産生することができる。ヒト抗体は、一般的に、van Dijk及びvan de Winkel、Curr.Opin.Pharmacol.5:368−74(2001)、並びにLonberg、Curr.Opin.Immunol.20:450−459(2008)に記載されている。
【0148】
ヒト抗体は、抗原負荷に反応してインタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製することができる。そうした動物は、典型的にはヒト免疫グロブリン座のすべて又は一部を含み、ヒト免疫グロブリン座は、内在性の免疫グロブリン座に置き換わるか、又は染色体外に存在するか、若しくは動物の染色体にランダムに組み込まれる。そうしたトランスジェニックマウスでは、内在性の免疫グロブリン座は、一般に不活化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の総説については、Lonberg、Nat.Biotech.23:1117−1125(2005)を参照されたい。例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載する米国特許第6075181号及び第6150584号;HUMAB(登録商標)技術を記載する米国特許第5770429号;K−M MOUSE(登録商標)技術を記載する米国特許第7041870号、並びにVELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載する米国特許出願公開第2007/0061900号も参照されたい。そうした動物によって生成されたインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、さらに改変することができる。
【0149】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系統が記載されている(例えば、Kozbor J.Immunol.、133:3001(1984);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、51−63頁(Marcel Dekker,Inc.、New York、1987);及びBoernerら、J.Immunol.、147:86(1991)を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体も、Liら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、103:3557−3562(2006)に記載されている。さらなる方法としては、例えば、米国特許第7189826号(ハイブリドーマ細胞系統からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載する)及びNi、Xiandai Mianyixue、26(4):265−268(2006)(ヒト−ヒトハイブリドーマを記載する)に記載されるものが挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)も、Vollmers及びBrandlein、Histology and Histopathology、20(3):927−937(2005)、並びにVollmers及びBrandlein、Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology、27(3):185−91(2005)に記載されている。
【0150】
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成することもできる。次いで、そうした可変ドメイン配列を、所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。ヒト抗体を抗体ライブラリーから選択する手法を以下に記載する。
【0151】
5.ライブラリー由来抗体
本発明の抗体は、所望の活性(1又は複数)を有する抗体について、コンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離することができる。例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成するための、及び所望の結合特徴を有する抗体についてそうしたライブラリーをスクリーニングするための種々の方法が、当技術分野で知られている。そうした方法は、例えば、Hoogenboomら、Methods in Molecular Biology 178:1−37(O’Brienら編、Human Press、Totowa、NJ、2001)に概説されており、さらに、例えば、McCaffertyら、Nature 348:552−554;Clacksonら、Nature 352:624−628(1991);Marksら、J.Mol.Biol.222:581−597(1992);Marks及びBradbury、Methods in Molecular Biology 248:161−175(Lo編、Human Press、Totowa、NJ、2003);Sidhuら、J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004);Leeら、J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004);Fellouse、Proc.Natl.Acad.Sci.USA101(34):12467−12472(2004);及びLeeら、J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132(2004)に記載されている。
【0152】
ある種のファージディスプレイ法では、Winterら、Ann.Rev.Immunol.12:433−455(1994)に記載されているように、VH及びVL遺伝子のレパートリーをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により別々にクローニングし、ファージライブラリーにおいてランダムに組換え、次いでこれを、抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは、典型的には、単鎖Fv(scFv)断片又はFab断片の何れかとして、抗体断片を提示する。免疫化された供給源由来のライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要無しで、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。あるいは、Griffithsら、EMBO J、12:725−734(1993)によって記載されているように、ナイーブレパートリーを(例えばヒトから)クローニングし、いかなる免疫化もせずに、幅広い非自己及び自己抗原に対して抗体の単一供給源を提供することができる。最後に、Hoogenboom及びWinter、J.Mol.Biol.、227:381−388(1992)によって記載されているように、再配列していないV−遺伝子セグメントを幹細胞からクローニングし、高度可変CDR3領域をコードし且つin vitroで再配列を達成するためのランダム配列を含むPCRプライマーを使用して、ナイーブライブラリーも合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリーを記載する特許公報としては、例えば、米国特許第5750373号、並びに米国特許公開第2005/0079574号、第2005/0119455号、第2005/0266000号、第2007/0117126号、第2007/0160598号、第2007/0237764号、第2007/0292936号及び第2009/0002360号が挙げられる。
【0153】
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体又は抗体断片は、本明細書で、ヒト抗体又はヒト抗体断片とみなす。
【0154】
6.多重特異性抗体
ある種の実施態様では、本明細書で提供する抗体は、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある種の実施態様では、結合特異性の1つはLY6Eに対してであり、他は、任意の他の抗原に対してである。ある種の実施態様では、結合特異性の1つはLY6Eに対してであり、他はCD3に対してである。例えば、米国特許第5821337号を参照されたい。ある種の実施態様では、二重特異性抗体は、Ly6Eの2つの異なるエピトープに結合することができる。二重特異性抗体は、Ly6Eを発現する細胞に細胞傷害剤を局在させるのに使用することもできる。二重特異性抗体は、全長抗体又は抗体断片として調製することができる。
【0155】
多重特異性抗体を作製するための手法としては、これらに限定されないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖ペアの組換え共発現(Milstein及びCuello、Nature 305:537(1983)、国際公開第93/08829号、及びTrauneckerら、EMBO J.10:3655(1991)を参照されたい)、並びに「knob−in−hole」エンジニアリング(例えば、米国特許第5731168号を参照されたい)が挙げられる。多重特異性抗体は、抗体のFc−ヘテロ二量体分子を作製するための静電ステアリング効果を操作すること(国際公開第2009/089004A1号)、2つ以上の抗体又は断片を架橋結合すること(例えば、米国特許第4676980号、及びBrennanら、Science、229:81(1985)を参照されたい)、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelnyら、J.Immunol.、148(5):1547−1553(1992)を参照されたい)、「ダイアボディ」技術を使用して二重特異性抗体断片を作製すること(例えば、Hollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444−6448(1993)を参照されたい)、及び単鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、Gruberら、J.Immunol.、152:5368(1994)を参照されたい)、及び例えば、TuttらJ.Immunol.147:60(1991)に記載されているような三重特異性抗体を調製することによって、作製することもできる。
【0156】
「オクトパス抗体」を含めて、3つ以上の機能的抗原結合部位を有する操作された抗体も本明細書に含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576A1号を参照されたい)。
【0157】
本明細書の抗体又は断片には、Ly6E及び別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用FAb」又は「DAF」も含まれる(例えば米国特許出願公開第2008/0069820を参照されたい)。
【0158】
7.抗体変異体
ある種の実施態様では、本明細書で提供する抗体のアミノ酸配列変異体が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的な特性を改善することが望ましい場合もある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な修飾を導入すること、又はペプチド合成によって調製することができる。そうした修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又はその残基への挿入、及び/又はその残基の置換が挙げられる。最終的な構築物が所望の特徴、例えば、抗原結合を有することを条件として、最終的な構築物を得るために、欠失、挿入及び置換を任意に組み合わせることができる。
【0159】
a)置換、挿入及び欠失変異体
ある種の実施態様では、1つ又は複数のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。置換突然変異誘発の目的の部位は、HVR及びFRを含む。保存的置換を、表1において「好ましい置換」の項目の下に示す。より実質的な変化を、表1おいて「例示的置換」の項目の下に提供し、アミノ酸側鎖クラスに関連して以下にさらに記載するように提供する。アミノ酸置換は、目的の抗体に導入することができ、その産物は、所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の低下又はADCC又はCDCの改善についてスクリーニングされる。
【0160】
アミノ酸は、共通の側鎖特性によってグループ化することができる。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
(3)酸性:Asp、Glu、
(4)塩基性:His、Lys、Arg、
(5)鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro、
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe
【0161】
非保存的酸置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを必要とするであろう。
【0162】
置換変異体の1タイプは、親抗体(例えば、ヒト化の又はヒト抗体)の1つ又は複数の高頻度可変領域残基を置換することを含む。一般に、さらなる試験のために選択された得られた変異体(複数可)は、親抗体と比較して、特定の生物学的な特性(例えば親和性の増大、免疫原性の低減)における改変(例えば改善)を有する、及び/又は実質的に保持された、親抗体の特定の生物学的な特性を有する。例示的置換変異体は親和性成熟抗体であり、これは、例えば、ファージディスプレイに基づく親和性成熟法、例えば本明細書に記載のものを使用して、都合良く生成することができる。簡単に述べると、1つ又は複数のHVR残基を変異させ、変異体抗体をファージ上に提示し、特定の生物活性(例えば結合親和性)についてスクリーニングする。
【0163】
変更(例えば置換)は、例えば抗体親和性を改善するために、HVRにおいて行うことができる。そうした変更は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟過程の間に高頻度で変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury、Methods Mol.Biol.207:179−196(2008)を参照されたい)、及び/又はSDR(a−CDR)において行うことができ、得られた変異体VH又はVLは、結合親和性について試験される。2次ライブラリーを構築し、それから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboomら、Methods in Molecular Biology 178:1−37(O’Brienら編、Human Press、Totowa、NJ、(2001))に記載されている。親和性成熟の幾つかの実施態様では、種々の方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャフリング又はオリゴヌクレオチド指定突然変異)のうちの何れかによって、成熟のために選ばれた可変遺伝子中に多様性を導入する。次いで2次ライブラリーを作出する。次いで、このライブラリーをスクリーニングして、所望の親和性を有する任意の抗体変異体を同定する。多様性を導入するための別の方法は、幾つかのHVR残基(例えば、一度に4−6残基)をランダム化する、HVR指向性アプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えばアラニンスキャニング変異誘発又はモデリングを使用して、具体的に特定することができる。特にCDR−H3及びCDR−L3が標的にされることが多い。
【0164】
ある種の実施態様では、置換、挿入又は欠失は、そうした変化が、抗体が抗原に結合する能力を実質的に低減しない限り、1つ又は複数のHVR内に生じてもよい。例えば、結合親和性を実質的に低減しない保存的変更(例えば、本明細書で提供する保存的置換)は、HVR内で行うことができる。そうした変更は、HVRの「ホットスポット」又はSDRの外側であってもよい。上記の変異体VH及びVL配列のある種の実施態様では、各HVRは、不変であるか、又は1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を含むにすぎないかの何れかである。
【0165】
突然変異誘発の標的にされ得る抗体の残基又は領域を同定するのに有用な方法は、Cunningham及びWells(1989)Science、244:1081−1085によって記載されているように、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、標的残基の残基又は集団(例えば、arg、asp、his、lys及びgluなどの荷電残基)を同定し、中性の又は負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)で置き換えて、抗原との抗体の相互作用が影響を受けるかどうかを決定する。さらなる置換を、最初の置換に機能的感受性を示すアミノ酸の位置に導入することができる。あるいは、又はさらに、抗原抗体複合体の結晶構造を使用して、抗体と抗原の間の接触点を同定する。そうした接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的にされてもよいし、排除されてもよい。変異体をスクリーニングして、それらが所望の特性を含むかどうかを決定することができる。
【0166】
アミノ酸配列挿入は、1残基から100以上の残基を含むポリペプチドまでの長さに及ぶアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入変異体としては、抗体の血清半減期を増大させる(例えばADEPTについての)酵素又はポリペプチドに対する抗体のN末端又はC末端への融合が挙げられる。
【0167】
b)グリコシル化変異体
ある種の実施態様では、本明細書で提供する抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増大又は低下させるように変化させる。抗体に対するグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ又は複数のグリコシル化部位が作出される又は除去されるようにアミノ酸配列を変化させることによって、好都合に達成することができる。
【0168】
抗体がFc領域を含む場合は、それに結合する炭水化物を変化させることができる。哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、一般に、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN結合によって結合した、分枝した二分岐オリゴ糖を典型的には含む。例えば、Wrightら、TIBTECH15:26−32(1997)を参照されたい。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース及びシアル酸、並びに二分岐のオリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースを含み得る。幾つかの実施態様では、特定の改善した特性を有する抗体変異体を作出するために、本発明の抗体のオリゴ糖を修飾することができる。
【0169】
一実施態様では、Fc領域に(直接的又は間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体変異体が提供される。例えば、そうした抗体のフコースの量は、1%から80%、1%から65%、5%から65%又は20%から40%であり得る。フコースの量は、例えば国際公開第2008/077546号に記載されているように、MALDI−TOF質量分析法によって測定されるような、Asn297に結合したすべての糖構造体(例えば複合、ハイブリド及び高マンノース構造体)の合計に対して、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定する。Asn297は、Fc領域の約297位(Fc領域残基のEu番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、抗体の軽微な配列バリエーションが原因で、Asn297は、297位の約±3アミノ酸上流又は下流、すなわち294位と300位の間に位置する可能性もある。そうしたフコシル化変異体は、改善したADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta,L.);米国特許出願公開第2004/0093621号(協和発酵工業株式会社)を参照されたい。「脱フコシル化」又は「フコース欠損」抗体変異体に関する刊行物の例としては、米国特許出願公開第2003/0157108号;国際公開第2000/61739号;国際公開第2001/29246号;米国特許出願公開第2003/0115614号;米国特許出願公開第2002/0164328号;米国特許出願公開第2004/0093621号;米国特許出願公開第2004/0132140号;米国特許出願公開第2004/0110704号;米国特許出願公開第2004/0110282号;米国特許出願公開第2004/0109865号;国際公開第2003/085119号;国際公開第2003/084570号;国際公開第2005/035586号;国際公開第2005/035778号;国際公開第2005/053742号;国際公開第2002/031140号;Okazakiら、J.Mol.Biol.336:1239−1249(2004);Yamane−Ohnukiら、Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞系統の例としては、タンパク質のフコシル化を欠いたLec13CHO細胞(Ripkaら Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545(1986);米国特許出願公開第2003/0157108A1号、Presta,L;及び国際公開第2004/056312A1号、Adamsら、特に実施例11)、並びにノックアウト細胞系統、例えば、α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8のノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane−Ohnukiら、Biotech.Bioeng.87:614(2004);Kanda,Y.ら、Biotechnol.Bioeng.、94(4):680−688(2006);及び国際公開第2003/085107号を参照されたい)が挙げられる。
【0170】
抗体変異体は、二分されたオリゴ糖をさらに備えており、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐のオリゴ糖がGlcNAcによって二分されている。そうした抗体変異体は、フコシル化が低減されている、及び/又はADCC機能が改善されている可能性がある。そうした抗体変異体の例は、例えば、国際公開第2003/011878号(Jean−Mairetら);米国特許第6602684号(Umanaら);及び米国特許出願公開第2005/0123546(Umanaら)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体も提供される。そうした抗体変異体は、CDC機能が改善されている可能性がある。そうした抗体変異体は、例えば、国際公開第1997/30087号(Patelら);国際公開第1998/58964号(Raju,S.);及び国際公開第1999/22764号(Raju,S.)に記載されている。
【0171】
c)Fc領域変異体
ある種の実施態様では、1つ又は複数のアミノ酸修飾を、本明細書で提供する抗体のFc領域に導入することができ、それによって、Fc領域変異体を生成することができる。Fc領域変異体は、1つ又は複数のアミノ酸の位置に、アミノ酸修飾(例えば置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のFc領域)を含むことができる。
【0172】
ある種の実施態様では、本発明は、in vivoでの抗体半減期が重要であるけれども、特定のエフェクター機能(補体及びADCCなど)は不要又は有害である適用にとって望ましい候補とする、すべてではないが、いくらかのエフェクター機能を有する抗体変異体を企図する。In vitro及び/又はin vivo細胞傷害性アッセイを行って、CDC及び/又はADCC活性の低減/喪失を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠く(したがって、ADCC活性を欠く可能性がある)が、FcRn結合能力を保持するということを確実にすることができる。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、一方、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcRの発現は、Ravetch及びKinet、Annu.Rev.Immunol.9:457−492(1991)の464頁の表3に概説されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの非限定例は、米国特許第5500362号(例えばHellstrom,I.ら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA83:7059−7063(1986)を参照されたい)及びHellstrom,Iら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA82:1499−1502(1985);第5821337号(Bruggemann,M.ら、J.Exp.Med.166:1351−1361(1987)を参照されたい)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法を用いることもできる(例えば、ACTI(商標)フローサイトメトリー用の非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View、CA);及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega、Madison、WI)を参照されたい)。そうしたアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、又はさらに、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、ClynesらProc.Nat’l Acad.Sci.USA95:652−656(1998)に開示されているものなどの動物モデルで評価することができる。C1q結合アッセイを行って、抗体がC1qに結合することができず、それ故にCDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402のC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行うことができる(例えば、Gazzano−Santoroら、J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg,M.S.ら、Blood 101:1045−1052(2003);並びにCragg,M.S.及びM.J.Glennie、Blood 103:2738−2743(2004)を参照されたい)。当技術分野で知られている方法を使用して、FcRn結合及びin vivoクリアランス/半減期の測定も行うことができる(例えば、Petkova,S.B.ら、Int’l.Immunol.18(12):1759−1769(2006)を参照されたい)。
【0173】
エフェクター機能が低減した抗体としては、Fc領域残基238、265、269、270、297、327及び329の1つ又は複数の置換を有する抗体(米国特許第6737056)が挙げられる。そうしたFc突然変異体としては、残基265及び297からアラニンへの置換を有する、いわゆる「DANA」Fc突然変異体(米国特許第7332581号)を含めて、アミノ酸の位置265、269、270、297及び327の2つ以上の置換を有するFc突然変異体が挙げられる。
【0174】
FcRへの結合が改善又は減弱された特定の抗体変異体が記載されている(例えば、米国特許第6737056号;国際公開第2004/056312号、及びShieldsら, J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)を参照されたい)。
【0175】
ある種の実施態様では、抗体変異体は、ADCCを改善する1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置298、333及び/又は334(残基のEU番号付け)での置換を有するFc領域を含む。
【0176】
幾つかの実施態様では、例えば、米国特許第6194551号、国際公開第99/51642号、及びIdusogieら、J.Immunol.164:4178−4184(2000)に記載されているように、変化した(すなわち、改善又は減弱した)C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)をもたらす変更が、Fc領域中で行われる。
【0177】
半減期が延び、母性IgGを胎児へ移行させるのに関与する(Guyerら, J. Immunol. 117:587 (1976)、及びKimら, J. Immunol. 24:249 (1994))新生児Fc受容体(FcRn)への結合が改善された抗体が、米国特許出願公開第2005/0014934A1号(Hintonら)に記載されている。それらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する1つ又は複数の置換を有する、Fc領域含む。そうしたFc変異体としては、Fc領域の残基238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434の1つ又は複数での置換、例えば、Fc領域の残基434での置換(米国特許第7371826号)を有する変異体が挙げられる。
【0178】
Fc領域変異体の他の例に関する、Duncan&Winter、Nature 322:738−40(1988);米国特許第5648260号;米国特許第5624821号;及び国際公開第94/29351号も参照されたい。
【0179】
d)システイン操作抗体変異体
ある種の実施態様では、抗体の1つ又は複数の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作抗体、例えば「チオMAb」を作出することが望ましい場合もある。特定の実施態様では、置換残基は、抗体のアクセス可能な部位に存在する。そのような残基をシステインで置換することにより、反応性のチオール基は、それによって、抗体のアクセス可能な部位に配置され、本明細書でさらに記載するように、薬物部分又はリンカー−薬物部分などの他の部分に抗体をコンジュゲートして、イムノコンジュゲートを作出するのに使用することができる。ある種の実施態様では、以下の残基の任意の1つ又は複数をシステインで置換することができる:軽鎖のV205(Kabatの番号付け)、重鎖のA118(EU番号付け)、及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7521541号に記載されているように生成することができる。
【0180】
e)抗体誘導体
ある種の実施態様では、本明細書で提供する抗体は、当技術分野で知られており且つ容易に利用可能な付加的な非タンパク質性部分を含むように、さらに改変することができる。抗体の誘導体化に適した部分としては、これに限定されないが、水溶性ポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーの非限定例としては、これらに限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーの何れか)、及びデキストラン又はポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、並びにそれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造における利点を有し得る。ポリマーは、いかなる分子量のものでもよく、分枝でも非分枝でもよい。抗体に結合したポリマーの数は変動する可能性があり、1ポリマーより多くが結合する場合は、それらは、同じ分子でも異なる分子でもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又はタイプは、これらに限定されないが、改善される抗体の特定の特性又は機能、抗体誘導体が定められた条件下などで療法に使用されるかどうかなど含めた考慮に基づいて決定することができる。
【0181】
別の実施態様では、放射線へさらすことによって選択的に加熱することができる抗体及び非タンパク質性部分のコンジュゲートが提供される。一実施態様では、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブ(Kamら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600-11605(2005))である。放射線はいかなる波長でもよく、これに限定はされないが、通常の細胞を害さないが、抗体−非タンパク質性部分の近位細胞が死滅する温度に非タンパク質性部分を加熱する波長が挙げられる。
【0182】
B.組換え法及び組成物
抗体は、例えば、米国特許第4816567号に記載されているような組換え法及び組成物を使用して産生することができる。一実施態様では、本明細書に記載の抗LY6E抗体をコードする単離核酸が提供される。そうした核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/又は抗体のVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖)をコードし得る。さらなる実施態様では、そうした核酸を含む1つ又は複数のベクター(例えば発現ベクター)が提供される。さらなる実施態様では、そうした核酸を含む宿主細胞が提供される。そうした実施態様の1つでは、宿主細胞は、以下のものを含む(例えば、以下のもので形質転換されている):(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、又は(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター、並びに抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクター。一実施態様では、宿主細胞は、真核性であり、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一実施態様では、抗LY6E抗体を作製する方法が提供され、この方法は、上記の抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、抗体の発現に適した条件下で培養すること、及び任意選択的に、宿主細胞(又は宿主細胞の培養培地)から抗体を回収することを含む。
【0183】
抗LY6E抗体を組換え産生するために、例えば上記のように、抗体をコードする核酸を単離し、さらなるクローニング及び/又は宿主細胞での発現のために、1つ又は複数のベクターに挿入する。そうした核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し、配列決定することができる。
【0184】
抗体をコードするベクターのクローニング又は発現に適切な宿主細胞としては、本明細書に記載の原核性又は真核性の細胞が挙げられる。例えば、抗体は、特に、グリコシル化及びFcエフェクター機能が必要でない場合は、細菌で産生することができる。抗体断片及びポリペプチドの細菌での発現については、例えば、米国特許第5648237号、第5789199号及び第5840523号を参照されたい(大腸菌での抗体断片の発現を記載する、Charlton、Methods in Molecular Biology、248巻(B.K.C.Lo編、Humana Press、Totowa、NJ、2003)245−254頁も参照されたい)。発現させた後に、抗体を、可溶性画分の細菌細胞のペーストから単離することができ、さらに精製することができる。
【0185】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母などの真核性微生物が、抗体をコードするベクターにとってクローニング又は発現の適切な宿主であり、これには、グリコシル化経路が「ヒト化され」、その結果、部分的に又は完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体を産生する真菌及び酵母株が含まれる。Gerngross、Nat.Biotech.22:1409−1414(2004)、及びLiら、Nat.Biotech.24:210−215(2006)を参照されたい。
【0186】
グリコシル化抗体の発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。昆虫細胞と併せて使用することができる、特にヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために使用することができる、多数のバキュロウイルス株が同定されている。
【0187】
植物細胞培養物も宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5959177号、第6040498号、第6420548号、第7125978号及び第6417429号(トランスジェニック植物で抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載する)を参照されたい。
【0188】
脊椎動物細胞も宿主として使用することができる。例えば、懸濁液中で増殖するように適合されている哺乳動物細胞系統は、有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞系統の他の例は、SV40(COS−7)によって形質転換されたサル腎臓CV1系統、ヒト胚腎臓系統(例えば、Grahamら、J.Gen Virol.36:59(1977)に記載されているような293又は293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather、Biol.Reprod.23:243−251(1980)に記載されているようなTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76)、ヒト子宮頚癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍(MMT060562)、例えば、Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982)に記載されているようなTRI細胞、MRC5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞系統としては、DHFR
−CHO細胞(Urlaubら, Proc.Natl.Acad.Sci.USA77:4216(1980))を含めたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、及びY0、NS0及びSp2/0などの骨髄腫細胞系統が挙げられる。抗体産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞系統の総説として、例えば、Yazaki及びWu、Methods in Molecular Biology、248巻(B.K.C.Lo編、Humana Press、Totowa、NJ)、255−268頁(2003)を参照されたい。
【0189】
C.アッセイ
本明細書で提供する抗LY6E抗体は、当技術分野で知られている様々なアッセイによって、その物理的/化学的性質及び/若しくは生物活性を同定することができ、それらについてスクリーニングすることができ、又はそれらについて特徴づけることができる。
【0190】
一態様では、例えばELISA、BIACore(登録商標)、FACS又はウェスタンブロットなどの既知の方法によって、本発明の抗体をその抗原結合活性について試験する。
【0191】
別の態様では、競合アッセイを使用して、LY6Eへの結合について本明細書に記載の抗体のうちの何れかと競合する抗体を同定することができる。ある種の実施態様では、そうした競合抗体は、本明細書に記載の抗体が結合するのと同じエピトープ(例えば、直鎖状又は立体構造エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングための詳細な例示的方法は、Morris(1996)「Epitope Mapping Protocols」、Methods in Molecular Biology 66巻(Humana Press、Totowa、NJ)に提供されている。
【0192】
例示的競合アッセイでは、固定化されたLY6Eを、LY6Eに結合する第1の標識抗体(例えば、本明細書に記載の抗体のうちの何れか)と、LY6Eへの結合について1次抗体と競合するその能力について試験される第2の非標識抗体とを含む溶液中でインキュベートする。2次抗体は、ハイブリドーマ上清中に存在してもよい。コントロールとして、固定化されたLY6Eを、第1の標識抗体を含むが、第2の非標識抗体を含まない溶液中でインキュベートする。1次抗体がLY6Eに結合可能な条件下でインキュベーションした後、過剰な未結合抗体を除去し、固定化されたLY6Eに結合した標識の量を測定する。固定化されたLY6Eに結合した標識の量が、コントロール試料と比較して試験試料中で実質的に低減する場合は、LY6Eへの結合について、2次抗体が1次抗体と競合していることを示す。Harlow及びLane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual第14章(Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY)を参照されたい。
【0193】
D.イムノコンジュゲート
本発明は、1種又は複数の細胞傷害剤、例えば、化学療法剤又は化学療法薬、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物若しくは動物起源のタンパク質毒素、酵素的に活性な毒素、又はそれらの断片)又は放射性同位元素(すなわち放射性コンジュゲート)にコンジュゲートした、本明細書における抗LY6E抗体を含むイムノコンジュゲートも提供する。
【0194】
イムノコンジュゲートは、非コンジュゲート薬物の全身投与が、正常細胞に対して許容できないレベルの毒性をもたらし得る場合に、薬物部分を腫瘍へ標的送達することを可能にし、幾つかの実施態様では、その中での細胞内蓄積を可能にする(Polakis P. (2005) Current Opinion in Pharmacology 5:382-387)。
【0195】
抗体−薬物コンジュゲート(ADC)は、抗原を発現する腫瘍細胞に強力な細胞毒性薬物をターゲティングすることによって、抗体及び細胞毒性薬物の両方の特性を兼ね備え(Teicher, B.A. (2009) Current Cancer Drug Targets 9:982-1004)、それによって、有効性を最大にし、オフターゲットな毒性を最小にすることにより治療指数を高める(Carter, P.J.及びSenter P.D. (2008) The Cancer Jour. 14(3):154-169;Chari, R.V. (2008) Acc. Chem. Res. 41:98-107)、目標とされる化学療法分子である。
【0196】
本発明のADC化合物としては、抗がん活性を有するものが挙げられる。幾つかの実施態様ではADC化合物は、薬物部分にコンジュゲートした、すなわち共有結合的に結合した抗体を含む。幾つかの実施態様では、抗体は、リンカーを介して共有結合的に薬物部分に結合している。本発明の抗体−薬物コンジュゲート(ADC)は、腫瘍組織に有効量の薬物を選択的に送達し、これによって、治療指数(「治療濃度域」)を増大させながら、より大きな選択性、すなわちより低い有効量を達成することができる。
【0197】
抗体−薬物コンジュゲート(ADC)の薬物部分(D)は、細胞傷害性又は細胞増殖抑制性効果を有する任意の化合物、部分又は基を含むことができる。薬物部分は、これらに限定されないが、チューブリン結合、DNA結合又はインターカレーション、並びにRNAポリメラーゼ、タンパク質合成及び/又はトポイソメラーゼの阻害を含めた機序によって、その細胞傷害性及び細胞増殖抑制性効果を与えることができる。例示的薬物部分は、これらに限定されないが、マイタンシノイド、ドラスタチン、オーリスタチン、カリケアマイシン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、ネモルビシン及びその誘導体、PNU−159682、アントラサイクリン、デュオカルマイシン、ビンカアルカロイド、タキサン、トリコテシン、CC1065、カンプトテシン、エリナフィド、並びに細胞傷害性活性を有するそれらの立体異性体、同配体、類似体及び誘導体が挙げられる。そうしたイムノコンジュゲートの非限定例を、以下でさらに詳細に論じる。
【0198】
1.例示的抗体−薬物コンジュゲート
抗体−薬物コンジュゲート(ADC)化合物の例示的実施態様は、腫瘍細胞を標的とする抗体(Ab)、薬物部分(D)、及びAbをDに結合させるリンカー部分(L)を含む。幾つかの実施態様では、抗体は、リジン及び/又はシステインなどの1つ又は複数のアミノ酸残基を介してリンカー部分(L)に結合する。
【0199】
例示的ADCは、式I:
Ab−(L−D)
p 式I
を有する。
【0200】
式中、pは1から約20である。幾つかの実施態様では、抗体にコンジュゲートすることができる薬物部分の数は、遊離システイン残基の数によって制限される。幾つかの実施態様では、遊離システイン残基を、本明細書に記載の方法によって抗体のアミノ酸配列に導入する。例示的な式IのADCとしては、これらに限定されないが、1、2、3又は4つの操作したシステインアミノ酸を有する抗体(Lyon,R.ら(2012) Methods in Enzym. 502:123-138)が挙げられる。幾つかの実施態様では、1つ又は複数の遊離システイン残基は、操作しなくても抗体中に既に存在し、そのような場合は、現存する遊離システイン残基を使用して、抗体を薬物にコンジュゲートすることができる。幾つかの実施態様では、1つ又は複数の遊離システイン残基を生成するために、抗体のコンジュゲーションに先立って抗体を還元条件にさらす。
【0201】
a)例示的リンカー
「リンカー」(L)は、1つ又は複数の薬物部分(d)を抗体(Ab)に連結して、式Iの抗体−薬物コンジュゲート(ADC)を形成するのに使用することができる、二機能性又は多官能性部分である。幾つかの実施態様では、抗体−薬物コンジュゲート(ADC)は、薬物及び抗体に共有結合的に結合する反応官能性を有するリンカーを使用して調製することができる。例えば、幾つかの実施態様では、抗体(Ab)のシステインチオールは、リンカーの反応性官能基との結合、又はADCを作製するための薬物−リンカー中間体を形成することができる。
【0202】
一態様では、リンカーは、抗体に存在する遊離システインと反応して共有結合を形成することができる官能性を有する。非限定的な例示的なそうした反応官能基としては、マレイミド、ハロアセトアミド、α−ハロアセチル、スクシンイミドエステルなどの活性化エステル、4−ニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、無水物、酸塩化物、塩化スルホニル、イソシアネート、及びイソチオシアネートが挙げられる。例えば、Klussmanら(2004)、Bioconjugate Chemistry 15(4):765−773の766頁のコンジュゲーション方法、及び本明細書の実施例を参照されたい。
【0203】
幾つかの実施態様では、リンカーは、抗体に存在する求電子基と反応することができる官能性を有する。例示的なそうした求電子基としては、これらに限定されないが、アルデヒド基及びケトンカルボニル基が挙げられる。幾つかの実施態様では、リンカーの反応官能基のヘテロ原子は、抗体の求電子基と反応することができ、抗体ユニットに対して共有結合を形成することができる。非限定的な例示的なそうした反応官能基としては、これらに限定されないが、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート、及びアリールヒドラジドが挙げられる。
【0204】
リンカーは、1つ又は複数のリンカー構成成分を含むことができる。例示的リンカー構成成分としては、6−マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、バリン−シトルリン(「val−cit」又は「vc」)、アラニン−フェニルアラニン(「ala−phe」)、p−アミノベンジルオキシカルボニル(「PAB」)、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルチオ)ペンタノエート(「SPP」)、及び4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1カルボキシレート(「MCC」)が挙げられる。様々なリンカー構成成分が当技術分野で知られており、それらの幾つかを以下に記載する。
【0205】
リンカーは、薬物の放出を促進する「切断可能なリンカー」でもよい。非限定的な例示的な切断可能なリンカーとしては、(例えばヒドラゾンを含む)酸不安定性リンカー、プロテアーゼ感受性(例えばペプチダーゼ感受性)リンカー、感光性リンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chariら, Cancer Research 52:127-131(1992);米国特許第5208020号)が挙げられる。
【0206】
ある種の実施態様では、リンカーは、以下の式II:
−A
a−W
w−Y
y− 式II
を有する。
【0207】
式中、Aは「ストレッチャーユニット」であり、aは0から1の整数である。Wは「アミノ酸ユニット」であり、wは0から12の整数である。Yは「スペーサーユニット」であり、yは0、1又は2である。Ab、D及びpは、式Iについて上記で定義されている。そうしたリンカーの例示的実施態様は、出典明示により本明細書に明確に援用される、米国特許第7498298号に記載されている。
【0208】
幾つかの実施態様では、リンカー構成成分は、抗体を別のリンカー構成成分又は薬物部分に連結する「ストレッチャーユニット」を含む。非限定的な例示的ストレッチャーユニットを以下に示す(式中、波線は抗体、薬物又は追加的なリンカー構成成分への共有結合部位を示す)。
【0209】
幾つかの実施態様では、リンカー構成成分は「アミノ酸ユニット」を含む。幾つかのそうした実施態様では、アミノ酸ユニットによって、プロテアーゼによるリンカーの切断が可能になり、それによって、リソソーム酵素などの細胞内プロテアーゼへさらされた際に、イムノコンジュゲートからの薬物放出が促進される(Doroninaら(2003) Nat. Biotechnol. 21:778-784)。例示的アミノ酸ユニットとしては、これらに限定されないが、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド及びペンタペプチドが挙げられる。例示的ジペプチドとしては、これらに限定されないが、バリン−シトルリン(vc又はval−cit)、アラニン−フェニルアラニン(af又はala−phe)、フェニルアラニン−リジン(fk又はphe−lys)、フェニルアラニン−ホモリジン(phe−homolys)、及びN−メチル−バリン−シトルリン(Me−val−cit)が挙げられる。例示的トリペプチドとしては、これらに限定されないが、グリシン−バリン−シトルリン(gly−val−cit)及びグリシン−グリシン−グリシン(gly−gly−gly)が挙げられる。アミノ酸ユニットは、天然に生じるアミノ酸残基及び/又はマイナーなアミノ酸及び/又は天然に存在しないアミノ酸類似体、例えばシトルリンを含み得る。アミノ酸ユニットは、特定の酵素、例えば、腫瘍関連プロテアーゼ、カテプシンB、C及びD又はプラスミンプロテアーゼによる酵素切断について、設計及び最適化することができる。
【0210】
幾つかの実施態様では、リンカー構成成分は、直接的に又はストレッチャーユニット及び/若しくはアミノ酸ユニットを介して抗体を薬物部分に連結する「スペーサー」ユニットを含む。スペーサーユニットは、「自壊性」でもよいし、「非自壊性」でもよい。「非自壊性」スペーサーユニットは、ADCの切断の際に、一部又はすべてのスペーサーユニットが薬物部分に結合したままのスペーサーユニットである。非自壊性スペーサーユニットの例としては、これらに限定されないが、グリシンスペーサーユニット及びグリシン−グリシンスペーサーユニットが挙げられる。幾つかの実施態様では、グリシン−グリシンスペーサーユニットを含むADCの腫瘍細胞関連プロテアーゼによる酵素切断によって、ADCの残部からグリシン−グリシン−薬物部分が放出される。幾つかのそうした実施態様では、グリシン−グリシン−薬物部分が、腫瘍細胞において加水分解ステップにかけられ、それにより、薬物部分からグリシン−グリシンスペーサーユニットが切断される。
【0211】
「自壊性」スペーサーユニットによって、薬物部分の放出が可能になる。ある種の実施態様では、リンカーのスペーサーユニットは、p−アミノベンジルユニットを含む。幾つかのそうした実施態様では、p−アミノベンジルアルコールが、アミド結合を介してアミノ酸ユニットに結合し、カルバミン酸、メチルカルバミン酸又は炭酸塩が、ベンジルアルコールと薬物の間に作られる(Hamannら(2005) Expert Opin. Ther. Patents (2005) 15:1087-1103)。幾つかの実施態様では、スペーサーユニットは、p−アミノベンジルオキシカルボニル(PAB)である。幾つかの実施態様では、自壊性リンカーを含むADCは、構造:
を有する。
【0212】
式中、Qは−C
1−C
8アルキル、−O−(C
1−C
8アルキル)、−ハロゲン、−ニトロ又は−シアノであり、mは0から4に及ぶ整数であり、pは1から約20の範囲に及ぶ。幾つかの実施態様では、pは1から10、1から7、1から5、又は1から4の範囲に及ぶ。
【0213】
自壊性スペーサーの他の例としては、これらに限定されないが、PAB基、例えば、2−アミノイミダゾール−5−メタノール誘導体(米国特許第7375078;Hayら(1999) Bioorg. Med. Chem. Lett. 9:2237)及びオルソ−又はパラ−アミノベンジルアセタールと電子的に類似している芳香族化合物が挙げられる。幾つかの実施態様では、置換及び無置換の4−アミノ酪酸アミド(Rodriguesら(1995) Chemistry Biology 2:223)、適切に置換されたビシクロ[2.2.1]及びビシクロ[2.2.2]環系(Stormら(1972) J. Amer. Chem. Soc. 94:5815)、並びに2−アミノフェニルプロピオン酸アミド(Amsberryら(1990) J. Org. Chem. 55:5867)などの、アミド結合加水分解の際に環化を受けるスペーサーを使用することができる。グリシン残基のα−炭素への薬物の結合は、ADCにおいて有用であり得る自壊性スペーサーの別の例である(Kingsburyら(1984) J. Med. Chem. 27:1447)。
【0214】
幾つかの実施態様では、リンカーLは、分枝状の、多官能性リンカー部分を介して1つより多い薬物部分を抗体へ共有結合するための樹状型リンカー(Sunら(2002) Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 12:2213-2215;Sunら(2003) Bioorganic & Medicinal Chemistry 11:1761-1768)でもよい。樹状リンカーは、ADCの効力に関係している、抗体に対する薬物のモル比、すなわち負荷を増加させることができる。したがって、抗体がたった1つの反応性システインチオール基のみを有する場合は、多数の薬物部分は、樹状リンカーを介して結合することができる。
【0215】
式IのADCと関連して、非限定的な例示的リンカーを以下に示す。
[001]さらなる非限定的な例示的ADCは、以下の構造を含む。
であり、
各Rは独立に、H又はC
1−C
6アルキルであり、nは1から12である。
【0216】
典型的には、ペプチド型リンカーは、2つ以上のアミノ酸及び/又はペプチド断片の間にペプチド結合を形成することによって、調製することができる。そうしたペプチド結合は、例えば、液相合成法(例えば、E. Schroder及びK. Lubke(1965) “The Peptides”, 1巻, pp 76-136, Academic Press)に従って調製することができる。
【0217】
幾つかの実施態様では、リンカーは、溶解度及び/又は反応性を調節する基で置換される。非限定例として、スルホネート(−SO
3−)又はアンモニウムなどの荷電置換基は、リンカー試薬の水溶性を高めることができ、ADCを調製するために用いられる合成経路に応じて、抗体及び/若しくは薬物部分とのリンカー試薬のカップリング反応を容易にするか、又はDとのAb−L(抗体−リンカー中間体)のカップリング反応若しくはAbとのD−L(薬物−リンカー中間体)カップリング反応を容易にすることができる。幾つかの実施態様では、リンカーの一部が抗体に結合し、リンカーの一部が薬物に結合し、次いで、Ab−(リンカー部分)
aが薬物−(リンカー部分)
bに結合して、式IのADCを形成する。幾つかのそうした実施態様では、抗体は、1つより多い(リンカー部分)
a置換基を含み、その結果、1つより多い薬物が式IのADCの抗体に結合する。
【0218】
本発明の化合物は、これらに限定されないが、以下のリンカー試薬を用いて調製されるADCを特に意図する。ビス−マレイミド−トリオキシエチレングリコール(BMPEO)、N−(β−マレイミドプロピルオキシ)−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(BMPS)、N−(ε−マレイミドカプロイルオキシ)スクシンイミドエステル(EMCS)、N−[γ−マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミドエステル(GMBS)、1,6−ヘキサン−ビス−ビニルスルホン(HBVS)、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシ−(6−アミドカプロエート)(LC−SMCC)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、4−(4−N−マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH)、スクシンイミジル3−(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)、スクシンイミジルヨード酢酸(SIA)、スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノ安息香酸(SIAB)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP)、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、スクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)、スクシンイミジル6−[(β−マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノアート](SMPH)、イミノチオラン(IT)、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCC及びスルホ−SMPB、並びにスクシンイミジル−(4−ビニルスルホン)ベンゾエート(SVSB)(ビス−マレイミド試薬:ジチオビスマレイミドエタン(DTME)、1,4−ビスマレイミドブタン(BMB)、1,4ビスマレイミジル−2,3−ジヒドロキシブタン(BMDB)、ビスマレイミドヘキサン(BMH)、ビスマレイミドエタン(BMOE)、BM(PEG)
2(以下に示す)、及びBM(PEG)
3(以下に示す);イミドエステルの二機能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHClなど)、活性エステル(スベリン酸ジサクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス−アジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トルエン2,6−ジイソシアネートなど)、及びビス−活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなど)を含む)。幾つかの実施態様では、ビス−マレイミド試薬によって、抗体のシステインのチオール基の、チオール含有薬物部分、リンカー又はリンカー−薬物中間体への結合が可能になる。チオール基と反応性の他の官能基としては、これらに限定されないが、ヨードアセトアミド、ブロムアセトアミド、ビニルピリジン、ジスルフィド、ピリジルジスルフィド、イソシアネート及びイソチオシアネートが挙げられる。
【0219】
特定の有用なリンカー試薬は、Pierce Biotechnology,Inc.(Rockford、IL)、Molecular Biosciences Inc.(BouldeR、CO)などの様々な商業的供給元から得ることができ、又は当分野で記載されている手順、例えば、Tokiら(2002)J.Org.Chem.67:1866−1872;Dubowchikら(1997)Tetrahedron Letters、38:5257−60;Walker,M.A.(1995)J.Org. Chem.60:5352−5355;Frischら(1996)Bioconjugate Chem.7:180−186;米国特許第6214345号;国際公開第02/088172号;米国特許出願公開第2003130189号;米国特許出願公開第2003096743号;国際公開第03/026577号;国際公開第03/043583号;及び国際公開第04/032828号に記載されている手順に従って合成することができる。
【0220】
炭素14標識した1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、放射性ヌクレオチドの、抗体へのコンジュゲーションについての例示的キレート剤である。例えば、国際公開第94/11026号を参照されたい。
【0221】
b)例示的薬物部分
(1)マイタンシン及びマイタンシノイド
幾つかの実施態様では、イムノコンジュゲートは、1つ又は複数のマイタンシノイド分子にコンジュゲートした抗体を含む。マイタンシノイドはマイタンシンの誘導体であり、チューブリン重合を阻害することによって作用する有糸分裂阻害剤である。マイタンシンは、東アフリカの灌木であるメイテナス・セラタ(Maytenus serrata)から最初に単離された(米国特許第3896111号)。続いて、ある種の微生物も、マイタンシノール及びC−3マイタンシノールエステル(米国特許第4151042号)などのマイタンシノイドを産生することが発見された。合成マイタンシノイドは、例えば、米国特許第4137230号;第4248870号;第4256746号;第4260608号;第4265814号;第4294757号;第4307016号;第4308268号;第4308269号;第4309428号;第4313946号;第4315929号;第4317821号;第4322348号;第4331598号;第4361650号;第4364866号;第4424219号;第4450254号;第4362663号;及び第44371533号に開示されている。
【0222】
マイタンシノイド薬物部分は、抗体−薬物コンジュゲートにおける魅力的な薬物部分である。これは、マイタンシノイド薬物部分が、(i)発酵又は発酵産物の化学修飾又は誘導体化によって調製するのに比較的利用しやすく、(ii)非ジスルフィドリンカーを介する抗体へのコンジュゲーションに適した官能基を用いる誘導体化を受けることができ、(iii)血漿中で安定であり、(iv)種々の腫瘍細胞系統に対して有効であることが理由である。
【0223】
マイタンシノイド薬物部分としての使用に適した特定のマイタンシノイドは、当技術分野で知られており、天然源から既知の方法に従って単離することができ、又は遺伝子工学的手法を使用して産生することができる(例えば、Yuら(2002)PNAS99:7968−7973を参照されたい)。マイタンシノイドは、既知の方法に従って合成的に調製することもできる。
【0224】
例示的マイタンシノイド薬物部分としては、これらに限定されないが、C−19−デクロロ(米国特許第4256746号)(例えば、アンサマイトシンP2の水素化リチウムアルミニウム還元によって調製される);C−20−ヒドロキシ(又はC−20−デメチル)+/−C−19−デクロロ(米国特許第4361650号及び第4307016号)(例えば、ストレプトマイセス(Streptomyces)若しくは放射菌(Actinomyces)を使用する脱メチル化又はLAHを使用する脱塩素によって調製される);及びC−20−デメトキシ、C−20−アシルオキシ(−OCOR)、+/−デクロロ(米国特許第4294757号)(例えば、塩化アシルを使用するアシル化によって調製される)などの修飾された芳香族環を有するもの、並びに芳香族環の他の位置での修飾を有するものが挙げられる。
【0225】
例示的マイタンシノイド薬物部分としては、C−9−SH(米国特許第4424219号)(例えば、マイタンシノールとH
2S又はP
2S
5との反応によって調製される);C−14−アルコキシメチル(デメトキシ/CH
2OR)(米国特許第4331598号);C−14−ヒドロキシメチル又はアシルオキシメチル(CH
2OH又はCH
2OAc)(米国特許第4450254号)(例えば、ノカルジア(Nocardia)から調製される);C−15−ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4364866号)(例えば、ストレプトマイセスによるマイタンシノールの変換によって調製される);C−15−メトキシ(米国特許第4313946号及び第4315929号)(例えば、トレウィア・ヌドロフローラ(Trewia nudlflora)から単離される);C−18−N−デメチル(米国特許第4362663号及び第4322348号)(例えば、ストレプトマイセスによるマイタンシノールの脱メチル化によって調製される);及び4,5−デオキシ(米国特許第4371533号)(例えば、マイタンシノールの三塩化チタン/LAH還元によって調製される)などの修飾を有するものも挙げられる。
【0226】
マイタンシノイド化合物の多くの位置が結合位置として有用である。例えば、エステル結合は、従来のカップリング手法を使用して、ヒドロキシル基との反応によって形成することができる。幾つかの実施態様では、反応は、ヒドロキシル基を有するC−3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC−14位、ヒドロキシル基で修飾されたC−15位、及びヒドロキシル基を有するC−20位で起こり得る。幾つかの実施態様では、結合は、マイタンシノール又はマイタンシノール類似体のC−3位で形成される。
【0227】
マイタンシノイド薬物部分には、構造:
を有するものが含まれる。
【0228】
式中、波線はマイタンシノイド薬物部分の硫黄原子の、ADCのリンカーへの共有結合を示す。各Rは独立に、H又はC
1−C
6アルキルでもよい。アミド基を硫黄原子に結合させるアルキレン鎖は、メタニル、エタニル又はプロピルでもよく、すなわち、mは、1、2又は3でもよい(米国特許第633410号;米国特許第5208020号;Chariら(1992) Cancer Res. 52:127-131;Liuら(1996) Proc. Natl. Acad. Sci USA 93:8618-8623)。
【0229】
マイタンシノイド薬物部分のすべての立体異性体、すなわち、キラル炭素でのR及びS配置の任意の組み合わせ(出典明示によりその全体が援用される、米国特許第7276497号;米国特許第6913748号;米国特許第6441163号;米国特許第633410(RE39151)号;米国特許第5208020号;Widdisonら(2006) J. Med. Chem. 49:4392-4408)が本発明のADCについて企図される。幾つかの実施態様では、マイタンシノイド薬物部分は、以下の立体化学:
を有する。
【0230】
マイタンシノイド薬物部分の例示的実施態様としては、これらに限定されないが、構造:
を有する、DM1、DM3及びDM4が挙げられる。
【0231】
式中、波線は抗体−薬物コンジュゲートのリンカー(L)への薬物の硫黄原子の共有結合を示す。
【0232】
他の例示的マイタンシノイド抗体−薬物コンジュゲートは、以下の構造及び略称を有する(式中、Abは抗体であり、pは1から約20である。幾つかの実施態様では、pは1から10、pは1から7、pは1から5、又はpは1から4である)。
【0233】
DM1が、BMPEOリンカーを介して抗体のチオール基へ連結される場合の例示的抗体−薬物コンジュゲートは、構造及び略称:
を有する。
【0234】
式中、Abは抗体であり、nは0、1又は2であり、pは1から約20である。幾つかの実施態様では、pは1から10、pは1から7、pは1から5、又はpは1から4である。
【0235】
マイタンシノイドを含むイムノコンジュゲート、その作製方法及びその治療的使用は、例えば、米国特許第5208020号及び第5416064号、米国特許出願公開第2005/0276812A1号、並びに欧州特許第0425235B1号に開示されており、その開示は、出典明示により本明細書に明確に援用される。Liuら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA93:8618−8623(1996);及びChariら、Cancer Research 52:127−131(1992)も参照されたい。
【0236】
幾つかの実施態様では、抗体−マイタンシノイドコンジュゲートは、マイタンシノイド分子に抗体を化学的に連結することによって、抗体又はマイタンシノイド分子の何れかの生物活性を顕著に減弱させることなく調製することができる。例えば、米国特許第5208020号を参照されたい(その開示は、出典明示により本明細書に明確に援用される)。幾つかの実施態様では、抗体分子あたり平均3−4個のマイタンシノイド分子がコンジュゲートしたADCは、抗体の機能又は溶解度に負の影響を及ぼすことなく、標的細胞の細胞傷害性の増強において有効性を示した。場合によっては、1分子の毒素/抗体でさえ、ネイキッド抗体の使用において細胞傷害性を増強することが期待される。
【0237】
抗体−マイタンシノイドコンジュゲートを作製するための例示的連結基としては、例えば、本明細書に記載のもの、及びその開示が出典明示により本明細書に明確に援用される、米国特許第5208020号;欧州特許第0425235B1号;ChariらCancer Research 52:127−131(1992);米国特許出願公開第2005/0276812A1号;及び米国特許出願公開第2005/016993A1号に開示されているものが挙げられる。
【0238】
(2)オーリスタチン及びドラスタチン
薬物部分としては、ドラスタチン、オーリスタチン、及びそれらの類似体及び誘導体(米国特許第5635483号;米国特許第5780588号;米国特許第5767237号;米国特許第6124431号)が挙げられる。オーリスタチンは、海生軟体動物の化合物のドラスタチン−10誘導体である。いかなる特定の理論にも束縛されることを意図するものではないが、ドラスタチン及びオーリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解並びに核及び細胞の分裂を妨げること(Woykeら(2001) Antimicrob. Agents and Chemother. 45(12):3580-3584)、並びに抗がん性(米国特許第5663149号)及び抗真菌活性(Pettitら(1998) Antimicrob. Agents Chemother. 42:2961-2965)を有することが示されている。ドラスタチン/オーリスタチン薬物部分は、ペプチド性薬物部分のN(アミノ)末端又はC(カルボキシル)末端を介して、抗体に結合することができる(国際公開第02/088172号;Doroninaら(2003) Nature Biotechnology 21(7):778-784;Franciscoら(2003) Blood 102(4):1458-1465)。
【0239】
例示的なオーリスタチンの実施態様としては、N末端に連結したモノメチルオーリスタチン薬物部分D
E及びD
Fが挙げられ、これらは、その開示が出典明示によりその全体が明確に援用される、米国特許第7498298号及び米国特許第7659241号に開示されている。
【0240】
式中、D
E及びD
Fの波線は抗体又は抗体−リンカー構成成分への共有結合部位を示し、独立して各位置で、
R
2は、H及びC
1−C
8アルキルから選択され、
R
3は、H、C
1−C
8アルキル、C
3−C
8炭素環、アリール、C
1−C
8アルキル−アリール、C
1−C
8アルキル−(C
3−C
8炭素環)、C
3−C
8ヘテロ環及びC
1−C
8アルキル−(C
3−C
8ヘテロ環)から選択され、
R
4は、H、C
1−C
8アルキル、C
3−C
8炭素環、アリール、C
1−C
8アルキル−アリール、C
1−C
8アルキル−(C
3−C
8炭素環)、C
3−C
8ヘテロ環及びC
1−C
8アルキル−(C
3−C
8ヘテロ環)から選択され、
R
5は、H及びメチルから選択され、
又はR
4及びR
5は、共同で炭素環を形成し、式−(CR
aR
b)
n−を有し(式中、R
a及びR
bは、H、C
1−C
8アルキル及びC
3−C
8炭素環から独立に選択され、nは2、3、4、5及び6から選択される)、
R
6は、H及びC
1−C
8アルキルから選択され、
R
7は、H、C
1−C
8アルキル、C
3−C
8炭素環、アリール、C
1−C
8アルキル−アリール、C
1−C
8アルキル−(C
3−C
8炭素環)、C
3−C
8ヘテロ環及びC
1−C
8アルキル−(C
3−C
8ヘテロ環)から選択され、
各R
8は、H、OH、C
1−C
8アルキル、C
3−C
8炭素環及びO−(C
1−C
8アルキル)から独立に選択され、
R
9は、H及びC
1−C
8アルキルから選択され、
R
10は、アリール又はC
3−C
8ヘテロ環から選択され、
Zは、O、S、NH又はNR
12であり(式中、R
12はC
1−C
8アルキルである)、
R
11は、H、C
1−C
20アルキル、アリール、C
3−C
8ヘテロ環、−(R
13O)
m−R
14、又は−(R
13O)
m−CH(R
15)
2から選択され、
mは、1−1000に及ぶ整数であり、
R
13は、C
2−C
8アルキルであり、
R
14は、H又はC
1−C
8アルキルであり、
R
15の各存在は、独立に、H、COOH、−(CH
2)
n−N(R
16)
2、−(CH
2)
n−SO
3H又は−(CH
2)
n−SO
3−C
1−C
8アルキルであり、
R
16の各存在は、独立に、H、C
1−C
8アルキル又は−(CH
2)
n−COOHであり、
R
18は−C(R
8)
2−C(R
8)
2−アリール、−C(R
8)
2−C(R
8)
2−(C
3−C
8ヘテロ環)、及び−C(R
8)
2−C(R
8)
2−(C
3−C
8炭素環)から選択され、
nは、0から6に及ぶ整数である。
【0241】
一実施態様では、R
3、R
4及びR
7は、独立に、イソプロピル又はsec−ブチルであり、R
5は、−H又はメチルである。例示的実施態様では、R
3及びR
4はそれぞれイソプロピルであり、R
5は−Hであり、R
7はsec−ブチルである。
【0242】
さらに別の実施態様では、R
2及びR
6はそれぞれメチルであり、R
9は−Hである。
【0243】
なお別の実施態様では、R
8の各存在は−OCH
3である。
【0244】
例示的実施態様では、R
3及びR
4はそれぞれイソプロピルであり、R
2及びR
6はそれぞれメチルであり、R
5は−Hであり、R
7はsec−ブチルであり、R
8の各存在は−OCH
3であり、R
9−Hである。
【0245】
一実施態様では、Zは、−O−又は−NH−である。
【0246】
一実施態様では、R
10はアリールである。
【0247】
例示的実施態様では、R
10は−フェニルである。
【0248】
例示的実施態様では、Zが−O−である場合は、R
11は、−H、メチル又はt−ブチルである。
【0249】
一実施態様では、Zが−NHである場合は、R
11は−CH(R
15)
2であり、式中、R
15は−(CH
2)
n−N(R
16)
2であり、R
16は、−C
1−C
8アルキル又は−(CH
2)
n−COOHである。
【0250】
別の実施態様では、Zが−NHである場合は、R
11は−CH(R
15)
2であり、式中、R
15は−(CH
2)
n−SO
3Hである。
【0251】
式D
Eの例示的なオーリスタチンの実施態様はMMAEであり、式中、波線は抗体−薬物コンジュゲートのリンカー(L)への共有結合を示す。
【0252】
式D
Fの例示的なオーリスタチンの実施態様はMMAFであり、式中、波線は抗体−薬物コンジュゲートのリンカー(L)への共有結合を示す。
【0253】
他の例示的実施態様としては、ペンタペプチドオーリスタチン薬物部分のC末端にフェニルアラニンカルボキシ修飾を有するモノメチルバリン化合物(国際公開第2007/008848号)、及びペンタペプチドオーリスタチン薬物部分のC末端にフェニルアラニン側鎖修飾を有するモノメチルバリン化合物(国際公開第2007/008603号)が挙げられる。
【0254】
MMAE又はMMAF及び様々なリンカー構成成分を含む式IのADCの非限定的な例示的実施態様は、以下の構造及び略称を有する(式中、「Ab」は抗体であり、pは1から約8であり、「Val−Cit」はバリン−シトルリンジペプチドであり、「S」は硫黄原子である)。
【0255】
MMAF及び様々なリンカー構成成分を含む式IのADCの非限定的な例示的実施態様は、Ab−MC−PAB−MMAF及びAb−PAB−MMAFをさらに含む。タンパク分解的に切断不可能なリンカーによって抗体に結合したMMAFを含むイムノコンジュゲートは、タンパク分解的に切断可能なリンカーによって抗体に結合したMMAFを含むイムノコンジュゲートと匹敵する活性を有することが示されている(Doroninaら(2006) Bioconjugate Chem. 17:114-124)。幾つかのそうした実施態様では、薬物放出は、細胞における抗体の分解によってもたらさせると考えられている。
【0256】
典型的には、ペプチド−ベースの薬物部分は、2つ以上のアミノ酸及び/又はペプチド断片の間にペプチド結合を形成することによって調製することができる。そうしたペプチド結合は、例えば、液相合成法に従って調製することができる(例えば、E.Schroder及びK.Lubke、「The Peptides」、1巻、76−136頁、1965、Academic Pressを参照されたい)。幾つかの実施態様では、オーリスタチン/ドラスタチン薬物部分は、米国特許第7498298号;米国特許第5635483号;米国特許第5780588号;Pettitら(1989)J.Am.Chem.Soc.111:5463−5465;Pettitら(1998)Anti−Cancer Drug Design 13:243−277;Pettit,G.Rら、Synthesis、1996、719−725;Pettitら(1996)J.Chem.Soc.Perkin Trans.1 5:859−863;並びにDoronina(2003)Nat.Biotechnol.21(7):778−784の方法に従って調製することができる。
【0257】
幾つかの実施態様では、MMAEなどの式D
E及びMMAFなどのD
Fのオーリスタチン/ドラスタチン薬物部分、及び薬物−リンカー中間体、並びにそれらの誘導体、例えばMC−MMAF、MC−MMAE、MC−vc−PAB−MMAF及びMC−vc−PAB−MMAEは、米国特許第7498298号;Doroninaら(2006)Bioconjugate Chem.17:114−124;及びDoroninaら(2003)Nat.Biotech.21:778−784に記載されている方法を使用して調製することができ、次いで、目的の抗体にコンジュゲートすることができる。
【0258】
(3)カリケアマイシン
幾つかの実施態様では、イムノコンジュゲートは、1つ又は複数のカリケアマイシン分子にコンジュゲートした抗体を含む。抗生物質のカリケアマイシンファミリー及びその類似体は、ピコモル濃度以下で二本鎖DNAの切断を引き起こすことができる(Hinmanら, (1993) Cancer Research 53:3336-3342;Lodeら, (1998) Cancer Research 58:2925-2928)。カリケアマイシンは、細胞内作用部位を有するが、場合によっては、形質膜を容易に通過しない。したがって、抗体媒介性内部移行を介するこうした薬剤の細胞内取込は、幾つかの実施態様では、その細胞傷害性作用を大きく増強し得る。カリケアマイシン薬物部分を有する抗体−薬物コンジュゲートの調製に関する非限定的な例示的方法は、例えば、米国特許第5712374号;米国特許第5714586号;米国特許第5739116号;及び米国特許第5767285号に記載されている。
【0259】
(4)ピロロベンゾジアゼピン
幾つかの実施態様では、ADCは、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)を含む。幾つかの実施態様では、PDB二量体は、特異的なDNA配列を認識し、それに結合する。天然物のアントラマイシンであるPBDは、1965年に最初に報告された(LeimGruberら, (1965) J. Am. Chem. Soc., 87:5793-5795;LeimGruberら, (1965) J. Am. Chem. Soc., 87:5791-5793)。それ以来、二量体の三環式PBDスキャフォールド(米国特許第6884799号;米国特許第7049311号;米国特許第7067511号;米国特許第7265105号;米国特許第7511032号;米国特許第7528126号;米国特許第7557099号)を含めて、天然産及び類似体の両方の幾つかのPBDが報告されている(Thurstonら, (1994) Chem. Rev. 1994, 433-465)。いかなる特定の理論にも束縛されることを意図するものではないが、二量体構造は、B型DNAの副溝を伴う等螺旋性に適切な3次元形状を与え、結合部位でのぴったりとした嵌合をもたらすと考えられている(Kohn, In Antibiotics III. Springer-Verlag, New York, pp. 3-11 (1975); Hurley及びNeedham-VanDevanter, (1986) Acc. Chem. Res., 19:230-237)。C2アリール置換基を有する二量体のPBD化合物は、細胞傷害剤として有用であることが示されている(Hartleyら(2010) Cancer Res. 70(17):6849-6858;Antonow (2010) J. Med. Chem. 53(7):2927-2941;Howardら(2009) Bioorganic and Med. Chem. Letters 19(22):6463-6466)。
【0260】
幾つかの実施態様では、PBD化合物は、in vivoで除去可能な窒素保護基を用いてN10位において保護することによって、プロドラッグとして用いることができる(国際公開第00/12507号;国際公開第2005/023814号)。
【0261】
PBD二量体が抗体にコンジュゲートしており、得られたADCは、抗がん特性を有することが示された(米国特許出願公開第2010/0203007号)。非限定的な例示的なPBD二量体の結合部位としては、5員のピロロ環、PBDユニット間のテザー、及びN10−C11イミン基が挙げられる(国際公開第2009/016516号;米国特許出願公開第2009/304710号;米国特許出願公開第2010/047257号;米国特許出願公開第2009/036431号;米国特許出願公開第2011/0256157号;国際公開第2011/130598号)。
【0262】
非限定的なADCの例示的なPBD二量体構成成分は、式Aのもの:
及びその塩及び溶媒和化合物であり、式中、
波線は、リンカーへの共有結合部位を示し、
点線は、C1及びC2の間又はC2及びC3の間の二重結合の任意選択的な存在を示し、
R
2は、H、OH、=O、=CH
2、CN、R、OR、=CH−R
D、=C(R
D)
2、O−SO
2−R、CO
2R及びCORから独立に選択され、ハロ又はジハロからさらに選択されてもよく、R
Dは、R、CO
2R、COR、CHO、CO
2H及びハロから独立に選択され、
R
6及びR
9は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH
2、NHR、NRR’、NO
2、Me
3Sn及びハロから独立に選択され、
R
7は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH
2、NHR、NRR’、NO
2、Me
3Sn及びハロから独立に選択され、
Qは、O、S及びNHから独立に選択され、
R
11は、H若しくはRの何れかであり、又は、QがOの場合は、SO
3Mであり、Mは金属カチオンであり、
R及びR’は、それぞれ独立に、置換されていてもよいC
1−8アルキル、C
1−12アルキル、C
3−8ヘテロシクリル、C
3−20ヘテロ環、及びC
5−20アリール基から選択され、任意選択的に、NRR’基に関して、R及びR’は、それらが結合する窒素原子と共に、置換されていてもよい4、5、6又は7員ヘテロ環を形成し、
R
12、R
16、R
19及びR
17は、それぞれ、R
2、R
6、R
9及びR
7について定義した通りであり、
R”は、C
3−12アルキレン基であり、その鎖は、1つ又は複数のヘテロ原子、例えばO、S、N(H)、NMe及び/又は環が置換されていてもよい芳香族環、例えばベンゼン又はピリジンによって離断されてもよく、
X及びX’は、O、S及びN(H)から独立に選択される。
【0263】
幾つかの実施態様では、R及びR’は、それぞれ独立に、置換されていてもよいC
1−12アルキル、C
3−20ヘテロ環、及びC
5−20アリール基から選択され、任意選択的に、NRR’基に関して、R及びR’は、それらが結合する窒素原子と共に、置換されていてもよい4、5、6又は7員ヘテロ環を形成する。
【0264】
幾つかの実施態様では、R
9及びR
19はHである。
【0265】
幾つかの実施態様では、R
6及びR
16はHである。
【0266】
幾つかの実施態様では、R
7及びR
17は両方ともOR
7Aであり、R
7Aは、置換されていてもよいC
1−4アルキルである。幾つかの実施態様では、R
7AはMeである。
【0267】
幾つかの実施態様では、XはOである。
【0268】
幾つかの実施態様では、R
11はHである。
【0269】
幾つかの実施態様では、各単量体ユニットのC2とC3の間に二重結合が存在する。
【0270】
幾つかの実施態様では、R
2及びR
12は、H及びRから独立に選択される。幾つかの実施態様では、R
2及びR
12は、独立にRである。幾つかの実施態様では、R
2及びR
12は独立に、置換されていてもよいC
5−20アリール又はC
5−7アリール又はC
8−10アリールである。幾つかの実施態様では、R
2及びR
12は独立に、置換されていてもよいフェニル、チエニル、ナフチル、ピリジル、キノリニル又はイソキノリニルである。幾つかの実施態様では、R
2及びR
12は、=O、=CH
2、=CH−R
D及び=C(R
D)
2から独立に選択される。幾つかの実施態様では、R
2及びR
12は、=CH
2である。幾つかの実施態様では、R
2及びR
12は、それぞれHである。幾つかの実施態様では、R
2及びR
12は、それぞれ=Oである。幾つかの実施態様では、R
2及びR
12は、それぞれ=CF
2である。幾つかの実施態様では、R
2及び/又はR
12は、独立に=C(R
D)
2である。幾つかの実施態様では、R
2及び/又はR
12は、独立に=CH−R
Dである。
【0271】
幾つかの実施態様では、R
2及び/又はR
12が=CH−R
Dの場合は、それぞれの基は、独立に、以下に示す配置の何れかを有し得る。
幾つかの実施態様では、a=CH−R
Dは配置(I)中に存在する。
【0272】
幾つかの実施態様では、R”はC
3アルキレン基又はC
5アルキレン基である。
【0273】
幾つかの実施態様では、ADCの例示的なPBD二量体構成成分は式A(I):
A(I);
(式中、nは0又は1である)
の構造を有する。
【0274】
幾つかの実施態様では、ADCの例示的なPBD二量体構成成分は、式A(II):
A(II);
(式中、nは0又は1である)
の構造を有する。
【0275】
幾つかの実施態様では、ADCの例示的なPBD二量体構成成分は、式A(III):
A(III);
(式中、R
E及びR
E”は、それぞれ独立にH又はR
Dから選択され、R
Dは上記で定義されており、
nは0又は1である)
の構造を有する。
【0276】
幾つかの実施態様では、nは0である。幾つかの実施態様では、nは1である。幾つかの実施態様では、R
E及び/又はR
E”はHである。幾つかの実施態様では、R
E及びR
E”はHである。幾つかの実施態様では、R
E及び/又はR
E”はR
Dであり、R
Dは、置換されていてもよいC
1−12アルキルである。幾つかの実施態様では、R
E及び/又はR
E”はR
Dであり、R
Dはメチルである。
【0277】
幾つかの実施態様では、ADCの例示的なPBD二量体構成成分は、式A(IV):
A(IV);
(式中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立に、置換されていてもよいC
5−20アリールであり、Ar
1及びAr
2は、同じでも異なっていてもよく、
nは0又は1である)
の構造を有する。
【0278】
幾つかの実施態様では、ADCの例示的なPBD二量体構成成分は、式A(V):
A(V);
(式中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立に、置換されていてもよいC
5−20アリールであり、Ar
1及びAr
2は、同じでも異なっていてもよく、
nは0又は1である)
の構造を有する。
【0279】
幾つかの実施態様では、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立に、置換されていてもよいフェニル、フラニル、チオフェニル及びピリジルから選択される。幾つかの実施態様では、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立に、置換されていてもよいフェニルである。幾つかの実施態様では、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立に、置換されていてもよいチエン−2−イル又はチエン−3−イルである。幾つかの実施態様では、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立に、置換されていてもよいキノリニル又はイソキノリニルである。キノリニル又はイソキノリニル基は、任意の利用可能な環位置を介してPBDコアに結合することができる。例えば、キノリニルは、キノリン−2−イル、キノリン−3−イル、キノリン−4イル、キノリン−5−イル、キノリン−6−イル、キノリン−7−イル及びキノリン−8−イルでもよい。幾つかの実施態様では、キノリニルは、キノリン−3−イル及びキノリン−6−イルから選択される。イソキノリニルは、イソキノリン−1−イル、イソキノリン−3−イル、イソキノリン−4イル、イソキノリン−5−イル、イソキノリン−6−イル、イソキノリン−7−イル及びイソキノリン−8−イルでもよい。幾つかの実施態様では、イソキノリニルは、イソキノリン−3−イル及びイソキノリン−6−イルから選択される。
【0280】
さらなる非限定的なADCの例示的なPBD二量体構成成分は、式Bのもの:
及びその塩及び溶媒和化合物であり、式中、
波線は、リンカーへの共有結合部位を示し、
OHに繋がれた波線は、S又はR配置を示し、
R
V1及びR
V2は、H、メチル、エチル及びフェニル(フェニルは、特に4位のフルオロで任意選択的に置換されていてもよい)及びC
5−6ヘテロシクリルから独立に選択され、
nは0又は1である。
【0281】
幾つかの実施態様では、R
V1及びR
V2は、H、フェニル及び4−フルオロフェニルから独立に選択される。
【0282】
幾つかの実施態様では、リンカーは、B環のN10イミン、C環のC−2エンド/エキソ位又はA環に連結するテザーユニットを含めたPBD二量体薬物部分の様々な部位のうちの1つで結合することができる(以下の構造C(I)及びC(II)を参照されたい)。
【0283】
非限定的なADCの例示的なPBD二量体構成成分は、式C(I)及びC(II):
C(I)
C(II)
を含む。
【0284】
式C(I)及びC(II)をそれらのN10−C11イミン形態において示す。例示的PBD薬物部分は、以下のボックス:
で示すように、カルビノールアミン及び保護されたカルビノールアミン形態もさらに含む。
式中、
Xは、CH
2(n=1から5)、N又はOであり、
Z及びZ’は、OR及びNR
2から独立に選択され、Rは、1から5個の炭素原子を含む一級、二級又は三級アルキル鎖であり、
R
1、R’
1、R
2及びR’
2は、それぞれ独立に、H、C
1−C
8アルキル、C
2−C
8アルケニル、C
2−C
8アルキニル、C
5−20アリール(置換されたアリールを含む)、C
5−20ヘテロアリール基、−NH
2、−NHMe、−OH及び−SHから選択され、幾つかの実施態様では、アルキル、アルケニル及びアルキニル鎖は、5炭素原子まで含み、
R
3及びR’
3は、H、OR、NHR及びNR
2から独立に選択され、Rは、1から5個の炭素原子を含む一級、二級又は三級アルキル鎖であり、
R
4及びR’
4は、H、Me及びOMeから独立に選択され、
R
5は、C
1−C
8アルキル、C
2−C
8アルケニル、C
2−C
8アルキニル、C
5−20アリール(ハロ、ニトロ、シアノ、アルコキシ、アルキル、ヘテロシクリルによって置換されたアリールを含む)、及びC
5−20ヘテロアリール基から選択され、幾つかの実施態様では、アルキル、アルケニル及びアルキニル鎖は、5炭素原子まで含み、
R
11は、H、C
1−C
8アルキル又は保護基(例えば、アセチル、トリフルオロアセチル、t−ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、9−フルオレニルメチレンオキシカルボニル(Fmoc)、又は、バリン−シトルリン−PABなどの自壊ユニットを含む部分)であり、
R
12は、H、C
1−C
8アルキル又は保護基であり、
R
1、R’
1、R
2、R’
2、R
5又はR
12のうちの1つの水素、又はA環の間の−OCH
2CH
2(X)
nCH
2CH
2O−スペーサーの水素は、ADCのリンカーに繋がれた結合で置き換えられている。
【0285】
ADCの例示的PDB二量体部としては、これらに限定されないが、
が挙げられる(波線は、リンカーへの共有結合部位を示す)。
【0286】
PBD二量体を含むADCの非限定的な例示的実施態様は、以下の構造を有する。
PBD二量体−val−cit−PAB−Ab;
PBD二量体−Phe−Lys−PAB−Ab、式中、
nは0から12である。幾つかの実施態様では、nは2から10である。幾つかの実施態様では、nは4から8である。幾つかの実施態様では、nは4及び8から選択される。
【0287】
PBD二量体−val−cit−PAB−Ab及びPBD二量体−Phe−Lys−PAB−Abのリンカーはプロテアーゼ切断可能であるが、PBD二量体−マレイミド−アセタールのリンカーは酸不安定性である。
【0288】
PBD二量体及びPBD二量体を含むADCは、当技術分野で知られている方法に従って、調製することができる。例えば、国際公開第2009/016516号;米国特許出願公開第2009/304710号;米国特許出願公開第2010/047257号;米国特許出願公開第2009/036431号;米国特許出願公開第2011/0256157号;国際公開第2011/130598号を参照されたい。
【0289】
(5)アントラサイクリン
幾つかの実施態様では、ADCはアントラサイクリンを含む。アントラサイクリンは、細胞傷害性活性を示す抗生物質化合物である。いかなる特定の理論にも束縛されることを意図するものではないが、研究によって、アントラサイクリンは、幾つかの異なる機序によって細胞を死滅させる働きをすることが示され、この機序には、1)細胞のDNAへ薬物分子がインターカレーションし、それによってDNA依存性核酸合成が阻害されること、2)薬物によりフリーラジカルが産生され、次いで、それが細胞の高分子と反応して、細胞に損傷を引き起こすこと、及び/又は3)細胞膜との薬物分子の相互作用が含まれる(例えば、C.Petersonら、「Transport And Storage Of Anthracycline In Experimental Systems And Human Leukemia」in Anthracycline Antibiotics In Cancer Therapy;N.R.Bachur「Free Radical Damage」id.97−102頁を参照されたい)。その細胞傷害性潜在能力のために、アントラサイクリンは、多数のがん、例えば、白血病、乳癌、肺癌、卵巣腺癌及び肉腫の治療に使用されてきた(例えば、P.H−Wiernik、in Anthracycline:Current Status And New Developments、11頁を参照されたい)。
【0290】
非限定的な例示的アントラサイクリンとしては、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ダウノマイシン、ネモルビシン、及びそれらの誘導体が挙げられる。ダウノルビシン及びドキソルビシンのイムノコンジュゲート及びプロドラッグが調製され、研究された(Kratzら(2006) Current Med. Chem. 13:477-523;Jeffreyら(2006) Bioorganic & Med. Chem. Letters 16:358-362;Torgovら(2005) Bioconj. Chem. 16:717-721;Nagyら(2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:829-834;Dubowchikら(2002) Bioorg. & Med. Chem. Letters 12:1529-1532;Kingら(2002) J. Med. Chem. 45:4336-4343;欧州特許第0328147号;米国特許第6630579号)。抗体−薬物コンジュゲートのBR96−ドキソルビシンは、腫瘍関連抗原のLewis−Yと特異的に反応し、第I相及び第II相試験で評価された(Salehら(2000) J. Clin. Oncology 18:2282-2292;Ajaniら(2000) Cancer Jour. 6:78-81;Tolcherら(1999) J. Clin. Oncology 17:478-484)。
【0291】
PNU−159682は、ネモルビシンの強力な代謝物(又は誘導体)である(Quintieriら(2005) Clinical Cancer Research 11(4):1608-1617)。ネモルビシンは、ドキソルビシンのグリコシドアミノに2−メトキシモルホリノ基を有する、ドキソルビシンの半合成的類似体であり、臨床評価下にあり(Grandiら(1990) Cancer Treat. Rev. 17:133;Ripamontiら(1992) Brit. J. Cancer 65:703;)、臨床評価には、肝細胞癌の第II/III相試験(Sunら(2003) Proceedings of the American Society for Clinical Oncology 22, Abs1448;Quintieri (2003) Proceedings of the American Association of Cancer Research, 44:第1版, Abs 4649;Pacciariniら(2006) Jour. Clin. Oncology 24:14116)が含まれる。
【0292】
ネモルビシン又はネモルビシン誘導体を含む非限定的な例示的ADCを、式Iaに示す。
式中、R
1は、水素原子、ヒドロキシ又はメトキシ基であり、R
2は、C
1−C
5アルコキシ基又は薬学的に許容可能なそれらの塩であり、
L
1及びZは共に、本明細書に記載のリンカー(L)であり、
Tは本明細書に記載の抗体(Ab)であり、
mは、1から約20である。幾つかの実施態様では、mは、1から10、1から7、1から5、又は1から4である。
【0293】
幾つかの実施態様では、R
1及びR
2は両方ともメトキシ(−OMe)である。
【0294】
ネモルビシン又はネモルビシン誘導体を含むさらなる非限定的な例示的ADCを、式Ibに示す。
式中、R
1は水素原子、ヒドロキシ又はメトキシ基であり、R
2は、C
1−C
5アルコキシ基又は薬学的に許容可能なそれらの塩であり、
L
2及びZは共に、本明細書に記載のリンカー(L)であり、
Tは本明細書に記載の抗体(Ab)であり、
mは、1から約20である。幾つかの実施態様では、mは、1から10、1から7、1から5、又は1から4である。
【0295】
幾つかの実施態様では、R
1及びR
2は両方ともメトキシ(−OMe)である。
【0296】
幾つかの実施態様では、ネモルビシン含有ADCのネモルビシン構成成分はPNU−159682である。幾つかのそうした実施態様では、ADCの薬物部は、以下の構造のうちの1つを有してもよい。
; 又は
;
式中、波線は、リンカー(L)への結合を示す。
【0297】
アントラサイクリンは、PNU−159682を含めて、幾つかの結合部位及び本明細書に記載のリンカーを含めた種々のリンカー(米国特許出願公開第2011/0076287号;国際公開第2009/099741号;米国特許出願公開第2010/0034837号;国際公開第2010/009124号)を介して、抗体にコンジュゲートすることができる。
【0298】
ネモルビシン及びリンカーを含む例示的ADCとしては、これらに限定されないが、
が挙げられる。
【0299】
PNU−159682マレイミドアセタール−Abのリンカーは酸不安定性であるが、PNU−159682−val−cit−PAB−Ab、PNU−159682−val−cit−PAB−スペーサー−Ab、及びPNU−159682−val−cit−PAB−スペーサー(R
1R
2)−Abのリンカーは、プロテアーゼ切断可能である。
【0300】
(6)他の薬物部分
薬物部分としては、ゲルダナマイシン(Mandlerら(2000) J. Nat. Cancer Inst. 92(19):1573-1581;Mandlerら(2000) Bioorganic & Med. Chem. Letters 10:1025-1028;Mandlerら(2002) Bioconjugate Chem. 13:786-791)、並びに酵素的に活性な毒素及びその断片も挙げられ、これらに限定されないが、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII及びPAP−S)、ニガウリ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコテセンが含まれる。例えば、国際公開第93/21232号を参照されたい。
【0301】
薬物部分としては、核酸分解活性を有する化合物(例えば、RNA分解酵素又はDNAエンドヌクレアーゼ)も挙げられる。
【0302】
ある種の実施態様では、イムノコンジュゲートは高放射性原子を含むことができる。種々の放射性同位元素が、放射性コンジュゲート抗体を産生するのに利用可能である。例としては、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212及びLuの放射性同位元素が挙げられる。幾つかの実施態様では、検出にイムノコンジュゲートが使用される場合、イムノコンジュゲートは、シンチグラフィー試験用に放射性原子、例えばTc
99若しくはI
123を含むことができ、又は核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング、MRIとしても知られる)用にスピン標識、例えばジルコニウム−89、ヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガン若しくは鉄を含むことができる。ジルコニウム−89は、例えば、PETイメージング用に、様々な金属キレート剤と錯体形成していてもよく、抗体にコンジュゲートしていてもよい(国際公開第2011/056983号)。
【0303】
放射性標識又は他の標識を、既知の方法でイムノコンジュゲートに組み込むことができる。例えばペプチドは、例えば、1つ又は複数の水素の代わりに1つ又は複数のフッ素−19原子を含む適切なアミノ酸前駆体を使用して、生合成又は化学合成することができる。幾つかの実施態様では、Tc
99、I
123、Re
186、Re
188及びIn
111などの標識は、抗体のシステイン残基を介して結合することができる。幾つかの実施態様では、イットリウム−90は、抗体のリジン残基を介して結合することができる。幾つかの実施態様では、IODOGEN法(Frakerら(1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80: 49-57)を使用して、ヨウ素−123を組み込むことができる。「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal、CRC Press 1989)は、特定の他の方法を記載している。
【0304】
ある種の実施態様では、イムノコンジュゲートは、プロドラッグ活性化酵素にコンジュゲートした抗体を含むことができる。幾つかのそうした実施態様では、プロドラッグ活性化酵素は、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、国際公開第81/01145号を参照されたい)を、活性薬物、例えば抗がん剤に変換する。幾つかの実施態様では、そうしたイムノコンジュゲートは、抗体依存性酵素媒介性プロドラッグ療法(「ADEPT」)において有用である。抗体にコンジュゲートすることができる酵素としては、これらに限定されないが、リン酸含有プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用であるアルカリホスファターゼ;硫酸含有プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用であるアリールスルファターゼ;無毒性の5−フルオロシトシンを、抗がん剤、5−フルオロウラシルに変換するのに有用であるシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用であるプロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、スブチリシン、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシン(カテプシンB及びLなど);D−アミノ酸置換基を含むプロドラッグを変換するのに有用であるD−アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用である、β−ガラクトシダーゼ及びノイラミニダーゼなどの炭水化物切断酵素;β
−ラクタムで誘導体化された薬物を遊離薬物に変換するのに有用であるβ−ラクタマーゼ;並びにそのアミン窒素においてフェノキシアセチル又はフェニルアセチル基でそれぞれ誘導体化された薬物を遊離薬物に変換するのに有用であるペニシリンVアミダーゼ及びペニシリンGアミダーゼなどのペニシリンアミダーゼが挙げられる。幾つかの実施態様では、酵素は、当技術分野でよく知られている組換えDNA手法によって、共有結合的に抗体に結合することができる。例えば、Neubergerら、Nature 312:604−608(1984)を参照されたい。
【0305】
c)薬物負荷
薬物負荷は、p、すなわち式Iの分子における抗体あたりの薬物部分の平均数によって表される。薬物負荷は、抗体あたり1から20の薬物部分(d)に及び得る。式IのADCは、1から20の範囲の薬物部分とコンジュゲートした抗体の集合を含む。コンジュゲーション反応由来のADC調製物における抗体あたりの薬物部分の平均数は、質量分光、ELISAアッセイ及びHPLCなどの従来の手段で明らかにすることができる。pに関してのADCの定量的分布を、決定することもできる。場合によっては、pが他の薬物負荷を有するADC由来の特定の値である場合の均一なADCの分離、精製及び特徴づけは、逆相HPLC又は電気泳動などの手段によって達成することができる。
【0306】
幾つかの抗体−薬物コンジュゲートについては、pは、抗体の結合部位の数によって制限され得る。例えば、結合がシステインチオールである場合は、上記の特定の例示的実施態様にあるように、抗体は、1つのみ又は幾つかのシステインチオール基を有してもよいし、リンカーが結合することができる、1つのみ又は幾つかの十分に反応性のチオール基を有してもよい。ある種の実施態様では、高薬物負荷、例えばp>5は、特定の抗体−薬物コンジュゲートの凝集、不溶性、毒性又は細胞透過性の喪失を引き起こす可能性がある。ある種の実施態様では、ADCに対する平均薬物負荷は、1から約8、約2から約6、又は約3から約5の範囲に及ぶ。実際に、特定のADCについて、抗体あたりの薬物部分の最適な比は、8未満、及び約2から約5であり得ることが示された(米国特許第7498298号)。
【0307】
ある種の実施態様では、理論上の最大数より少ない薬物部分が、コンジュゲーション反応の間に抗体にコンジュゲートする。以下で論じるように、抗体は、例えば、薬物−リンカー中間体又はリンカー試薬に反応しないリジン残基を含むことができる。一般に、抗体は、薬物部分に連結され得る、遊離及び反応性システインチオール基を多く含まず、実際に、抗体のほとんどのシステインチオール残基は、ジスルフィド架橋として存在する。ある種の実施態様では、ジチオスレイトール(DTT)又はトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)などの還元剤で、部分的又は全還元条件下で抗体を還元して、反応性システインチオール基を生成することができる。ある種の実施態様では、抗体を変性条件にかけて、リジン又はシステインなどの反応性求核基を明らかにする。
【0308】
ADCの負荷(薬物/抗体比率)は、様々な方法で、例えば、(i)抗体と比較して過剰な薬物−リンカー中間体又はリンカー試薬のモル濃度の制限、(ii)コンジュゲーションの反応時間又は温度の制限、及び(iii)システインチオール修飾のための部分的又は制限的還元条件によって調節することができる。
【0309】
1つより多い求核基が薬物−リンカー中間体又はリンカー試薬と反応する場合は、得られた産物は、抗体に結合した1つ又は複数の薬物部分が分布したADC化合物の混合物であることを理解されたい。抗体あたりの薬物の平均数は、抗体に対して特異的且つ薬物に対して特異的な二重ELISA抗体アッセイによって、混合物から計算することができる。個々のADC分子を、質量分光によって混合物中で同定することができ、HPLC、例えば疎水性相互作用クロマトグラフィーによって分離することができる(例えば、McDonaghら(2006)Prot.Engr.Design&Selection19(7):299−307;Hamblettら(2004)Clin.Cancer Res.10:7063−7070;Hamblett,K.J.ら「Effect of drug loading on the pharmacology,pharmacokinetics,and toxicity of an anti−CD30 antibody−drug conjugate」、要旨番号624、American Association for Cancer Research、2004Annual Meeting、March27−31、2004、Proceedings of the AACR、45巻、March2004;Alley,S.C.ら「Controlling the location of drug attachment in antibody−drug conjugates」、要旨番号627、American Association for Cancer Research、2004 Annual Meeting、March27−31、2004、Proceedings of the AACR、5巻、March 2004を参照されたい)。ある種の実施態様では、単一の負荷値を有する均一なADCを、電気泳動又はクロマトグラフィーによって、コンジュゲーション混合物から単離することができる。
【0310】
d)イムノコンジュゲート調製の特定の方法
式IのADCは、当業者に知られている有機化学の反応、条件及び試薬を用いる幾つかの経路によって調製することができ、これは、(1)抗体の求核基を二価のリンカー試薬と反応させて、共有結合を介してAb−Lを形成し、続いて、薬物部分Dと反応させること、及び(2)薬物部分の求核基を二価のリンカー試薬と反応させて、共有結合を介してD−Lを形成し、続いて、抗体の求核基と反応させることを含む。後者の経路を介して式IのADCを調製するための例示的方法は、米国特許第7498298号に記載されており、これは、出典明示により本明細書に明確に援用される。
【0311】
抗体の求核基としては、これらに限定されないが、(i)N末端アミン基、(ii)側鎖アミン基、例えばリジン、(iii)側鎖チオール基、例えばシステイン、及び(iv)抗体がグリコシル化される場所である糖ヒドロキシル又はアミノ基が挙げられる。アミン、チオール及びヒドロキシル基は、求核性であり、(i)活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロギ酸及び酸ハライド、(ii)アルキル及びベンジルハライド、例えばハロアセトアミド、並びに(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル及びマレイミド基を含めた、リンカー部分及びリンカー試薬の求電子基と共有結合を形成するように反応することができる。特定の抗体は、還元可能な鎖間ジスルフィド、すなわちシステイン架橋を有する。抗体を完全に又は部分的に還元するように、DTT(ジチオスレイトール)又はトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)などの還元剤で処理することによって、リンカー試薬とのコンジュゲーションのために抗体を反応性にすることができる。したがって、理論的に、各システイン架橋は、2つの反応性チオール求核剤を形成する。リジン残基の修飾を介して、例えば、リジン残基を2−イミノチオラン(トラウト試薬)と反応させることによって、追加的な求核基を抗体に導入することができ、これによって、アミンをチオールに変換することができる。1つ、2つ、3つ、4つ又はそれ以上のシステイン残基を導入することによって(例えば、1つ又は複数の非天然のシステインアミノ酸残基を含む変異体抗体を調製することによって)、反応性チオール基を抗体に導入することもできる。
【0312】
本発明の抗体−薬物コンジュゲートは、例えばアルデヒド又はケトンカルボニル基などの抗体の求電子基とリンカー試薬又は薬物の求核基との間の反応によって産生することもできる。リンカー試薬における有用な求核基としては、これらに限定されないが、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート及びアリールヒドラジドが挙げられる。一実施態様では、抗体を、リンカー試薬又は薬物の求核性置換基と反応することができる求電子性部分を導入するように修飾する。別の実施態様では、グリコシル化抗体の糖を、例えば過ヨウ素酸塩酸化試薬を用いて酸化して、リンカー試薬又は薬物部分のアミン基と反応し得るアルデヒド又はケトン基を形成することができる。得られたイミンシッフ塩基基は、安定な結合を形成することができ、又は例えばホウ化水素試薬によって還元されて、安定なアミン結合を形成することができる。一実施態様では、ガラクトース酸化酵素又はメタ過ヨウ素酸ナトリウムの何れかとのグリコシル化抗体の炭水化物部の反応は、薬物の適切な基と反応することができるカルボニル(アルデヒド及びケトン)基を抗体中にもたらし得る(Hermanson, Bioconjugate Techniques)。別の実施態様では、N末端セリン又はスレオニン残基を含む抗体は、メタ過ヨウ素酸ナトリウムと反応することができ、一級アミノ酸の代わりにアルデヒドを産生することができる(Geoghegan & Stroh, (1992) Bioconjugate Chem. 3:138-146;米国特許第5362852号)。そうしたアルデヒドは、薬物部分又はリンカー求核剤と反応することができる。
【0313】
薬物部分の例示的求核基としては、これらに限定されないが、(i)活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロギ酸及び酸ハライド、(ii)アルキル及びベンジルハライド、例えばハロアセトアミド、(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル及びマレイミド基を含めたリンカー部分及びリンカー試薬の求電子基と共有結合を形成するように反応することができる、アミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート、及びアリールヒドラジド基が挙げられる。
【0314】
ADCを調製するのに使用することができる非限定的な例示的架橋試薬は、「例示的リンカー」と表題をつけたセクションにおいて本明細書に記載する。タンパク質部分及び化学物質部分を含めた2つの部分を連結するためのそうした架橋試薬を使用する方法は、当技術分野で知られている。幾つかの実施態様では、抗体及び細胞傷害剤を含む融合タンパク質を、例えば、組換え手法又はペプチド合成によって作製することができる。組換えDNA分子は、互いに隣接した又コンジュゲートの所望の特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域によって分離した、コンジュゲートの抗体及び細胞傷害性部分をコードする領域を含むことができる。
【0315】
さらに別の実施態様では、抗体を、腫瘍のプレターゲティングに利用するための「受容体」(ストレプトアビジンなど)にコンジュゲートすることができ、ここでは、抗体−受容体コンジュゲートを患者に投与し、続いて、除去剤を使用して循環から未結合のコンジュゲートを除去し、次いで、細胞傷害剤(例えば、薬物又は放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートした「リガンド」(例えば、アビジン)を投与する。
【0316】
E.診断及び検出のための方法及び組成物
ある種の実施態様では、本明細書で提供する抗LY6E抗体のうちの何れかは、生物学的試料におけるLY6Eの存在を検出するのに有用である。本明細書で使用する場合、用語「検出」は、定量的又は定性的検出を包含する。「生物学的試料」は、例えば、細胞又は組織(例えば、がん性又はがん性の可能性がある、結腸、結腸直腸、子宮内膜、膵臓、又は卵巣の組織を含めた生検材料)を含む。
【0317】
一実施態様では、診断又は検出の方法で使用するための抗LY6E抗体が提供される。さらなる態様では、生物学的試料におけるLY6Eの存在を検出する方法が提供される。ある種の実施態様では、方法は、抗LY6E抗体がLY6Eに結合可能な条件下で、本明細書に記載のように、抗LY6E抗体に生物学的試料を接触させること、及び生物学的試料において抗LY6E抗体及びLY6Eの間で複合体が形成されているかどうかを検出することを含む。そうした方法は、in vitroの方法でもよいし、in vivoの方法でもよい。一実施態様では、例えば、LY6Eが患者を選択するための生物指標である場合、抗LY6E抗体は、抗LY6E抗体を用いる療法に好適な対象を選択するのに使用される。さらなる実施態様では、生物学的試料は、細胞又は組織(例えば、がん性又はがん性の可能性がある、結腸、結腸直腸、子宮内膜、膵臓、又は卵巣の組織を含めた生検材料)である。
【0318】
さらなる実施態様では、抗LY6E抗体は、例えば、がんの診断、予測若しくは病期分類、適切な療法経過の決定、又は療法に対するがんの応答のモニタリングの目的で、例えばin vivoイメージングによって、対象のLY6E陽性がんを検出するために、in vivoで使用される。in vivo検出のための当技術分野で知られている一方法は、例えば、van Dongenら、The Oncologist 12:1379−1389(2007)、及びVerelら、J.Nucl.Med.44:1271−1281(2003)に記載されているような、免疫陽電子放出断層撮影法(免疫PET)である。そうした実施態様では、対象のLY6E陽性のがんを検出するための方法が提供され、この方法は、LY6E陽性のがんを有する又は有することが疑われる対象に標識抗LY6E抗体を投与すること、及び対象において標識抗LY6E抗体を検出することを含み、標識抗LY6E抗体の検出が、対象のLY6E陽性のがんを示す。ある種のそうした実施態様では、標識抗LY6E抗体は、陽電子放出体、例えば
68Ga、
18F、
64Cu、
86Y、
76Br、
89Zr及び
124Iにコンジュゲートした抗LY6E抗体を含む。特定の実施態様では、陽電子放出体は
89Zrである。
【0319】
さらなる実施態様では、診断又は検出の方法は、支持体に固定化された第1の抗LY6E抗体を、LY6Eの存在について試験される生物学的試料と接触させること、第2の抗LY6E抗体に支持体をさらすこと、及び生物学的試料において第1の抗LY6E抗体とLY6Eの間の複合体に第2の抗LY6Eが結合しているかどうかを検出することを含む。支持体は、任意の支持媒体、例えば、ガラス、金属、セラミック、ポリマービーズ、スライド、チップ及び他の支持体でもよい。ある種の実施態様では、生物学的試料は、細胞又は組織(例えば、がん性又はがん性の可能性がある、結腸直腸、子宮内膜、膵臓又は卵巣の組織を含めた生検材料)を含む。ある種の実施態様では、第1又は第2の抗LY6E抗体は、本明細書に記載の抗体のうちの何れかである。そうした実施態様では、第2の抗LY6E抗体は、6D3でも7C9でもよく、又は本明細書に記載の6D3若しくは7C9に由来する抗体でもよい。
【0320】
上記実施態様の何れかに従って診断又は検出することができる例示的障害としては、LY6E陽性のがん、例えばLY6E陽性の結腸直腸がん(腺癌を含む)、LY6E陽性の卵巣がん(卵巣漿液性腺癌を含む)、LY6E陽性の膵臓がん(膵管腺癌を含む)、及びLY6E陽性の子宮内膜がんが挙げられる。幾つかの実施態様では、LY6E陽性のがんは、抗LY6E免疫組織化学(IHC)又はin situハイブリダイゼーション(ISH)の「0」より大きいスコアが与えられるがんであり、このスコアは、例Bにおいて本明細書に記載する条件下で、非常に弱い又は>90%の腫瘍細胞で染色無しに相当する。別の実施態様では、LY6E陽性のがんは、例Bにおいて本明細書で記載する条件下で定められるように、LY6Eを1+、2+又は3+のレベルで発現する。幾つかの実施態様では、LY6E陽性のがんは、LY6EのmRNAを検出する逆転写PCR(RT−PCR)アッセイによりLY6Eを発現するがんである。幾つかの実施態様では、RT−PCRは、定量的RT−PCRである。
【0321】
ある種の実施態様では、標識抗LY6E抗体が提供される。標識には、これらに限定されないが、(蛍光、発色団、高電子密度、化学発光、及び放射性標識などの)直接的に検出される標識又は部分、並びに例えば、酵素反応又は分子の相互作用を介して間接的に検出される、酵素又はリガンドなどの部分が挙げられる。例示的標識としては、これらに限定されないが、放射性同位体の
32P、
14C、
125I、
3H及び
131I、希土キレート又はフルオレセインなどのフルオロフォア及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えばホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4737456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖質酸化酵素、例えばグルコース酸化酵素、ガラクトース酸化酵素及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素、ヘテロ環酸化酵素、例えばウリカーゼ及びキサンチン酸化酵素、色素前駆体を酸化するために過酸化水素を用いる酵素、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ又はミクロペルオキシダーゼとの結合、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定なフリーラジカルなどが挙げられる。別の実施態様では、標識は陽電子放出体である。陽電子放出体としては、これらに限定されないが
68Ga、
18F、
64Cu、
86Y、
76Br、
89Zr及び
124Iが挙げられる。特定の実施態様では、陽電子放出体は
89Zrである。
【0322】
F.薬学的製剤
本明細書に記載の抗LY6E抗体又はイムノコンジュゲートの薬学的製剤は、所望の純度を有するそうした抗体又はイムノコンジュゲートを1つ又は複数の任意選択的な薬学的に許容可能な担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences第16版, Osol, A.編(1980))と混合することによって、凍結乾燥製剤又は水性液剤の形で調製される。薬学的に許容可能な担体は、一般に、用いる投薬量及び濃度においてレシピエントに対して非中毒性であり、これらに限定されないが、リン酸、クエン酸及び他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含めた抗酸化剤;防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール;メチル若しくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン若しくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース若しくはデキストリンを含めた、単糖類、二糖類及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば亜鉛−タンパク質錯体);並びに/又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性の界面活性剤が挙げられる。本明細書において例示的な薬学的に許容可能な担体としては、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)などの間質薬物分散剤、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH−20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質をさらに含む。特定の例示的sHASEGP及び使用方法は、rHuPH20を含めて、米国特許公開第2005/0260186号及び第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つ又は複数の追加的なグルコサミノグリカナーゼと組み合わせる。
【0323】
例示的な凍結乾燥抗体製剤又は凍結乾燥イムノコンジュゲート製剤は、米国特許第6267958号に記載されている。水性抗体製剤又は水性イムノコンジュゲート製剤には、米国特許第6171586号及び国際公開第2006/044908号に記載されているものが含まれ、後者の製剤は、ヒスチジン−酢酸緩衝液を含む。
【0324】
本明細書の製剤は、治療される特定の適応症に必要である場合、1種より多い活性成分、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有するものを含むこともできる。例えば場合によっては、例えば、LY6E陽性のがん、例えばLY6E陽性の乳がん又はLY6E陽性の膵臓がん又はLY6E陽性の結腸がん又はLY6E陽性の結腸直腸がん又はLY6E陽性の黒色腫がん又はLY6E陽性の卵巣がん又はLY6E陽性の非小細胞肺がん又はLY6E陽性の胃がんなどの治療のために、白金錯体をさらに提供することが望ましい場合もある。
【0325】
活性成分は、コロイド薬物配送システム(例えば、リポソーム、アルブミン微粒子、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションにおいて、例えばコアセルベーション法又は界面重合によって調製されるマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセル及びポリ−(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに封入することができる。そうした手法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences第16版、Osol,A編(1980)に開示されている。
【0326】
持続性放出調製物を調製することができる。持続性放出調製物の適切な例としては、マトリックスが成形品の形、例えばフィルム又はマイクロカプセルである、抗体又はイムノコンジュゲートを含む固形疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられる。
【0327】
in vivo投与に使用される製剤は、一般に無菌である。無菌性は、例えば、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成することができる。
【0328】
G.治療方法及び組成物
本明細書で提供する抗LY6E抗体又はイムノコンジュゲートのうちの何れかを、方法、例えば治療方法において使用することができる。
【0329】
一態様では、本明細書で提供する抗LY6E抗体又はイムノコンジュゲートは、LY6E陽性細胞の増殖を阻害する方法であって、細胞表面上のLY6Eへの抗LY6E抗体又はイムノコンジュゲートの結合が可能な条件下で、細胞を抗LY6E抗体又はイムノコンジュゲートにさらし、それによって、細胞の増殖を阻害することを含む方法において、使用される。ある種の実施態様では、方法は、in vitro又はn in vivoの方法である。さらなる実施態様では、細胞は、乳がん細胞又は膵臓がん細胞又は結腸がん細胞又は結腸直腸がん細胞又は黒色腫がん細胞又は卵巣がん細胞又は非小細胞肺がん細胞又は胃がん細胞である。
【0330】
in vitroでの細胞増殖の阻害は、Promega(Madison、WI)から市販品として入手できる、CellTiter−Glo(商標)発光細胞生存率アッセイを使用してアッセイすることができる。このアッセイは、代謝的に活性な細胞の指標である存在するATPの定量化に基づいて、培養物中の生細胞の数を測定する。Crouchら(1993)J.Immunol.Meth.160:81−88、米国特許第6602677号を参照されたい。アッセイは、自動ハイスループットスクリーニング(HTS)に適合しやすくする96又は384ウェル型式で行うことができる。Creeら(1995)AntiCancer Drugs 6:398−404を参照されたい。アッセイ手順は、単一試薬(CellTiter−Glo(登録商標)試薬)を培養細胞に直接的に加えることを含む。これによって、細胞が溶解し、ルシフェラーゼ反応によって産生される発光シグナルが発生する。発光シグナルは、存在するATPの量に比例し、これは、培養物中に存在する生細胞の数に正比例する。データは、ルミノメーター又はCCDカメライメージング装置によって記録することができる。発光産生量は、相対的光単位(RLU)として表される。
【0331】
別の態様では、医薬として使用するための抗LY6E抗体又はイムノコンジュゲートが提供される。さらなる態様では、治療法で使用するための抗LY6E抗体又はイムノコンジュゲートが提供される。ある種の実施態様では、LY6E陽性のがんの治療において使用するための抗LY6E抗体又はイムノコンジュゲートが提供される。ある種の実施態様では、本発明は、有効量の抗LY6E抗体又はイムノコンジュゲートを個体に投与することを含む、LY6E陽性のがんを有する個体を治療する方法において使用するための、抗LY6E抗体又はイムノコンジュゲートを提供する。そうした実施態様の1つでは、方法は、例えば以下に記載するような、有効量の少なくとも1つの追加的な治療薬を個体に投与することをさらに含む。
【0332】
さらなる態様では、本発明は、医薬の製造又は調製における抗LY6E抗体又はイムノコンジュゲートの使用を提供する。一実施態様では、医薬は、LY6E陽性のがんを治療するためのものである。さらなる実施態様では、医薬は、LY6E陽性のがんを有する個体に有効量の医薬を投与することを含む、LY6E陽性のがんを治療する方法において使用するためのものである。そうした実施態様の1つでは、方法は、例えば以下に記載するような、有効量の少なくとも1つの追加的な治療薬を個体に投与することをさらに含む。
【0333】
さらなる態様では、本発明は、LY6E陽性のがんの治療方法を提供する。一実施態様では、方法は、そうしたLY6E陽性のがんを有する個体に、有効量の抗LY6E抗体又はイムノコンジュゲートを投与することを含む。そうした実施態様の1つでは、方法は、以下に記載するような、有効量の少なくとも1つの追加的な治療薬を個体に投与することをさらに含む。
【0334】
上記実施態様の何れかに記載のLY6E陽性のがんは、例えば、LY6E陽性の乳がん、又はLY6E陽性の膵臓がん、又はLY6E陽性の結腸がん、又はLY6E陽性の結腸直腸がん、又はLY6E陽性の黒色腫がん、又はLY6E陽性の卵巣がん、又はLY6E陽性の非小細胞肺がん、又はLY6E陽性の胃がんでもよい。幾つかの実施態様では、LY6E陽性のがんは、抗LY6E免疫組織化学(IHC)又はin situハイブリダイゼーション(ISH)の「0」より大きいスコアが与えられるがんであり、このスコアは、本明細書に記載する条件下で、非常に弱い又は>90%の腫瘍細胞で染色無しに相当する。別の実施態様では、LY6E陽性のがんは、本明細書に記載する条件下で定められるように、1+、2+又は3+のレベルでLY6Eを発現する。幾つかの実施態様では、LY6E陽性のがんは、LY6EのmRNAを検出する逆転写PCR(RT−PCR)アッセイによりLY6Eを発現するがんである。幾つかの実施態様では、RT−PCRは、定量的RT−PCRである。
【0335】
上記実施態様の何れかに記載の「個体」はヒトでもよい。
【0336】
さらなる態様では、本発明は、例えば、上記の何れかの治療方法において使用するための、本明細書で提供する抗LY6E抗体又はイムノコンジュゲートのうちの何れかを含む薬学的製剤を提供する。一実施態様では、薬学的製剤は、本明細書で提供する抗LY6E抗体又はイムノコンジュゲートのうちの何れか、及び薬学的に許容可能な担体を含む。別の実施態様では、薬学的製剤は、本明細書で提供する抗LY6E抗体又はイムノコンジュゲートのうちの何れか、及び例えば以下に記載するような少なくとも1つの追加的な治療薬を含む。
【0337】
本発明の抗体又はイムノコンジュゲートは、療法において単独又は他の薬剤と組み合わせて使用することができる。例えば本発明の抗体又はイムノコンジュゲートは、少なくとも1つの追加的な治療薬と共に同時投与することができる。ある種の実施態様では、追加的な治療薬は、例えば、LY6E陽性のがん、例えば、LY6E陽性の乳がん、又はLY6E陽性の膵臓がん、又はLY6E陽性の結腸がん、又はLY6E陽性の結腸直腸がん、又はLY6E陽性の黒色腫がん、又はLY6E陽性の卵巣がん、又はLY6E陽性の非小細胞肺がん、又はLY6E陽性の胃がんなどの治療のための白金錯体である。
【0338】
上記のそうした併用療法は、併用投与(2つ以上の治療薬が同じ又は別々の製剤に含まれる)、及び分離投与(本発明の抗体又はイムノコンジュゲートの投与が、追加的な治療薬及び/又はアジュバントの投与より前に、その投与と同時に、及び/又はその投与に続いて生じ得る)を包含する。本発明の抗体又はイムノコンジュゲートは、放射線療法と組み合わせて使用することもできる。
【0339】
本発明の抗体又はイムノコンジュゲート(及び任意の追加的な治療薬)は、任意の適切な手段によって投与することができ、その手段には、非経口、肺内及び鼻腔内が含まれ、並びに局所治療が望まれる場合、病巣内の投与が含まれる。非経口注入としては、筋肉、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下投与が挙げられる。投与が短期であるか長期であるかどうかにある程度応じて、任意の適切な経路、例えば静脈内又は皮下注射などの注射によって投薬することができる。これらに限定されないが、様々な時間点にわたる単回又は複数回投与、ボーラス投与及びパルス注入を含めた様々な投薬計画が、本明細書で企図される。
【0340】
本発明の抗体又はイムノコンジュゲートは、適正な医療行為に合致する様式で、製剤化され、用量決定され、投与されることになる。これに関連して考慮する要因としては、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与計画、及び医師に知られている他の要因が挙げられる。抗体又はイムノコンジュゲートは、必要ではないが、任意選択的に、問題になっている障害を予防又は治療するのに現在使用されている1つ又は複数の薬剤と製剤化される。そうした他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体又はイムノコンジュゲートの量、障害又は治療のタイプ、及び上で論じた他の要因によって決まる。これらは、一般に、本明細書に記載されるのと同じ投薬量及び投与経路で、又は本明細書に記載の投薬量の約1から99%で、又は経験的/臨床的に適切であると決定された任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
【0341】
疾患の予防又は治療のために、(単独又は1つ又は複数の他の追加的な治療薬と組み合わせて使用する場合の)本発明の抗体又はイムノコンジュゲートの適切な投薬量は、治療される疾患のタイプ、抗体又はイムノコンジュゲートのタイプ、疾患の重症度及び経過、抗体又はイムノコンジュゲートが予防又は治療目的で投与されるかどうか、以前の療法、患者の病歴及び抗体又はイムノコンジュゲートへの応答、並びに主治医の裁量によって決まる。抗体又はイムノコンジュゲートは、1回で又は一連の治療にわたって適切に患者に投与される。疾患のタイプ及び重症度に応じて、約1μg/kgから15mg/kg(例えば0.1mg/kg−10mg/kg)の抗体又はイムノコンジュゲートが、例えば、1回又は複数回の分離投与によるか、持続注入によるかに関わらず、患者に投与するための最初の候補投薬量であり得る。1つの典型的な1日投薬量は、上述の要因に応じて、約1μg/kgから100mg/kg以上の範囲に及び得る。数日以上にわたる反復投与については、状態に応じて、治療は、一般に、疾患症状の所望の抑制が起こるまで持続されることになる。抗体又はイムノコンジュゲートの1つの例示的投薬量は、約0.05mg/kgから約10mg/kgの範囲であろう。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kg(又はそれらの任意の組み合わせ)の1つ又は複数の用量が、患者に投与される得る。そうした用量は、断続的に、例えば毎週又は3週毎に投与することができる(例えばその結果、患者は、約2から約20、又は例えば約6用量の抗体が与えられる)。最初の高負荷量に続いて、1つ又は複数の低用量を投与することができる。しかし、他の薬物投与法も有用であり得る。この療法の進捗は、従来の手法及びアッセイによって容易にモニターされる。
【0342】
上記の製剤又は治療方法の何れかが、本発明のイムノコンジュゲートと抗LY6E抗体の両方を使用して実施され得ることが理解されよう。
【0343】
H.製造品
本発明の別の態様では、上記の障害の治療、予防及び/又は診断に有用な材料を含む製造品が提供される。製造品は、容器、及び容器上の若しくは容器に付随するラベル又は添付文書を含む。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、注射器、IV輸液バッグなどが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの種々の材料から形成され得る。容器は、単独で、又は別の組成物と組み合わせて、障害を治療、予防及び/若しくは診断するのに有効な組成物を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈輸液バッグ又はバイアルでもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本発明の抗体又はイムノコンジュゲートである。ラベル又は添付文書は、組成物が、選択された状態を治療するのに使用されることを示す。さらに、製造品は、(a)本発明の抗体又はイムノコンジュゲートを含む組成物が中に含まれる第1の容器、及び(b)さらなる細胞傷害性薬又は治療薬を含む組成物が中に含まれる第2の容器を含むことができる。本発明の本実施態様における製造品は、組成物が特定の状態を治療するのに使用ができることを示す添付文書をさらに含むことができる。あるいは、又はさらに、製造品は、薬学的に許容可能な緩衝液、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンガー液又はデキストロース溶液を含む第2(又は第3)の容器をさらに含むことができる。他の緩衝液、希釈剤、濾過器、針及び注射器を含めた、商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含んでいてもよい。
【0344】
I.本発明の配列
本発明の別の態様では、上記の障害の治療、予防及び/又は診断に有用な次の配列が提供される。
【実施例】
【0345】
以下は、本発明の方法及び組成物の実施例である。上記の概説を考えると、様々な他の実施態様が実施され得ることが理解されよう。
【0346】
実施例1−ヒトLy6E遺伝子の発現
Genelogicプロファイル:複数のヒト腫瘍及び正常生検試料におけるLy6E mRNAの発現を解析するために、AffymetrixデータをGene Logic Incから得た。プローブセット番号202145_atに関して示される解析は、3,879の正常なヒト組織試料(緑色の記号)、1,605のヒトがん組織試料(赤色の記号:1,291は原発性及び314は転移性)並びに3,872のヒト非がん疾患組織試料(青色の記号)に関して、HGU133 Plus v2遺伝子チップを使用して行った。マイクロアレイデータをAffymetrix MAS(Microarray Analysis Suite)5.0版ソフトウェアを使用して標準化し、試料発現値を500のトリム平均にスケーリングした。
【0347】
本解析によって、Ly6Eは、特に乳房、膵臓、結腸、肺及び卵巣がんで過剰発現しており、正常組織ではLy6Eは低/無検出であることが示された(
図2)。
【0348】
in situハイブリダイゼーション(ISH):Methods Mol Biol.2006;326:255−64で確立された方法に従って、卵巣がん組織マイクロアレイ(TMA)に関してin situハイブリダイゼーションを実施し、Ly6Eの広まりを評価した。
【0349】
フォワードプライマーGTG CCT GAT CTG TGC CCT TGG−配列番号48
【0350】
リバースプライマーCCC GGA AGT GGC AGA AAC CC−配列番号49
【0351】
プローブ配列:
−配列番号50
【0352】
この結果は、解析した卵巣腫瘍の47/65(72%)がLy6Eの発現を示すことを表した(データ非表示)。
【0353】
免疫組織化学(IHC):ガラススライド上にマウントした4μm厚のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片に関して、免疫組織化学を実施した。キシレン中でスライドを脱パラフィンし、蒸留水までの段階的なアルコールを通して再水和した。スライドをTarget Retrieval溶液(Dako、Carpinteria、CA、USA)で20分間99℃で前処理した。次いでスライドを、KPLブロッキング溶液(Kierkegaard and Perry Laboratories、Gaithersburg、MD、USA)及びアビジン/ビオチンブロック(Vector Laboratories、Burlingame、CA、USA)それぞれで処理した。非特異的なIgG結合を、リン酸緩衝食塩水に入れた3%ウシ血清アルブミン(Roche、Basel、Switzerland)中の10%ウマ血清(Life Technologies、Carlsbad、CA、USA)でブロッキングした。1次抗体であるマウス抗Ly6Eのクローン10G7.7.8(実施例3を参照されたい)を10μg/mLに希釈し、スライド上で60分間室温でインキュベートした。
【0354】
スライドをすすぎ、ウマ抗マウスIgGビオチン標識化2次抗体(Vector Labs)でインキュベートし、続いてVectastain ABC Elite試薬(Vector Labs)中でインキュベートした。次いで、スライドをPierceの金属増強DAB(Thermo Scientific、Fremont、CA)中でインキュベートし、カウンター染色し、脱水し、カバーガラスをかけた。
【0355】
IHC試験から、Ly6Eの広まりを、乳がんの27−36%、膵臓がんの〜40%、結腸がんの〜26%、黒色腫の17−26%、NSCLCの〜29%で検出した(データ非表示)。
【0356】
正常組織での免疫組織化学:正常なヒト及びカニクイザル組織のパネルに関して、低及び中程度のLy6E発現がヒト及びカニクイザルの両方の胃及び唾液腺で検出され、低から中程度までのLy6E発現がカニクイザルの副腎皮質の細胞のサブ集団で、より少ない程度までがヒト標本で検出され、中程度のLy6Eの発現が膀胱の移行上皮で検出される(カニクイザルのみを調べた)。以下の表2は、包括的なヒト及びカニクイザルの正常組織パネルでの免疫組織化学的(IHC)なLy6Eの発現を表にする。低(LOW)から中程度(MOD)までのLy6E発現は、灰色で強調した組織(副腎皮質、頚部、唾液腺、胃及び膀胱)に限定される。ND=実施せず。NO=発現無し。
【0357】
実施例2−定量的PCR(QRT PCR)
Origene、Rockville、MD(HMRT 102)の48正常組織のパネル由来の第1鎖DNAを含むヒト主要組織のqPCRアレイを、Ly6ERNAの発現についてアッセイした。選択したがん細胞系統及び組織(乳房及び膵臓)のパネル中のLy6Eの発現を同時にアッセイした。Taqmanアッセイを、Applied Biosystems(ABI、Foster City、CA)の試薬、機器及びソフトウェアを使用してセットアップした。プライマー−プローブセットは、レポーター色素FAMとクエンチャー色素TAMRAで二重標識された蛍光発生プローブに隣接するプライマーを考えて設計した。
【0358】
RPL19用のプライマー−プローブセット
フォワードプライマー−5’AGC GGA TTC TCA TGG AAC A(配列番号51);リバースプライマー−5’CTG GTC AGC CAG GAG CTT(配列番号52)、及びプローブ−5’TCC ACA AGC TGA AGG CAG ACA AGG(配列番号53)。
【0359】
Ly6E用のプライマー−プローブセット:
フォワードプライマー−5’AGA AGG CGT CAA TGT TGG T(配列番号54);リバースプライマー−5’CAC TGA AAT TGC ACA GAA AGC(配列番号55)、及びプローブ−5’TTC CAT GGG CAT CAG CTG CTG(配列番号56)。
【0360】
この結果は、正常組織でのLy6E転写産物の発現は、乳がん及び膵臓がんでのLy6Eの発現と比較して低いことを示す(
図3)。
【0361】
実施例3−抗体生成及びヒト化
抗Ly6Eモノクローナル抗体、クローン4D8、10G7及び9B12を産生するために、以下のように、細菌(大腸菌)で生成されたHisタグ化Ly6E又は哺乳動物(CHO−K1S)で生成されたC末端myc6XHisタグ化Ly6Eタンパク質の何れかで、5匹の雌のBALB/cマウスを免疫化した。
【0362】
ヒトLy6E cDNAの生成:Origene、Rockville、MDのヒトLy6E及びOpen Biosystems、Lafayette、COのカニクイザルLy6E cDNAを、レトロウイルスN末端gD−タグ化ベクターにクローニングした。これらの構築物を使用して、それぞれヒトLy6EとカニクイザルLy6Eを安定して発現するPC3細胞のプールを生成した。
【0363】
さらに、HisタグヒトLy6Eを、CMVプロモーター駆動型哺乳動物発現システム及び細菌発現システムにクローニングして、CHO−K1懸濁細胞及び大腸菌から分泌タンパク質を生成した。
【0364】
マウスの免疫化:モノホスホリルリピドA/トレハロースジコリノミコラートアジュバント(Ribi Immunochemicals)に再懸濁した2μgのタンパク質を隔週で6回足蹠に注射して、マウスを免疫化した。最後の追加免疫から3日後に、50%ポリエチレングリコールを使用してマウスの骨髄腫細胞系統P3X63AgU.1(CRL1597、アメリカ培養細胞系統保存機関)に由来する細胞と、膝窩リンパ節を融合させた。96ウェルプレート中でヒポキサンチンアミノプテリン−チミジン(HAT)培地を使用して、ハイブリドーマを選択した。10から14日後に、培養上清を回収し、免疫原に対する直接ELISAによって、及びHT1080トランスフェクト細胞系統でのLy6Eへの結合についてのフローサイトメトリー解析よってスクリーニングし、次いで、限界希釈によってサブクローニングした。
【0365】
hu9B16CDRグラフトの生成−マウス9B12(mu9B12)の幾つかのCDRグラフトを、各高頻度可変領域に対する別々のオリゴヌクレオチドを使用して、Kunkel突然変異誘発によって生成した。これらの構築物は、一過的なIgG発現ベクターとして作製した。妥当なクローンをDNAの配列決定により評価した。記載されているように、IgGを発現させ、精製した(Liang,W.−C.ら、Function blocking antibodies to neuropilin−1 generated from a designed human synthetic antibody phage library.Journal of Molecular Biology 366、815−829(2007)を参照されたい)。
【0366】
細胞ベースのLy6E競合的結合アッセイ−ヒトLy6EをトランスフェクトしたPC3細胞培養物を、5mM EDTAを含むPBSを用いて収集した。細胞をPBSで洗浄し、384ウェル高結合プレート(Meso Scale Discovery Technology(MSD)、Gaithersburg、MD)に加えた。記載されているように、このプレートを室温で1時間維持して、細胞をプレートに接着させた(Lu,Y.、Wong,W.L.&Meng,Y.G.、A high throughput electrochemiluminescent cell−binding assay for therapeutic anti−CD20 antibody selection.、Journal of Immunological Methods 314、74−79(2006)を参照されたい)。細胞を有するプレートを、ウシ胎仔血清を含むPBSで1時間ブロッキングし、次いで、氷上で冷却した。連続的に希釈した抗体変異体試料を、等体積の固定濃度のマウス9B12 Abと混合した。混合物をプレートに加え、優しく振盪しながら1時間4℃でインキュベートした。
【0367】
次いで、プレートを冷却PBSで洗浄し、スルホ−ルテニウムタグで標識された抗マウスIgG Fc特異的Ab(Jackson ImmunoReserach、West Grove、PA)を検出試薬としてプレートに加えた。このプレートを、優しく振盪しながら1時間4℃でインキュベートした。インキュベーションした後、プレートを再び洗浄し、MSD読み取り緩衝液(MSD、Gaithersburg、MD)をウェルに加えた。プレートを、MSD SectorOイメージャー6000で読み取った。データをグラフ化し、Kaleidaグラフソフトウェア(Synergy Software、Reading、PA)を使用して解析して、IC
50値を決定した。
【0368】
SPR親和性測定−BIAcore(商標)−T100によるシングルサイクルカイネティクスを使用する表面プラズモン共鳴によって親和性測定を実施した。供給業者の説明書(〜20応答単位(RU))に従って、EDC/NHS化学反応を介して、Hu Ly6EをCM5チップ上に固定化した。カイネティクス測定については、3倍段階希釈の抗Ly6E IgG(5から405nM)のPBST溶液を、結合に関して200秒&解離に関して300秒で、30μl/分の流速で25℃で注入した。両方のRUを、ブランクのフローセル及び同じフローセル上を流れる緩衝液から減算して結合反応を補正した。k
on及びk
offの同時適合の1:1Languirモデルを使用して、見かけのKDを測定した。
【0369】
9B12(抗Ly6E)のヒト化
マウス9B12をヒト化するために、高頻度可変領域(HVR)を、カッパI−VH
2コンセンサスフレームワーク又はカッパI−VH
3コンセンサスフレームワークの何れかにグラフトして、潜在的なバーニア位置の様々な組み合わせを含む幾つかのCDRグラフトを生成した。9B12変異体の可変ドメイン配列を、ヒトコンセンサスカッパI(
図4)及びVH
2(
図5)又はVH
3(
図6)可変ドメインフレームワークに整列させた。ヒトコンセンサスフレームワークと異なるアミノ酸の位置を灰色で強調し、CDRグラフトを生成するために移された領域を枠で囲む。Kabatに従って位置を番号付けする(Kabat,E.A.、Wu,T.T.、Perry,H.M.、Gottesman,K.S.&Foeller、C.、Sequences of proteins of immunological interest、第5版(Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD、1991)を参照されたい)。VLドメインで使用されるHVR領域は、位置24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)(
図4)である。VHドメインでは、位置26−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3)をグラフトした(
図5及び6)。
【0370】
新しいヒトフレームワークにおいてHVRコンフォメーションに影響する可能性がある幾つかの位置(バーニア位置)を、Ly6Eの結合親和性におけるそれらの役割を探究する目的で、マウス配列に戻した。カッパIドメインでは、43位、44位及び71位の組み合わせが含まれていた。VH
2ドメインでは、24位、37位、49位、73位及び76位の組み合わせを探究し、一方VH
3ドメインでは、24位、48位、67位、71位、76位及び78位の組み合わせを試験した。25種の変異体をすべて同時に構築し、IgGとして発現させた(表3)。次いで精製したIgGを、細胞ベースのLy6E競合的結合アッセイでスクリーニングした。コンセンサスVH
2可変重鎖ドメインを使用するか、コンセンサスVH
3可変重鎖ドメインを使用するかどうかに関係なく、ほとんどのHVR構築物はLy6Eに結合した。追加的な変化が最も少ない最良のクローンであるhu9B12.v12を、VH
2ドメインを使用して獲得し、このクローンは、カッパIに3か所(43、44及び71)及びVH
2に2か所(24及び49)のバーニア位置を含む。表3は、細胞ベースのLy6E競合的結合アッセイを使用して構築及び評価した、ヒト化HVRフレームワーク修復変異体のマトリックスを示す。
【0371】
このクローンは、細胞ベースのLy6E競合的結合アッセイでは、ヒトLy6Eに対して親和性は約3−5倍低減していたが、SPR及びスキャッチャード解析によれば親和性は類似していた(表4)。ここでは、ch9B12はキメラ変異体を表示し、9B12.v12は、ヒト化変異体を表示する。
【0372】
実施例4−ヒト及びカニクイザルのLy6Eへの抗Ly6E抗体の結合
スキャッチャード解析を実施して、抗体に対する細胞あたりの親和性及び結合部位を決定した。Iodogen法を使用して、Hu.9B12v12抗体を数回ヨウ素標識した。放射標識したHu.9B12v12抗体は、NAP−5カラムを使用するゲル濾過によって遊離
125I−Naから精製し、11.14−16.01μCi/μgの比活性範囲を有していた。固定濃度のヨウ素標識抗体及び漸減濃度の非標識抗体を含む50μlの競合反応混合物を96ウェルプレートに配置した。組換えのヒト又はカニクイザルのgDタグ化Ly6Eの何れかを発現するようにレトロウイルスによって安定して形質導入されたPC3細胞を、Sigma細胞解離溶液を使用してフラスコから離し、結合緩衝液(2%FBS、50mM HEPES、pH7.2及び0.1%アジ化ナトリウムを含むDMEM)で洗浄した。洗浄した細胞を、おおよその密度が、0.2mLの結合緩衝液中に200,000細胞の濃度で、50μLの競合反応混合物を含む96ウェルプレートに加えた。細胞を用いる各競合反応におけるヨウ素標識抗体の終濃度は、200pMであり、細胞を用いる競合反応における非標識抗体の終濃度は変動し、500nMで開始し、次いで、10種の濃度について1:2倍希釈で漸減させ、これには、無添加の緩衝液のみの試料が含まれる。非標識抗体の各濃度に対する細胞を用いる競合反応を3回アッセイした。細胞を用いる競合反応を2時間室温でインキュベートした。2時間インキュベーションした後、競合反応物をMilliporeマルチスクリーンフィルタープレートに移し、結合緩衝液で4回洗浄して、結合したヨウ素標識抗体から遊離ヨウ素標識抗体を分離した。Wallac Wizard 1470ガンマカウンター(PerkinElmer Life and Analytical Sciences、Wellesley、MA)でフィルターをカウントした。結合データは、抗体の結合親和性を決定するのにMunson及びRodbard(1980)の適合アルゴリズムを使用するNew Ligandソフトウェア(Genentech)を使用して評価した。
図6のパネルA及びB並びに表5で示すように、ヒト及びカニクイザルでのHu9B12v12の結合親和性は、それぞれ4.0nM及び7.9nMと推定された。
:
【0373】
実施例5−抗体薬物コンジュゲートの生成
大規模な抗体産生のために、抗体をCHO細胞で産生する。VL及びVHをコードするベクターをCHO細胞にトランスフェクトし、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって、細胞培養培地からIgGを精製した。
【0374】
vcMMAE ADCの生成:抗Ly6E抗体−薬物コンジュゲート(ADC)は、hu9B12.v12又はコントロール抗gD ADCを、本明細書に示す薬物−リンカー部分MC−vc−PAB−MMAEにコンジュゲートすることによって産生した。便宜上、薬物−リンカー部分MC−vc−PAB−MMAEは、これらの実施例及び図で「vcMMAE」又は「VCE」と呼ぶこともある。コンジュゲーションに先立って、国際公開第2004/010957A2号に記載されている方法に従った標準的な方法を使用して、TCEPで抗体を部分的に還元した。部分的に還元した抗体を、例えば、Doroninaら(2003)Nat.Biotechnol.21:778−784及び米国特許出願公開第2005/0238649A1号に記載された方法に従った標準的な方法を使用して、薬物−リンカー部分にコンジュゲートした。簡単に述べると、抗体の還元システイン残基へ薬物−リンカー部分がコンジュゲートできるように、部分的に還元した抗体を薬物−リンカー部分と結合させた。コンジュゲーション反応をクエンチし、ADCを精製した。各ADCに関する薬物負荷(抗体あたりの薬物部分の平均数)を決定し、抗Ly6E抗体及び抗gDコントロール抗体について3.3から4.0の間であった。
【0375】
実施例6:ヒト及びCyno Ly6Eへのヒト化抗Ly6E ADCの結合
In vitroでの死滅アッセイ:細胞生存率に対するHu9B12v12−ADCの効果を評価するために、底部が透明の黒色96ウェルプレート中の50μlの標準増殖培地に、ウェルあたり1,500個で細胞を播いた。24時間後に、Hu9B12v12−ADC濃度の段階希釈物を含む追加的な50μlの培養培地を3連のウェルに加えた。5日後に、CellTiter−Glo発光細胞生存率試薬(G7572、Promega Corporation)及びEnVision2101マルチラベルリーダー(Perkin−Elmer)を使用して、細胞生存率を測定した。試験した2種の細胞系統について、in vitroでの死滅効果は、細胞表面でのLy6Eの発現に比例するように思われた(
図6、パネルA及びB)。
【0376】
フローサイトメトリー:蛍光活性化セルソーティング(FACS)のために、細胞を、2.5mmol/LのEDTAを含むPBS中に収集し、1%FBSを含むPBS緩衝液中で洗浄した。その後のステップはすべて4℃で行った。細胞を、3から5μg/mLの1次抗体、続いて、適切な2次抗体で、それぞれ1時間インキュベートした。次いで、細胞をFACS Caliburフローサイトメーター(BD Biosciences)で解析し、幾何平均値を得た。1次抗体、Ly6Eの細胞表面検出のためのHu.9B12v12、N末端gDタグの検出のための社内で生成した抗gD mAbを使用した。Alexa488をコンジュゲートした抗マウス又は抗ヒトIgG蛍光検出試薬(A11017、A11013;Invitrogen)を使用した。
【0377】
実施例7:異種移植マウスモデルにおける抗Ly6E ADCのin vivoでの有効性
乳がん細胞系統HCC1569(CRL−2330)、膵臓がん細胞系統SU.86.86(CRL−1837)、チャイニーズハムスター卵巣細胞系統CHO−K1(CCl−61)及び前立腺がん細胞系統PC3(CRL−1435)をアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC、Manassas、VA)から得た。CHO−K1Sは、CHO−K1の懸濁細胞系統誘導体である。HCC1569X2細胞系統は、in vivoでの増殖に最適化された親HCC1569細胞系統(ATCC、CRL−2330)の誘導体である。親HCC1569細胞を雌のTaconic NCrヌードマウスの右脇腹の皮下に注射し、1つの腫瘍を収集し、分割し、in vitroで増殖させて、HCC1569X1細胞系統を得た。HCC1569X1系統を、この細胞系統の増殖を改善する目的で、雌のTaconic NCrヌードマウスの右脇腹の皮下に再び注射した。本試験由来の腫瘍を回収し、in vitro増殖に再び適合させて、HCC1569X2細胞系統を生成した。この細胞系統及びこの系統に由来する腫瘍は、Ly6Eを発現する。
【0378】
異種移植モデル:抗Ly6E抗体薬物コンジュゲート(ADC)の有効性を、上記の細胞系統に由来する異種移植モデル又は原発性患者由来の腫瘍モデルで評価し、後者の実験は、Oncotest、Freiburg、Germany及びXenTech、Genopole、Franceで行った。
【0379】
Genentech、South San Francisco、CAで行ったすべての試験は、実験動物の管理と使用に関する指針(参照:Institute of Laboratory Animal Resources (NIH刊行番号85−23)、Washington,DC、National Academies Press、1996)に従った。Oncotestで行ったすべての実験は、地方自治体により承認されており、ドイツの動物保護法(Tierschutzgesetz)の指針に従って行った。XenTechのCERFE施設において動物を使用するための許可は、The Direction des Services Veterinaires、Ministere de l’ Agriculture et de la Peche、Franceによって得た(承諾番号A91−228−107)。動物の管理及び飼育は、欧州条約STE123に従った。XenTechでのすべての実験は、実験動物の保護に関するフランスの法律に従って、及びフランス農務水産省によってDr.Truong−An TRANに対して発行された脊椎動物の実験に関する現在の有効な許可(第A91−541号、2010年12月21日付け、有効期限:5年間)に従って実施する。6から9週齢の雌の免疫不全マウスは、背側の右脇腹の皮下に接種し、SDを伴う平均腫瘍体積を群当たり9−10匹のマウスから求めた。
【0380】
細胞系統に由来する異種移植片を伴う有効性試験のために、マトリゲルを含むHBSSに入れた500万個の細胞でTaconicのNCRヌードマウスを接種したか、又はCharles RiverのC.B−17SCID(近交系)マウスをマトリゲルを含むHBSSに入れた200万個の細胞で接種した。HCC1569X2異種移植モデルについては、0.36mgのエストロゲン埋込体を使用した。XenTech及びOncotestでの腫瘍外植片を用いる有効性試験のために、Harlan又はCharles Riverの胸腺欠損ヌードマウス又はNMRI nu/nuマウスに、モデルHBCx−8、HBCx−9、MAXF−1162及びPAXF−1657からの原発性乳がん患者又は膵臓がん患者由来の材料を移植した。腫瘍体積が約80−200mm3に達した時(0日目)に、動物を各9−10匹の群に無作為に分け、ビヒクルコントロール又はADCの何れかの単回静脈(IV)注入を適切な用量で施した。腫瘍体積を試験終了まで1週間につき2回測定した。
【0381】
理解を明瞭にする目的で、前述の発明を、例示及び例としてある程度詳細に記載したが、説明及び例は、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。本明細書で引用されるすべての特許及び科学文献の開示は、出典明示によりその全体が本明細書に明確に援用される。