(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から液晶は、液晶分子が配向することによってその光学的性質が変化するため、この性質を利用して液晶ディスプレー等の情報表示装置に使用されている。
また、液晶は、電界や磁界を加えて液晶分子の配向方向を変化させるとその粘性が変化する。つまり、液晶は、電気粘性流体としての性質も有しているので、この性質を利用した軸受やダンパー等が開発されている。
【0003】
ところで、液晶分子に電場や磁場を印加すると、液晶流動が発生することが知られており、かかる液晶流動を利用する技術が開発されている(特許文献1〜6)。
【0004】
特許文献1には、筒状の管体の周方向に沿って電極と絶縁部とを交互に並べた構成が開示されており、電圧を印加する電極を周方向に沿って移動させれば、電極の移動方向に沿って液晶の流動が生じる旨が開示されている。
この特許文献1では、電極を移動させたときに常に+の電極に向かった流れが発生している。つまり、特許文献1には、液晶分子が電極に引っ張られることによって、液晶流動が発生する技術が開示されている。
【0005】
しかるに、特許文献1の技術では、液晶流動を発生させるために、電極の+と−とを切り替えながら、電圧を印加する電極を周方向に沿って移動させなければならないので、電極を切り替える制御が複雑になり、液晶流動の制御が難しい。
【0006】
一方、特許文献2〜6には、液晶分子の回転に起因して液晶分子の周囲に発生する速度勾配に起因する液晶流動を発生させて、この液晶流動を利用して物体を移動させる技術が開示されている。
【0007】
特許文献2〜6には、固定部材と、この固定部材に対して移動可能に設けられた移動部材とを備え、両者の間に液晶を収容した物体移動機構が開示されている。この物体移動機構では、移動部材および固定部材にそれぞれ一対の電極が設けられており、各液晶分子がそれぞれ一方向にのみ回転するように拘束する拘束手段が移動部材および固定部材の互いに対向する面に設けられている。
【0008】
そして、この物体移動機構では、拘束手段によって、各液晶分子がそれぞれ一方向にのみ回転するように拘束されているので、一対の電極から液晶に電界を印加すれば液晶分子が回転し、一方向の液晶流動を発生させることができる。したがって、この液晶流動の方向に沿って移動部材を移動させることができるのである。
【0009】
しかも、一対の電極に対する電圧のON・OFFを繰り返すだけであるので、特許文献1のように電極の+と−の切り替えさせながら移動させる場合に比べて、電圧制御が容易であるという利点が得られる。
【0010】
しかるに、上記特許文献2〜6の技術でも、一対の電極から液晶に対して電界を印加する必要があるので、移動する部材に電極を設けなければならないという点で物体移動機構の構造が複雑になる可能性がある。
そこで、より簡単な構造で液晶流動を工業的に利用できる物体移動機構があれば、液晶流動の工業的な利用を促進することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はかかる事情に鑑み、簡単な構造かつ制御で液晶流動を簡単にできる横電界式液晶流動形成機構および液晶流動を利用した横電界式物体移動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(横電界式液晶流動形成機構)
第1発明の横電界式液晶流動形成機構は、流路と、該流路の壁面に沿って移動可能に設けられた液晶と、該液晶の液晶分子に対して電界を印加する液晶分子回転手段と、を備えており、該液晶分子回転手段が、前記流路の一の壁面に沿って配置された複数の電極と、該複数の電極のうち、選択された印加電極に電圧を印加する電圧印加手段と、を備
え、該電圧印加手段は、一対の電極を電極対とすると、複数の該電極対を印加電極として選択するものであり、該選択された複数の電極対において、各電極対における一対の電極を通過し前記流路の一の壁面と交差する交差面と前記流路の一の壁面との交線が、互いに平行となるように前記印加電極を選択するものであることを特徴とする。
(横電界式物体移動機構)
第2発明の横電界式物体移動機構は、移動が固定された固定部材と、該固定部材と対向するように配置され、該固定部材に対して相対的に移動可能に設けられた移動部材と、該移動部材における前記固定部材と対向する移動側対向面と、前記固定部材における前記移動部材と対向する固定側対向面との間に配置された液晶と、前記液晶の液晶分子に対して電界を印加する液晶分子回転手段と
を備え、前記液晶分子回転手段が、前記固定部材に配置された複数の電極と、該複数の電極のうち、選択された印加電極に電圧を印加する電圧印加手段と、を備え
ており、該電圧印加手段は、一対の電極を電極対とすると、複数の該電極対を印加電極として選択するものであり、該選択された複数の電極対において、各電極対における一対の電極を通過し前記固定部材の固定側対向面と交差する交差面と前記固定部材の固定側対向面との交線が、互いに平行となるように前記印加電極を選択するものであることを特徴とする。
第3発明の横電界式物体移動機構は、
第2発明において、前記固定部材が、中空な空間を有する外側部材であり、前記移動部材が、前記外側部材の中空な空間内に配設された前記外側部材に対して相対的に回転自在に配設された内側軸であり、前記外側部材の内面と前記内側軸の外面との間に前記液晶が配設されており、前記複数の電極が、前記外側部材に設けられており、前記電圧印加手段は、前記交差面が前記外側部材の中空な空間の中心軸と直交する面となるように、前記印加電極を選択するものであることを特徴とする。
第4発明の横電界式物体移動機構は、
第2発明において、前記移動部材が、中空な空間を有する外側部材であり、前記固定部材が、前記外側部材の中空な空間内に配設された前記外側部材に対して相対的に回転自在に配設された内側軸であり、前記外側部材の内面と前記内側軸の外面との間に前記液晶が配設されており、前記複数の電極が、前記内側軸に設けられており、前記電圧印加手段は、前記交差面が前記外側部材の中空な空間の中心軸と直交する面となるように、前記印加電極を選択するものであることを特徴とする。
第5発明の横電界式物体移動機構は、
第3または第4発明において、前記外側部材と前記内側軸とが、前記外側部材の中空な空間の中心軸の軸方向に沿って、相対的に移動可能に設けられており、前記電圧印加手段は、前記交差面が、前記外側部材の中空な空間の中心軸に対して非直交な面となるように、前記印加電極を選択するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
(横電界式液晶流動形成機構)
第1発明によれば、液晶分子回転手段の電圧印加手段によって、選択された印加電極に電圧を印加すれば、印加電極間に電界が形成され、印加電極間に位置する流路中の液晶には電界が印加される。すると、液晶の液晶分子は、その軸方向が電界の電気力線に沿った方向を向くようにその配向を変化させるので、液晶分子の配向の変化に起因して、一の壁面に沿った液晶流動を発生させることができる。しかも、複数の電極は一の壁面にのみ設ければよいので、液晶を挟むように電極を配置する場合に比べて、流動機構の構造を簡素化でき小型化することができる。そして、液晶流動を発生させる方向を変化させるときに、液晶流動を発生させたい方向と電界が形成される方向とが一致するように印加電極を選択すればよく、電圧を印加する電極の移動方向を考慮せずに、電圧を印加する電極を選択できるので、印加電極を選択する制御が複雑にならない。
しかも、液晶に対して電界を印加したときにおいて、液晶分子の配向の変化に起因して、各液晶分子の周囲に発生する液晶流動の方向を全て同じ方向とすることができる。
(横電界式物体移動機構)
第2発明によれば、液晶分子回転手段の電圧印加手段によって、選択された印加電極に電圧を印加すれば、印加電極間に電界が形成され、印加電極間に位置する流路中の液晶には電界が印加される。すると、液晶の液晶分子は、その軸方向が電界の電気力線に沿った方向を向くようにその配向を変化させるので、液晶分子の配向の変化に起因して、固定部材の固定側対向面に沿った液晶流動を発生させることができる。すると、移動部材を、固定部材の固定側対向面に沿って移動させることができる。しかも、複数の電極は、液晶流動が発生しても移動しない固定部材の固定側対向面にのみ設ければよいので、物体移動機構の構造を簡素化でき小型化することができる。そして、液晶流動を発生させる方向を変化させるときに、液晶流動を発生させたい方向と電界が形成される方向とが一致するように印加電極を選択すればよく、電圧を印加する電極の移動方向を考慮せずに、電圧を印加する電極を選択できるので、印加電極を選択する制御が複雑にならない。
しかも、液晶に対して電界を印加したときにおいて、液晶分子の配向の変化に起因して、各液晶分子の周囲に発生する液晶流動の方向を全て同じ方向とすることができるから、移動部材を移動させる効率を向上させることができる。
第3発明によれば、液晶分子回転手段の電圧印加手段によって、選択された印加電極に電圧を印加すれば、液晶分子の配向の変化に起因して、中空な空間の中心軸周りの液晶流動を発生させることができる。すると、内側軸を、外側部材の中空な空間の中心軸周りに回転させることができる。しかも、複数の電極は、液晶流動が発生しても移動しない外側部材にのみ設ければよいので、物体移動機構の構造を簡素化でき小型化することができる。
第4発明によれば、液晶分子回転手段の電圧印加手段によって、選択された印加電極に電圧を印加すれば、液晶分子の配向の変化に起因して、中空な空間の中心軸周りの液晶流動を発生させることができる。すると、外側部材を、外側部材の中空な空間の中心軸周りに回転させることができる。しかも、複数の電極は、液晶流動が発生しても移動しない内側軸にのみ設ければよいので、物体移動機構の構造を簡素化でき小型化することができる。
第5発明によれば、液晶分子回転手段の電圧印加手段によって、選択された印加電極に電圧を印加したときに発生する液晶流動が、中空な空間の中心軸の軸方向の速度成分を有する。すると、外側部材と内側軸とを、中空な空間の中心軸の軸方向に沿って相対的に移動させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
なお、
図1〜
図4は、構成を分かりやすくするために、各部の相対的な寸法は実際のものと一致していない。
【0017】
(本実施形態の横電界式液晶流動形成機構10)
まず、
図1に基づいて、本実施形態の横電界式液晶流動形成機構10を説明する。
【0018】
(流路11について)
図1において、符号11aおよび符号11bは、液晶LCを流動可能に収容する流路11の下壁および上壁をそれぞれ示している。この流路11は、下壁11aおよび上壁11bと、この下壁11aと上壁11bとの間に設けられた一対の側壁11c,11cとを備えており、この4つの壁に囲まれた空間に液晶LCを流動させ得る空間が形成されている。つまり、
図1の流路11は、液晶LCが
図1(A)および
図1(B)における左右方向(以下、流路軸方向という)に沿って流れることができるような構造を有しているのである。
【0019】
上述した4つの壁の内面が、特許請求の範囲にいう流路の壁面に相当する。
なお、流路11は、4つの壁面を有していなくてもよく、流路11は上壁11bおよび一対の側壁11c,11cは必ずしもなくてもよい。つまり、少なくとも下壁11aを有していれば、下壁111aの上面に液晶LCを載せれば、下壁11aの上面に沿って液晶LCを流すことができる。つまり、下壁11aだけでも流路を形成することは可能である。この場合には、下壁11aの上面が特許請求の範囲にいう流路の壁面になる。
【0020】
(液晶分子回転手段15について)
図1に示すように、本実施形態の横電界式液晶流動形成機構10では、流路11における下壁11aの上面に、液晶分子回転手段15の電極16が複数設けられている。この複数の電極16は、互いに間隔を空けた状態で、流路軸方向に沿って並ぶように配設されている。
なお、隣接する電極16間の距離は、隣接する電極16間に後述する電圧印加手段17から電圧を印加したときに、隣接する電極16間に電気力線EFが形成されるのであれば、両者間の距離はとくに限定されない。
また、
図1では、全ての電極16が下壁11aの上面、つまり、液晶LCが載せられる側の面に設けられている。しかし、電圧が印加されたときに液晶LCを通過する電気力線EFを形成させることができるのであれば、電極16は下壁11aの外面(
図1(A)では下面)に設けてもよい。
【0021】
図1(A)に示すように、全ての電極16は、電線15sなどを介して液晶分子回転手段15の電圧印加手段17に電気的に接続されている。電圧印加手段17は、全ての電極16の中から、電圧を印加する電極(以下、印加電極という)を選択する電極選択部17aと、選択した電極に対して、電圧を印加する電圧印加部17bとを備えている。電極選択部17aが印加電極をどのように選択するかについては、後述する。
【0022】
そして、下壁11aの上面には、全ての電極16を覆うように、配向膜Fが設けられている。この配向膜Fは、液晶LC中に電気力線EFが形成されたときにおいて液晶分子mが所定の方向にのみ回転するように液晶分子mを配向させるものである。具体的には、配向膜Fは、その表面にラビング処理が行われており、液晶分子mの軸方向が左方に傾いた状態となるように液晶分子mを配向させることができるようになっている(
図2(A)参照)。
【0023】
以上のごとき構造であるので、
図2(B)に示すように、電圧印加部17bから電極16Aと電極16Bとの間に電圧を印加すれば、電極16Aと電極16Bとの間に電気力線EFが形成される。すると、流路11内の液晶LCのうち、この電気力線EFが通過する部分の液晶分子mは、その軸方向が電気力線EFに沿った方向を向くようにその配向を変化させて回転する。
具体的には、配向膜Fによって液晶分子mはその軸方向が左方に傾いた状態となるように配向されているので、液晶分子mは反時計回りに回転し、その周囲に液晶流動を発生させる。このため、流路11内には、
図2(C)に示すように速度分布を有する、左向きの液晶流動を発生させることができるのである。
【0024】
以上のように、本実施形態の横電界式液晶流動形成機構10によれば、液晶分子回転手段15の電圧印加手段17によって一対の電極16,16に電圧を印加すれば、一対の電極16,16間に電界の電気力線EFが形成されて液晶の液晶分子の配向が変化し、この液晶分子の配向の変化に起因して、流路11の一の壁面(下壁11aの上面)に沿った液晶流動を発生させることができる。
【0025】
しかも、電極16を、流路11の複数の壁に設ける必要はなく、一の壁(下壁11a)にのみ設ければよいので、液晶LCを挟むように電極16を配置する場合に比べて、流動機構の構造を簡素化でき小型化することができる。
【0026】
なお、上記例では、液晶10として、電界EFが印加されると、液晶分子mの軸方向が電気力線EFに沿った方向を向くようにその配向を変化するものを使用した場合を説明した。しかし、液晶10として、電界EFが印加されると、液晶分子mの軸方向が電界EFと直交するように回転する液晶を使用してもよい。この場合でも、液晶分子mの軸方向が、流路11の一の壁面(下壁11aの上面)に対して右上がりとなるように配向させておけば(
図5(A)参照)、左に向かう液晶流動を発生させることができる(
図5(B)、(C)参照)。
【0027】
(流路11の壁面処理について)
なお、上記例では、
図1において流路11内に左方向への液晶流動を発生させる場合を説明したが、流路11内に右方向への液晶流動を発生させる場合であれば、液晶分子mの軸方向が右に傾いた状態となるように液晶分子mを配向させればよい。
【0028】
また、上記例では、配向膜Fを設けて液晶LCの液晶分子mを所定の方向に配向させる(アンカリングする)場合を説明したが、液晶LCの液晶分子mを所定の方向に配向させる方法はとくに限定されない。例えば、ラビングレス処理を行って、液晶LCの液晶分子mを所定の方向に配向させてもよい。
【0029】
流路11の下壁11a以外の壁の内面(液晶LCと接する面)の表面処理はとくに限定されないが、配向膜を設けずラビングレス処理も施されていない状態、または、弱アンカリング処理が施されている状態、であることが好ましい。すると、液晶LCの液晶分子mの回転や移動する際に、液晶LCが壁面から受ける抵抗を少なくできるので、効率よく液晶流動を発生させることができる。なお、弱アンカリング処理とは、特許第4053530号「ゼロ面アンカリング液晶配向法及びその液晶デバイス」に記載されているアンカリング処理、つまり、水平又は斜め配向は強制するが、面内(水平配置している分子の軸がある水平面内)方向の配向強制力ないアンカリング処理などである。
【0030】
(印加電極の選択について)
上述したように、電圧印加手段17の電極選択部17aは、電圧を印加する一対の電極16,16を選択する機能を有しており、選択した一対の電極16,16に電圧を印加するタイミングを制御することによって、流路11内に発生する液晶流動を制御している。
【0031】
例えば、
図2に示すように、一対の電極16A,16Bを印加電極として選択し、この一対の電極16A,16Bに間欠的に電圧を印加すれば、
図2における左向きの液晶流動を発生させることができる。つまり、他の電極(
図1であれば電極16C〜16E)を印加電極として選択しなくても、電界EFの方向に沿って液晶流動を発生させることができる。
また、液晶流動を発生させるために、電圧を印加する電極を移動させなくてもよい。つまり、一対の電極16A,16Bへの電圧の印加をON・OFFするだけで液晶流動を発生させることができる。
【0032】
また、電圧印加手段17の電極選択部17aは、複数の電極16のうち、一対の電極16,16を電極対とすると、複数の電極対を印加電極として選択してもよい。例えば、
図1(A)、(B)であれば、隣合う電極同士、つまり、電極16Aと電極16Bを第1電極対、電極16Cと電極16Dを第2電極対、その他の隣合う電極同士をそれぞれ電極対として選択して、全ての電極対または一部の電極対に電圧を印加するようにしてもよい。この場合、電圧が印加された電極対によって形成される電気力線が通過する部分では、全て同じ方向(つまり、
図1では左向き)の液晶流動を発生させることができるので、流路11内に強い液晶流動を発生させることができる。
【0033】
なお、各電極対を構成する電極は、必ずしも隣合った電極でなくてもよい。例えば、一つ飛ばし、または、2つ飛ばしで一対の電極を選択して電極対としてもよい。つまり、電圧が印加された電極対によって形成される電気力線によって液晶流動を発生させることができ、しかも、各電極対が形成する電気力線によって全て同じ方向(つまり、
図1では左向き)の液晶流動を発生させることができるのであれば、電極対を構成する電極はとくに限定されない。
【0034】
さらに、
図1では、流路軸方向に沿って複数の電極16が並ぶように配設された場合を説明したが、複数の電極16は、
図1(C)に示すように、流路11の下壁11aの上面に格子状に配置してもよい。この場合には、電圧印加手段17の電極選択部17aが、各電極対における一対の電極を通過し下壁11aの上面と交差する交差面と下壁11aの上面との交線が、互いに平行となるように電圧を印加する印加電極を選択すれば、前記交線の軸方向に沿って液晶流動を発生させることができる。しかも、選択する印加電極を調整すれば、液晶流動の方向を変更することも可能となる。
【0035】
例えば、
図1(C)に示すように、前記交線が線SLと一致するように印加電極を選択すれば、線SLに沿った液晶流動を発生させることができるし、前記交線が線LLと一致するように印加電極を選択すれば、線LLに沿った液晶流動を発生させることができる。
【0036】
つまり、液晶流動を発生させる方向を変化させるときに、液晶流動を発生させたい方向と電界が形成される方向とが一致するように印加電極を選択すればよい。すると、電圧を印加する電極の移動方向(つまり、最初に電圧を印加した電極とつぎに電圧を印加した電極の相対的な位置)を考慮せずに、電圧を印加する電極を選択できるので、印加電極を選択する制御が複雑にならない。
【0037】
(物体移動機構30について)
また、上記例では、流路11内に液晶流動を発生させる場合を説明したが、この液晶流動によって物体を移動させることができる。以下、
図3に基づいて、物体移動機構30(横電界式物体移動機構)を説明する。
【0038】
なお、
図3の物体移動機構30は、実質的には、上述した液晶流動形成機構10の変形例と考えることができるので、以下の説明では、物体移動機構30と上記液晶流動形成機構10とにおいて共通する構成については、適宜割愛する。
【0039】
図3において、符号31,32は、固定部材および移動部材を示している。この固定部材31と移動部材32は、互いに対向面が平行となるように設けられた板状の部材である。固定部材31はその移動が固定されており、移動部材32は固定部材31と対向面を平行に保ったまま移動できるように設けられている。そして、移動部材32と固定部材31の対向面間には、液晶LCが収容されている。
【0040】
なお、以下では、固定部材31において移動部材32と対向する面を固定側対向面31aといい、移動部材32において固定部材31と対向する面を移動側対向面32aという
【0041】
図3に示すように、固定部材31の固定側対向面31aには、固定側対向面31に沿って複数の電極36が配置されている。この複数の電極36は、図示しないが電圧印加手段37(電圧印加手段17と同等の機能を有するもの)に接続されている。一方、移動部材32における移動側対向面32aには、電極は設けられていない。
【0042】
固定部材31の固定側対向面31aには、図示しないが、複数の電極36を覆うように配向膜Fが設けられている。例えば、
図3では、配向膜Fは、左に傾いたように液晶分子mを配向させることができるようになっている。(
図3(A)参照)。
なお、移動部材32における移動側対向面32aにも、固定部材31の固定側対向面31aにおける配向膜Fと同等の機能を有する配向膜Fが設けられている。
【0043】
以上のごとき構造であるので、
図3(B)に示すように、電極36Aと電極36Bとの間に電圧を印加すれば、電極36Aと電極36Bとの間に電気力線EFが形成されるので、液晶分子mは反時計回りに回転し、その周囲に液晶流動を発生させる。すると、固定部材31と移動部材32との間の空間には、左向きの液晶流動を発生させることができる。
【0044】
上述したように、固定部材31は移動が固定されている一方、移動部材32は、固定部材31に沿って移動可能に設けられているので、液晶流動によって移動部材32は液晶流動の方向に移動する(
図3(A)〜(C)の点P参照)。
【0045】
以上のごとく、物体移動機構30によれば、固定部材31と移動部材32との間に収容されている液晶LC中に液晶流動を発生させることができ、この液晶流動によって移動部材32を移動させることができる。したがって、移動部材32に物体を載せたり、また、移動部材32に物体を固定したりしておけば、液晶流動によって物体を移動させることができるのである。
【0046】
しかも、複数の電極36は、液晶流動が発生しても移動しない固定部材31にのみ設ければよいので、移動部材32に電極を設けた場合のように、電極36に対して電力を供給する構成が複雑にならない。したがって、物体移動機構30によれば、移動部材32移動させることができる構成としつつ、物体移動機構30の構造を簡素化でき小型化することができる。
【0047】
また、物体移動機構30でも、固定部材31の固定側対向面31aに
図1(C)のように格子状に電極36を設けてもよい。すると、電圧を印加する電極対を適切に選択すれば、液晶LC中に所望の方向の液晶流動を発生させることができるので、所望の方向に移動部材32を移動させることができる。
【0048】
さらに、物体移動機構30でも、横電界式液晶流動形成機構10と同様に、電界EFが印加されると電界EFと直交するように回転する液晶を使用してもよい(
図6(A)参照)。この場合でも、液晶分子mの軸方向が、固定部材31の固定側対向面31aに対して右上がりとなるように配向させておけば、左に向かう液晶流動が発生するので、左方向に移動部材32を移動させることができる(
図6(B)、(C)参照)。
【0049】
(液晶モータについて)
また、物体移動機構として、
図4のような構成を採用することもできる。
なお、
図4の物体移動機構20は、実質的には、上述した液晶流動形成機構10における流路11の形状を変形させたものと考えることができるので、以下の説明では、物体移動機構20(横電界式液晶モータ)と上記液晶流動形成機構10とにおいて共通する構成については、適宜割愛する。
【0050】
図4において、符号21は、移動が固定された外側部材を示している。この外側部材21は、内部に中空な円筒状の空間(以下、軸収容空間という)を有する筒状の部材である。この外側部材21の軸収容空間内には、内側軸22が収容されている。この内側軸22は、その中心軸が軸収容空間の中心軸と一致するように配設されている。しかも、内側軸22は、軸収容空間の中心軸周りに回転自在に配置されている。
また、外側部材21と内側軸22との間には、液晶LCが収容されている。
【0051】
外側部材21の内面には、この内面と軸収容空間の中心軸と直交する平面との交線に沿って(つまり、外側部材21の内面の周方向に沿って)、複数の電極26が配置されている。この複数の電極26は、図示しないが電圧印加手段27に接続されている。
そして、外側部材21の内面には、図示しないが、配向膜Fが設けられている。この配向膜Fは、軸収容空間の半径方向に対して傾いた状態となるように液晶分子mを配向させることができるようになっている。例えば、
図4では液晶分子mの中心側の端部が、時計回りの下流側に傾いた状態となるように液晶分子mを配向させることができるようになっている(
図4(A)参照)。
【0052】
以上のごとき構造であるので、
図4(B)に示すように、電極26Aと電極26Bとの間に電圧を印加すれば、電極26Aと電極26Bとの間に電気力線EFが形成されるので、液晶分子mは反時計回りに回転し、その周囲に液晶流動を発生させる。すると、外側部材21と内側軸22との間の空間には、軸収容空間の中心軸周りに反時計回りの液晶流動を発生させることができる。
すると、外側部材21は移動が固定されている一方、内側軸22は軸収容空間の中心軸周りに回転自在に配置されているので、液晶流動によって内側軸22は液晶流動の方向に回転する。つまり、内側軸21を反時計回りに回転させることができるのである。
【0053】
以上のごとく、物体移動機構20によれば、外側部材21と内側軸22との間の空間に収容されている液晶LC中に液晶流動を発生させることができる。したがって、液晶流動を軸の回転力として取り出すことができるから、物体移動機構20によって液晶モータを形成することができるのである。
【0054】
しかも、複数の電極16は、液晶流動が発生しても移動しない外側部材21にのみ設ければよく、内側軸22に電極を設けた場合のように、電極16に対して電力を供給する構成が複雑にならない。したがって、物体移動機構20によれば、内側軸22を回転させることができる構成としつつ、物体移動機構20、つまり、液晶モータの構造を簡素化でき小型化することができる。
【0055】
なお、物体移動機構20(液晶モータ)でも、物体移動機構30と同様に、電界EFが印加されると、電界EFと直交するように回転する液晶を使用してもよい(
図7(A)参照)。この場合でも、液晶分子mの中心側の端部が、時計回りの上流側に傾いた状態となるように液晶分子mを配向させておけば、反時計回りの液晶流動が発生するので、反時計回りに内側軸21を移動させることができる(
図7(B)、(C)参照)。
【0056】
また、上記例では、電圧を印加したときに、外側部材21と内側軸22との間の空間に、軸収容空間の中心軸周りに反時計回りの液晶流動が発生する場合を説明した。しかし、外側部材21と内側軸22との間の空間に発生する液晶流動は、軸収容空間の中心軸に対して傾いた流れ(つまり、軸方向の速度成分を有する流れ)や軸方向の流れであってもよい。軸収容空間の中心軸に対して傾いた流れを形成すれば、内側軸22を、回転させながら軸方向にも移動させることができる。また、軸方向にのみ流れる液晶流動を形成すれば、内側軸22を、回転させないで軸方向にのみ移動させることができる。
軸収容空間の中心軸に対して傾いた流れや軸方向の流れを形成する場合には、電極26を周方向に沿って並べるだけでなく、軸収容空間の中心軸方向に沿って複数列設けておく。すると、電圧を印加する電極を適切に選択することによって、上記のごとき液晶流動を形成することができる。
【0057】
さらに、上記例では、外側部材21の移動を固定し、内側軸22が回転可能な場合を説明したが、内側軸22を固定し外側部材21が回転できるようになっていてもよい。この場合には、液晶流動が発生すると、外側部材21を軸収容空間の中心軸周りに回転させることができる。