(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192101
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】自動車用内装部品の表皮材貼合構造とその表皮材貼合方法
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20170828BHJP
B29C 65/40 20060101ALI20170828BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B29C65/40
B32B27/12
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-143250(P2013-143250)
(22)【出願日】2013年7月9日
(65)【公開番号】特開2015-16707(P2015-16707A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124454
【氏名又は名称】河西工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069431
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 成則
(74)【代理人】
【識別番号】100154335
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】大野 樹史
(72)【発明者】
【氏名】関 伸明
【審査官】
佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−085274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
B29C 65/40
B32B 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂芯材に表皮材を熱可塑性接着剤で貼り合せてなる自動車用内装部品の表皮材貼合方法であって、
前記樹脂芯材に貼り合わせる前の前記表皮材は、その裏面に前記熱可塑性接着剤の接着層を有するとともに、この接着層の下面に表皮材裏面最外層として不織布からなる裏面不織布層を備え、
前記樹脂芯材に対する前記表皮材の貼り合せ方法は、
前記樹脂芯材に前記表皮材の裏面不織布層側を接触させる接触段階と、
前記接触時から前記樹脂芯材の熱又は前記表皮材の熱若しくはその双方の熱によって前記接着層の熱可塑性接着剤が溶融して前記裏面不織布層に染み込み、この染み込んだ熱可塑性接着剤が前記表皮材に加えられた圧力によって前記樹脂芯材に染み出し、染み出た熱可塑性接着剤と前記圧力によって前記樹脂芯材と前記表皮材の裏面不織布層側とが圧着し貼り合される接着段階と、を含むこと
を特徴とする自動車用内装部品の表皮材貼合方法。
【請求項2】
前記不織布はスパンレース法によって作製されたスパンレース不織布であること
を特徴とする請求項1に記載の自動車用内装部品の表皮材貼合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂芯材に表皮材を熱可塑性接着剤で貼り合わせてなる自動車用内装部品の表皮材貼合構造とその表皮材貼合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来のドアトリム(自動車用内装部品)の断面図である。同図の従来のドアトリムDTは、樹脂芯材1に表皮材2を熱可塑性接着剤で貼り合せた構造になっている。そして、樹脂芯材1に貼り合せる前の表皮材2はその裏面に熱可塑性樹脂の接着層3を有しており、従来は、そのような表皮材2裏面の接着層3の熱可塑性樹脂を所定の熱で溶融させることにより、樹脂芯材1と表皮材2を貼り合わせている。
【0003】
図4の従来のドアトリムDTは、例えば
図2(a)から(d)と
図3(e)(f)に示した第1の成形法によって形成することができる。第1の成形法によって
図4の従来のドアトリムDTを成形する場合は、
図2(b)に示した成形金型10のキャビティ10C内に溶融樹脂を射出することで、
図2(c)のように樹脂芯材1の射出成形が完了したら、一対の金型10A、10Bを同図(c)のように相対的に所定量遠ざけることにより、成形金型10を型開き状態とし、かつ、
図2(d)のように樹脂芯材1の上に表皮材2をセットする。そして、一対の金型10A、10Bを
図3(e)のように相対的に近づけ、成形金型10を型閉め状態にすると、樹脂芯材1の余熱によって接着層3の熱可塑性接着剤が溶融し、樹脂芯材1と表皮材2とが圧着状態で貼り合される。
【0004】
前記のような樹脂芯材の余熱によって接着層の熱可塑性接着剤を溶融させて樹脂芯材と表皮材を貼り合せる技術については、例えば、特許文献1に開示されている。
【0005】
しかしながら、
図4の従来のドアトリムDTによると、前記の通り、樹脂芯材1に貼り合せる前の表皮材2がその裏面に接着層3を有する構造(
図4参照)になっているため、下記のような問題点がある。
【0006】
《第1の問題点(成形金型10側への熱可塑性樹脂の付着)》
図5は、
図4の従来のドアトリムDTを第1の成形法によって形成するときの圧着・冷却工程(
図3(e)に対応する)の説明図である。
図5を参照すると、同図のように成形金型10を型閉め状態にすると、樹脂芯材1の余熱で接着層3の熱可塑性接着剤が溶融する。そして、溶融した熱可塑性接着剤と表皮材に加えられた圧力(具体的には、一対の金型10A、BBでのプレス圧)により樹脂芯材1と表皮材2とが圧着し貼り合される。この貼り合せ時に、表皮材2の外周縁部2Cは樹脂芯材1の外周縁部から外方へはみ出し、はみ出し部分(2C)の接着層3が成形金型10に直接接触しかつ圧力がかかるので、その接着層3の熱可塑性接着剤が成形金型10側に付着し易いという問題点がある。
【0007】
なお、前記のような成形金型10側への熱可塑性接着剤の付着を防止するために、成形金型にフッ素コーティング等の処理を施す方法も考えられるが、この方法は、コストが高く、フッ素コーティングの管理も面倒である。
【0008】
前記のように成形金型10側に熱可塑性接着剤が付着すると、樹脂芯材1と表皮材2の貼り合せに必要な接着層3の熱可塑性接着剤が減ってしまい、樹脂芯材1と表皮材2の外周縁部において貼り合せ不良が生じるおそれがある。また、成形金型10にはみ出し部分(2C)が付着してしまうと、表皮材2の展開率が大きい場合に、表皮材2の外周縁部(はみ出し部分(2C))付近が成形金型10内に滑り込まず、表皮材2の高展開率部分(表皮材2の最も延びやすい部分)が切れるおそれがある。
【0009】
また、前記のように接着層3の熱可塑性接着剤が成形金型10側に付着する部分には、公知の樹脂シール機構が存在する場合もある。すなわち、第1の成形法が適用される成形金型10は、樹脂芯材1を射出成形する際にバリの発生を防止する手段として、成形金型10内で上下方向に摺動可能な樹脂シール機構を備えている。そして、樹脂芯材1の射出成形時には、その樹脂シール機構の先端面で樹脂芯材1の外周縁部を上方に押し上げているが、このような樹脂シール機構の先端面に前記のように溶融した接着層3の熱可塑性接着剤が付着し堆積すると、樹脂シール機構の正常な動作が失われ、樹脂芯材の射出成形にバリが発生し易くなる。
【0010】
《第2の問題点(表皮材の保管管理上の問題)》
樹脂芯材1に貼り合わせる前の表皮材2を複数積層して保管する場合には、その表皮材2の構造上、上側の表皮材の接着層3が下側の表皮材の表面に直接接触するため、上下の表皮材が貼り付いて離れなくなってしまうおそれがあり、貼り合わせ前の表皮材の保管管理が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−179485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、自動車内装部品を成形する成形金型への熱可塑性接着剤の付着を効果的に防止することができ、しかも、樹脂芯材に貼り合わせる前の表皮材の保管管理の容易化を図るのに好適な、自動車用内装部品の表皮材貼合構造とその表皮材貼合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る自動車用内装部品の表皮材貼合方法は、樹脂芯材に表皮材を熱可塑性接着剤で貼り合せてなる自動車用内装部品の表皮材貼合方法であって、前記樹脂芯材に貼り合わせる前の前記表皮材は、その裏面に前記熱可塑性接着剤の接着層を有するとともに、この接着層の下面に表皮材裏面最外層として不織布からなる裏面不織布層を備え、前記樹脂芯材に対する前記表皮材の貼り合せ方法は、前記樹脂芯材に前記表皮材の裏面不織布層側を接触させる接触段階と、前記接触時から前記樹脂芯材の熱又は前記表皮材の熱若しくはその双方の熱によって前記接着層の熱可塑性接着剤が溶融して前記裏面不織布層に染み込み、この染み込んだ熱可塑性接着剤が前記表皮材に加えられた圧力によって前記樹脂芯材に染み出し、染み出た熱可塑性接着剤と前記圧力によって前記樹脂芯材と前記表皮材の裏面不織布層側とが圧着し貼り合される接着段階と、を含むことを特徴とする。
【0016】
前記本発明に係る自動車用内装部品の表皮材貼合方法において、前記不織布はスパンレース法によって作製されたスパンレース不織布であるものとしてよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明にあっては、前記構成の採用により、下記(A)(B)のような作用効果が奏し得られる。
【0018】
(A)成形金型への接着剤の付着防止
本発明によると、樹脂芯材に貼り合わせる前の表皮材の具体的な構成として、かかる表皮材は、その裏面に熱可塑性接着剤の接着層を有するとともに、この接着層の下面に表皮材裏面最外層として不織布からなる裏面不織布層を備える構成を採用した。このため、例えば、前記貼り合せ時において、表皮材の外周縁部が樹脂芯材の外周縁部から外方へはみ出していても、そのはみ出し部分の接着層が成形金型に直接接触することはなく、はみ出し部分の接着層と成形金型との間には必ずバリアとして前記裏面不織布層が存在することから、裏面不織布層のバリア効果により、圧力をかけても、はみ出し部分では熱可塑性接着剤が成形金型に付着することもなく、成形金型への熱可塑性接着剤の付着を効果的に防止することができる。
【0019】
また、本発明にあっては、前記のように成形金型への熱可塑性接着剤の付着を効果的に防止すことができるから、そのような熱可塑性接着剤の付着による前述の不具合、すなわち、樹脂芯材と表皮材の外周縁部における貼り合せ不良、表皮材の切れ、樹脂芯材の射出成形におけるバリの発生を防止することができる。
【0020】
(B)貼り合わせ前の表皮材の保管管理の容易化
本発明によると、樹脂芯材に貼り合わせる前の表皮材は、その裏面に熱可塑性接着剤の接着層を有するとともに、この接着層の下面に表皮材裏面最外層として不織布からなる裏面不織布層を備えている。このため、例えば、貼り合わせ前の表皮材を複数積層して保管する場合に、上側の表皮材の接着層が下側の表皮材の表面に直接接触することはなく、上下の表皮材は上側の表皮材の裏面不織布層によって容易に分離可能であり、貼り合わせ前の表皮材の保管管理の容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は本発明に係る自動車用内装部品の表皮材貼合構造を採用したドアトリムの断面図。
【
図2】
図2は
図1に示したドアトリムの成形方法(第1の成形法)の工程概念図であり、
図2中(a)はドアトリムの成形に用いられる成形金型(スタンバイ状態)の概略構成図、(b)は成形金型における型閉め及び樹脂射出工程の説明図、(c)は成形金型における一次型開工程(型開き量は小)の説明図、(d)は成形金型における表皮材セット工程の説明図。
【
図3】
図3は
図1に示したドアトリムの成形方法(第1の成形法)の工程概念図であり、(e)は成形金型における圧着・冷却工程の説明図、(f)は成形金型における二次型開工程(製品取出工程)の説明図。
【
図4】従来のドアトリム(自動車用内装部品)の断面図。
【
図5】
図4の従来のドアトリムを第1の成形法によって成形するときの圧着・冷却工程(
図3(e)に対応する)の説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る自動車用内装部品の表皮材貼合構造を採用したドアトリムの断面図である。
【0024】
この
図1のドアトリムDTは、樹脂芯材1に表皮材2を熱可塑性接着剤で貼り合せてなる自動車用内装部品である。
図1のドアトリムDTにおいて、樹脂芯材1に貼り合わせる前の表皮材2は、その裏面に熱可塑性接着剤の接着層3を有するとともに、この接着層3の下面に不織布からなる裏面不織布層4を備えた構造になっている。
【0025】
前記表皮材2の表面側は、表皮層5になっていて、この表皮層5から前記接着層3までの間には、クッション層6と、不織布からなる中間不織布層7とが設けられている。
【0026】
つまり、
図1のドアトリムDTにおいて、熱可塑性接着剤で樹脂芯材1に貼り合わせる前の表皮材2は、その裏面側から見て裏面不織布層4、接着層3、中間不織布層7、クッション層6、表皮層5をその順に積層した5層構造になっている。
【0027】
前記5層構造のうち、前記表皮層5は、クロスや不織布、合成皮革などの表皮素材で形成してあり、前記クッション層6は発泡ウレタン素材で形成してある。
【0028】
そして、前記中間不織布層7は、例えば、スパンレース法(水流交絡法)によって作製した不織布(スパンレース不織布)で形成してある。また、前記接着層3は、その層を構成する熱可塑性樹脂として、溶融温度が100℃〜160℃であるオレフィン系ホットメルト接着剤(PP、PPCなど)を採用しており、前記裏面不織布層4は、先に説明した中間不織布層7と同様、スパンレース不織布で形成してある。本実施形態で採用したオレフィン系ホットメルト接着剤(PP、PPCなど)は発泡ウレタン素材のクッション層6に対して接着し難い材質なので、本実施形態ではクッション層6と接着層3との間に中間不織布層7として不織布を介在させている。従って、接着し易い材質、例えば、オレフィン系ホットメルト接着剤(PP、PPCなど)と同系材質のポリプロピレンフォーム等をクッション層6として採用する場合、この中間不織布層7は省略してもよい。
【0029】
ところで、前記中間不織布層7は、接着層3の熱可塑性接着剤が溶融時にクッション層6の発泡ウレタン素材へ染み込み過ぎることによるクッション性能の低下を防止する手段として設けている。従って、そのようなクッション性能の低下が生じ難い素材、例えばポリプロピレンフォーム(PPF)で前記クッション層6を形成するなら、前記中間不織布層7は省略可能である。
【0030】
図1のドアトリムDTにおいて、樹脂芯材1に対する表皮材2の貼り合せ構造は、樹脂芯材1に表皮材2の裏面不織布層4側を接触させた時点から、その樹脂芯材1の熱又は表皮材の熱若しくはその双方の熱によって接着層3の熱可塑性接着剤が溶融して裏面不織布層4に染み込み、この染み込んだ熱可塑性接着剤が表皮材2に加えられた圧力(具体的には、後述する一対の金型10A、10Bでのプレス圧)によって裏面不織布層4から樹脂芯材1に染み出し、染み出た熱可塑性接着剤と前記圧力によって樹脂芯材1と表皮材2の裏面不織布層4側とが圧着し貼り合された状態になっている。
【0031】
本実施形態では、前記のように接着層3の熱可塑性接着剤を溶融させる際の樹脂芯材1の熱として、樹脂芯材1の余熱を採用した。すなわち、
図1のドアトリムDTは、後述の第1の成形法(
図2(a)〜(d)及び
図3(e)〜(f)参照)によって形成することができる。この第1の成形法の場合は、射出成形によって樹脂芯材1の成形が完了した時点で、樹脂芯材1にその樹脂溶融時における熱が余熱(80℃〜150℃)として残っていることから、本実施形態において、第1の成形法によってドアトリムDTを成形する場合の例では、前記樹脂芯材1の余熱によって、接着層3の熱可塑性接着剤を溶融させるものとした。
【0032】
本実施形態における接着層3の熱可塑性接着剤は前記のように樹脂芯材1の余熱によって溶融するから、例えば樹脂芯材1の表面温度が80℃〜150℃の温度範囲である場合には、その温度範囲で溶融する熱可塑性接着剤が前記接着層3の熱可塑性接着剤として採用される。
【0033】
ところで、
図1のドアトリムDTは、後述のように予め成形した樹脂芯材を用いる成形法(以下「第2の成形法」という)によって形成することもできる。しかし、この第2の成形法では、表皮材2を貼り合わせる前の樹脂芯材1の温度が成形金型の温度と略同じで20℃〜80℃と低く、樹脂芯材1の熱(余熱)によって接着層3の熱可塑性接着剤を溶融させることが困難である。
【0034】
このため、
図1のドアトリムDTを後述の第2の成形法で成形する場合は、樹脂芯材1を加熱装置で予め加熱し、この予めの加熱による樹脂芯材1の熱(以下「樹脂芯材1の追加熱」という)によって接着層3の熱可塑性接着剤を溶融させる、あるいは、表皮材2自体を予め加熱装置で加熱し、この加熱による表皮材2の熱(以下「表皮材2の追加熱」という)によって接着層3の熱可塑性接着剤を溶融させるようにしてもよい。
【0035】
先に説明した樹脂芯材1の2種類の熱(樹脂芯材1の余熱と追加熱)や表皮材2の追加熱は、それぞれ個別に採用してもよいほか、それらを必要に応じて適宜組み合わせて採用することもできる。
【0036】
図1のドアトリムDTでは、裏面不織布層4を構成する具体的な不織布として、スパンレース法(水流交絡法)によって作製された不織布(スパンレース不織布)を採用しているが、これに限定されることはない。例えば、ニードルパンチ法、乾式法、湿式法、メルトブローン法、又はエアーレイド法等の各種ウエブ形成方法によって作製された不織布を前記不織布4として採用することもできる。この点は中間不織布層7も同様である。
【0037】
図2は、
図1に示したドアトリムの成形方法(第1の成形法)の工程概念図であり、
図2中(a)はドアトリムの成形に用いられる成形金型(スタンバイ状態)の概略構成図、(b)は同成形金型における型閉め及び樹脂射出工程の説明図、(c)は同成形金型における一次型開工程(型開き量は小)の説明図、(d)は同成形金型における表皮材セット工程の説明図である。また、
図3は、
図1に示したドアトリムの成形方法(第1の成形法)の工程概念図であり、
図3中(e)は同成形金型における圧着・冷却工程の説明図、(f)は同成形金型における二次型開工程(製品取出工程)の説明図である。
【0038】
図1に示したドアトリムDTを第1の成形法で形成する場合には、20℃〜80℃の温度に温度調節された
図2(a)の成形金型10を用いる。この成形金型10は上下に対向する一対の金型10A、10Bを備えている。そして、この成形金型10は、図示しない駆動装置によって一対の金型10A、10Bを
図2(b)のように相対的に近づけることで、型閉め状態になって、かつ、一対の金型10A、10B間に所要形状のキャビティ10Cを形成する。このキャビティ10Cは最終製品であるドアトリムDTの外観形状に相当する。
【0039】
図2(b)のように成形金型10の型閉めが完了したら、同図(b)のように一方の金型10Aの樹脂射出ノズルNからキャビティ10Cに向かって190℃〜240℃の溶融樹脂を射出し、キャビティ10C内でドアトリムDTの樹脂芯材1(
図2(c)参照)を成形する。このような射出成形によって樹脂芯材1の成形が完了した時点で、その樹脂芯材1には樹脂溶融時の熱が余熱として残っている。その余熱の温度は80℃〜150℃である。
【0040】
以上のようにして樹脂芯材1の射出成形が完了したら、次は、樹脂芯材1の余熱が冷めないうちに、すなわち、樹脂芯材1が接着層2の熱可塑性接着剤を溶融可能とする余熱を保持している間に、一対の金型10A、10Bを
図2(c)のように相対的に所定量遠ざけることで、成形金型10を型開き状態とし、かつ、
図2(d)のように樹脂芯材1の上に表皮材2をセットする。この表皮材2のセット状態は、表皮材2の裏面不織布層4側が樹脂芯材1に接触可能な状態になっているものとする。
【0041】
その後は、一対の金型10A、10Bを
図3(e)のように相対的に近づけ、成形金型10を型閉め状態にすると、樹脂芯材1の余熱によって接着層3の熱可塑性接着剤が溶融して裏面不織布層4に染み込み、この染み込んだ熱可塑性接着剤が表皮材2に加えられた圧力(具体的には、一対の金型10A、10Bでのプレス圧)によって樹脂芯材1側に染み出し、染み出た熱可塑性接着剤と前記圧力によって樹脂芯材1と表皮材2の裏面不織布層4とが圧着し貼り合される。
【0042】
図3(e)を参照すると、前記貼り合せ時において、表皮材2の外周縁部2Cは樹脂芯材1の外周縁部1Aから外方へはみ出しているが、はみ出し部分(2C)の接着層3は成形金型10に直接接触しておらず、はみ出し部分(2C)の接着層3と成形金型10との間には必ずバリアとして裏面不織布層4が存在することから、裏面不織布層4のバリア効果により、圧力をかけても、はみ出し部分(2C)では熱可塑性接着剤が成形金型10に付着することもない。
【0043】
前記貼り合せが完了すると、
図1のドアトリムDTが成形金型10内に得られる。このドアトリムDTを成形金型10内から取り出すには、
図3(f)のように一対の金型10A、10Bを相対的に遠ざけ、成形金型10を型開き状態にすればよい。
【0044】
以上説明した作業を繰り返すことによって、ドアトリムDTの大量生産が行われる。この際、先に説明したように貼り合せ時に熱可塑性接着剤が金型10A、10Bに付着することがないので、そのように付着した熱可塑性接着剤を取り除く作業は不要であり、その分、ドアトリムDTの生産スピードは速くなる。
【0045】
次に、
図1に示したドアトリムDTを第2の成形法で成形する場合の例について
図2と
図3を参照して説明する。この場合は、先に説明した第1の成形法と同じく、20℃〜80℃の温度に温度調節された
図2(a)の成形金型10を用いる。
【0046】
第2の成形法では、第1の成形法のように成形金型10のキャビティ10C内において樹脂芯材1を射出成形しないので、
図2(a)の成形金型10における一方の金型10Aの樹脂射出口Nと、
図2(b)の型閉め及び樹脂射出工程と、
図2(c)の一次型開工程(型開き量は小)は、いずれも、省略される。その代わりに、この第2の成形法では、別途用意した成形済みの樹脂芯材1を
図2(d)のように下側の金型10Aにセットする作業と、セットした樹脂芯材1の上に表皮材2をセットする作業とが行われる。この表皮材2のセット状態は、表皮材2の裏面不織布層4側が樹脂芯材1に接触可能な状態になっているものとする。
【0047】
前記のようにセットされた樹脂芯材1や表皮材2は成形金型10の熱によって成形金型10と同じ温度(20℃〜80℃)付近まで加熱されるが、その温度では接着層3の熱可塑性樹脂を溶融させることが困難である。このため、この第2の成形法では、樹脂芯材1の追加熱を得る手段として、当該樹脂芯材1を予め加熱して樹脂芯材1に追加熱を付与しておく。この際、表皮材2に追加熱を付与する手段として、当該表皮材2を予め加熱してもよいし、また、樹脂芯材1と表皮材2の双方を予め加熱してもよい。
【0048】
以上のように樹脂芯材1と表皮材2のセットが完了した後(
図2(d)参照)は、一対の金型10A、10Bを
図3(e)のように相対的に近づけ、成形金型10を型閉め状態にする。これにより、樹脂芯材1に表皮材2の裏面不織布層4側が接触した時点から、その樹脂芯材1の熱又は表皮材2の熱若しくはその双方の熱によって接着層3の熱可塑性接着剤が溶融して裏面不織布層4に染み込み、この染み込んだ熱可塑性接着剤が表皮材2に加えられた圧力によって樹脂芯材1に染み出し、かつ、染み出た熱可塑性接着剤と前記圧力によって樹脂芯材1と表皮材2の裏面不織布層4側とが圧着し貼り合される。
【0049】
ところで、この第2の成形法においても、先に説明した第1の成形法と同じく、前記貼り合せ時において、表皮材2のはみ出し部分(2C)の接着層3は成形金型10に直接接触しておらず、はみ出し部分2Cの接着層3と成形金型10との間には必ずバリアとして裏面不織布層4が存在することから、裏面不織布層4のバリア効果により、圧力をかけても、はみ出し部分(2C)では熱可塑性接着剤が成形金型10に付着することもない。
【0050】
以上の実施形態は、本発明に係る自動車用内装部品の表皮材貼合構造とその表皮材貼合方法をドアトリムに適用した例であるが、この適用例に限定されることはない。本発明に係る自動車用内装部品の表皮材貼合構造とその表皮材貼合方法は、広く一般に、樹脂芯材に表皮材を熱可塑性接着剤で貼り合せてなる自動車用内装部品について適用することができる。また、以上の実施形態では、成形金型10を型閉め状態とすることによって、表皮材2に圧力が加えられる方式を採用したが、これに限定されることはなく、それとは別の方式で表皮2に圧力が加えられるようにしてもよい。
【0051】
また、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 樹脂芯材
1A 樹脂芯材の外周縁部
1B 樹脂芯材の内側部分
2 表皮材
2A 表皮材の外周縁部
2B 表皮材の内側部分
2C 表皮材のはみ出し部分
3 接着層
4 裏面不織布層
5 表皮層
6 クッション層
7 中間不織布層
10 成形金型
10A、10B 一対の金型
10C キャビティ
N 樹脂射出ノズル
DT ドアトリム(自動車用内装部品)