特許第6192108号(P6192108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192108
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】ピン組立体およびステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/19 20060101AFI20170828BHJP
   F16B 19/08 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   B62D1/19
   F16B19/08 A
   F16B19/08 C
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-269516(P2013-269516)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-123856(P2015-123856A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598103152
【氏名又は名称】大和合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 英治
(72)【発明者】
【氏名】今垣 進
(72)【発明者】
【氏名】矢尾 博之
(72)【発明者】
【氏名】今村 謙二
(72)【発明者】
【氏名】奥野 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】林 英二
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/069340(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/128171(WO,A1)
【文献】 特開平09−226603(JP,A)
【文献】 特開2010−163074(JP,A)
【文献】 特開2012−086589(JP,A)
【文献】 特開2002−356168(JP,A)
【文献】 特開平09−317730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00 − 1/28
F16B 21/12
F16B 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向において互いに対向するとともに前記第1方向に直交する第2方向に沿って互いに相対移動可能な第1板第2板のそれぞれの挿通孔に通されて、前記第1板と前記第2板とを前記第2方向へ相対移動できないようにする丸軸部を含む、射出成形品である樹脂ピンと、
前記樹脂ピンよりも高硬度に形成され、前記第1板の前記挿通孔に収容され、前記丸軸部が挿通する孔を有し、前記第2板に接する端面を有し、前記第1板と前記第2板とが前記第2方向へ相対移動した時に、前記第2板との間で前記丸軸部を剪断するカラーと、を備え、
前記丸軸部は、前記丸軸部の軸線を中心として前記丸軸部の軸線方向に延びる少なくとも1つの中空孔を含み、
前記中空孔の内周は、前記丸軸部の前記軸線方向とは平行な母線を有し、前記カラーの前記端面を含む平面によって横切られるストレート部と、前記平面から前記丸軸部の前記軸線方向に離隔した位置に配置された境界部を挟んで前記ストレート部と隣り合うテーパ部と、を含むピン組立体。
【請求項2】
請求項1記載のピン組立体であって、前記中空孔は、複数設けられ、
前記複数の中空孔のうち少なくとも1つの中空孔の中心軸線と前記丸軸部の軸線とを含む平面が、前記第2方向とは非平行であるピン組立体。
【請求項3】
請求項1記載のピン組立体であって、前記丸軸部の軸直角断面において、前記中空孔の形状は、前記第2方向とは非平行な長手方向を有する長孔形状であるピン組立体。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載のピン組立体であって、前記樹脂ピンは、前記丸軸部の一端に設けられた前記丸軸部よりも大径の頭部を含み、
前記丸軸部の外周は、前記ストレート部の径方向外方を避けた位置で前記第2板の前記挿通孔に圧入される拡径部を含むピン組立体。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のピン組立体であって、前記中空孔は、前記樹脂ピンを貫通しているピン組立体。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載のピン組立体を備えたステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピン組立体およびステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリング装置では、車両が他の車両にぶつかる一次衝突に続いて、運転者がステアリングホイールにぶつかる二次衝突が発生する。その二次衝突時の衝撃を吸収するために、ステアリングコラムの一部を車体から離脱させてコラム軸方向に移動させる構造が種々提案されている。
例えば、特許文献1では、車体に固定された車体側ブラケットに、コラム軸方向に平行に延びる一対の係止切欠きが設けられている。各係止切欠きにそれぞれ複数の係止ピンにより保持された一対の係止カプセルを介して、コラム側ブラケットが支持されている。各係止カプセルは、各係止切欠きを挿通するボルトをそれぞれ介してコラム側ブラケットに結合固定されている。
【0003】
前記一対の係止カプセルを保持するための前記複数の係止ピンは、一対の係止切欠き間に配置されてコラム軸方向とは平行に並ぶ内側2列の係止ピンと、コラム軸方向とは直交する方向(車両の幅方向に相当)に関して、一対の係止切欠きを挟んだ両側に配置されて、コラム軸方向とは平行に並ぶ外側2列の係止ピンとを含んでいる。
二次衝突時には、各係止カプセルを保持している複数の係止ピンが破断することにより、各係止カプセルが、対応する係止切欠きから離脱し、係止カプセルとコラムブラケットとがコラム軸方向に同行移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−121538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、係止ピンとして、樹脂成形された中実の樹脂ピンを用いる場合、ボイドが発生すると、個体毎に剪断荷重がばらつき、所望の衝撃吸収荷重が得られないおそれがある。また、中実の樹脂ピンの剪断荷重をコントロールする因子としては、樹脂ピンの外径のみである。したがって、衝撃吸収荷重の設定の自由度が小さい。
そこで、本願発明者は、ボイドの発生を抑制して衝撃吸収荷重の安定化を図りつつ衝撃吸収荷重の設定の自由度を増大するために、樹脂ピンに中空孔を設けることを想定する。通例、中空孔の内面は、型抜き時の抜き勾配を有するテーパ部に形成されるので、二次衝突時には、テーパ部で剪断されることになる。
【0006】
各部品の寸法精度のばらつき等の影響で、二次衝突時の剪断面の位置が、中空孔(テーパ部)の深さ方向にばらついた場合、剪断される樹脂ピンの断面積がばらつく。このため、衝撃吸収荷重がばらつくおそれがある。
本発明の目的は、ボイドの発生を抑制して衝撃吸収荷重の安定化を図りつつ衝撃吸収荷重の設定の自由度が高くすることができるピン組立体およびステアリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、第1方向(Z)において互いに対向するとともに前記第1方向に直交する第2方向(Y)に沿って互いに相対移動可能な第1板(30)第2板(32)のそれぞれの挿通孔(66,67)に通されて、前記第1板と前記第2板とを前記第2方向へ相対移動できないようにする丸軸部(64)を含む、射出成形品である樹脂ピン(61)と、前記樹脂ピンよりも高硬度に形成され、前記第1板の前記挿通孔(66)に収容され、前記丸軸部が挿通する孔を有し、前記第2板に接する端面(622)を有し、前記第1板と前記第2板とが前記第2方向へ相対移動した時に、前記第2板との間で前記丸軸部を剪断するカラー(62)と、を備え、前記丸軸部は、前記丸軸部の軸線(K1)を中心として前記丸軸部の軸線方向(J)に延びる少なくとも1つの中空孔(81;81E;81F;81G;81H)を含み、前記中空孔の内周(81a)は、前記丸軸部の前記軸線方向とは平行な母線を有し、前記カラーの前記端面を含む平面によって横切られるストレート部(82;82E;82F;82G)と、前記平面から前記丸軸部の前記軸線方向に離隔した位置に配置された境界部(84;84E;84F;84G)を挟んで前記ストレート部と隣り合うテーパ部(85;85E;85F;85G)と、を含むピン組立体(U1;UE;UF;UG;UH)を提供する。
【0008】
請求項2のように、前記中空孔(81E;81G)は、複数設けられ、前記複数の中空孔のうち少なくとも1つの中空孔の中心軸線(CE;CG)と前記丸軸部の軸線(K1)とを含む平面(PE;PG)が、前記第2方向(X)とは非平行であってもよい。
請求項3のように、前記丸軸部の軸直角断面において、前記中空孔(81F)の形状は、前記第2方向とは非平行な長手方向を有する長孔形状であってもよい。
【0009】
請求項4のように、前記樹脂ピンは、前記丸軸部の一端に設けられた前記丸軸部よりも大径の頭部(63;63E;63H)を含み、前記丸軸部の外周は、前記ストレート部の径方向外方を避けた位置で前記第2板の前記挿通孔(67)に圧入される拡径部(86)を含んでいてもよい。
請求項5のように、前記中空孔(81H)は、前記樹脂ピン(61H)を貫通していてもよい。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1〜5の何れか一項のピン組立体を備えたステアリング装置(1)を提供する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、樹脂ピンに中空孔を設けることで、ボイドの発生を抑制することができる。また、第2板に接するカラーの端面を含む平面が中空孔の内周のストレート部を横切る。このため、二次衝突により第1板と第2板とが第2方向に相対移動した時に、樹脂ピンにおいてストレート部を取り囲む部分を第2板とカラーとの間で確実に剪断することができる。したがって、ボイドの発生の抑制と相俟って、安定した剪断荷重を得ることができる。その結果、安定した衝撃吸収荷重を得ることができる。
【0012】
また、樹脂ピンの中空孔の諸元(例えば中空孔の個数、断面形状、内径等)を調整することで、二次衝突時の樹脂ピンの剪断荷重の設定の自由度を向上することができ、ひいては、二次衝突時の衝撃吸収荷重の設定の自由度を向上することができる。
請求項2の発明によれば、下記の効果を奏する。すなわち、二次衝突時には、中空孔が第2方向に関して偏平になるように変形した後、樹脂ピンの剪断が開始する。複数の中空孔を設ける請求項2の発明と、前記複数の中空孔の合計断面積と等しい断面積を有する単一の中空孔を設ける場合との両者を比較する。両者の樹脂ピンの剪断面積は等しくなるので、衝撃吸収荷重のピーク荷重は互いに等しい。一方、前者の請求項2の発明では、後者と比較して、剪断開始前に中空孔に生ずる変形代を小さくすることができるので、ピーク荷重が発生するタイミングを早くすることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、剪断開始前に生ずる、第2方向に関する中空孔の変形代を小さくすることができるので、衝撃吸収荷重のピーク荷重が発生するタイミングを早くすることができる。
請求項4の発明によれば、組立時において、樹脂ピンの頭部と拡径部との間でカラーを丸軸部に保持することができる。したがって、樹脂ピンとカラーを一体のユニットとして取り扱うことができるので、組立性が向上する。また、拡径部は、ストレート部の径方向外方を避けた位置に配置される。したがって、拡径部が、剪断面積に影響を与えることがないので、衝撃吸収荷重の安定化を妨げることがない。
【0014】
請求項5の発明によれば、中空孔を樹脂ピンの両端部の何れの側からも視認することができるので、例えば互いに諸元(個数、断面形状または内径等)の異なる中空孔を有する複数の仕様の樹脂ピンを容易に識別することができる。また、例えば、中空孔が貫通しているか否かで丸軸部の径が異なる2種の樹脂ピンを容易に識別することができる。可及的に、樹脂ピンの誤組み付けの発生を未然に防止することができる。
【0015】
前記ピン組立体を備えたステアリング装置であれば、安定した衝撃吸収荷重を得ることができて、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態のステアリング装置の模式的側面図であり、ステアリング装置の概略構成を示している。
図2図1のステアリング装置の概略断面図であり、図1のII−II線に沿う断面を示している。
図3図1のステアリング装置の分解斜視図である。
図4】第1実施形態に係る、固定ブラケットと、一対の吊り下げ機構と、連結・離脱機構との一部破断概略平面図である。
図5】第1実施形態に係る、樹脂ピンとカラーとを含むピン組立体の断面図であり、樹脂ピンの軸線を含む前後方向の断面を示している。ピン組立体によって連結される第1板および第2板が想像線で示されている。
図6】第1実施形態において、ストレート部を切断した樹脂ピンの断面図である。
図7】第1実施形態において、二次衝突前の第1板と第2板との断面図であり、第2板が第1板の所定位置に配置される状態を示している。
図8】第1実施形態において、二次衝突時の第1板と第2板との断面図であり、樹脂ピンの剪断によって第2板が第1板の所定位置からコラム移動方向へ離脱した状態を示している。
図9】本発明の第2実施形態において、樹脂ピンとカラーとを含むピン組立体の断面図であり、樹脂ピンの軸線を含む左右方向の断面を示している。ピン組立体によって連結される第1板および第2板が想像線で示されている。
図10】第2実施形態において、ストレート部を切断した樹脂ピンの断面図である。
図11】第2実施形態のピン組立体による衝撃吸収荷重の経時変化を、第1実施形態のピン組立体による衝撃吸収荷重の経時変化と対比して示したグラフ図である。
図12】本発明の第3実施形態において、樹脂ピンとカラーとを含むピン組立体の断面図であり、樹脂ピンの軸線を含む左右方向の断面を示している。ピン組立体によって連結される第1板および第2板が想像線で示されている。
図13】第3実施形態において、ストレート部を切断した樹脂ピンの断面図である。
図14】本発明の第4実施形態において、樹脂ピンとカラーとを含むピン組立体の断面図であり、樹脂ピンの軸線を含む左右方向の断面を示している。ピン組立体によって連結される第1板および第2板が想像線で示されている。
図15】第4実施形態において、ストレート部を切断した樹脂ピンの断面図である。
図16】本発明の第5実施形態において、樹脂ピンとカラーとを含むピン組立体の断面図であり、樹脂ピンの軸線を含む左右方向の断面を示している。ピン組立体によって連結される第1板および第2板が想像線で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい実施形態の添付図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の一実施形態のステアリング装置の概略構成を示す模式図である。図1を参照して、ステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結されたステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結された中間軸5と、中間軸5に自在継手6を介して連結されたピニオン軸7と、ピニオン軸7の端部近傍に設けられたピニオン7aに噛み合うラック8aを有する転舵軸としてのラック軸8とを備えている。
【0018】
ピニオン軸7およびラック軸8を含むラックアンドピニオン機構によって、操舵機構A1が構成されている。ラック軸8は、車体側部材9に固定されたハウジング10によって、車両の左右方向に沿う軸方向(紙面とは直交する方向)に移動可能に、支持されている。ラック軸8の各端部は、図示していないが、対応するタイロッドおよび対応するナックルアームを介して対応する転舵輪に連結されている。
【0019】
ステアリングシャフト3は、例えばスプライン結合を用いて、同行回転可能に且つ軸方向に相対移動可能に連結されたアッパーシャフト11およびロアーシャフト12を有している。ステアリングシャフト3は、車体側部材13,14に固定されたステアリングコラム15によって、図示しない軸受を介して回転可能に支持されている。
ステアリングコラム15は、軸方向に相対移動可能に嵌め合わされた筒状のアッパージャケット16(可動ジャケット)と、筒状のロアージャケット17と、ロアージャケット17の軸方向下端に連結されたハウジング18とを備えている。ハウジング18内には、操舵補助用の電動モータ19の動力を減速してロアーシャフト12に伝達する減速機構20が収容されている。減速機構20は、電動モータ19の回転軸(図示せず)と同行回転可能に連結された駆動ギヤ21と、駆動ギヤ21に噛み合いロアーシャフト12と同行回転する被動ギヤ22とを有している。
【0020】
本実施の形態では、ステアリング装置1が電動パワーステアリング装置に適用された例に則して説明するが、本発明をマニュアルステアリング装置に適用するようにしてもよい。また、本実施の形態では、ステアリング装置1がチルト調節可能である場合に則して説明するが、本発明をチルト調整機能を持たないステアリング装置に適用するようにしてもよいし、チルト調整可能でテレスコピック調整可能なステアリング装置に適用してもよい。
【0021】
概略断面図である図2に示すように、ステアリング装置1は、固定ブラケット23によって、可動ブラケットとしてのチルトブラケット24を介してアッパージャケット16を吊り下げる一対の吊り下げ機構T1,T2を備えている。すなわち、図1および図2に示すように、車体側部材13に固定された固定ブラケット23に、可動ブラケットとしてのチルトブラケット24が、一対の吊り下げ機構T1,T2の吊り下げ軸としての吊り下げボルト25を介して吊り下げられている。一方、ステアリングコラム15のアッパージャケット16には、コラムブラケット26が固定されている。
【0022】
図1および図2に示すように、ステアリング装置1は、操作レバー27の操作に応じて、締付軸28によってチルトブラケット24を介して、チルト調整後のコラムブラケット26の位置(ひいてはアッパージャケット16および操舵部材2の位置)をロックしたりロックを解除したりするロック機構29を備えている。
図2図3に示すように、チルトブラケット24は、一対の側板41を備えており、図2に示すように、コラムブラケット26は、チルトブラケット24の一対の側板41にそれぞれ対向する一対の側板71と、一対の側板71の下端間を連結する連結板72とを備えた溝形をなしている。
【0023】
図2を参照して、締付軸28は、チルトブラケット24およびコラムブラケット26の側板41,71を貫通するボルトからなる。締付軸28に螺合するナット73を、操作レバー27の回転操作によって回転させることにより、締付軸28としてのボルトの頭部とナット73との間に、両側板41,71を締め付け、両側板41,71をロックする。これにより、チルト調整後の操舵部材2の位置をロックし、チルトロックを達成するようにしている。
【0024】
また、ステアリング装置1は、固定ブラケット23の第1板30とチルトブラケット24の第2板32とを連結し、二次衝突時に、第2板32を第1板30の所定位置(図に示される位置)から図に示すようにコラム移動方向X1へ離脱させる連結・離脱機構を構成するピン組立体U1を備えている。
図2および一部破断概略平面図である図4に示すように、連結・離脱機構としてのピン組立体U1は、コラム移動方向X1とは直交する方向Yに関して、一対の吊り下げ機構T1,T2の間(すなわち固定ブラケット23の第1板30の後述する一対の第1孔31の間)に配置されている。具体的には、ピン組立体U1は、コラム移動方向X1とは直交する方向Yに関して、一対の第1孔31の間(すなわち一対の吊り下げボルト25の間)の中央位置に配置されている。
【0025】
図1を参照して、固定ブラケット23は、二次衝突時のコラム移動方向X1(ステアリングシャフト3の軸方向に相当)に平行な第1板30を備えている。第1板30には、コラム移動方向X1に平行に延びる長孔からなる、吊り下げ機構T1,T2用の第1孔31が形成されている。一方、チルトブラケット24(可動ブラケット)は、第1板30に対向する第2板32を備えている。第2板32には、第1孔31の一部と対向する、吊り下げ機構T1,T2用の第2孔33が形成されている。
【0026】
吊り下げボルト25は、第1板30の第1孔31および第2板32の第2孔33を挿通して、ナット34に螺合している。ナット34と共同して第1板30と第2板32とを連結した吊り下げボルト25が、チルトブラケット24(可動ブラケット)およびコラムブラケット26を介してアッパージャケット16(可動ジャケット)を吊り下げている。また、吊り下げボルト25は、二次衝突時に、第1孔31に沿って、チルトブラケット24(可動ブラケット)、コラムブラケット26およびアッパージャケット16と共に、コラム移動方向X1に移動可能である。
【0027】
車体側部材14に固定されたロアーブラケット35が、ピボット軸であるチルト中心軸36を支持している。チルト中心軸36は、ステアリングコラム15のハウジング18を介して、ロアージャケット17を、当該チルト中心軸36の回りに揺動可能に支持している。
図2および図3に示すように、各吊り下げ機構T1,T2は、吊り下げボルト25と、例えば皿ばねからなる板ばね42と、ナット34等により構成されている。ピン組立体U1は、二次衝突時に剪断する樹脂ピン61と、樹脂ピン61よりも高硬度であり、樹脂ピン61の軸方向の一部に嵌合した円筒状のカラー62とで構成されている。なお、カラー62の材料としては、樹脂ピン61の硬度よりも高い硬度を持つものであれば、金属を用いてもよいし、高硬度の樹脂を用いてもよいし、セラミックを用いてもよい。
【0028】
図3を参照して、固定ブラケット23は、第1板30の一対の側縁からそれぞれ下向きに延設された一対の側板37と、一対の側板37からそれぞれ外側方へ延設された一対の取付板38とを備えている。固定ブラケット23は、例えば板金により形成されている。各取付板38に設けられたねじ挿通孔39(図3および図4参照)を挿通した固定ボルト40(図4参照)によって、各取付板38が、車体側部材13に固定されている。これにより、固定ブラケット23が車体側部材13に固定されている。
【0029】
図2図4を参照して、固定ブラケット23の第1板30において、第1孔31は、一対の吊り下げボルト25に対応して一対設けられている。一対の第1孔31は、二次衝突時のコラム移動方向X1と平行に延び、また、コラム移動方向X1とは直交する方向Yに離隔している。
図2図3に示すように、チルトブラケット24(可動ブラケット)は、例えば板金により形成されている。チルトブラケット24は、第2板32と、第2板32の一対の側縁から下向きに延設された一対の側板41とを備えており、溝形をなしている。第2板32と各側板41との連結部は、図2図3に示すように湾曲状に形成されていてもよい。
【0030】
チルトブラケット24の第2板32において、第2孔33は、一対の吊り下げボルト25に対応して一対設けられている。各吊り下げボルト25は、例えば皿ばねからなる環状の板ばね42と、スライド板43の対応する挿通孔44と、第1板30の対応する第1孔31と、第2板32の対応する第2孔33とを順次に挿通して、ナット34にねじ込まれている。これにより、吊り下げボルト25がチルトブラケット24を吊り下げている。
【0031】
スライド板43は、図3および図4に示すように、コラム移動方向X1とは直交する方向Yに延びる長板からなり、図2に示すように、両板ばね42と第1板30の上面30aとの間に介在している。スライド板43の少なくとも第1板30側の面が、例えばフッ素樹脂等の低摩擦材で形成されている。すなわち、スライド板43全体が、低摩擦材で形成されていてもよいし、スライド板43の第1板30側の面に、低摩擦材が被覆されていてもよい。
【0032】
に示すように、第1板30と第2板32との間には、二次衝突時に第2板32が第1板30に対して、コラム移動方向X1に移動するときの摺動抵抗を低減させる働きをする第1介在板45と第2介在板46とが介在している。
図3および図に示すように、第1介在板45は、第2板32のコラム移動方向X1側の端部である第1端部321に係止された溝形のユニット45Uを構成している。すなわち、ユニット45Uは、第2板32の上面である受け面32aおよび第1板30の下面30bに沿う第1介在板45と、第1介在板45と対向し且つ第2板32の下面32bに沿う対向板47と、第1介在板45と対向板47とを連結し且つ第2板32のコラム移動方向X1側の端縁に係合する連結板48とを備えている。
【0033】
第1介在板45の少なくとも第1板30側の面が、例えばフッ素樹脂等の低摩擦材で形成されている。すなわち、第1介在板45ないしユニット45Uが、低摩擦材で形成されていてもよいし、第1介在板45の第1板30側の面に、低摩擦材が被覆されていてもよい。
第2介在板46は、第1板30のコラム移動方向X1とは反対側の端部である第2端部302および第2板32のコラム移動方向X1とは反対側の端部である第2端部322に係止されるユニット46Uを構成している。すなわち、ユニット46Uは、第2板32の受け面32a(上面)および第1板30の下面30bに沿う第2介在板46と、第2介在板46に対向し且つ第1板30の上面30aに沿う対向板49とを備えている。また、ユニット46Uは、第2介在板46と対向板49とを連結し且つ第1板30のコラム移動方向X1とは反対側の端縁に当接する連結板50と、第2板32の第2端部322に引っ掛け係止される例えば鉤形フック状の係止部51とを備えている。
【0034】
第2介在板46の少なくとも第2板32側の面が、例えばフッ素樹脂等の低摩擦材で形成されている。すなわち、第2介在板46ないしユニット46Uが、低摩擦材で形成されていてもよいし、第2介在板46の第2板32側の面に、低摩擦材が被覆されていてもよい。
図2および図3に示すように、各吊り下げボルト25は、頭部52と、頭部52に連なり頭部52より小径の大径部53と、大径部53に連なり大径部53より小径の小径部54と、大径部53と小径部54との間に形成された段部55と、小径部54に設けられたねじ部56とを備えている。頭部52には、例えば六角孔形状の工具係合部57が設けられている。
【0035】
図2に示すように、大径部53が、環状の板ばね42と、スライド板43の挿通孔44と、第1板30の第1孔31とを挿通している。段部55は、第2板32の受け面32a(上面)に当接し、受け面32aによって受けられている。段部55とナット34との間で第2板32が挟持されて、吊り下げボルト25と第2板32とが固定されている。
頭部52と段部55との間隔H1(大径部53の軸長に相当)は、第1板30と第2板32との間に介在する第1介在板45の板厚(ないし第2介在板46の板厚)と、第1板30の板厚と、第1板30の上面30aに沿うスライド板43の板厚と、最圧縮時の板ばね42の板厚との合計よりも大きくされている。これにより、板ばね42が、スライド板43を介して第1板30を第2板32側へ弾性的に付勢している。
【0036】
図5に示すように、連結・離脱機構としてのピン組立体U1の樹脂ピン61は、円柱状(少なくとも一部は円筒状)の丸軸部64と、丸軸部64の一端に設けられ、丸軸部64よりも大径の断面円形の頭部63とを備えている。樹脂ピン61は、射出成形により形成された射出成形品である。円筒状のカラー62は、丸軸部64の外周64aに嵌合する内周62aと、樹脂ピン61の頭部63に当接する第1端面621と、第2板32に当接する第2端面622とを含む。カラー62は、二次衝突時に第2端面622に沿う剪断面P1で丸軸部64(具体的には、丸軸部64の後述するストレート部包囲部83)を剪断する機能を果たす。
【0037】
丸軸部64は、第1板30の第1挿通孔66と第2板32の第2挿通孔67とを第1方向Z(第1板30と第2板32との対向方向に相当)に挿通して、第1方向Zとは直交する第2方向Xに関して第1板30と第2板32とを連結している。第2方向Xは、コラム移動方向X1とその反対方向を含む方向である。丸軸部64は、車両の二次衝突時に第1板30と第2板32との連結を解除するように剪断される。
【0038】
丸軸部64は、丸軸部64の軸線K1を中心として丸軸部64の軸線方向Jに延びる中空孔81を含む。中空孔81の内周81aは、丸軸部64の軸線方向Jとは平行な母線を有し、カラー62の第2端面622を含む平面(剪断面P1に相当)によって横切られるストレート部82を含む。また、丸軸部64は、ストレート部82を周方向に取り囲む部分であるストレート部包囲部83を含む。
【0039】
所定の径方向に関するストレート部82の内径D1は、丸軸部の軸線方向Jの位置が変化しても一定である。例えばストレート部82の断面形状は、円形である。ストレート部82は、丸軸部64の軸線方向Jに関して剪断面P1の両側に延びる。樹脂成形された樹脂ピン61の離型時において、ストレート部82は型から無理抜きされることになる。
また、丸軸部64は、ストレート部82に境界部84を介して連続する、型抜きのためのテーパ部85を含む。境界部84は、第2板32の第2挿通孔67内に配置されている。すなわち、境界部84は、カラー62の第2端面622から丸軸部64の軸線方向Jに離隔した位置に配置されている。丸軸部64の軸線方向Jに関して、境界部84は、剪断面P1よりも第2板32側に配置されている。丸軸部64の外周64aは、ストレート部82の径方向外方を避けた位置で第2挿通孔67に圧入される拡径部86を含む。拡径部86は丸軸部64の外周64aの全周に設けられた環状突起であってもよいし、外周64aの周方向に環状に配列された複数の突起であってもよい。
【0040】
カラー62の軸方向の第1端面621が、樹脂ピン61の頭部63に当接し、カラー62の軸方向の第2端622が、第2板32の受け面32aによって受けられている。これにより、樹脂ピン61およびカラー62が、第2板32の下方へ脱落することが防止されている。
一方、図に示すように、スライド板43が、樹脂ピン61の頭部63の上方を覆うように配置されることで、樹脂ピン61の上方への脱落が防止されている。また、スライド板43には、樹脂ピン61の頭部63に対向して、頭部63の外径よりも小さい樹脂ピン視認孔65が形成されている。ピン組立体U1の組付け後に、スライド板43の樹脂ピン視認孔65を通して樹脂ピン61の頭部63を視認することにより、樹脂ピン61の組み付け忘れ等の作業不良を容易に判断することができる。
【0041】
図5に示すように、頭部63は、スライド板43に対向する第1面631と、カラー62の第1端面621(上端面)に対向する第2面632とを有している。図6および図7に示すように、第1面631には、樹脂ピン61の軸方向に突出する複数の弾性突起91が設けられている。具体的には、複数の弾性突起91は、平面視で樹脂ピン視認孔65を取り囲む円周上に周方向に等間隔に並ぶように配置されている。
【0042】
複数の弾性突起91は、弾性的に圧縮された状態でスライド板43の下面に接しており、弾性反発力によりスライド板43を直接、押圧付勢している。スライド板43から弾性突起91に与えられる反力は、頭部63を介して、カラー62の第2端面622を第2板32の受け面32a(上面)に付勢している。
図5に示すように、樹脂ピン61の頭部63とカラー62の大部分とは、固定ブラケット23の第1板30の第1挿通孔66に挿通されている。カラー62の一部は、第1挿通孔66から突出している。樹脂ピン61の丸軸部64のうち、カラー62から突出した部分が、チルトブラケット24(可動ブラケット)の第2板32の第2挿通孔67に挿通されている。
【0043】
二次衝突時には、第1板30と第2板32との相対移動に伴うカラー62の第2端面622と第2板32の受け面32a(上面)との位置ずれによって、図に示すように、樹脂ピン61の丸軸部64が、カラー62の第2端面622に沿う剪断面P1で剪断される。カラー62の第2端面622の内周縁で構成される剪断刃は、円弧状であり、第2板32の第2挿通孔67の縁部で構成される剪断刃も、円弧状である。弾性突起91の働きで、カラー62の第2端面622が第2板32の受け面32aに面接触するので、丸軸部64の軸線方向Jに関して、剪断面P1の位置が安定する。
【0044】
本実施形態によれば、中空孔81を設けることで、樹脂ピン61の肉厚が薄くなり、ボイドの発生を抑制することができる。また、樹脂ピン61の中空孔81の諸元(例えば、中空孔81の内径や、後述する第2〜第4実施形態に示すように、中空孔の個数、断面形状等)を調整することで、二次衝突時の樹脂ピン61の剪断荷重の設定の自由度を向上することができ、ひいては、二次衝突時の衝撃吸収荷重の設定の自由度を向上することができる。
【0045】
仮に、二次衝突時の剪断面がテーパ部を横切るとすると、その場合、丸軸部の軸線方向に関して剪断面の位置が、ばらつくことによって、剪断面積が、ばらつく。このため、剪断荷重が、ばらついて、衝撃吸収荷重が、ばらつくことになる。
これに対して、剪断面P1(カラー62の第2端面622を含む平面に一致)がストレート部82を横切る本実施形態では、二次衝突時に、丸軸部64の軸線方向Jに関して、剪断面P1の位置が、ばらついても、剪断面積は、一定である。したがって、ボイドの発生を抑制できることと相俟って、安定した剪断荷重を得ることができる。その結果、安定した衝撃吸収荷重を得ることができる。
【0046】
また、中空孔81が、ストレート部82に境界部84を挟んで隣り合う型抜きのためのテーパ部85を含むので、型抜き時に、中空孔81を形成するための中子をテーパ部85の働きで抜き易くすることができる。
また、組立時において、樹脂ピン61の頭部63と拡径部86との間でカラー62を丸軸部64に保持することができる。したがって、樹脂ピン61とカラー62とで一体に取り扱うことのできるユニットであるピン組立体U1を構成することができるので、組立性が向上する。また、拡径部86は、ストレート部82の径方向外方を避けた位置に配置される。したがって、拡径部86が、剪断面積に影響を与えることがないので、衝撃吸収荷重の安定化を妨げることがない。
【0047】
前記ピン組立体U1を備えたステアリング装置1であれば、安定した衝撃吸収荷重を得ることができて、好ましい。
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態において、樹脂ピン61Eとカラー62Eとを含むピン組立体UEの断面図であり、樹脂ピン61Eの丸軸部64Eの軸線K1を含む左右方向の断面を示している。図9における左右方向が、車両の左右方向(コラム移動方向X1とは直交する方向Y)に相当する。図10は、ストレート部82Eで切断された樹脂ピン61Eの断面図である。
【0048】
図9および図10を参照して、第2実施形態が、図5および図6の第1実施形態と主に異なるのは、下記である。すなわち、第1実施形態では、図5および図6に示すように、単一の中空孔81が設けられる。これに対して、第2実施形態では、図9および図10に示すように、複数の(本第2実施形態では2つの)中空孔81Eが設けられる。各中空孔81Eの内周は、ストレート部82Eと、ストレート部82Eと境界部84Eを介して連続するテーパ部85Eとを含む。
【0049】
各中空孔91Eのストレート部82Eの断面は、図10に示すように、円形である。2つの中空孔91Eは、丸軸部64Eの軸線K1に対して対称に配置されていてもよい。
図10に示すように、各中空孔81Eの中心軸線CEと丸軸部64Eの軸線K1とを含む各平面PEが、第2方向Xとは非平行である。例えば、各平面PEが、第2方向X(コム移動方向X1)とは直交し、左右方向(コラム移動方向X1とは直交する方向Y)に沿っている。ただし、少なくとも1つの中空孔81Eの中心軸線CEと丸軸部64Eの軸線K1とを含む平面PEが、第2方向Xとは非平行であればよい。
【0050】
また、図9に示すように、頭部フランジ63Eの第2面632には、カラー62Eの第1端面621側に向けて突出する少なくとも1つの回転規制凸部92が設けられている。また、カラー62Eの第1端面621には、回転規制凸部92に係合する回転規制凹部93が設けられている。回転規制凸部92が回転規制凹部93に係合することにより、樹脂ピン61Eとカラー62Eとの相対回転(樹脂ピン61Eの丸軸部64Eの軸線K1の回りの回転)が規制されている。
【0051】
一方、図示していないが、カラー62Eの外周62bは、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1に長い長円形等の横長形状の断面をなしている。カラー62Eの外周62bが嵌合する、第1板30Eの第1挿通孔66Eは、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1に長い横長孔である。これにより、第1挿通孔66Eによって、カラー62Eの回転が規制されている。すなわち、第1挿通孔66Eが、カラー62Eを介して樹脂ピン61Eの軸線K1回りの回転を規制している。
【0052】
図9および図10の第2実施形態の構成要素において、図5および図6の第1実施形態の構成要素と同じ構成要素には、図5および図6の第1実施形態の構成要素の参照符号と同じ参照符号を付してある。
二次衝突時には、中空孔81Eが第2方向X(コラム移動方向X1)に関して偏平になるように変形した後、樹脂ピン61Eの剪断が開始する。複数の中空孔81Eを設ける第2実施形態と、複数の中空孔81Eの合計断面積と等しい断面積を有する単一の中空孔81を設ける条件下の第1実施形態とを比較する。
【0053】
前記条件下で、第2実施形態の樹脂ピン61Eの剪断面積と第1実施形態の樹脂ピン61の剪断面積とは、互いに等しくなるので、二次衝突発生からの経過時間と衝撃吸収荷重との関係を示す図11に示すように、衝撃吸収荷重のピーク荷重PLは互いに等しい。
一方、第2実施形態において剪断開始前に中空孔81Eに生ずる変形代は、第1実施形態において剪断開始前に中空孔81に生ずる変形代よりも小さい。したがって、第2実施形態では、前記条件下での第1実施形態において衝撃吸収荷重(破線で示される)のピーク荷重PLが発生するタイミングt1よりも早いタイミングt2で、衝撃吸収荷重(実線で示される)のピーク荷重PLを発生させることができる。これにより、衝撃吸収特性を向上することができる。
(第3実施形態)
図12は、本発明の第3実施形態において、樹脂ピン61Fとカラー62Eとを含むピン組立体UFの断面図であり、樹脂ピン61Fの丸軸部64Fの軸線K1を含む左右方向の断面を示している。図12における左右方向が、車両の左右方向(コラム移動方向X1とは直交する方向Y)に相当する。図13は、ストレート部82Fで切断された樹脂ピン61Fの断面図である。
【0054】
図12および図13を参照して、第3実施形態が、図9の第2実施形態と主に異なるのは、下記である。すなわち、第2実施形態では、図9に示すように、ストレート部82Eの断面形状が円形である複数の中空孔81Eを設けている。
これに対して、第3実施形態では、図13に示すように、単一の中空孔81Fを設け、丸軸部64Fの軸直角断面において、中空孔81Fのストレート部82Fの断面形状が、第2方向Xとは非平行な長手方向を有する長孔形状である。例えば、中空孔81Fの長手方向は、第2方向X(コラム移動方向X1)とは直交する方向である。
【0055】
図12に示すように、中空孔81Fの内周は、ストレート部82Fと、ストレート部82Fと境界部84Fを介して連続するテーパ部85Fとを含む。
第3実施形態においても、樹脂ピン61Fは、第1挿通孔66Eによってカラー62Eを介して回転規制されている。図12および図13の第3実施形態の構成要素において、図9の第2実施形態の構成要素と同じ構成要素には、図9の第1実施形態の構成要素の参照符号と同じ参照符号を付してある。
【0056】
第3実施形態によれば、中空孔81Fのストレート部82Fの形状が、第2方向X(コラム移動方向X1)とは非平行な長孔形状である(例えば、中空孔81の形状が、コラム移動方向X1にへしゃげたような偏平形状に予め形成されている)ので、剪断開始前に生ずる、第2方向X(コラム移動方向X1)に関する中空孔81Fの変形代を小さくすることができるので、衝撃吸収荷重のピーク荷重が発生するタイミングを早くすることができる。これにより、衝撃吸収特性を向上することができる。
【0057】
すなわち、第3実施形態において、単一の中空孔81Fの断面積を、第2実施形態の複数の中空孔81Eの合計断面積と同じにした場合、図11に実線で示した第2実施形態のタイミングt2と同じタイミングで、第2実施形態の衝撃吸収荷重(実線で示される)のピーク荷重PLと同じピーク荷重を発生させることができる。
また、第3実施形態では、単一の中空孔81Fを用いるので、樹脂ピンの成形時に単一の中子を用いればよい。したがって、樹脂ピン61Fを製造し易い。
(第4実施形態)
図14は、本発明の第4実施形態において、樹脂ピン61Gとカラー62とを含むピン組立体UGの断面図であり、樹脂ピン61Gの丸軸部64Gの軸線K1を含む左右方向の断面を示している。図12における左右方向が、車両の左右方向(コラム移動方向X1とは直交する方向Y)に相当する。図13は、ストレート部82Gで切断された樹脂ピン61Gの断面図である。
【0058】
図14および図15を参照して、第4実施形態が、図9および図10の第2実施形態と主に異なるのは、下記である。すなわち、第2実施形態では、図10に示すように、2つの中空孔81Eを用いるが、第4実施形態では、図15に示すように、4つの中空孔81Gを用いている。各中空孔81Gは、ストレート部82Gと、ストレート部82Gと境界部84Gを挟んで隣り合うテーパ部85Gとを含む。各中空孔81Gのストレート部82Gの断面は、円形である。4つの中空孔81Gの中心軸線CGは、丸軸部64Gの軸線K1を中心とする円弧上に、周方向に等間隔で配置されていてもよい。
【0059】
図15の例では、各中孔81Gの中心軸線CGと丸軸部64Gの軸線K1とを含む4つの平面PGのうち、左右方向(コラム移動方向X1とは直交する方向Y)に並ぶ2つの平面PGが、第2方向Xとは非平行に配置され、残りのの2つのPGが第2方向Xに並んでいる。
ただし、第4実施形態では、第2方向X(コラム移動方向X1)を何れの方向に設定しても、少なくとも2つの平面PGが、第2方向Xとは非平行となる。可及的に、二次衝突時の衝撃荷重の負荷方向(コラム移動方向X1に相当)を任意に設定しつつ、衝撃吸収荷重のピーク荷重が発生するタイミングを早くすることが可能となる。
【0060】
すなわち、第4実施形態において、4つの中空孔81Gの合計断面積を、第2実施形態の2つの中空孔81Eの合計断面積と同じにした場合、図11に実線で示した第2実施形態のタイミングt2と同じタイミングで、第2実施形態の衝撃吸収荷重(実線で示される)のピーク荷重PLと同じピーク荷重を発生させることができる。
また、第1挿通孔66内において、樹脂ピン61Gを軸線K1回りに回転規制する必要がないので、組み付けが容易になる。
(第5実施形態)
図16は、本発明の第5実施形態において、樹脂ピン61Gとカラー62とを含むピン組立体UHの断面図であり、樹脂ピン61Hの丸軸部64の軸線K1を含む左右方向の断面を示している。図16における左右方向が、車両の左右方向(コラム移動方向X1とは直交する方向Y)に相当する。
【0061】
図16を参照して、第5実施形態が、図5の第1実施形態と主に異なるのは、下記である。すなわち、第1実施形態のピン組立体U1では、図5に示すように、中空孔81Hは丸軸部64の端面のみに開口している。これに対して、第5実施形態のピン組立体UHでは、図16に示すように、中空孔81Hが、樹脂ピン61Gを丸軸部64の軸線方向Jに貫通する貫通孔であり、中空孔81Hは、頭部63Hの第1面631にも開口している。
【0062】
図16の例では、中空孔81Hは、ストレート部82からテーパ部85とは反対方向に、頭部63の第1面631に開放する連通部87を含む。連通部87の内径D2は、ストレート部82の内径D1よりも大きくてもよいし(D2>D1)、ストレート部82の内径D1と同じ(D2=D1)であってもよい。
図16の第5実施形態の構成要素において、図5の第1実施形態の構成要素と同じ構成要素には、図5の第1実施形態の構成要素の参照符号と同じ参照符号を付してある。
【0063】
中空孔81Hを樹脂ピン61Hの両端部の何れの側からも視認することができるので、例えば互いに諸元(個数、断面形状または内径等)の異なる中空孔81Hを有する複数の仕様の樹脂ピン61Hを容易に識別することができる。
また、図16の第5実施形態のように中空孔81Hが貫通している場合の丸軸部64の外径と、図5の第1実施形態のように中空孔81が貫通していない場合の丸軸部64の外径とを異ならせておく場合には、中空孔の貫通の有無を視認することにより、2つの仕様を容易に識別することができる。
【0064】
このように、中空孔の貫通の有無の視認に基づいて樹脂ピンの仕様を容易に識別することができるので、可及的に、樹脂ピンの誤組み付けの発生を未然に防止することができる。
なお、図9の第2実施形態の中空孔81E、図12の第3実施形態の中空孔81F、および図14の第4実施形態の中空孔81Gをそれぞれ貫通孔により構成してもよい。
【0065】
本発明は各前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、コラム移動方向X1に並ぶ単一列で配列された複数のピン組立体を設けてもよい。その他、本発明は、請求項記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0066】
1…ステアリング装置、2…操舵部材、3…ステアリングシャフト、13…車体側部材、15…ステアリングコラム、16…アッパージャケット(可動ジャケット)、23…固定ブラケット、24…チルトブラケット(可動ブラケット)、25…吊り下げボルト(吊り下げ軸)、26…コラムブラケット、27…操作レバー、28…締付軸、29…ロック機構、30;30E…第1板、32…第2板、32a…受け面、61;61E;61F;61G;61H…樹脂ピン、62;62E…カラー、62a…内周、62b…外周、622…第2端面、63;63E;63H…頭部、64;64E;64F;64G…丸軸部、64a…外周、66;66E…第1挿通孔、67…第2挿通孔、81;81E;81F;81G;81H…中空孔、81a…内周、82;82E;82F;82G…ストレート部、84;84E;84F;84G…境界部、85;85E;85F;85G…テーパ部、86…拡径部、87…連通部、92…回転規制凸部、93…回転規制凹部、CE;CG;…(中空孔の)中心軸線、J…(丸軸部の)軸線方向、K1…(丸軸部の)軸線、P1…剪断面、PE;PG…(中空孔の中心軸線と丸軸部の軸線とを含む)平面、PL…ピーク荷重、T1,T2…吊り下げ機構、U1;UE;UF;UG;UH…ピン組立体、X…第2方向、X1…コラム移動方向、Z…第1方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16