(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の封止方法を用いれば、液状シール剤を所定の領域に充填し封止することができる。しかしながら、携帯機器などに搭載されるような小型のプッシュスイッチに適用すると、液状シール剤(封止樹脂)の充填量の制御が難しい。封止樹脂の充填量が多くなりすぎると、充填部分から封止樹脂がはみ出すこととなり、プッシュスイッチを実装するとはみ出した封止樹脂により傾いてしまうなどの不具合が起きる可能性があった。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決して、封止樹脂がはみ出すことなく押え穴を封止することができるプッシュスイッチを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプッシュスイッチは、可動接点部材と、前記可動接点部材を収容可能で一方が開口となった収容空間を備えるとともに、前記収容空間の内部に前記可動接点部材と接触可能な固定接点部がインサート成形により一体に形成されたケースと、前記開口を覆うように前記ケースの上面に取り付けられる覆い部材と、を有するプッシュスイッチにおいて、前記ケースは下面に凹状に形成された滞留部を有し、前記滞留部は下方に臨んで形成された底面部を有し、前記底面部は下方へ突出する突出部を有するとともに、前記滞留部の内側壁に沿った位置でかつ、前記突出部より高い位置に前記固定接点部の一部が露出する押え穴を有し、前記突出部と前記押え穴との間は、前記突出部から前記押え穴に向かって傾斜する傾斜部となっており、前記滞留部に充填され硬化した封止樹脂により前記押え穴が封止されている、ことを特徴とする。
【0009】
これにより、プッシュスイッチが小型になり、滞留部自体も小型化した場合に、滞留部の底面部と内側壁との連結部分に液体が付着すると、付着した液体は毛細管現象により連結部分に沿って誘導されやすくなる。よって、滞留部の外形壁に沿った位置に押え穴を配することで、プッシュスイッチが小型になった場合に、封止樹脂が毛細管現象で押え穴の近傍に誘導されやすくなる。また、滞留部を上方に向けた状態で封止樹脂を滞留部に充填することで、封止樹脂は底面部の傾斜部に沿って押え穴に向って流動し、封止樹脂が押え穴を塞ぐように滞留していく。したがって、少量の封止樹脂を効率的に押え穴に誘導し、固定接点部が露出しないように確実に封止することができるため、滞留部からの封止樹脂のはみ出しは発生しにくくなる。したがって、封止樹脂がはみ出すことなく押え穴を封止することができるプッシュスイッチを提供することができる。
【0010】
また、本発明のプッシュスイッチは、前記固定接点部は前記収容空間の内部底面に設けられ、前記内部底面の中央部に配置された中央固定接点部を有し、前記滞留部は、前記ケースの下面において、前記中央固定接点部に対応する位置を囲うように形成されている、ことを特徴とする。
【0011】
これにより、中央固定接点部の下方を避けて滞留部を設けることで、中央固定接点部の下方に、中央固定接点部が押圧荷重を受けたとしても破損しない強度を得るに十分な厚さの成形樹脂を確保することができる。
【0012】
また、本発明のプッシュスイッチは、前記滞留部は2つに分割されており、対称形状となっている、ことを特徴とする。
【0013】
これにより、滞留部を2つに分割することで封止樹脂の誘導距離および充填時間を短くするとともに、2つに分割された滞留部を対称形状とすることで封止樹脂の硬化時間のばらつきを減らすことができる。
【0014】
また、本発明のプッシュスイッチは、前記封止樹脂は、熱硬化型及び紫外線硬化型からなる複合型の樹脂であり、前記ケースの成形樹脂と前記固定接点部との隙間に前記封止樹脂が入り込んだ状態で硬化されている、ことを特徴とする。
【0015】
これにより、複合型にすることで、紫外線を照射できない隙間に入りこんだ封止樹脂を、熱により硬化させることができ、より密閉性を向上させることができる。
【0016】
また、本発明のプッシュスイッチは、前記固定接点部の下面側には、濡れ性を低下させる低濡れ性層が形成されている、ことを特徴とする。
【0017】
これにより、固定接点部の下面側に低濡れ性層を設けることで、封止樹脂は成形樹脂と固定接点部との隙間に入り込んできても、収容空間に入り込むまでに時間が掛り、収容空間に入り込む前に硬化しやすくなる。したがって、固定接点部材の、収容空間に露出した部分に封止樹脂が付着することによる導通不良が発生しにくくなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、封止樹脂がはみ出すことなく押え穴を封止することができるプッシュスイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態におけるプッシュスイッチ100の構成を示す分解斜視図である。
【
図2】第1実施形態におけるプッシュスイッチ100の外観を示す図であり、
図2(a)はプッシュスイッチ100の外観を示す斜視図であり、
図2(b)は
図2(a)に記載のZ2方向側から見た状態のプッシュスイッチ100を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態における可動接点部材1を示す図であり、
図3(a)は可動接点部材1の外観を示す斜視図であり、
図3(b)は
図3(a)に記載のZ1方向側から見た状態の可動接点部材1を示す平面図であり、
図3(c)は
図3(a)に記載のX1方向側から見た状態の可動接点部材1を示す側面図である。
【
図4】第1実施形態におけるケース2を示す図であり、
図4(a)はケース2の外観を示す斜視図であり、
図4(b)は
図4(a)に記載のX1方向側から見た状態のケース2を示す側面図である。
【
図5】
図4(a)に記載のZ1方向側から見た状態のケース2を示す平面図である。
【
図6】第1実施形態における固定接点部3を示す図であり、
図6(a)は固定接点部3の外観を示す斜視図であり、
図6(b)は
図6(a)に記載のZ2方向側から見た状態の固定接点部3を示す斜視図である。
【
図7】
図4(a)に記載のZ2方向側から見た状態のケース2を示す平面図である。
【
図8】第1実施形態におけるケース2の断面を示す断面図であり、
図8(a)はケース2を
図7に記載の断面線B−Bで切断した断面を示す断面図であり、
図8(b)はケース2を
図7に記載の断面線C−Cで切断した断面を示す断面図である。
【
図9】第1実施形態における覆い部材4を示す図であり、
図9(a)は覆い部材4の外観を示す斜視図であり、
図9(b)は
図9(a)に記載のZ1方向側から見た状態の覆い部材4を示す平面図であり、
図9(c)は
図9(b)に記載の断面線E−Eで切断した断面を示す断面図である。
【
図10】第1実施形態におけるプッシュスイッチ100の構造を示す模式断面図であり、
図10(a)は初期状態における断面を示す模式断面図であり、
図10(b)は操作時における断面を示す模式断面図である。
【
図11】
図8に記載のF部を拡大して示した拡大図である。
【
図12】特許文献1に記載の電気機器900の底面部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下に第1実施形態におけるプッシュスイッチ100について説明する。
【0021】
まず始めに本実施形態におけるプッシュスイッチ100の構成について
図1ないし
図9を用いて説明する。
図1は第1実施形態におけるプッシュスイッチ100の構成を示す分解斜視図である。
図2は第1実施形態におけるプッシュスイッチ100の外観を示す図であり、
図2(a)はプッシュスイッチ100の外観を示す斜視図であり、
図2(b)は
図2(a)に記載のZ2方向側から見た状態のプッシュスイッチ100を示す斜視図である。
図3は第1実施形態における可動接点部材1を示す図であり、
図3(a)は可動接点部材1の外観を示す斜視図であり、
図3(b)は
図3(a)に記載のZ1方向側から見た状態の可動接点部材1を示す平面図であり、
図3(c)は
図3(a)に記載のX1方向側から見た状態の可動接点部材1を示す側面図である。
図4は第1実施形態におけるケース2を示す図であり、
図4(a)はケース2の外観を示す斜視図であり、
図4(b)は
図4(a)に記載のX1方向側から見た状態のケース2を示す側面図である。
図5は
図4(a)に記載のZ1方向側から見た状態のケース2を示す平面図である。
図6は第1実施形態における固定接点部3を示す図であり、
図6(a)は固定接点部3の外観を示す斜視図であり、
図6(b)は
図6(a)に記載のZ2方向側から見た状態の固定接点部3を示す斜視図である。
図7は
図4(a)に記載のZ2方向側から見た状態のケース2を示す平面図である。
図8は第1実施形態におけるケース2の断面を示す断面図であり、
図8(a)はケース2を
図7に記載の断面線B−Bで切断した断面を示す断面図であり、
図8(b)はケース2を
図7に記載の断面線C−Cで切断した断面を示す断面図である。なお、説明を容易にするために、
図8(a)の縮尺と
図8(b)の縮尺とは異なっている。
図9は第1実施形態における覆い部材4を示す図であり、
図9(a)は覆い部材4の外観を示す斜視図であり、
図9(b)は
図9(a)に記載のZ1方向側から見た状態の覆い部材4を示す平面図であり、
図9(c)は
図9(b)に記載の断面線E−Eで切断した断面を示す断面図である。なお、説明を容易にするために、
図9(b)の縮尺と
図9(c)の縮尺とは異なっている。
【0022】
プッシュスイッチ100は、
図1に示すように、可動接点部材1と、固定接点部3が一体に形成されたケース2と、覆い部材4と、を有している。プッシュスイッチ100は、
図2に示すように、直方体状に形成され、覆い部材4を介して可動接点部材1(
図1参照)を押圧操作することで、固定接点部3の導通状態の切り替えを行うことができる。
【0023】
可動接点部材1は金属板からなる板ばねであり、
図3に示すように、円形のドーム状に形成されたドーム部1aを有している。また、可動接点部材1は、ドーム部1aを挟んで対向する位置から延設された支持部1bを有している。ドーム部1aと支持部1bとを備えた可動接点部材1は、上方(Z1方向)から平面視すると、長方形状に形成されている。なお、可動接点部材1は、ドーム部1aを上方から押圧すると、下方へ撓み、反転する。
【0024】
ケース2は合成樹脂材からなり、金属材からなる固定接点部3がインサート成形により、
図4に示すように、一体に形成されている。ケース2は直方体状に形成され、内部に一方(Z1方向側)が開口2bとなった収容空間2aを備えている。なお、収容空間2aは、可動接点部材1を収納可能な大きさに形成されており、開口2bは平面視で長方形状に形成されている。また、収容空間2aの内部底面2hには、固定接点部3が露出して設けられている。なお、
図5に示すように、固定接点部3は、内部底面2hの中央部に配置された中央固定接点部3aと、内部底面2hの四隅部にそれぞれ配置された周辺固定接点部3bと、を有している。4つの周辺固定接点部3bは、それぞれ可動接点部材1の支持部1bに接触可能な位置に配置されている。また、固定接点部3は、ケース2の短手辺側(Y1方向側およびY2方向側)からそれぞれ外方へ突出する外部接続部3dを有している。ケース2にインサート成形されている固定接点部3は、
図6に示すように、中央固定接点部3aを備える第1接点部材3eと、周辺固定接点部3bを備える第2接点部材3fと、からなり、第1接点部材3eおよび第2接点部材3fはそれぞれ外部接続部3dを備えている。したがって、中央固定接点部3aと周辺固定接点部3bとは電気的な導通が無く、外部接続部3d同士も電気的な接続はない。また、固定接点部3(第1接点部材3eおよび第2接点部材3f)の下面側には、濡れ性を低下させる低濡れ性層3cが形成されている。なお、低濡れ性層3cは、外部接続部3d(
図6のハッチングが掛った部分)以外の箇所の下面側に、濡れ性が低い薬剤等を塗布することで形成されている。また、ケース2は、
図4に示すように、下面(Z2方向側の面)から下方へ突出して円柱状に形成された2本の位置決め突部2nを有している。位置決め突部2nは、ケース2の下面の、一対の対角位置に設けられており、第1実施形態においては、
図7に示すように、X1方向側でかつY1方向側の位置と、X2方向側でかつY2方向側の位置と、に設けられている。また、ケース2は下面に滞留部2cを有している。滞留部2cは、位置決め突部2nを避けるとともに、ケース2の下面において、中央固定接点部3aに対応する位置(A部)を囲うように形成されている。また、滞留部2cは、2つに分割されており、その形状は対称形状(A部に対して点対象)となっているとともに、
図8に示すように、ケース2の下面(Z2方向側の面)に対して凹状に形成されている。滞留部2cは、下方に臨んで形成された底面部2dを有している。底面部2dは下方へ突出する突出部2eを有するとともに、滞留部2cの内側壁に沿った位置でかつ、突出部2eより高い位置(
図8においてはZ1方向側に寄った位置)に固定接点部3の一部が露出する押え穴2fを有し、突出部2eと押え穴2fとの間は、突出部2eから押え穴2fに向かって傾斜する傾斜部2gとなっている。押え穴2fは、ケース2と固定接点部3とを一体にインサート成形する際に、流動する合成樹脂材により固定接点部3が動かないように保持する成形金型の保持部が引き抜かれた箇所である。また、第1実施形態においては、突出部2eの一部にも固定接点部3(第2接点部材3f)の一部が露出した個所(D部)があるが、D部は押え穴2fではなく、インサート成形する際に、成形金型内のある面に接触して配置されていた箇所である。また、押え穴2fおよびD部から露出している固定接点部3の一部は、低濡れ性層3cが設けられた固定接点部3の下面である。なお、
図7および
図8においては、滞留部2cの内部は中空な状態として図示しているが、実際には、
図2に示すように、滞留部2cの内部には封止樹脂5が充填され、滞留部2cに充填され硬化した封止樹脂5により押え穴2fおよびD部が封止されている。また、封止樹脂5の一部はケース2の成形樹脂と固定接点部3との隙間に入り込み、入り込んだ状態で硬化されている。なお、封止樹脂5は、熱硬化型及び紫外線硬化型からなる複合型の樹脂である。また、
図7および
図8に示すように、ケース2の下面には、滞留部2cが設けられた領域である封止部2kと、封止部2kよりも高い位置(Y1方向側の位置)となるように段差形状に形成された段差部2mと、が形成されている。段差部2mは、ケース2の下面における外縁部の少なくとも一部に形成され、第1実施形態においては、ケース2の下面における外縁部の全周に渡って形成されている。また、固定接点部3の外部接続部3dは、長手方向(Y1−Y2方向)の両端に設けられた段差部2mから側方へ突出するように配置されている。
【0025】
覆い部材4は、
図9に示すように、上方(Z1方向側)から平面視すると、ケース2の上面を覆うことができる大きさの長方形状に形成されている。覆い部材4は、合成樹脂シートからなるシート部4aを有し、シート部4aの中央部には上方へ突出した突起部4bが形成されている。突起部4bの下面側には、合成樹脂材からなる押子部材4cが接着により一体に形成されている。また、シート部4aの長手方向(Y1−Y2方向)の両端部には、下面側に粘着剤が塗布された粘着部4dが形成されている。
【0026】
次にプッシュスイッチ100の構造について
図10を用いて説明する。
図10は第1実施形態におけるプッシュスイッチ100の構造を示す模式断面図であり、
図10(a)は初期状態における断面を示す模式断面図であり、
図10(b)は操作時における断面を示す模式断面図である。なお、
図10は
図2に記載のY1−Y2方向とZ1−Z2方向とを含む平面でプッシュスイッチ100を切断した断面を模式的に示したものであり、説明を容易にするために、実際の構造とは異なる部分もある。
【0027】
図10に示すように、可動接点部材1は、ケース2の収容空間2a内に配置されている。このとき、可動接点部材1は、支持部1bが周辺固定接点部3bに接触するとともに、ドーム部1aが上方(Z1方向)へ突出するように配置されている。また、覆い部材4は、ケース2の開口2b(
図5参照)を覆うようにケース2の上面に取り付けられる。なお、覆い部材4は粘着部4d(
図9参照)がケース2の上面に対向する向きで配置され、粘着部4dの粘着力によりケース2の上面に保持される。また、突起部4bおよび押子部材4cはドーム部1aの頭頂部の上方に配置されている。このようにしてプッシュスイッチ100は形成される。
【0028】
次にプッシュスイッチ100の動作について
図10を用いて説明する。
【0029】
プッシュスイッチ100は、入力操作を受けていない初期状態において、
図10(a)に示すように、中央固定接点部3aと周辺固定接点部3bとは電気的な導通が無く、外部接続部3d同士も電気的な接続はない状態である。
【0030】
プッシュスイッチ100は、
図10(b)に示すように、覆い部材4の突起部4bを下方(Z2方向)へ押圧操作されると、押子部材4cを介して可動接点部材1のドーム部1aが下方へ押圧される。押圧された可動接点部材1は下方へ撓み、中央固定接点部3aに接触する。可動接点部材1が中央固定接点部3aに接触することで、中央固定接点部3aと周辺固定接点部3bとは、可動接点部材1を介して電気的に接続される。また、突起部4bへの押圧操作を解除すると、可動接点部材1は初期状態に戻り、中央固定接点部3aと周辺固定接点部3bとは、電気的な導通が無い状態となる。このように、中央固定接点部3aと周辺固定接点部3bとの導通状態、すなわち外部接続部3d同士の電気的な接続状態を切り替えることで、プッシュスイッチ100はスイッチとして機能する。
【0031】
以下、第1実施形態としたことによる効果について説明する。なお、一部の説明は、
図11を用いて説明を行う。
図11は
図8に記載のF部を拡大して示した拡大図である。
【0032】
第1実施形態のプッシュスイッチ100は、可動接点部材1と、可動接点部材1を収容可能で一方が開口2bとなった収容空間2aを備えるとともに、収容空間2aの内部に可動接点部材1と接触可能な固定接点部3がインサート成形により一体に形成されたケース2と、開口2bを覆うようにケース2の上面に取り付けられる覆い部材4と、を有するプッシュスイッチにおいて、ケース2は下面に凹状に形成された滞留部2cを有し、滞留部2cは下方に臨んで形成された底面部2dを有し、底面部2dは下方へ突出する突出部2eを有するとともに、滞留部2cの内側壁に沿った位置でかつ、突出部2eより高い位置に固定接点部3の一部が露出する押え穴2fを有し、突出部2eと押え穴2fとの間は、突出部2eから押え穴2fに向かって傾斜する傾斜部2gとなっており、滞留部2cに充填され硬化した封止樹脂5により押え穴2fが封止されている、ことを特徴とする。
【0033】
これにより、プッシュスイッチが小型になり、滞留部2c自体も小型化した場合に、滞留部2cの底面部2dと内側壁との連結部分に液体が付着すると、付着した液体は毛細管現象により連結部分に沿って誘導されやすくなる。なお、滞留部2cの底面部2dと内側壁との連結部分とは、例えば、
図11に示すG部のような箇所であり、G部のように角ばった連結部分が連続して形成されている。よって、滞留部2cの外形壁に沿った位置に押え穴2fを配することで、プッシュスイッチが小型になった場合に、封止樹脂5が毛細管現象により、G部のような連結部分に沿って押え穴2fの近傍に誘導されやすくなる。なお、連結部はG部のように角ばっているほうが、丸まっている場合に比べてより毛細管現象の効果を得やすい。また、滞留部2cを上方に向けた状態で封止樹脂5を滞留部2cに充填することで、封止樹脂5は底面部2dの傾斜部2gに沿って押え穴2fに向って流動し、封止樹脂5が押え穴2fを塞ぐように滞留していく。したがって、少量の封止樹脂5を効率的に押え穴2fに誘導し、固定接点部3が露出しないように確実に封止することができるため、滞留部2cからの封止樹脂5のはみ出しは発生しにくくなる。したがって、封止樹脂5がはみ出すことなく押え穴2fを封止することができるプッシュスイッチを提供することができる。
【0034】
また、第1実施形態のプッシュスイッチ100は、固定接点部3は収容空間2aの内部底面2hに設けられ、内部底面2hの中央部に配置された中央固定接点部3aを有し、滞留部2cは、ケース2の下面において、中央固定接点部3aに対応する位置を囲うように形成されている、ことを特徴とする。
【0035】
これにより、中央固定接点部3aの下方を避けて滞留部2cを設けることで、中央固定接点部3aの下方に、中央固定接点部3aが押圧荷重を受けたとしても破損しない強度を得るに十分な厚さの成形樹脂を確保することができる。
【0036】
また、第1実施形態のプッシュスイッチ100は、滞留部2cは2つに分割されており、対称形状となっている、ことを特徴とする。
【0037】
これにより、滞留部2cを2つに分割することで封止樹脂5の誘導距離および充填時間を短くするとともに、2つに分割された滞留部2cを対称形状とすることで封止樹脂5の硬化時間のばらつきを減らすことができる。
【0038】
また、第1実施形態のプッシュスイッチ100は、封止樹脂5は、熱硬化型及び紫外線硬化型からなる複合型の樹脂であり、ケース2の成形樹脂と固定接点部3との隙間に封止樹脂5が入り込んだ状態で硬化されている、ことを特徴とする。
【0039】
これにより、封止樹脂5を、熱硬化型及び紫外線硬化型からなる複合型の樹脂にすることで、紫外線を照射できない隙間に入りこんだ封止樹脂5を、熱により硬化させることができ、より密閉性を向上させることができる。
【0040】
また、第1実施形態のプッシュスイッチ100は、固定接点部3の下面側には、濡れ性を低下させる低濡れ性層3cが形成されている、ことを特徴とする。
【0041】
これにより、固定接点部3の下面側に低濡れ性層3cを設けることで、封止樹脂5は成形樹脂と固定接点部3との隙間に入り込んできても、収容空間2aに入り込むまでに時間が掛り、収容空間2aに入り込む前に硬化しやすくなる。したがって、固定接点部3材の、収容空間2aに露出した部分に封止樹脂5が付着することによる導通不良が発生しにくくなる。
【0042】
また、第1実施形態のプッシュスイッチ100は、ケース2の下面には、滞留部2cが設けられた領域である封止部2kと、封止部2kよりも高い位置となるように段差形状に形成された段差部2mと、が形成され、段差部2mは、ケース2の下面における外縁部の少なくとも一部に形成され、固定接点部3の外部接続部3dは、段差部2mから側方へ突出するように配置されている、ことを特徴とする。
【0043】
これにより、段差部2mに外部接続部3dを配置することで、外部接続部3dと半田受けされる個所のランドとが、フィレットが確実に形成された半田付けを行いやすくなる。また、滞留部2cを段差部2mよりも低い位置となる封止部2kに設けたことで、封止のためだけにケース2の高さを高くする必要がなく、プッシュスイッチの低背化に寄与することができる。
【0044】
以上のように、本発明の実施形態に係るプッシュスイッチを具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0045】
第1実施形態において、可動接点部材1は上方から平面視したときに長方形状に形成されているが、例えば、円形や十字形状など異なる形状であってもよい。
【0046】
第1実施形態において、滞留部2cは点対称の形状となるように2分割されているが、線対称の形状となるように2分割されていてもよい。また、同じ形状でかつ同じ大きさに形成された滞留部2cが3箇所以上に設けられている構成であってもよい。また、滞留部2cの形状は、固定接点部3の形状に合わせて適宜変更してもよい。
【0047】
第1実施形態において、プッシュスイッチ100は、覆い部材4の突起部4bを押圧することで、シート部4aと可動接点部材1との間にある押子部材4cを介して可動接点部材1を押圧する構成としている。例えば、覆い部材4をシート部4aのみで構成するとともに、操作者から操作を受ける操作部材を設け、操作部材が覆い部材4の上部に配置された構造であってもよい。このような構造の場合は、覆い部材4を介して操作部材で可動接点部材1を押圧することになる。