特許第6192118号(P6192118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6192118-原位置不飽和透水試験装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192118
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】原位置不飽和透水試験装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/00 20060101AFI20170828BHJP
   G01N 33/24 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   E02D1/00
   G01N33/24 C
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-174702(P2014-174702)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-50388(P2016-50388A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2016年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107205
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(74)【代理人】
【識別番号】100112818
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 昭久
(74)【代理人】
【識別番号】100155206
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 源一
(72)【発明者】
【氏名】森田 修二
(72)【発明者】
【氏名】今泉 和俊
(72)【発明者】
【氏名】三澤 孝史
【審査官】 袴田 知弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−352042(JP,A)
【文献】 実開昭64−034519(JP,U)
【文献】 特開平06−264431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00
G01N 33/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象となる不飽和領域の地盤の地表面に設置して用いられ、該地盤の浸透特性を把握するための土壌の水分含水率に関するデータを取得する原位置不飽和透水試験装置であって、
敷設密着材を介在させて前記地表面に外周部分を水密に密着させた状態で設置される、下面が開口面となった凸形状の密閉注水蓋と、該密閉注水蓋の中央部分から下方に延設して地中に挿入配置される、複数の水分センサーを備える土中水分計と、前記密閉注水蓋の内部と送り管及び戻り管を介して連通して、前記密閉注水蓋の内部に圧力水を満たした状態で、給水タンクとの間で圧力水を循環させながら圧力水を前記密閉注水蓋の内部に供給する、給水ポンプとを含んで構成される原位置不飽和透水試験装置。
【請求項2】
前記密閉注水蓋は、前記開口面の開口縁部から外側に張り出して設けられた、複数のアンカー孔が形成されたフランジプレートを一体として備えており、敷設された前記敷設密着材の上面に該フランジプレートを載置して、前記敷設密着材及び前記地盤に向けてアンカー部材を打ち込むことにより、前記密閉注水蓋が、外周部分を前記地表面に水密に密着させた状態で設置される請求項1記載の原位置不飽和透水試験装置。
【請求項3】
前記土中水分計は、前記密閉注水蓋の中央部分を水密な状態で貫通して地中に挿入される請求項1又は2記載の原位置不飽和透水試験装置。
【請求項4】
前記密閉注水蓋の前記送り管及び/又は前記戻り管との接続部分に、流量調整バルブが設けられており、該流量調整バルブによって圧力水の流量を調整することで、前記密閉注水蓋の内部に満たされた圧力水の圧力を調整できるようになっている請求項1〜3のいずれか1項記載の原位置不飽和透水試験装置。
【請求項5】
前記密閉注水蓋に、内部に満たされた圧力水の圧力を計測する圧力計が設けられている請求項1〜4のいずれか1項記載の原位置不飽和透水試験装置。
【請求項6】
前記密閉注水蓋は、水抜き管と接続している請求項1〜5のいずれか1項記載の原位置不飽和透水試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原位置不飽和透水試験装置に関し、特に測定対象となる不飽和領域の地盤の地表面に設置して用いられ、該地盤の浸透特性を把握するための土壌の水分含水率に関するデータを取得する原位置不飽和透水試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
東日本大震災では、自然由来の重金属類を含んだ津波堆積物による土壌汚染が報告されている。今後は、降雨などにより津波堆積物から流出する重金属物質が、地下水汚染を引き起こすことが予想される。また、震災地で発生したガレキの集積場から、人工物の重金属が拡散することも考えられる。このような地下水汚染への対策を考える場合には、地下水の流れの他に、地表面から地中の地下水位に至るまでの、間隙水によって土粒子間の空隙が満たされていない状態の、不飽和領域の地盤における浸透流の流れを把握する必要がある。
【0003】
また、不飽和領域の地盤における浸透流の流れを把握するための装置や方法として、種々の原位置透水試験装置や、原位置透水試験方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。また、不飽和領域の地盤の浸透特性を把握するための試験として、地盤内に鉛直一次元の非定常浸透流を発生させ、浸透領域内の圧力水頭分布と水分量分布(含水率分布)の経時変化をそれぞれ測定した結果から、対象領域の不飽和透水係数と水分特性曲線とを計測するインスタンティニアスプロファイリング法(以下、IP法とする)や、さらに、好ましくは地盤の深さ方向に体積含水率プロファイリングを多点でリアルタイムに計測することが可能な、市販の挿入型の土壌水分計を使用して計測された、地中の水分含水率の経時変化の計測データから、例えば VanGenuchten モデル(以下VGモデルとする)のモデル式に基づいて算定された不飽和透水係数によって、不飽和領域の地盤の浸透特性を解析する方法も提案されている(例えば、非特許文献1参照))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−352042号公報
【特許文献2】特開2007−198027号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】土と基礎、54−5(580)、「不飽和地盤における原位置透水試験、水分分布計による不飽和透水係数の測定法」、2006年5月 地盤工学会 発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の不飽和領域の地盤における浸透流の流れを把握するための試験装置や方法によれば、いずれも、不飽和領域の地盤に浸透させる水を貯留する、筒体や注入管や浸透管における水位を一定にしたり、或いは圧搾空気を送り込んで貯留された水の水面を加圧したりすることで、静水圧や圧搾空気の圧力によって、貯留された水を不飽和領域の地盤に浸透水として浸透させるようになっている。
【0007】
このため、従来の試験装置や方法によれば、地表面から数10cm程度の深さまで水を浸透させることは容易であるが、例えば1m程度の深さまで水を浸透させて不飽和領域の地盤の浸透特性を把握したい場合や、対象となる地盤が透水性の低い地盤である場合には、所定の深さまで水を浸透させるのに時間がかかり過ぎて、効率良く試験を行うことが困難になる。また、浸透させる水の圧力を変化させて試験をしたい場合や、例えば0.01MPa〜0.1MPa程度の高い圧力で水を浸透させたい場合には、その調整が難しく、また大掛かりな設備を要することになる。
【0008】
本発明は、簡易な構成によって、不飽和領域の地盤の所定の深さまでよりスムーズに水を浸透させて、不飽和領域の地盤の浸透特性を把握するためのデータを効率良く得ることができると共に、浸透させる水の圧力を容易に調整することを可能にし、且つ高い圧力で水を浸透させることのできる原位置不飽和透水試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、測定対象となる不飽和領域の地盤の地表面に設置して用いられ、該地盤の浸透特性を把握するための土壌の水分含水率に関するデータを取得する原位置不飽和透水試験装置であって、敷設密着材を介在させて前記地表面に外周部分を水密に密着させた状態で設置される、下面が開口面となった凸形状の密閉注水蓋と、該密閉注水蓋の中央部分から下方に延設して地中に挿入配置される、複数の水分センサーを備える土中水分計と、前記密閉注水蓋の内部と送り管及び戻り管を介して連通して、前記密閉注水蓋の内部に圧力水を満たした状態で、給水タンクとの間で圧力水を循環させながら圧力水を前記密閉注水蓋の内部に供給する、給水ポンプとを含んで構成される原位置不飽和透水試験装置を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
そして、本発明の原位置不飽和透水試験装置は、前記密閉注水蓋が、前記開口面の開口縁部から外側に張り出して設けられた、複数のアンカー孔が形成されたフランジプレートを一体として備えており、敷設された前記敷設密着材の上面に該フランジプレートを載置して、前記敷設密着材及び前記地盤に向けてアンカー部材を打ち込むことにより、前記密閉注水蓋が、外周部分を前記地表面に水密に密着させた状態で設置されるようになっていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の原位置不飽和透水試験装置は、前記土中水分計が、前記密閉注水蓋の中央部分を水密な状態で貫通して地中に挿入されることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の原位置不飽和透水試験装置は、前記密閉注水蓋の前記送り管及び/又は前記戻り管との接続部分に、流量調整バルブが設けられており、該流量調整バルブによって圧力水の流量を調整することで、前記密閉注水蓋の内部に満たされた圧力水の圧力を調整できるようになっていることが好ましい。
【0013】
さらにまた、本発明の原位置不飽和透水試験装置は、前記密閉注水蓋に、内部に満たされた圧力水の圧力を計測する圧力計が設けられていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の原位置不飽和透水試験装置は、前記密閉注水蓋が、水抜き管と接続していることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の原位置不飽和透水試験装置によれば、簡易な構成によって、不飽和領域の地盤の所定の深さまでよりスムーズに水を浸透させて、不飽和領域の地盤の浸透特性を把握するためのデータを効率良く得ることができると共に、浸透させる水の圧力を容易に調整することを可能にし、且つ高い圧力で水を浸透させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る原位置不飽和透水試験装置の構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示す本発明の好ましい一実施形態に係る原位置不飽和透水試験装置10は、不飽和領域の地盤の浸透特性を把握するための試験方法として、例えばVGモデルによるモデル式を用いて不飽和透水係数を算定する試験方法において、測定対象となる不飽和領域の地盤30の地表面30aから、浸透水を地中にスムーズに浸透させて、好ましくは地盤30の深さ方向の体積含水率のプロファイリングを、容易に得られるようにするための装置として採用されたものである。また、本実施形態の原位置不飽和透水試験装置10は、簡易な構成にもかかわらず、不飽和領域の地盤30に浸透水を、圧力を変化させて浸透させたり、0.01MPa〜0.1MPa程度の高い圧力で浸透させたりすることを可能にして、例えば1m程度の深さまで、例えばVGモデルによって、さらに効率良く測定対象となる不飽和領域の地盤30の浸透特性を把握できるようにする機能を備えている。
【0018】
そして、本実施形態の原位置不飽和透水試験装置10は、測定対象となる不飽和領域の地盤30の地表面30aに設置して用いられ、該地盤30の浸透特性を把握するための土壌の水分含水率(体積含水率)に関するデータを取得する試験装置であって、図1に示すように、敷設密着材17を介在させて地表面30aに外周部分を水密に密着させた状態で設置される、下面が開口面となった凸形状の密閉注水蓋11と、この密閉注水蓋11の中央部分から下方に延設して地中に挿入配置される、複数の水分センサー12aを備える土中水分計12と、密閉注水蓋11の内部と送り管13及び戻り管14を介して連通して、密閉注水蓋11の内部に圧力水を満たした状態で、給水タンク16との間で圧力水を循環させながら圧力水を密閉注水蓋11の内部に供給する、給水ポンプ15とを含んで構成される。
【0019】
また、本実施形態の原位置不飽和透水試験装置10は、密閉注水蓋11が、下面の開口面の開口縁部から外側に張り出して設けられた、複数のアンカー孔11bが形成されたフランジプレート11aを一体として備えており、敷設された敷設密着材17の上面にフランジプレート11aを載置して、敷設密着材17及び地盤30に向けてアンカー部材19を打ち込むことにより、密閉注水蓋11が、外周部分のフランジプレート11aを地表面30aに水密に密着させた状態で設置されている。
【0020】
さらに、本実施形態の原位置不飽和透水試験装置10は、密閉注水蓋11の送り管13及び/又は戻り管14との接続部分(本実施形態では、戻り管14との接続部分)に、流量調整バルブ20が設けられており、この流量調整バルブ20によって圧力水の流量を調整することで、密閉注水蓋11の内部に満たされた圧力水の圧力を調整できるようになっている。
【0021】
本実施形態では、原位置不飽和透水試験装置10を構成する密閉注水蓋11は、例えば5mm程度の厚さの金属プレートに、折曲げ加工や溶接加工等を施すことによって容易に形成することができる。密閉注水蓋11は、例えば縦横300mm程度の大きさの略正方形の上面プレート11cの周縁に沿って、例えば30mm程度の高さの帯板形状の周壁プレート11dを接合することにより形成された、下面が開口面となった扁平な凸形状の蓋本体11eと、蓋本体11eの周壁プレート11dの下端縁部から全周に亘って外側に張り出して一体として接合された、例えば100mm程度の幅のフランジプレート11aとからなる。これらによって、密閉注水蓋11は、全体として、例えば縦横500mm程度の大きさの略正方形の平面形状を備えると共に、例えば30mm程度の高さを有するように形成される。
【0022】
また、本実施形態では、密閉注水蓋11のフランジプレート11aに、例えばφ7mm程度の大きさの複数のアンカー孔11bが貫通形成されている。アンカー孔11bは、好ましくはフランジプレート11aの全面に、略均等に分散配置された状態で、多数形成されている。これらのアンカー孔11bの数や配置位置等は、密閉注水蓋11に充填される圧力水の圧力や、アンカー部材19の長さや、地盤30の土質等を鑑みて、適宜設計することができる。
【0023】
本実施形態では、密閉注水蓋11の上面プレート11cに、土中水分計12を水密な状態で貫通させるためのシール機能を有する、公知の貫通金具21が取り付けられている。また、送り管13及び戻り管14や、後述する水抜き管24を密閉注水蓋11の内部と接続させるための、公知のジョイント金具22a,22b,22cが、公知の方法によって取り付けられている。
【0024】
貫通金具21は、例えば土中水分計12のガイドチューブ12cの外径と同様の内径を有し、内部にシール機構を備える円筒スリーブ部21aと、円筒スリーブ部21aの下端部から円環状に外側に張り出して設けられた、接合フランジ部21bとからなる。貫通金具21は、接合フランジ部21bを、上面プレート11cの中央部分に貫通形成された、内径が例えば27mm程度の円形のロッド挿通孔11fの開口周縁部に一体として接合して、円筒スリーブ部21aを上面プレート11bから立設させた状態で、密閉注水蓋11に取り付けられている。測定対象となる地盤30の地表面30aに密閉注水蓋11を設置する際に、これに先立って地中に土壌水分計12のガイドチューブ12cを埋設することで、地表面30aから立設するガイドチューブ12cの上端部分が、円筒スリーブ部21aに下方から挿通される。土壌水分計12は、ガイドチューブ12cに挿入されることで、密閉注水蓋11の中央部分を水密な状態で貫通して地中に挿入されると共に、その上端部分を、上面プレート11cから上方に突出させて設置されることになる。
【0025】
本実施形態では、例えば送り管13を密閉注水蓋11の内部と接続させるジョイント金具22aに、公知の小型圧力計23が取り付けられている。小型圧力計23によって、密閉注水蓋11の内部に満たされた圧力水の圧力を計測して、圧力水の圧力を容易に管理できるようになっている。
【0026】
また、好ましくは戻り管14を密閉注水蓋11の内部と接続させるジョイント金具22bに、流量調整バルブ20が取り付けられている。流量調整バルブ20は、圧力水の流路の断面積を調整して、当該流量調整バルブ20を通過する圧力水の流量を制御することが可能な、公知の機構を備えるバルブ部材を用いることができる。流量調整バルブ20によって、密閉注水蓋11の内部から戻り管14を介して給水タンク16に戻される圧力水の流量を制御することで、給水ポンプ15から送り管13を介して圧送されて、密閉注水蓋11の内部に満たされる圧力水の圧力を、例えば0.001MPa〜0.1MPa程度の範囲で容易に調整できるようになっている。
【0027】
なお、本実施形態では、送り管13を接続させるジョイント金具22aや、水抜き管23を接続させるジョイント金具22cにも、流量調整バルブや開閉バルブを適宜設けることができる。また、本実施形態では、ジョイント金具22cを介して密閉注水蓋11の内部と接続させて、水抜き管24が設けられている。水抜き管24は、補助スタンド25に支持させて、その先端を、地表面30aよりも相当程度高い位置に配置して設けられている。水抜き管24は、バルブ22cを開放することによって、密閉注水蓋11の内部の圧力水を大気に開放することで、安全弁として機能して、想定外に圧力水の圧力が高くなった場合に、密閉注水蓋11の内部を緊急的に減圧することができる。
【0028】
本実施形態では、密閉注水蓋11の内部を給水タンク16や給水ポンプ15と連通させて、これらの間で圧力水を循環させる送り管13及び戻り管14や、水抜き管24は、例えばφ10mm程度の太さの、可撓性を有する公知の各種の耐圧ホースを用いることができる。給水ポンプ15は、例えば最大0.2MPa程度の圧力の圧力水を供給することが可能な、公知の各種の給水ポンプを用いることができる。給水タンク16は、例えばポリエチレン製のタンク等の、例えば20L程度の容量を備える、公知の簡易な給水タンクを用いることができる。給水タンクには、水を適宜補給することができるので、水分センサー12aの深さまで水を浸透させるのに必要な水量を、容易に給水することができる。戻り管14の給水タンク16との接続部分には、密閉注水蓋11から戻される圧力水に含まれる土粒子等を除去するための、フィルター26が設けられている。
【0029】
本実施形態では、土壌水分計12として、地盤の深さ方向に体積含水率プロファイリングを多点でリアルタイムに計測することが可能な、市販されている公知の各種の挿入型の土壌水分計を使用することができる。より具体的には、例えば Delta-T社製の、「プロファイルプロープPR2/6」を好ましく用いることができる。「プロファイルプロープPR2/6」を用いることで、地表面から10cm、20cm、30cm、40cm、60cm、100cmの深度の体積含水率を測定することが可能になる。
【0030】
また、本実施形態では、土壌水分計12は、例えば1350mm程度の長さを有する、φ25mm程度の太さのポリカーボネート製のロッド部12bの下部に、複数の水分センサー12aを、所定の間隔をおいて取り付けることによって形成されている。土壌水分計12は、測定対象となる地盤30の地表面30aに、密閉注水蓋11を設置するのに先立って、専用のオーガーを用いて、例えばφ25mm程度の内径の測定孔を地盤30の所定の深さまで鉛直方向に形成した後に、複数の水分センサー12aが取り付けられたロッド部12bの下部を、ガイドチューブ12cで保護した状態で、形成した測定孔に挿入することで、ロッド部12bの上端部分を地表面30aから立設させた状態で、地盤30に設置することができる。しかる後に、密閉注水蓋11の設置作業が行われる。
【0031】
測定対象となる地盤30の地表面30aに、密閉注水蓋11を設置するには、まず、設置された土壌水分計12の、地表面30aから立設するロッド部12bやガイドチューブ12cの上端部分を中心として、これの周囲の地表面30aを整地すると共に、ロッド部12bやガイドチューブ12cと離間した、これの周囲の密閉注水蓋11のフランジプレート11aが配設される位置に、フランジプレート11aと同様の幅で、敷設密着材17を、略正方形の環状に連続させて敷設する。ここで、敷設密着材17としては、ベントナイト、水膨張性材等の、軟らかい状態から固化することで、地表面30aの凹凸やフランジプレート11aの下面の凹凸を吸収して、当該敷設密着材17を介してこれらを互いに密着させることが可能な、公知の種々の敷設密着材17を用いることができる。また、敷設密着材17は、地表面30aやフランジプレート11aの下面との間に遮水シートを介在させた状態で敷設されることにより、設置された密閉注水蓋11の周囲の水密性を、強固に保持することが可能になる。さらに、敷設密着材17の直下の地表部分の地盤30に、好ましくは公知の地表面固化剤を浸透させることで固化層30bを形成することにより、密閉注水蓋11の内部の圧力水の圧力を上げた際に、地表面30bに水みちが形成されるのを、より効果的防止することが可能になる。地表面固化剤として、例えば不二サッシ社製の、「フライネットR」を好ましく用いることができる。
【0032】
ロッド部12bの周囲の密閉注水蓋11のフランジプレート11aが配設される位置に、敷設密着材17を敷設したら、敷設密着材17がまだ固まらないうちに、上述のように、密閉注水蓋11のロッド挿通孔11fや、貫通金具21の円筒スリーブ部21aに、地表面30aから立設するロッド部12bの上端部分を挿通しながら、フランジプレート11aを敷設された敷設密着材17の上面に載置して、密閉注水蓋11を、測定対象となる地盤30の地表面30aに設置する。しかる後に、フランジプレート11aに形成された複数のアンカー孔11bを介して、敷設密着材17及び地盤30に向けて複数のアンカー部材19を打ち込む。そして、密閉注水蓋11の内部に水を満たした段階で、水が敷設された敷設密着材17に滲み出るので、敷設密着材17が固化することで、密閉注水蓋11を、外周部分を地表面30aに水密に密着させた状態で設置することが可能になる。
【0033】
測定対象となる地盤30の地表面30aに密閉注水蓋11を設置したら、設置された密閉注水蓋11に、送り管13及び戻り管14や水抜き管24を接続する共に、密閉注水蓋11の内部と、給水ポンプ15や給水タンク16との間で圧力水を循環させて、密閉注水蓋11の内部に圧力水を満たすことで、満たされた圧力水を、測定対象となる地盤30の地中に、浸透水として浸透させることが可能な状態となる。また、土壌水分計12、小型圧力計23、給水ポンプ15等を、配線類を介して、データロガーやパーソナルコンピュータを備えるデータ処理部(図示せず)と接続することで、計測された各種の測定データを処理することが可能な状態となる。
【0034】
そして、上述の構成を備える本実施形態の原位置不飽和透水試験装置10によれば、簡易な構成によって、不飽和領域の地盤30の所定の深さまでよりスムーズに水を浸透させて、不飽和領域の地盤の30の浸透特性を把握するためのデータを効率良く得ることが可能になると共に、浸透させる水の圧力を容易に調整することが可能になり、且つ高い圧力で水を浸透させることが可能になる。
【0035】
すなわち、本実施形態の原位置不飽和透水試験装置10は、敷設密着材17を介在させて地表面30aに外周部分を水密に密着させた状態で設置される、下面が開口面となった凸形状の密閉注水蓋11と、この密閉注水蓋11の中央部分から下方に延設して地中に挿入配置される、複数の水分センサー12aを備える土壌水分計12と、密閉注水蓋11の内部と送り管13及び戻り管14を介して連通して、密閉注水蓋11の内部に圧力水を満たした状態で、給水タンク16との間で圧力水を循環させながら圧力水を密閉注水蓋11の内部に供給する、給水ポンプ15とを含んで構成されている。
【0036】
したがって、本実施形態の原位置不飽和透水試験装置10によれば、コンパクトな形状の密閉注水蓋11や、汎用されている給水タンク16や給水ポンプ15を用いて、簡易に形成できると共に、上述のような簡易な施工方法によって、測定対象となる地盤30の地表面30aに、容易に設置して用いることが可能になる。また、密閉注水蓋11の内部に圧力水を満たした状態で、給水タンク16との間で圧力水を循環させながら圧力水を密閉注水蓋11の内部に供給して、満たされた圧力水を浸透水として地盤に浸透させるようになっているので、例えば給水ポンプ15によって圧力水の供給圧力を調整したり、流量調整バルブ20によって循環する圧力水の流量を調整することにより、浸透させる水の圧力を容易に調整することが可能になる。さらに、例えば給水ポンプ15による圧力水の供給圧力を大きくしたり、流量調整バルブ20を絞ったりすることによって、密閉注水蓋11の内部に満たされる圧力水の圧力を、例えば0.01MPa〜0.1MPa程度の高い圧力に、容易に保持することが可能になる。
【0037】
これらによって、本実施形態によれば、例えば1m程度の深さまで水を浸透させて不飽和領域の地盤30の浸透特性を把握したい場合や、対象となる地盤30が透水性の低い地盤である場合でも、簡易な構成によって、圧力水を高い圧力に保持することで、浸透水を不飽和領域の地盤30の所定の深さまでよりスムーズに浸透させて、浸透特性を把握するためのデータを、効率良く得ることが可能になる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、密閉注水蓋は、略正方形の平面形状を備えている必要は必ずしも無く、略矩形や略円形等の、その他の種々の平面形状備えていても良い。密閉注水蓋は、フランジプレートを介して地表面に水密に密着している必要は必ずしも無く、例えば密閉注水蓋の外周部分を地中に埋め込む方法等の、その他の手段によって、敷設密着材を介在させて地表面に密閉注水蓋の外周部分を水密に密着させることもできる。
【符号の説明】
【0039】
10 原位置不飽和透水試験装置
11 密閉注水蓋
11a フランジプレート
11b アンカー孔
11c 上面プレート
11d 周壁プレート
11e 蓋本体
11f ロッド挿通孔
12 土壌水分計
12a 水分センサー
12b ロッド部
12c ガイドチューブ
13 送り管
14 戻り管
15 給水ポンプ
16 給水タンク
17 敷設密着材
19 アンカー部材
20 流量調整バルブ
21 貫通金具
21a 円筒スリーブ部
21b 接合フランジ部
22a,22b,22c ジャイント金具
23 小型圧力計
24 水抜き管
25 補助スタンド
26 フィルター
30 測定対象となる不飽和領域の地盤
30a 地表面
30b 固化層
図1