(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳述する。なお、以下の実施形態は、本発明を具現化した一例であって、本発明の技術範囲を限定する性格のものではない。
【0013】
<測定装置の構造>
図1A及び
図1Bは、本願記載の測定装置の外観を示す概略斜視図である。
図1A及び
図1Bは、本発明に係る測定装置1を示しており、測定装置1は、例えば、ベアリング用の軸受け等の回転体状の形状をなす円筒体が被測定物W(ワーク)として載置された場合に、載置された被測定物Wの三次元形状を測定する。なお、
図1Aは、測定装置1に被測定物Wが載置されていない状態を示しており、
図1Bは、測定を行うべく測定装置1に被測定物Wが載置された状態を示している。
【0014】
図1A及び
図1Bに例示する測定装置1は、上部の測定装置本体部1aと、下部のラック部1bとを一体化した構成となっている。なお、以降の説明において、測定装置1を使用する作業者が相対する方向を前面とし、必要に応じて、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、そして、上下方向をZ軸方向として示すものとする。測定装置本体部1aの外形を形成する筐体は直方体状をなし、前面が上方から下方にかけて手前方向へ突出するように傾斜している。従って、測定装置本体部1aの側面は略台形状となっている。
【0015】
測定装置1内部には、被測定物Wを測定する空間として測定室10が設けられており、測定室10に対する被測定物Wの出し入れ等の作業用に、測定装置1の傾斜した前面には開口部11が開設されている。測定装置1の傾斜した前面に開設された開口部11は、前面の下部2/3程度が開口しており、左右は、両端の縁部を残し、4/5程度が開口している。開口部11は、測定装置1内部への被測定物Wの出し入れ等の作業に用いられる。測定装置1の前面において、開口部11の上方には、液晶タッチパネルを用いた表示操作部12が配設されており、表示操作部12により情報の表示及び操作の受け付けを行う。また、開口部11の両側の縁部には、複数の発光素子及び受光素子を用いてライトカーテン(図示せず)が形成されており、ライトカーテンにより、作業者の手等の遮光物の挿入を検知する。
【0016】
ラック部1bは、前面及び底面が開放された直方体状をなし、測定装置本体部1aを作業しやすい高さに固定する台座として用いられる。ラック部1bには、後述する制御装置18(
図5参照)が収納されており、制御装置18は、測定装置1の測定に関する機能を制御する。また、ラック部1bは、4本の脚部17,17,…により支持されており、各脚部17,17,…には昇降可能なキャスターが設けられている。そして、キャスターを降下させることにより、測定装置1を容易に移動させることが可能となる。
【0017】
図2A及び
図2Bは、本願記載の測定装置1の一部を拡大して示す概略斜視図である。
図2A及び
図2Bは、開口部11からの視点で測定装置1内部の測定室10を拡大して示している。なお、
図2Aは、被測定物Wが載置されていない状態を示しており、
図2Bは、被測定物Wが載置されている状態を示している。
【0018】
測定装置1内部の測定室10には、被測定物Wを載置する載置台13が配設されており、載置台13には二の当接部材14,14が離隔配置されている。また、載置台13の上方(Z軸方向)には被測定物Wを三次元測定する測定機構(測定部)15が配設されている。さらに、載置台13の後方(X軸方向)には、被測定物Wの有無を検出する検出照射線を照射する照射部16が配設されている。
【0019】
載置台13は、直方体状をなし、各辺は面取りがなされ、上面の載置面13aが水平となるように配置されている。また、載置台13は、縦、横、及び高さ方向が、それぞれX軸、Y軸、及びZ軸と平行になるように配置されている。載置台13の材質としては、御影石等の耐候性が高い材料を用いることが好ましい。
【0020】
載置台13の載置面13aには、直方体状をなす略同一形状の二の当接部材14,14が間隔を開けて「ハ」の字状に、より具体的には、長辺方向がXY平面と平行となり、奥側の間隔が狭く、手前側が広くなるように離隔して配置されている。二の当接部材14,14の奥側の間隔は、被測定物Wの幅の外径より狭く、手前側の間隔は被測定物Wの幅の外径より広くなるように配置されている。また、略同一形状である二の当接部材14,14は、XZ面に平行な面として定義される対称面に対し、面対称となるように配置されている。面対称となるように配置された二の当接部材14,14は、それぞれの長辺方向へ、例えば、被測定物Wに当接する側の上辺を延長することにより、対称面上で直交するように配置されている。ただし、必ずしも直角で交差するようにする必要は無く、延長線が交差する角度は鈍角であっても、鋭角であっても良い。そして、被測定物Wを、手前側から二の当接部材14,14の双方に当接させるようにして載置面13a上に載置することにより、被測定物Wを測定するための位置決めが可能となる。被測定物Wは、各当接部材14,14の当接部(図中交差した斜線にて表記)14a,14a、即ち、被測定物Wに相対する側の側面、上辺及び下辺のうち少なくとも一つに当接することにより、位置決めがなされる。位置決めされる被測定物Wが回転体状の物体である場合、被測定物Wの対称軸は、二の当接部材14,14に対する対称面上に位置するように位置決めがなされる。
【0021】
図2A、
図2B等の図面に例示したそれぞれの当接部材14,14は、直方体状をなすことから、例えば、二の当接部材14,14を「L」字状をなす一の当接部材14として形成する場合と比べて、成形加工が容易であり、材料コストを削減することができ、点検、メンテナンス等の維持費用も削減することができる。従って、当接部材14に関する様々なコストを抑制することが可能となる。
【0022】
測定機構15は、測定照射線(図中点線にて表記)を上方から被測定物Wに対して照射し、照射した測定照射線の反射線を受けることにより、照射位置から被測定物W上の反射位置までの距離を測定し、測定した距離に基づいて被測定物Wの外形を測定する。測定照射線は、赤外線、可視光、紫外線等の光線を使用したレーザー光であり、測定機構15は、当該レーザー光を、帯状の幅を有し、かつ扇状に広がる測定照射線として照射する。なお、測定照射線としては、直進性を有し、被測定物Wで反射する音波、電磁波等の他の照射線を用いることも可能である。
【0023】
照射部16は、測定室10の外側に配置されており、測定室10の奥側の側壁に開設された貫通孔を通って、検出照射線を照射し、照射した検出照射線の反射状況に基づいて、載置された被測定物Wの有無を検出する。また、照射部16は、離隔して配置された二の当接部材14,14の中間を通るように検出照射線を照射する。即ち、照射部16が照射する検出照射線の軌跡は、二の当接部材14,14の対称面上を通る。検出照射線としては、レーザー光等の光線、音波、各種電磁波を使用することが可能である。検出照射線は対称面上を通り、二の当接部材14,14は離隔配置されていることから、検出照射線は、二の当接部材14,14の間隙を通って被測定物Wに照射される。即ち、例示したように配置した当接部材14,14間の間隙は検出照射線の通り道となる。また、照射部16は、二の当接部材14,14の中間を通って検出照射線を照射することにより、被測定物Wの中心を照射する方向となるので、被測定物Wの有無を正確に検出することが可能である。
【0024】
図3は、本願記載の測定装置1が備える測定機構15の内部構造を概略的に示す概略斜視図である。
図3は、測定機構15の外部カバー(図中一点鎖線にて表記)を透過し、内部構造を可視化して示している。測定機構15は、測定照射線の照射及び受光を行うセンサヘッド150と、センサヘッド150をZ軸方向に移動させるZ軸アクチュエータ151と、センサヘッド150をX軸方向に移動させるX軸アクチュエータ152とを備えている。Z軸アクチュエータ151及びX軸アクチュエータ152は、例えば、油圧シリンダ、空圧シリンダ等のシリンダ及びピストンを用いて構成されており、センサヘッド150をZ軸方向及びX軸方向に移動させ、センサヘッド150の位置決めを行う。測定機構15は、位置決めされた位置から測定照射線を連続して照射し、また反射線を受けることにより、反射物、ここでは被測定物Wの反射位置までの距離を連続して測定することができる。なお、センサヘッド150は、測定照射線の軌跡が、二の当接部材14,14に係る対称面上に位置するように測定照射線を照射し、また、Z軸アクチュエータ151及びX軸アクチュエータ152は、センサヘッド150が当該対称面に沿って移動するように動作する。
【0025】
被測定物Wは、二の当接部材14,14に当接して位置決めがなされるため、回転体状の被測定物Wを中心軸が載置面13aに対して垂直をなすように載置した場合には、被測定物Wの中心軸は、面対称である二の当接部材14,14の対称面上に位置することになる。測定機構15は、対称面と載置面13aとの交線に向けて測定照射線を照射し、走査することにより、Y軸方向の位置決めをせずとも、被測定物Wの中心軸を通る部位を測定することが可能である。また、回転体状の被測定物Wは、一般的に回転させながら成形されるため、中心軸から外側へ向かう一方向に対する測定結果に基づいて、全体の形状を推測することが可能である。従って、測定装置1は、Y軸方向の移動手段を用いず、X軸方向の移動手段(X軸アクチュエータ152)だけでも、十分な測定を行うことが可能である。
【0026】
図4は、本願記載の測定装置1の側断面を概略的に示す概略側断面図である。
図4は、測定装置1を、測定装置本体部1aを中心に示したものであり、
図4(b)の概略正面図に示すA−A方向の断面を
図4(a)として示している。測定装置1の照射部16は、検出照射線を水平方向へ向けて照射するのではなく、水平方向から10°程度下方向へ、即ち、載置台13の載置面13aに対して斜交する方向へ向けて検出照射線を照射する。
【0027】
検出照射線を水平方向へ向けて照射した場合、例えば、測定室10内又は開口部11近傍に、作業者の手等の反射体が存在するとき、反射体で検出照射線が反射し、反射体を被測定物Wと誤検出する虞がある。しかしながら、検出照射線を載置面13aに対して斜交する方向へ向けて照射することにより、このような誤検出を防止することが可能となる。
【0028】
<測定装置の制御系統>
次に測定装置1の制御系統について説明する。
図5は、本願記載の測定装置1が備える制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。測定装置1は、前述の表示操作部12、照射部16、制御装置18、センサヘッド150、Z軸アクチュエータ151、X軸アクチュエータ152等の各種構成の他、PLC(Programmable Logic Controller)19、2軸コントローラ154、Z軸ドライバ155、X軸ドライバ156等の様々な構成を備えている。
【0029】
制御装置18は、CPUを備えたコンピュータ等の装置を用いて構成され、PLC19及びセンサコントローラ153と連係し、各種機能及び動作の設定、測定にて得られた情報に基づく測定結果の導出、解析等の制御を行う。また、制御装置18には、モニタ、プリンタ等の出力部180、及びハードディスク、フラッシュメモリ等の各種記録媒体181が接続されている。
【0030】
PLC19は、制御装置18と連係し、表示操作部12、照射部16、2軸コントローラ154及びセンサコントローラ153を制御するようにプログラミングされた制御回路である。PLC19は、ユーザインタフェースとなる表示操作部12を介して、情報の表示、操作の受け付けを行う。また、PLC19は、各種制御命令を出力することにより、照射部16による被測定物Wの検出に関する制御、2軸コントローラ154を介したセンサヘッド150の位置決めに関する制御、及びセンサコントローラ153を介したセンサヘッド150による測定の制御を行う。
【0031】
2軸コントローラ154は、PLC19からの制御命令に基づき、Z軸アクチュエータ151の制御プログラムであるZ軸ドライバ155の処理により、Z軸アクチュエータ151の動作を制御し、また、X軸アクチュエータ152の制御プログラムであるX軸ドライバ156の処理により、X軸アクチュエータ152の動作を制御する。
【0032】
センサコントローラ153は、PLC19からの制御命令に基づき、センサヘッド150により被測定物Wを測定し、測定により得られた情報を制御装置18へ出力する。
【0033】
<測定装置の動作>
次に測定装置1の測定に係る動作について説明する。
図6A、
図6B、
図6C及び
図6Dは、本願記載の測定装置1の動作の一例を示す説明図である。
図6A乃至
図6Dは、測定装置1が備える測定機構15について、被測定物Wの外形測定に係る動作を概略断面図にて示している。例えば、軸受け等の回転体状の円筒体を被測定物Wに対し、縁部の面取り状態等の外形を測定する場合、作業者は、二の当接部材14,14に被測定物Wが当接されるように、載置面13aに被測定物Wを載置する。そして、作業者は、表示操作部12を操作して、高さ、内径、外径等の測定項目に関する判断基準となる規格及び公差等の設定値を入力し、測定を開始する操作を行う。
【0034】
測定装置1は、測定に際し、先ず、センサヘッド150が走査する交線方向の走査範囲を決定する予備走査を行う。ここでいう交線方向とは、二の当接部材14,14の対称面と載置台13の載置面13aとの交線方向であり、センサヘッド150は、予備走査として、当接部材14,14に当接した回転体状をなす被測定物Wに対し、中心軸を通るX軸方向へ走査する。測定装置1は、被測定物WのZ軸方向を、設定値として入力された高さに基づいて決定し、X軸方向の走査範囲を、予備走査に基づいて決定する。
【0035】
図6Aは、被測定物Wが載置台13に載置された状態を示しており、センサヘッド150は初期位置に位置する。
図6Bは、予備走査を開始した状態を示しており、被測定物Wの高さの設定値に基づき決定された高さまで、Z軸アクチュエータ151の動作により、センサヘッド150がZ軸に沿って下降している。
図6Cは、X軸アクチュエータ152の動作によりセンサヘッド150がY軸に沿って前進しながら被測定物Wを走査している状況を示している。
図6Cに示す走査により、被測定物Wが載置された位置を判断し、判断結果に基づいてX軸方向の走査範囲を決定する。
図6Dは、予備走査が終了後、センサヘッド150が上昇及び後退し、元の位置に戻った状況を示している。
図6Dに示す状態は、センサヘッド150が上昇しており、被測定物Wの交換をすることができる。そして、決定された走査範囲に基づいて、センサヘッド150は、
図6A〜
図6Dに示した動作を繰り返すことにより、予備走査した被測定物W又は予備走査した被測定物Wと同じ規格の被測定物Wの測定を繰り返し行う。
【0036】
被測定物Wの測定された結果は、高さ、内径、外径等の設定された項目についての数値結果及び規格に対する合否として、表示操作部12に表示される。また、測定された結果を、形状を示す画像として、表示操作部12に表示することも可能である。さらにこれらの結果を出力部180から出力し、また記録媒体に181に記録することも可能である。
【0037】
以上のように本願記載の測定装置1は、被測定物Wの載置位置の位置決めを行うことが可能である。しかも、被測定物Wの成形に関するコストの増大を抑制することが可能である。また、照射部16は、検出照射線を載置面13aに対して斜交する方向へ向けて照射することにより、作業者の手等の反射体の影響を受けることなく、載置状況を判定することが可能である。また、載置台13上で、位置決めされた被測定物Wが回転体状の形状をなす場合、Z軸方向に走査するだけで、全体の形状を推測することが可能である。
【0038】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他の色々な形態で実施することが可能である。そのため、かかる実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形及び変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0039】
例えば、前記実施形態では、同一形状の二の当接部材14,14を面対称に配置する形態を示したが、本発明はこれに限らず、当接部材14,14自体は異なる形状であっても、当接部材14,14において被測定物Wに当接する当接部14a,14aのみが面対称となるように配置されていれば良い等、様々な形態に展開することが可能である。
【0040】
また、前記実施形態では、離隔して配置された二の当接部材14,14の間を通って検出照射線を照射する形態を示したが、本発明はこれに限らず、載置面13aに対して斜交する方向へ向けて照射されるのであれば、当接部材14,14の上方を超えて照射するようにしても良い。即ち、検出照射線は、二の当接部材14,14の間隙側を通って、載置位置側へ、載置面13aに対して斜交する方向へ向けて照射されれば良い。
【0041】
さらに、前記実施形態では、直方体状の当接部材14,14を「ハ」の字状に載置する形態を示したが、例えば、「L」字状の当接部材14を用い、当接部14a,14aのみが「ハ」の字状であっても良く、またその場合、「L」字の屈曲部に貫通孔を開設し、貫通孔を通って、検出照射線を照射するようにしても良い。即ち、検出照射線は、被測定物Wを当接させる二の当接部14a,14aの間隙を通って、載置位置側へ、載置面13aに対して斜交する方向へ向けて照射されれば良い。