(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
オペレータの操作によって荷役作業を行うフォークリフトにおいて、フォークリフトの運転動作状態を検知して、その検知結果に基づいて、急旋回等の所定の不安全動作の発生回数を算出して記憶する管理装置が知られている(特許文献1参照)。この管理装置では、フォークリフトの旋回加速度検知値が所定の閾値以上である急旋回動作などの所定の不安全動作の発生回数のデータが収集される。
【0003】
また、オペレータの操作によって荷役作業を行う別のフォークリフトにおいて、フォークリフトの所定の動作の量を、管理に際して把握の容易な指標となるレベル値として検知する管理装置が知られている(特許文献2参照)。このレベル値は、単位時間ごとの最大レベル値として記憶されるため、管理に有効な重要データを効率よく収集することができる。
【0004】
ところで、オペレータがフォークリフトで荷役作業を行うとき、非常に重要な荷物を取り扱うため、気を遣うことが多くある。どのような荷役作業がオペレータに対してどのような影響を及ぼしているかを管理・解析すれば、オペレータの荷役作業の能力を向上する等、荷役作業に関する様々な課題の解決に利用できることが考えられる。しかし、従来のフォークリフトの管理装置は、荷役作業中のオペレータへの管理・影響を解析できなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、荷役作業中のオペレータへの影響を管理・解析できるフォークリフトの管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係るフォークリフトの管理装置は、
フォークリフトの荷役動作を検知するための荷役動作検知部と、
フォークリフトを操作するオペレータの生体情報を検知するための生体情報検知部と、
時間を取得するための時間取得部と、
フォークリフトを撮像するための撮像部と、
荷役動作検知部、生体情報検知部及び時間取得部からの情報と、撮像部からの動画又は静止画の画像と、を収集するための収集部と、
収集部に収集された情報及び画像に基づいて、所定の時間ごとの生体情報の値と、生体情報と同一時間の荷役動作の種別と、生体情報と同一時間の画像と、を表示するための表示部と、を備える。
【0008】
好ましくは、
さらに、フォークリフトの位置を検知するための位置検知部を備え、
複数の撮像部が、倉庫内の天井又は棚の所定の箇所に設けられ、位置検知部からの情報に基づいて、フォークリフトを撮影できる撮像部を選択して、選択された撮影部がフォークリフトを撮影する。
【0009】
好ましくは、
荷役動作検知部は、
フォークリフトの車両の旋回を検知するための第1検知部と、
フォークリフトのマストの進退を検知するための第2検知部と、
フォークリフトのリフトブラケットの昇降を検知するための第3検知部と、
フォークリフトの荷取り及び荷置きを検知するために第4検知部と、を備える。
【0010】
好ましくは、
表示部は、
生体情報の値と荷役動作の種別とを所定の表で表示し、
表中の所定の箇所が選択されると、選択された箇所における画像を表示する。
【0011】
好ましくは、
表示部は、
生体情報の値と荷役動作の種別とを所定のグラフで表示し、
グラフ中の所定の箇所が選択されると、選択された箇所における画像を表示する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るフォークリフトの管理装置は、オペレータの生体情報、フォークリフトの動作情報、さらに、オペレータ等の画像を取得して表示できるので、これら表示情報に基づいて、荷役作業中のオペレータへの影響を管理・解析して、オペレータの荷役作業の能力を向上する等、荷役作業に関する様々な課題の解決に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本発明に係るフォークリフトの管理装置に関する実施形態を説明する。
なお、車体の前後方向X、左右方向Y及び上下方向Zは、それぞれ直角である。
【0015】
[第1実施形態]
フォークリフトの管理装置の第1実施形態を説明する。
[フォークリフト]
図1の通り、リーチ式フォークリフト100(以下「フォークリフト」という)は、車体5の前方に一対のマスト50が立設される。各マスト50は、車体の左右方向Yに間隔を置いて配置される。リフトブラケット51は、マスト50に沿って、車体の上下方向Zに昇降するように支持される。
【0016】
フォークリフト100は、荷役作業を行うための一対のフォーク52を備える。フォーク52は、リフトブラケット51の左右に取り付けられており、車体の左右方向Yに間隔を置いて配置される。そのため、フォーク52は、リフトブラケット51とともに昇降する。
【0017】
フォークリフト100は、車体5の前部に一対のストラドルレッグ53を備える。各ストラドルレッグ53は、車体の前後方向Xに延設されると共に、車体の左右方向Yに間隔を置いて配置される。ストラドルレッグ53は、マスト50が車体の前後方向Xに進退するようにガイドする。
【0018】
フォークリフト100は、車体5の後部に運転スペース55が設けられる。運転スペース55の下部にはブレーキペダル54が設けられており、オペレータが足でブレーキペダル54を操作することで、ブレーキを作用・解除する。フォークリフト100は、運転スペース55の上方を覆って落下物からオペレータを保護するためのヘッドガード58を備える。
【0019】
フォークリフト100は、ストラドルレッグ53の前部に設けられた一対の前輪57を備える。さらに、フォークリフト100は、車体5の後部に設けられたドライブ輪56を備える。フォークリフト100は、ドライブ輪56の正方向及び逆方向の回転によって、車体5を前後進する。また、フォークリフト100は、前輪57及びドライブ輪56の旋回によって、車体の前後方向X及び左右方向Yに対して所定角度に旋回する。
【0020】
運転スペース55は、運転スペース55の前側及び左右側のサイドフレームに囲まれており、運転スペース55の後側に乗降口が形成される。フォークリフト100は、運転スペース55の前方に操作部60を備える。操作部60は、複数の油圧レバー62,63,64を備えており、オペレータが各油圧レバー62,63,64を操作することで、フォーク52を昇降・傾動・進退できる。
【0021】
第1油圧レバー62の傾動によって、マスト50が車体の前後方向Xに進退する。第2油圧レバー63の傾動によって、リフトブラケット51が車体の上下方向Zに昇降する。第3油圧レバー64の傾動によって、フォーク52が車体の上下方向Zに傾動する。
【0022】
操作部60は、車体5の進行方向を操作するためのハンドル61及びアクセラレータ65を備える。ハンドル61の旋回によって、車体5が車体の前後方向X及び左右方向Yに対して所定角度に旋回する。アクセラレータ65の傾動によって、車体5が所定の速度で前後進する。
【0023】
[管理装置]
図2の通り、フォークリフトの管理装置101は、フォークリフト100の荷役動作を検知するための荷役動作検知部1を備える。荷役動作検知部1は、第1検知部11、第2検知部12、第3検知部13、第4検知部14を備える。荷役動作検知部1は、フォークリフト100に設けられる。
フォークリフトの管理装置101は、さらに、フォークリフトの位置を検知するための位置検知部15を備える。
【0024】
第1検知部11は、ハンドル61の旋回角度を検知するポテンショメータからなる。第2検知部12は、第1油圧レバー62の傾き角度を検知するポテンショメータからなる。第3検知部13は、第2油圧レバー63の傾き角度を検知するポテンショメータからなる。第4検知部14は、フォーク52に加わる圧力を検知する圧力センサからなる。
位置検知部15は、車体5の位置を検知するGPSセンサからなる。
【0025】
第1検知部11は、ハンドル61の旋回角度の変化を検知することで、「車両転向」を認識する。第2検知部12は、第1油圧レバー62の傾き角度の変化を検知することで、「リーチイン」及び「リーチアウト」を認識する。第3検知部13は、第2油圧レバー63の傾き角度の変化を検知することで、「リフトアップ」及び「リフトダウン」を認識する。第4検知部14は、フォーク52に加わる圧力の変化を検知することで、「荷取り」及び「荷置き」を認識する。位置検知部15は、車体5の位置を検知して、その位置データと予め準備された自動倉庫等の地図データとに基づいて、「通路走行」及び「棚間走行」を認識する。
【0026】
「車両転向」とは、車体5の旋回を意味する。「リーチイン」とは、マスト50の車体の前後方向Xの後進を意味する。「リーチアウト」とは、マスト50の車体の前後方向Xの前進を意味する。「リフトアップ」とは、リフトブラケット51の車体の上下方向Zの上昇を意味する。「リフトダウン」とは、リフトブラケット51の車体の上下方向Zの降下を意味する。「荷取り」とは、フォーク52による荷物の持ち上げを意味する。「荷置き」とは、フォーク52による荷物の下ろしを意味する。「通路走行」とは、自動倉庫等の通路の走行を意味する。「棚間走行」とは、自動倉庫等の棚間の走行を意味する。
【0027】
フォークリフトの管理装置101は、フォークリフト100を操作するオペレータの生体情報を検知するための生体情報検知部2を備える。本実施形態では、生体情報とは、脈拍数である。本実施形態では、生体情報検知部2は、腕時計型のウエアラブル端末からなり、オペレータに装着されても、オペレータの運転操作を邪魔しない。
【0028】
フォークリフトの管理装置101は、フォークリフト100のヘッドガード58に設けられた撮像部16を備える。撮像部16は、動画又は静止画の画像を取得できるカメラからなる。撮像部16は、フォークリフト100を操作するオペレータの頭上からオペレータの操作の状態を撮影する。
【0029】
フォークリフトの管理装置101は、荷役動作検知部1、生体情報検知部2及び位置検知部15からの情報と、撮像部16からの画像と、を収集するための収集部3を備える。収集部3は、時間を取得するための時間取得部30を備える。収集部3は、例えば、所定の時間ごとに情報を記憶するメモリー装置等で構成される。収集部3は、荷役動作検知部1及び生体情報検知部2からの情報と、撮像部16からの画像と、時間取得部30からの情報と、を時間と関連付けて収集する。
【0030】
フォークリフトの管理装置101は、収集部3からの情報等を処理するための処理部6を備える。処理部6は、例えば、CPU(中央処理装置)、入出力インターフェース、ROM、RAM等で構成されており、情報を処理するためのプログラムが記憶される。処理部6は、収集部3から送られた情報を取得して処理する。
【0031】
フォークリフトの管理装置101は、処理部6に接続された表示部4を備える。表示部4は、処理部6によって処理された情報を表示する。本実施形態では、表示部4は、処理部6と一体に構成されたタッチパネル式の携帯情報端末である。
【0032】
表示部4は、所定の時間ごとの生体情報の値と、生体情報と同一時間で対応する荷役動作の種別と、生体情報と同一時間で対応する画像と、を表示する。収集部3で収集された情報が、処理部6によって処理された後、表示部4が、処理された情報を表示する。
【0033】
[表示部の画面]
図3の通り、表示部4は、所定の時間区間における表46を画面に表示する。表46は、時系列に沿って表示された所定の時間ごとの時間の文字列46a、生体情報の文字列46b、荷役動作の種別の文字列46cで構成される。
【0034】
表示部4は、表46の所定の箇所が選択(タッチ)されると、選択(タッチ)された箇所における時間の画像45を画面に表示する。画像45が動画の場合、表示部4は、さらに、再生、停止、一時停止、早送り、巻き戻しの操作ボタン45aを表示し、操作ボタン45aの選択(タッチ)によって、画像45を操作できる。本実施形態の場合、画像45は、オペレータの操作状態が表示される。
【0035】
図4の通り、表示部4は、生体情報の値に基づいて、所定の時間区間における所定の時間ごとの生体情報の値を折れ線グラフ40で画面に表示する。折れ線グラフ40は、横軸が時間で、縦軸が生体情報の値で構成される。表示部4は、折れ線グラフ40の下方に、荷役動作の種別を文字41で時系列に沿って画面に表示する。折れ線グラフ40と文字41とは互いに同一時間で対応している。
【0036】
表示部4は、折れ線グラフ40中の所定の箇所が選択(タッチ)されると、選択(タッチ)された箇所における時間の画像45を画面に表示すると共に、生体情報の値を文字42で表示する。画像45が動画の場合、表示部4は、さらに、上記と同様に、操作ボタン45aを表示する。
【0037】
[第2実施形態]
フォークリフトの管理装置の第2実施形態を説明する。なお、重複説明を避けるため、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0038】
図5の通り、フォークリフト100が荷役作業を行う倉庫102において、天井又は棚の所定の箇所に、複数の撮像部16及び位置検知部15が設けられる。位置検知部15は、フォークリフト100の存在の有無を感知する感知センサからなる。各撮像部16は、フォークリフト100を撮影できるように配置される。位置検知部15がフォークリフト100の存在を感知すると、フォークリフト100を撮影できる撮影部16を選択して、選択された撮影部16がフォークリフト100を撮影する。
【0039】
[表示部の画面]
図6の通り、表示部4は、所定の時間区間における表46を画面に表示する。表46は、時系列に沿って表示された所定の時間ごとの時間の文字列46a、生体情報の文字列46b、荷役動作の種別の文字列46cで構成される。
【0040】
表示部4は、表46の所定の箇所が選択(タッチ)されると、選択(タッチ)された箇所における時間の画像45を画面に表示する。画像45が動画の場合、表示部4は、さらに、操作ボタン45aを表示する。本実施形態の場合、画像45は、フォークリフト100の全体が表示される。
【0041】
図7の通り、表示部4は、生体情報の値に基づいて、所定の時間区間における所定の時間ごとの生体情報の値を折れ線グラフ40で画面に表示する。折れ線グラフ40は、横軸が時間で、縦軸が生体情報の値で構成される。表示部4は、折れ線グラフ40の下方に、荷役動作の種別を文字41で時系列に沿って画面に表示する。折れ線グラフ40と文字41とは互いに同一時間で対応している。
【0042】
表示部4は、折れ線グラフ40中の所定の箇所が選択(タッチ)されると、選択(タッチ)された箇所における時間の画像45を画面に表示すると共に、生体情報の値を文字42で表示する。画像45が動画の場合、表示部4は、さらに、操作ボタン45aを表示する。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の構成はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、
・生体情報は、血圧値、心拍数等でもよい。
・表示部4は、スマートフォン、ノート型パソコン、車載ディスプレイ等でもよい。
・荷役動作の種別として、フォーク52が車体の上下方向Zに傾動するティルト動作を加えてもよい。
・荷役動作の種別として、車体5の高速走行・低速走行を加えてもよい。
・時間取得部30は、荷役動作検知部1及び生体情報検知部2に設けられてもよい。その場合、荷役動作検知部1が各荷役動作及び各時間を記憶して、生体情報検知部2が各生体情報及び各時間を記憶して、収集部3に送る。
・収集部3は、表示部4に設けられてもよい。
・グラフ40及び表46は、左右又は上下に表示をスクロール(スライド)することで、表示される所定の時間区間を変えることができる。
【0044】
本発明の効果は次の通りである。
本発明に係るフォークリフトの管理装置101は、オペレータの生体情報、フォークリフトの動作情報、さらに、オペレータ等の画像を取得して表示できる。オペレータや管理者は、これら表示情報に基づいて、荷役作業中のオペレータへの影響を管理・解析して、荷役作業に関する様々な課題の解決に利用できる。例えば、
・画像に基づいて、管理者がオペレータに苦手な荷役作業を指導したり、オペレータが苦手な荷役作業を練習したりして、オペレータの荷役作業の能力を向上することに利用できる。
・脈拍数が高い荷役動作の種別を抽出して、オペレータの苦手な荷役作業を知ることができる。
・オペレータが苦手な荷役作業を行うときに、オペレータに音楽、音声、画像等で注意喚起することもできる。
【解決手段】フォークリフトの荷役動作を検知するための荷役動作検知部1と、フォークリフトを操作するオペレータの生体情報を検知するための生体情報検知部2と、時間を取得するための時間取得部30と、フォークリフトを撮像するための撮像部16と、荷役動作検知部1、生体情報検知部2及び時間取得部30からの情報と、撮像部16からの動画又は静止画の画像と、を収集するための収集部3と、収集部3に収集された情報及び画像に基づいて、所定の時間ごとの生体情報の値と、生体情報と同一時間の荷役動作の種別と、生体情報と同一時間の画像と、を表示するための表示部4と、を備える。