特許第6192142号(P6192142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192142
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】痛風発赤の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/216 20060101AFI20170828BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20170828BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20170828BHJP
   A61K 31/343 20060101ALI20170828BHJP
   A61K 31/415 20060101ALI20170828BHJP
   A61K 31/426 20060101ALI20170828BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20170828BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20170828BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170828BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   A61K31/216
   A61K31/165
   A61K31/192
   A61K31/343
   A61K31/415
   A61K31/426
   A61K31/519
   A61P19/06
   A61P43/00 121
   A61K45/00
【請求項の数】16
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-178714(P2016-178714)
(22)【出願日】2016年9月13日
(62)【分割の表示】特願2014-541013(P2014-541013)の分割
【原出願日】2011年11月4日
(65)【公開番号】特開2017-61450(P2017-61450A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】514114611
【氏名又は名称】サイマベイ・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CymaBay Therapeutics,Inc.
(73)【特許権者】
【識別番号】501467326
【氏名又は名称】ダイアテックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・エドワード・ラバン
(72)【発明者】
【氏名】ゴパール・チャンドラ・サハ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ケイ・ロバーツ
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・エイ・マックウェーター
【審査官】 井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−533206(JP,A)
【文献】 特表2011−519865(JP,A)
【文献】 特表2003−501383(JP,A)
【文献】 Arthritis Rheum.,2010年10月,Vol.62, No.10,p.2845-2849
【文献】 Drugs,2004年,Vol.64, No.21,p.2399-2416
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/216
A61K 31/165
A61K 31/192
A61K 31/343
A61K 31/415
A61K 31/426
A61K 31/519
A61K 45/00
A61P 19/06
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(−)−ハロフェナートもしくは(−)−ハロフェン酸であって、それらの(+)−エナンチオマーを実質的に含まない化合物またはその医薬的に許容される塩を含む、対象によって経験される痛風発赤を治療するため、あるいは痛風発赤の数、期間、頻度または強さを減少させるための経口薬剤。
【請求項2】
痛風発赤を治療するための、請求項1に記載の経口薬剤。
【請求項3】
痛風発赤の数、期間、頻度または強さを減少させるための、請求項1に記載の経口薬剤。
【請求項4】
前記化合物が、(−)−ハロフェナートであって、その(+)−エナンチオマーを実質的に含まないものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の経口薬剤。
【請求項5】
前記化合物が、(−)−ハロフェン酸であって、その(+)−エナンチオマーを実質的に含まないものまたはその医薬的に許容される塩である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の経口薬剤。
【請求項6】
前記化合物が、1日あたり100mg〜1000mgで投与されるものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の経口薬剤。
【請求項7】
前記化合物が、1日あたり400mg、600mg、800mg、または1000mgで投与されるものである、請求項6に記載の経口薬剤。
【請求項8】
前記化合物の量が、1日1回の投薬に有効である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の経口薬剤。
【請求項9】
前記化合物が、4週間またはそれ以上投与されるものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の経口薬剤。
【請求項10】
前記対象が、発赤予防剤も投与されるものである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の経口薬剤。
【請求項11】
前記発赤予防剤が、NSAIDまたはコルヒチンである、請求項10に記載の経口薬剤。
【請求項12】
前記発赤予防剤が、コルヒチンである、請求項11に記載の経口薬剤。
【請求項13】
前記対象が、キサンチンオキシダーゼ阻害剤、尿酸生成阻害剤、尿酸排泄薬またはウリカーゼである尿酸低下薬もさらに投与されるものである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の経口薬剤。
【請求項14】
前記尿酸低下薬が、アロプリノールまたはフェブキソスタットである、請求項13に記載の経口薬剤。
【請求項15】
前記尿酸低下薬が、フェブキソスタットである、請求項14に記載の経口薬剤。
【請求項16】
前記尿酸低下薬が、プロベネシド、ベンズブロマロン、またはスルフィンピラゾンである、請求項13に記載の薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、痛風発赤の治療(予防を含む)に関する。
【発明の概要】
【0002】
本出願は、式(I)
【化1】
(I)
[式中、Rは、ヒドロキシ、低級アラルコキシ、ジ−低級アルキルアミノ−低級アルコキシ、低級アルカンアミド−低級アルコキシ、ベンズアミド−低級アルコキシ、ウレイド−低級アルコキシ、N’−低級アルキル−ウレイド−低級アルコキシ、カルバモイル−低級アルコキシ、ハロフェノキシ置換低級アルコキシ、カルバモイル置換フェノキシ、カルボニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ−低級アルキルアミノ、ハロ置換低級アルキルアミノ、ヒドロキシ置換低級アルキルアミノ、低級アルカノイルオキシ置換低級アルキルアミノ、ウレイドおよび低級アルコキシカルボニルアミノからなる群から選択され;ならびに各Xは、独立して、ハロゲンである]
の化合物またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを特徴とする、対象によって経験される痛風発赤の治療方法を記載する。
【0003】
他の態様は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを特徴とする、対象によって経験される痛風発赤の数、期間、頻度または強さを減少させる方法を提供する。他の態様は、痛風に罹っている対象における高尿酸血症の治療であって、それを必要とする対象に式(I)の化合物を投与することを特徴とし、投与の用量、頻度および期間が、前記期間中、対象によって経験される痛風発赤の数、期間、頻度または強さを減少させるために有効である治療を提供する。なお他の態様は、約2.0またはそれ以下の日中最高最低間の比で(−)−ハロフェン酸を対象に提供する方法を提供する。さらなる態様は下記に供される。
【0004】
アロプリノールまたはフェブキソスタットなどの尿酸低下薬は、一般に、治療の開始によって痛風発赤の数、期間、頻度または強さを増加させ、この憎悪は、このような治療の開始後数週間から数ヶ月継続しうる。尿酸低下薬は、発赤の数、期間、頻度または強さを最小にするために、治療用量まで段階的に増加させる用量設定ストラテジーを必要とすることが多い。非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)またはコルヒチンなどのさらなる治療剤による発赤の治療または予防がこの間推奨されることがよくある。尿酸低下治療剤の長期維持使用の間、発赤はまた、処方指示の不履行によって引き起こされる尿酸レベルの変動によって蓄積されうる。現在の方法の有益な点としては、患者によって経験される発赤の数、期間、頻度または強さの減少(例えば、尿酸低下療法の開始または維持期間)、用量設定の必要性の減少、およびさらなる抗発赤薬の量もしくは期間の減少が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、400mgのアルハロフェナートの1日1回経口投与の30日投薬スケジュールの間およびその後の(−)−ハロフェン酸の平均トラフ血漿濃度を示す図である。
図2図2は、20人のヒト対象における400mgのアルハロフェナートの1日1回経口投与後の15日目および30日目における(−)−ハロフェン酸血漿濃度の平均および標準偏差(SD)を示す図である。
図3図3は、アルハロフェナートによる1日1回投薬後の時間経過による対象の血清尿酸の減少を示す図である。
図4図4は、リポ多糖類(LPS)で刺激した初代マウスマクロファージにおいて、炎症促進性サイトカインIL−1βをコードするメッセンジャーRNAを減少させる(−)−ハロフェン酸の効果を示す図である。
図5図5は、リポ多糖類で刺激した初代マウスマクロファージにおいて、炎症促進性サイトカインIL−1βの分泌を低下させる(−)−ハロフェン酸の効果を示す図である。
図6図6は、(−)−ハロフェナート 600mgによる治療後のヒト対象における高感受性のC−反応性タンパク質(hs−CRP)レベルの平均低下を示す図である。
図7図7は、(−)−ハロフェナート 600mgによる治療後のヒト対象における高感受性のC−反応性タンパク質(hs−CRP)レベルの平均パーセント低下を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示で利用されるように、下記の用語は、特に示されていない限り、下記の意味を示すものと理解されるものとする。
【0007】
「約」は、数を特定する場合、特に示されていない限り、その値または数の10%の上限または下限の範囲を意味する。特許請求の範囲については、均等論の適用に限定されることなく、各数字は、有効数字の数の記載およびその数字を得るために用いられた手法または方法(例えば、精神、サンプル調製など)などの因子を考慮して解釈されるべきである。
【0008】
「投与する」または「投与」は、薬物、プロドラッグまたは治療剤を対象に付与する行為を意味する。典型的な投与経路は下記で説明される。
【0009】
「急性痛風」は、少なくとも1つの痛風の症状(例えば、足部痛風または他の痛風関節炎、痛風発赤、痛風発作)に罹っている対象に現れる痛風を意味する。
【0010】
「慢性痛風」は、再発性または長期の痛風発赤、痛風結節の形成、慢性炎症関節炎または痛風に関連する関節の悪化に罹っている対象に現れる痛風を意味し、急性痛風からの回復後および急性痛風発作の間(すなわち、痛風の間欠期)の期間が含まれる。
【0011】
「組成物」または相互に交換可能である「製剤」は、化合物または薬物の比較的安定で所望される有用な形態を供する様々な賦形剤および有効成分の混合物を含有する調製物を意味する。
【0012】
接頭語「d」および「l」または(+)および(−)は、化合物による平面偏光面の回転の表示を示すために用いられ、(+)またはd−は、化合物が「右旋性」であることを意味し、(−)またはl−は、化合物が「左旋性」であることを意味する。所定の化学構造については、これらの異性体または「光学異性体」は、それらが互いに鏡像である場合を除いて同一である。光学的に活性な化合物を記載する際、接頭語RおよびSは、そのキラル中心についての化合物の絶対配置を表示するために用いられる。絶対立体化学およびエナンチオマーの回転との間の命名については相関関係がない(すなわち、R−異性体はまた、l−異性体でありうる)。特定の光学異性体はまた、「エナンチオマー」とも称され、このような異性体の混合物は、「エナンチオマー」または「ラセミ」混合物と呼ばれることもある(例えば、A. Streitwiesser, & C.H. Heathcock, INTRODUCTION TO ORGANIC CHEMISTRY, 2nd Edition, Chapter 7 (MacMillan Publishing Co., U.S.A. 1981))。(−)−ハロフェナートの旋光[α]は、メチルアルコール中で測定した。
【0013】
「血清尿酸レベルの上昇」は、正常より高い血清尿酸レベルを意味し、痛風に罹っている患者において、一般に、約6mg/dLより高いか、または同等である血清尿酸レベルを意味する。ある例において、血清尿酸レベルの上昇は、特定の世代または年齢の集団などの所定の集団における平均レベルより高いものである。
【0014】
「有効量」は、(i)少なくとも部分的には、対象における所望の応答を達成するために;(ii)対象において治療される特定の状態の発症を遅延させ、または予防するために;あるいは(iii)対象において治療される特定の状態の進行を抑制し、または予防するために必要とされる量を意味する。特定の対象のための有効量は、治療されるべき対象の健康状態および身体状態、治療されるべき個体の分類群、所望される保護の程度、組成物の製剤化、医学的状況の評価および他の関連する因子に応じて変動する。その量は、所定の試験により調べることができる比較的広範囲で定まることが予想される。
【0015】
「第1の尿酸低下薬」は、式(I)、(II)、(III)または(IV)のいずれかの化合物、あるいはその医薬的に許容される塩またはプロドラッグを意味する。明確化のため、この用語は、例えば、第2の尿酸低下薬に対して、時間相がなく、関連性がないことを意味する。
【0016】
「発赤」または「痛風発赤」は、特に、手足の指などの末梢関節において、疼痛および炎症の突然発症に関連する痛風の症状を意味する。
【0017】
「痛風」は、尿酸の過剰産生または尿酸を排出する腎臓の能力低下による尿酸の蓄積に最も高い頻度で付随する障害または症状の一群を意味する。痛風は、関節(痛風関節症)または柔組織(痛風結節)における尿酸の結晶(尿酸またはその塩、例えば、尿酸モノナトリウム)の蓄積によって特徴付けられることが多い。本明細書で用いられる「痛風」には、急性痛風、慢性痛風、中等度痛風、難治性痛風および重症痛風が含まれる。
【0018】
「痛風関連炎症」は、尿酸血症の蓄積に対する免疫応答に起因する局所または全身の炎症を意味する。
【0019】
「ハロフェナート」は、下記の式(III)の化合物、すなわち、(4−クロロフェニル)−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−酢酸2−アセチルアミノエチルエステル(4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−酢酸の2−アセトアミドエチルエステルとも称される)を意味する。用語ハロフェナートおよびこれに対応する化学名には、他に特定されていない限り、式(III)の化合物の(+)および(−)エナンチオマーの両方、ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0020】
「ハロフェン酸(halofenic acid)」および「CPTA」は、式(IV)の化合物、すなわち、4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−酢酸[2−(4−クロロフェニル)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェノキシ)酢酸とも称される]ならびにその医薬的に許容される塩を意味する。用語ハロフェン酸およびこれに対応する化学名には、他に特定されていない限り、式(IV)の化合物の(+)および(−)エナンチオマーの両方、ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0021】
「高尿酸血症」は、血清尿酸レベルの上昇を意味する(上記を参照のこと)。
【0022】
「腎機能障害」は、腎臓が血中の毒素および老廃物を適切に濾過できない病状を意味する。腎機能障害は、急性腎傷害または慢性腎疾患(すなわち、CKD1−5)の形で現れうる。
【0023】
「中等度痛風」は、過去12ヶ月の間に少なくとも2回の痛風発赤に罹っている対象中に存在する痛風を意味する。
【0024】
「医薬的に許容される」は、一般的に安全で、非毒性で、生物学的にも不適切でもない、医薬組成物を調製する際に有用であるものを意味し、獣医学的またはヒト医薬的用途に許容可能であるものが含まれる。
【0025】
「医薬的に許容される塩」には、医薬的に許容される酸付加塩および医薬的に許容される塩基付加塩が含まれ、溶媒和および非溶媒和の両方の形態が含まれる。医薬的に許容される塩の代表的な非限定的な記載は、S.M. Berge et al., J.Pharma Sci., 66(1), 1-19 (1977)およびRemington: The Science and Practice of Pharmacy, R. Hendrickson, ed., 21st edition, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, PA, (2005)の第732頁の表38−5に見出すことができ、これらの両方は、出典明示により本明細書に取り込まれる。
【0026】
「医薬的に許容される酸付加塩」は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、ならびに酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などの有機酸と形成された塩を意味する。
【0027】
「医薬的に許容される塩基付加塩」は、無機塩基または有機塩基を遊離酸に加えることによって調製された塩を意味する。無機塩基に由来する塩としては、以下に限定されないが、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩などが挙げられる。有機塩基に由来する塩としては、以下に限定されないが、第一級、第二級および第三級アミン、置換アミン(天然に存在する置換アミンを含む)、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などの塩が挙げられる。
【0028】
「難治性痛風」は、(1)第1の尿酸低下薬ではない1つまたはそれ以上の第2の尿酸低下薬、または(2)第2の尿酸低下薬ではなく第1の尿酸低下薬のいずれかで投与された後、反応しないか、もしくは反応性に乏しく、または有害事象を経験し、もしくは経験するリスクの高い患者における痛風を意味する。本明細書中の用語「反応しない」および「反応性に乏しい」には、(1)血清尿酸が低下しないか、もしくはほとんど低下せず、(2)(例えば、医師または他の医療従事者によって決定されるような)目標の血清尿酸レベルへの達成の失敗、および(3)1つまたはそれ以上の痛風の状態もしくは症状、例えば、痛風発赤、痛風結節、痛風関節炎または血清尿酸レベルが低いにもかからず付随する他の状態の持続が含まれる。
【0029】
「第2の尿酸低下薬」は、第1の尿酸低下薬ではなく、血清尿酸レベルを低下させる治療剤を意味する。第2の尿酸低下薬には、血清尿酸を低下させる現在利用可能な薬剤(すなわち、本願の出願日時点でFDAまたは他の適当な当局によって認可されている薬剤)ならびに現在開発中または当局の審査中の化合物が含まれる。第2の尿酸低下薬の例は、下記で提供される。明確化のため、第1の尿酸低下薬に対して、時間相がなく、関連性がないことを意味する。
【0030】
「対象」および「患者」は、例えば、哺乳類(ヒトを含む)、他の霊長類、愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ)、家畜動物(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ)、ラットおよびマウスを意味する。
【0031】
「重症痛風」は、関節、皮膚または腎臓における結節性沈着を有する対象に存在する痛風を意味し、これらは、慢性関節炎、関節破壊、皮下痛風結節または腎不全を生じ、ある場合には、後に変形および/または身体障害を生じる。
【0032】
「実質的に含まない」は、対応する(+)エナンチオマー(すなわち、(+)−ハロフェナート、(+)−ハロフェン酸またはその塩)を実質的に含まない(−)−ハロフェナートまたは(−)−ハロフェン酸(またはその塩)について用いられる場合、(+)エナンチオマーに対して高い割合で化合物の(−)エナンチオマーを含有する組成物を意味する。1の実施態様において、前記用語は、組成物に含まれる化合物が、重量比で、少なくとも85%の(−)エナンチオマーおよび15%以下の(+)エナンチオマーであることを意味する。1の実施態様において、前記用語は、組成物に含まれる化合物が、重量比で、少なくとも90%の(−)エナンチオマーおよび10%以下の(+)エナンチオマーであることを意味する。他の実施態様において、前記用語は、組成物中に含まれる化合物が、重量比で、少なくとも91%の(−)エナンチオマーおよび9%以下の(+)エナンチオマー、少なくとも92%の(−)エナンチオマーおよび8%以下の(+)エナンチオマー、少なくとも93%の(−)エナンチオマーおよび7%以下の(+)エナンチオマー、少なくとも94%の(−)エナンチオマーおよび6%以下の(+)エナンチオマー、少なくとも95%の(−)エナンチオマーおよび5%以下の(+)エナンチオマー、少なくとも96%の(−)エナンチオマーおよび4%以下の(+)エナンチオマー、少なくとも97%の(−)エナンチオマーおよび3%以下の(+)エナンチオマー、少なくとも98%の(−)エナンチオマーおよび2%以下の(+)エナンチオマー、あるいは少なくとも99%の(−)エナンチオマーまたは99%以上の(−)エナンチオマーであることを意味する。他の割合の(−)および(+)エナンチオマーもまた提供されうる。これらの割合は、組成物中の化合物の両方のエナンチオマーの総量と比較したエナンチオマーの量に基づくものである。
【0033】
「治療上有効な用量」、「治療上有効な量」または相互に交換可能な「薬理学的に許容される用量」および「薬理学的に許容される量」は、十分量の治療剤またはその代謝物が、所望される結果を達成するために、例えば、尿酸レベルを目標の値まで低下させ、またはその様々な型の痛風を治療し、または高尿酸血症に関連する障害を治療するために存在することを意味する。
【0034】
疾患、障害、病気または症状の「治療」および「治療する」は、(1)疾患、障害または病気を発症するリスクを予防し、または軽減し、すなわち、疾患、障害または病気の臨床症状を、疾患、障害または病気に晒されるか、または罹りやすいが、疾患、障害または病気の症状をまだ経験していないか、または示していない対象において、発症させなくし(すなわち、予防);(2)疾患、障害または病気を抑え、すなわち、疾患、障害または病気あるいはその臨床症状の発症を停止させ、または軽減し;ならびに(3)疾患、障害または病気を緩和し、すなわち、疾患、障害または病気を退行、反転もしくは改善させ、またはその臨床症状の数、頻度、期間もしくは重症度を減少させることを意味する。用語「管理」は、同意語として用いられうる。
【0035】
「尿酸塩」は、尿酸(7,9−ジヒドロ−1H−プリン−2,6,8(3H)−トリオン)ならびにそのイオンおよび塩を意味する。
【0036】
本願は、式(I)
【化2】
(I)
[式中、Rは、ヒドロキシ、低級アラルコキシ、ジ−低級アルキルアミノ−低級アルコキシ、低級アルカンアミド−低級アルコキシ、ベンズアミド−低級アルコキシ、ウレイド−低級アルコキシ、N’−低級アルキル−ウレイド−低級アルコキシ、カルバモイル−低級アルコキシ、ハロフェノキシ置換低級アルコキシ、カルバモイル置換フェノキシ、カルボニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ−低級アルキルアミノ、ハロ置換低級アルキルアミノ、ヒドロキシ置換低級アルキルアミノ、低級アルカノイルオキシ置換低級アルキルアミノ、ウレイドおよび低級アルコキシカルボニルアミノからなる群から選択され;ならびに各Xは、独立して、ハロゲンである]
の化合物またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを特徴とする、痛風発赤の治療方法を記載する。
【0037】
ある態様において、前記化合物は、式(II)
【化3】
(II)
[式中、Rは、フェニル−低級アルキル、低級アルカンアミド−低級アルキルおよびベンズアミド−低級アルキルからなる群から選択され;ならびに各Xは、独立して、ハロゲンである]
の化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0038】
他の態様において、前記化合物は、式(III)
【化4】
(III)
の化合物(ハロフェナートとも称される)またはその医薬的に許容される塩である。
【0039】
他の態様において、前記化合物は、式(IV)
【化5】
(IV)
の化合物(ハロフェン酸とも称される)またはその医薬的に許容される塩である。
【0040】
本明細書における式および実施例中の原子価を満たしていない炭素原子のいずれもが原子価を満たすように水素原子を有するものとされることに留意すべきである。
【0041】
ある実施態様において、前記化合物は、下記により詳細に説明されるように、投与後に化学反応により式(IV)の化合物またはその医薬的に許容される塩を生じる化合物である。
【0042】
ある実施態様において、前記化合物は、式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物の(−)エナンチオマーである。ある実施態様において、前記化合物は、(−)−ハロフェナート(すなわち、(−)−(R)−(4−クロロ−フェニル)−(3−トリフルオロメチル−フェノキシ)−酢酸2−アセチルアミノ−エチルエステル、アルハロフェナートとも称される)である。他の実施態様において、前記化合物は、(−)−ハロフェン酸(すなわち、(−)−4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)酢酸)またはその医薬的に許容される塩である。ある実施態様において、前記(−)−ハロフェナート、(−)−ハロフェン酸またはその医薬的に許容される塩は、対応する(+)エナンチオマーを実質的に含まないものである。
【0043】
式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物のエナンチオマー(立体異性体)およびその医薬的に許容される塩は、可能な限り方法におけるそれらの単一のエナンチオマー形態の反応剤または試薬または触媒を用いることにより、あるいはキラル酸またはキラル塩基と形成されたジアステレオマー塩を分割する微生物分割およびキラル担体の使用を含む従来の方法による立体異性体の混合物を分割することにより、製造することができる。出典明示によりその全体が本明細書に取り込まれる米国特許第7,199,259号(Daugs)、米国特許第6,646,004号;第6,624,194号;第6,613,802号;および第6,262,118号(各々、Luskeyら)、米国特許第7,714,131号(Zhuら)、米国特許第7,432,394号(Chengら)および米国特許第2010/0093854号(Brogginiら)もまた参照のこと。
【0044】
(3−トリハロメチルフェノキシ)(4−ハロフェニル)酢酸誘導体のラセミ混合物の化学合成はまた、出典明示によりその教示が本明細書に取り込まれる米国特許第3,517,050号に記載の方法によって実施することができる。各エナンチオマーは、当業者に公知であり、用いられる従来の手法を用いて、エナンチオマーのラセミ混合物の分割によって得ることができる。例えば、Jaques, J., et al., in Enantiomers, Racemates, and Resolutions, John Wiley and Sons, New York (1981)を参照のこと。当業者に公知の分割の他の標準的な方法(以下に限定されないが、単純結晶化およびクロマトグラフ分割を含む)はまた、用いることができる(例えば、Stereochemistry of Carbon Compounds (1962) E.L.Eliel, McGraw Hill; J.Lochmuller, Chromatography, 113, 283-302 (1975))。また、ハロフェナート、ハロフェン酸またはその医薬的に許容される塩、すなわち、光学的に純粋な異性体は、酵素生体触媒的な分割によってラセミ混合物から調製することができる。酵素生体触媒的な分割は、一般に、以前に公開されている(例えば、出典明示により本明細書に取り込まれる米国特許第5,057,427号および第5,077,217号を参照のこと)。エナンチオマーを取得するための他の一般的な方法には、立体特異的合成法が含まれる(例えば、A.J.Li et al., Pharm.Sci.86, 1073-77 (1997)を参照のこと)。
【0045】
いずれのなんらかの理論に拘束されることなく、本明細書に記載の化合物のいくつかの特性は、例えば、尿酸低下のためのこれらの化合物の開始および維持使用の間の痛風発赤の治療(数、期間、頻度または強さの減少を含む)におけるそれらの成功利用の要因であると考えられる:(1)それらの薬物動態的プロファイルおよび(2)それらの抗炎症特性(インターロイキン−1ベータ(IL−1β)の阻害および高感受性C−反応性タンパク質の減少効果を含む)、ならびに(3)尿酸の細胞への進入を阻害するそれらの能力。
【0046】
図1〜2は、(−)−ハロフェン酸の薬物動態的プロファイルを示す。図1は、400mgのアルハロフェナートの1日1回経口投与の30日投薬スケジュールの間およびその後の(−)−ハロフェン酸の平均トラフ血漿濃度値を示す。図2は、400mgのアルハロフェナートの1日1回経口投与後15日目および30日目における(−)−ハロフェン酸の平均および標準偏差(SD)血漿濃度値を示す。これらの図は、持続した薬物レベルが最終投与後数日間存在する長い半減期、ならびに比較的一定の日中血漿濃度を示す。(−)−ハロフェン酸の血漿濃度が尿酸の血漿濃度と相関関係にあることが予想される。よって、長い半減期および低い日中最高最低間の比は、それらに応じて、治療の開始および維持使用の間に血清尿酸において徐々に変化することを予測させるものである。図3は、アルハロフェナートの数回の投薬による時間経過とともに血清尿酸における減少を示し、このことは、この考えをサポートする。(例えば、一定の第2の尿酸低下薬、例えば、アロプリノール、フェブキソスタットなどを生じる)血清尿酸の大きくまたは急速な変化は、例えば、このような薬剤の開始後数週間および数ヶ月の間、あるいはこのような薬剤の1日1回使用の不履行に伴い、痛風発赤を誘発し、あるいは、より長期で、高頻度で、またはより強い発赤を引き起こしうると考えられる。よって、この(−)−ハロフェン酸の薬物動態的プロファイルは、他の尿酸低下療法と比較して、(例えば、投与の開始後最初の数週間から数ヶ月などの一定期間)痛風発赤の予防における式(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物およびその医薬的に許容される塩の成功利用の一因となる。
【0047】
式(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物およびその医薬的に許容される塩はまた、阻害効果を有し、炎症の重要な経路を阻害する。インフラマソームは、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)などの炎症性サイトカインの成熟を誘発して自然免疫防御を行う細胞性感染もしくはストレスによって活性化される分子基盤である。よって、IL−1βの阻害剤は、痛風治療において役割を有する。例えば、A. So. and N. Busso, Ann. Rheum. Dis., 68(10) (2009)およびこれらに引用される文献を参照のこと。図4は、リポ多糖類(LPS)で刺激された初代マウスマクロファージにおける炎症性サイトカインIL−1βをコードするメッセンジャーRNAを低下させる(−)−ハロフェン酸の効果を示す。(−)−ハロフェン酸は、転写因子PPAR−γに結合し、IL−1βのプロモーターにおいて位置する転写機構と直接相互作用し、安定化するこのリガンド型において、その抗炎症効果を発揮することが仮定される。このような方法で、LPS治療に応じたIL−1βプロモーターの活性化は、(−)−ハロフェン酸によって阻害される。図5は、リポ多糖類で刺激された初代マウスマクロファージからの炎症促進性サイトカインIL−1βの分泌を低下させる(−)−ハロフェン酸の効果を示す。
【0048】
高感受性C−反応性タンパク質(hs−CRP)は、別の炎症マーカーである。図6〜7は、ヒト対象における(−)−ハロフェナートの投与がhs−CRPを低下させたことを示し、このことは、痛風発赤を治療するための式(I)、(II)、(III)もしくは(IV)の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグの有効性をさらにサポートするものである。
【0049】
痛風発赤の成功治療の一因であるさらなるメカニズムは、尿酸の細胞への進入を阻害することである。細胞への尿酸輸送は、多くの尿酸トランスポーター(URAT1、GLUT9(SLC2A9)、OAT4およびOAT10を含む)によって介在される。例えば、脂肪細胞において、尿酸は、MCP−1などの炎症促進性サイトカインの発現を増加させる(Baldwin et al., Diabetes 60 1258-1269 (2011))。(−)−ハロフェン酸がURAT1阻害剤であり、そのようなものとして、式(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物ならびにその医薬的に許容される塩の投与は、細胞(例えば、脂肪細胞、マクロファージおよび内皮細胞を含む)において、尿酸で誘発される炎症反応を減少させることが期待されるであろう。
【0050】
本明細書に記載の方法には、1つまたはそれ以上の痛風発赤の数、期間、頻度または強さを減少させることが含まれ、前記方法は、式(I)、(II)、(III)または(IV)のいずれかまたはその医薬的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与することを特徴とする。ある実施態様において、前記化合物は、(−)−ハロフェナート、(−)−ハロフェン酸またはその医薬的に許容される塩である。ある実施態様において、前記対象によって経験される痛風発赤の数、期間、頻度または強さは、このような投与が開始される前に前記対象によって経験されるものと比較して減少される。他の実施態様において、前記対象によって経験される痛風発赤の数、期間、頻度または強さは、前記対象が第2の尿酸低下薬による尿酸低下治療を過去に受けていた場合に対象によって経験された痛風発赤の数、期間、頻度または強さと比較して減少される。対象によって経験される痛風発赤の数、期間、頻度または強さを減少させるある方法では、さらなる治療剤(例えば、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)またはコルヒチンなどの発赤予防剤)のいずれかの投与量または期間が減少され、他のこのような方法では、このようなさらなる治療剤(例えば、NSAIDまたはコルヒチン)が投与されることはない。
【0051】
前記第2の尿酸低下薬は、第1の尿酸低下薬ではない(すなわち、式(I)、(II)、(III)または(IV)のいずれの化合物またはその医薬的に許容される塩でもない)血清尿酸レベルを低下させる薬剤でありうる。これらの第2の尿酸低下薬としては、尿酸生成阻害剤(例えば、キサンチンオキシダーゼ阻害剤およびプリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤)、尿酸排泄薬およびウリカーゼが挙げられる。キサンチンオキシダーゼ阻害剤としては、以下に限定されないが:アロプリノール、フェブキソスタット、オキシプリノール、チソプリン、イノシトールおよびプロポリスが挙げられる。ある実施態様において、前記キサンチンオキシダーゼ阻害剤は、アロプリノール、フェブキソスタット、オキシプリノール、チソプリン、イノシトール、フィチン酸、ミオイノシトール、ケンフェロール、ミリセチンおよびケルセチンである。キサンチンオキシダーゼ阻害剤であるアロプリノール(1,5−ジヒドロ−4H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−オン)は、尿酸レベルを低下させるための治療の第一標準薬である。別のキサンチンオキシダーゼ阻害剤であるフェブキソスタット(2−(3−シアノ−4−イソブトキシフェニル)−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸)は、2009年2月に痛風の治療用に認可された。プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)阻害剤は、高尿酸血症、痛風およびその関連疾患に罹っている患者における血清尿酸レベルを低下させるための比較的新しいアプローチを示すものである。ある実施態様において、PNP阻害剤は、フォロデシン(BCX−1777)(BioCryst Pharmaceuticals,Inc.)である。他の実施態様において、PNP阻害剤は、BCX−4208(7−(((3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−イル)メチル)−3H−ピロロ[3,2−d]ピリミジン−4(5H)−オン)(BioCryst Pharmaceuticals,Inc.)である。40、80、120、160および240mg/日で投与されるBCX4208単剤療法は、痛風患者における血清尿酸の迅速かつ顕著な減少を示した。尿酸排泄薬は、尿酸の腎排泄を高め、一般に、例えば、尿酸輸送体、例えば、SLC22A12を阻害することにより、腎近位尿細管から血液に戻る尿酸の吸収を低下させることによって作用する。尿酸排泄薬としては、以下に限定されないが、プロベネシド、2−((5−ブロモ−4−(4−シクロプロピルナフタレン−1−イル)−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)チオ)酢酸(RDEA594,lesinurad)、カリウム 4−(2−((5−ブロモ−4−(4−シクロプロピルナフタレン−1−イル)−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)チオ)アセトアミド)−3−クロロベンゾエート(RDEA806)、RDEA684、ベンズブロマロン、スルフィンピラゾン、アムロジピン、アトルバスタチン、フェノフィブラート、グアイフェネシン、ロサルタン、副腎皮質刺激ホルモンおよびコルチゾンが挙げられる。プロベネシドは、米国で最も一般的に用いられる尿酸排泄薬であり、アロプリノールと組み合わせて痛風患者に付与されうる。ベンズブロマロンおよびスルフィンピラゾンはまた、第一選択尿酸排泄薬として用いられる。グアイフェネシン、ロサルタン、アトルバスタチン、アムロジピン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTHまたはコルチコトロピン)、フェノフィブラートおよびコルチゾンはまた、尿酸排泄性効果を有する。ウリカーゼまたは尿酸オキシダーゼ酵素は、ヒト以外の多くの哺乳類で見出される。それらは、尿酸を、尿中に容易に排出される良性最終代謝物であるアラントインに変換することによって尿酸レベルを低下させることができる。ウリカーゼ酵素としては、以下に限定されないが、ラスブリカーゼまたはペグ化ウリカーゼ酵素(PEG−ウリカーゼ)が挙げられる。ある実施態様において、前記ペグ化ウリカーゼ酵素は、従来の治療では無効である成人患者における慢性痛風の治療用に米国で認可されているKrystexxa(登録商標)(PURICASE(登録商標);ペグロチカーゼ)(Savient Pharmaceuticals,Inc.)である。
【0052】
ある実施態様において、対象によって経験される痛風発赤の数は、対象が第2の尿酸低下薬(第2の尿酸低下薬は、アロプリノール、フェブキソスタット、lesinuraまたはBCX4208である)による尿酸低下治療を過去に受けていた場合に対象によって経験される痛風発赤の数、期間、頻度または強さと比較して減少される。
【0053】
ある方法は、痛風に罹っており、対象によって経験される痛風発赤の数、期間、頻度または強さが減少された対象における高尿酸血症の治療または管理を提供する。これらの方法は、式(I)、(II)、(III)または(IV)のいずれかの化合物またはその医薬的に許容される塩を治療または管理を必要とする対象に投与することを特徴とする。ある実施態様において、前記化合物は、(−)−ハロフェナート、(−)−ハロフェン酸またはその医薬的に許容される塩である。
【0054】
様々な実施態様において、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の方法を投与する前の対象における血清尿酸レベルと比較して、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%またはそれ以上に、対象における血清尿酸レベルを低下させる。様々な実施態様において、血清尿酸レベルは、約5%から約50%に低下され、約25%から約75%に低下され、または約50%から約99%に低下される。血清尿酸レベルを決定するための方法は、当該技術分野で周知であり、血液血清試料の標準的な化学パネルの一部として測定されることもある。
【0055】
ある実施態様において、本開示の方法は、本明細書に記載の方法または組成物を投与する前の対象における血清尿酸レベルと比較して、約7mg/dLまたはそれ以下に、約6.5mg/dLまたはそれ以下に、約6mg/dLまたはそれ以下に、約5mg/dLまたはそれ以下に、約4mg/dLまたはそれ以下に、あるいは約3mg/dLまたはそれ以下に対象における血清尿酸レベルを低下させる。ある実施態様において、本開示の方法は、本明細書に記載の方法または組成物と投与する前の対象における血清尿酸レベルと比較して、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5または10.0mg/dL、あるいはそれ以上に対象における血清尿酸レベルを低下させる。さらなる実施態様において、本明細書に記載の方法は、0.1〜10.0mg/dL、0.5〜6.0mg/dL、1.0〜4.0mg/dLまたは1.5〜2.5mg/dLに血清尿酸レベルを低下させる。適当な血清尿酸レベルは、対象によって変動し、ならびに対象の総体的な病状に応じて時間経過とともに一定の対象について変動しうる。同様に、共通の病状を示すある群の対象の適当な血清尿酸レベルは、異なる病状を示す異なる群の対象とは相違しうる。よって、対象の所定の群の血清尿酸レベルを、例えば、約5mg/dL以下に低下させ、対象の別の群の血清尿酸レベルを、例えば、約4mg/dL以下に低下させることが望まれうる。ある実施態様において、本開示の方法は、一定の期間、例えば、約1週間、約1ヶ月間、約6ヶ月間、約1年間、約2年間またはそれ以上などにわたり、対象における血清尿酸レベルを、血清尿酸の上昇に関連する1つまたはそれ以上の障害の消失、軽減、寛解または発症の予防となるのに十分な量に低下させる。例えば、方法は、約1週間、約1ヶ月間、約6ヶ月間、約1年間、約2年間またはそれ以上などにわたり、痛風結節の消滅または軽減となるのに十分な量に対象における血清尿酸レベルを低下させることができる。
【0056】
さらなる実施態様において、本開示の方法は、式(I)、(II)、(III)もしくは(IV)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物を、血清尿酸レベルが、少なくとも約4mg/dL、少なくとも約5mg/dL、少なくとも約6mg/dL、少なくとも約6.8mg/dL、少なくとも約7mg/dL、少なくとも約8mg/dL、少なくとも約9mg/dL、少なくとも約10mg/dLまたは少なくとも約11mg/dLである患者に投与することを特徴とする。再度、適当な血清尿酸レベルの低下量は、患者に応じて、患者の全体の病状に応じて変動しうる。同様に、共有の病状を示す対象のある群の適当な血清尿酸レベルの低下量は、異なる病状を示す対象の別の群とは異なりうる。
【0057】
本明細書に記載の方法は、投与後に化学反応により、式(IV)の化合物またはその塩を生じる化合物の投与によって行われうる。このような化合物には、式(IV)の化合物のプロドラッグ含まれる。化合物のプロドラッグは、インビボで切断されて、親化合物または活性な代謝物を遊離しうるように、化合物中に存在する官能基を改変することによって調製される。例えば、プロドラッグには、化合物中のヒドロキシ、アミノまたはスルフヒドリル基が、インビボで切断されて、それぞれ、遊離のヒドロキシル、アミノまたはスルフヒドリル基を再生しうる基に結合する化合物が含まれる。一定のプロドラッグは、実施態様の化合物が対象に投与されると(例えば、経口投与した化合物を血液中により吸収しやすくすることによって)、このような化合物のバイオアベイラビリティを増加させ、あるいは親の種と比較して、一定の臓器または組織(例えば、腎臓、脂肪の組織、肝臓、筋肉または関節)に対する親化合物の送達を高めうる。より具体的には、式(IV)の化合物のプロドラックには、式(IV)の化合物のヒドロキシ官能基のエステル、アミドおよびカルバメート(例えば、N,N−ジメチルアミノカルボニル)が含まれる。式(I)、(II)および(III)の化合物は、式(IV)のプロドラッグの非限定的な例である。プロドラッグのさらなる例は、J.Rautio et al. Prodrugs: design and clinical applications, Nat.Rev.Drug Discov., 7, 255-270 (2008); Edward B. Roche, ed., Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, (1987); and T.Higuchi and V.Stella, Pro-drugs as Novel Delivery Systems, Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series (1975)中に見出すことができ、その各々は出典明示により本明細書に取り込まれるものである。
【0058】
式(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物およびこれらの医薬的に許容される塩は、具体的な事例に依存しうる量で投与されると、治療活性を示すものと考えられる。量の変動は、例えば、治療される対象および選択される活性成分に依存しうる。広範囲の用量が適用可能でありうる。投薬計画は、最適な治療反応を供するように調整されうる。例えば、数回の分割用量は、1日1回、1週間に1回、1ヶ月に1回または他の適切な時間間隔で投与されうるか、または該用量は、状況の緊急性に示されるように比例的に減少されうる。このような用量は、多くの変数、以下に限定されることはないが、用いられる1つまたはそれ以上の活性成分、治療されるべき疾患または障害、投与様式、各対象の条件、治療される疾患または障害の重症度、ならびに医者の判断によって適宜変動してもよい。
【0059】
診断、症状およびある対象の治療目的などの因子に応じて、式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物の広範囲の用量が考慮されうる。様々な実施態様において、前記化合物は、1日あたり約10mg〜約1000mgで投与されてもよい。例えば、ハロフェナート、ハロフェン酸またはその医薬的に許容される塩は、約50mg/日、約100mg/日、約200mg/日、約300mg/日、約400mg/日、約500mg/日、約600mg/日、約700mg/日、約800mg/日、約900mg/日または約1000mg/日で投与されてもよい。
【0060】
用量漸増または増加プロトコールは、対象に投与するために適正または最適な用量を調べるために用いられてもよい。例えば、用量漸増または増加実験は、有効性および耐容性を改善する用量について選択しうる。用量漸増または増加は、所望の効果が達成されるまで投与される用量を徐々に調整することを可能にする。用量漸増は、投与される用量を徐々に減らしつつ、用量増加は、投与される用量を徐々に増やす。用量漸増または増加の方法は、当該技術分野で周知である。非限定的な例として、対象は、1日1回200mg/日でハロフェナート、ハロフェン酸またはその医薬的に許容される塩が投与され、血清尿酸レベルについて毎日測定されうる。用量は、例えば、1週間単位で増加されてもよく、または減少されてもよい。前記対象は、望ましい用量を見出すために、例えば、2〜12週間モニターされうる。
【0061】
式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物は、治療用投与のための様々な製剤および薬剤に取り込むことができる。より具体的には、これらの化合物は、適当な医薬的に許容される担体または希釈剤との組み合わせによって医薬組成物または製剤中に製剤化することができ、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、糖衣錠、ゲル剤、スラリー、軟膏剤、溶液、座剤、注射剤、吸入剤およびエアロゾルなどの固体、半固体、液体または気体形態の調製物中に製剤化することができる。そのようなものとして、化合物の投与は、バッカル、直腸、非経口、腹腔内、皮内、経皮または気管内投与を含む、様々な方法で実施することができる。さらに、前記化合物は、デポーまたは徐放性製剤で全身よりむしろ局所に投与することができる。または、前記化合物は、リポソーム中で投与することができる。
【0062】
式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物あるいはその医薬的に許容される塩はまた、一般的な賦形剤、希釈剤または担体で製剤化し、錠剤中に圧縮し、または経口投与の利便性のためにエリキシル剤または溶剤として製剤化し、または筋肉内または静脈内経路によって投与することができる。前記化合物は、経皮で投与することができ、徐放性製剤などとして製剤化することができる。1の実施態様において、上記方法は、キサンチンオキシダーゼ阻害剤、尿酸生成阻害剤、尿酸排泄薬およびウリカーゼからなる群から選択される第2の尿酸低下薬の投与をさらに含みうる。1の実施態様において、前記方法は、本明細書に記載されるように、血清尿酸レベルが、少なくとも約4mg/dL、少なくとも約5mg/dL、少なくとも約6mg/dL、少なくとも約6.8mg/dL、少なくとも約7mg/dL、少なくとも約8mg/dL、少なくとも約9mg/dL、少なくとも約10mg/dLまたは少なくとも約11mg/dLである対象に、第1の尿酸低下薬および第2の治療薬を含む医薬組成物を投与することを特徴とする。適当な血清尿酸レベルの低下量は、対象に応じて、対象の総体的な病状に応じて変動しうる。同様に、共通の病状を共有する対象の一群についての適当な血清尿酸レベルの低下量は、異なる病状を共有する対象の異なる群に適当なものと相違しうる。一定の実施態様において、本出願は、第1および第2の尿酸低下薬(これらの第1および第2の尿酸低下薬は、本明細書に記載される)の組み合わせ療法および同時投与の方法を提供する。組み合わせ療法および同時投与は、薬理効果が同時に対象に現れる方法における前記2つの薬剤(すなわち、本明細書に記載されるような第1の薬剤および第2の尿酸低下薬)の投与を意味する。よって、このような投与は、単一の医薬組成物、同一タイプの製剤、同一の剤形または同一の投与経路でさえ、第1および第2の両方の尿酸低下薬の投与に用いられることを要せず、または2つの薬剤が動じに投与されることも必要としない。このような投与は、実質的に同時に、同一製剤および同一投与経路によって最も利便的に達成されうる。例えば、第1の尿酸低下薬、例えば、ハロフェナート、ハロフェン酸またはその医薬的に許容される塩、および第2の尿酸低下薬、例えば、キサンチンオキシダーゼ阻害剤(例えば、アロプリノールまたはフェブキソスタット)は、単一の経口投与組成物(例えば、錠剤またはカプセル剤)中で一緒にヒト対象に投与することができ、あるいは各薬剤は、別々の経口投与製剤で投与することができる。別個の製剤による1つの利点は、投薬時の自由度を付け加わることであり、すなわち、第1および第2の尿酸低下薬の投薬は、独立して、迅速に、および簡便に変更することができる。別々の投薬製剤が用いられる場合、第1および第2の尿酸低下薬は、必須として同時に(すなわち、同時にまたは共に)、または別々に時間差で(すなわち、連続的に)投与することができる。別の態様において、前記第2の尿酸低下薬は、キサンチンオキシダーゼ阻害剤であり、好ましくは、アロプリノール、フェブキソスタット、オキシプリノール、チソプリン、イノシトール、フィチン酸、ミオイノシトール、ケンフェロール、ミリセチンおよびケルセチンからなる群から選択され、特に、アロプリノールまたはフェブキソスタットである。なお別の実施態様において、前記第2の尿酸低下薬は、アロプリノールであり、1日あたり約50mg〜約800mgで投与される。別の態様において、前記第1の尿酸低下薬は、(−)−ハロフェナートであり、1日あたり約100mg〜約600mgで投与され、前記第2の尿酸低下薬は、フェブキソスタットであり、1日あたり約40mg〜約120mgで投与される。別の態様において、前記第2の尿酸低下薬は、尿酸排泄薬であり、好ましくは、プロベネシド、2−((5−ブロモ−4−(4−シクロプロピルナフタレン−1−イル)−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)チオ)酢酸、カリウム 4−(2−((5−ブロモ−4−(4−シクロプロピルナフタレン−1−イル)−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)チオ)アセトアミド)−3−クロロベンゾエート、RDEA684、ベンズブロマロン、スルフィンピラゾン、アムロジピン、アトルバスタチン、フェノフィブラート、グアイフェネシン、ロサルタン、副腎皮質刺激ホルモンおよびコルチゾンからなる群から選択され、特に、プロベネシドである。
【0063】
様々な実施態様において、式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物あるいはその医薬的に許容される塩は、高い頻度で投与することができる。例えば、様々な実施態様において、前記化合物は、1日1回(QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)または1日4回(QID)投与されうる。1の実施態様において、前記化合物は、1日1回(QD)投与される。別の態様において、前記化合物は、1日2回(BID)投与される。他の実施態様において、前記化合物の投与は、有害効果を及ぼすことなく省略することができ、すなわち、前記化合物は、「休薬期間」(休薬期間は投薬の省略期間である)を超えて(すなわち、その前後)投与することができる。例えば、毎日の投薬計画において、前記化合物は、対象が投与の省略により実質的にまたは物質的に有害効果を経験することなく、1日の休薬期間を超えて投与することができる(すなわち、N+1日ではなくN日およびN+2日に投与することができる(ここで、N日は、任意の日である))。ある実施態様において、休薬期間は2日でありうる。他の実施態様において、休薬期間は2日以上でありうる。
【0064】
様々な実施態様において、式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物あるいはその医薬的に許容される塩は、広範囲の期間にわたり投与することができる。例えば、様々な実施態様において、前記化合物は、約4週間またはそれ以上、約1ヶ月間またはそれ以上、約3ヶ月間またはそれ以上、約6ヶ月間またはそれ以上、約1年間またはそれ以上、約2年間またはそれ以上、約5年間またはそれ以上、あるいは約10年間またはそれ以上投与されうる。ある実施態様において、前記投与は、限定されえず、例えば、対象の余生の間でありうる。
【0065】
(−)−ハロフェン酸の薬物動態的プロファイルは、化合物またはそのプロドラッグの投与の用量、頻度および期間によって調節することができる。薬物動態的プロファイルの1つの指標は、時間間隔内(例えば、投与頻度の対応する間隔内)で化合物または薬剤の最低血中血漿濃度で割った最高血中血漿濃度として定義される最高最低間の比である。例えば、ある方法には、式(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物またはその医薬的に許容される塩を1日あたり約100〜約1000mgで対象に投与することを特徴とする、約2.0またはそれ以下の(−)−ハロフェン酸の日中最高最低間の比を対象に提供することが含まれる。様々な実施態様において、日中最高最低間の比は、約1.7またはそれ以下、約1.5またはそれ以下、約1.4またはそれ以下、あるいは約1.3またはそれ以下である。実施態様において日中最高最低間の比は、少なくとも約10日間、例えば、少なくとも約12日間毎日化合物を投与した後に提供される。前記薬物動態的プロファイルはまた、投与経路に依存し、ならびに対象に投与される化合物および製剤によるものでありうる。例えば、ある方法には、1日あたり100〜1000mgの用量で経口製剤(例えば、上記に記載されるような、錠剤、カプセル剤、丸薬など)中にて経口でアルハロフェナート(すなわち、(−)−ハロフェナート)を対象に投与することを特徴とする、約2.0またはそれ以下の(−)−ハロフェン酸の日中最高最低間の比を対象に提供することが含まれる。
【0066】
本明細書に記載のある方法は、本明細書で提供されるように、一定の投与用量、頻度および期間で式(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物またはその医薬的に許容される塩を投与することによって行われうる。例えば、ある方法は、痛風に罹っている対象における高尿酸血症の治療であって、それを必要とする対象に式(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物またはその医薬的に許容される塩を投与することを特徴とし、前記投与の用量、頻度および期間は、前記期間中に対象によって経験される痛風発赤の数、期間、頻度または強さを減少させるのに有効である治療を提供する。ある実施態様において、前記化合物は、アルハロフェナートである。ある実施態様において、前記用量は、約100mg〜約1000mgである。ある実施態様において、前記頻度は、毎日である。ある実施態様において、前記期間は、約4週間またはそれ以上である。他の実施態様において、前記期間は、約1ヶ月間またはそれ以上、約3ヶ月間またはそれ以上、約6ヶ月間またはそれ以上、約1年間またはそれ以上、約2年間またはそれ以上、約5年間またはそれ以上、あるいは約10年間またはそれ以上である。ある実施態様において、前記投与は、限定されえず、例えば、対象の余生の間でありうる。ある実施態様において、前記投与は、毎日および1日の休薬期間にわたる。ある実施態様において、経口製剤で経口にてアルハロフェナートを対象に投与することをさらに特徴とする。組成物、製剤およびそれらの使用方法を網羅する特定の実施態様は、本出願と同日出願の発明の名称「ハロフェナートまたはハロフェン酸および第2の尿酸低下薬を用いた痛風に罹っている患者における高尿酸血症の治療方法」のPCT特許出願に開示され、このPCT出願はその全体が本明細書に取り込まれるものである。本出願の実施態様は、明細書によって、ならびに提出されたような本出願の特許請求の範囲およびこれらの化合物の相当する医薬組成物、方法および使用の特徴によって特徴付けられる。
【0067】
方法
(−)−ハロフェン酸の薬物動態的プロファイルを示す図1〜2に関して用いられる方法は下記のとおりであった:
【0068】
(−)−ハロフェン酸、内部標準物質(I.S.)および抗凝血剤としてのヘパリンを含有するヒト血漿試料中の血漿タンパク質をアセトニトリルで沈殿させた。前記試料はボルテックスで混合し、遠心分離し、一定分量を、45℃を保ちながらPhenomenex Polar RPカラムを用いて逆相高速液体クロマトグラフィーによって分析した。移動相は、Z−スプレーソース/インターフェース中で加熱した窒素を用いて噴霧し、前記イオン化した化合物は、タンデム四重極質量分光計を用いて検出した。
【0069】
血漿濃度は、算出前に0.1μg/mL以下を四捨五入した。1.0μg/mLの定量化できる限定以下の濃度(BQL)を含有する血漿試料は0の値とした。
【0070】
アルハロフェナートを用いて1日1回投与後の時間経過とともに対象における血清尿酸の低下を示す図3に関して用いられる方法は、下記のとおりであった。
【0071】
単一施設の第1相のプラセボ−および陽性対照の二重盲検無作為化用量漸増試験(MAD試験、MBX102−2DM01011b)は、健常な成人対象にプロトコール−特定用量にて経口で10日間毎日投薬として投与した(−)−ハロフェナートの複数回投薬の薬物動態(PK)を評価するために実施した。合計119人の対象がプロトコールに従って試験治療を完了した:MBX−102 100mg/日を10日間摂取した6人の対象;MBXZ−102 200mg/日を10日間摂取した6人の対象;MBX−102 400mg/日を10日間摂取した9人の対象;MBX−102 600mg/日を10日間摂取した20人の対象;腸溶性コーティングを施したMBX−102(EX) 600mg/日を10日間摂取した10人の対象;MBX−102 800mg EC/日を10日間摂取した9人の対象;MBX−102 1000mg EC/日を10日間摂取した10人の対象;プラセボ治療を毎日10日間摂取した24人の対象;ならびにナプロキセン 500mg b.i.d単剤療法を7日間摂取した25人の対象。この実験において、血清尿酸はスクリーニング時および1、3、5、7、9、14および21日目に測定した。
表1
【表1】

【0072】
図3および表1に示されるように、MBX102−2DM01011b実験からのデータは、(−)−ハロフェナートによる治療は、試験した全ての用量レベルで時間経過とともに、用量依存的に、血清尿酸が徐々に低下させることを示す。
【0073】
(−)−ハロフェン酸IL−1βの効果を示す図4〜5に関して用いられる方法は、下記のとおりであった:
【0074】
8週齢の雄のC57BL/6Jマウスに、2.5mLの3% チオグリコレートを腹腔内に注射した。注射後3日目、マウスを頸椎脱臼法で屠殺した。マクロファージは、5mLのPBSを腹腔内に注入し、腹腔内を外科的に露出させ、腹腔液を1mL シリンジで吸引することによって素早く採取した。複数匹の動物からのマクロファージを貯蔵し、4℃で1500rpmにて10分間遠心分離した。混入した赤血球は、室温で5分間の10mL RBC溶解緩衝液による溶解、続いて4℃で1500rpmにて10分の遠心分離により沈殿物から取り除いた。前記脂肪を1回洗浄し、RPMI 1640、10% FBS/0.1% Pen/Strep中に再懸濁させ、マルチウェルプレートにプレーティングした(24ウェルプレートについては、1,000,000細胞/ウェルおよび96ウェルプレートについては、100,000細胞/ウェル)。前記細胞を30時間培養し、新たなRPMI 1640、0.5% FBSを再供給し、終夜インキュベートした。前記細胞は、DMSO、(−)−ハロフェン酸(75および150μM)で1時間処理し、続いて100ng/mL LPSでさらに8時間刺激した。続いて、LPSで刺激した細胞上澄みを採取し、−20℃で保存し、その後、Procarta(登録商標)サイトカインプロファイリングキット(Panomics Inc.,カリフォルニア州、フレモント)を用いて分泌サイトカインレベルを分析した。
【0075】
前記細胞は、遺伝子発現解析のためにQiazol溶解溶液で採取した。RNAを単離し(製造業者の説明書に従ってMagAttract RNA Universal Tissue M48 Kitを使用)、cDNAを逆転写で調製し(製造業者の説明書に従ってHigh Capacity cDNA逆転写キットを使用)、次いでRT−PCR(Taqman)を、IL−1β用の遺伝子発現アッセイmix(ABI カタログ番号:Mm00434228_m1)およびTaqman fast universal PCR master mixを用いて96ウェルPCRプレート中で行った。IL−1βのCt値は、ABI配列検出ソフトウェアを用いて決定した。遺伝子発現「LPSと比較した倍率変化」は、ABI(カリフォルニア州、フォスターシティ)によって推奨されるような相対定量化のための比較Ct法を用いて算出した。この方法は、前記化合物で前もって処理した試料+LPSのCt値を、ベヒクルで処理した試料+LPSと比較することに関連する。化合物およびベヒクルで処理した試料の両方のCt値は、内在性ハウスキーピング遺伝子(GAPDH)で標準化した。この方法は、2^−[delta][delta]Ct法(ここで、[delta][delta]Ct=[delta]Ct(試料)−[delta]Ct(対照))としても知られている。ここで、[delta]Ct(試料)は、内在性ハウスキーピング遺伝子に標準化した化合物で処理した試料についてのCt値であり、[delta]Ct(対照)は、内在性ハウスキーピング遺伝子に標準化したベヒクルで処理した試料についてのCt値である。次いで、倍率変化は、式2^−[delta][delta]Ctを用いて算出する。各実験条件は4ウェルずつ行った。反復実験からの「LPSと比較した倍率変化」データをプールし、有意差は、Tukey事後検定とともに一元配置分散分析法を用いて試験した(=p<0.05,**=p<0.01および***=p<0.001)。
【0076】
図6および7に示されるデータは、Glynase(登録商標)(微粒子化グリブリド)の安定な投薬を受けた2型糖尿病患者に付与した(−)−ハロフェナートの効果を評価する単一施設の第1相の無作為化単盲検反復投与試験(M102−0507)に基づいて作成した。適格を有する患者に、Glynase(登録商標)を最初に3mg/日で3日間投与し、安全性および耐容性が治験責任医師に認められれば、該用量は、Glynase(登録商標) 6mg/日まで4日間増加させ、次いで、21日目まで、Glynase(登録商標)6mgおよび(−)−ハロフェナート400mgまたは600mgのいずれかで14日間投与し、前記患者を22日目に退院させた。このスケジュールを表2にまとめる。
表2
【表2】
【0077】
この実験では、基準値からの高感受性C−反応性タンパク質(hs−CRP)の変化がエンドポイントの1つであった。hs−CRPが1日目から8日目まで増加し(グループ1で20.8%およびグループ2で15.6%)、次いで8日目と22日目の間で減少することが観察された。22日目では、1日目と比較したC−反応性タンパク質の平均パーセント変化は、グループ1((−)−ハロフェナート 400mg)およびグループ2((−)−ハロフェナート 600mg)において、それぞれ−21.1%および−32.9%であった。
表3
(−)−ハロフェナート 600mgによる治療(8〜22日目)
【表3】
【0078】
図6〜7および表3に示されるように、M102−10507試験からのデータにより、600mgの毎日投与における(−)−ハロフェナートによる治療は、1日目(基準)および8日目(グリブリドのみの期間)からhs−CRPを顕著に減少させることが示される。平均hs−CRP変化は、それぞれ−32.9%(p=0.0091)および−33.3%(p=0.0214)であった。
【実施例】
【0079】
実施例1:インビトロにおける尿酸で誘発された炎症の抑制
分化したマウス3T3−L1脂肪細胞を24ウェルプレート中でインビトロにて培養する。培地に、(−)−ハロフェン酸を50〜150μMの最終濃度で加え、5mg/dLまたは15mg/dLで尿酸を加え、3または7日間培養し続けた。細胞の並行培養をジメチルスルホキシド(DMSO)などのビヒクルの存在下で行う。培養期間終了時に培地を除去し、細胞を単離し、メッセンジャーRNAを調製した。炎症促進性サイトカインの集団(下記に限定されないが、単球走化性タンパク質−1(MCP−1)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−1β、(IL−1β)、インターロイキン−6(IL−6)およびインターロイキン−12(Il−12)を含む)を示す分泌サイトカインのレベルは、市販品として入手可能なサイトカインアッセイキットを用いて細胞から単離した培地中で調べる。炎症促進性サイトカインの集団(以下に限定されないが、単球走化性タンパク質−1(MCP−1)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−1β、(IL−1β)、インターロイキン−6(IL−6)およびインターロイキン−12(Il−12)を含む)についてのmRNAの遺伝子発現のレベルは、リアルタイムPCRを用いて調べる。(−)−ハロフェナートの添加は、尿酸の3T3−L1脂肪細胞への取り込みを阻害し、それにより尿酸で誘発される炎症応答を抑制し、その結果、この炎症促進性サイトカインの集団の発現レベル、続いて分泌が減少される。同様の試験はまた、初代マウスマクロファージおよびヒト臍静脈内皮細胞で行われる。
【0080】
実施例2:動物痛風発赤モデル
出典明示により全体が本明細書に取り込まれるR. Torres et al., Ann. Rheum. Dis. 68, 1602-08 (2009)(http://ard.bmj.com/content/68/10/1602.longで利用可能)に記載のモデルを使用する。簡単に説明すると、20匹のC57BL6マウスをJackson Laboratories(米国、メイン州のバー・ハーバー)から入手し、12〜16週齢を使用する。前記マウスを試験前に少なくとも1週間単独で飼育し、自由に常に餌および水を摂取可能にする。アルハロフェナートは、マウス(試験マウス)の半分(10匹)には、125mg/kgの用量で、尿酸による炎症の誘発前の例えば、1日、5日および2週間を含む期間中、毎日経口投与する。残りの10匹のマウス(対照マウス)には、1% カルボキシメチルセルロース//2% Tween−80からなるベヒクルを投与する。別の治療方法において、アルハロフェナートは、尿酸治療時に共投与する。
【0081】
尿酸一ナトリウム(MSU)の結晶は、R. Liu-Bryan et al., Arthritis Rheum. 52, 2936-46 (2005)に記載されるように調製する。あるモデルにおいて、MSU結晶(0.5mg)を20マイクロリットルのエンドトキシンを含まないPBSに懸濁させ、2.5% イソフルランで麻酔したマウスの脛骨足根骨関節(くるぶし)に筋肉内注射する。温痛覚過敏、荷重能力、角度関節直径および組織学的解析を上記のTorresらに従って行う。炎症促進性サイトカインの集団(下記に限定されないが、単球走化性 タンパク質−1(MCP−1)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−1β、(IL−1β)、インターロイキン−6(IL−6)およびインターロイキン−12(Il−12)を含む)の分泌レベルは、注射した関節から単離した液中で測定する。関節を解剖し、ホモジェナイズしてmRNAを調製し、炎症促進性サイトカインの同一の集団の遺伝子発現レベルを決定した。別のモデルにおいて、マウスに、0.5mLのエンドトキシンを含まないPBS中に懸濁させた1mgのMSUにて腹腔内で注射する。6時間後、マウスを屠殺し、それらの腹膜腔を洗浄し、好中球特異性抗体R−フィコエリトリンを抱合させたラット抗マウスLy−6Gモノクローナル抗体で染色することによって好中球流入の測定用に採取する。別のモデルにおいて、空気嚢を皮下に導入し、1mgのMSUをその空気嚢に注入する。結晶注入後6時間で、その空気嚢に常在する細胞を5mLの緩衝液で灌流することにより収集する。好中球の浸潤は、上記のように染色することによって測定する。単球走化性タンパク質−1(MCP−1)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−1β、(IL−1β)、インターロイキン−6(IL−6)およびインターロイキン−12(Il−12)のレベルはまた、尿酸を注入した空気嚢から単離した灌流した液中で測定する。
【0082】
実施例3:尿酸低下のための治療の開始および維持使用間の痛風発赤の減少におけるアルハロフェナートの有効性を比較する臨床試験
これは二重盲検、並行群、多施設、ランダム化試験である。
【0083】
プライマリーエンドポイント
治療第0〜2週間、治療第3〜12週間および治療第11〜12週のそれぞれの時間枠における急性痛風発赤を経験する患者の割合。
【0084】
セカンダリーエンドポイント:
a.痛風発赤の総数
b.痛風発赤の期間
c.痛風発赤による患者の中止事象
d.痛風発赤の重症度
【0085】
治療計画:
個体を3つの群に無作為化する:対照群(n=100)および2つの実験群(各n=100)。対照群の対象にアロプリノール(300mg)を1日1回投与する。実験群の対象にアルハロフェナート(400mgまたは600mg)を錠剤で1日1回投与する。全ての患者は、治療の最初の2週間発赤予防を受ける。盲検試験薬による治療期間は3ヶ月である。
【0086】
試験対象患者基準:
男性または女性、18歳またはそれ以上。
妊娠の可能性がある女性は、妊娠試験で陰性でなければならない。妊娠の可能性がある女性は、不妊であるか、あるいは避妊しなければならない。
血清尿酸>6.0mg/dLおよび<12mg/dL
原発性痛風の急性関節炎の1980個のARA分類基準に従って痛風を診断する。
【0087】
分析:
主な分析は、治療アプローチに対する目的を用いて、発赤を経験する対象の割合で対照群およびアルハロフェナート群の比較に基づくものである。群間一対比較は、フィッシャーの直接確率検定を用いて行う。
【0088】
前記記載は、具体的な実施態様を説明するが、当業者は、様々な改変と代替物が開発されうることを認識するものである。よって、上記に記載の特定の実施態様および実施例は、例示のみであって、本発明の範囲を限定するものとされず、本発明の範囲は、特許請求の範囲の全範囲およびそのいずれか全ての均等物に付与されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7