特許第6192153号(P6192153)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192153
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】表示装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/02 20060101AFI20170828BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20170828BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170828BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20170828BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20170828BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20170828BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   H05B33/02
   G02B5/30
   H05B33/14 A
   H05B33/10
   G09F9/00 313
   G09F9/00 338
   G09F9/00 348Z
   G09F9/30 365
   H01L27/32
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-169763(P2012-169763)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-29787(P2014-29787A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 寛教
(72)【発明者】
【氏名】武田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 享
(72)【発明者】
【氏名】宇和田 一貴
(72)【発明者】
【氏名】村上 奈穗
【審査官】 越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−127885(JP,A)
【文献】 特開2007−265968(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/065587(WO,A1)
【文献】 特開2011−070012(JP,A)
【文献】 特開2004−063085(JP,A)
【文献】 特開2008−078038(JP,A)
【文献】 特開2009−301013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/02
G02B 5/30
G09F 9/00
G09F 9/30
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示素子と該表示素子の視認側に配置された円偏光板とを備える表示装置であって、
該円偏光板が、偏光子と位相差フィルムとを有し、
該位相差フィルムがポリカーボネート樹脂またはセルロースエステル系樹脂で形成され、
該位相差フィルムの面内位相差が、下記式(1)の関係を満たし、
該表示素子の周縁部の少なくとも一辺に沿って配線圧着部が設けられており、
該表示素子の周縁部の何れの辺に沿って設けられた該配線圧着部についても、該位相差フィルムの遅相軸と、該配線圧着部が延びる方向とのなす角度のうち小さい方の角度θ1が、下記式(2)の関係を満たす、
表示装置:
Re(450)<Re(550) ・・・(1)
θ1≦70° ・・・(2)
ここで、Re(450)およびRe(550)は、それぞれ、23℃における波長450nmおよび550nmで測定した面内位相差を表す。
【請求項2】
前記偏光子の吸収軸と前記位相差フィルムの遅相軸とのなす角度θ2が、下記式(3)を満たす、請求項1に記載の表示装置:
38°≦θ2≦52° ・・・(3)
【請求項3】
前記配線圧着部と前記円偏光板とのクリアランスが7mm以下である、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示素子が有機ELパネルである、請求項1から3のいずれかに記載の表示装置。
【請求項5】
表示素子の周縁部の少なくとも一辺に沿って配線圧着部を確保して、偏光子と位相差フィルムとを有する円偏光板を該表示素子に貼り合わせること、
該配線圧着部において該表示素子と配線とを加熱下で圧着して接続すること、
該配線圧着部および該円偏光板の配線圧着部側端部を含む領域を、溶媒を用いて洗浄することを含み、
該位相差フィルムがポリカーボネート樹脂またはセルロースエステル系樹脂で形成され、
該位相差フィルムの面内位相差が、下記式(1)の関係を満たし、
該表示素子の周縁部の何れの辺に沿って設けられた該配線圧着部についても、該位相差フィルムの遅相軸と該配線圧着部が延びる方向とのなす角度のうち小さい方の角度θ1が、下記式(2)の関係を満たす、
表示装置の製造方法:
Re(450)<Re(550) ・・・(1)
θ1≦70° ・・・(2)
ここで、Re(450)およびRe(550)は、それぞれ、23℃における波長450nmおよび550nmで測定した面内位相差を表す。
【請求項6】
前記圧着および溶媒による洗浄において前記円偏光板にクラックが発生しない、請求項5に記載の表示素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンに代表されるスマートデバイス、またデジタルサイネージやウィンドウディスプレイなどの表示装置が強い外光の下使用される機会が増加している。それに伴い、表示装置自体または表示装置に用いられるタッチパネル部やガラス基板、金属配線等の反射体による外光反射や背景の映り込み等の問題が生じている。特に、近年実用化されてきている有機ELパネルは、反射性の高い金属層を有するため、外光反射や背景の映り込み等の問題を生じやすい。そこで、位相差フィルム(代表的には、λ/4板)を有する円偏光板を視認側に設けることにより、これらの問題を防ぐことが知られている。
【0003】
一方、表示装置の表示素子(例えば、有機ELパネル)を駆動回路基板と接続する際には、フレキシブルケーブルを高温・高圧下で表示素子に圧着した後、焦げおよび/またはゴミを溶媒により拭き取り・洗浄する必要がある。通常、圧着部は表示素子の非表示部に設けられ、表示部に対する熱および溶媒の影響が小さいよう設計されている。しかし、近年、技術の向上およびデザインに対する要求の高まりから、非表示部を狭くする要望が高まっており、圧着部と表示部との距離(クリアランス)が十分に確保できなくなってきている。その結果、表示部に貼り付けられた円偏光板が熱および/または溶媒の影響を受け、位相差フィルムにクラックが発生するという問題が発生している。この問題に対し、偏光板に用いる粘着剤の物性を変更し、位相差板や偏光子の伸縮による応力を緩和するような手法が提案されている(特許文献1参照)が、このような手法では偏光板端部への集中的な熱および/または溶媒による影響を、必ずしも緩衝出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−068674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、デザイン性および量産性を低下させることなく、製造工程において円偏光板のクラックの発生を抑制し得る表示装置およびそのような製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の表示装置は、表示素子と該表示素子の視認側に配置された円偏光板とを備える。円偏光板は、偏光子と位相差フィルムとを有し、該位相差フィルムの面内位相差は、下記式(1)の関係を満たし、該位相差フィルムの遅相軸と、該表示素子の周縁部の少なくとも一辺に沿って設けられた配線圧着部が延びる方向とのなす角度θ1は、下記式(2)の関係を満たす:
Re(450)<Re(550) ・・・(1)
θ1≦70° ・・・(2)
ここで、Re(450)およびRe(550)は、それぞれ、23℃における波長450nmおよび550nmで測定した面内位相差を表す。
1つの実施形態においては、上記偏光子の吸収軸と上記位相差フィルムの遅相軸とのなす角度θ2は、下記式(3)を満たす:
38°≦θ2≦52° ・・・(3)
1つの実施形態においては、上記配線圧着部と上記円偏光板とのクリアランスは7mm以下である。
1つの実施形態においては、上記表示素子は有機ELパネルである。
本発明の別の局面によれば、表示装置の製造方法が提供される。この製造方法は、表示素子の周縁部の少なくとも一辺に沿って配線圧着部を確保して、偏光子と位相差フィルムとを有する円偏光板を該表示素子に貼り合わせること、該配線圧着部において該表示素子と配線とを加熱下で圧着して接続すること、該配線圧着部および該円偏光板の配線圧着部側端部を含む領域を、溶媒を用いて洗浄することを含み、該位相差フィルムの面内位相差は、上記式(1)の関係を満たし、該位相差フィルムの遅相軸と該配線圧着部が延びる方向とのなす角度θ1は、上記式(2)の関係を満たす。
1つの実施形態においては、上記製造方法によれば、上記圧着および溶媒による洗浄において上記円偏光板にクラックが発生しない。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、円偏光板の位相差フィルムの遅相軸と表示素子の周縁部の少なくとも一辺に沿って設けられた配線圧着部が延びる方向とのなす角度を所定の角度以下に制御し、および、当該位相差フィルムとしていわゆる逆分散の波長依存性を有するフィルムを用いることにより、配線の圧着およびその後の溶媒洗浄における位相差フィルムのクラックの発生を良好に抑制することができる。本発明によれば、配線圧着部と円偏光板とのクリアランスが小さい場合でもこのような効果を実現可能であるので、デザイン上の要請等により非表示部を小さくしても、クラックの発生を抑制することができる。さらに、本発明によれば、クラックの発生を抑制するために付加的な操作も煩雑な操作も必要とされないので、表示装置の製造効率も維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1つの実施形態による表示装置の概略断面図である。
図2】表示装置に設けられる配線圧着部の代表的な形態を説明する概略平面図である。
図3】本発明に用いられる有機ELパネルの一形態を説明する概略断面図である。
図4】本発明に用いられる円偏光板の一形態を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0010】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(550)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Re=(nx−ny)×dによって求められる。なお、「Re(450)」は、23℃における波長450nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。Rth(550)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx−nz)×dによって求められる。なお、「Rth(450)」は、23℃における波長450nmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
【0011】
以下、本発明の特定の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。なお、図面は、見やすくするための概略図であり、また、縦、横および厚み方向の縮尺は実際とは異なっている。
【0012】
A.表示装置の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による表示装置の概略断面図であり、図2は、表示装置に設けられる配線圧着部の代表的な形態を説明する概略平面図である。この表示装置100は、有機ELパネル10と、有機ELパネル10の視認側に配置された円偏光板20とを備える。表示装置100には配線圧着部30が設けられ、配線圧着部30に圧着された例えばフレキシブルケーブル40により駆動回路基板(図示せず)に接続されている。配線圧着部30は、非表示部に設けられる。より具体的には、配線圧着部30は、有機ELパネル100の周縁部の少なくとも一辺に沿って設けられる。例えば、配線圧着部30は、図2(a)に示すように有機ELパネルの周縁部のいずれか一辺に沿って設けられてもよく;図2(b)に示すように対向する二辺に沿って設けられてもよく;図2(c)に示すように隣接する二辺に沿って設けられてもよく;図2(d)に示すように三辺に沿って設けられてもよく;図2(e)に示すように周縁部全体(四辺)に沿って設けられてもよい。なお、図1および図2は、表示素子が有機ELパネルである場合を例示しているが、本発明における表示素子は有機ELパネルに限られず、本発明の効果が得られ得る(代表的には、製造において配線の圧着工程が含まれる)任意の適切な表示素子(例えば、液晶パネル、プラズマディスプレイパネル)を採用することができる。
【0013】
円偏光板20は、偏光子と位相差フィルムとを有する(円偏光板の詳細な構成については、後述のC項で説明する)。位相差フィルムの面内位相差は、下記式(1)の関係を満たす。
Re(450)<Re(550) ・・・(1)
このような関係を満たすことにより、有機ELパネルの正面方向において優れた反射色相を達成することができる。さらに、このような関係を有する位相差フィルムは、後述の角度θ1を規定することによるクラック抑制の効果が顕著である。
【0014】
位相差フィルムの遅相軸と配線圧着部が延びる方向とのなす角度θ1は、下記式(2)の関係を満たす。
θ1≦70° ・・・(2)
このような関係を満たすことにより、配線の圧着およびその後の溶媒洗浄における位相差フィルムのクラックの発生を良好に抑制することができる。配線圧着部が表示素子の周縁部のいずれか一辺または対向する二辺に設けられる場合(例えば、図2(a)および図2(b)に示すような場合)、角度θ1は、好ましくは50°以下であり、より好ましくは30°以下であり、さらに好ましくは10°以下であり、特に好ましくは約0°(すなわち、遅相軸の方向と矢印Aの方向が実質的に平行)である。配線圧着部が表示素子の周縁部のいずれか隣接する二辺、あるいは三辺以上に設けられる場合(例えば、図2(c)〜図2(e)に示すような場合)、角度θ1は、好ましくは30°〜60°であり、より好ましくは40°〜50°であり、さらに好ましくは42°〜48°であり、特に好ましくは約45°である。角度θ1をこのように設定すれば、矢印Aの方向に延びる配線圧着部および矢印Bの方向に延びる配線圧着部のいずれに対しても、角度θ1を上記所望の範囲とすることができる。その結果、矢印Aの方向に延びる配線圧着部における配線の圧着およびその後の溶媒洗浄に対しても、矢印Bの方向に延びる配線圧着部における配線の圧着およびその後の溶媒洗浄に対しても、クラックの発生を抑制することができる。なお、図2(c)〜図2(e)においては、簡単のため、θ1は矢印Aの方向に対する遅相軸の角度として表しているが、矢印Bの方向に対する角度として表してもよいことは言うまでもない。また、本明細書において角度に言及するときは、特に明記しない限り、当該角度は時計回りおよび反時計回りの両方の方向の角度を包含する。
【0015】
配線圧着部30と円偏光板20とのクリアランス(図1における配線圧着部の円偏光板側の端部と円偏光板の配線圧着部側の端部との距離C)は、好ましくは7mm以下、より好ましくは3.5mm以下、さらに好ましくは2mm以下である。本発明の実施形態によれば、デザイン上の要請等により非表示部が小さくなり、クリアランスがこのように小さくなっても、円偏光板の位相差フィルムのクラック発生を良好に抑制することができる。
【0016】
B.有機ELパネル
有機ELパネル10としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な有機ELパネルを採用することができる。図3は、本発明に用いられる有機ELパネルの一形態を説明する概略断面図である。有機ELパネル10は、代表的には、基板11と、第1電極12と、有機EL層13と、第2電極14と、これらを覆う封止層15とを有する。有機ELパネル10は、必要に応じて、任意の適切な層をさらに有し得る。例えば、基板上に平坦化層(図示せず)を設けてもよく、第1電極と第2電極との間に短絡を防止するための絶縁層(図示せず)を設けてもよい。
【0017】
基板11は、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な材料で構成され得る。基板11は、代表的には、バリア性を有する材料で構成される。このような基板は、有機EL層13を酸素や水分から保護し得る。バリア性を有する材料の具体例としては、ガラス、合金、金属が挙げられる。合金としては、例えば、ステンレス、36アロイ、42アロイが挙げられる。金属としては、例えば、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、チタンが挙げられる。基板の厚みは、好ましくは5μm〜500μmであり、より好ましくは5μm〜200μmであり、さらに好ましくは10μm〜300μmである。
【0018】
第1電極12は、代表的には陽極として機能し得る。この場合、第1電極を構成する材料としては、正孔注入性を容易にするという観点から、仕事関数の大きい材料が好ましい。このような材料の具体例としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物(ITSO)、酸化タングステンを含むインジウム酸化物(IWO)、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物(IWZO)、酸化チタンを含むインジウム酸化物(ITiO)、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物(ITTiO)、モリブテンを含む酸化インジウムスズ(ITMO)などの透明導電性材料;ならびに、金、銀、白金などの金属およびそれらの合金が挙げられる。
【0019】
有機EL層13は、種々の有機薄膜を含む積層体である。図示例では、有機EL層13は、正孔注入性有機材料(例えば、トリフェニルアミン誘導体)からなり、陽極からの正孔注入効率を向上させるべく設けられた正孔注入層13aと、例えば銅フタロシアニンからなる正孔輸送層13bと、発光性有機物質(例えば、アントラセン、ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニル〕ベンジジン、N,N´−ジフェニル−N−N−ビス(1−ナフチル)−1,1´−(ビフェニル)−4,4´−ジアミン(NPB))からなる発光層13cと、例えば8−キノリノールアルミニウム錯体からなる電子輸送層13dと、電子注入性材料(例えば、ペリレン誘導体、フッ化リチウム)からなり、陰極からの電子注入効率を向上させるべく設けられた電子注入層13eと、を有する。有機EL層13は、図示例に限定されず、発光層13cにおいて電子と正孔とが再結合して発光を生じさせ得る任意の適切な組み合わせが採用され得る。有機EL層13の厚みは、できる限り薄いことが好ましい。発光した光を可能な限り透過させることが好ましいからである。有機EL層13は、例えば5nm〜200nm、好ましくは10nm程度のきわめて薄い積層体で構成され得る。
【0020】
第2電極14は、代表的には陰極として機能し得る。この場合、第2電極を構成する材料としては、電子注入を容易にして発光効率を上げるという観点から、仕事関数の小さい材料が好ましい。このような材料の具体例としては、アルミニウム、マグネシウムおよびこれらの合金が挙げられる。
【0021】
封止層15は、任意の適切な材料で構成される。封止層15は、好ましくは、バリア性および透明性に優れた材料で構成される。封止層を構成する材料の代表例としては、エポキシ樹脂、ポリ尿素が挙げられる。1つの実施形態においては、封止層15は、エポキシ樹脂(代表的には、エポキシ樹脂接着剤)を塗工し、その上にバリア性シートを貼り付けて形成してもよい。
【0022】
有機ELパネル10は、当業界で通常採用されている方法により製造することができる。
【0023】
C.円偏光板
円偏光板20としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な円偏光板を採用することができる。図4は、本発明に用いられる円偏光板の一形態を説明する概略断面図である。円偏光板20は、偏光子21と、偏光子21の片側に配置された保護フィルム22と、偏光子21のもう片側に配置された位相差フィルム23とを備える。保護フィルム22は、目的に応じて省略されてもよい。一方で、必要に応じて、偏光子21と位相差フィルム23との間に、別の保護フィルム(以下、内側保護フィルムと称する場合がある:図示せず)を配置してもよい。
【0024】
位相差フィルム23は、上記のとおり、その面内位相差が、Re(450)<Re(550)の関係を満たす。すなわち、位相差フィルムは、いわゆる逆分散の波長依存性を示す。位相差フィルム23は、屈折率特性がnx>nyの関係を示し、遅相軸を有する。偏光子21と位相差フィルム23とは、偏光子21の吸収軸と位相差フィルム23の遅相軸とが所定の角度をなすように積層されている。好ましくは、偏光子21の吸収軸と位相差フィルム23の遅相軸とのなす角度θ2は、下記式(3)を満たす:
38°≦θ2≦52° ・・・(3)
角度θ2は、より好ましくは39°〜51°であり、さらに好ましくは42°〜48°である。
【0025】
円偏光板の全体厚みは、その構成により異なるが、代表的には40μm〜300μm程度である。円偏光板は、当業界で通常採用されている方法により製造することができる。以下、円偏光板を構成する各層について説明する。
【0026】
C−1.偏光子
上記偏光子としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。具体例としては、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0027】
上記ヨウ素による染色は、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは、3〜7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、ポリビニルアルコール系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗することで、ポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0028】
偏光子の厚みは、代表的には、1μm〜80μm程度である。
【0029】
C−2.位相差フィルム
上記位相差フィルムは、上述のとおり、屈折率特性がnx>nyの関係を示す。位相差フィルムの面内位相差Re(550)は、好ましくは100nm〜180nm、より好ましくは135nm〜155nmである。
【0030】
位相差フィルムは、上述のとおり、いわゆる逆分散の波長依存性を示す。具体的には、その面内位相差は、Re(450)<Re(550)の関係を満たす。Re(450)/Re(550)は、好ましくは0.8以上1.0未満であり、より好ましくは0.8〜0.95である。逆分散の波長依存性を示す位相差フィルムを用いることにより、配線の圧着およびその後の溶媒洗浄におけるクラックの発生を良好に抑制することができる。
【0031】
位相差フィルムは、nx>nyの関係を有する限り、任意の適切な屈折率楕円体を示す。好ましくは、位相差フィルムの屈折率楕円体は、nx>ny≧nzの関係を示す。位相差フィルムのNz係数は、好ましくは1〜2であり、より好ましくは1〜1.5であり、さらに好ましくは1〜1.3である。
【0032】
位相差フィルムは、上記のような光学特性を満足させ得る、任意の適切な樹脂で形成される。位相差フィルムを形成する樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、シクロオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、セルロースエステル系樹脂等が挙げられる。好ましくは、ポリカーボネート樹脂である。クラック発生の抑制効果が顕著だからである。位相差フィルムを形成する樹脂は、単独で用いてもよく、所望の特性に応じて組み合わせて用いてもよい。
【0033】
1つの実施形態においては、上記ポリカーボネート樹脂は、フルオレン構造を有するジヒドロキシ化合物(フルオレン系ジヒドロキシ化合物)を含む。中でも得られるポリカーボネート樹脂の耐熱性若しくは機械強度、光学特性または重合反応性の観点から9,9−ジフェニルフルオレンの構造を有する下記式(1)で表されるものが好ましい。
【0034】
【化1】
【0035】
前記一般式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜炭素数20のシクロアルキル基、または、置換若しくは無置換の炭素数6〜炭素数20のアリール基を表し、それぞれのベンゼン環に4つある置換基のそれぞれとして、同一の又は異なる基が配されている。Xは置換若しくは無置換の炭素数2〜炭素数10のアルキレン基、置換若しくは無置換の炭素数6〜炭素数20のシクロアルキレン基、または、置換若しくは無置換の炭素数6〜炭素数20のアリーレン基を表す。m及びnはそれぞれ独立に0〜5の整数である。
【0036】
〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は無置換若しくはエステル基、エーテル基、カルボン酸、アミド基、ハロゲンが置換した炭素数1〜6のアルキル基であるのが好ましく、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であるのがより好ましい。Xは無置換若しくはエステル基、エーテル基、カルボン酸、アミド基、ハロゲンが置換した炭素数2〜炭素数10のアルキレン基、無置換若しくはエステル基、エーテル基、カルボン酸、アミド基、ハロゲンが置換した炭素数6〜炭素数20のシクロアルキレン基、または、無置換若しくはエステル基、エーテル基、カルボン酸、アミド基、ハロゲンが置換した炭素数6〜炭素数20のアリーレン基が好ましく、炭素数2〜6のアルキレン基であるのがより好ましい。又、m及びnはそれぞれ独立に0〜2の整数であるのが好ましく、中でも0又は1が好ましい。
【0037】
具体的には、例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル]フルオレンおよび9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル]フルオレンなどが挙げられる。
【0038】
この中でも、光学的性能の発現、ハンドリング性、入手のしやすさ等から、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレンが好ましく、耐熱性を要求される場合には、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンを用いることが好ましく、フィルムの靭性が要求される場合には、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを用いることが好ましい。
【0039】
ポリカーボネート樹脂は、原料モノマーとして上記一般式(1)で表される構造単位を有するフルオレン系ジヒドロキシ化合物を全ジヒドロキシ化合物に対して10モル%以上用いて得られたものであることが好ましく、さらに好ましくは20モル%以上、特に好ましくは25モル%以上である。また、好ましくは90モル%以下であり、更に好ましくは70モル%以下であり、特に好ましくは50モル%以下である。該構造単位を有するモノマーの使用量が少な過ぎると、得られたポリカーボネート樹脂が所望の光学的性能を示さなくなる可能性がある。また多すぎると得られたポリカーボネート樹脂の溶融粘度が過度に高くなり、生産性または成形性を低下させる傾向がある。
【0040】
ポリカーボネート樹脂は、所望の光学物性に調節するために、上記のフルオレン系ジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物(その他のジヒドロキシ化合物と称することがある)に由来する構造単位を含んでいることが好ましい。
【0041】
前記その他のジヒドロキシ化合物としては、例えば、直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、直鎖分岐脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物および芳香族ビスフェノール類等が挙げられる。
【0042】
前記直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオールおよび1,12−ドデカンジオール等が挙げられ、特に1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の炭素数3〜6で両末端にヒドロキシ基を有する直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物が好ましい。
【0043】
前記の直鎖分岐脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、ネオペンチルグリコールや2−エチルヘキシレングリコール等を挙げることができる。
【0044】
前記脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノールおよびリモネンなどのテルペン化合物から誘導されるジヒドロキシ化合物等が挙げられ、特に1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたはトリシクロデカンジメタノールが好ましく、より好ましいのは1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノールまたは1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのシクロヘキサン構造を有するジヒドロキシ化合物である。
【0045】
前記芳香族ビスフェノール類としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル等が挙げられ、中でも入手のし易さや耐熱性付与の観点からは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)が好ましい。
【0046】
前記その他のジヒドロキシ化合物としては、得られる位相差フィルムに適度な複屈折若しくは低光弾性係数などの光学特性、靭性、機械強度、接着性などを付与する観点から、構造の一部に下記式(2)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物を少なくとも1種使用することが好ましい。
【0047】
【化2】
【0048】
具体的には、例えば、オキシアルキレングリコール類、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有するジヒドロキシ化合物および環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
【0049】
前記オキシアルキレングリコール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等が挙げられ、中でも数平均分子量150〜2000のポリエチレングリコールが好ましい。
【0050】
前記主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニルおよびビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン等が挙げられる。
【0051】
前記環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、下記式(3)〜(5)で表されるジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0052】
なお、前記「環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物」の「環状エーテル構造」とは、環状構造中にエーテル基を有し、環状鎖を構成する炭素が脂肪族炭素である構造からなるものを意味する。
【0053】
【化3】
【0054】
【化4】
【0055】
【化5】
【0056】
前記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニドおよびイソイデットが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
これらの環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物の中では、耐熱性付与の観点から、上記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物または下記式(4)で表されるスピログリコール等の環状エーテル構造を2つ有するジヒドロキシ化合物がさらに好ましい。
【0058】
原料モノマーとして上記式(3)、(4)および/または(5)で表されるジヒドロキシ化合物を用いる場合は、全ジヒドロキシ化合物に対して10モル%以上用いることが好ましく、さらに好ましくは30モル%以上、特に好ましくは40モル%以上である。また、その上限としては、好ましくは90モル%以下であり、更に好ましくは80モル%以下、特に好ましくは60モル%以下である。該ジヒドロキシ化合物の使用量が少な過ぎたり、多すぎたりすると、得られたポリカーボネート樹脂が所望の光学的性能を示さなくなる可能性がある。
【0059】
その他のジヒドロキシ化合物は、得られるポリカーボネート樹脂の要求性能に応じて、単独でもしくは、2種以上を組み合わせた上で前記フルオレン系ジヒドロキシ化合物と併用してもよい。中でも、所望の光学的性能を発現させ、かつ生産を安定させ、位相差フィルムに見合うような特性のポリカーボネート樹脂を得るには、前記フルオレン系ジヒドロキシ化合物以外に2種以上のその他のジヒドロキシ化合物を共重合させることが好ましい。
【0060】
上記ポリカーボネート樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物および必要に応じその他のジヒドロキシ化合物とホスゲンを反応させて得ることができる。好ましくはこれらのジヒドロキシ化合物のアルカリ溶液と塩化メチレンからなる溶液にホスゲンを吹き込んでオリゴマーを得た後、必要に応じトリエチルアミン等の触媒、モノヒドロキシ化合物等の末端停止剤を使用して所定の分子量に上げた後、塩化メチレン相に溶解しているポリカーボネート樹脂を単離して得ることができる。また、他の方法としては、前記ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得ることができる。
【0061】
用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記式(6)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0062】
【化6】
【0063】
前記式(6)において、AおよびAは、それぞれ置換もしくは無置換の炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基または置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基であり、AとAとは同一であっても異なっていてもよい。AおよびAの好ましいものは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基であり、より好ましいのは無置換の芳香族炭化水素基である。
【0064】
前記式(6)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート(DPC)、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が挙げられる。中でも、好ましくはジフェニルカーボネートまたは置換ジフェニルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。
【0065】
なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、重合反応を阻害したり、得られるポリカーボネート樹脂の色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用することが好ましい。
【0066】
また、上記の炭酸ジエステルの一部をジカルボン酸又はそのエステル(以下、ジカルボン酸化合物と称する)で置換しても良い。このようなジカルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸、およびそれらのメチルエステル体、フェニルエステル体等が用いられる。炭酸ジエステルの一部をジカルボン酸化合物で置換した場合、当該ポリカーボネート樹脂を、ポリエステルカーボネート樹脂と称する場合がある。本発明に用いるポリカーボネート樹脂において、ジカルボン酸化合物に由来する構造単位の含有比率は、全ジヒドロキシ化合物と全カルボン酸化合物に由来する構造単位のうち、45モル%以下であることが好ましく、さらには40モル%以下が好ましい。ジカルボン酸化合物の含有比率が45モル%よりも多くなると、重合性が低下し、所望とする分子量まで重合が進行しなくなることがある。
【0067】
別の実施形態においては、上記ポリカーボネート樹脂として、特許第3325560号に記載の樹脂を用いてもよい。
【0068】
前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、110℃以上150℃以下であることが好ましく、より好ましくは120℃以上140℃以下である。ガラス転移温度が過度に低いと耐熱性が悪くなる傾向にあり、フィルム成形後に寸法変化を起こす可能性があり、又、得られる有機ELパネルの画像品質を下げる場合がある。ガラス転移温度が過度に高いと、フィルム成形時の成形安定性が悪くなる場合があり、又フィルムの透明性を損なう場合がある。なお、ガラス転移温度は、JIS K 7121(1987)に準じて求められる。
【0069】
前記ポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができる。還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定される。還元粘度の下限は、通常0.30dL/gが好ましく、より好ましは0.35dL/g以上である。還元粘度の上限は、通常1.20dL/gが好ましく、より好ましくは1.00dL/g、更に好ましくは0.80dL/gである。還元粘度が前記下限値より小さいと成形品の機械的強度が小さくなるという問題が生じる場合がある。一方、還元粘度が前記上限値より大きいと、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性が低下するという問題が生じる場合がある。
【0070】
上記ポリビニルアセタール樹脂としては、任意の適切なポリビニルアセタール樹脂を用いることができる。代表的には、ポリビニルアセタール樹脂は、少なくとも2種類のアルデヒド化合物及び/又はケトン化合物と、ポリビニルアルコール系樹脂とを縮合反応させて得ることができる。ポリビニルアセタール樹脂の具体例および詳細な製造方法は、例えば、特開2007−161994号公報に記載されている。当該記載は、本明細書に参考として援用される。
【0071】
位相差フィルムは、代表的には、樹脂フィルムを少なくとも一方向に延伸することにより作製される。
【0072】
上記樹脂フィルムの形成方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、溶融押出し法(例えば、Tダイ成形法)、キャスト塗工法(例えば、流延法)、カレンダー成形法、熱プレス法、共押出し法、共溶融法、多層押出し、インフレーション成形法等が挙げられる。好ましくは、Tダイ成形法、流延法およびインフレーション成形法が用いられる。
【0073】
樹脂フィルムの厚み(未延伸フィルム)の厚みは、所望の光学特性、後述の延伸条件などに応じて、任意の適切な値に設定され得る。好ましくは50μm〜300μmであり、より好ましくは80μm〜250μmである。
【0074】
上記延伸は、任意の適切な延伸方法、延伸条件(例えば、延伸温度、延伸倍率、延伸方向)が採用され得る。具体的には、自由端延伸、固定端延伸・自由端収縮、固定端収縮などの様々な延伸方法を、単独で用いることも、同時もしくは逐次で用いることもできる。延伸方向に関しても、水平方向、垂直方向、厚さ方向、対角方向等、様々な方向や次元に行なうことができる。延伸の温度は、好ましくは、樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)±20℃の範囲である。
【0075】
上記延伸方法、延伸条件を適宜選択することにより、上記所望の光学特性(例えば、屈折率楕円体、面内位相差、Nz係数)を有する位相差フィルムを得ることができる。
【0076】
1つの実施形態においては、位相差フィルムは、樹脂フィルムを一軸延伸もしくは固定端一軸延伸することにより作製される。一軸延伸の具体例としては、樹脂フィルムを長尺方向に走行させながら、長手方向(縦方向)に延伸する方法が挙げられる。延伸倍率は、好ましくは10%〜500%である。
【0077】
別の実施形態においては、位相差フィルムは、長尺状の樹脂フィルムを長尺方向に対して角度θの方向に連続的に斜め延伸することにより作製される。斜め延伸を採用することにより、フィルムの長尺方向に対して角度θの配向角を有する長尺状の延伸フィルムが得られ、例えば、偏光子との積層に際してロールツーロールが可能となり、製造工程を簡略化することができる。
【0078】
斜め延伸に用いる延伸機としては、例えば、横および/または縦方向に、左右異なる速度の送り力もしくは引張り力または引き取り力を付加し得るテンター式延伸機が挙げられる。テンター式延伸機には、横一軸延伸機、同時二軸延伸機等があるが、長尺状の樹脂フィルムを連続的に斜め延伸し得る限り、任意の適切な延伸機が用いられ得る。
【0079】
斜め延伸の方法としては、例えば、特開昭50−83482号公報、特開平2−113920号公報、特開平3−182701号公報、特開2000−9912号公報、特開2002−86554号公報、特開2002−22944号公報等に記載の方法が挙げられる。
【0080】
位相差フィルム(延伸フィルム)の厚みは、好ましくは20μm〜100μm、より好ましくは30μm〜80μmである。
【0081】
位相差フィルムは、市販のフィルムをそのまま用いてもよく、市販のフィルムを目的に応じて2次加工(例えば、延伸処理、表面処理)して用いてもよい。市販フィルムの具体例としては、帝人社製の商品名「ピュアエースWR」が挙げられる。
【0082】
位相差フィルム23の偏光子21側の表面には、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、プライマー塗布処理、ケン化処理が挙げられる。コロナ処理としては、例えば、コロナ処理機により常圧空気中で放電する方式が挙げられる。プラズマ処理は、例えば、プラズマ放電機により常圧空気中で放電する方式が挙げられる。フレーム処理は、例えば、フィルム表面に直接火炎を接触させる方式が挙げられる。プライマー塗布処理は、例えば、イソシアネート化合物、シランカップリング剤等を溶媒で希釈し、当該希釈液を薄く塗布する方式が挙げられる。ケン化処理は、例えば、水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬させる方式が挙げられる。好ましくは、コロナ処理、プラズマ処理である。
【0083】
C−3.保護フィルム
保護フィルム22は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0084】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。耐久性に優れ得るからである。上記(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。
【0085】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルが挙げられる。より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0086】
上記(メタ)アクリル系樹脂の具体例としては、例えば、三菱レイヨン社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0087】
上記(メタ)アクリル系樹脂として、高い耐熱性、高い透明性、高い機械的強度を有する点で、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が特に好ましい。
【0088】
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0089】
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、質量平均分子量(重量平均分子量と称することもある)が、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000である。
【0090】
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、Tg(ガラス転移温度)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上、特に好ましくは135℃、最も好ましくは140℃以上である。耐久性に優れ得るからである。上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。
【0091】
なお、本明細書において「(メタ)アクリル系」とは、アクリル系および/またはメタクリル系をいう。
【0092】
保護フィルム22の偏光子と反対側の表面には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。保護フィルムの厚みは、代表的には5mm以下であり、好ましくは1mm以下、より好ましくは1μm〜500μm、さらに好ましくは5μm〜150μmである。
【0093】
内側保護フィルム(図示せず)を設ける場合には、当該内側保護フィルムは、光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm〜10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が−10nm〜+10nmであることをいう。
【0094】
内側保護フィルムの厚みは、好ましくは20μm〜200μm、より好ましくは30μm〜100μm、さらに好ましくは35μm〜95μmである。
【0095】
C−4.易接着層
1つの実施形態においては、位相差フィルム23の偏光子21側の表面に易接着層(図示せず)が設けられてもよい。易接着層を設ける場合、位相差フィルムは、上述の表面処理が施されていてもよく、施されていなくてもよい。好ましくは、位相差フィルムには表面処理が施されている。易接着層と表面処理とを組み合わせることにより、偏光子21と位相差フィルム23との間の所望の接着力の実現が促進され得る。易接着層は、好ましくは、反応性官能基を有するシランを含む。このような易接着層を設けることにより、偏光子21と位相差フィルム23との間の所望の接着力の実現が促進され得る。易接着層の詳細は、例えば、特開2006−171707号公報に記載されている。
【0096】
C−5.その他
円偏光板20を構成する各層の積層には、任意の適切な粘着剤層または接着剤層が用いられる。粘着剤層は、代表的にはアクリル系粘着剤で形成される。接着剤層は、代表的にはポリビニルアルコール系接着剤で形成される。上記のとおり、光拡散層が光拡散粘着剤または光拡散接着剤で構成される場合には、偏光子と位相差フィルムとを積層する粘着剤層または接着剤層は省略され得る。
【0097】
D.表示装置の製造方法
以下、本発明の表示装置の製造方法の一例について説明する。当該製造方法は、表示素子の周縁部の少なくとも一辺に沿って配線圧着部を確保して、円偏光板を該表示素子に貼り合わせること(工程1)、該配線圧着部において該表示素子と配線とを加熱下で圧着して接続すること(工程2)、該配線圧着部および該円偏光板の配線圧着部側端部を含む領域を、溶媒を用いて洗浄すること(工程3)を含む。
【0098】
D−1.工程1
まず、表示素子(例えば、有機ELパネル)の周縁部の少なくとも一辺に沿って配線圧着部を確保する。上記A項で図2を参照して説明したとおり、配線圧着部は、周縁部のいずれか一辺に確保されてもよく、対向する二辺に確保されてもよく、隣接する二辺に確保されてもよく、三辺に確保されてもよく、周縁部すべて(四辺)に確保されてもよい。このように配線圧着部(の領域)を確保した後、円偏光板を表示素子に貼り合わせる。円偏光板の貼り合わせは、任意の適切な手段(例えば、任意の適切な粘着剤を介して)行われる。円偏光板の貼り合わせの際に設けられる円偏光板と配線圧着部とのクリアランスは、上記A項で説明したとおりである。円偏光板は、円偏光板の位相差フィルムの遅相軸と配線圧着部が延びる方向とのなす角度θ1がθ1≦70°となるようにして表示素子に貼り合わせられる。このようにして貼り合わせることにより、以下の工程2および3における位相差フィルムのクラックの発生が良好に抑制される(代表的には、クラックは、実質的には発生しない)。さらに、上記A項およびC項に記載のとおり、円偏光板の位相差フィルムは、Re(450)<Re(550)の関係を有し、いわゆる逆分散の波長依存性を示す。このような位相差フィルムは、クラック抑制効果が顕著である。
【0099】
D−2.工程2
次に、配線圧着部において表示素子と配線(例えば、フレキシブルケーブル)とを加熱下で圧着し、当該配線を介して表示素子と駆動回路基板とを接続する。圧着は、任意の適切な熱プレス機を用いて行われ得る。例えば、圧着時の加熱温度は130℃〜230℃であり、圧着時間は5秒〜25秒であり、圧着時の圧力は1MPa〜5MPaである。
【0100】
D−3.工程3
次に、配線圧着部および円偏光板の配線圧着部側の端部を含む領域を、溶媒を用いて洗浄し、ゴミおよび/または加熱圧着時の焦げを除去する。より具体的には、洗浄は、溶媒を含ませたウェスで該当領域を拭き取ることにより行われ得る。溶媒としては、揮発性が高く、洗浄効果を有し、かつ、表示素子および円偏光板に対する影響が少ないものであれば、任意の適切な溶媒を用いることができる。溶媒の具体例としては、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、トルエン、およびこられの混合物が挙げられる。
【0101】
D−4.その他の工程
本発明の表示素子の製造方法におけるその他の工程は、当業界で通常採用されている方法、操作および手段が採用されるので、詳細な説明は省略する。
【実施例】
【0102】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。各特性の測定方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は重量基準である。
【0103】
(1)厚み
ダイヤルゲージ(PEACOCK社製、製品名「DG−205 type pds−2」)を用いて測定した。
(2)位相差
Axometrics社製のAxoscanを用いて測定した。測定波長は450nm、550nm、測定温度は23℃であった。なお、位相差フィルムから50mm×50mmのフィルム片を切り出して、測定サンプルとした。
(3)クラック評価
実施例および比較例で得られた有機ELパネルの配線部に、異方性導電膜を介してフレキシブル基板を加熱圧着した後、酢酸エチルを含ませたウェスを用いて、配線圧着部および円偏光板の配線圧着部側の端部を拭き取った。この操作による位相差フィルムのクラックの発生の有無を目視または顕微鏡を用いて観察した。なお、加熱圧着は、熱プレス機(アドバンセル社製、AD−50S5C−A)を用いて行った。加熱温度は200℃、圧着時間は10秒間であった。
【0104】
[実施例1]
(偏光子の作製)
長尺状のポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素を含む水溶液中で染色した後、ホウ酸を含む水溶液中で速比の異なるロール間にて6倍に一軸延伸し、長手方向に吸収軸を有する長尺状の偏光子を得た。この長尺状の偏光子は延伸後、巻き取って巻回体とした。
(保護フィルム)
保護フィルムとして、長尺状のトリアセチルセルロースフィルム(厚み40μm、コニカミノルタ社製、商品名:KC4UYW)を用いた。この保護フィルムは巻回体として用意した。なお、この保護フィルムの面内位相差Re(550)は5nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)は45nmであった。
(位相差フィルム)
逆分散の波長依存性を示す市販の位相差フィルム(帝人社製、商品名「ピュアエースWR」)を用いた。この位相差フィルムの面内位相差Re(550)は147nmであり、Re(450)/Re(550)は0.89であった。
【0105】
(円偏光板の作製)
上記の偏光子、保護フィルムおよび位相差フィルムを、それぞれ50mm×50mmに切り出した。偏光子と保護フィルムとをポリビニルアルコール系接着剤を介して貼り合わせた。さらに、偏光子/保護フィルムの積層体と位相差フィルムとを、アクリル系粘着剤層を介して偏光子と位相差フィルムとが隣接するようにして貼り合わせ、保護フィルム/偏光子/位相差フィルムの構成を有する円偏光板を作製した。なお、位相差フィルムは、貼り合わせた際に、その遅相軸と偏光子の吸収軸とが45°の角度をなすように切り出した。
(有機ELパネルの作製)
有機ELディスプレイ(LG社製、製品名「15EL9500」)から有機ELパネルを取り出し、この有機ELパネルに貼り付けられている偏光板を剥がし取り、かわりに、得られた円偏光板を貼り合わせて有機ELパネルを得た。円偏光板は、位相差フィルムの遅相軸と有機ELパネルの配線圧着部が延びる方向とが70°の角度をなすようにして貼り合わせた。また、この時の配線圧着部と円偏光板との端面のクリアランスは1.7mmであった。得られた有機ELパネルを上記(3)のクラック評価に供したところ、クラックの発生は認められなかった。結果を表1に示す。
【0106】
[実施例2]
(ポリカーボネート樹脂フィルムの作製)
イソソルビド(ISB)37.5質量部、9,9−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BHEPF)91.5質量部、平均分子量400のポリエチレングリコール(PEG)8.4質量部、ジフェニルカーボネート(DPC)105.7質量部、および、触媒として炭酸セシウム(0.2質量%水溶液)0.594質量部をそれぞれ反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、反応容器の熱媒温度を150℃にし、必要に応じて攪拌しながら、原料を溶解させた(約15分)。
次いで、反応容器内の圧力を常圧から13.3kPaにし、反応容器の熱媒温度を190℃まで1時間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。反応容器内温度を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、反応容器内の圧力を6.67kPaとし、反応容器の熱媒温度を230℃まで、15分で上昇させ、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。攪拌機の攪拌トルクが上昇してくるので、8分で250℃まで昇温し、さらに発生するフェノールを取り除くため、反応容器内の圧力を0.200kPa以下に減圧した。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出した後に、ペレット化を行い、BHEPF/ISB/PEG=42.9モル%/52.8モル%/4.3モル%のポリカーボネート樹脂Aを得た。得られたポリカーボネート樹脂Aのガラス転移温度は126℃であり、還元粘度は0.372dL/gであった。
得られたポリカーボネート樹脂Aを80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(いすず化工機社製、スクリュー径25mm、シリンダー設定温度:220℃)、Tダイ(幅300mm、設定温度:220℃)、チルロール(設定温度:120〜130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、長さ3m、幅300mm、厚み120μmのポリカーボネート樹脂フィルムを作製した。
【0107】
(位相差フィルムの作製)
得られた樹脂フィルムを、長さ300mm、幅300mmに切り出し、ラボストレッチャーKARO IV(Bruckner社製)を用いて、温度136℃、倍率2倍で縦延伸を行い、位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムのRe(550)は141nm、Rth(550)は141nm、Re(450)/Re(550)は0.89であった。
(有機ELパネルの作製)
上記で得られた位相差フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルム/偏光子/位相差フィルムの構成を有する円偏光板を作製した。さらに、得られた円偏光板を用いたこと、および、位相差フィルムの遅相軸と有機ELパネルの配線圧着部が延びる方向とが45°の角度をなすようにして円偏光板を貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして、有機ELパネルを作製した。得られた有機ELパネルを上記(3)のクラック評価に供したところ、クラックの発生は認められなかった。結果を表1に示す。
【0108】
[実施例3]
位相差フィルムの遅相軸と有機ELパネルの配線圧着部が延びる方向とが0°の角度をなすようにして円偏光板を貼り合わせたこと以外は実施例2と同様にして、有機ELパネルを作製した。得られた有機ELパネルを上記(3)のクラック評価に供したところ、クラックの発生は認められなかった。結果を表1に示す。
【0109】
[比較例1]
位相差フィルムの遅相軸と有機ELパネルの配線圧着部が延びる方向とが75°の角度をなすようにして円偏光板を貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして、有機ELパネルを作製した。得られた有機ELパネルを上記(3)のクラック評価に供したところ、位相差フィルムに数本のクラックが発生した。結果を表1に示す。
【0110】
[比較例2]
フラットな波長分散特性を示すシクロオレフィン系樹脂フィルム(オプテス社製、ゼオノアフィルムZF−14、厚み100μm)を、ラボストレッチャー(Bruckner社製、KARO IV)を用いて延伸温度135℃、延伸倍率2倍で縦一軸延伸し、位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの面内位相差Re(550)は147nmであり、Re(450)/Re(550)は1.00であった。この位相差フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルム/偏光子/位相差フィルムの構成を有する円偏光板を作製した。さらに、得られた円偏光板を用いたこと以外は実施例2と同様にして、有機ELパネルを作製した。得られた有機ELパネルを上記(3)のクラック評価に供したところ、位相差フィルムにクラックが多数発生した。
【0111】
【表1】
【0112】
[評価]
表1から明らかなように、逆分散の波長依存性を有する位相差フィルムを用い、かつ、円偏光板の位相差フィルムの遅相軸と有機ELパネルの配線圧着部が延びる方向とがなす角度θ1を所定の角度以下とした本発明の実施例は、加熱圧着およびその後の溶媒洗浄においてクラックの発生を防止することができた。角度θ1が所定の角度よりも大きい比較例1、および、いわゆるフラット分散の位相差フィルムを用いた比較例2はいずれも、加熱圧着およびその後の溶媒洗浄においてクラックが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の表示装置は、スマートフォンのようなスマートデバイス、デジタルサイネージ、ウィンドウディスプレイなどに好適に利用され得る。
【符号の説明】
【0114】
10 表示素子
20 円偏光板
21 偏光子
22 保護フィルム
23 位相差フィルム
30 配線圧着部
100 表示装置
図1
図2
図3
図4