【文献】
E. Bey, S. Marchais-Oberwinkler, R. Werth, M. Negri, Y.A. Al-Soud, P. Kruchten, A. Oster, M. Frotscher, B. Birk, R.W. Hartmann,"Design, Synthesis, Biological Evaluation and Pharmacokinetics of Bis(hydroxyphenyl) substituted Azoles, Thiophenes, Benzenes, and Aza-Benzenes as Potent and Selective Nonsteroidal Inhibitors of 17beta-Hydroxysteroid Dehydrogenase Type 1 (17beta-HSD1).",Journal of Medicinal Chemistry,2008年,Vol.51, No.21,pp.6725-6739
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に関し詳細に説明する。
本発明は、一般式(1)で表される化合物である。
(式中、A
1およびA
2はそれぞれ独立に、ニトロ基またはアミノ基を表す)
【0012】
一般式(1)で表される化合物において、A
1およびA
2はそれぞれ独立に、ニトロ基またはアミノ基を表し、より好ましくは、A
1およびA
2が同時に、ニトロ基またはアミノ基を表す。また、一般式(1)で表される化合物において、A
1およびA
2はそれぞれ独立に、エーテル結合(−O−)に対して、オルト位、メタ位またはパラ位を表し、より好ましくは、メタ位またはパラ位を表し、さらに好ましくは、A
1およびA
2が同時に、メタ位またはパラ位を表す。
【0013】
一般式(1)で表される化合物は、より好ましくは、一般式(1−A)または一般式(1−B)で表される化合物である。
一般式(1−A)で表される化合物において、ニトロ基は、エーテル結合
(−O−)に対して、オルト位、メタ位またはパラ位を表し、より好ましくは、二つのニトロ基は同時に、メタ位またはパラ位を表す。
一般式(1−B)で表される化合物において、アミノ基は、エーテル結合
(−O−)に対して、オルト位、メタ位またはパラ位を表し、より好ましくは、二つのアミノ基は同時に、メタ位またはパラ位を表す。
【0014】
一般式(1)において、A
1およびA
2が同時にニトロ基である一般式(1−A)で表される化合物の製造方法に関しては、塩基の存在下、式(2)で表される化合物と、ジニトロベンゼン及びハロゲン化ニトロベンゼンから選ばれる少なくとも1種の化合物を反応させることにより製造することができる。
【0015】
式(2)で表される化合物は、例えば、1,3−ビス(4’−メトキシフェニル)ベンゼンと、ヨウ化水素酸、または三臭化ホウ素を作用させることにより製造することができる[例えば、J.Amer.Chem.Soc.,66,628(1944)、
J.Mater.Chem.,9、661(1999)、J.Med.Chem.,51、6725(2008)に記載の方法を参考にすることができる]。
【0016】
ジニトロベンゼンの具体例としては、1,2−ジニトロベンゼン、1,3−ジニトロベンゼン、1,4−ジニトロベンゼンが挙げられ、1,3−ジニトロベンゼン、1,4−ジニトロベンゼンが好ましい。
ハロゲン化ニトロベンゼンの具体例としては、クロロニトロベンゼン、ブロモニトロベンゼン、フルオロニトロベンゼンが挙げられ、クロロニトロベンゼン、フルオロニトロベンゼンが好ましく、クロロニトロベンゼンがより好ましい。
【0017】
ハロゲン化ニトロベンゼンの好ましい具体例としては、例えば、2−クロロニトロベンゼン、3−クロロニトロベンゼン、4−クロロニトロベンゼン、2−ブロモニトロベンゼン、3−ブロモニトロベンゼン、4−ブロモニトロベンゼン、2−フルオロニトロベンゼン、3−フルオロニトロベンゼン、4−フルオロニトロベンゼンなどが挙げられる。
【0018】
なお、一般式(1−A)で表される化合物において、ニトロ基がエーテル結合に対してメタ位である化合物を製造する場合、より好ましくは、塩基の存在下、式(2)で表される化合物とジニトロベンゼンを反応させる。
また、一般式(1−A)で表される化合物において、ニトロ基がエーテル結合に対してオルト位またはパラ位である化合物を製造する場合、より好ましくは、塩基の存在下、式(2)で表される化合物とハロゲン化ニトロベンゼンを反応させる。
【0019】
一般式(1−A)で表される化合物の製造において使用するジニトロベンゼン及びハロゲン化ニトロベンゼンの量は、一般には、当該化合物を1種類のみ反応させる場合は、式(2)で表される化合物1モルに対して、1.8〜2.2モル程度、より好ましくは、1.9〜2.1モル程度、さらに好ましくは、1.95〜2.05モル程度使用する。又、当該化合物から2種類選択して反応させる場合は、式(2)で表される化合物1モルに対して、それぞれ0.8〜1.2モル程度、より好ましくは、0.9〜1.1モル程度、さらに好ましくは、0.95〜1.05モル程度使用する。
【0020】
一般式(1−A)で表される化合物の製造において使用する塩基としては、
例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの無機塩基、
例えば、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシド、ナトリウム(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノラート)、カリウム(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノラート)、カリウム(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノラート)などの金属アルコキシド、
例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、キノリン、ピコリン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなどの有機塩基などを挙げることができ、より好ましくは、無機塩基である。
係る塩基は1種を単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。塩基の使用量は、一般には、使用するジニトロベンゼン及びハロゲン化ニトロベンゼンの総量に対して、0.8〜4.0当量であり、好ましくは、1.0〜3.0当量使用する。
【0021】
一般式(1−A)で表される化合物の製造においては、有機溶媒の非存在下で実施することも可能であるが、好ましくは有機溶媒の存在下で実施する。
係る有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、
例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、メシチレン、クメン、プソイドクメン、テトラリンなどの芳香族炭化水素溶媒、
例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテルなどのエーテル系溶媒、
例えば、ジメチルスルフォキサイド、ジメチルスルフォン、スルフォラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジ−n−ブチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホルアミド、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリルなどの非プロトン性極性溶媒などの有機溶媒を挙げることができ、より好ましくは、非プロトン性極性溶媒である。
これらの有機溶媒は、1種を単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。
【0022】
一般式(1−A)で表される化合物の製造において、有機溶媒の使用量は、特に制限するものではないが、一般には式(2)で表される化合物の濃度が0.05〜6M程度、より好ましくは0.08〜5M程度となる量に調製する。
尚、塩基として無機塩基を用いて一般式(1−A)で表される化合物を製造する場合、生成する水を反応系外に留去しながら反応を実施することは好ましいことである。
【0023】
一般式(1−A)で表される化合物の製造において、式(2)で表される化合物、ジニトロベンゼン及びハロゲン化ニトロベンゼン、塩基、および有機溶媒の供給方法に関しては、特に制限するものではないが、例えば、
(ア)有機溶媒の存在下、式(2)で表される化合物および塩基の混合物に、ジニトロベンゼン及び/又はハロゲン化ニトロベンゼンを供給する方法、
(イ)有機溶媒の存在下、ジニトロベンゼン及び/又はハロゲン化ニトロベンゼンに、式(2)で表される化合物および塩基を供給する方法、
(ウ)有機溶媒の存在下、式(2)で表される化合物、ジニトロベンゼン及び/又はハロゲン化ニトロベンゼンおよび塩基を、一括で供給する方法、などを挙げることができる。
このように、一般式(1−A)で表される化合物は、塩基の存在下、式(2)で表される化合物と、ジニトロベンゼン及びハロゲン化ニトロベンゼンから選ばれた少なくとも1種を反応させることにより製造することができるが、ハロゲン化ニトロベンゼンを用いる場合には、所望により、さらに金属化合物を存在させてもよい。
【0024】
係る金属化合物としては、好ましくは、周期律表の第10〜11族から選ばれる金属化合物であり、より好ましくは、銅化合物、パラジウム化合物、またはニッケル化合物であり、さらに好ましくは、銅化合物、またはパラジウム化合物である。
尚、金属化合物としては、0価の金属、または1価〜2価の金属イオンを含有して成る金属化合物が挙げられ、より好ましくは、分子内に銅原子または銅イオンを含有して成る銅化合物、分子内にパラジウム原子またはパラジウムイオンを含有して成るパラジウム化合物、あるいは分子内にニッケル原子またはニッケルイオンを含有して成るニッケル化合物であり、さらに好ましくは、分子内に銅原子または銅イオンを含有して成る銅化合物、あるいは分子内にパラジウム原子またはパラジウムイオンを含有して成るパラジウム化合物である。
【0025】
係る金属化合物としては、例えば、金属銅、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、酸化第一銅、酢酸第一銅、塩化第二銅、臭化第二銅、ヨウ化第二銅、酸化第二銅、酢酸第二銅、硫酸銅、炭酸銅、トリフルオロメタンスルフォン酸銅、トリフルオロメタンスルフォン酸銅のベンゼン錯体、ビス(2,4−ペンタンジオナート)銅、ビス(トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナート)銅、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)銅、グルコン酸銅、安息香酸銅、ナフテン酸銅、フタル酸モノブチル銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅などの銅化合物、
【0026】
あるいは、例えば、塩化パラジウム、臭化パラジム、ヨウ化パラジウム、酢酸パラジム、ビス(2,4−ペンタジオナート)パラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ビス(ベンゾニトリル)パラジウムジクロライド、アリルパラジウムクロライドのダイマー、K
2PdCl
4、K
2PdCl
6、K
2Pd(NO
3)
4、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ジクロロビス(エチレン)パラジウム、Pd(π−C
5H
5)
2などの無機、有機配位錯体、
例えば、ビス(エチレンジアミン)パラジウムジクロライド、PdCl
2(NH
3)
2、PdCl
2[N(C
2H
5)
3]
2、Pd(NO
3)
2(NH
3)
6などのN−配位錯体、
例えば、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム、Pd[P(CH
3)
3]
4、Pd[P(C
2H
5)
3]
4、Pd[P(n−C
3H
7)
3]
4、Pd[P(iso−C
3H
7)
3]
4、Pd[P(n−C
4H
9)
3]
4、Pd[P(tert−C
4H
9)
3]
4、Pd[P(Cyc−C
6H
11)
3]
4、Pd[P(C
6H
5)
3]
4、Pd[P(o−CH
3−C
6H
4)
3]
4、PdCO
2[P(C
6H
5)
3]
4、Pd(C
2H
4)[P(C
6H
5)
3]
2、PdCl
2[P(C
6H
5)
3]
2、PdCl
2[P(n−C
4H
9)
3]
2、PdCl
2[P(tert−C
4H
9)
3]
2、PdBr
2[P(C
6H
5)
3]
2、PdBr
2[P(n−C
4H
9)
3]
2、PdBr
2[P(tert−C
4H
9)
3]
2、PdCl
2[P(OCH
3)
3]
2、PdBr
2[P(OCH
3)
3]
2、PdI
2[P(OCH
3)
3]
2、PdCl(C
6H
5)[P(C
6H
5)
3]
2などのホスフィン配位錯体、さらにはPd/炭素などのパラジウム化合物、
【0027】
また、例えば、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ビス(2,4−ペンタジオナート)ニッケルなどの無機、有機配位錯体、例えば、Ni[P(C
6H
5)
3]
4、NiCl
2[P(C
6H
5)
3]
2などのホスフィン配位錯体などのニッケル化合物を挙げることができる。より好ましい金属化合物は、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅などのハロゲン化第一銅、あるいは、酢酸パラジウムなどの無機、有機配位錯体パラジウムである。
金属化合物は、1種を単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。また、金属化合物の使用量に関しては特に制限されるものではないが、ハロゲン化ニトロベンゼンの総量に対して、一般には、0.01〜50モル%程度であり、より好ましくは、0.1〜30モル%程度である。
【0028】
一般式(1−A)で表される化合物を製造する際の反応温度に関しては、特に制限するものではないが、一般には、20〜220℃程度、好ましくは、40〜200℃程度、より好ましくは、50〜180℃程度で実施する。
一般式(1−A)で表される化合物を製造する際の反応時間に関しては、特に制限するものではないが、一般には、1〜40時間程度、より好ましくは、2〜30時間程度で実施することができる。
【0029】
また、一般式(1−A)で表される化合物を製造する際の反応は、大気雰囲気下で実施することができるが、一般には、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム)存在下で実施することが好ましい。
一般式(1−A)で表される化合物の製造に際して、反応は、常圧下で実施してもよく、所望により、減圧下または加圧下で実施することも可能である。
【0030】
このような方法で製造される一般式(1−A)で表される化合物は、反応終了後、例えば、必要に応じ、有機溶媒を留去した後に、水の存在下で結晶として単離することができる。また、一般式(1−A)で表される化合物は、所望により、再結晶法、クロマトグラフィー法などの公知の方法により単離、精製することができる。
【0031】
尚、一般式(1)において、A
1およびA
2が同時にアミノ基である一般式(1−B)で表される化合物の製造方法に関しては、特に制限するものではないが、好ましくは、一般式(1−A)で表される化合物中のニトロ基を還元し、アミノ基へ変換することにより製造することができる。
【0032】
一般式(1−B)で表される化合物の製造方法としては、好ましくは、一般式(1−A)で表される化合物と、水素源を作用させる(水素化反応)ことから成る製造方法であり、
より好ましくは、触媒の存在下、一般式(1−A)で表される化合物と、水素源を作用させることから成る製造方法である。
【0033】
水素源としては、例えば、プロトン酸(例えば、塩化水素、臭化水素)と還元剤(例えば、鉄、スズ、塩化第一スズなど)との組み合わせを包含するものであるが、より好ましくは、水素源自体が、水素供給能力を有するものであり、より好ましくは、水素、ヒドラジンを挙げることができ、より好ましくは、水素である。
【0034】
尚、水素源として水素を用いる場合、水素は気体状態で使用してもよく、また有機溶媒に溶解させた溶液状態で使用してもよい。
水素源の使用量は、特に制限するものではないが、一般式(1−A)で表される化合物中のニトロ基をアミノ基に変換するに充分な量を使用するものであり、過剰量の水素源の存在下で実施することも可能であるが、一般には、水素源は、水素1モルに換算して、一般式(1−A)で表される化合物1モルに対して、4〜8モル程度使用し、より好ましくは、6モル程度使用する。
【0035】
触媒としては、好ましくは、周期律表の第8〜第10族から選ばれる金属原子を含有して成る金属触媒であり、より好ましくは、鉄、ロジウム、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、コバルトまたは白金原子を含有して成る金属触媒であり、さらに好ましくは、パラジウム原子を含有して成るパラジウム触媒である。
【0036】
なお、触媒としては、該金属原子を、例えば、炭素、アルミナ、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウムなどの担体に坦持させた形態で使用することは好ましい。係る触媒としては、例えば、塩化第二鉄/活性炭、パラジウム/炭素、パラジウム/アルミナ、パラジウム/硫酸バリウム、白金、酸化白金、白金/炭素、白金/シリカ、ロジウム/炭素、ロジウム/アルミナ、ルテニウム/炭素、ラネーニッケル、ラネーコバルトなどを挙げることができ、より好ましくは、パラジウム/炭素、パラジウム/アルミナなどのパラジウム触媒である。
触媒の使用量は、特に制限するものではないが、一般には、一般式(1−A)で表される化合物に対して、0.01〜40質量%程度、より好ましくは、0.1〜30質量%程度である。
【0037】
触媒の存在下、一般式(1−A)で表される化合物と、水素源を作用させる際には、好ましくは、有機溶媒の存在下で実施する。
係る有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、
例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、メシチレン、クメン、プソイドクメン、テトラリンなどの芳香族炭化水素溶媒、
例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、
例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒、
【0038】
例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテルなどのエーテル系溶媒、
例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジ−n−ブチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホルアミドなどの非プロトン性極性溶媒などの有機溶媒を挙げることができる。
これらの有機溶媒は、1種を単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。
尚、有機溶媒の使用量は、特に制限するものではないが、一般には、一般式(1−A)で表される化合物の濃度が、0.05〜6M程度、より好ましくは、0.08〜5M程度となる量に調製する。
【0039】
一般式(1−B)で表される化合物の製造において、一般式(1−A)で表される化合物、触媒、有機溶媒および水素源の供給方法に関しては、特に制限するものではないが、例えば、
(エ)有機溶媒の存在下、一般式(1−A)で表される化合物および触媒の混合物に、水素源を供給する方法、
(オ)有機溶媒の存在下、予め触媒を存在させて、一般式(1−A)で表される化合物の供給と共に、水素源を供給する方法、などを挙げることができる。
【0040】
一般式(1−A)で表される化合物と、水素源を作用させる際の反応温度に関しては、特に制限するものではないが、一般には、0〜200℃程度、好ましくは、10〜150℃程度、より好ましくは、20〜120℃程度で実施する。
また、一般式(1−A)で表される化合物と、水素源を作用させる際の反応時間に関しては、特に制限するものではないが、一般には、1〜100時間程度、より好ましくは、2〜60時間程度で実施することができる。
また、一般式(1−A)で表される化合物と水素源との反応は、水素源と共に、例えば、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム)の共存下で実施することができる。
一般式(1−A)で表される化合物と、水素源を作用させる際、該反応は、常圧下で実施してもよく、所望に応じ、減圧下または加圧下で実施することも可能である。
【0041】
このような方法で製造される一般式(1−B)で表される化合物は、分子中にアミノ基を有していることから、例えば、酸(例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸)を作用させて、塩(例えば、塩酸塩、臭酸塩、硫酸塩)として単離することもできる。
その一般式(1−B)で表される化合物の塩は、塩基(例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)を作用させることにより、一般式(1−B)で表される化合物へと変換することができる。
また、一般式(1−B)で表される化合物は、所望により、再結晶法、クロマトグラフィー法などの公知の方法により単離、精製することができる。
また、一般式(1−B)で表される化合物および該化合物の塩は、有機溶媒および/または水の存在下、例えば、活性炭、ゼオライトなどを作用させて、精製することもできる。
【0042】
なお、一般式(1−A)および一般式(1−B)で表される化合物の構造は、元素分析、MS(FD−MS)分析、IR分析、
1H−NMR、
13C−NMRなどの各種分析方法により同定することができる。
一般式(1−A)および一般式(1−B)で表される化合物を製造するに際して、使用する反応装置の種類、形態に関しては特に制限するものではないが、一般には、槽型、管型、塔型の反応装置を用いることができる。また、各製造工程を、回分式(バッチ式)で実施することができ、さらには、連続的に実施することも可能である。
また一般式(1−A)および一般式(1−B)で表される化合物を製造するに際して、使用する反応装置は、様々な撹拌装置を備えることができる。係る撹拌装置としては、例えば、パドル型撹拌機、プロペラ型撹拌機、タービン型撹拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー、ラインミキサー、ラインホモミキサーなどの高速撹拌機、さらにはスタティックミキサー、コロイドミル、オリフィスミキサー、フロージェットミキサーなどを挙げることができる。
尚、各製造工程における反応の進行は、例えば、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどの方法で追跡することができる。
【0043】
本発明により、各種の機能性高分子材料(例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリカルボジイミド)、各種の機能性電子材料(例えば、有機電界発光素子材料、有機トランジスタ素子材料、光電変換素子材料)を製造する際の有用な原料であるニトロ化合物およびアミン化合物を提供することが可能になった。さらには、該化合物の製造方法を提供することが可能になった。すなわち、例えば、本発明の化合物であるジアミン化合物中の二つのアミノ基を、公知の方法に従って、テトラアリール化して製造されるテトラアリールジアミン化合物は、有機トランジスタ素子材料として好適に用いることができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
窒素雰囲気下、1,3−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ベンゼン26.2g(0.10モル)、1,3−ジニトロベンゼン34.2g(0.203モル)および微粉末状の炭酸カリウム17.1g(0.124モル)を、N,N-ジメチルホルムアミド(130ml)およびトルエン(10ml)の混合溶媒に加えた後、反応混合物からトルエンおよび水を留去しながら、140〜145℃で2時間撹拌した。さらに、反応混合物からトルエンおよび水を留去しながら、145〜150℃で4時間撹拌した。
その後、N,N-ジメチルホルムアミドを減圧下で濃縮し、残渣に水(200ml)、およびトルエン(500ml)を加え抽出した。トルエン層を分離後、トルエンを減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:トルエン)で分離して、目的とする1,3−ビス[4’−(3”−ニトロフェニルオキシ)フェニル]ベンゼン45.5gを黄色の結晶として得た(収率90%)。尚、この化合物はトルエンから再結晶することができた。融点113〜115℃。この化合物の純度は、高速液体クロマトグラフィーの分析の結果、99.8%以上(面積比)であった。
【0045】
(実施例2)
実施例1で製造した1,3−ビス[4’−(3”−ニトロフェニルオキシ)フェニル]ベンゼン35.3g(0.07モル)を含有するトルエン(80ml)溶液を、常圧下、水素ガス雰囲気下で、5質量%パラジウム/炭素(50質量%含水品、4.24g)を含むトルエン(50ml)溶液に撹拌下、65℃で、3時間を要して加えた。さらに常圧下、水素ガス雰囲気下、60〜68℃で1時間撹拌し、水素化を行った(この間に、反応混合物は、水素0.42モルを吸収した)。
反応混合物を熱濾過(65℃)し、パラジウム/炭素を濾別した後、濾液のトルエン溶液からトルエンを濃縮した。トルエン溶液から、析出している結晶を濾過し、目的とする1,3−ビス[4’−(3”−アミノフェニルオキシ)フェニル]ベンゼン29.2gをほぼ無色の結晶として得た(収率94%)。尚、この化合物はトルエンから再結晶することができた。融点118〜120℃
この化合物の純度は、高速液体クロマトグラフィーの分析の結果、99.8%以上(面積比)であった。
【0046】
(実施例3)
窒素雰囲気下、1,3−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ベンゼン26.2g(0.10モル)、および85質量%水酸化カリウム13.6g(0.206モル)をジメチルスルフォキサイド(80ml)に加え、70℃で30分間撹拌した。
この混合物に、4−クロロニトロベンゼン32.5g(0.206モル)、ジメチルスルフォキサイド(100ml)、およびトルエン(20ml)を加えた後、反応混合物からトルエンおよび水を留去しながら、100〜115℃で8時間撹拌した。
その後、ジメチルスルフォキサイドを減圧下で濃縮し、残渣に水(200ml)、およびトルエン(700ml)を加え、抽出した。
トルエン層を分離後、トルエンを減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:トルエン)で分離して、目的とする1,3−ビス[4’−(4”−ニトロフェニルオキシ)フェニル]ベンゼン30.7gを黄色の結晶として得た(収率61%)。融点151〜153℃
この化合物の純度は、高速液体クロマトグラフィーの分析の結果、99.7%以上(面積比)であった。
【0047】
(実施例4)
窒素雰囲気下、1,3−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ベンゼン26.2g(0.10モル)、4−クロロニトロベンゼン32.0g(0.203モル)および微粉末状の炭酸カリウム17.1g(0.124モル)を、N,N-ジメチルホルムアミド(130ml)およびトルエン(10ml)の混合溶媒に加えた後、反応混合物からトルエンおよび水を留去しながら、140〜145℃で2時間撹拌した。さらに、反応混合物からトルエンおよび水を留去しながら、145〜150℃で8時間撹拌した。その後、トルエン、および一部のN,N-ジメチルホルムアミド(10ml)を減圧下で留去し、70℃で熱濾過した。濾液に水(600ml)を加え、室温に冷却した。
析出した結晶を濾過、水洗後、60℃で乾燥し、目的とする1,3−ビス[4’−(4”−ニトロフェニルオキシ)フェニル]ベンゼン49.2gを黄色の結晶として得た(収率97%)。尚、この化合物は融点151〜153℃であった。この化合物の純度は、高速液体クロマトグラフィーの分析の結果、99.7%以上(面積比)であった。
【0048】
(実施例5)
実施例4で製造した1,3−ビス[4’−(4”−ニトロフェニルオキシ)フェニル]ベンゼン35.3g(0.07モル)を含有するN,N-ジメチルホルムアミド(30ml)溶液を、常圧下、水素ガス雰囲気下で、5質量%パラジウム/アルミナ(0.5g)を含むN,N-ジメチルホルムアミド(120ml)溶液に撹拌下、70℃で加えた。さらに常圧下、水素ガス雰囲気下、70〜85℃で7時間撹拌し、水素化を行った(この間に、反応混合物は、水素0.42モルを吸収した)。反応混合物を85℃で熱濾過し、パラジウム/アルミナを濾別した後、濾液に水(150ml)を加え、室温に冷却した。析出している結晶を濾過し、目的とする1,3−ビス[4’−(4”−アミノフェニルオキシ)フェニル]ベンゼン29.4gをほぼ無色の結晶として得た(収率94%)。尚、この化合物はトルエンから再結晶することができた(融点227〜229℃)。この化合物の純度は、高速液体クロマトグラフィーの分析の結果、99.8%以上(面積比)であった。
【0049】
(応用例1)
実施例2で製造した1,3−ビス[4’−(3”−アミノフェニルオキシ)フェニル]ベンゼン4.44g(0.01モル)、4−ヨードビフェニル14g(0.05モル)、ヨウ化第一銅0.057g(0.0003モル)、およびカリウム−tert−ブトキシド5.6g(0.05モル)をトルエン(150ml)に加え、さらにトリ−tert−ブチルホスフィン0.12g(0.0006モル)を加えた後、反応混合物を、105℃で14時間撹拌した。反応混合物を濾過し、濾液のトルエン溶液からトルエンを留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:トルエン)で分離して、式(a)で表される化合物6.6gをほぼ無色の結晶として得た(収率63%)。この化合物のガラス転移温度は84℃であった。
【0050】
(応用例2)
ゲート電極としての抵抗率0.02Ω・cmのシリコン基板に、厚さ200nmの熱酸化膜(SiO
2)を形成した。ここで、シリコン基板自体がゲート電極となり、シリコン基板表面に形成されたSiO
2層がゲート絶縁層となる。このシリコン基板を60℃に加温し、その上に、応用例1で製造した式(a)で表される化合物のトルエン溶液(濃度:0.7質量%)を塗布し、トルエンを蒸発させて、式(a)で表される化合物から成る有機半導体層(厚み:80nm)を形成した。さらに、この上に、マスクを用いて、金を蒸着してソース電極およびドレイン電極を形成した。尚、ソース電極およびドレイン電極の厚みは80nmであり、チャネル幅は2mm、チャネル長は50μmであった。以上のように作製した有機トランジスタは、p−型の有機トランジスタ素子としての特性を示した。有機トランジスタの電流−電圧(I−V)特性の飽和領域から、電荷移動度を求めたところ、2×10
−3(cm
2/Vsec)であった。さらに、ドレインバイアス−50Vとし、ゲートバイアス−50Vおよび0Vにした時のドレイン電流値を測定し、電流のオン/オフ比を求めたところ、4.7×10
3であった。尚、この有機トランジスタの閾値電圧は、−12Vであった。