特許第6192173号(P6192173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192173
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】導波路の後方反射の抑制
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   G02B6/12 341
   G02B6/12 351
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-535027(P2014-535027)
(86)(22)【出願日】2012年10月9日
(65)【公表番号】特表2014-531049(P2014-531049A)
(43)【公表日】2014年11月20日
(86)【国際出願番号】EP2012069956
(87)【国際公開番号】WO2013053699
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2015年10月5日
(31)【優先権主張番号】11275128.4
(32)【優先日】2011年10月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512276430
【氏名又は名称】エアバス ディフェンス アンド スペイス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スウィーニー スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ザン ヤピン
【審査官】 井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−505012(JP,A)
【文献】 特開2008−294371(JP,A)
【文献】 特開2002−169131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12−6/14、6/26、6/30−6/34、6/42
H01S 5/00−5/50
G02F 1/00−1/125、1/29−7/00
Science Direct
IEEE Xplore
Wiley Online Library
ACS PUBLICATIONS
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペクトロメータであって、
基板と、
前記基板上に設けられ、電磁放射を受け取るための第1の端および第2の端を有する導波路と、
前記基板上に設けられ、前記導波路に結合された複数の共振器であって、前記複数の共振器のそれぞれは前記電磁放射の事前に定められた波長において共振する、複数の共振器と、
前記基板上の前記導波路の前記第2の端に設けられた反射防止領域であって、前記反射防止領域の長さおよび幅は、前記第2の端に到達する放射の後方反射を抑制するように最適化された前記反射防止領域と、
を含み、
前記反射防止領域の前記幅が前記反射防止領域の中の前記電磁放射の波長より実質的に大きく、前記反射防止領域の前記長さが前記反射防止領域の中の前記電磁放射の前記波長より実質的に長いことで、前記反射防止領域に入る前記導波路からの電磁放射は導波されなくなって前記反射防止領域に吸収され、
前記導波路、前記複数の共振器および前記反射防止領域は、前記反射防止領域の中の前記電磁放射を吸収するバンドギャップを有する量子井戸を含む、スペクトロメータ
【請求項2】
前記反射防止領域は、前記導波路の幅より実質的に広い幅を有する、請求項1に記載のスペクトロメータ
【請求項3】
前記反射防止領域は、前記反射防止領域の中の前記放射の波長より少なくとも3倍広い幅を有する、請求項1または2に記載のスペクトロメータ
【請求項4】
前記反射防止領域は、前記反射防止領域の中の前記電磁放射の事前に定められた波長の少なくとも5倍の長さを有する、請求項1から3の何れか1項に記載のスペクトロメータ
【請求項5】
前記導波路および前記反射防止領域は、同じ材料から形成される、請求項1から4のいずれか1項に記載のスペクトロメータ
【請求項6】
前記スペクトロメータは、半導体材料を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載のスペクトロメータ
【請求項7】
前記複数の共振器は、ディスク共振器である、請求項1から6のいずれか1項に記載のスペクトロメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波路に関する。より詳しくは、本発明は、スペクトロメータに用いられる導波路の中の放射の後方反射の抑制に関するが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
導波路は、デバイスの1つのコンポーネントから別のコンポーネントに電磁放射を導くため、またはコンポーネントの中で放射を導くために用いられる。導波路を利用するデバイスの一例は、スペクトロメータである。
【0003】
ある範囲の波長にわたって光の特性を測定するための多くの用途において、スペクトロメータが用いられる。たとえば、スペクトロメータは、対象となるものについて吸収スペクトルまたは発光スペクトルを得ることによって、組成分析のために用いることができる。スペクトルの中のピークの存在および位置は、特定の元素または化合物の存在を示すことができる。スペクトロメータは普通、光学波長における分析のために用いられるが、他の波長、たとえばマイクロ波およびラジオ波長においても用いることができる。
【0004】
通常、スペクトロメータは、複数の可動部品の位置合わせが高い精度で制御されることを必要とする比較的複雑かつ高価なデバイスである。たとえば、通常のスペクトロメータは、光を回折格子に集束させて入射ビームを個別の波長に分けてよく、回折格子は、特定の角度に回転させられて特定の波長の光を検出器の方へ誘導してよい。近年、高度に小型化することができ、可動部品をもたず、十分に確立されたリソグラフィ技法を用いて製造することができる、チップベースのスペクトロメータが開発されている。そのようなスペクトロメータ・オン・チップの例が図1に示される。
【0005】
チップスペクトロメータ100は、基板110を含み、基板110の上には、導波路120と導波路に結合された複数のディスク共振器130とがパターン形成される。光は第1の端120aにおいて導波路に入り、第2の端120bの方へ導かれる。共振器は、導波路の中の光の一部がディスク共振器130に結合されるように、構成される。各共振器130は、特定の波長における共振モードを維持するように構成され、これによってその波長の光だけが共振器130の中に結合される。各ディスク共振器130の上にはその共振器の中に存在する光の量に比例する電流を検出するための電極140がある。したがって、各共振器において検出された電流は、入力光線の中に存在したその波長の光の量を示す。各電極140は、電流を測定するための外部デバイスにスペクトロメータ100を接続するための信号ボンドパッド150にさらに接続される。光の一部は、共振器のいずれの中にも結合されず、導波路の第2の端120bに到達する。導波路の端からの後方反射は、スペクトロメータチップ内の干渉を引き起こすことがあり、干渉はスペクトロメータの性能を低下させる。したがって、導波路の端に到達する光からの後方反射を止めるために、導波路の第2の端120bに低反射コーティング160が蒸着されるかまたはスパッタされる。しかし、低反射コーティングの塗布は、スペクトロメータの製作において追加のプロセス工程を必要とする。
【0006】
本発明は、従来技術を改良することを目的とする。
【発明の概要】
【0007】
本発明によれば、基板と、基板の上に設けられ、電磁放射を受け取るための第1の端および第2の端を有する導波路と、導波路の第2の端において基板の上に設けられた反射防止領域と、を含み、反射防止領域の長さおよび幅は、導波路の第2の端に到達する放射の後方反射を抑制するように最適化されている、電磁放射を導くための構造が提供される。
【0008】
導波路の中の後方反射は、放射が反射防止領域に入ると、そこで発散する放射場が反射防止領域を形成する材料によって吸収され、放射が導波されなくなることの結果として、減少する。反射防止領域の長さおよび幅を最適化することによって、ほとんど0%の有効反射率が実現され得る。
【0009】
導波路と反射防止領域とは、同じ材料から形成されてよい。導波路と反射防止領域とは、単一コンポーネントとして一体形成されてよい。それらは、同じプロセス工程において基板上に設けられてよい。導波路と反射防止領域とは、同じ層の一部として設けられてよい。導波路が2つ以上の層を含むなら、導波路と反射防止領域とは、同じ層の一部として設けられてよい。層は、量子井戸を備えてよい。
【0010】
反射防止領域は、導波路の幅より実質的に広い幅を有してよい。さらに、反射防止領域は、反射防止領域が形成される材料の中の放射の波長より実質的に大きな幅を有してよい。反射防止領域が導波路と同じ材料から形成されると、波長は導波路の中の放射の波長でもある。たとえば、反射防止領域は、導波路および反射防止領域が形成される材料の中の放射の波長の少なく3倍の幅を有してよい。構造は、半導体ベースの構造であってよく、反射防止領域は、半導体導波路の中の放射の波長の少なくとも3倍の幅を有してよい。より詳しくは、反射防止領域の寸法が決定されるベースとなる波長は、自由空間波長ではなく、導波路および反射防止領域が形成される材料の中の波長である。
【0011】
反射防止領域は、反射防止領域が形成される材料の中の前記電磁放射の波長より実質的に長い長さを有してよい。反射防止領域が同じ材料から形成されると、波長は、導波路の中の放射の波長でもある。反射防止区域は、通常は電磁放射の波長の長さの一般には少なくとも5倍の長さを有してよい。もちろん、反射防止領域が長いほど、後方反射されない放射の割合が大きい。導波路と反射防止領域とがある半導体材料から形成されると、導波路の中の放射の波長は、半導体材料の中の放射の波長であろう。
【0012】
本発明によれば、上記に記載の構造を含むフォトニックコンポーネントが提供される。
【0013】
本発明によれば、上記に記載の構造を含むチップも提供される。
【0014】
本発明によれば、上記に記載の構造を含むスペクトロメータも提供される。スペクトロメータは、基板上に設けられ、導波路に結合された複数の共振器をさらに含んでよい。
【0015】
複数の共振器は、ディスク共振器であってよい。
【0016】
次に、添付の図面のうち図2から6を参照し、例として本発明の実施形態が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】従来技術のスペクトロメータの透視図である。
図2】本発明のいくつかの実施態様による導波路構成を有するスペクトロメータの透視図である。
図3】本発明による導波路構成の平面図である。
図4図3の導波路構成の断面を示す。
図5】本発明による導波路構成の中の伝播する連続波パターンを例示する。
図6a】導波路の中の特定の位置における放射強度が時間とともにどのように変化するかを示すグラフである。
図6b図6aのグラフのために放射の強度が観測される導波路の中の位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図2を参照すると、本発明のいくつかの実施態様による導波路構成を有するスペクトロメータ200の透視図が示される。スペクトロメータは、基板210を含むスペクトロメータ・オン・チップであり、基板210の上には細長い導波路220と、導波路に結合された複数のディスク共振器230とがパターン形成されている。導波路は、光学波長、マイクロ波波長またはラジオ波長を含むが、これに限定されるものではない事前に定められた範囲の波長の電磁放射を受け取り、導くように構成することができ、リッジ導波路であってよい。光は、導波路の第1の端220aで受け取られ、第2の端220bの方へ導かれ、各共振器230は、特定の波長における共振モードを維持するように構成され、これによって、その波長の光だけが共振器230の中に結合される。各ディスク共振器230の上にはその共振器の中に存在する光の量に比例する電流を検出するための電極240がある。したがって、各共振器において検出された電流は、入力光線の中に存在したその波長における光の量を示す。各電極240は、電流を測定するための外部デバイスにスペクトロメータ200を接続するための信号ボンドパッド250にさらに接続される。共振器は、導波路とは別個のものとして記載されるが、共振器は、導波路の一部とみなされてよいと理解されるべきである。
【0019】
本発明によれば、スペクトロメータチップ200は、導波路220の第2の端220bに結合された反射防止領域270も含む。反射防止領域は、導波路の端において突然の幅の広い界面を提供し、それによって、導波路の第2の端220bと反射防止領域270との間の界面において伝播する波は導波されなくなり、反射防止領域の中に広がり、そこで波は発散し、反射防止領域によって吸収されるようになる。反射防止領域は、導波路および共振器と同じプロセス工程において基板上に形成されてよい。反射防止領域は、導波路と同じ材料で設けられてよく、導波路と反射防止領域とは、単一コンポーネントとして一体形成されてよい。導波路と反射防止領域とは、たとえば半導体材料から形成することができる。あるいは、導波路と反射防止領域とは、異なる材料から形成することができる。しかし、それにはもちろん追加のプロセス工程が必要となる。これ以降、導波路と反射防止領域とは、同じプロセス工程において同じ材料から形成されたものとして記載される。反射防止領域270は、スペクトロメータチップのマスクレイアウトにおいて追加の構成要素として提供されてよい。反射防止領域の長さおよび幅は、無視することができる光の後方反射が発生することを確実にするように最適化される。後方反射は、反射防止領域を用いて効果的になくされるかまたは少なくとも減らされるので、導波路の端における低反射コーティングは必要なく、このコーティングを導波路へ蒸着するかまたはスパッタするコストのかかる余分なステップは回避することができる。
【0020】
反射防止領域270は、上記のスペクトロメータ200によって記載されてきたが、どのようなフォトニックコンポーネントにおいても後方反射を減らすかまたはなくすための機構を提供するために用いられ得ることは言うまでもない。一般的な導波路構成構造が図3および4によって示される。図3を参照すると、導波路220によって提供される光を導く区域は、反射防止領域270によって提供される放射吸収区域に直接接続される。どちらの区域も図4に示されるように基板210の上にパターン形成されてよい。導波路220および反射防止領域は、下記にさらに詳しく記載されるように、基板の上に設けられた1つの層または複数の層として提供されてよい。この1または複数の層の材料および深さは、導波路の中で高い損失なく放射を導くだけでなく、反射防止領域の中で放射が導波されなくなり、発散すると放射が吸収され、散乱されるようにも選ばれる。
【0021】
上記で考察されたように、反射防止領域270の幅および長さは、導波路の端220bに到達する光の後方反射を最小限にするように最適化される。反射防止領域270は、必ずしも矩形の幾何学的形状を形成しなくてもよく、不規則な幾何学的形状を形成してもよいと考えられる。その場合、長さは波の伝搬の方向の距離と考えられ、幅は導波路220の中の波の伝搬の方向に垂直な方向の距離と見なされる。
【0022】
図3に示されるように、反射防止領域270の幅Waは、導波路220の幅Wbより実質的に広くなるように選ばれる。導波路は、たとえば0.5μmから5μmの間の幅を有することができる。導波路は、共振の単一モードを維持するように設計されてよい。通常、導波路の幅Wbは、導波路が形成される材料の中の放射の波長のオーダーである。Wbは、導波路が形成される材料の中の放射の波長の幅と実質的に等しいか、またはわずかに大きくてよい。
【0023】
より重要なこととして、反射防止領域270の幅Waは、導波路および反射防止領域が形成される材料の中の光または他の放射の波長より実質的に広い。導波路および反射防止領域は、ある半導体材料から形成されてよく、幅Waは、この半導体材料の中の放射の波長λより顕著に広くてよい。反射防止領域の幅は、反射防止領域の中に存在する放射がもはや導波されないことを確実にするのに十分に大きくされるべきである。導波路の幅Waは、導波路の中への後方反射を抑制するように、導波路および反射防止領域が形成される材料の中の放射の波長λの3倍と等しいまたは3倍より大きくてもよい。入力ビームは、たとえばデバイスが図2に示されるスペクトロメータであると、複数の波長を含んでよい。そのような場合、反射防止領域の寸法が決定される根拠となる波長λは、たとえば、入力ビームの中で対象となる波長範囲の、反射防止領域の材料の中の平均波長であってよい。
【0024】
さらに、反射防止領域の長さは、導波路および反射防止領域の中の放射の波長λより長い。すべての後方反射を効果的になくすために、反射防止領域の長さは、反射防止領域が形成される半導体の中の放射の波長λの少なくとも5倍の大きさとされるべきである。
【0025】
導波路および反射防止領域は、空気より実質的に高い屈折率を有する材料から形成されてよい。たとえば導波路が大体3の屈折率を有する半導体材料を含み、導波路が空気中で1500nmの波長の放射を受け取るように構成されれば、光を導く区域の中の波長は、大体500nmであろう。次に、後方反射を顕著に減らすための反射防止領域の最小長さは、2.5μmであろうということが見いだされている。大体3μmの長さなら後方反射をなくすために十分な長さを提供するであろうと考えられる。さらに、最小幅は、1.5μmであろう。前記のように、光の伝搬の方向の反射防止領域の距離が、反射防止領域が形成される材料の中の放射の波長λの5倍と等しいまたは5倍より大きくてもよく、かつ幅が、反射防止領域が形成される材料の中の放射の波長λの3倍と等しいまたは3倍より大きい限り、反射される放射の量は、顕著に減ると考えられる。
【0026】
図4は、図3の線IV−IV'に沿った断面を示す。図示のように、基板210の上に複数の層が堆積される。図4は、少数の層を示すだけであり、この構造が追加の層を含むことができることは言うまでもない。導波路は、1または複数の層として基板上に堆積されてよい。導波路220および反射防止領域270は、導波路と同じ平面に延在してよく、導波路と一体形成されてよい。基板は、どのような適当な型の半導体から製作されてもよい。たとえば、基板は、約1〜3×1018cm−3のドーパント濃度を有するn−型ドープリン化インジウム(InP)から形成されてよい。基板の上には、基板のエッチングを防ぐエッチストップ層(図示せず)が設けられてよく、エッチストップ層の上には、支持層(図示せず)が設けられてよい。例として、エッチストップ層は、0.18〜1.2×1018cm−3のドーパント濃度を有するn−型ドープInGaAsPから形成されてよく、支持層は、4〜6×1017cm−3のドーパント濃度を有するn−型ドープInPから形成されてよい。次に、導波路220および反射防止領域270が支持層の上の1または複数の層として設けられる。層は、非ドープInGaAsPから形成されてよい。導波路を形成する1または複数の層の上には、キャッピング層(図示せず)が形成されてよい。キャッピング層は、約2×1018cm−3のドーパント濃度を有するp−型ドープInPから形成されてよい。キャッピング層の上には、メタル化のための絶縁層も設けられてよい。
【0027】
導波路220および反射防止領域270を提供する1または複数の層は、支持層およびキャッピング層より高い屈折率を有してよく、導波路は、導波路を形成する層と支持層およびキャッピング層を形成する層との間の屈折率コントラストから形成される。上記に記載の層構造は例でしかなく、1または複数の層が取り除かれるかまたは置き換えられてもよいことは言うまでもない。たとえば、構造が支持層を含まなければ、導波路および反射防止領域は、導波路層とキャッピング層および基板との間の屈折率コントラストの間で提供される。導波路および反射防止領域を形成する1または複数の層は、放射を吸収するように設計されたバンドギャップを有する層を含んでよい。この層は、導波路の中の吸収を制限するべく低い吸収係数を有するように設計されてよい。光が反射防止領域に入ると、光は導波されなくなる。これは、光が吸収層を通ってより大きな距離を移動し、より多くの光が吸収されることを意味する。光の一部は散乱し、光の一部は半導体/空気界面から後方反射するが、次にさらに散乱し、戻る途中でさらに吸収される。言い換えると、重要な概念は、光が反射防止領域の中で損失の多い材料を通ってより大きな距離を移動し、強く吸収されることである。
【0028】
1または複数の層は、間に活性吸収層が挟まれている2つのクラッド層を含む活性層スタックを形成してよい。吸収層は、反射防止領域の中の放射を吸収するように設計されたバンドギャップを有する量子井戸であってよい。量子井戸は、層の厚さを単一層の薄さにまで制御することができる分子線エピタクシーまたは化学蒸着によって成長させてよい。量子井戸は、十分に薄く、導波路の中の光場に対してほとんどまたはまったく影響を及ぼさないであろう。たとえば、量子井戸は、大体3nmの厚さを有してよい。反射防止領域270に入る放射は、反射防止領域の中に設けられた量子井戸に吸収される。導波路220は、光場が量子井戸の上で最大になることを確実にし、これは、吸収を増加させるのを助ける。
【0029】
図2のスペクトロメータの中に図3および4の導波路構成が設けられれば、共振器230は、導波路220および反射防止領域270について記載された層の一部またはすべてを含むであろう。キャッピング層、支持層およびクラッド層は、対象となる最高エネルギー光子より大きなバンドギャップを有してよい。これに対して、上記のように、クラッド層の間に挟まれた活性層は、対象となる最低エネルギー光子より小さい、すなわちスペクトロメータが検出するように構成されている最も長い波長の光子のエネルギーより低いバンドギャップを有してよい。こうすると、活性吸収層の組成は、スペクトロメータの中のすべてのディスク共振器において用いることができる。上記のように、吸収層が量子井戸であれば、吸収層は十分に薄く、導波路の中の光場に対してほとんどまたはまったく影響を及ぼさない。特定の波長の光が導波路から共振器に入ると、光は、共振器の周りを複数サイクル移動し、最低エネルギー光子でも電子を価電子帯から伝導帯に励起し、電子−正孔対を生み出させるのに十分なほどバンドギャップが低いので、光子は量子井戸の中の材料によって吸収することができる。その結果生じる電流は、測定することができ、ディスク共振器の中の光エネルギーの量に比例する。
【0030】
しかし、構造は、共振器230、導波路220および反射防止領域270にわたって一様でなくてよいことは言うまでもない。たとえば、いくつかの実施態様において、導波路220の中に吸収層は設けられない。これを実現するために、導波路の中の吸収層は、選択的にエッチングされ、より広いバンドギャップ合金によって置き換えることができるか、あるいは、吸収層は、そもそもディスク共振器および/または最初の場所内の反射防止領域の中にだけ堆積させることができる。
【0031】
もちろん、本発明は、図3に示され、上記に記載された層構造に限定されず、他の実施態様においては他の構造が用いられてよいと理解されるべきである。
【0032】
図5は、導波路および反射防止領域が形成される半導体材料の中における大体500nmの波長を有する放射に対する、長さ2.5μmおよび幅3μmの反射防止領域の効果を例示するシミュレーションの結果を示す。x軸は導波路の中の波の伝搬の方向に垂直な方向の距離を示し、y軸は導波路の中の波の伝搬の方向の距離を示す。図5から、放射は、反射防止領域に入ると発散することが明らかである。図5から、光は、導波路の幅より実質的に広い面積にわたって発散することがさらに明らかである。導波路の端における領域は、放射のための行き止まりを提供し、導波路の中への後方反射は最小限にされる。
【0033】
図6aは、図6bに示される反射防止領域を含む導波路構成の別のシミュレーションの結果を示す。光は、図6bに示されるように、導波路より実質的に広い反射防止領域に結合された導波路の端に近い位置にある探知器によって検出される。光が検出される位置は、矢印で示される。図6aのグラフは、検出された光の強度を時間に対して示す。図6aから、導波路の中で受け取られた光が導波路を通って反射防止領域の方へ導かれると光のパルスが検出されること、および導波路の端に到達する光の事実上0%が導波路の中に後方反射されることが明らかである。
【0034】
本発明の特定の実施例が記載されてきたが、本発明の範囲は、添付の請求項によって定義され、これらの実施例に限定されない。したがって、本発明は、当業者が理解するであろうように、他の方法で実装することができるであろう。
【0035】
たとえば、本発明の実施態様が記載されてきたスペクトロメータは、スペクトロフォトメータである、またはスペクトロフォトメータの一部を形成するとみなされてよいことは言うまでもない。したがって、用語「スペクトロメータ」が用いられてきた箇所で、この用語は、用語「スペクトロフォトメータ」で置き換えることができたであろう。
【0036】
さらに、スペクトロメータは光を受け取り、導く場所において記載されてきたが、スペクトロメータは、どのような波長の電磁放射を導き、検出するために用いることもできる。さらに、スペクトロメータはディスク共振器を含むと記載されてきたが、記載された導波路はどのような型の共振器の中に光を導くために用いられてもよい。たとえば、共振器は、球形共振器、マイクロリング等、など、どのような高Qキャビティーであってもよい。
【0037】
本発明は、スペクトロメータ・オン・チップに関して記載されてきたが、本発明は、光子を導くために導波路を用い、後方反射が好ましくないどのようなデバイスにも実装することができると理解されるべきである。たとえば、本発明は、干渉計、光スイッチ、レーザ、格子等において用いることができるであろう。本発明は、導波路を利用するどのようなフォトニックコンポーネントにおいても用いることができるであろう。フォトニックコンポーネントは、光を発生し、放出し、伝送し、変調し、処理し、スイッチし、増幅し、検出し、感知するあらゆるコンポーネントである。フォトニックコンポーネントは、たとえば、フォトニック集積回路、光センサ、または光通信デバイスのためのアドドロップマルチプレキサを含むが、これに限定されるものではない光通信デバイスにおいて用いることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b