【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成25年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態であるトランスインピーダンス増幅回路を使用した光受信機の構成図である。
光受信機500は、トランスインピーダンス増幅回路200と、差動増幅回路110と、フォトダイオード300とを備え、トランスインピーダンス増幅回路200は、トランスインピーダンス増幅回路100と、差動増幅回路110とを有する。また、トランスインピーダンス増幅回路200は、半導体製造プロセスにより形成された半導体装置として構成されている。
【0013】
トランスインピーダンス増幅回路100は、一つの電流入力端子I
in、及び2つの出力電圧端子V
out,V
outBを備えており、出力電圧端子V
out,V
outBが差動出力端子として機能する。差動増幅回路110は、トランスインピーダンス増幅回路100の出力電圧端子V
out,V
outBに接続された差動入力端子と差動出力端子とを備え、差動入力端子と差動出力端子との差分電圧をゲインGで増幅する増幅回路である。なお、各図は、差動増幅回路110の反転入力端子、及び反転出力端子に「○」の記号を付し、非反転入力端子、及び非反転出力端子には、「○」の記号を付さないことにより、双方を区別している。
【0014】
フォトダイオード300は、光の強度を電流に変換する素子であり、カソード端を電源端子V
DDに接続し、アノード端を電流入力端子I
inに接続している。なお、電源端子V
DDは接地電位よりも正の電圧が印加される。
【0015】
これらの構成により、光受信機500は、フォトダイオード300が光信号を電流信号に変換し、変換された電流信号をトランスインピーダンス増幅回路100が電圧信号に変換し、変換された電圧信号を差動増幅回路110が論理レベルまで増幅し、差動増幅回路110が次段の信号処理回路に信号を伝達するように構成されている。ここで、トランスインピーダンス増幅回路100は、フォトダイオード300によるシングルエンド電流信号を入力し、出力電圧端子V
out,V
outBから差動電圧信号が出力される。
【0016】
トランスインピーダンス増幅回路100が差動電圧信号を出力する理由は、信号のノイズ耐性を強化させるためや、差動増幅回路110を使用し、半導体プロセス上の素子間の特性バラツキを抑制するためである。
【0017】
図2は、本発明の第1実施形態であるトランスインピーダンス増幅回路の回路図である。
トランスインピーダンス増幅回路100は、PチャネルのトランジスタT2,T7,T8と、NチャネルのトランジスタT1,T3,T4,T5,T6と、抵抗器10,11とを備えて構成される。また、トランスインピーダンス増幅回路100は、半導体装置として形成される回路でもある。ここで、特許請求の範囲において、トランジスタT1が第3トランジスタであり、トランジスタT2が第4トランジスタであり、トランジスタT3が第2トランジスタであり、トランジスタT4が第1トランジスタである。
【0018】
また、トランスインピーダンス増幅回路100は、電源端子V
DD,V
SSと、電流入力端子I
inと、出力電圧端子V
out,V
outBと、制御電圧端子V
C1,V
C2とを備えている。電源端子V
DDは、接地電位に対して、正の電源電圧が印加され、電源端子V
SSは接地電位、若しくは仮想接地点に接続される。
【0019】
電流入力端子I
inは、2つのトランジスタT1,T2のゲートに接続され、トランジスタT2のソースとトランジスタT1のドレインとが接続されている。また、トランジスタT1のソースは電源端子V
SSに接続され、トランジスタT2のドレイン及び基板端子は電源端子V
DDに接続されている。なお、トランジスタT1の基板端子は、電源端子V
SSに接続されている。
【0020】
これらの接続により、トランジスタT1,T2は、インバータとして機能し、トランジスタT1,T2は、そのゲート電圧v
1(t)と、トランジスタT2のソースとトランジスタT1のドレインとの接続点Pの電位とが反転する。
【0021】
トランジスタT4は、そのゲートがトランジスタT2のソースとトランジスタT1のドレインとの接続点Pに接続され、ドレインが抵抗器11の一端に接続されている。また、抵抗器11の他端は電源端子V
DDに接続されている。一方、トランジスタT3は、そのゲートが制御電圧端子V
C1に接続され、ドレインがトランジスタT4のソース、及び抵抗器10の一端と接続され、ソースが電源端子V
SSに接続されている。抵抗器10の他端は、電流入力端子I
inに接続されている。なお、トランジスタT3,T4の基板端子は、電源端子V
SSに接続されている。
【0022】
これらの接続により、抵抗器10は、帰還抵抗器として機能し、電流入力端子I
inに流れ込む入力電流i
in(t)と抵抗器10の抵抗値R
Fとの積は、トランジスタT1,T2のゲート電圧v
1(t)からトランジスタT3のドレインとトランジスタT4のソースと抵抗器10の一端との接続点(X点)の電圧v
2(t)を減じた値に等しい。つまり、電流入力端子I
inに流れ込む入力電流i
in(t)とトランジスタT1,T2のゲート電圧v
1(t)とは、同相である。
【0023】
トランジスタT4は、電圧v
1(t)の変化と逆相の逆相電流を抵抗器11に流す。そして、トランジスタT4は、抵抗器11を抵抗負荷として、正相のドレイン電圧v
3(t)が取り出され、トランジスタT3を電流源として、X点のソース電圧v
2(t)が逆相で取り出される。
【0024】
また、トランジスタT4は、トランジスタT3を電流源とするソースフォロア回路として機能し、ソース電圧v
2(t)が低インピーダンスで取り出される。つまり、抵抗器10と、ソースフォロア回路とは、電流入力端子I
inに流れ込む入力電流i
in(t)を電圧v
2(t)に変換するトランスインピーダンス増幅器として機能する。また、トランジスタT4は、抵抗器11を抵抗負荷とするソース接地回路としても機能する。このため、ソース電圧v
2(t)とドレイン電圧v
3(t)とは、振幅が異なる逆相の関係になる。
【0025】
また、トランジスタT4のゲート電圧とドレイン電圧v
3(t)とは互いに反転する。また、トランジスタT1,T2は、インバータとして機能するので、ゲート電圧v
1(t)とトランジスタT4のドレイン電圧v
3(t)とは、同相になる。つまり、電流入力端子I
inに流れ込む入力電流i
inとトランジスタT4のドレイン電圧v
3(t)とは、同相になる。
【0026】
トランジスタT6は、ゲートがトランジスタT4のドレインと抵抗器11の他端との接続点(第2接続点)に接続され、ソースがトランジスタT5のドレイン、及び出力電圧端子V
outに接続され、ドレインが電源端子V
DDに接続されている。トランジスタT5は、ゲートが制御電圧端子V
C1に接続され、ソースが電源端子V
SSに接続されている。これにより、トランジスタT6は、トランジスタT5を電流源としたソースフォロア回路を構成し、トランジスタT4のドレイン電圧v
3(t)が同相で出力電圧端子V
outから取り出される。この出力電圧端子V
outの電圧を電圧v
4(t)とする。
【0027】
トランジスタT7は、そのゲートがトランジスタT3のドレインとトランジスタT4のソースと抵抗器10の一端との接続点(X点、第1接続点)に接続されており、ドレインが電源端子V
SSに接続されており、ソースがトランジスタT8のドレイン、及び出力電圧端子V
outBに接続されている。トランジスタT8は、そのゲートが制御電圧端子V
C2に接続されており、ソースが電源端子V
DDに接続されている。なお、トランジスタT7の基板端子とトランジスタT8の基板端子とは電源端子V
DDに接続されている。
【0028】
これにより、トランジスタT7は、トランジスタT8を電流源としたソースフォロア回路を構成し、トランジスタT3のドレイン電圧v
2(t)が同相で出力電圧端子V
outBから取り出される。この出力電圧端子V
outBの電圧を電圧v
5(t)とする。トランジスタT3のドレイン電圧v
2(t)とトランジスタT4のドレイン電圧v
3(t)とは逆相なので、出力電圧端子V
outBの電圧v
5(t)と出力電圧端子V
outの電圧v
4(t)とは逆相になる。
【0029】
また、制御電圧端子V
C1,V
C2は、出力電圧端子V
outBの電圧v
5(t)のDCレベルと出力電圧端子V
outの電圧v
4(t)のDCレベルとの差分電圧が0Vになるように設定する。
【0030】
(シミュレーション結果)
図3、及び
図4は、本発明の第1実施形態であるトランスインピーダンス増幅回路の波形図である。
図3(a)は、電圧v
1(t)の波形であり、
図3(b)は、電圧v
2(t)の波形であり、
図3(c)は、電圧v
3(t)の波形である。また、
図4(a)は、電圧v
4(t)の波形であり、
図4(b)は、電圧v
5(t)の波形である。なお、横軸は時間[nsec]であり、縦軸は論理値「1」や「0」をV
nmaxやV
nmin(nは、1〜5)で表現している。
【0031】
図3(a)の電圧v
1(t)が上昇すると
図3(b)の電圧v
2(t)が下降し、電圧v
1(t)が下降すると電圧v
2(t)が上昇している。つまり、電圧v
1(t)と電圧v
2(t)とは、反転している。ここで、帰還抵抗器としての抵抗器11の電圧降下は、{v
1(t)−v
2(t)}であり、入力電流i
in(t)の位相と電圧v
1(t)の位相とは同相である。
【0032】
図3(c)の電圧v
3(t)は、
図3(a)のv
1(t)と同相になっているので、入力電流i
in(t)の位相と同相である。
図4(a)の電圧v
4(t)は、電圧v
3(t)と同相であるので、入力電流i
in(t)の位相と同相である。
図4(b)の電圧v
5(t)は、電圧v
1(t)と逆相であるので、入力電流i
in(t)の位相と逆相である。つまり、出力電圧端子V
outは、入力電流i
in(t)の位相と同相の電圧を出力し、出力電圧端子V
outBは、入力電流i
in(t)の位相と逆相の電圧を出力する。
【0033】
図5、及び
図6は、本発明の第1実施形態であるトランスインピーダンス増幅回路のアイパターンである。横軸は時間「psec」であり、縦軸は論理値「1」又は「0」をV
nmax、やV
nminで表現している。
図5(a)は、電圧v
1(t)のアイパターンであり、
図5(b)は、電圧v
2(t)のアイパターンであり、
図5(c)は、電圧v
3(t)のアイパターンである。また、
図6(a)は電圧v
4(t)のアイパターンであり、
図6(b)は、電圧v
5(t)のアイパターンである。
【0034】
アイパターンとは、信号波形の遷移を多数サンプリングし、重ね合わせてグラフィカルに表示したものである。波形が同じ位置(タイミング・電圧)で複数重ね合っていれば、品質の良い波形である。逆に、波形の位置(タイミング・電圧)がずれている場合は、品質の悪い波形であり、ジッターが悪くなる。
図5、及び
図6は、目が開いているので、品質が良い波形であることを示している。
【0035】
図7は、本発明の第1実施形態であるトランスインピーダンス増幅回路の周波数特性図である。実線は、出力電圧端子V
outの電圧v
4(t)のゲインの周波数特性を示し、破線は、出力電圧端子V
outBの電圧v
5(t)のゲインの周波数特性を示す。なお、縦軸は、トランスインピーダンス[dBohm]であり、横軸は、周波数[100MHz〜20GHz]である。
トランスインピーダンス増幅回路100は、全周波数範囲で、電圧v
4(t)も電圧v
5(t)も所定のトランスインピーダンスを有している。出力電圧端子V
outBの電圧v
5(t)は、出力電圧端子V
outの電圧v
4(t)よりもゲインが高い。このゲインの不一致は、差動増幅回路110にゲイン制限機能を設ければ問題無い。
【0036】
また、周波数が高くなるにつれて、双方のトランスインピーダンスが略等しくなるが(Δv
4(t)≒−Δv
5(t))、トランジスタT4のゲインが周波数の上昇と共に低下するからである。ここで、Δv
4(t)やΔv
5(t)は、v
4(t)やv
5(t)の交流分を示す。なお、周波数が高いときのトランスインピーダンスは、抵抗器10の抵抗値R
Fが支配的である。
【0037】
トランスインピーダンス増幅回路100の次段に接続される差動増幅回路110(
図1)のゲインとゲイン制限機能により出力電圧vo(t)は決まる。
【0038】
(PONシステム)
図8は、本発明の第1実施形態であるトランスインピーダンス増幅回路200が使用されるPONシステムの全体構成図である。
PONシステム800は、複数の加入者宅の端末700,701,702と、局600と、スプリッタ750とを備え、局600と複数の加入者宅の端末700,701,702とがスプリッタ750を介して、通信可能に接続されている。ここで、局600(OLT)に設置される受信機は、光信号を電流に変換するフォトダイオード(PD:Photo Diode)300と、フォトダイオード300が出力する出力電流を差動電圧に変換するトランスインピーダンス増幅回路200とを備える。
【0039】
局(OLT)から、加入者宅の端末(ONU)に送信される下りデータは、連続信号であるが、加入者宅の端末(ONU)から局(OLT)に送信される上りデータは、データとデータとの間に信号が存在しないバースト信号になっている。また、加入者宅の端末700,701,702から送信される信号の振幅は一定であるが、加入者宅の端末700,701,702と局600との距離はまちまちなので、局600がバースト信号を受信する際には、特定の加入者宅の端末700からのバースト信号は強くなり、異なる加入者宅701からのバースト信号が弱くなることがある。このため、局(OLT)は、これらの強度やタイミングの異なる光バースト信号を強度が一定の電気信号に変える光受信機500(
図1)が必要である。
【0040】
(第2実施形態)
前記第1実施形態のトランスインピーダンス増幅回路100は、抵抗負荷としての抵抗器11を用いたが、能動負荷に変更することができる。
図9は、本発明の第2実施形態であるトランスインピーダンス増幅回路の回路図である。
トランスインピーダンス増幅回路101は、
図2に示すトランスインピーダンス増幅回路100に対して、その抵抗器11(
図2)を第4トランジスタとしてのトランジスタT9に変更したものである。
つまり、トランジスタT9は、そのソースがトランジスタT4のドレイン、及びトランジスタT6のゲートとの接続点に接続され、ドレインが電源端子V
DDに接続され、ゲートがV
C2に接続されている。なお、トランジスタT9の基板端子は電源端子V
DDに接続される。
【0041】
この接続により、トランジスタT9は、トランジスタT4の能動負荷として機能する。
能動負荷は定電流源に近い動作を行い、抵抗負荷のときよりも電圧変化が大きくなるので、トランジスタT4の増幅率は高くなる特徴がある。また、トランスインピーダンス増幅回路101は、抵抗器11(
図2)を使用しないので、全トランジスタのゲート幅サイズ、及びその素子間のサイズ比で回路特性が決まるため、素子間の特性バラツキが抑制される。
【0042】
(第3実施形態)
前記第1実施形態のトランスインピーダンス増幅回路100は、トランジスタT1,T2のゲートを互いに接続して、インバータ回路の構成としたが、トランジスタT2を能動負荷とすることができる。
【0043】
図10は、本発明の第3実施形態であるトランスインピーダンス増幅回路の回路図である。
トランスインピーダンス増幅回路102は、トランスインピーダンス増幅回路101(
図9)と比較して、トランジスタT2の接続を変更し、トランジスタT10としている。つまり、第4トランジスタとしてのトランジスタT10は、ドレインが電源端子V
DDに接続され、ゲートが制御電圧端子V
C2に接続され、ソースがトランジスタT1のドレイン及びトランジスタT4のゲートに接続され、基板端子が電源端子V
DDに接続されている。
【0044】
トランスインピーダンス増幅回路102は、電流入力端子I
inに接続されているゲートがトランジスタT1のみである。
【0045】
(第1比較例)
図11は、本発明の第1比較例である光受信機の回路図である。
光受信機501は、フォトダイオード300と、トランスインピーダンス増幅回路201とを備え、トランスインピーダンス増幅回路201は、トランスインピーダンス増幅回路103と、差動増幅回路110と、抵抗器12と、キャパシタ20とを有する。
【0046】
フォトダイオード300は、カソードが電源端子V
DDに接続されており、アノードがトランスインピーダンス増幅回路103の入力端子に接続されている点は、前記第1実施形態の
図1と同様である。トランスインピーダンス増幅回路103は、シングルエンド出力の増幅回路である点で、トランスインピーダンス増幅回路100(
図1,2)と相違する。なお、トランスインピーダンス増幅回路103は、汎用オペアンプに帰還抵抗器を外部接続しても構成し得るが、該汎用オペアンプは内部に位相補償用のキャパシタが備えられている。
【0047】
トランスインピーダンス増幅回路103のシングルエンド出力端子は、差動増幅回路110の非反転入力端子に接続されている。差動増幅回路110は、非反転入力端子と反転入力端子との間に抵抗器12が接続されており、反転入力端子と抵抗器12との接続点には、キャパシタ20の一端が接続されている。なお、キャパシタ20の他端は、接地されている。つまり、抵抗器12、及びキャパシタ20は、ローパスフィルタを構成しており、トランスインピーダンス増幅回路103の出力電圧の交流成分(高周波成分)を除去し、直流成分のみを差動増幅回路110の反転入力端子に印加する機能を有する。
【0048】
差動増幅回路110は、非反転入力端子に印加された電圧と反転入力端子に印加された電圧との差分電圧を増幅する回路である。このため、差動増幅回路110は、トランスインピーダンス増幅回路103のシングルエンド出力端子の出力電圧の直流成分を打ち消し、交流成分のみを増幅して出力する。
【0049】
ところで、キャパシタ20は比較的大きな容量が必要なので、トランスインピーダンス増幅回路201は、集積化が困難である。これに対して、前記第1実施形態のトランスインピーダンス増幅回路200は、キャパシタを備えていないので、少ない占有面積で集積化することができる。また、トランスインピーダンス増幅回路100(
図2)は、無信号時の出力電圧端子V
out,V
outBの直流電位を揃えることができるので、差動増幅回路110は、揃えられた直流電位を打ち消し、交流成分のみを増幅することができる。
【0050】
(第2比較例)
図12は、本発明の第2比較例である光受信機の回路図である。
光受信機502は、フォトダイオード300と、トランスインピーダンス増幅回路202とを備え、トランスインピーダンス増幅回路202は、トランスインピーダンス増幅回路103と、二つの差動増幅回路110,111と、抵抗器13と、キャパシタ21とを有する。差動増幅回路110は、差動出力端子を有しているのに対し、差動増幅回路111は、シングルエンド出力端子を有している。
【0051】
フォトダイオード300、及びトランスインピーダンス増幅回路103は、第1比較例と同様の接続であり、トランスインピーダンス増幅回路103のシングルエンド出力端子が差動増幅回路110の非反転入力端子に接続されている。
【0052】
差動増幅回路110は、その差動出力端子と差動増幅回路111の差動入力端子とが接続されている。差動増幅回路111のシングルエンド出力端子は、抵抗器13の一端に接続されている。抵抗器13の他端は、キャパシタ21の一端、及び差動増幅回路の反転入力端に接続されている。キャパシタ21の他端は、接地されている。抵抗器13、及びキャパシタ21は、ローパスフィルタを構成しており、差動増幅回路111のシングルエンド出力端子の直流成分を差動増幅回路110の反転入力端子に印加する。これにより、差動増幅回路110,111、抵抗器13、及びキャパシタ21の閉回路は、差動増幅回路111の非反転入力端子の電位の直流成分と反転入力端子の電位(直流電位)とが一致するように機能し、DCフィードバック回路を構成する。
【0053】
したがって、トランスインピーダンス増幅回路202は、トランスインピーダンス増幅回路103の出力電圧の直流成分を打ち消し、差動増幅回路110が交流成分(高周波成分)のみを増幅する。ところで、キャパシタ21は比較的大きな容量が必要なので、トランスインピーダンス増幅回路202は、集積化が困難である。これに対して、前記第1実施形態のトランスインピーダンス増幅回路200は、キャパシタを備えていないので、少ない占有面積で集積化することができる。
【0054】
(第3比較例)
図13は、本発明の第3比較例である光受信機の回路図である。
光受信機503は、フォトダイオード300と、トランスインピーダンス増幅回路203とを備え、トランスインピーダンス増幅回路203は、トランスインピーダンス増幅回路103と、差動増幅回路110と、4つの抵抗器14,15,16,17とキャパシタ22とを有する。
【0055】
フォトダイオード300は、第1比較例と同様の接続であるが、トランスインピーダンス増幅回路103は、シングルエンド出力端子がキャパシタ22を介して差動増幅回路110の非反転入力端子に接続されている点で相違する。また、差動増幅回路110は、2本の抵抗器14,15を用いて、非反転入力端子に直流バイアスを掛けている。つまり、トランスインピーダンス増幅回路103と差動増幅回路110とは、AC結合されている。また、差動増幅回路110は、2本の抵抗器16,17を用いて、反転入力端子に直流バイアスを掛けている。
【0056】
つまり、キャパシタ22は、トランスインピーダンス増幅回路103のシングルエンド出力端子と、差動増幅回路110の非反転入力端子とに接続されている。また、抵抗器14,15の直列回路、及び抵抗器16,17の直列回路は、電源端子V
DD、及び電源端子V
SSに接続されている。抵抗器14,15の直列回路の接続点は、キャパシタ22の一端、及び差動増幅回路110の非反転入力端子に接続されている。また、抵抗器16,17の直列回路の接続点は、差動増幅回路110の反転入力端子に接続されている。
【0057】
これらの接続により、差動増幅回路110は、トランスインピーダンス増幅回路103の出力電圧の交流成分、及び抵抗器14,15の分圧電圧(直流電圧)が非反転入力端子に印加され、抵抗器16,17の分圧電圧(直流電圧)が反転入力端子に印加される。ここで、抵抗器14,16の抵抗値を揃え、抵抗器15,17の抵抗値を揃えれば、抵抗器16,17の分圧電圧と抵抗器16,17の分圧電圧とが等しくなる。この結果、差動増幅回路110は、抵抗器16,17の分圧電圧と抵抗器16,17の分圧電圧とを打ち消し、トランスインピーダンス増幅回路103の出力電圧の交流成分のみ増幅する。
【0058】
ところで、キャパシタ22は比較的大きな容量が必要なので、トランスインピーダンス増幅回路203は、集積化が困難である。これに対して、前記第1実施形態のトランスインピーダンス増幅回路200は、キャパシタを備えていないので、少ない占有面積で集積化することができる。
【0059】
(変形例)
(1)前記第1実施形態のトランスインピーダンス増幅回路100は、トランジスタT1,T2,T4を用いて、トランジスタT1のゲート電圧v
1(t)の変化と逆相のトランジスタT4のドレイン電流を流している。しかしながら、トランジスタT1,T2,T4は、単一の増幅回路と見なすことができる。つまり、トランジスタT4は、電流入力端子I
inの電圧の変化と逆相のドレイン電流を抵抗器11に流しているとみなすことができる。
【0060】
(2)前記各実施形態のインピーダンス増幅回路100,101,102は、ソースフォロア回路T5,T6、及びソースフォロア回路T7,T8を介して、出力電圧端子V
out,V
outBから差動出力電圧を得ていた。しかしながら、次段の差動増幅回路110の入力インピーダンスが高いのが通常なので、ソースフォロア回路T5,T6、及びソースフォロア回路T7,T8が不要になることが多い。つまり、トランスインピーダンス増幅回路100のトランジスタT4のドレインと差動増幅回路の非反転入力端子とが接続され、トランスインピーダンス増幅回路100のトランジスタT3のドレインと差動増幅回路の反転入力端子とが接続される。
【0061】
(3)前記第3実施形態のインピーダンス増幅回路102(
図10)は、能動負荷としてトランジスタT9を用いていたが、トランジスタT9の代わりに抵抗負荷を用いることもできる。また、前記各実施形態のトランジスタT3は、ソースフォロアとしてX点の電圧v2(t)の電圧を取り出す電流源として使用したが、抵抗負荷とすることもできる。