特許第6192191号(P6192191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6192191ISGを用いたエンジントルク補助装置およびトルク補助方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192191
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】ISGを用いたエンジントルク補助装置およびトルク補助方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20170828BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20170828BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20170828BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20170828BHJP
   B60W 20/13 20160101ALI20170828BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20170828BHJP
   B60W 20/15 20160101ALI20170828BHJP
【FI】
   B60W10/08 900
   B60K6/485ZHV
   B60W10/06 900
   B60W10/26 900
   B60W20/13
   F02D29/06 D
   B60W20/15
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-513709(P2016-513709)
(86)(22)【出願日】2015年4月3日
(86)【国際出願番号】JP2015060543
(87)【国際公開番号】WO2015159724
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2016年7月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-84435(P2014-84435)
(32)【優先日】2014年4月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金 昌鉉
【審査官】 増子 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−293921(JP,A)
【文献】 特開2013−251940(JP,A)
【文献】 特開2006−275019(JP,A)
【文献】 特開2008−296896(JP,A)
【文献】 特開2005−051872(JP,A)
【文献】 特開2003−009311(JP,A)
【文献】 特開2010−083351(JP,A)
【文献】 特開2013−203303(JP,A)
【文献】 特開2013−256269(JP,A)
【文献】 特表2004−509801(JP,A)
【文献】 特開2010−201987(JP,A)
【文献】 特開2002−051405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 − 6/547
B60W 10/00 − 20/50
F02D 29/00 − 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ISGによりエンジンのトルクを補助するエンジントルク補助装置であって、
ISG制御部を有し、
前記ISG制御部は、
前記ISGのモーターに電力を供給するバッテリの充電状態を受け取り、閾値4<前記充電状態の場合に前記ISGを用いたエンジントルク補助を許可し、所定値1<前記充電状態の場合にエンジントルク補助以外の目的での前記バッテリの使用を許可し、閾値4<所定値1である
エンジントルク補助装置。
【請求項2】
ISGによりエンジンのトルクを補助するエンジントルク補助装置であって、
ISG制御部を有し、
前記ISG制御部は、
前記ISGのモーターに電力を供給するバッテリの充電状態を受け取り、前記充電状態<閾値5の場合に前記ISGを用いたエンジントルク補助を許可し、前記充電状態<所定値2の場合にエンジントルク補助以外の目的での前記バッテリの使用を許可し、所定値2<閾値5である
エンジントルク補助装置。
【請求項3】
ISGを用いたエンジントルク補助方法であって、
前記ISGのモーターに電力を供給するバッテリの充電状態に関する閾値4および所定値1を用い、閾値4<前記充電状態の場合に前記ISGを用いたエンジントルク補助を許可し、所定値1<前記充電状態の場合にエンジントルク補助以外の目的での前記バッテリの使用を許可し、閾値4<所定値1である
方法。
【請求項4】
ISGを用いたエンジントルク補助方法であって、
前記ISGのモーターに電力を供給するバッテリの充電状態に関する閾値5および所定値2を用い、前記充電状態<閾値5の場合に前記ISGを用いたエンジントルク補助を許可し、前記充電状態<所定値2の場合にエンジントルク補助以外の目的での前記バッテリの使用を許可し、所定値2<閾値5である
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はISG(Integrated Starter Generator)を用いたエンジントルク補助装置およびトルク補助方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンの出力軸にベルトを介してモータージェネレータ(ISG)を機械的に結合し、このモータージェネレータでエンジンの始動を行う技術が知られている。また、このISGを使用する範囲をエンジンの始動用のみでなく、車両走行中のトルク補助に用いる技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−241123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、燃費を高めるようにISGを用いてエンジントルクを決定することを1つの目的としている。
【0005】
本開示は、バッテリの充電状態に応じて有効にISGによるエンジントルク補助を行うことを可能にすることを1つ目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態によれば、ISGによりエンジンのトルクを補助するエンジントルク補助装置が提供される。一実施形態によるエンジントルク補助装置は、ISG制御部を有し、アクセル開度センサからのアクセル開度を示す信号に基づき、アクセル開度変化量を計算する手段と、エンジン制御部からの運転者要求トルクを示す信号に基づき、運転者要求トルク変化量を計算する手段と、を有する。ISG制御部は、(i)閾値1<アクセル開度変化量、または、(ii)閾値2<運転者要求トルク変化量且つ閾値3<運転者要求トルク、のいずれかの条件を満たす場合に、ISGを用いてISG補助トルクを発生させるように構成される。
【0007】
本開示の一実施形態によれば、ISGによりエンジンのトルクを補助するエンジントルク補助装置が提供される。一実施形態によるエンジントルク補助装置は、ISG制御部を有する。ISG制御部は、ISGのモーターに電力を供給するバッテリの充電状態を受け取り、閾値4<充電状態の場合にISGを用いたエンジントルク補助を許可し、所定値1<充電状態の場合にエンジントルク補助以外の目的での前記バッテリの使用を許可し、閾値4<所定値1である。
【0008】
本開示の一実施形態によれば、ISGによりエンジンのトルクを補助するエンジントルク補助装置が提供される。一実施形態によるエンジントルク補助装置は、ISG制御部を有する。ISG制御部は、ISGのモーターに電力を供給するバッテリの充電状態を受け取り、充電状態<閾値5の場合にISGを用いたエンジントルク補助を許可し、充電状態<所定値2の場合にエンジントルク補助以外の目的での前記バッテリの使用を許可し、所定値2<閾値5である。
【0009】
本開示の一実施形態によれば、ISGによりエンジンのトルクを補助するエンジントルク補助装置が提供される。一実施形態によるエンジントルク補助装置は、ISG制御部を有する。ISG制御部は、ISGで発生させるISG補助トルクを、エンジン回転数−トルク平面上の燃費マップを用いて、燃費が向上するように前記ISG補助トルクを決定する手段を有する。
【0010】
本開示の一実施形態によれば、ISGによりエンジンのトルクを補助するエンジントルク補助装置が提供される。一実施形態によるエンジントルク補助装置は、ISG制御部を有する。ISG制御部は、運転者要求トルクを、ISGを用いて発生させるISG補助トルクおよびエンジントルクの合計として実現し、エンジントルクを、(運転者要求トルク)および(運転者要求トルク−ISG補助トルク)の内の小さい方の値を採用する関数で決定する手段、を有する。
【0011】
本開示の一実施形態によれば、ISGを用いたエンジントルク補助方法が提供される。かかる方法は、アクセル開度センサからのアクセル開度を示す信号に基づき、アクセル開度変化量を計算するステップと、エンジン制御部からの運転者要求トルクを示す信号に基づき、運転者要求トルク変化量を計算するステップと、を有する。かかる方法はさらに、(i)閾値1<アクセル開度変化量、または、(ii)閾値2<運転者要求トルク変化量且つ閾値3<運転者要求トルク、のいずれかの条件を満たす場合に、ISGを用いてISG補助トルクを発生させるステップと、を有する。
【0012】
本開示の一実施形態によれば、ISGを用いたエンジントルク補助方法が提供される。かかる方法は、ISGのモーターに電力を供給するバッテリの充電状態に関する閾値4および所定値1を用い、閾値4<充電状態の場合に前記ISGを用いたエンジントルク補助を許可し、所定値1<充電状態の場合にエンジントルク補助以外の目的での前記バッテリの使用を許可し、閾値4<所定値1である。
【0013】
本開示の一実施形態によれば、ISGを用いたエンジントルク補助方法が提供される。かかる方法は、ISGのモーターに電力を供給するバッテリの充電状態に関する閾値5および所定値2を用い、充電状態<閾値5の場合にISGを用いたエンジントルク補助を許可し、充電状態<所定値2の場合にエンジントルク補助以外の目的でのバッテリの使用を許可し、所定値2<閾値5である。
【0014】
本開示の一実施形態によれば、ISGを用いたエンジントルク補助方法が提供される。かかる方法は、ISGで発生させるISG補助トルクを、エンジン回転数−トルク平面上の燃費マップを用いて、燃費が向上するようにISG補助トルクを決定する。
【0015】
本開示の一実施形態によれば、ISGを用いたエンジントルク補助方法が提供される。かかる方法は、運転者要求トルクを、ISGを用いて発生させるISG補助トルクおよびエンジントルクの合計として実現し、エンジントルクを、(運転者要求トルク)および(運転者要求トルク−ISG補助トルク)の内の小さい方の値を採用する関数で決定する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の一実施形態によるエンジントルク補助装置の基本的構成を示す概略図である。
図2】本開示の一実施形態によるエンジントルク補助装置の基本的構成を示す概略図である。
図3】本開示の一実施形態による、運転者要求トルク、ISG補助トルク、実エンジントルクを示すグラフである。
図4】本開示の一実施形態による、ISG補助トルクの決定手順を示す図である。
図5】本開示の一実施形態による、ISG補助トルクを決定するときに用いられる、エンジントルク−エンジン回転数による燃費マップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係るエンジントルク補助装置の実施形態を添付図面とともに説明する。添付図面において、同一または類似の要素は同一または類似の参照符号を付してあり、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明を省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0018】
図1に示されるように、一実施形態において、車両に搭載されるエンジントルク補助装置は、エンジン10、エンジン10を始動するスタータ12、モータージェネレータを備えるISG(Integrated Starter Generator)14、ISG14のモーターに電力を供給するバッテリ16(たとえば、14Vまたは48Vのバッテリ)を有する。ISG14は、ベルト18を介してエンジン10の出力軸にISG補助トルクを供給できるように構成される。
【0019】
エンジン10、エンジン10を始動するスタータ12、ISG14の機械的構成、バッテリ16、ベルト18は、従来からのものを使用できるので、本明細書では説明しない。たとえば、特許文献1に記載の構成を利用することができる。
【0020】
図2に示されるように、本発明の一実施形態において、エンジントルク補助装置は、ISG14を制御するためのISG制御部50およびエンジン10を制御するエンジン制御部52を備える。ISG制御部50は、バッテリ16の充電状態(SOC、State Of Charge)、電圧、バッテリ電流、バッテリ温度などの情報54を受け取り、バッテリ16の状態を監視できるように構成される。
【0021】
エンジン制御部52は、図示しないアクセルペダル、エンジン10などと電気的に連絡し、これらから各種情報56を受け取るように構成される。エンジン制御部52は、アクセル開度、エンジン回転数などの情報56を受け取り、エンジン10の各部品に要求点火時期、要求燃料噴射量、要求空気量などの情報58を与え、エンジン10の動作を制御することができる。
【0022】
ISG制御部50およびエンジン制御部52は、それぞれ独立したハードウェアとして構成してもよく、また同一のハードウェア上で別個のソフトウェアとして実装してもよい。
【0023】
ISG制御部50は、エンジン制御部52と通信するように構成される。ISG制御部50は、エンジン制御部52にISG14で発生させるISG補助トルクの量を伝達することができる(矢印60)。以下で詳述するように、エンジン制御部は、運転者要求トルクからISG補助トルクを差し引いた値のエンジントルクを発生させることで運転者要求トルクを実現する。一方、エンジン制御部52は、ISG制御部50に、運転者要求トルク、アクセル開度、エンジン回転数を伝達することができる(矢印62)。以下で詳述するように、ISG制御部50は、運転者要求トルク、アクセル開度、エンジン回転数を使用して、ISG補助トルクを決定するように構成することができる。
【0024】
本発明の一実施形態では、ISG制御部50は、車両に急加速が要求されている場合にISG補助トルクを発生させて、エンジンのトルク補助を行う。一般に、車両を急加速させる場合、エンジンの燃費が落ちる。本発明の一実施形態では、そのような場合にISGを用いて補助トルクを発生させて、燃費の低下を緩和する。図3に示されるように、運転者要求トルク72(グラフの一番外側の包絡線)が与えられた場合、ISG補助トルク72と74の三角形部分(図3の破線で示される)と、実エンジントルク74(図3の実線で示される)の合計で運転者要求トルク72を実現する。そのため、車両が急加速される場合でも、燃費が良いところでエンジン運転点を決めることができる。
【0025】
本発明の一実施形態における、ISG補助トルクの決定手順を図4のフローチャートを用いて説明する。
【0026】
ステップS100において、本フローが開始される。図示の手順は、一定の時間間隔、たとえば10ms毎に繰り返し行われる。
【0027】
ステップS102では、エンジン制御部52において、アクセル開度、エンジン回転数、車速等の車両条件から運転者要求トルクを計算する。運転者要求トルクの計算方法、および運転者要求トルクに用いる情報は本発明の主題ではないので詳述しないが、任意の方法を採用することができる。エンジン制御部52で計算された運転者要求トルクは、CAN通信(独立したハードウェア)もしくは信号伝達(別箇のソフトウェア)によりISG制御部50に伝達される。
【0028】
ステップS104では、ISG制御部50において、エンジン制御部52から受け取った運転者要求トルクから、車両に急加速が要求されている状況か否かを判断する。ステップS104において、車両に急加速が要求されているかどうかは、(i)閾値1<アクセル開度変化量であるか、または(ii)閾値2<運転者要求トルク変化量且つ閾値3<転者要求トルク、のいずれかを満たす場合に急加速が要求されていると判断する。条件(i)は、アクセル開度の変化量が大きい時に急加速であると判断するものである。条件(ii)は、運転者要求トルクの変化量が大きく、且つ運転者要求トルクが大きいときに急加速であると判断するものである。閾値1は、たとえば2%/0.01s(判定の揺れを防ぐための不感帯込み)とすることができる。閾値2は、たとえば3Nm/0.01s(判定の揺れを防ぐための不感帯込み)とすることができる。閾値3は、たとえば30Nm(判定の揺れを防ぐための不感帯込み)とすることができる。条件(ii)は、条件(i)と異なり、アクセル開度の変化量からではなく、運転者要求トルクおよびその変化量から判断するので、アクセルペダルに変化がない場合においても、ISG14によりトルク補助を行うことができる。たとえば、運転者によるアクセルペダルの操作に関わらずに設定された一定の速度で車両を運転させるルクーズ制御が機能している場合や、エアコン使用時などによる電気負荷等が変化した場合などに対応することができる。
【0029】
次に、ステップS106において、バッテリ16の状態からISG動作が可能かどうかを判定する。ステップS106において、(1)閾値4<バッテリ充電状態(SOC)<閾値5、(2)バッテリ電流<閾値6、および(3)閾値7<バッテリ温度<閾値8、の全ての条件またはこれらの内少なくとも1つの条件を満たす場合に、ISGの動作が可能と判断することができる。閾値4は、たとえば20%(判定の揺れを防ぐための不感帯込み)とすることができる。閾値5は、たとえば80%(判定の揺れを防ぐための不感帯込み)とすることができる。閾値6は、たとえば10A(判定の揺れを防ぐための不感帯込み)とすることができる。閾値7は、たとえば10度とすることができる。閾値8は、たとえば70度とすることができる。
【0030】
これらの条件(1)〜(3)はバッテリ16の保護のための条件である。条件(1)の閾値4は、バッテリ16上がりを防止するための条件であり、閾値5は、過充電の状態からISGを駆動することでバッテリ16の寿命に悪影響を与えることを防止するための条件である。条件(2)は、過放電の状態でバッテリ16を使用することを避けるための条件である。条件(3)は、バッテリ16の温度が冷た過ぎる場合や、過熱している条件で使用することを避けるための条件である。
【0031】
本発明の一実施形態において、上記条件の閾値4、閾値7は、エンジントルク補助以外の目的でバッテリ16の使用許可を与える下限値(所定値1)よりも小さい。また、上記条件の閾値5、閾値6、閾値8は、エンジントルク補助以外の目的でバッテリ16の使用許可を与える上限値(所定値2)よりも大きい。つまり、バッテリ保護のために通常は使用しない条件であっても、エンジントルク補助のために、バッテリ14を使用許可するための条件を一時的に緩和している。なお、エンジントルク補助以外の目的でのバッテリ16の使用は、たとえば車両走行中のエンジン停止後、ISGによる再始動時などである。また、所定値1は、たとえば25%(判定の揺れを防ぐための不感帯込み)とすることができる。所定値2は、たとえば75%(判定の揺れを防ぐための不感帯込み)とすることができる。
【0032】
ステップS106において、バッテリ16の使用許可の条件を一時的に緩和するのは、ISGトルク補助は常に作動するものではないので、バッテリへの悪影響が小さいためである。
【0033】
ステップS106において、ISG動作可能条件が満たされない場合は、本手順を終了する。
【0034】
ステップS106においてISG動作可能条件が満たされた場合、ステップS108において、ISG14で発生させるISG補助トルクがISG制御部50により計算される。ISG補助トルクは、エンジンのみにより運転者要求トルクが実現される場合にくらべて、エンジンおよびISG補助トルクの合計で運転者要求トルクを実現した場合の方が、エンジンの燃費が向上するように決定する。一実施形態において、エンジントルク−エンジン回転数による燃費マップを利用して、燃費が向上するように決定することができる。
【0035】
図5は、エンジントルク−エンジン回転数による燃費マップを示す。図中の右上がりの直線は、エンジンのみで運転者要求トルクを実現する場合における急加速時のトルク増加を示している。図中の破線は、ISG補助トルクとエンジントルクの合計で運転者要求トルクを実現する場合のエンジントルクの増加を示している。一実施形態においては、図示の破線のように燃費が向上するトルク運転領域を使うようにISG補助トルクを決定する。
【0036】
ステップS108において、ISG補助トルクを計算したら、ISG制御部50は、エンジン制御部52に計算されたISG補助トルクを伝達する。
【0037】
ステップS110において、エンジン10に要求するトルクをエンジン制御部52により計算する。一実施形態において、エンジン10に要求するトルクは、(運転者要求トルク)および(運転者要求トルク−ISG補助トルク)の内の小さい方の値を採用する関数(MIN関数)により決定する。これは、エンジン制御部52内において、「運転者要求トルク」という変数の値自体を変更せずに、ISG補助トルクを差し引いた要求トルクをエンジン10で実現するためである。一般に、変数「運転者要求トルク」は、ISGトルク補助以外にも、TM制御、ESC制御、ABS制御、4駆制御などに用いられることがある。変数「運転者要求トルク」の値自体を変更すると、これらの他の制御に影響を与えることになるので、変数「運転者要求トルク」の値を変更せずに上記のMIN関数を利用することで、ISGトルク補助が機能している場合にでも、他の制御との整合性を保つことができる。そのため、ISGトルク補助機能を備えていない従来のエンジン制御部をベースに、本開示によるISGトルク補助機能を実現するように改良する場合にでも、エンジン制御部の変更はわずかとなり、制御を変更することによるエラーのリスクを低減することができる。
【0038】
次に、ステップS112において、エンジン制御部52により計算された要求トルクから、要求点火時期、要求燃料噴射量、要求空気量を計算して、エンジン10への要求トルクを実現する。要求トルクをエンジン10において実現するのは従来からの技術である。
【0039】
ステップS114において、本フローは終了する。
【0040】
以上のように本願発明の実施形態を説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。また、上述の実施形態の中のそれぞれの特徴は全てが実施されなければならないものではない。たとえば、図4に示したフローチャートのステップの一部は省略してもよく、また、判定条件の一部を省略してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5