(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アダプターは、前記各室の境界線に対応する前記底部の前記容器本体側表面から前記容器本体の底部に当接するように設けられた、前記各室間の溶液の流入を防止する流入防止板をさらに有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の検査容器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、検体抽出液を収めた検査容器内に複数の試験片を同時に挿入すると、試験片毎に挿入位置や吸着速度が違うために、試験片によっては検体抽出液を充分に吸収できないことから正確な検査ができないおそれがあった。また検査容器内に第一試験片を挿入した後に、第二試験片を挿入して別項目の検査をしようとすると、第一試験片が検体抽出液を吸収し尽くすために、第二試験片により別項目の検査を行えないおそれもあった。
そのため、複数の試験片で複数項目の検査を簡易に行える検査容器が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)有底中空形状をした可撓性の容器本体と、容器本体の内側に軸方向に沿って形成された、容器本体の検体抽出液収容部を2以上の室に区画する仕切板と、を備える検査容器。
(2)仕切板は、前記容器本体と一体に前記容器本体の底部から凸設している、(1)に記載の検査容器。
(3)容器本体の検体抽出液収容部は3以上の室に区画されている、(1)又は(2)に記載の検査容器。
(4)仕切板は、係止部により前記容器本体の内部に着脱自在に固定されている、(1)〜(3)のいずれか1に記載の検査容器。
(5)仕切板として、前記容器本体の底部から凸設した中空形状の仕切板を備える、(1)〜(4)のいずれか1に記載の検査容器。
(6)検体抽出液を収納した(1)〜(5)のいずれか1に記載の検査容器と、試験片と、を備える検査キット。
(7)容器の内側が軸方向に沿って2以上の室に区画された可撓性の検査容器内に収容された検体抽出液に、被検体を吸収した綿棒を含漬させる工程と、検査容器を外部から圧力により変形させて、綿棒から被検体を絞り出す工程と、検査容器の第一室に第一試験片を含漬させる第一含漬工程と、を備える検査方法。
(8)検査容器の第二室に第二試験片を含漬させる第二含漬工程をさらに備える、(7)に記載の検査方法。
(9)第二含漬工程は、第一含漬工程と略同時、または第一含漬工程の後に行われる、(8)に記載の検査方法。
(10)有底中空形状をした可撓性の容器本体と、容器本体の内部に着脱自在に固定された有底中空形状のアダプターと、を備え、アダプターは、アダプターの底部から開口部側に向かい設けられた、アダプターの検体抽出液収容部を2以上の室に区画する仕切板を有する検査容器。
(11)アダプターは、その一部に貫通孔が形成されている(10)に記載の検査容器。
(12)アダプターは、2以上の室の少なくとも1つの底部に貫通孔が形成されている(10)に記載の検査容器。
(13)アダプターは、アダプターの内側における各室の境界線の延長線上にアダプターの開口部まで至るガイドを有する(10)〜(12)のいずれか1に記載の検査容器。
(14)ガイドは、ガイドの開口部上端が、容器本体の開口部の縁よりも高く配置される(13)に記載の検査容器。
(15)ガイドは、ガイドの開口部上端から、検査容器の外側に向かい張り出すつば部を有する(14)に記載の検査容器。
(16)アダプターは、各室の境界線に対応する底部の容器本体側表面から容器本体の底部に当接するように設けられた、各室間の溶液の流入を防止する流入防止板をさらに有する(10)〜(15)のいずれか1に記載の検査容器。
(17)アダプター本体の検体抽出液収容部は3以上の室に区画されている(10)〜(16)のいずれか1に記載の検査容器。
(18)アダプターの外側半径は、容器本体の内法半径以上である(10)〜(17)のいずれか1に記載の検査容器。
(19)検体抽出液を収納した(10)〜(18)のいずれか1に記載の検査容器と、試験片と、を備える検査キット。
(20)有底中空形状をした可撓性の容器本体に収容された検体抽出液に、被検体を吸収した綿棒を含漬させる工程と、容器本体を外部から圧力により変形させて、綿棒から被検体を絞り出す工程と、有底中空形状のアダプター本体、アダプター本体の底部から開口部側に向かい設けられたアダプター本体の検体抽出液収容部を2以上の室に区画する仕切板を備え、2以上の室の少なくとも1つの底部に貫通孔が形成されたアダプターを容器本体の内部に挿入する工程と、2以上の室のうちの第一室に第一試験片を含漬させる第一含漬工程と、を備える検査方法。
(21)2以上の室のうちの第二室に第二試験片を含漬させる第二含漬工程をさらに備える(20)に記載の検査方法。
(22)第二含漬工程は、第一含漬工程と略同時、または第一含漬工程の後に行われる(21)に記載の検査方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の試験片で複数項目の検査を簡易に行える検査容器が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。図中同一の機能又は類似の機能を有するものについては、同一又は類似の符号を付して説明を省略する。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
[第一の実施形態]
[検査容器1A]
図1Aは本発明の実施形態にかかる検査容器の一部切欠き斜視図であり、
図1Bはその上面図である。
図1Aに示すように、検査容器1Aは、有底中空形状をした可撓性の容器本体10と、容器本体10の内側に軸方向に沿って、容器本体10の底部10dから凸設した仕切板11と、を備える。
【0012】
図1Bに示すように、仕切板11により容器本体10の検体抽出液収容部50の底面側が第一室51と第二室52に区画されているため、同一の検体抽出液を収容する第一室51、第二室52に、それぞれ第一試験片、第二試験片を挿入できる。
そのため、検査容器1Aによれば、同一条件下に置かれた同一検体抽出液について、(1)第一、第二試験片により、それぞれ別項目の検査を略同時に行える、又は(2)第一試験片による検査の後に、第二試験片により別項目の検査を適宜行える、といった作用効果が得られる。
【0013】
容器本体10の材質は、収容される検体抽出液に影響を与えることなく、検査容器の使用時に外部からの圧力により変形し検査容器内に挿入された綿球等の吸水性部材に保持されている検体を搾り出すことができれば特に制限はない。例えば、可撓性材料、具体的には、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、シリコンゴム、熱可塑性エラストマー、塩化ビニルなどの樹脂素材を用いることができる。また、それらの弾性率は、公知の方法で適宜調整してもよい。
綿球等から検体を搾り出す際や、試験片を挿入する際に、検査容器内部の様子を把握しやすい観点からは、容器本体10は透明または半透明であることが好ましい。
容器本体10は、特に制限されることなく、種々の方法、例えば、射出成形や3Dプリンター等により一体成形さることが好ましい。なお、後述のアダプター8についても同様である。
【0014】
検査容器1A、後述の1Bの形状は、有底中空形状であって、検体抽出液を入れ、綿棒を浸すのに適当な大きさ、形状であれば特に限定されないが、独立して垂直に保持できるような構造が望ましい。そのような形状としては、例えば円筒の他、四角柱、六角柱などの角柱が挙げられ、容器本体部においては同一断面構造あるいは上部から下部に向かって一部にテーパーを有する構造が挙げられる。
また、検査容器1A、後述の1Bは、検体抽出液を収容可能なように一端に開口部を有するが、開口部は、容器の上部に設けられ、密閉可能に蓋もしくはシールを取り付けられる構造であることが望ましい。例えば
図1Aに示すように、容器本体10の開口部に螺合部10aを設けておくことが好ましい。検査容器内に予め検体抽出液を充填した後に、取り外し可能にキャップを嵌め、使用時にキャップを取り外すことで、簡易に検査を行なうことができるからである。
【0015】
また、検査容器1A、後述の1Bはさらに、外壁部に必要に応じて滑り止め構造を設けてもよい。例えば、検査容器1A、後述の1Bに綿棒を挿入し、綿球を回転させながら容器壁面に押し当てることにより検査容器1Aに回転力が加えられた場合に、回転を抑制するために支持可能な凸部及び/又は凹部を有することが望ましい。そのような凸部及び/又は凹部としては、容器の外壁に外周方向に外側リブを設けた構造が挙げられる。この場合、容器本体10の外壁の長手方向の延長上に外側リブの先端が位置するように配すれば、検査容器1A、後述の1Bの回転を抑制する上でも、また美観の上からも望ましい。検査容器1A、後述の1Bは、
図1A,
図1Bに示すように、螺合部10aと容器本体10の境界に容器の外周に、上面視において略正方形状のリブ10bを設けてもよい。検査容器1A、後述の1Bの転がりを防止でき、またキャップを開閉する際の滑り止めになるからである。
【0016】
容器本体10の検体抽出液収容部50の高さYを2とすると、仕切板11の高さXは、2未満であり、1.8以下が好ましく、1.7以下がより好ましく、1.6〜1.0が更により好ましい。
検査容器1A内に収容された検体抽出液に検体を溶出した後、検体抽出液をよく攪拌することで、検体の濃度が均等な検体抽出液が得られるが、各室毎の濃度勾配が生じることを防止するため、仕切板には、隣接する室と検体抽出液が連通可能に、連通穴を設けてもよい。
【0017】
検査容器1A、後述の1Bを用いて分析しようとする検体は特に限定されず、全血、血清、血漿、尿、唾液、喀痰、鼻汁、鼻腔または咽頭拭い液、汗、糞便等の生体試料の他、肉、植物等の食物の抽出物、汚水、泥水、土壌等の環境由来の試料、菌、ウィルス等の微生物培養液もしくは浮遊液等、菌やウィルス等からの抽出物が含まれる。また、該検体中の被検出物も、特に限定されないが、例えば臨床検査の分野では、抗原または抗体などであり、例えば、インフルエンザウィルス、RSウィルス、アデノウィルス、ヒトメタニューモウィルス等のウィルス由来の蛋白質抗原が挙げられる。
【0018】
検体を検出デバイスに供給する際は、綿球などで吸収した検体を、検査容器を用いて搾り出し、検体供給部位に希釈等の処理をすることなく直接供給してもよい。また、検体が粘性を有する等の理由により固相支持体上で容易に展開移動できない検体に関しては、予め検体抽出液で希釈して検出デバイスに供給してもよい。
検体抽出液は、被検出物が検出工程上、支障がない程度に固相支持体上を展開できれば、その液性については酸性、中性、塩基性を問わない。また、界面活性剤、変性剤等を含む各種緩衝液でも、いかなる組成の溶液でもよい。
【0019】
被検体を含浸する部材としては、被検体が吸収されて検体抽出液へと抽出できるものであればいずれでもよいが、例えば、綿棒又は綿球を用いることができる。
なお、上記の綿棒や綿球などについては、臨床検査の分野で、ヒトなどから検体を採取する場合には、衛生面から滅菌消毒された綿棒もしくは綿球が使用されることが多いが、これに限定されるものではなく、綿球類似の吸水性を有し、衛生面等で問題なければ、その材質は特に限定されない。例えば、綿、パルプ、レーヨン等の化学繊維性のものなども使用できる。
【0020】
[検査容器2A,3A,4A]
図1A,
図1Bを用いて、本発明について説明したが、本発明は上述の発明に限定されることはない。例えば、
図2A,
図2Bに示すように、容器本体10の検体抽出液収容部50が3室に区画されていてもよい。これにより、同一の検体抽出液を用いて、例えば、RSウィルス、アデノウィルス、ヒトメタニューモウィルスの検査を同時に行なうことができる。また
図3A,
図3Bに示すように、容器本体10の検体抽出液収容部50が4室に区画されていてもよい。例えば、4種の検査を同時に行ったり、3種の検査をした後に感度が悪いものについて再検査することができる。また、検体抽出液収容部50が5室、6室、7室、・・・と多区画室となっていてもよい。
【0021】
図4Aに示すように、仕切板41は、容器本体10の内側に係止可能とする係止部41a(中空リング)により、容器本体10の内部に着脱自在に固定されていてもよい。
図4Aでは、係止部41aが容器本体10の一部の内周を覆うように配置されているが、これに限定されることはない。仕切板41が容器本体10内に固定され、検体抽出液収容部50が複数に区画されるのであれば、係止部41aは内周を一周せずに、一部が欠けていてもよい。例えば、上面視において、ローマ字略「I」もしくは「H」字状になるように中空リングの一部が欠けていてもよい。
【0022】
[検査容器5A]
検査容器1A〜4Aにおいては板状の仕切板を配置する構成としたが、容器本体10の検体抽出液収容部50が複数に区画されるのであればこれに限定されることはない。例えば、
図5Aに示すように、中空円筒状の仕切板81を容器本体10の底部10dから凸設させる構成としてもよい。ここでは仕切板81の形状を、
図5Bに示すように上面視円状の中空体としたがこれに限定されることなく、上面視三角、四角といった多角形状の中空体としてもよい。また仕切板81の内側に同心円状に、仕切板81と同様の形状をした中空状の仕切板をさらに配置して、検体抽出液収容部50を複数に区画してもよい。また仕切板81を更に2室以上に仕切る仕切板を配置して、検体抽出液収容部50を複数に区画してもよい。仕切板81の高さは検査容器1Aと同様の高さに構成してもよい。
【0023】
[検査方法1A]
実施形態に係る検査方法の工程について、
図1A、
図6A〜
図6Eを用いて説明する。
まず
図1Aに示すような、容器の内側が軸方向に沿って2室に区画された可撓性の検査容器1Aを用意し、検査容器1A内に検体抽出液を予め充填しておく。
使用時に、
図6Aに示すように検査容器1Aのキャップを取り除き、その後
図6Bに示すように、検体抽出液が充填された検査容器内に被検体を吸収した綿棒を含漬させる。
そして、
図6Cに示すように、綿棒を棒軸を中心にして左右に回転させる。その際、綿棒の綿球を容器内壁に押し付けるようにしてもよい。
その後、
図6Dに示すように、検査容器を外部からの圧力により変形させて、容器内壁に綿球を擦り付けるように綿棒から被検体を絞り出す。
図6Eに示すように、検査容器の第一室51に第一試験片61、第二室52に第二試験片62を挿入する。
このように、検査方法1Aによれば、同一条件下に置かれた同一検体抽出液について、第一試験片61と第二試験片62により、それぞれ別項目の検査を略同時に行える。
【0024】
[検査方法2A]
上述の検査方法1Aにおいては、
図6A〜
図6Dの工程の後、
図6Eに示すように、第一試験片61と第二試験片62を、それぞれ第一室51、第二室52略同時に挿入した。しかし、
図6Eの工程に換えて、
図7Eに示すように、第一室51に第一試験片61を挿入してもよい。これにより、
図7Fに示すように、第一室51内の検体抽出液が第一試験片61に吸収され尽くした後でも、
図7Gに示すように、第二室52に第二試験片62を挿入することで、別項目の検査を行なうことができる。
このように、検査方法2Aによれば、該当可能性の高い検査項目から検査し、その検査結果に応じて別項目の検査を適宜行えるため、複数の項目について略同時に検査を行なう場合よりも、検査項目を省略できるので経済的である。
【0025】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
検査容器1A〜4Aについて中心に説明してきたが、本発明によれば、例えば、上述の検査容器を備える検査キットも提供される。検査キットとしては、検体抽出液を収納する検査容器と、試験片と、を備える。試験片として、複数の試験片を備えることができる。一片の試験片で複数の項目を検査できる試験片を用いることもできる。
検査方法1A,2Aについて説明したが、検査方法2Aに係る
図7E、
図7Fの工程の後、第二室52内の検体抽出液を各種テストデバイスに供給して、被検出物を検出してもよい。例えば、試験片を検査容器に挿入し、抽出液に浸すディップスティック式、抽出液をテストデバイスへと供給するラテラルフロー式、フロースルー式の各種検査方法に適用することができる。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0026】
(実施例1A)
成形材料としてポリエチレンを用いて、射出成形により
図1A、
図1Bに示す検査容器1Aを調製した。その後、上述の検査方法1Aの手順に従って実験を行った。その際、被検体としてRSウィルス、アデノウィルス、ロタウィルス陽性検体を用い、第一試験片としてラピッドテスタ(登録商標)RSV−アデノ(積水メディカル社製)の試験片、第二試験片としてラピッドテスタ(登録商標)ロタ−アデノ(積水メディカル社製)の試験片を用いた。その結果、第一、第二試験片ともに、良好に検査を行なうことができた。
【0027】
(比較例1A)
仕切板11がないことを除いて、
図1A,
図1Bと同様の構成を備える検査容器を調製し、実施例1Aと同様の実験を行なった。その結果、第一試験片と第二試験片とが交差し、第二試験片に流れ不良が生じた。
【0028】
(実施例2A)
成形材料としてポリエチレンを用いて、射出成形により
図1A、
図1Bに示す検査容器1Aを調製した。その後、上述の検査2Aの手順に従って実験を行った。その際、被検体としてRSウィルス、アデノウィルス、ロタウィルス陽性検体を用い、第一試験片としてラピッドテスタ(登録商標)RSV−アデノ(積水メディカル社製)の試験片、第二試験片としてラピッドテスタ(登録商標)ロタ−アデノ(積水メディカル社製)の試験片を用いた。その結果、第一、第二試験片ともに、良好に検査を行なうことができた。
【0029】
(比較例2A)
仕切板11がないことを除いて、
図1A,
図1Bと同様の構成を備える検査容器を調製し、実施例2Aと同様の実験を行なった。その結果、第一試験片が検体抽出液を吸収し尽くすために、第二試験片により別項目の検査を行えなかった。
【0030】
[第二の実施形態]
上述の第一の実施形態との相違点を中心に第二の実施形態について説明する。
[検査容器1B]
図8Aは本発明の実施形態にかかる検査容器の一部切欠き斜視図であり、
図8Bはその上面図である。
図8Aに示すように、検査容器1Bは、有底中空形状をした可撓性の容器本体10と、容器本体10の内部に着脱自在に固定された有底中空形状のアダプター8と、を備える。アダプター8は、アダプター8の底部8d、8e(第一面)から開口部側に向かい設けられた、アダプターの検体抽出液収容部50を2以上の室に区画する仕切板81を有する。
図8Aに示すように、仕切板81により容器本体10の検体抽出液収容部50の底面側が第一室51と第二室52に区画されているため、同一の検体抽出液を収容する第一室51、第二室52に、それぞれ第一試験片、第二試験片を挿入できる。
そのため、検査容器1Bによれば、同一条件下に置かれた同一検体抽出液について、(1)第一、第二試験片により、それぞれ別項目の検査を略同時に行える、又は(2)第一試験片による検査の後に、第二試験片により別項目の検査を適宜行える、といった作用効果が得られる。
【0031】
図8Aに示すように、アダプター8は、アダプター8の内側の各室の境界線の延長線上に、アダプター8の開口部まで至るガイド8a、8bを有することが好ましい。試験片を容器内に挿入する際に、各室の境界が目視しやすくなるからである。また試験片がガイドに係止されることで他室側に倒れこむことを防止できるからである。
各室の境界をより目視しやすくするためには、例えば、ガイド8a、8bは、アダプター8を容器本体10の内部に固定した際に、ガイド8a、8bの開口部上端が、容器本体10の開口部の縁よりも高く配置されるように形成したり、またはガイド8a、8bの開口部上端から容器本体の外側に向かい張り出すつば部を有してもよい。
【0032】
図8Bに示すように、アダプター8は、2以上の室のいずれかの底部に貫通孔、好ましくは細孔が形成されていることが好ましい。後述するように、
図14Eに示すように、検体抽出液が充填された容器本体の内部にアダプター8を挿入する際に、容器本体内の検体抽出液が、貫通孔を介して、アダプター8内部に移行しやすくするためである。
なお、後述の検査方法2Bを実施するためには、第二室52から第一室51へ検体抽出液の流入を防止するため、複数の室のうち、少なくとも1室の底部には貫通孔を設けないことが好ましい。
【0033】
アダプター8の材質は、収容される検体抽出液に影響を与えるものでなければ特に制限はない。例えば、可撓性材料、具体的には、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、シリコンゴム、熱可塑性エラストマー、塩化ビニルなどの樹脂素材を用いることができる。
アダプターの仕切板81の高さXは、容器本体10の検体抽出液収容部50の高さYを2とすると、2未満であり、1.8以下が好ましく、1.7以下がより好ましく、1.2〜0.5が更により好ましい。
検査容器1B内に収容された検体抽出液に検体を溶出した後、検体抽出液をよく攪拌することで、検体の濃度が均等な検体抽出液が得られるが、容器本体10にアダプター8を挿入した後、各室毎の濃度勾配が生じることを防止するため、アダプターの仕切板81には、隣接する室と検体抽出液が連通可能に、連通穴を設けてもよい。
【0034】
[検査容器1Bの変形例]
図8A、
図8B、
図9A、
図9B、を用いて本発明について説明したが、本発明は上述の発明に限定されることはない。
図10Aは実施形態に係る検査容器1の変形例の上面図、
図10BはA−A断面図、
図10CはB−B断面図である。
図8Aの検査容器では、第二室52から第一室51へ検体抽出液の流入を防止するため、第二室52の底部に貫通孔を設けない構成とした。しかし、検体抽出液の流入を防止する方法はこれに限定されることはない。例えば、
図10Bに示すように、アダプター8は、上底状の底部を有する場合、アダプター8の底部8d、8fの容器本体側表面(第二面)の各室の境界線に対応する部分から、容器本体10の底部(第三面)に当接するように設けられた、各室間の溶液の流入を防止する流入防止板8gを有してもよい。
アダプター8は、底部に貫通孔を設けたがそれに限定されることなく、アダプター8の一部、例えば側壁等に貫通孔を設けてもよい。
アダプター8は、有底中空形状としたが、アダプター8の内部に仕切板が配置され、側壁により保持可能であれば、底を設けなくてもよい。
【0035】
[検査容器2B、3B]
図11A、
図11Bに示すように、容器本体10の検体抽出液収容部50が3室に区画されていてもよい。これにより、同一の検体抽出液を用いて、例えば、RSウィルス、アデノウィルス、ヒトメタニューモウィルスの検査を同時に行なうことができる。なお、後述の検査方法2Bを実施するためには、検体抽出液の流入を防止するため、
図11Cに示すように、アダプター8の底部が容器本体の底部に密着するように、アダプター8の底部を構成してもよい。
また
図12A、
図12Bに示すように、容器本体10の検体抽出液収容部50が4室に区画されていてもよい。例えば、4種の検査を同時に行ったり、3種の検査をした後に感度が悪いものについて再検査することができる。また、検体抽出液収容部50が5室、6室、7室、・・・と多区画室となっていてもよい。
【0036】
[検査容器4B]
検査容器1B〜3Bにおいては板状の仕切板を配置する構成としたが、検体抽出液収容部50が複数に区画されるのであればこれに限定されることはない。例えば、
図13Aに示すように、中空円筒状の仕切板84をアダプター8の底部8dから凸設させる構成としてもよい。ここでは仕切板84の形状を、
図13Bに示すように上面視円状の中空体としたがこれに限定されることなく、上面視三角、四角といった多角形状の中空体としてもよい。また仕切板84の内側に同心円状に、仕切板84と同様の形状をした中空状の仕切板をさらに配置して、検体抽出液収容部50を複数に区画してもよい。また仕切板84を更に2室以上に仕切る仕切板を配置して、検体抽出液収容部50を複数に区画してもよい。仕切板84の高さは検査容器1と同様の高さに構成してもよい。
【0037】
[検査方法1B]
実施形態に係る検査方法の工程について、
図8A、
図14A〜
図14F1を用いて説明する。
まず
図8Aに示すような、有底中空形状をした可撓性の容器本体10を用意し、容器本体10内に検体抽出液を予め充填しておく。
使用時に、
図14Aに示すように容器本体10のキャップを取り除き、その後
図14Bに示すように、検体抽出液100が充填された容器本体10内に被検体を吸収した綿棒101を含漬させる。
【0038】
次に、
図14Cに示すように、綿棒101を、棒軸を中心にして左右に回転させる。その際、綿棒101の綿球を容器内壁に押し付けるようにしてもよい。
その後、
図14Dに示すように、容器本体10を外部からの圧力により変形させて、容器内壁に綿球を擦り付けるように綿棒101から被検体を絞り出す。
そして、
図14Eに示すように、アダプター8を、容器本体10の内部に挿入する。検体抽出液がアダプター8の底部に設けられた貫通孔を介して、アダプター8内部に移行するように、アダプター8をゆっくり挿入することが好ましい。
図14F1に示すように、検査容器1Bの第一室51に第一試験片61、第二室52に第二試験片62を挿入する。
このように、検査方法1Bによれば、同一条件下に置かれた同一検体抽出液について、第一試験片61と第二試験片62により、それぞれ別項目の検査を略同時に行える。
【0039】
被検体の絞り出し後にアダプター8を挿入する検査方法1Bによれば、
図14Dの綿棒から被検体を絞り出す工程において、仕切板がないため、より効率的に被検体を絞り出すことができる。また、容器本体10にアダプター8を挿入する際に、容器本体10の壁面に付着した検体懸濁液があった場合であっても、壁面から回収することができるので、第一室51、第二室52で測定に必要な検体量(液量)をより十分に確保できるという作用効果が得られる。
以上より、容器本体10の内部に着脱自在に配置されるアダプター8の底部に仕切板を配置することがより好ましい。
【0040】
壁面に付着した検体懸濁液を壁面から効率よく回収するには、アダプター8の外周と容器本体10の内周が密着するように、それらを構成することが好ましい。具体的には、アダプター8の外側半径を容器本体10の内法半径以上とすることが好ましい。アダプター8の外側半径が容器本体10の内法半径より多少大きくても、容器本体10として伸縮性のある可撓性容器を用いることにより、アダプター8の外周が容器本体10の内周に密着するように、アダプター8を容器本体10内に導入することができる。アダプター8の外側半径は容器本体10の内法半径と同等かそれ以上にすることが好ましい
【0041】
[検査方法2B]
上述の検査方法1Bにおいては、
図14A〜
図14Eの工程の後、
図14F1に示すように、第一試験片61と第二試験片62を、それぞれ第一室51、第二室52略同時に挿入した。しかし、
図14F1の工程に換えて、
図15F2に示すように、第一室51に第一試験片61を挿入してもよい。これにより、
図15Gに示すように、第一室51内の検体抽出液が第一試験片61に吸収され尽くした後でも、
図15Hに示すように、第二室52に第二試験片62を挿入することで、別項目の検査を行なうことができる。
【0042】
このように、検査方法2Bによれば、該当可能性の高い検査項目から検査し、その検査結果に応じて別項目の検査を適宜行える。そのため、複数の項目について同時に検査する場合よりも、検査項目を省略できるので経済的である。
【0043】
検査方法2Bを実施するためには、第二室52から第一室51への検体抽出液の流入を防止するため、
図8A、
図8Bに示すように、第二室52の底部8eには貫通孔を設けないことが好ましい。
なお、上げ底状の底部の全面に貫通孔を設けるときは、
図10Bに示すように流入防止板8gを設けておくことが好ましい。その他にも、
図11Cに示すように、アダプター8の底部が容器本体の底部に密着するように、アダプター8の底部を形成することが好ましい。
【0044】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0045】
検査容器1B〜4Bについて中心に説明してきたが、本発明によれば、例えば、上述の検査容器を備える検査キットも提供される。検査キットとしては、検体抽出液を収納する検査容器と、試験片と、を備える。試験片として、複数の試験片を備えることができる。一片の試験片で複数の項目を検査できる試験片を用いることもできる。
【0046】
検査方法1B,2Bについて説明したが、検査方法2Bに係る
図15F2、
図15Gの工程の後、第二室52内の検体抽出液を各種テストデバイスに供給して、被検出物を検出してもよい。例えば、試験片を検査容器に挿入し、抽出液に浸すディップスティック式、抽出液をテストデバイスへと供給するラテラルフロー式、フロースルー式の各種検査方法に適用することができる。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0047】
(実施例1B)
成形材料としてポリエチレンを用いて、射出成形により
図8A、
図8Bに示す検査容器1Bを調製した。その後、上述の検査方法1Bの手順に従って実験を行った。その際、被検体としてRSウィルス、アデノウィルス、ロタウィルス陽性検体を用い、第一試験片としてラピッドテスタ(登録商標)RSV−アデノ(積水メディカル社製)の試験片、第二試験片としてラピッドテスタ(登録商標)ロタ−アデノ(積水メディカル社製)の試験片を用いた。その結果、第一、第二試験片ともに、良好に検査を行なうことができた。
【0048】
(比較例1B)
仕切板11がないことを除いて、
図8A、
図8Bと同様の構成を備える検査容器を調製し、実施例1Bと同様の実験を行なった。その結果、第一試験片と第二試験片とが交差し、第二試験片に流れ不良が生じた。
【0049】
(実施例2B)
成形材料としてポリエチレンを用いて、射出成形により
図8A、
図8Bに示す検査容器1Bを調製した。その後、上述の検査2Bの手順に従って実験を行った。その際、被検体としてRSウィルス、アデノウィルス、ロタウィルス陽性検体を用い、第一試験片としてラピッドテスタ(登録商標)RSV−アデノ(積水メディカル社製)の試験片、第二試験片としてラピッドテスタ(登録商標)ロタ−アデノ(積水メディカル社製)の試験片を用いた。その結果、第一、第二試験片ともに、良好に検査を行なうことができた。
【0050】
(比較例2B)
仕切板11がないことを除いて、
図8A、
図8Bと同様の構成を備える検査容器を調製し、実施例2Bと同様の実験を行なった。その結果、第一試験片が検体抽出液を吸収し尽くすために、第二試験片により別項目の検査を行えなかった。
有底中空形状をした可撓性の容器本体10と、容器本体10の内側に軸方向に沿って形成された、容器本体10の検体抽出液収容部50を2以上の室に区画する仕切板11と、を備える検査容器1。検査容器1によれば、複数の試験片で複数項目の検査を簡易に行うことができる。