特許第6192204号(P6192204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192204
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】先組鉄筋据え付け方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/12 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   E04G21/12 105A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-44815(P2013-44815)
(22)【出願日】2013年3月6日
(65)【公開番号】特開2014-173273(P2014-173273A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】山口 勝
(72)【発明者】
【氏名】浮島 達也
(72)【発明者】
【氏名】藤塚 芳夫
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−119427(JP,A)
【文献】 特開平07−305512(JP,A)
【文献】 特開2002−038472(JP,A)
【文献】 特開平04−347263(JP,A)
【文献】 特開平07−217077(JP,A)
【文献】 特開2003−120035(JP,A)
【文献】 特開平07−113261(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0304584(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/12
E04B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上にて、梁鉄筋を組み立てるとともに、当該組み立てた梁鉄筋のうち柱主筋が貫通する位置に、長さ方向に沿って上端から下端に至るスリットが設けられた複数の円筒形状の樹脂製のパイプを配置して、先組鉄筋とする工程と、
当該先組鉄筋を吊り上げて、複数の柱主筋の直上に位置させ、当該先組鉄筋から前記パイプを一本ずつ引き下ろして各柱主筋を前記パイプにかぶせて、その後、当該パイプをガイドとして、前記先組鉄筋を下降させて所定位置に据え付ける工程と、
前記パイプを上方に引き抜く工程と、を備えることを特徴とする先組鉄筋据え付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先組鉄筋の据え付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、柱鉄筋や梁鉄筋を別の場所で予め組み立てて先組鉄筋とし、この先組鉄筋をクレーンなどで吊上げて現場の配筋箇所に設置する先組工法が知られている。
梁鉄筋に先組工法を適用する場合、具体的には、地上の地組ヤードにて、梁主筋、あばら筋、中子筋などを組み立てて梁先組鉄筋とする。次に、この梁先組鉄筋をクレーンなどで吊り上げて、配筋箇所に上方から下ろして据え付ける。パネルゾーンで柱主筋が上方に突出している場合は、パネルゾーンの柱主筋を梁先組鉄筋の隙間に挿通させる。
【0003】
しかしながら、梁先組鉄筋および柱主筋がともに異形鉄筋であるため、柱主筋を梁先組鉄筋の隙間に挿通する際に、梁主筋、パネルゾーン内の腹筋、中子筋などに柱主筋が引っ掛かりやすく、梁先組鉄筋を梁の配筋箇所に据え付けるのに手間がかかる、という問題があった。
【0004】
そこで、先端の尖った筒状のガイド治具を用意し、このガイド治具を柱主筋の上端にかぶせて、この状態で梁先組鉄筋を配筋箇所に据え付ける方法が提案されている(特許文献1参照)。このようにすれば、まず、ガイド治具の先端が梁先組鉄筋の隙間を円滑に通過し、続いて、このガイド治具に案内されて柱主筋が梁先組鉄筋の隙間を挿通されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−113261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなガイド治具では、柱主筋のうちガイド治具に覆われていないふしなどの部分が先組鉄筋に引っ掛かる、という問題があった。
【0007】
本発明は、先組鉄筋に柱主筋を円滑に組み込むことができる先組鉄筋の据え付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の先組鉄筋据え付け方法(例えば、後述の先組鉄筋据え付け方法1)は、地上にて、梁鉄筋(例えば、後述の梁鉄筋20A〜20D)を組み立てるとともに、当該組み立てた梁鉄筋のうち柱主筋(例えば、後述の柱主筋11)が貫通する位置(例えば、後述の柱梁接合部30)に円筒形状のパイプ(例えば、後述のパイプ60)を配置して、先組鉄筋(例えば、後述の梁先組鉄筋70)とする工程(例えば、後述のステップS1)と、当該先組鉄筋を吊り上げて、複数の柱主筋を前記パイプに挿通させつつ所定位置(例えば、後述の梁底型枠50)に据え付ける工程(例えば、後述のステップS2)と、前記パイプを上方に引き抜く工程(例えば、後述のステップS3)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の先組鉄筋は、組み立てられた梁鉄筋と、当該組み立てられた梁鉄筋のうち柱主筋が貫通する位置に配置された円筒形状のパイプと、を備えることが好ましい
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、地上にて、梁鉄筋を組み立てるとともに、この組み立てた梁鉄筋のうち柱主筋が貫通する位置に円筒形状のパイプを配置して、先組鉄筋とする。そして、この先組鉄筋を吊り上げて、複数の柱主筋をパイプに挿通させつつ所定位置に据え付ける。このとき、パイプの内面は平滑であるため、梁主筋、パネルゾーン内の腹筋、中子筋などに柱主筋が引っ掛からず、先組鉄筋に柱主筋を円滑に組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る先組鉄筋据え付け方法により配筋された柱梁鉄筋2の斜視図である。
図2】前記実施形態に係る先組鉄筋据え付け方法のフローチャートである。
図3】前記実施形態に係る先組鉄筋据え付け方法を説明するための斜視図(その1)である。
図4】前記実施形態に係る先組鉄筋据え付け方法を説明するための斜視図(その2)である。
図5】前記実施形態に係る先組鉄筋の平面図である。
図6図5のA−A断面図である。
図7】前記実施形態に係る先組鉄筋据え付け方法を説明するための斜視図(その3)である。
図8】本発明の変形例に係る先組鉄筋据え付け方法に用いられるパイプの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る先組鉄筋据え付け方法1(図2参照)により配筋された柱梁鉄筋2の斜視図である。なお、この図1では、理解の容易のため、中子筋や腹筋を省略している。
【0013】
柱梁鉄筋2は、所定高さまで配筋された柱鉄筋10と、この柱鉄筋10に定着する4本の梁鉄筋20A、20B、20C、20Dと、を有する。
【0014】
柱鉄筋10は、略鉛直方向に延びており、梁鉄筋20A〜20Dは、略水平に延びている。梁鉄筋20Aおよび梁鉄筋20Cは、一直線上に配置され、梁鉄筋20Bおよび梁鉄筋20Dは、一直線上に配置される。これら梁鉄筋20A、20Cと、梁鉄筋20B、20Dとは、略直交して延びている。
【0015】
以上の柱鉄筋10および梁鉄筋20A〜20Dは、柱鉄筋10の柱梁接合部30(パネルゾーン)にて、互いに交差している。
【0016】
柱鉄筋10は、ここでは、略鉛直方向に延びる12本の柱主筋11と、この柱主筋11を囲んで所定間隔おきに配置された帯筋(せん断補強筋)12と、を備える。
柱鉄筋10の柱主筋11は、柱梁接合部30を貫通して、上方に延びている。
また、帯筋12は、柱鉄筋10の柱梁接合部30にも設けられている。
【0017】
梁鉄筋20A〜20Dは、それぞれ、略水平方向に並んで延びる上下4本ずつの梁主筋21と、この梁主筋21を囲んで所定間隔おきに配置されたあばら筋(せん断補強筋)22と、図示しない中子筋および腹筋と、を備える。
梁鉄筋20Aの梁主筋21は、柱梁接合部30を貫通して延びて、梁鉄筋20Cの梁主筋21となっている。また、梁鉄筋20Bの梁主筋21は、柱梁接合部30を貫通して延びて、梁鉄筋20Dの梁主筋21となっている。
【0018】
以上の柱梁鉄筋2には、柱梁型枠3が建て込まれている。この柱梁型枠3は、柱鉄筋10を囲んで梁下端の高さまで建て込まれた柱型枠40と、この柱型枠40から延びて梁鉄筋20A、20Bを支持する梁底型枠50と、を備える。
【0019】
図2は、先組鉄筋据え付け方法1のフローチャートである。
まず、初期状態では、図3に示すように、柱鉄筋10が配筋されており、この柱鉄筋10に柱梁型枠3が建て込まれている。これにより、柱鉄筋10の柱主筋11は、梁底型枠50のパネルゾーンから上方に突出している状態である。
【0020】
ステップS1では、図4図6に示すように、地上にて、梁鉄筋20A〜20Dを組み立てるとともに、この組み立てた梁鉄筋20A〜20Dのうち柱主筋11が貫通する柱梁接合部30に円筒形状のパイプ60を配置して、梁先組鉄筋70とする。
【0021】
このパイプ60は、例えば、塩化ビニル樹脂製であり、給水設備や排水設備に用いられるものである。また、このパイプ60は、柱梁接合部30内にて、帯筋12に囲まれており、また、柱梁接合部30の高さ寸法よりも若干長くしておく。また、パイプ60は、梁先組鉄筋70の柱梁接合部30に、ある程度遊びを持たせて結束線などで緩やかに固定する。
【0022】
ステップS2では、図7に示すように、梁先組鉄筋70をクレーンなどで吊り上げて梁底型枠50の上に下ろして据え付ける。このとき、パネルゾーン内で上方に突出した柱主筋11をパイプ60に同時に挿通させる。
【0023】
ステップS3では、パイプ60を柱梁接合部30から上方に引き抜く。これにより、図1のような柱梁鉄筋2となる。
【0024】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)地上にて、梁鉄筋20A〜20Dを組み立てるとともに、この組み立てた梁鉄筋20A〜20Dのうち柱主筋11が貫通する柱梁接合部30に樹脂製の円筒形状のパイプ60を配置して、梁先組鉄筋70とする。そして、この梁先組鉄筋70を吊り上げて、梁底型枠50内の柱主筋11をパイプ60に挿通させつつ梁底型枠50上に据え付ける。
このとき、樹脂製のパイプ60の内面は平滑なので、梁主筋21、パネルゾーン内の腹筋、中子筋などに柱主筋11が引っ掛からず、梁先組鉄筋70に柱主筋11を円滑に組み込むことができる。
【0025】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0026】
例えば、上述の実施形態では、梁先組鉄筋70を梁底型枠50の上に吊り下ろして、パネルゾーン内で上方に突出した柱主筋11をパイプ60に同時に挿通させたが、これに限らない。すなわち、柱主筋11の本数が多く、上述の方法では柱主筋11をパイプ60に同時に挿通させることが困難である場合、以下の手順で、梁先組鉄筋70を梁底型枠50の上に据え付けてもよい。
すなわち、ステップS2において、梁先組鉄筋70を吊り上げて柱主筋11の直上に位置させ、この状態で、梁先組鉄筋70から各パイプ60を一本ずつ引き下ろして柱主筋11にかぶせる。その後、梁先組鉄筋70を下降させて、パイプ60をガイドとして、全ての柱主筋11を梁先組鉄筋70の柱梁接合部30に組み込む。
【0027】
このようにすれば、上述の(1)に加えて、以下のような効果がある。
(2)柱主筋11の本数が多い場合でも、柱主筋11を梁先組鉄筋70の柱梁接合部30に円滑に組み込むことができる。
【0028】
また、図8に示すように、パイプ60の長さ方向に沿って、上端から下端に至るスリット61を設けたり、切込みを設けたりしてもよい。
このようにすれば、上述の(1)に加えて、以下のような効果がある。
(3)スリット61を通してパイプ60を柱主筋11に対して容易に着脱できる。
また、スリット61を設けたことで、柱主筋11の鉄筋径に合わせて、パイプ60の径を変更できるので、中子筋を柱主筋11に確実に引っ掛けることができる。
【0029】
その理由は、以下の通りである。すなわち、柱梁接合部30では、中子筋の両端をフック状に曲げて柱主筋11に引っ掛ける必要がある。よって、本発明では、中子筋をパイプ60に引っ掛けておき、パイプ60を引き抜いて、この中子筋を柱主筋11に引っ掛けることになる。したがって、中子筋のフックの曲げ半径は、パイプ60に合わせて決定することになるが、パイプ60が太いと、中子筋のフックの曲げ半径も大きくなるため、パイプ60を引き抜いた後、中子筋と柱主筋11との引っ掛かりが緩くなってしまう。
【0030】
そのため、パイプ60はなるべく細く、柱主筋11の太さに近くすることが望ましいが、細くし過ぎするとパイプ60が柱主筋11から抜けなくなってしまうので、パイプ60の径をある程度変更できると、中子筋を柱主筋11に確実に引っ掛けることができる。
【符号の説明】
【0031】
1…先組鉄筋据え付け方法
2…柱梁鉄筋
3…柱梁型枠
10…柱鉄筋
11…柱主筋
12…帯筋
20A、20B、20C、20D…梁鉄筋
21…梁主筋
22…あばら筋
30…柱梁接合部
40…柱型枠
50…梁底型枠
60…パイプ
61…スリット
70…梁先組鉄筋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8