特許第6192206号(P6192206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192206
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】切断方法及び切断装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 10/00 20060101AFI20170828BHJP
   B23K 7/00 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   B23K10/00 502A
   B23K10/00 502C
   B23K10/00 501A
   B23K7/00 505C
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-67331(P2013-67331)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-188558(P2014-188558A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000150981
【氏名又は名称】日酸TANAKA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】深田 喜夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 匡克
(72)【発明者】
【氏名】佐野 義美
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−079016(JP,A)
【文献】 特開2010−012493(JP,A)
【文献】 特開平11−090660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 10/00
B23K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
XY平面からなり被加工材を載置する定盤と、
前記定盤上を前記XY平面に沿って移動可能とされるとともに、前記XY平面と直交するZ軸方向に移動されて前記被加工材を加工するトーチと、
前記トーチを前記X軸方向をNC制御により移動するX軸方向駆動部と、
前記トーチを前記Y軸方向をNC制御により移動するY軸方向駆動部と、
前記トーチを前記Z軸方向をNC制御により移動するZ軸方向駆動部と、
被加工材表面のZ軸方向位置を検出するZ軸方向位置センサと、
前記トーチの移動を制御する制御部と、を備えた切断装置を用いて、先行ピアシングで複数のピアシング孔を加工した後に、前記先行ピアシングによるピアシング孔を切断起点として被加工材を切断加工する切断方法であって、
前記先行ピアシングする際に、前記複数のピアシング孔のすべてに関して、ピアシング孔のXY座標と、前記Z軸方向位置センサにより計測した前記各ピアシング孔における被加工材表面のZ軸方向位置と、を対応させて記憶し、前記切断加工において切断起点とする各ピアシング孔のXY座標位置と前記先行ピアシングの際に記憶した各ピアシング孔のXY座標とを比較して前記切断起点における被加工材表面のZ軸方向位置を取得し、取得した各ピアシング孔における被加工材表面のZ軸方向位置に基づいて各切断起点におけるトーチの高さを設定することにより、前記先行ピアシングにおける順序に限定されない順序で前記先行ピアシングによるピアシング孔を切断起点として被加工材を切断加工することを特徴とする切断方法。
【請求項2】
請求項1に記載の切断方法であって、
前記被切断材を切断加工する場合に、
前記トーチのXY座標が、前記先行ピアシングにおいて記憶したXY座標に対して、予め設定した範囲内に位置した場合に前記被加工材の切断を開始することを特徴とする切断方法。
【請求項3】
XY平面からなり被加工材を載置する定盤と、
前記定盤上を前記XY平面に沿って移動可能とされるとともに、前記XY平面と直交するZ軸方向に移動されて前記被加工材を加工するトーチと、
前記トーチを前記X軸方向をNC制御により移動するX軸方向駆動部と、
前記トーチを前記Y軸方向をNC制御により移動するY軸方向駆動部と、
前記トーチを前記Z軸方向をNC制御により移動するZ軸方向駆動部と、
被加工材表面のZ軸方向位置を検出するZ軸方向位置センサと、
前記トーチの移動を制御する制御部と、を備え、先行ピアシングで複数のピアシング孔を加工した後に、前記先行ピアシングによるピアシング孔を切断起点として被加工材を切断加工する切断装置であって、
前記制御部は、
前記先行ピアシングする際に、前記複数のピアシング孔のすべてに関して、ピアシング孔のXY座標と、前記Z軸方向位置センサにより計測した前記各ピアシング孔における被加工材表面のZ軸方向位置と、を対応させて記憶し、前記切断加工において切断起点とする各ピアシング孔のXY座標位置と前記先行ピアシングの際に記憶した各ピアシング孔のXY座標とを比較して前記切断起点における被加工材表面のZ軸方向位置を取得し、取得した各ピアシング孔における被加工材表面のZ軸方向位置に基づいて各切断起点におけるトーチの高さを設定することにより、前記先行ピアシングによるピアシング孔を切断起点として、前記先行ピアシングにおける順序に限定されない順序で被加工材を切断加工するように構成されていることを特徴とする切断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の切断装置であって、
前記被切断材を切断加工する場合に、
前記トーチのXY座標が、前記先行ピアシングにおいて記憶したXY座標に対して、予め設定した範囲内に位置した場合に前記被加工材の切断を開始するように構成されていることを特徴とする切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被加工材に対して、先行ピアシングにより複数のピアシング孔を形成した後に、このピアシング孔を起点として被加工材を切断して、製品(以下、加工品という)を形成する切断方法及び切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、トーチにより被加工材を切断加工して加工品を形成する場合、切断起点とする切断開始位置において被加工材表面の高さを検出(イニシャルハイト検出)し、まず、検出された被加工材表面に基づいてトーチ高さを設定して、その後、トーチを下降動作させてピアシング孔を形成し、このピアシング孔を切断起点としてトーチを被加工材の面方向(XY方向)に移動しながら、被加工材を切断加工して加工品を形成するのが一般的である。
【0003】
また、被加工材を切断加工して複数の加工品を形成する場合に、予め先行ピアシングにより複数のピアシング孔を形成して、その後、この先行ピアシングで形成した各ピアシング孔を切断起点として順次切断加工して、複数の加工品を形成する場合がある。
【0004】
かかる場合、まず、先行ピアシングにおいて被加工材表面の高さをイニシャルハイト検出してピアシング孔を形成し、その後、切断加工する際に、各ピアシング孔において再度イニシャルハイト検出をしてから、トーチを切断起点において切断加工に適した高さまで下降させて切断加工する場合がある。
【0005】
このようなイニシャルハイト検出には、トーチそのものに静電容量式等のセンサを設けたり、トーチ近傍に設けた高さ倣い装置(エアーセンサ等)により、倣い動作を行いながらトーチの下降する方法と、トーチとは離れた位置にトーチとともに昇降するタッチセンサ等の検出手段を用いて検出する方法が一般的である。
【0006】
しかしながら、先行ピアシングにおいてイニシャルハイト検出をした後に、切断加工する際に再度イニシャル検出することは、重複した動作となり、実質的な切断時間が長くなって生産性が低下する原因となっている。
【0007】
また、タッチセンサを用いてイニシャルハイト検出をする場合には、タッチセンサはトーチから所定の距離を離隔して設けられているので、タッチセンサによってイニシャハイト検出する位置とピアシング孔を形成するためにトーチが下降する位置、及び切断加工のためにトーチが下降する位置(切断起点)とはオフセットしている。
【0008】
そこで、先行ピアシング及び切断加工において、イニシャルハイト検出後に、トーチをこのオフセット分だけ移動させて、先行ピアシングによるピアシング孔予定位置又は切断加工における切断起点に移動する必要があり、その結果、イニシャル検出時間及び切断加工時間が長くなるという問題がある。
【0009】
また、先行ピアシングによるピアシング孔を切断起点に被加工材を切断して加工品を形成する場合、切断加工のプログラムは、1つの加工品を切断するためのプログラムが適用されることが一般的であり、切断加工する前に、先行ピアシングにおけるイニシャルハイト検出をおこない、トーチをピアシング孔を形成する際と同様の上下動作をさせることから、余分な時間を費やすという問題がある。
【0010】
そこで、先行ピアシングにおいてピアシング孔を形成する際に検出したイニシャルハイト検出に基づくトーチ高さのデータを順次記憶して、このトーチ高さのデータに基づいて、先行ピアシングにおけるピアシング孔形成順序に従って、切断加工時に、トーチを各加工品の切断起点(先行ピアシング孔の座標位置)に移動して、被加工材を切断加工して加工品を形成することで、切断加工前のタッチ倣いセンサ等による再度のイニシャルハイト検出を省略して、切断加工の生産性を向上する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−79016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、例えば、何らかのトラブルにより一部のピアシング孔を切断起点とする切断加工が継続できなくなってトーチをいずれかのピアシング位置に逆行動作をさせて切断加工を再開する場合等、先行ピアシングにおける順番と異なった順番で切断加工する場合があり、このような場合に、先行ピアシングにおけるイニシャルハイト検出に基づいて設定されたトーチ高さが、異なるピアシング孔を切断起点とするトーチ高さに適用されて、トーチ高さが適切に設定されないこととなる。
【0013】
そこで、先行ピアシングにより複数のピアシング孔を形成して、このピアシング孔を起点として被加工材を切断加工する場合に、例えば、トラブル等により切断が継続できなくなり、ピアシング孔位置まで逆行動作を行って切断加工を再開する場合や、先行ピアシング時の順番と異なった順番で切断を行う場合であっても、切断起点においてトーチの高さを適切に設定するとともに、被加工材から加工品を形成する際の生産効率を向上することが可能な切断技術に対する強い要請がある。
【0014】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、先行ピアシングによるピアシング孔順序に限定されない順序で被加工材を切断加工する場合に、切断起点においてトーチの高さを適切に設定するとともに、被加工材から加工品を形成する際の生産効率を向上可能な切断方法及び切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1記載の発明は、XY平面からなり被加工材を載置する定盤と、前記定盤上を前記XY平面に沿って移動可能とされるとともに、前記XY平面と直交するZ軸方向に移動されて前記被加工材を加工するトーチと、前記トーチを前記X軸方向をNC制御により移動するX軸方向駆動部と、前記トーチを前記Y軸方向をNC制御により移動するY軸方向駆動部と、前記トーチを前記Z軸方向をNC制御により移動するZ軸方向駆動部と、被加工材表面のZ軸方向位置を検出するZ軸方向位置センサと、前記トーチの移動を制御する制御部とを備えた切断装置を用いて、先行ピアシングで複数のピアシング孔を加工した後に、前記先行ピアシングによるピアシング孔を切断起点として被加工材を切断加工する切断方法であって、前記先行ピアシングする際に、前記複数のピアシング孔のすべてに関して、ピアシング孔のXY座標と、前記Z軸方向位置センサにより計測した前記各ピアシング孔における被加工材表面のZ軸方向位置と、を対応させて記憶し、前記切断加工において切断起点とする各ピアシング孔のXY座標位置と前記先行ピアシングの際に記憶した各ピアシング孔のXY座標とを比較して前記切断起点における被加工材表面のZ軸方向位置を取得し、取得した各ピアシング孔における被加工材表面のZ軸方向位置に基づいて各切断起点におけるトーチの高さを設定することにより、前記先行ピアシングにおける順序に限定されない順序で前記先行ピアシングによるピアシング孔を切断起点として被加工材を切断加工することを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の発明は、XY平面からなり被加工材を載置する定盤と、前記定盤上を前記XY平面に沿って移動可能とされるとともに、前記XY平面と直交するZ軸方向に移動されて前記被加工材を加工するトーチと、前記トーチを前記X軸方向をNC制御により移動するX軸方向駆動部と、前記トーチを前記Y軸方向をNC制御により移動するY軸方向駆動部と、前記トーチを前記Z軸方向をNC制御により移動するZ軸方向駆動部と、被加工材表面のZ軸方向位置を検出するZ軸方向位置センサと、前記トーチの移動を制御する制御部とを備え、先行ピアシングで複数のピアシング孔を加工した後に、前記先行ピアシングによるピアシング孔を切断起点として被加工材を切断加工する切断装置であって、前記制御部は、前記先行ピアシングする際に、前記複数のピアシング孔のすべてに関して、ピアシング孔のXY座標と、前記Z軸方向位置センサにより計測した前記各ピアシング孔における被加工材表面のZ軸方向位置と、を対応させて記憶し、前記切断加工において切断起点とする各ピアシング孔のXY座標位置と前記先行ピアシングの際に記憶した各ピアシング孔のXY座標とを比較して前記切断起点における被加工材表面のZ軸方向位置を取得し、取得した各ピアシング孔における被加工材表面のZ軸方向位置に基づいて各切断起点におけるトーチの高さを設定することにより、前記先行ピアシングによるピアシング孔を切断起点として、前記先行ピアシングにおける順序に限定されない順序で被加工材を切断加工するように構成されていることを特徴とする。
【0017】
この発明に係る切断方法及び切断装置によれば、先行ピアシングで複数のピアシング孔を加工した後に、先行ピアシングによるピアシング孔を切断起点として被加工材を切断加工する場合に、先行ピアシングで加工するすべてのピアシング孔に関して、ピアシング孔のXY座標(ピアシング孔位置)と、先行ピアシングにおいてZ軸方向位置センサにより計測したピアシング孔と対応する被加工材表面のZ軸方向位置(材料高さ)とを対応させて記憶し、ピアシング孔を切断起点として、先行ピアシングにおける順序に限定されない順序で被加工材を切断加工する場合に、切断加工において切断起点とする各ピアシング孔に関して、各ピアシング孔のZ軸方向位置を先行ピアシングの際に記憶した各ピアシング孔のXY座標と対応させて取得し、取得した各ピアシング孔のZ軸方向位置に基づいて各切断起点におけるトーチの高さ(Z軸方向位置)を設定する。その結果、切断加工する際に、各ピアシング孔位置と対応する切断起点における材料高さを計測することなく、切断起点におけるトーチの低速下降高さを適正化(短く)して、切断における生産性を向上することができる。
【0018】
また、切断加工する際に、何らかのトラブルにより一部のピアシング孔を切断起点とする切断加工が継続できなくなってトーチをいずれかのピアシング位置に逆行動作をさせて切断加工を再開する場合や、先行ピアシング時の順番と異なる順番で切断加工する場合であっても、切断起点となるピアシング孔位置(XY座標)で特定して対応するZ軸軸方向位置を取得するので、先行ピアシングにおける順序に限定されない順序で被加工材を切断加工する場合であっても、切断起点におけるトーチ高さを効率的かつ確実に設定することができる。
【0019】
この明細書において、先行ピアシングにおける順序に限定されない順序で被加工材を切断加工するとは、先行ピアシングによる複数のピアシング孔のうち一部を飛ばして切断加工する場合、先行ピアシング時の順番と異なる順番で切断加工する場合や、これらを組み合わせて切断起点することをいう。
【0020】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の切断方法であって、前記被切断材を切断加工する場合に、前記トーチのXY座標が、前記先行ピアシングにおいて記憶したXY座標に対して、予め設定した範囲内に位置した場合に前記被加工材の切断を開始することを特徴とする。
【0021】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載の切断装置であって、前記被切断材を切断加工する場合に、前記トーチのXY座標が、前記先行ピアシングにおいて記憶したXY座標に対して、予め設定した範囲内に位置した場合に前記被加工材の切断を開始するように構成されていることを特徴とする。
【0022】
この発明に係る切断方法及び切断装置によれば、被加工材を切断加工する場合に、トーチが、先行ピアシングにおいて記憶したXY座標に対して、予め設定した範囲(許容範囲)内に位置した場合に、各ピアシング孔のXY座標と対応して記憶されたZ軸方向位置に基づいてトーチを設定して被加工材の切断を開始する。
【0023】
すなわち、例えば、トーチのXY座標で特定される切断起点が、先行ピアシングによるピアシング孔の縁等に変更されても、トーチのXY座標が先行ピアシング孔に対して予め設定した範囲内であれば、トーチを高速で下降して被加工材の切断を開始することができる。その結果、効率的に切断加工することができる。
【0024】
この明細書において、先行ピアシングにおいて記憶したXY座標に対して、予め設定した範囲内に位置した場合とは、例えば、切断可能におけるトーチの位置(切断起点)が、先行ピアシングによるピアシング孔の範囲(例えば、孔径)内に位置されるような数値とされ、被加工材を実用的に切断加工可能な範囲とされることが好適ある。
また、この場合に、ピアシング孔の範囲は、先行ピアシングの形式(例えば、被加工材W表面に付着する上ノロ除去を目的として、トーチに周回軌道を描かせてピアシング孔を拡大する等)により変化するので、先行ピアシングの形式と対応させて設定することが好適である。その点において、許容寸法FX、FYを、例えば、それぞれ5〜10mmとすることが好適である。
【発明の効果】
【0025】
この発明に係る切断方法及び切断装置によれば、切断加工する際に、各ピアシング孔位置と対応する切断起点における材料高さを計測することなく、切断起点におけるトーチの低速下降高さを適正化して、切断における生産性を向上することができる。
また、先行ピアシングにおける順序に限定されない順序で被加工材を切断加工する場合であっても、切断起点におけるトーチ高さを効率的かつ確実に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係るプラズマ切断装置の概略構成を示す図である。
図2】一実施形態に係るプラズマ切断装置による先行ピアシングにおけるプラズマトーチの動作の一例を説明する図である。
図3】一実施形態に係るプラズマ切断装置により先行ピアシングする場合のプラズマトーチの動作を説明する図である。
図4】一実施形態に係るプラズマ切断装置による切断加工におけるプラズマトーチの動作の一例を説明する図である。
図5】一実施形態に係るプラズマ切断装置により被加工材を切断加工して加工品を形成する場合におけるプラズマトーチの動作の一例を説明する図である。
図6】一実施形態に係るプラズマ切断装置により被加工材を切断して加工品を形成する場合のプラズマトーチのXY方向における移動を説明する図であり、(A)はプラズマトーチと予め設定した許容範囲の関係の概略を示す図であり、(B)は、ピアシング孔と上記許容範囲の関係の一例を示す概略図である。
図7】一実施形態に係るプラズマ切断装置により、先行ピアシングによりピアシング孔の形成する際の動作の一例を説明するフローチャートである。
図8】一実施形態に係るプラズマ切断装置により、被加工材を切断加工して加工品を形成する際のプラズマトーチの動作の一例を説明するフローチャートである。
図9】一実施形態に係るプラズマ切断装置により、被加工材を切断加工して加工品を形成する際のプラズマトーチの動作の一例を説明するフローチャートであり、図7のサブルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係るプラズマ切断装置の概略構成を示す図であり、符号1はプラズマ切断装置を、符号12プラズマトーチを示している。
【0028】
プラズマ切断装置1は、プラズマトーチ12と、アーク電源20と、ガス供給回路30と、制御部40とを備え、プラズマトーチ12から噴射されるプラズマガスにより被加工材Wを切断するようになっている。
【0029】
プラズマトーチ12は、例えば、ノズル本体と、ノズル本体に配置される電極とを備え、例えば、ノズル本体に導入された切断ガスGがノズル孔に導かれて、プラズマを噴出するようになっている。
【0030】
プラズマ切断機本体10は、例えば、被加工材Wを載置する定盤11と、プラズマトーチ12と、プラズマトーチ12のノズル孔を被加工材Wの所定位置に向けて保持するノズル保持部13と、プラズマトーチ12と被加工材Wの表面とのZ軸方向の相対的位置関係、例えば、材料表面からプラズマトーチ12までの高さを検出するタッチセンサ14と、プラズマトーチ12及びタッチセンサ14とともにノズル保持部13を定盤11に対して相対移動させる移動手段15とを備えている。
【0031】
プラズマトーチ12は、例えば、プラズマトーチ12の基端側は、ガス供給回路30から伸びる切断ガス供給ホースと連結され、切断ガスをノズル本体に供給するようになっており、ノズル孔からオフセットされた位置にタッチセンサ14が配置されている。
【0032】
ノズル保持部13は、周知のノズル保持部を適用することが可能であり、プラズマトーチ12を被加工材Wの所定の部位に向けて保持するとともに、例えば、定盤11上に対して垂直に定義され、後述するX軸とZ軸により構成されるXZ面と平行なA面内、及びYZ面と平行とされA面と直交するB面内においてそれぞれ回動可能に構成されている。
【0033】
タッチセンサ14は、プラズマトーチ12の近傍に設けられ、プラズマトーチ12とともに移動して、進退可能とされた検出部が被加工材Wと接触することにより、プラズマトーチ12と被加工材W表面とのZ軸方向における相対的位置(高さ)を計測するようになっている。
なお、タッチセンサ14に代えて、静電式センサや、光学式センサ等を用いて、プラズマトーチ12と被加工材W表面との相対的位置関係を検出してもよい。
【0034】
移動手段15は、プラズマトーチ12をX軸(走行)方向に移動するX軸方向駆動部15Xと、Y軸(横行)方向に移動するY軸方向駆動部15Yと、Z軸(高さ)方向に移動するZ軸方向駆動部15Zとを備えている。
【0035】
X軸方向駆動部15X、Y軸方向駆動部15Y、Z軸方向駆動部15Zは、制御部40からの信号によって、ノズル保持部13及びプラズマトーチ12を、定盤11上でXY方向及びZ軸(高さ)方向に、それぞれNC制御により移動するように構成されている。
また、移動手段15は、例えば、プラズマトーチ12をZ軸周りに回動する第1回動手段15A、及びプラズマトーチ12を水平軸周りに回動する第2回動手段15Bとを備えている。
【0036】
アーク電源20は、制御部40のアークオン信号により、プラズマトーチ12と被加工材W間に電圧を印加してアークを生成するとともに、制御部40からの指示に基づいて、電流値及び供給タイミングを制御可能に構成されている。
【0037】
切断ガス供給路30は、例えば、図示しない酸素供給源と、ガス制御部30とを備え、プラズマトーチ12に切断ガスGを供給するようになっている。
【0038】
制御部40は、設定入力部41を備え、設定入力部41は、例えば、加工品形成する際のプラズマトーチ12の切断軌跡、切断面の形状、被加工材Wの材質、板厚等の加工条件を入力可能とされている。
【0039】
また、制御部40は、設定入力部41から入力された切断軌跡、切断面の形状、被加工材Wの材質、板厚の加工条件に基づいて、定盤11上におけるプラズマトーチ12のXY座標位置、プラズマトーチ12の高さ及び向き、被加工材Wを切断する際の制御条件(例えば、移動速度等)を算出するとともに、プラズマトーチ12のXY方向の移動及び位置制御に関する信号を、移動手段15及びノズル保持部13に出力して、プラズマトーチ12をXYZ軸方向に移動するとともに、プラズマトーチ12の軸線を、必要に応じて傾斜させるようになっている。
【0040】
また、制御部40は、ケーブル4を介してタッチセンサ14と電気的に接続されていて、タッチセンサ14で検出したプラズマトーチ12のZ軸方向位置に関する信号が、制御部40に入力されるようになっている。
【0041】
また、制御部40は、ケーブル4を介して、移動手段15、アーク電源20、ガス供給部30と電気的に接続されていて、制御部40からの指示信号が、ケーブル4を介して、移動手段15、アーク電源20、ガス供給部30に出力されるようになっている。
【0042】
以下、図2図3を参照して、プラズマ切断装置1により、先行ピアシングによりピアシング孔を形成する場合のプラズマトーチ12の動作の一例について説明する。
図2図3は、プラズマ切断装置1による先行ピアシングにおけるプラズマトーチ12の動作の一例を説明する図である。
【0043】
先行ピアシングは、例えば、図2に示すように、各加工品のピアシング孔を形成する予定位置のXY座標にプラズマトーチ12を移動しておこなわれる。図2は、例えば、プラズマトーチ12を四角形の頂点をなす位置に移動して、先行ピアシングする例を示しており、プラズマトーチ12は、R1を起点として、R1からR2、R3、R4の順序で移動される。
【0044】
図3は、先行ピアシングにおける各ピアシング孔におけるプラズマトーチ12及びタッチセンサ14のの動作を示す図であり、R1、R2、R3、R4からなる各ピアシング孔を形成する予定位置において、順次、図3に示すような動作を行うようになっている。
以下、図3をに参照して、ピアシング孔を形成する予定位置におけるプラズマトーチ1
2及びタッチセンサ14の動作の概略について説明する。
【0045】
まず、プラズマトーチ12は、Z軸方向の原位置の高さPAにて、先行ピアシングにより形成するべき各加工品の切断起点をなすピアシング孔の予定位置(XY座標)に移動される。
このとき、プラズマトーチ12及びタッチセンサ14は、図3(A)に示すように、タッチセンサ14がピアシング孔の予定位置(XY座標)に位置するようにオフセット動作が行われる。
【0046】
次に、図3(B)に示すように、タッチセンサ14は、ピアシング孔の予定位置(XY座標)に到達したら、例えば、検出部がaだけ前進される。
【0047】
次いで、図3(C)に示すように、プラズマトーチ12及びタッチセンサ14は、二点鎖線で示すPAから高速で下降される。
次に、図3(C)に示す切換位置PHにて、プラズマトーチ12及びタッチセンサ14の速度を切り換えて、低速で下降される。
【0048】
次いで、図3(C)に示すように、タッチセンサ14により被加工材Wの高さを計測して、プラズマトーチ12及びタッチセンサ14は、実線で示すPBまで低速で下降される。
【0049】
次に、プラズマトーチ12及びタッチセンサ14がPBまで下降したら、図3(D)に示すように、検出部を後退させる。
【0050】
そして、図3(E)に示すように、センサーオフセット戻り動作により、プラズマトーチ12がピアシング孔の予定位置に移動されて、先行ピアシングによるピアシング孔を形成する。
また、タッチセンサ14が検出したZ軸方向位置を、ピアシング孔の予定位置のXY座標と対応させて記憶する。
【0051】
次に、ピアシング孔が形成されたら、プラズマトーチ12によるプラズマ噴射を終了し、図3(F)に示すように、プラズマトーチ12及びタッチセンサ14は、所定の原位置PAまで上昇される。
【0052】
以下、図4図6を参照して、プラズマ切断装置1により、先行ピアシングにより形成されたピアシング孔を切断起点として、被加工材Wを切断加工する場合のプラズマトーチ12の動作の一例について説明する。
図4図5は、プラズマ切断装置1によって、先行ピアシングにより形成されたピアシング孔を切断起点として、被加工材Wを切断加工する場合のプラズマトーチ12の動作の一例を説明する図である。
【0053】
また、図6は、プラズマ切断装置1により被加工材Wを切断加工して加工品を形成する場合のプラズマトーチ12のXY方向における移動を説明する図であり、(A)はプラズマトーチ12と予め設定した許容範囲の関係の概略を示す図であり、(B)は、ピアシング孔と許容範囲の関係の一例を示す概略図である。
【0054】
図4は、プラズマ切断装置1により、先行ピアシングにより形成されたピアシング孔を切断起点として、被加工材Wを切断加工して加工品を形成する場合のプラズマトーチ12のXY方向における動作の一例を説明する図である。
【0055】
図4に示したのは、図2において、R1、R2、R3、R4に形成されたピアシング孔のうち、R2以外のR1、R3、R4に形成されたピアシング孔を切断起点とする場合の例であり、プラズマトーチ12は、R1を起点として、R1からR3、R4の順序で移動される。また、図5は、R1、R3、R4に形成されたピアシング孔におけるプラズマトーチ12の動作の概略を示す図である。
【0056】
まず、プラズマトーチ12は、図5(A)に示すように、切断起点となるピアシング孔に移動される。
【0057】
このとき、制御部40は、例えば、図6(A)、図6(B)に示すように、プラズマトーチ12が、記憶されている先行ピアシングによるピアシング孔のXY座標に対する許容寸法FX、FYの範囲に位置されていたら、プラズマトーチ12を下降させる。
【0058】
許容寸法FX、FYについては、プラズマトーチ12による切断起点を、先行ピアシングによるピアシング孔の範囲内に位置させることが実用的である。
この場合、ピアシング孔の範囲(例えば、孔径)は、先行ピアシングの形式(例えば、被加工材W表面に付着する上ノロ除去を目的として、プラズマトーチ12に周回軌道を描かせてピアシング孔を拡大する等)により変化するので、先行ピアシングの形式と対応させて設定することが好適である。その点において、許容寸法FX、FYを、例えば、それぞれ5〜10mmとすることが好適である。
かかる構成により、プラズマトーチ12が停止する際の停止時間を短縮して加工時間を削減することができる。
【0059】
なお、許容寸法FX、FYは、同じ数値に設定してもよいし、異なる数値に設定してもよい。また、先行ピアシングによるピアシング孔に対して、振り分け設定するかどうかについても、任意に設定することができる。
【0060】
次に、プラズマトーチ12は、図5(B)に示すように、先行ピアシングにおいてタッチセンサ14が検出したZ軸方向位置におけるPBに到達するまで高速で下降される。
次いで、図5(B)に示すように、プラズマトーチ12からプラズマを噴射して被加工材Wを切断加工する。
【0061】
次に、図5(C)、図5(D)に示すように、プラズマトーチ12は、加工品の形状と対応する切断予定軌跡に対応させて、定盤11上においてプラズマトーチ12をXY方向に移動して被加工材Wを切断加工して加工品を形成する。図5(B)〜図(D)において、SPは切断起点を、SQは切断加工が終了して切断起点SPまで戻ってきた切断終点SPを示している。
【0062】
プラズマトーチ12が切断起点SPに戻ってきたら、図5(E)に示すように、プラズマトーチ12のZ軸方向位置を、所定の原位置PAまで上昇させる。
【0063】
次に、図7を参照して、被加工材Wを切断加工して加工品を加工する場合に、先行ピアシングにより被加工材Wにピアシング孔を形成する場合について説明する。
まず、例えば、先行ピアシングにより形成するピアシング孔の切断プログラム(ピアシング孔のXY座標位置及びZ軸方向位置及びピアシングする順序に係る切断データ)を、設定入力部41から入力する。
【0064】
(1)制御部40は、X軸方向駆動部15Xと、Y軸方向駆動部15Yと、Z軸方向駆動部15Zに指示して、プラズマトーチ12を、所定の原位置(XY座標位置、Z軸方向位置PA)に移動する(S1)。
(2)制御部40は、プログラム指令により、X軸方向駆動部15X、Y軸方向駆動部15Yに指示して、プラズマトーチ12を、先行ピアシングにより形成するべき各加工品の切断起点をなすピアシング孔の予定位置(XY座標)に移動する(S2)。
(3)制御部40は、センサーオフセット動作を指示する(S3)。
これにより、プラズマトーチ12は、図3(A)に示すように、タッチセンサ14がピアシング孔の予定位置(XY座標)に位置するようにオフセット動作をおこなう。また、タッチセンサ14は、ピアシング孔の予定位置(XY座標)に到達したら、図3(B)に示すように、例えば、aだけ検出部を前進させる。
(4)次に、制御部40は、Z軸方向駆動部15Zに指示して、プラズマトーチ12及びタッチセンサ14を、図3(C)において二点鎖線で示すPAから高速で下降させる(S4)。
(5)制御部40は、Z軸方向駆動部15Zに指示して、図3(C)に示すように、切換位置PHにてプラズマトーチ12及びタッチセンサ14の速度を切り換えて、低速で下降させる(S5)。
(6)制御部40は、図3(C)に示すように、タッチセンサ14により被加工材Wの高さを計測し、図3(C)において実線で示すPBまで、プラズマトーチ12及びタッチセンサ14を低速で下降させる(S6)。
(7)制御部40は、プラズマトーチ12及びタッチセンサ14を下降させたら、図3(D)に示すように、検出部を後退させるとともに、センサーオフセット戻り動作を指示して、図3(E)に示すように、プラズマトーチ12をピアシング孔の予定位置に移動させる(S7)。
(8)制御部40は、S6においてタッチセンサ14が検出したZ軸方向位置を、ピアシング孔の予定位置のXY座標と対応させて記憶装置(不図示)に記憶する(S8)。
(9)制御部40は、アークオン信号を出力して、アーク電源20によりプラズマトーチ12と被加工材Wの間にアークを発生せるとともに、ガス供給回路30を作動させて、プラズマトーチ12に切断ガスGを供給して、プラズマトーチ12からプラズマを噴射して、図3(E)に示すように、被加工材Wにピアシング孔の加工を開始する(S9)。
(10)制御部40は、ピアシング孔が形成されたら、プラズマトーチ12によるプラズマ噴射を終了する(S10)。
(11)次に、制御部40は、Z軸方向駆動部15Zに指示して、図3(F)に示すように、プラズマトーチ12及びタッチセンサ14のZ軸方向位置を、所定の原位置PAまで上昇させる(S11)。
(12)制御部40は、次の先行ピアシングの対象があるかどうかを判断する(S12)。
次の先行ピアシングの対象がある場合(S12:Yes)はS2に移行し、次の先行ピアシングの対象がない場合(S12:No)は、このプログラムの実行を終了する。
【0065】
次に、図8を参照して、先行ピアシングにより形成したピアシング孔を切断起点として、先行ピアシングにおける各ピアシング孔を形成した順序に限定されることなく、被加工材Wを切断加工する場合について説明する。
(1)まず、例えば、先行ピアシングで形成したピアシング孔のなかから、切断加工において、被加工材Wを切断加工して形成される加工品(各加工品の形成要否)に基づき、各加工品の切断起点とされるピアシング孔及びこれらピアシング孔を起点とする切断加工の順序を特定する切断プログラム(切断データ)を、設定入力部41から入力する(S21)。
(2)制御部40は、X軸方向駆動部15Xと、Y軸方向駆動部15Yと、Z軸方向駆動部15Zに指示して、プラズマトーチ12を、所定の原位置(XYZ座標)に移動する(S22)。
(3)制御部40は、切断プログラムに規定された切断加工する順序に従って、プラズマトーチ12を、これから切断加工する加工品のピアシング孔のXY座標位置に移動する(S23)。
(4)制御部40は、プラズマトーチ12に、トーチ下降指令を出力する際に、プラズマトーチ12の現在のXY座標位置と、記憶された先行ピアシングによるピアシング孔のXY座標を比較する(S24)。
(5)制御部40は、プラズマトーチ12の現在のXY座標位置が、対応するピアシング孔のXY座標位置に対して所定範囲内かどうかを判断する(S25)。
プラズマトーチ12のXY座標位置が、ピアシング孔のXY座標位置に対して所定範囲(±FX、±FY)内に位置する場合(S25:Yes)はS27に移行し、プラズマトーチ12のXY座標位置がピアシング孔のXY座標位置に対して所定範囲内に位置していない場合(S25:No)はA(図9のS31)に移行する。
(6)制御部40は、プラズマトーチ12を、現在のXY座標位置と対応するZ方向位置(切断高さ)まで高速で下降させる(S26)。
このとき、プラズマトーチ12は、現在のピアシング孔のXY座標位置において、図5(A)においてPAで示すZ軸方向位置から図5(B)で示すPB(先行ピアシングにおいてタッチセンサ14が検出したZ軸方向位置)に到達するまで高速下降する。
(7)制御部40は、アークオン信号を出力して、アーク電源20によりプラズマトーチ12と被加工材Wの間にアークを発生せるとともに、ガス供給回路30を作動させて、プラズマトーチ12に切断ガスGを供給して、プラズマトーチ12からプラズマを噴射して、図5(B)に示すように、被加工材Wを切断加工する(S27)。
プラズマトーチ12による切断加工は、図5(B)〜図5(D)に示すように、加工品の形状と対応する切断予定軌跡に対応させて、定盤11上においてプラズマトーチ12をXY方向に移動することにより行われる。
図5において、SPは切断起点を、SQは切断加工が終了して切断起点SPまで戻ってきた切断終点SPを示している。
(8)制御部40は、プラズマトーチ12が切断起点SPに戻ってきたら、図5(E)に示すように、プラズマトーチ12のZ軸方向位置を、所定の原位置PAまで上昇させる(S28)。
(9)制御部40は、次に加工する対象があるかどうかを判断する(S31)。
次に加工する対象がある場合(S29:Yes)はS23に移行し、次に加工する対象がない場合(S29:No)は、このプログラムの実行を終了する。
図8において、S28は、S27からの移行、及び図9に示したS38が終了した後のBから移行された場合に実行されるようになっている。
【0066】
次に、図9を参照して、プラズマトーチ12のXY座標位置がピアシング孔のXY座標位置に対して所定範囲内に位置しない場合(S25:No)におけるプラズマトーチ12により切断加工するための動作の一例を示すサブルーチンについて説明する。
図9に示すフローチャートは、図8に示すフローチャートのS25において、(S25:No)の場合に移行されて実行される。
【0067】
(1)制御部40は、センサーオフセット動作を指示する(S31)。
これにより、プラズマトーチ12は、図3(A)の場合と同様に、タッチセンサ14がピアシング孔の予定位置(XY座標)に位置するようにオフセット動作をおこなう。また、タッチセンサ14は、ピアシング孔の予定位置(XY座標)に到達したら、図3(B)の場合と同様に、例えば、aだけ検出部を前進させる。
(2)次に、制御部40は、Z軸方向駆動部15Zに指示して、プラズマトーチ12及びタッチセンサ14を、図3(C)において二点鎖線で示すPAから高速で下降させる(S32)。
(3)制御部40は、Z軸方向駆動部15Zに指示して、図3(C)の場合と同様に、切換位置PHにてプラズマトーチ12及びタッチセンサ14の速度を切り換えて、低速で下降させる(S33)。
(4)制御部40は、図3(C)の場合と同様に、タッチセンサ14により被加工材Wの高さを計測し、図3(C)において実線で示すPBまで、プラズマトーチ12及びタッチセンサ14を低速で下降させる(S34)。
(5)制御部40は、プラズマトーチ12及びタッチセンサ14を下降させたら、図3(D)の場合と同様に、検出部を後退させるとともに、センサーオフセット戻り動作を指示して、図3(E)の場合と同様に、プラズマトーチ12をピアシング孔の予定位置に移動させる(S35)。
(6)次に、制御部40は、アークオン信号を出力して、アーク電源20によりプラズマトーチ12と被加工材Wの間にアークを発生せるとともに、ガス供給回路30を作動させて、プラズマトーチ12に切断ガスGを供給して、プラズマトーチ12からプラズマを噴射して、図3(E)に示すように、被加工材Wにピアシング孔の加工を開始する(S36)。
(7)次いで、制御部40は、ピアシング孔が形成されたら、プラズマトーチ12からプラズマを噴射して、引き続き被加工材Wを切断加工する(S37)。
プラズマトーチ12による切断加工は、図5(B)〜図5(D)の場合と同様に、加工品の形状と対応する切断予定軌跡に対応させて、定盤11上においてプラズマトーチ12をXY方向に移動することにより行われる。
(8)次に、制御部40は、Z軸方向駆動部15Zに指示して、図3(F)の場合と同様に、プラズマトーチ12及びタッチセンサ14のZ軸方向位置を、所定の原位置PAまで上昇させる(S38)。
S38を実行したら、Bに移行してこのプログラムの実行を終了する。そして、図8におけるS28に移行する。
【0068】
一実施形態に係るプラズマ切断装置1によれば、先行ピアシングにおいて複数のピアシング孔を加工した後に、各ピアシング孔を切断起点として被加工材Wを切断加工して加工品を形成する場合に、先行ピアシングにおける複数のピアシング孔のXY座標位置と、タッチセンサ14が検出した被加工材W表面のZ軸方向位置(材料高さ)とを対応して記憶し、先行ピアシングにおけるデータを検索して、各加工品を切断する際の、高速から低速に切換える切換位置T2を設定するので、切断するためにプラズマトーチ12を下降する際に被加工材W表面のZ軸方向位置を計測する必要がなく、切断における生産性を向上することができる。
【0069】
また、先行ピアシングにおける順序に限定されない順序で被加工材Wを切断加工する場合に、切断加工において切断起点とする各ピアシング孔に関して、各ピアシング孔のZ軸方向位置を先行ピアシングの際に記憶した各ピアシング孔のXY座標と対応させて取得し、取得した各ピアシング孔のZ軸方向位置に基づいて各切断起点におけるトーチの高さ(Z軸方向位置)を設定するので、切断加工する際に、各ピアシング孔位置と対応する切断起点における材料高さを計測することなく、切断起点におけるトーチの低速下降高さを適正化(短く)して、切断における生産性を向上することができる。
【0070】
その結果、トラブル等により一部のピアシング孔を切断起点とする切断加工が継続できなくなってトーチをいずれかのピアシング位置に逆行動作をさせて切断加工を再開する場合や、先行ピアシングにおける順番と異なった順番で切断加工する場合であっても、トーチの高さを適切に設定して、被加工材Wを効率的に切断加工することができる。
【0071】
また、プラズマ切断装置1によれば、被加工材Wを切断加工して加工品を形成する場合に、先行ピアシングにおいて形成したピアシング孔のXY座標に対して、予め設定した範囲(許容範囲)内に、プラズマトーチ12が位置された場合に、プラズマトーチ12が、先行ピアシングにおいて記憶されたZ軸方向位置まで高速で下降するので、被加工材Wの切断加工を効率的に行うことができる。
【0072】
また、プラズマ切断装置1によれば、被加工材を切断加工する場合に、プラズマトーチ12のXY座標が、先行ピアシングにおいて記憶したXY座標に対して、予め設定した範囲内に位置した場合に被加工材の切断を開始するので、例えば、切断開始時に、プラズマトーチ12を、プラズマトーチ12が、XY方向においてチャタリング等を発生させるのを抑制しつつ、先行ピアシングによるピアシング孔の所定範囲内に効率的に位置させることができる。
【0073】
なお、この発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
【0074】
例えば、上記実施の形態においては、切断装置が、プラズマトーチ12を有するプラズマ切断装置1である場合について説明したが、例えば、ガストーチを有するガス切断装置、レーザトーチを有するレーザ切断装置等、被加工材Wの先行ピアシング位置において、被加工材WのZ軸方向位置(材料高さ)を計測して、その後、このピアシング孔を切断起点にして被加工材Wを切断して加工品(製品)を形成する種々の切断装置に適用することができることはいうまでもない。
【0075】
また、上記実施の形態においては、図7に示すフローチャートにおいて、被加工材Wを切断して加工品を形成するごとに、次の順序の加工品に係るピアシング孔のXY座標位置を検索する場合について説明したが、例えば、切断対象の加工品につき、まとめてXY座標位置を検索するとともに、そのピアシング孔につきタッチセンサ14での検出に基づいて記憶したZ軸方向座標を参照して、それらを、別途記憶装置に記憶して、そのデータに基づいて、プラズマトーチ12のXY方向の移動及びZ軸方向の移動をする構成としてもよい。
【0076】
また、上記実施の形態においては、プラズマトーチ12が、先行ピアシングで形成したピアシング孔の所定範囲内に到達した場合に、その到達した位置を切断開始位置として被加工材Wを切断加工する場合について説明したが、このようなXY座標における許容範囲を設定せずに、プラズマトーチ12の移動を、NC装置の動作精度に基づいて制御する構成としてもよい。
【0077】
また、上記実施の形態においては、プラズマ切断装置1が、先行ピアシングにおける順序に限定されない順序で切断加工する場合について説明したが、例えば、先行ピアシングと切断加工の双方でイニシャルハイト検出を実施する手段や、先行ピアシングでイニシャルハイト検出を行い、その結果に基づいて先行ピアシングと同じ順序で切断加工する手段等、周知の手段を備え、これら周知の技術と切換可能な構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、先行ピアシングにおいて複数のピアシング孔を加工した際に計測した被加工材表面のZ軸方向位置に基づき、各ピアシング孔を切断起点として被加工材を切断加工する際のトーチ高さを適切に設定するとともに、被加工材から加工品を形成する際の生産効率を向上可能とするので、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 プラズマ切断装置
12 プラズマトーチ(トーチ)
14 タッチセンサ(Z軸方向位置センサ)
15X X軸方向駆動部
15Y Y軸方向駆動部
15Z Z軸方向駆動部
W 鋼板(被加工材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9