特許第6192240号(P6192240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192240
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 35/06 20060101AFI20170828BHJP
   B62D 65/18 20060101ALI20170828BHJP
   B61B 13/02 20060101ALI20170828BHJP
   F16H 19/04 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   B65G35/06 H
   B62D65/18 Z
   B61B13/02 C
   F16H19/04 E
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-212499(P2015-212499)
(22)【出願日】2015年10月29日
(65)【公開番号】特開2017-81703(P2017-81703A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2017年5月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(73)【特許権者】
【識別番号】515300789
【氏名又は名称】株式会社東安
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100092200
【弁理士】
【氏名又は名称】大城 重信
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】蔭山 孝志
(72)【発明者】
【氏名】石川 信二
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−038190(JP,A)
【文献】 実開昭48−062446(JP,U)
【文献】 特開平09−266522(JP,A)
【文献】 特開平09−014375(JP,A)
【文献】 実開昭52−117531(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 35/00−37/02
B61B 13/02
B62D 65/18
F16H 19/00−37/16;49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設けられたラックと、前記ラックに係合して移動体を移動させるピニオンとを有する搬送システムであって、
前記ラックは、中央に複数の固定ラック歯が設けられた本体部と、前記固定ラック歯の少なくとも一方の端部に連続する可動ラック歯が設けられた可動部とを有し、
前記可動部は、支持軸部を中心に揺動可能に支持され、
前記支持軸部及び可動部が、前記本体部の移動方向の前方及び後方の両端に設けられ、
前記前方及び後方の支持軸部が、いずれも前記可動部の可動ラック歯の存在する位置より移動方向前方に設けられていることを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
前記可動部は、前記支持軸部に近い歯の頂部が低く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
ピニオンと係合し、ピニオンの回転により移動するラックであって、
中央に複数の固定ラック歯が設けられた本体部と、前記固定ラック歯の少なくとも一方の端部に連続する可動ラック歯を有する可動部とを有し、
前記可動部は、支持軸部を中心として揺動可能に支持され、
前記支持軸部及び可動部が、前記本体部の移動方向の前方及び後方の両端に設けられ、
前記前方及び後方の支持軸部が、いずれも前記可動部の可動ラック歯の存在する位置より移動方向前方に設けられていることを特徴とするラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送台車等の移動体に設けられたラックにピニオンを係合させ、ピニオンの回転によって搬送台車等の移動体を移動させる搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
搬送台車等の移動体を搬送する搬送システムでは、移動のための、移動体に駆動部を設けるもの、搬送路側に駆動部を設けるもの、複数の移動体を連結して牽引するもの、走行するチェーン等に係合離脱させるもの等、様々なものが公知である。
例えば、自動車ボディ等に塗装を施すため、自動車ボディ等を移動体である搬送台車に保持し、搬送台車ごと塗装、乾燥等の諸工程を搬送する搬送システムでは、搬送台車にラックを設け、搬送路側にピニオンを配置し、搬送台車に設けられたラックにピニオンを係合させ、ピニオンの回転によって搬送台車を移動させる搬送システムが公知である(例えば、特許文献1等参照。)。
【0003】
このようなラック、ピニオンの係合を適用した搬送システムでは、搬送路側に複数のピニオンが配置され、搬送台車に設けられたラックが順次複数のピニオンと係合・離脱しながら所定の方向に搬送されることとなるため、係合する際にラック歯とピニオン歯の位相や速度にずれがあると、衝撃、振動、騒音等が発生するとともに発塵の虞もあり、最悪の場合、ラックやピニオンが破損したり、係合できずに停止してしまう虞があった。
特に、搬送システムを焼付、乾燥等の工程に使用する場合、ピニオンの設置の際にラック歯とピニオン歯の位相を合わせて据え付けても、高温のオーブン自体が大きな温度変化を受けて伸縮し、その伸縮に伴い据え付けたピニオンのピッチも伸縮し、位相のズレが不可避となる。
ラックの全長が長い場合や、ラック歯のピッチが小さい場合には、温度変化によるラック歯とピニオン歯の位相のズレの影響は大きく、上述した問題が発生する虞がさらに大きかった。
これに対処するため、ラックの位置やピニオンの回転位相を検出しつつ、ラック歯とピニオン歯の位相や速度が一致するように制御する搬送システムが公知である(例えば引用文献2等参照。)。
また、ラックのピニオンに最初に噛み合う第1歯を含む前端部分を可動部(別部材)とし、ピニオンの回転軸と平行な支軸でこの可動部(別部材)を揺動可能に支持し、この支軸を第1歯よりも後方に配置し、可動部(別部材)を揺動させて第1歯をピニオンに押し当てる構造にした搬送システムが公知である(例えば、特許文献3等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−276515号公報
【特許文献2】特開2005−206051号公報
【特許文献3】特開2006−038190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2で公知の搬送システムによれば、ラックが前方のピニオンと係合する際に位相と速度を一致させることで衝撃を抑えることが可能となる。
しかしながら、搬送路側に電気的な検出機構や制御機構等を配置する必要があり、構成が複雑化するとともに、誤作動を防止するためのメンテナンスも頻繁に行う必要がある。
そのため、搬送台車ごと塗装、乾燥等の諸工程を搬送する場合、搬送システムを塗料の噴霧環境や高温環境に設置することとなり、このような構成を採用することは困難であった。
特許文献3で公知の搬送システムによれば、ラック歯と前方のピニオン歯の位相のズレがあった場合、ラックが前方のピニオンと係合する際に、ピニオン歯がラック前端の可動部(別部材)を上方に押し上げ、可動部(別部材)が支軸を中心として揺動することで衝撃を抑え、後方のピニオン歯とラック歯との係合が解除されると、ラックが位相の合う方向に僅かにズレることで、可動部(別部材)が元の位置に戻りラック歯とピニオン歯が係合するように構成されている。
この特許文献3で公知の搬送システムは、機械的な構造のみで構成されるため、塗料の噴霧環境や高温環境に設置することも可能となる。
【0006】
しかしながら、可動部(別部材)の揺動中心が最初にピニオン歯と係合するラック歯よりも移動方向後方に位置することから、ラックの移動速度がピニオンの周速度より速い場合、ラックが前方のピニオンと係合する際に、ピニオン歯とラック歯の当接する位置によっては、移動方向に強い押圧力を受けて大きな摩擦力が発生し、可動部(別部材)を上方に押し上げる時に摩擦力に抗する大きな衝撃が発生したり、摩擦力が大きく押し上げ不能となりラックが停止したり破損が生じる可能性があるという問題があった。
また、ピニオン歯がラック前端の可動部(別部材)を上方に押し上げた後の位相のズレの収束が遅れた場合、揺動中心に近い位置でピニオン歯が可動部(別部材)をさらに上方に揺動させることとなり、可動部(別部材)が上方の構造に接触して大きな衝撃が発生したり、押し上げ不能となりラックが停止したり破損が生じる可能性があるという問題があった。
このことで、搬送速度を変更する際には、隣接するピニオンの速度を同期させる必要があった。
【0007】
本発明は、これらの課題を解決するものであり、簡単な機械的な構造のみで構成され、誤作動を起こすことなく、隣接するピニオンの位相や速度が異なっていたり、温度変化によりピニオンの位相がズレても、衝撃、振動、騒音等を抑制しつつ、停止したり破損することなく、確実にラックが順次複数のピニオンと係合・離脱することが可能な搬送システム及びラックを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る搬送システムは、移動体に設けられたラックと、前記ラックに係合して移動体を移動させるピニオンとを有する搬送システムであって、前記ラックは、中央に複数の固定ラック歯が設けられた本体部と、前記固定ラック歯の少なくとも一方の端部に連続する可動ラック歯が設けられた可動部とを有し、前記可動部は、支持軸部を中心に揺動可能に支持され、前記支持軸部及び可動部が、前記本体部の移動方向の前方及び後方の両端に設けられ、前記前方及び後方の支持軸部が、いずれも前記可動部の可動ラック歯の存在する位置より移動方向前方に設けられていることにより、前記課題を解決するものである。
本発明に係るラックは、ピニオンと係合し、ピニオンの回転により移動するラックであって、中央に複数の固定ラック歯が設けられた本体部と、前記固定ラック歯の少なくとも一方の端部に連続する可動ラック歯を有する可動部とを有し、前記可動部は、支持軸部を中心として揺動可能に支持され、前記支持軸部及び可動部が、前記本体部の移動方向の前方及び後方の両端に設けられ、前記前方及び後方の支持軸部が、いずれも前記可動部の可動ラック歯の存在する位置より移動方向前方に設けられていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本請求項1に係る搬送システム及び本請求項3に係るラックによれば、支持軸部が、可動部の可動ラック歯の存在する位置より移動方向前方に設けられていることにより、ラック歯とピニオン歯の位相や速度が異なっても、最初にピニオン歯と係合するラック歯によって可動部が容易に上方に押し上げられるとともに、ラックの移動速度がピニオンの周速度より速い場合でも、可動部は強い力を受けることなく容易に上方に押し上げられ、移動方向に強い押圧力を受けることがない。
また、可動部を上方に押し上げた後のラック歯とピニオン歯の位相のズレの収束が遅れた場合でも、押し上げられるラック歯が順次支持軸部から遠い歯に移行するため、押し上げ量は徐々に小さくなる。
これらの結果、簡単な機械的な構造のみで、誤作動を起こすことなく、ラック歯とピニオン歯の位相や速度が異なっていたり、温度変化によりピニオンの位相がズレても、衝撃、振動、騒音等を抑制しつつ、ラックが停止したり破損することなく、確実にラックが順次複数のピニオンと係合・離脱することが可能となる。
そして、ラックの搬送速度を搬送区間ごとに異ならせる際にも、搬送区間ごとのピニオンを独立して速度設定するだけで、隣接するピニオンを同期させる必要がなく、複雑な制御機構が不要となる。
また、支持軸部及び可動部が、本体部の移動方向の前方及び後方の両端に設けられ、前方及び後方の支持軸部が、いずれも可動部の可動ラック歯の存在する位置より移動方向前方に設けられていることにより、後方のピニオンより前方のピニオンの周速度が速い場合、ラックが前方のピニオンと係合し速度が上昇した際に、後方に設けられた可動部が上方に押し上げられることで、さらに確実にラックが順次複数のピニオンと係合・離脱することが可能となる。
【0010】
本請求項2に記載の構成によれば、支持軸部に近い歯の頂部が低く形成されていることにより、最初にピニオン歯と係合するラック歯によって可動部が押し上げられる場合、その揺動角度を小さくすることができるため、可動部の上方のクリアランスを小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る搬送システムの側面図。
図2】本発明の一実施形態に係る搬送システムの正面図。
図3】本発明の一実施形態に係る搬送システムの一部の平面図。
図4】本発明の一実施形態に係るラック及びピニオンの側面図。
図5】前後のピニオンの速度が異なる区間のラック及びピニオンの側面図。
図6】連続速度変更を行う区間のラック及びピニオンの側面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
本発明の一実施形態に係る搬送システム100は、図1乃至図3に示すように、移動体である搬送台車110が、上方に設けられた車体支持台112に被搬送物である自動車ボディ102を載置し、車輪111によってレール101に沿って走行するように構成されている。
搬送台車110には移動方向に延びるラック120が固定されており、レール101の側方に所定の間隔で設けられたピニオン(図示せず)に係合し、ピニオンを回転駆動することで係合するラック120を移動方向に駆動し、搬送台車110が移動するように構成されている。
なお、搬送台車やレールの構造、被搬送物の支持構造はいかなるものであってもよく、例えば、レールが上方に設けられ搬送台車によって被搬送物を吊り下げる構造であってもよい。
また、搬送台車の走行機構も、いかなるものであってもよく、レール側にローラ等が設置されてローラ上を走行するものや、磁気浮上、空気浮上、低摩擦面の滑動等で走行するものであってもよい。
また、被搬送物もいかなるものであってもよい。
【0013】
ラック120は、図4乃至図6に示すように、中央に複数の固定ラック歯122が設けられた本体部121と、固定ラック歯122の移動方向前方(以下、単に「前方」という。)の端部に連続する可動ラック歯124が設けられた可動部123と、固定ラック歯122の移動方向後方(以下、単に「後方」という。)の端部に連続する可動ラック歯124bが設けられた可動部123bとを有している。
それぞれの可動部123、123bの上方には、可動部123、123bの上方への過剰な跳ね上がりを規制するストッパ機能を兼ねた可動部カバー126、126bが本体部121に固定的に設けられている。
前方の可動部123は、可動部カバー126の前方端部側に設けられた支持軸部125を中心に揺動可能に支持され、後方の可動部123bは、可動部カバー126bの本体部121側に設けられた支持軸部125bを中心に揺動可能に支持されており、いずれも支持軸部125、125bが、可動部123、123bの可動ラック歯124、124bの存在する位置より前方に位置するように構成されている。
また、前方の可動部123の支持軸部125に近い可動ラック歯124は、頂部が低く形成されている。
【0014】
以上のように構成された本実施形態の搬送システム100の動作について説明する。
搬送台車110が等速で搬送される区間では、図4に示すように、前方のピニオン130と後方のピニオン130bは、両者の回転軸132、132bの間隔が、前方の可動部123の最前方の可動ラック歯124の頂部と後方の可動部123bの最後方の可動ラック歯124bの頂部との間隔とほぼ等しく設定されている。
このため、前方の可動部123の最前方の可動ラック歯124と前方のピニオン130のピニオン歯131の位相がズレていた場合でも、最初の当接時に前方の可動部123が上方に押し上げられることで衝撃が緩和される。
その後、後方のピニオン130bのピニオン歯131bと後方の可動部123bの最後方の可動ラック歯124bの係合が外れた直後は、前方の可動部123の可動ラック歯124は前方のピニオン130のピニオン歯131と係合する位置にあるため、ラック120の前後位置が僅かにずれて前方の可動部123が下方に揺動して正確に係合し、連続する固定ラック歯122に円滑に係合する。
【0015】
なお、可動部123の上方には、可動部123の上方への過剰な跳ね上がりを規制するストッパ機能を兼ねた可動部カバー126が設けられているため、可動部123が搬送台車110の上部構造や搬送ライン上の様々な構造物と衝突することを防止できる。
また、最初に前方のピニオン130のピニオン歯131と当接する前方の可動部123の支持軸部125に近い可動ラック歯124は頂部が低く形成されているため、位相がズレていた場合でも押し上げ量を少なくすることができ、可動部カバー126の高さを低くし、ラック120の搬送台車110への取付位置やラック120の長さに関して、搬送台車110の上部構造や搬送ライン上の様々な構造物等による制約が少なくなる。
【0016】
搬送台車110の速度を変更する場合、図5に示すように、前方のピニオン130と後方のピニオン130cはそれぞれ異なる一定の速度で駆動される。
速度を低下させる場合には、前方の可動部123の可動ラック歯124は前方のピニオン130のピニオン歯131よりも速度が速い状態で当接するため、搬送台車110の速度が維持されたまま、可動ラック歯124とピニオン歯131が係合することなく、前方の可動部123が上方に押し上げられる。
そして、後方のピニオン130cのピニオン歯131cと後方の可動部123bの最後方の可動ラック歯124bの係合が外れた後に、搬送台車110の速度が低下し、前方の可動部123の可動ラック歯124と前方のピニオン130のピニオン歯131との速度、位相が一致して前方の可動部123が下方に揺動して正確に係合する。
この時、図5に示すように、前方のピニオン130と後方のピニオン130cを、両者の回転軸132、132cの間隔が、前方の可動部123の最前方の可動ラック歯124の頂部と後方の可動部123bの最後方の可動ラック歯124bの頂部との間隔より広く設定することで、搬送台車110の速度が低下し前方の可動部123の可動ラック歯124と前方のピニオン130のピニオン歯との速度、位相が一致するまでの時間的余裕を確保することができ、より大きな速度変化を円滑に行うことが可能となる。
【0017】
速度を上昇させる場合には、前方の可動部123の可動ラック歯124は前方のピニオン130のピニオン歯131よりも速度が遅い状態で当接するため、タイミングによっては早い段階で可動ラック歯124とピニオン歯131が係合して搬送台車110の速度が上昇する。
搬送台車110の速度が上昇時に、後方の可動部123bの可動ラック歯124bが後方のピニオン130cのピニオン歯131cと係合した状態であっても、後方の可動部123bは、後方の可動部カバー126bの本体部121側に設けられた支持軸部125bを中心に揺動可能に支持されており、支持軸部125bが、後方の可動部123bの可動ラック歯124bの存在する位置より前方に位置するように構成されているため、後方の可動部123bが上方に押し上げられて係合が解除され、搬送台車110の速度変化を円滑に行うことが可能となる。
【0018】
搬送方向を一旦逆転するような搬送を含む、連続的に搬送台車110の速度を変更する区間においては、図6に示すように、前方のピニオン130dと後方のピニオン130eの間隔が、後方のピニオン歯131eがラック120の本体部121の後方端の固定ラック歯122から離れる前に、前方のピニオン歯131dがラック120の本体部121の前方端の固定ラック歯122に当接するように設定されている。
このような区間は、搬送台車110の速度、搬送方向、位置等を正確に制御することが要求される区間であり、前方のピニオン130dと後方のピニオン130eは速度や位相を正確に制御されるため、両端の可動部123、123bの可動ラック歯124、124bが動作する必要はなく、常にいずれか一方のピニオン歯131d、131eが固定ラック歯122と係合して駆動することで、可動部123、123bの揺動に伴う速度や位置のずれの影響を受けることなく、正確な速度、搬送方向、位置等の制御を行うことが可能となる。
【0019】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、上述した実施形態では、ラック120の下方でピニオン130が係合し、押し上げられた可動部123、123bは、重力により元に戻るように構成されているが、バネ等の付勢手段で元に戻る力を強くしてもよく、逆に付勢して押し上げ力を軽くしてもよい。
また、搬送台車の形態に応じて、ラックの側方や上方でピニオンが係合するようにしてもよく、その場合、元に戻るための何らかの付勢手段が必須である。
また、ラックとピニオンによる駆動以外の駆動手段を併設し、必要な搬送形態に応じて駆動手段を切り替えてもよい。
また、ラック歯、ピニオン歯の形状は、係合して駆動可能なものであればいかなるものであってもよく、ピニオンをスプロケットとし、ラック側にピンを等間隔に配列したいわゆる「ピンギア」であってもよい。
【符号の説明】
【0020】
100 ・・・ 搬送システム
101 ・・・ レール
102 ・・・ 自動車ボディ(被搬送物)
110 ・・・ 搬送台車(移動体)
111 ・・・ 車輪
112 ・・・ 車体支持台
120 ・・・ ラック
121 ・・・ 本体部
122 ・・・ 固定ラック歯
123 ・・・ 可動部
124 ・・・ 可動ラック歯
125 ・・・ 支持軸部
126 ・・・ 可動部カバー
130 ・・・ ピニオン
131 ・・・ ピニオン歯
132 ・・・ 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6