(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ピストン当接部材は、前記シリンダの周方向に延びる周方向部材であって、前記ピストン当接部材の一端側が前記ピストンに当接するとともに、前記移動規制部材に押圧される部分には、前記ピストン当接部材の他端側かつ径方向の内方に向かって伸びる傾斜部が形成されている
請求項1または2のいずれかに記載の車両用マスタシリンダ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態を
図1〜
図5に基づいて説明する。第1実施形態は、
図1〜
図3に示すように、リザーバ10が車両用マスタシリンダ11の一部を構成するリザーバ一体型の車両用マスタシリンダ11となっている。この車両用マスタシリンダ11は、外部に露出した状態で取り付けられる自動二輪車、三輪バギーおよび四輪バギー等の鞍乗型車両用のものである。ここでは、リザーバ10を含む車両用マスタシリンダ11が車両に取り付けられた状態をもって説明し、その際に、車両における前を「前」、車両における後を「後」、車両における左を「左」、車両における右を「右」として説明する。第1実施形態は、運転者の右手により操作される前輪制動用の車両用マスタシリンダ11となっている。本発明は、運転者の左手により操作される後輪制動用のマスタシリンダやクラッチ用マスタシリンダにも適用可能であり、その場合は以下の説明における左右が逆になる。
【0015】
車両用マスタシリンダ11は、車両の
図1に二点鎖線で示すステアリングバー15の装着部16に取り付けられる。装着部16はステアリングバー15の右側部に位置して左右方向に延在する部分である。ステアリングバー15は円筒状のパイプ部材が適宜曲げ加工されて形成されており、少なくとも車両用マスタシリンダ11が取り付けられる装着部16の外周面は円筒面状となっている。
【0016】
車両用マスタシリンダ11は、いずれも金属製の、
図1に示す本体部材20と、ホルダ21と、
図2,
図3に示す二本の装着ボルト22,22と、ブレーキレバー23(操作子)と、支持ボルト24と、支持ナット25と、蓋部材26と、
図1に示す二本の取付ビス27,27と、を有している。また、車両用マスタシリンダ11は、
図2,
図3に示す合成樹脂製のケース28を有するブレーキスイッチ29(検出部材)と、いずれも金属製の取付ネジ部材30(移動規制部材)、係止ワッシャ31およびバネワッシャ32と、
図4に示すゴム等の弾性材料からなるダイヤフラム33とを有している。ここで、ブレーキスイッチ29は、ブレーキレバー23の操作によってブレーキスイッチ29内部の接点がオンまたはオフとなって、車両の図示せぬブレーキランプを点灯させるために設けられているものである。なお、本実施形態において、ブレーキスイッチ29のケース28を、合成樹脂製としているが、金属製やゴム製のものとしてもよい。
【0017】
本体部材20は、鋳造による一体成形品であり、
図1に示すように、ステアリングバー15の装着部16の前側に配置されている。本体部材20には、その右側部に後方に向けて突出するように装着座部34が形成されている。本体部材20は、この装着座部34とホルダ21とでステアリングバー15の装着部16を挟持することでステアリングバー15に取り付けられる。装着座部34とホルダ21とは、
図2,
図3に示す上下二本の装着ボルト22,22によって結合されてステアリングバー15を挟持する。
【0018】
本体部材20は、その右側部の下部に、
図3に示すように前方に向けて突出するように上下一対の板状のレバー支持部35,35が形成されている。ブレーキレバー23は、これらレバー支持部35,35間に挿入されている。この状態で、支持ボルト24が上下方向に沿って一方のレバー支持部35、ブレーキレバー23および他方のレバー支持部35に挿通されて支持ナット25に螺合される。これにより、ブレーキレバー23は、これらレバー支持部35,35、支持ボルト24および支持ナット25によって回転可能に支持されることになる。その際に、ブレーキレバー23は支持ボルト24を中心に回転する。
図1に示すようにブレーキレバー23は、ステアリングバー15の前方においてステアリングバー15に沿って本体部材20から右方に延出している。本体部材20には、
図3に示す上側のレバー支持部35のさらに上方、つまり
図2に示すように右側部の上部に図示略のバックミラーが取り付けられるミラー装着部36が形成されている。
【0019】
本体部材20には、レバー支持部35,35の基端側から左方に延出するシリンダ37が設けられている。このシリンダ37は、
図1に示すステアリングバー15の前方でその装着部16の軸方向に沿うように配置されている。このシリンダ37は、
図4に示すように、本体部材20の下部に形成されている。本体部材20の上部、つまりシリンダ37の上側には、リザーバ壁部38が形成されている。このリザーバ壁部38は、上下方向に沿う筒状をなしており、そのシリンダ37側を閉塞するリザーバ底部39とで、ブレーキ液が貯留される貯留室40を内側に形成する。リザーバ底部39は、シリンダ37の上部をも構成している。
【0020】
シリンダ37は、左右方向に延在するシリンダ筒部45と、シリンダ筒部45のレバー支持部35,35に対し反対側に配置されるシリンダ底部46とを有する有底筒状をなしている。シリンダ37は、これらシリンダ筒部45およびシリンダ底部46の内側に、レバー支持部35,35側に開口部48を有するシリンダ穴47が形成されている。
【0021】
このシリンダ穴47は、
図1に示すステアリングバー15の装着部16の軸方向に沿っている。シリンダ穴47は、
図4に示すように、シリンダ底部46側の主穴部51と、主穴部51のシリンダ底部46に対し反対側のテーパ穴部52と、テーパ穴部52の主穴部51に対し反対側の口元穴部53とを有している。口元穴部53の主穴部51に対し反対側の端部が、シリンダ37の開口部48を構成している。主穴部51とテーパ穴部52と口元穴部53とは中心軸線を一致させており、この中心軸線がシリンダ穴47の中心軸線となる。このシリンダ穴47の中心軸線をシリンダ37の中心軸線とする。以下、この中心軸線をシリンダ軸と称し、この中心軸線に沿う方向をシリンダ軸方向と称し、シリンダ37の中心軸線に直交する方向をシリンダ径方向と称し、シリンダ37の中心軸線回りの方向をシリンダ周方向と称す。
【0022】
図5に示すように、シリンダ穴47のうち、主穴部51は円筒面状の内周面51aを有している。テーパ穴部52は、内周面51aの開口部48側の端縁部から拡径しつつ開口部48側へ延出するテーパ状の拡径内周面52aと、この拡径内周面52aの内周面51aに対し反対側の端縁部から拡径しつつ開口部48側へ延出するテーパ状の拡径内周面52bとを有している。テーパ穴部52において、シリンダ軸方向における両端の直径差をシリンダ軸方向における両端間の距離で除したテーパ量は、拡径内周面52aよりも拡径内周面52bの方が大きくなっている。
【0023】
口元穴部53は、円筒面状の内周面53aと、内周面53aの開口部48に対し反対側の端縁部から縮径しつつ開口部48に対し反対側に延出する縮径内周面53bと、縮径内周面53bの内周縁部からシリンダ径方向の内方に延出する底面53cとを有している。
底面53cの内周縁部が、テーパ穴部52の拡径内周面52bの拡径内周面52aに対し反対側に繋がっている。底面53cは、シリンダ軸に直交する面と平行をなしている。
【0024】
図4に示すように、主穴部51は、口元穴部53よりもシリンダ軸方向の長さが長くなっており、シリンダ穴47内で最もシリンダ軸方向の長さが長くなっている。主穴部51は、口元穴部53よりも小径の内径を有しており、シリンダ穴47内で最もシリンダ径方向に小径となっている。口元穴部53は、シリンダ穴47内で最もシリンダ底部46に対し反対側に配置されている。
【0025】
シリンダ筒部45には、主穴部51と口元穴部53との境界近傍の外側下部に、ブレーキスイッチ29が取り付けられる取付座54が形成されている。取付座54は、シリンダ軸方向の主穴部51側の主座部55と、主座部55よりも下方に突出するシリンダ軸方向の口元穴部53側の突出座部56とを有している。突出座部56の主座部55側の壁部57は、シリンダ軸に直交する面に平行をなしている。取付座54は段差状をなしている。
【0026】
そして、シリンダ筒部45には、取付座54の突出座部56の位置に、シリンダ径方向に平行な径方向孔58が形成されている。径方向孔58は、ネジ孔であり、突出座部56の下面から下面に垂直をなして上向きに形成されている。径方向孔58は、口元穴部53の内周面53aに開口している。
【0027】
シリンダ底部46には、これを貫通してネジ穴部59が形成されている。このネジ穴部59には、図示は略すが、ブレーキ配管の口金をシリンダ37に取り付けるボルトが螺合される。このボルトには主穴部51内とブレーキ配管とを連通させる通路が形成されている。ブレーキ配管は、車輪側に設けられるディスクブレーキ等のブレーキ装置のホイールシリンダに連通している。シリンダ底部46には、シリンダ筒部45に対し反対側に突出してブレーキ配管の口金の回転を規制する規制凸部61が形成されている。
【0028】
リザーバ底部39には、主穴部51内と貯留室40とを連通させる第1連通穴62がシリンダ径方向に平行に形成されている。第1連通穴62は、貯留室40側から主穴部51側に段階的に小径となる段付き穴となっている。また、リザーバ底部39には、この第1連通穴62よりもシリンダ底部46側にも図示略の第2連通穴が形成されている。
【0029】
リザーバ壁部38は、シリンダ底部46側、つまり左側に配置される側壁部65と、前側に配置される前壁部66と、シリンダ底部46に対し反対側、つまり右側に配置される側壁部67と、後側に配置される
図2に示す後壁部68とからなっている。つまり、リザーバ壁部38は、四角筒状をなしている。リザーバ壁部38は、
図4に示す側壁部65、前壁部66、側壁部67および
図2に示す後壁部68によって、
図4に示す貯留室40を囲んで形成されており、上部が開口している。
【0030】
ダイヤフラム33は、リザーバ壁部38の上面上に載置される四角枠状をなす枠状板部69と、枠状板部69の内周端縁部から下方に延出する筒状の外側筒状部70と、外側筒状部70の下端縁部から内側に延出する枠状の下板部71と、下板部71の内周端縁部から上方に延出する筒状の中間筒状部72と、中間筒状部72の上端縁部から内側に延出する上板部73とを有している。外側筒状部70、下板部71、中間筒状部72および上板部73は、貯留室40内に配置されている。ダイヤフラム33は、貯留室40を、ダイヤフラム33よりも下側のブレーキ液が貯留される液室74と、ダイヤフラム33よりも上側の大気に連通する気室75とに区画する。ダイヤフラム33は、変形することにより、液室74のブレーキ液の液量の変動に追従可能となっている。
【0031】
蓋部材26は、鋳造による一体成形品であり、ダイヤフラム33を上側で覆う。蓋部材26は、その下面が、ダイヤフラム33の枠状板部69をリザーバ壁部38の上面とで挟持する。この状態で、蓋部材26は、
図1に示す取付ビス27,27により
図4に示すリザーバ壁部38に固定される。このように、ダイヤフラム33は、本体部材20のリザーバ壁部38と蓋部材26とで直接挟持される。
【0032】
車両用マスタシリンダ11は、戻しバネ76と、ピストン77と、カップシール78と、カップシール79と、ブーツ80と、を有している。これらは、いずれも上記したシリンダ穴47内に配置されている。ブーツ80は、ブーツ本体81と剛性リング82とからなっている。戻しバネ76、ピストン77および剛性リング82は金属製であり、カップシール78、カップシール79およびブーツ本体81はゴム等の弾性材料からなっている。
【0033】
ピストン77は、円柱状の軸部85と、円板状のフランジ部86と、円柱状の軸部87と、円板状のフランジ部88と、円柱状の軸部89と、円板状のフランジ部90と、円柱状の軸部91と、円板状のフランジ部92と、円柱状の軸部93と、円柱状の軸部94と、円板状のフランジ部95と、を有しており、これらは共通の中心軸線を有する同軸状に形成されている。
【0034】
軸部85は、ピストン77における最もシリンダ底部46側、つまり左側に形成されている。フランジ部86は、軸部85のシリンダ底部46に対し反対側、つまり右側に配置されている。フランジ部86は、その外径が軸部85の外径よりも大径となっている。軸部87は、フランジ部86の軸部85に対し反対側に配置されている。軸部87は、その外径が軸部85の外径よりも小径となっている。フランジ部88は、軸部87のフランジ部86に対し反対側に配置されている。フランジ部88は、その外径がフランジ部86の外径よりも大径となっている。
【0035】
軸部89は、フランジ部88の軸部87に対し反対側に配置されている。軸部89は、その外径がフランジ部88の外径よりも小径となっている。フランジ部90は、軸部89のフランジ部88に対し反対側に配置されている。フランジ部90は、その外径がフランジ部88の外径と同径となっている。軸部91は、フランジ部90の軸部89に対し反対側に配置されている。軸部91は、その外径がフランジ部90の外径よりも小径となっている。
【0036】
フランジ部92は、軸部91のフランジ部90に対し反対側に配置されている。フランジ部92は、その外径がフランジ部90の外径と同径となっている。軸部93は、フランジ部92の軸部91に対し反対側に配置されている。軸部93は、その外径がフランジ部92の外径よりも小径となっている。軸部94は、軸部93のフランジ部92に対し反対側に配置されている。軸部94は、その外径が軸部93の外径よりも小径となっている。
【0037】
フランジ部95は、軸部94の軸部93に対し反対側に配置されている。フランジ部95は、その外径が軸部94の外径よりも大径となっており、軸部93の外径と同径になっている。フランジ部95は、ピストン77における最もシリンダ底部46に対し反対側に形成されている。ピストン77は、フランジ部88,90,92においてシリンダ穴47の主穴部51の内周面51aに摺動可能に嵌合されることになる。これにより、ピストン77は、シリンダ37に摺動可能に設けられて、シリンダ軸方向に移動する。
【0038】
戻しバネ76はシリンダ軸方向における一端側が他端側よりも大径となるテーパ状のコイルバネであり、大径側の端部においてシリンダ底部46に当接し、小径側の端部において内側にピストン77の軸部85を挿通させてフランジ部86に当接する。
【0039】
カップシール78は、中心軸線を含む面での断面の片側形状がシリンダ軸方向における一側に開口するC字状をなしている。カップシール78は、ピストン77のフランジ部86,88間に配置されて軸部87に嵌合されている。カップシール78は、C字の開口側をフランジ部86側に配置した状態となっており、外周部が主穴部51の内周面51aに摺接する。
【0040】
カップシール79は、中心軸線を含む面での断面の片側形状がシリンダ軸方向における一側に開口するC字状をなしている。カップシール79は、ピストン77のフランジ部90,92間に配置されて軸部91に嵌合されている。カップシール79は、C字の開口側をフランジ部90側に配置した状態となっており、外周部が主穴部51の内周面51aに摺接する。
【0041】
図5に示すように、取付ネジ部材30は、円板状の頭部105と、頭部105よりも小径で頭部105から延出する柱状のネジ軸部106と、ネジ軸部106の頭部105に対し反対側から延出する円柱状の先端軸部107とを有している。頭部105とネジ軸部106と先端軸部107とは同軸状に形成されている。先端軸部107は、円筒面状をなす外周面107aと、外周面107aのネジ軸部106に対し反対側の端縁部から縮径しつつ延出する縮径外周面107bと、中心軸に直交する平坦な先端面107cとを有している。取付ネジ部材30には、C字状のバネワッシャ32と円環状の係止ワッシャ31とが、それぞれの内側に先端軸部107およびネジ軸部106を挿通させて予め取り付けられている。係止ワッシャ31は取付ネジ部材30に係止されることになり、バネワッシャ32の取付ネジ部材30からの抜けを規制する。
【0042】
ブレーキスイッチ29のケース28は、主部110と、これよりも厚さが薄い取付部111とを有している。ケース28の主部110の取付部111側に上下方向に沿いかつ前後方向に沿う壁部112が形成されている。取付部111には厚さ方向に貫通する貫通穴113が形成されている。ブレーキスイッチ29は、主部110が取付座54の主座部55に当接し、取付部111が突出座部56に当接し、壁部112が壁部57に当接する。
【0043】
この状態で、予め係止ワッシャ31およびバネワッシャ32が取り付けられた状態の取付ネジ部材30の、先端軸部107およびネジ軸部106をブレーキスイッチ29の貫通穴113に挿通させて、ネジ軸部106をシリンダ筒部45のネジ孔である径方向孔58に螺合させる。このように取付ネジ部材30を径方向孔58に螺合させながら挿通させることにより、取付ネジ部材30の頭部105がバネワッシャ32、係止ワッシャ31およびブレーキスイッチ29の取付部111をシリンダ筒部45の突出座部56とで挟持することになり、ブレーキスイッチ29をシリンダ37に固定する。
【0044】
ブレーキスイッチ29をシリンダ37に固定した状態の取付ネジ部材30は、その先端軸部107がピストン77のフランジ部92よりもシリンダ径方向の内方に突出する長さとなっている。ピストン77のフランジ部92を取付ネジ部材30の先端軸部107よりも開口部48に対し反対側に配置した状態で、ブレーキスイッチ29をシリンダ37に固定する。すると、ピストン77が
図4に示す戻しバネ76で押圧されてシリンダ穴47から抜け出る方向に移動しようとしても、
図5に示すようにピストン77のフランジ部92に取付ネジ部材30が当接することになって、この移動を規制する。
【0045】
つまり、取付ネジ部材30は、シリンダ37に形成された径方向孔58に挿通されてシリンダ37に対するピストン77の移動を規制する。ここで、フランジ部92はその最大外径部となる円筒面状の外周面92aと、外周面92aの軸部93側の端縁部から縮径しつつ軸部93側に延出する縮径外周面92bと、縮径外周面92bからシリンダ径方向の内方に延出する端面92cとを有している。端面92cは、シリンダ軸に直交する面に平行をなす。取付ネジ部材30は、その先端軸部107の傾斜する縮径外周面107bでフランジ部92の縮径外周面92bに当接する。ここで、先端軸部107の長さを長くすることにより、先端軸部107の円筒面状の外周面107aを、フランジ部92の端面92cに当接させても良い。
【0046】
ブレーキスイッチ29は、ブレーキレバー23が操作されない状態では、ブレーキレバー23で押圧されてオフ状態となり、ブレーキレバー23が操作されてブレーキレバー23が離れるとオン状態となって、ブレーキレバー23の操作を検出する。
【0047】
ブーツ80のブーツ本体81は、筒状をなしており、一端の嵌合部115と、中間の可撓部116と、他端の嵌合部117とを有している。嵌合部115および嵌合部117は環状をなしている。可撓部116は、嵌合部115および嵌合部117よりもシリンダ径方向の厚さが薄い筒状をなしており、可撓性を有している。ブーツ本体81の嵌合部117のシリンダ径方向の内側には装着溝118が形成されており、この装着溝118に剛性リング82が装着されている。
【0048】
ブーツ80は、ブーツ本体81の一端の嵌合部115がピストン77の軸部93とフランジ部95との間に配置されて軸部94に嵌合される。また、ブーツ80は、嵌合部115の外周側から延出する可撓部116が一旦フランジ部92に対し反対側に延出した後、シリンダ径方向の外側に折り返されて口元穴部53内でフランジ部92側に延出する状態となる。また、ブーツ80は、他端の嵌合部117が剛性リング82によりシリンダ径方向の変形が抑制された状態で口元穴部53の内周面53aに接触する。これにより、ブーツ80は、一側の嵌合部115がピストン77に保持されるとともに、シリンダ37の開口部48側を覆って保護する。
【0049】
シリンダ穴47へ
図4に示す戻しバネ76とピストン77とカップシール78,79とブーツ80とを組み付ける場合には、ピストン77に予めカップシール78,79とブーツ80とを組み付けておく。つまり、ピストン77のフランジ部86と軸部87とフランジ部88とからなる溝部分にカップシール78を嵌合させる。また、ピストン77のフランジ部90と軸部91とフランジ部92とからなる溝部分にカップシール79を嵌合させる。また、予め剛性リング82がブーツ本体81に装着された状態のブーツ80をピストン77に取り付ける。その際には、
図5に示すようにピストン77の軸部93と軸部94とフランジ部95とからなる溝部分に嵌合部115を嵌合させ、可撓部116を嵌合部115からフランジ部92に対し反対側に延出させた後、シリンダ径方向の外側に折り返してフランジ部92側に延出する状態としておく。
【0050】
そして、シリンダ穴47へ
図4に示す戻しバネ76を挿入し、上記状態のピストン77をシリンダ穴47内へ挿入する。このとき、ブーツ80の
図5に示す嵌合部117もシリンダ穴47の口元穴部53に嵌合させることになる。ただし、嵌合部117の嵌合部115に対し反対側の端面117aが径方向孔58よりも開口部48側に位置するようにしておく。この状態で、ブレーキスイッチ29を取付座54に配置し、戻しバネ76を縮めるようにピストン77を、フランジ部92が径方向孔58よりも開口部48に対し反対側に位置するように所定量押し込んだ状態で、取付ネジ部材30のネジ軸部106を径方向孔58に螺合させる。
【0051】
これにより、取付ネジ部材30がブレーキスイッチ29をシリンダ37に固定する。それとともに、取付ネジ部材30は、その先端軸部107の先端面107cがフランジ部92の外周面92aよりもシリンダ径方向の内側に位置することになる。これにより、取付ネジ部材30がピストン77のフランジ部92に当接することによって、ピストン77のシリンダ穴47から抜ける方向の移動を規制する状態となる。この状態で、シリンダ37内に設けられたピストン77は、取付ネジ部材30で移動が規制される位置から開口部48に対し反対の方向にシリンダ軸方向に沿って移動可能となる。
【0052】
その後、ブーツ80の嵌合部117を治具により所定位置まで押し込む。これにより、ブーツ80は、一側の嵌合部115がピストン77に保持され、他端の嵌合部117が口元穴部53の内周面53aに全周にわたり当接して、シリンダ37の開口部48側を覆う状態となる。フランジ部92が取付ネジ部材30に当接させられる位置が、ブレーキレバー23が操作されない状態でのピストン77の待機位置となる。
【0053】
シリンダ穴47には、ピストン77のカップシール79よりも
図4に示すシリンダ底部46側がブレーキ液で満たされることになる。また、カップシール78は、ピストン77とシリンダ筒部45とシリンダ底部46とで図示略のホイールシリンダに連通する液圧室120を形成する。
【0054】
ピストン77のフランジ部95のシリンダ底部46に対し反対側には、ブレーキレバー23の押圧部125が配置されている。ブレーキレバー23が操作されると、押圧部125がシリンダ底部46側、つまり左側に移動することになり、この方向にピストン77を押圧する。すると、ピストン77とカップシール78とが一体に液圧室120を狭める方向に移動することになり、カップシール78が図示略の第2連通穴を越えると、液圧室120と貯留室40との連通を遮断して、液圧室120から図示略のホイールシリンダにブレーキ液を供給する。
【0055】
つまり、車両用マスタシリンダ11は、ブレーキレバー23の操作によってピストン77がシリンダ底部46の方向に推進させられてブレーキ液圧を発生させる。このとき、カップシール78とカップシール79との間は、第1連通穴62によって貯留室40に連通している。また、ブレーキレバー23の操作が解除されると、戻しバネ76の付勢力でピストン77が戻されることになり、図示略のホイールシリンダのブレーキ液を液圧室120に戻す。ここで、ブレーキ装置のブレーキ摩擦材の量が減るとホイールシリンダ側の液圧室の容積が増えることになる。車両用マスタシリンダ11は、ブレーキレバー23が操作状態にないとき、液圧室120が図示略の第2連通穴によって貯留室40に連通していることから、その分のブレーキ液は貯留室40から液圧室120に補給される。
【0056】
本体部材20のリザーバ壁部38およびリザーバ底部39と、蓋部材26と、ダイヤフラム33と、取付ビス27,27とが、シリンダ37の上部に設けられてブレーキ液が貯留されるリザーバ10を構成している。よって、リザーバ10は、ホイールシリンダへブレーキ液を供給する車両用マスタシリンダ11に一体的に接続されている。
【0057】
上記特許文献1に記載のマスタシリンダは、シリンダの開口部側を覆う被覆部材をシリンダの開口部に係止される係止部材でシリンダに取り付け、この被覆部材を介してピストンの抜けを規制するようになっている。このため、係止部材が必要であり、これを係止するための係止溝をシリンダの開口部の内周面に形成する必要がある。よって、係止溝の切削加工や係止部材の挿入等の製造が煩雑となっており、製造に手間がかかっている。また、部品点数が多くなることから部品コストおよび組立コストが増大してしまうことになり、係止溝を形成するため加工コストが増大してしまう。
【0058】
これに対して、上記した車両用マスタシリンダ11は、シリンダ37にシリンダ穴47内に開口する径方向孔58を形成する。また、ブレーキレバー23の操作を検出するブレーキスイッチ29をシリンダ37に固定するための取付ネジ部材30を、この径方向孔58に挿通させる。そして、取付ネジ部材30で、ピストン77のシリンダ37から抜ける方向の移動を規制する。このように、ブレーキスイッチ29をシリンダ37に固定する取付ネジ部材30でピストン77の抜け方向の移動を規制してピストン77を待機位置に停止させるため、部品点数増を抑制することができる。したがって、車両用マスタシリンダの製造効率を向上させることができる。また、部品コストおよび組立コストの増大を抑制することができる。さらに、取付ネジ部材30の取り付けのために必要な径方向孔58をシリンダ穴47内に開口する深さとすれば良いため、加工工数や加工精度管理の工数、加工コストの増大も抑制することができる。
【0059】
「第2実施形態」
次に、第2実施形態を主に
図6に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0060】
第2実施形態の車両用マスタシリンダ11Aでは、第1実施形態の取付ネジ部材30(
図5参照)に対して、一部構成が異なる取付ネジ部材30Aが用いられている。この取付ネジ部材30Aは、具体的には、第1実施形態の先端軸部107がなく、第1実施形態のネジ軸部106とは一部異なるネジ軸部106Aを有している。このネジ軸部106Aは、頭部105に対し反対側の先端部に、先端側ほど縮径する縮径外周面106Aaと、ネジ軸部106Aの中心軸に直交する先端面106Abとが形成されている。また、第2実施形態では、シリンダ37のシリンダ穴47内に配置されてピストン77のフランジ部92に当接する金属製のピストン当接部材130A(周方向部材)が設けられている。ピストン当接部材130Aは、例えば切削加工により形成されている。
【0061】
ピストン当接部材130Aは、円環状をなしている。ピストン当接部材130Aは、内周面130Aaが円筒面状をなしており、外周面130Abが円筒面状をなしている。ピストン当接部材130Aは、シリンダ軸方向の両側の端面130Acおよび端面130Adがシリンダ軸直交面に平行な平坦面となっている。ピストン当接部材130Aは、内側にピストン77の軸部93を挿通させながら口元穴部53内に挿入されることになる。この状態で、ピストン当接部材130Aは、シリンダ周方向に延びる円環状をなす。ピストン当接部材130Aは、端面130Ac,130Adの最小径が、ピストン77のフランジ部92の端面92cの最大径よりも小さくなっている。
【0062】
第2実施形態においては、予めピストン77にカップシール78(
図4参照)とカップシール79とブーツ80とを組み付ける際に、ピストン当接部材130Aをも組み付けておく。つまり、ピストン当接部材130Aをその内側に軸部93,94およびフランジ部95を挿入するようにしてピストン77に取り付ける。その後、予め剛性リング82がブーツ本体81に装着された状態のブーツ80の嵌合部115を、ピストン77の軸部93と軸部94とフランジ部95とからなる溝部分に嵌合させる。
【0063】
そして、可撓部116を嵌合部115からフランジ部92に対し反対側に延出した後、シリンダ径方向の外側に折り返されてフランジ部92側に延出する状態とし、嵌合部117でフランジ部92との間にピストン当接部材130Aを挟持する。このとき、ピストン当接部材130Aの一方の端面130Acをフランジ部92の端面92cに当接させ、他方の端面130Adを嵌合部117の嵌合部115に対し反対側の端面117aに当接させる。これにより、ピストン当接部材130Aがピストン77に仮組みされる。
【0064】
そして、シリンダ穴47へ戻しバネ76(
図4参照)を挿入し、カップシール78(
図4参照)とカップシール79とブーツ80とピストン当接部材130Aとが予め組み付けられた状態のピストン77をシリンダ穴47内へ挿入する。次に、治具によりピストン77およびブーツ80の嵌合部117を所定量押し込んで、これらを口元穴部53に対してシリンダ軸方向に位置決めする。
【0065】
このとき、ピストン当接部材130Aの端面130Acと外周面130Abとの境界角部を口元穴部53の縮径内周面53bに当接させて位置決めしても良い。また、ピストン当接部材130Aの端面130Acと外周面130Abとの境界に端面130Ac側ほど小径となる縮径外周面を形成して、この縮径外周面を口元穴部53の縮径内周面53bに当接させて位置決めしても良い。さらに、この縮径外周面で口元穴部53の縮径内周面53bへの接触を逃げて、端面130Acを口元穴部53の底面53cに当接させて位置決めしても良い。
【0066】
ピストン77およびピストン当接部材130Aを口元穴部53に対してシリンダ軸方向に位置決めした状態で、ブレーキスイッチ29を取付座54に配置し、取付ネジ部材30Aのネジ軸部106Aを径方向孔58に螺合させる。これにより、取付ネジ部材30Aがブレーキスイッチ29をシリンダ37に固定する。それとともに、取付ネジ部材30Aは、そのネジ軸部106Aの先端面106Abがピストン当接部材130Aの外周面130Abに当接して、この外周面130Abの他の部分を口元穴部53の内周面53aに押し付ける。その結果、ピストン当接部材130Aがシリンダ37に固定されることになる。
【0067】
このようにシリンダ37に取付ネジ部材30Aで固定されたピストン当接部材130Aは、端面130Acにフランジ部92の端面92cを全周にわたって当接させることにより、ピストン77のシリンダ穴47から抜ける方向の移動を規制する状態となる。フランジ部92がピストン当接部材130Aに当接させられる位置が、ブレーキレバー23が操作されない状態でのピストン77の待機位置となる。
【0068】
ここで、ピストン当接部材130Aは、シリンダ37の周方向に延びる部材であれば、円環状でなくても良く、例えば円環の一部を破断したC字状の部材であっても良い。
【0069】
以上に述べた第2実施形態によれば、取付ネジ部材30Aが、シリンダ37内に配置されてピストン77に当接するピストン当接部材130Aを介してピストン77の移動を規制することになる。このため、取付ネジ部材30で直接当接して移動を規制する場合と比べて、移動を規制する際にピストン77に当接する部分の面積を増やすことが容易に可能となる。つまり、ピストン当接部材130Aがシリンダ37の周方向に延びる形状であるため、移動を規制する際にピストン77に当接する部分の面積を増やすことができる。これにより、ピストン77の傷付きを抑制することができる。
【0070】
「第3実施形態」
次に、第3実施形態を主に
図7に基づいて第1,第2実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1,第2実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0071】
第3実施形態の車両用マスタシリンダ11Bでは、第1,第2実施形態の本体部材20(
図5,
図6参照)に対して一部構成が異なる本体部材20Bが用いられている。この本体部材20Bには、第1,第2実施形態の径方向孔58に対しシリンダ軸方向の形成位置が開口部48側にずれた径方向孔58Bが形成されている。これにより、本体部材20Bは、第1,第2実施形態のシリンダ37、シリンダ筒部45、シリンダ穴47、取付座54、突出座部56、口元穴部53および内周面53aに対して、径方向孔58とは位置が異なる径方向孔58Bが形成されたシリンダ37B、シリンダ筒部45B、シリンダ穴47B、取付座54B、突出座部56B、口元穴部53Bおよび内周面53Baを有している。
【0072】
第3実施形態では、上記に合わせて、第1,第2実施形態のブレーキスイッチ29(
図5,
図6参照)に対して一部構成が異なるブレーキスイッチ29Bが用いられている。つまり、このブレーキスイッチ29Bには、第1,第2実施形態の貫通穴113に対し形成位置がずれた貫通穴113Bが形成されている。これにより、ブレーキスイッチ29Bは、第1,第2実施形態のケース28および取付部111に対して、貫通穴113とは位置が異なる貫通穴113Bが形成されたケース28Bおよび取付部111Bを有している。
【0073】
第3実施形態では、第2実施形態の取付ネジ部材30A(
図6参照)に対して、一部構成が異なる取付ネジ部材30Bが用いられている。この取付ネジ部材30Bには、具体的には、第2実施形態のネジ軸部106Aよりも若干長いネジ軸部106Bが形成されている。このネジ軸部106Bは、第2実施形態の縮径外周面106Aaよりも長さが長い縮径外周面106Baと、第2実施形態の先端面106Abよりも径が小さい先端面106Bbとを有している。
【0074】
第3実施形態では、第2実施形態のピストン当接部材130A(
図6参照)に対して、一部構成が異なるピストン当接部材130Bが用いられている。このピストン当接部材130Bは、具体的には、第2実施形態のピストン当接部材130Aに対してシリンダ軸方向の厚さが薄くなっており、また、シリンダ軸方向における一側の外周部にシリンダ軸方向の先端側ほど縮径する傾斜面130Beを有する傾斜部131Bが形成されている。これらにより、ピストン当接部材130Bは、第2実施形態の内周面130Aaおよび外周面130Abよりもシリンダ軸方向の幅が狭い内周面130Baおよび外周面130Bbと、第1実施形態の端面130Acと同様の端面130Bcと、第1実施形態の端面130Adよりもシリンダ径方向の幅が狭い端面130Bdと、を有している。ピストン当接部材130Bは、少なくとも端面130Bcの最小径が、ピストン77のフランジ部92の端面92cの最大径よりも小さくなっている。
【0075】
第3実施形態においては、第2実施形態と同様に、予めピストン77にカップシール78(
図4参照)と、カップシール79と、ブーツ80と、ピストン当接部材130Bと、を組み付けておく。このとき、ピストン当接部材130Bは、傾斜面130Beと端面130Bdとがピストン77のフランジ部92とは反対側に向くようにして組み付けられる。
【0076】
そして、シリンダ穴47Bへ戻しバネ76(
図4参照)を挿入し、カップシール78(
図4参照)と、カップシール79と、ブーツ80と、ピストン当接部材130Bと、が予め組み付けられた状態のピストン77をシリンダ穴47B内へ挿入する。そして、治具によりピストン77およびブーツ80の嵌合部117を所定量押し込んで、ピストン当接部材130Bを径方向孔58Bの開口部48とは反対側の所定位置に位置決めする。
【0077】
このとき、ピストン当接部材130Bの端面130Bcと外周面130Bbとの境界角部を口元穴部53Bの縮径内周面53bに当接させて位置決めしても良い。また、ピストン当接部材130Bの端面130Bcと外周面130Bbとの境界に端面130Bc側ほど小径となる縮径外周面を形成して、この縮径外周面を口元穴部53Bの縮径内周面53bに当接させて位置決めしても良い。さらに、この縮径外周面で口元穴部53Bの縮径内周面53bへの接触を逃げて、端面130Bcを口元穴部53Bの底面53cに当接させて位置決めしても良い。
【0078】
ピストン77およびピストン当接部材130Bを口元穴部53Bに対してシリンダ軸方向に位置決めした状態で、ブレーキスイッチ29Bを取付座54Bに配置し、取付ネジ部材30Bのネジ軸部106Bを径方向孔58Bに螺合させて、ブレーキスイッチ29Bをシリンダ37Bに固定する。
【0079】
すると、取付ネジ部材30Bの縮径外周面106Baがピストン当接部材130Bの傾斜部131Bの傾斜面130Beに対し、シリンダ径方向の位置を重ね合わせてシリンダ軸方向の開口部48側に隣り合う状態となる。これにより、取付ネジ部材30Bは、縮径外周面106Baがピストン当接部材130Bの傾斜面130Beと当接することで、ピストン当接部材130Bのそれ以上のシリンダ37Bからの抜け方向の移動を規制することになる。
【0080】
そして、このように取付ネジ部材30Bでシリンダ37Bからの抜け方向の移動が規制された状態のピストン当接部材130Bは、その端面130Bcにフランジ部92の端面92cを全周にわたって当接させることにより、ピストン77のシリンダ穴47Bから抜ける方向の移動を規制する状態となる。取付ネジ部材30Bに当接するピストン当接部材130Bにフランジ部92が当接させられる位置が、ブレーキレバー23が操作されない状態でのピストン77の待機位置となる。取付ネジ部材30Bのネジ軸部106Bを径方向孔58Bに螺合させると、取付ネジ部材30Bの縮径外周面106Baがブーツ80の嵌合部117を開口部48側に押圧して移動させることになる。
【0081】
ここで、ブレーキスイッチ29Bの固定時に、取付ネジ部材30Bの縮径外周面106Baでピストン当接部材130Bの傾斜部131Bの傾斜面130Beを押圧するようにしても良い。そして、この押圧により、ピストン当接部材130Bの端面130Bcと外周面130Bbとの境界角部を口元穴部53Bの縮径内周面53bに押し付け、外周面130Bbを口元穴部53Bの内周面53Baに押し付けるようにしても良い。このようにすれば、取付ネジ部材30Bがブレーキスイッチ29Bをシリンダ37Bに固定する際に、ピストン当接部材130Bをもシリンダ37Bに対し位置決めして移動不可に固定することになる。
【0082】
この場合、ピストン当接部材130Bの端面130Bcと外周面130Bbとの境界に端面130Bc側ほど小径となる縮径外周面を形成して、この縮径外周面を口元穴部53Bの縮径内周面53bに当接させて位置決め固定しても良い。さらに、この縮径外周面で口元穴部53Bの縮径内周面53bとの接触を逃げるようにして、端面130Bcを口元穴部53Bの底面53cに当接させて位置決め固定するようにしても良い。
【0083】
ピストン当接部材130Bも、シリンダ37Bの周方向に延びる部材であれば、円環状でなくても良く、例えば円環の一部を破断したC字状の部材であっても良い。
【0084】
以上に述べた第3実施形態によれば、ピストン当接部材130Bが、シリンダ周方向に延びており、ピストン当接部材130Bの一端側がピストン77に当接するとともに、取付ネジ部材30Bに当接する部分には、ピストン当接部材130Bの他端側かつシリンダ径方向の内方に向かって伸びる傾斜面130Beを有する傾斜部131Bが形成されている。よって、取付ネジ部材30Bがシリンダ径方向にピストン当接部材130Bと重なることになる。したがって、取付ネジ部材30Bに多少の緩みが生じてもピストン当接部材130Bが取付ネジ部材30Bを越えて移動してしまうことを抑制できる。
【0085】
また、ピストン当接部材130Bは傾斜部131Bを有している。そのため、ピストン当接部材130Bを取付ネジ部材30Bに対して、シリンダ径方向に重なるようにしても、シリンダ軸方向にピストン当接部材130Bと取付ネジ部材30Bとが重なる長さを長くできる。よって、シリンダ37Bの軸方向の長大化を抑制できる。加えて、ピストン当接部材130Bを、そのシリンダ軸方向の移動を規制して位置決めすることが可能となる。
【0086】
「第4実施形態」
次に、第4実施形態を主に
図8に基づいて第1〜第3実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1〜第3実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0087】
第4実施形態の車両用マスタシリンダ11Cでは、第3実施形態と同様の本体部材20Bとブレーキスイッチ29Bと取付ネジ部材30Bとが用いられている。
【0088】
第4実施形態では、第1〜第3実施形態のブーツ80(
図5〜
図7参照)とは一部構成が異なるブーツ80Cが用いられている。このブーツ80Cは、第1〜第3実施形態のブーツ本体81とは一部異なるブーツ本体81C(可撓性保護部材)を有している。このブーツ本体81Cは、ブーツ本体81と同様にシリンダ37Bの開口部48側を覆って保護するものであり、第1〜第3実施形態の可撓部116よりも長い可撓部116Cと、第1〜第3実施形態の嵌合部117とは異なる嵌合部117Cとを有している。嵌合部117Cは、シリンダ軸方向に並んでシリンダ径方向の外方に突出する円環状の外側突条部151C,152Cと、可撓部116とは反対側の外側突条部151Cとシリンダ軸方向の位置を合わせてシリンダ径方向の内方に突出する円環状の内側突条部153Cとを有している。そして、ブーツ80Cは、この嵌合部117Cに取り付けられるピストン当接部材130Cを有している。
【0089】
ピストン当接部材130Cは、金属板が曲げ加工されることにより形成されるもので、内筒部161Cと湾曲筒部162Cと端板部163Cと湾曲筒部164Cと外筒部165Cとテーパ筒部166C(傾斜部)とを有する円環状をなしている。内筒部161Cは、円筒状をなしている。湾曲筒部162Cは、内筒部161Cのシリンダ軸方向における一側の端縁部からシリンダ軸方向の外側に外側ほど大径となるように湾曲しつつ延出している。端板部163Cは、湾曲筒部162Cの大径側の端縁部からシリンダ径方向の外方に延出しており、内筒部161Cの中心軸に直交する面に平行をなす平坦な板状をなしている。湾曲板部164Cは、端板部163Cの外周縁部から外側ほどシリンダ軸方向の内筒部161Cと同側に位置するように湾曲しつつ延出している。外筒部165Cは、円筒状をなしており、湾曲板部164Cの端板部163Cに対し反対側の端縁部から端板部163Cから離れる方向に延出している。テーパ筒部166Cは、外筒部165Cの湾曲筒部164Cに対し反対側の端縁部から端板部163Cから離れる方向に延出しており、延出先端側ほど小径となっている。
【0090】
ピストン当接部材130Cには、これら内筒部161C、湾曲筒部162C、端板部163C、湾曲筒部164C、外筒部165Cおよびテーパ筒部166Cの内側に、円環状の嵌合溝167Cが形成されている。嵌合溝167Cは、内筒部161Cとテーパ筒部166Cとの間が外部に開口している。
【0091】
そして、この嵌合溝167Cに、内筒部161Cとテーパ筒部166Cとの間の開口を介してブーツ本体81Cの嵌合部117Cが嵌合されている。その際に、嵌合部117Cは、内側突条部153Cを内筒部161Cおよび湾曲筒部162Cに当接させ、外側突条部151Cを湾曲筒部164Cおよび外筒部165Cに当接させ、外側突条部152Cを外筒部165Cおよびテーパ筒部166Cに当接させている。これにより、ピストン当接部材130Cが、一側の嵌合部115がピストン77に保持されるブーツ本体81Cの他端の嵌合部117Cに保持される。ピストン当接部材130Cは、内筒部161Cの内側にピストン77を挿通させながら口元穴部53B内に挿入されることになる。ピストン当接部材130Cは、この状態でシリンダ周方向に延びる円環状をなす。
【0092】
内筒部161Cの内周面161Caは円筒面状をなしており、外筒部165Cの外周面165Caも円筒面状をなしている。シリンダ軸方向の一側の端板部163Cのシリンダ軸方向の外側の端面163Caはシリンダ軸直交面に平行な平坦面となっている。テーパ筒部166Cのシリンダ径方向の外側は、端面163Caから離れるほど縮径しシリンダ径方向の内方に向かって延びるテーパ面状の縮径外周面166Caとなっている。これら内周面161Ca、端面163Ca、外周面165Caおよび縮径外周面166Caは、同軸状をなしている。ピストン当接部材130Cは、少なくとも端面163Caの最小径が、ピストン77のフランジ部92の端面92cの最大径よりも小さくなっている。
【0093】
第4実施形態においては、第2実施形態と同様に、予めピストン77にカップシール78(
図4参照)とカップシール79とブーツ80Cとを組み付けておく。このとき、ピストン当接部材130Cとブーツ本体81Cとを別々の状態としておき、ピストン当接部材130Cを先に、テーパ筒部166Cがフランジ部92とは反対側に向くようにしてその内側にピストン77の軸部93,94およびフランジ部95を挿入してピストン77にブーツ80Cが配置される。その後、ブーツ本体81Cの嵌合部115を、ピストン77の軸部93と軸部94とフランジ部95とからなる溝部分に嵌合させる。
【0094】
次に、可撓部116Cを嵌合部115からフランジ部92に対し反対側に延出した後、シリンダ径方向の外側に折り返されてフランジ部92側に延出する状態とし、嵌合部117Cを予め取り付けられているピストン当接部材130Cの嵌合溝167Cに嵌合させる。
【0095】
そして、シリンダ穴47Bへ戻しバネ76(
図4参照)を挿入し、カップシール78(
図4参照)とカップシール79とピストン当接部材130Cを含むブーツ80Cとが予め組み付けられた状態のピストン77をシリンダ穴47B内へ挿入する。治具によりピストン77およびピストン当接部材130Cを所定量押し込んで、ピストン当接部材130Cを径方向孔58Bの開口部48とは反対側の所定位置に位置決めする。このとき、ピストン当接部材130Cの端面163Caを口元穴部53Bの底面53cに当接させて位置決めしても良い。
【0096】
ピストン当接部材130Cを口元穴部53Bに対してシリンダ軸方向に位置決めした状態で、ブレーキスイッチ29Bを取付座54Bに配置し、取付ネジ部材30Bのネジ軸部106Bを径方向孔58Bに螺合させて、ブレーキスイッチ29Bをシリンダ37Bに固定する。
【0097】
すると、取付ネジ部材30Bの縮径外周面106Baがピストン当接部材130Cのテーパ筒部166Cの縮径外周面166Caに対し、シリンダ径方向の位置を重ね合わせてシリンダ軸方向の開口部48側に隣り合う状態となる。これにより、取付ネジ部材30Bは、縮径外周面106Baがピストン当接部材130Cのテーパ筒部166Cの縮径外周面166Caと当接することで、ピストン当接部材130Cのシリンダ37Bからの抜け方向の移動を規制することになる。
【0098】
そして、このように取付ネジ部材30Bでシリンダ37Bからの抜け方向の移動が規制された状態のピストン当接部材130Cは、端面163Caにフランジ部92の端面92cを全周にわたって当接させることにより、ピストン77のシリンダ穴47Bから抜ける方向の移動を規制する状態となる。取付ネジ部材30Bに当接するピストン当接部材130Cにフランジ部92が当接させられる位置が、ブレーキレバー23が操作されない状態でのピストン77の待機位置となる。
【0099】
ここで、ブレーキスイッチ29Bの固定時に、取付ネジ部材30Bの縮径外周面106Baでピストン当接部材130Cのテーパ筒部166Cの縮径外周面166Caを押圧するようにしても良い。そして、この押圧により、ピストン当接部材130Cの端面163Caを口元穴部53Bの底面53cに押し付け、外周面165Caを口元穴部53Bの内周面53Baに押し付けるようにしても良い。このようにすれば、取付ネジ部材30Bがブレーキスイッチ29Bをシリンダ37Bに固定する際に、ピストン当接部材130Cをもシリンダ37Bに対し位置決めして移動不可に固定することになる。
【0100】
ピストン当接部材130Cも、シリンダ37Bの周方向に延びる部材であれば、円環状でなくても良く、例えば円環の一部を破断したC字状の部材であっても良い。また、ピストン当接部材130Cに、テーパ筒部166Cから端板部163Cとは反対方向に拡径しつつ延出する部分を設け、この部分の外周側にブーツ本体のシリンダ内側の端部を嵌合させるようにしても良い。
【0101】
以上に述べた第4実施形態によれば、ピストン当接部材130Cが、一側がピストン77に保持されてシリンダ37Bの開口部48側を覆うブーツ本体81Cの他側を保持する。このため、ピストン当接部材130Cを取付ネジ部材30Bでシリンダ37Bに取り付けることで、ブーツ本体81Cの他側をシリンダ37Bに取り付けることができる。よって、ブーツ本体81Cでシリンダ37Bの開口部48側を良好に保護することができる。
また、剛性のあるピストン当接部材130Cがブーツ本体81Cの他側の形状を保持するため、剛性リングが不要となる。
【0102】
以上の実施形態は、操作子の操作によって推進させられるピストンと、前記ピストンが移動可能に設けられるシリンダと、を有する車両用マスタシリンダにおいて、前記シリンダには、前記シリンダに形成された径方向孔に挿通されて前記シリンダに対する前記ピストンの移動を規制する移動規制部材が設けられ、前記移動規制部材は、前記操作子の操作を検出する検出部材を前記シリンダに固定する。
これにより、検出部材をシリンダに固定するための移動規制部材でピストンの移動を規制するため、部品点数増を抑制することができる。したがって、車両用マスタシリンダの製造効率を向上させることができる。また、部品コストおよび組立コストの増大を抑制することができる。さらに、移動規制部材の取り付けのための必要な径方向孔を用いるため、加工コストの増大も抑制することができる。
【0103】
前記移動規制部材は、前記シリンダ内に配置されて前記ピストンに当接するピストン当接部材を介して前記ピストンの移動を規制する。これにより、移動規制部材で直接当接して移動を規制する場合と比べて、移動を規制する際にピストンに当接する部分の面積を増やすことが容易に可能となる。これにより、ピストンの傷付きを抑制することができ、製品としての信頼性が向上する。
【0104】
前記ピストン当接部材は、前記シリンダの周方向に延びる周方向部材(環状、C字状でも可)であって、前記ピストン当接部材の一端側が前記ピストンに当接するとともに、前記移動規制部材に押圧される部分には、前記ピストン当接部材の他端側かつシリンダ径方向の内方に向かって伸びる傾斜部が形成されている。これにより、移動規制部材が径方向孔において抜け方向に多少位置がずれることがあってもピストン当接部材が移動規制部材を越えて移動してしまうことを抑制できる。
【0105】
前記ピストン当接部材は、一側が前記ピストンに保持されて前記シリンダの開口側を覆う可撓性保護部材の他側を保持する。このため、ピストン当接部材を移動規制部材でシリンダに取り付けることで、可撓性保護部材の他側をシリンダに取り付けることができる。
よって、可撓性保護部材でシリンダの開口部側を良好に保護することができる。