(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192295
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】野菜フレーバー
(51)【国際特許分類】
A23L 27/10 20160101AFI20170828BHJP
【FI】
A23L27/10 C
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-532594(P2012-532594)
(86)(22)【出願日】2010年10月7日
(65)【公表番号】特表2013-507112(P2013-507112A)
(43)【公表日】2013年3月4日
(86)【国際出願番号】EP2010065006
(87)【国際公開番号】WO2011042499
(87)【国際公開日】20110414
【審査請求日】2013年8月28日
【審判番号】不服2015-12692(P2015-12692/J1)
【審判請求日】2015年7月3日
(31)【優先権主張番号】09172552.3
(32)【優先日】2009年10月8日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】09178006.4
(32)【優先日】2009年12月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100139000
【弁理士】
【氏名又は名称】城戸 博兒
(74)【代理人】
【識別番号】100152191
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 正人
(72)【発明者】
【氏名】コーテス, ジャン, ゲリット
【合議体】
【審判長】
千壽 哲郎
【審判官】
佐々木 正章
【審判官】
山崎 勝司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平8−154620(JP,A)
【文献】
特開2002−345431(JP,A)
【文献】
特開2001−8620(JP,A)
【文献】
特開平11−75760(JP,A)
【文献】
特開平9−271373(JP,A)
【文献】
米国特許第5320862(US,A)
【文献】
英国特許出願公告第1303807(GB,A)
【文献】
国際公開第01/30179(WO,A1)
【文献】
特開平7−87922(JP,A)
【文献】
特開2007−259744(JP,A)
【文献】
米国特許第4741914(US,A)
【文献】
特開昭61−185164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)40%w/w〜94%w/wの野菜、油ならびに酵母抽出物および/または酵母自己溶解物を含んでなる組成物を調製するステップと、
b)前記組成物を、100℃から160℃の温度で押し出し機内で密接混合するステップと、
を含んでなる、ロースト野菜フレーバーを製造する方法であって、
前記野菜がニンニクまたはタマネギであり、前記ロースト野菜フレーバーがローストニンニクフレーバーまたはローストタマネギフレーバーであり、
前記酵母抽出物および/または酵母自己溶解物が、サッカロミセス(Saccharomyces)属またはトルラ(Torula)属に属する酵母株から生成されたものである、方法。
【請求項2】
前記野菜が粉末の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップb)の前または最中の前記組成物の含水量が、前記組成物の総重量を基準にして1%〜8%w/wである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記酵母抽出物または前記酵母自己溶解物が、塩化ナトリウム非含有乾燥物質の少なくとも0.75%w/wの5’−GMPを含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記酵母自己溶解物が50%〜95%の乾燥固体比を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ローストニンニクフレーバーまたはローストタマネギフレーバーであるロースト野菜フレーバーの食品を調製する方法であって、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法によって前記ロースト野菜フレーバーを製造するステップと、
当該製造されたロースト野菜フレーバーを、最終濃度が前記食品の0.1%w/w未満になる量で食品に添加するステップと、を含んでなる、方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、野菜フレーバー、それを製造する方法、食品中での使用に関する。
【0002】
[背景技術]
天然野菜フレーバーは、食品に野菜フレーバーを提供するために食品工業で広く使用されている。食品に添加される野菜フレーバーの量は、用途に左右される。例えばスナック、ピザ、またはポテトクリスプなどの乾燥用途では、食品に添加される野菜フレーバーの量は、一般にスープやブイヨンなどの液体用途における量よりも多い。野菜フレーバーは、野菜それ自体または加工野菜であってもよい。加工としては、例えばフレーバーに安定性を提供するための乾燥、または細断、または双方の組み合わせが挙げられる。天然野菜フレーバーを製造する一般的な方法は、例えばタマネギまたはニンニクなどの野菜を細断または細切りするステップと、細断または細切り野菜を乾燥するステップを含む。より高い乾燥温度は、焦げた異臭の形成をもたらすことが多いので、乾燥は典型的に50℃未満の比較的低温で実施しなくてはならない。発展途上国では、乾燥は天日で実施されることが多い。しかしより洗練された方法では、乾燥は、オーブン内、ベルト乾燥機内、またはローラードラム上で実施されることが多い。野菜を真空内で乾燥させると、それらのフレーバーはより濃縮されてロースト風味になる。しかし真空下での乾燥は、最初に野菜液またはペーストを調製し、次にそれを真空内で乾燥させることを必要とする。その結果、この方法には時間がかかる。さらに上述の野菜フレーバーの強度または濃度は、ある食品を得るために、所望の野菜フレーバーを相対的に多量に食品に添加しなくてはならないような濃度であり、それは経済的でなく、食品の元の味覚とテクスチャに影響を及ぼすかもしれない。
【0003】
本発明の目的は、より濃縮された野菜フレーバーを提供することである。本発明の別の目的は、濃縮野菜フレーバーを製造する単純で堅牢な方法を提供することである。
【0004】
[発明の説明]
本発明の第1の態様では、濃縮野菜フレーバーであって、濃縮野菜フレーバーは所望の野菜フレーバーの食品を得るための濃度であり、最終濃度が食品の0.1%w/w未満になる量で前記食品に添加される、濃縮野菜フレーバーが提供される。
【0005】
本発明の文脈で「濃縮」とは野菜フレーバーの強度を指す。野菜フレーバーがより濃縮されているほど、すなわち野菜フレーバーがより強力であるほど、所望の野菜フレーバーの食品を得るために食品に添加される前記野菜フレーバーは、より少くて済む。より少ない本発明の濃縮野菜フレーバーを添加することは、本発明の濃縮野菜フレーバーを添加した後に、より心地よい視覚的外観および/またはより良い口当たりおよび/またはよりオーセンティックなフレーバーがある食品をもたらし得るので、有利かもしれない。
【0006】
本発明の濃縮野菜フレーバーは、好ましくは食品の所望の野菜フレーバーを増強しまたは与えるのに適し、例えば前記濃縮野菜フレーバーを添加しまたは食品既存の野菜フレーバーを増強する前には食品に欠けている野菜フレーバーを与える。本発明の濃縮野菜フレーバーは高度に濃縮されており、すなわち食品または飼料フレーバーは非常に強力であるので、本発明の濃縮野菜フレーバーの食品への少量の添加は、所望の野菜フレーバーを提供するのに既に十分であるかもしれない。本発明の濃縮野菜フレーバーは非常に強力であるため、それは好ましくは未希釈での消費に適さない。好ましい実施態様では、本発明の濃縮野菜フレーバーは、所望の野菜フレーバーの食品を得るために、食品および濃縮野菜フレーバーの総重量を基準にして、0.05%w/w未満、0.04%w/w、なおもより好ましくは0.03%未満、0.02%w/w、最も好ましくは0.015%w/w未満の最終濃度になる量で、本発明の濃縮野菜フレーバーが前記食品に添加されるような濃度である。本発明の濃縮野菜フレーバーのフレーバー濃度は、当業者、例えば料理人または主婦、またはそれらからなるなるパネル、または訓練された人々のパネルによって容易に設定されてもよい。
【0007】
野菜フレーバーは、あらゆる野菜フレーバーであってもよい。野菜フレーバーの例は、タマネギ、ニンニク、セイヨウネギ、ニンジン、アブラナ属、ショウガ、およびバスリン(baslin)フレーバーである。好ましくは濃縮野菜フレーバーは、ニンニクフレーバーまたはタマネギフレーバーである。濃縮野菜フレーバーは、好ましくはロースト濃縮野菜フレーバーである。
【0008】
本発明の濃縮野菜フレーバーは、スープ、ブイヨン、およびソースなどの液体食品に香り付けするために、または肉、パスタ、野菜、ポテトクリスプまたはチップ、スナック、豆腐などの肉代替品、発酵ダイズ製品、アジア食品およびそのための調味料などの非液状食品に香り付けするために使用してもよい。本発明の濃縮野菜フレーバーは希釈濃度で既に効果的であり、したがって用途において対費用効果の高い様式で使用してもよい。本発明の濃縮野菜フレーバーはコーシャおよび/またはハラールであってもよく、菜食主義者および完全菜食主義者による消費に適していてもよい。本発明の濃縮野菜フレーバーは、天然とラベル表示されてもよい。本発明の濃縮野菜フレーバーは、即席食品に添加されても、または例えばピザなどの凍結食材、または生地またはねり粉などの調製途中の食品に添加されてもよい。本発明の濃縮野菜は、それ自体が野菜フレーバーを既に有する食品または飼料の野菜フレーバーを増強するために、食品および飼料に添加されてもよい。
【0009】
別の態様では、本発明は、
a)野菜および油を含んでなる組成物を調製するステップと、
b)組成物を濃縮野菜フレーバーが発生するのに十分な温度および反応時間条件下で密接混合するステップ
を含んでなる、濃縮野菜フレーバーを製造する方法を提供する。
【0010】
本発明の文脈で「密接混合」は、あらゆる混合形態を含んでもよい。それとしては、撹拌、混練、および圧搾が挙げられる。密接混合は、好ましくは大気圧を超える圧力で実施される。
【0011】
一実施態様では、野菜は細断野菜である。本発明の文脈で「細断」とは、野菜を粉々にして野菜それ自体よりも小さい複数の粒子にする、あらゆる物理的方法を含む。細断野菜は、粉砕、押し出し、挽き割り、細切り、圧延、切断、およびすりつぶし野菜を含むものと理解される。このようにして形成された細断野菜粒子は、粉末、顆粒、フレーク、またはペレットの形態であってもよい。細断野菜は無傷の野菜よりも高い表面/内容物比を有する。野菜の高い表面/内容物比はステップb)の密接混合を可能にするので、それは本発明の方法にとって重要かもしれないと考えられる。したがって野菜は、好ましくは粉末の形態である。なおもより好ましくは野菜粉末は、野菜ジュース粉末である。ジュース粉末は、例えば圧搾によって野菜から液体を抽出し、前記画分を乾燥させて粉末を得ることによって得られる。野菜ジュース粉末は野菜粉末とは異なり、前者は繊維がわずかまたは皆無である。繊維の不在によって、野菜ジュース粉末は、粉末の使用と比較して、なおもより濃縮な野菜フレーバーを製造するのに適するかもしれない。さらに繊維の不在は、本発明の方法で使用するのに有利かもしれない。例えば押し出しを使用する場合、繊維の不在は目詰まりを防止して、濃縮野菜フレーバーのより高い製造速度(例えばkg/h)をもたらし得る。
【0012】
野菜は、好ましくは上で本発明の濃縮野菜フレーバーのために定義された野菜である。野菜は好ましくは乾燥野菜である。本発明の文脈で「乾燥」とは、野菜総重量を基準にして、15%w/w未満、より好ましくは12%w/w未満、10%w/w、なおもより好ましくは8%w/w未満の含水量を有することと定義される。乾燥野菜は、より濃縮されたフレーバーがある野菜フレーバーをもたらし得る。野菜は乾燥されてもよく、例えばオーブン内でまたは天日で乾燥された野菜であってもよい。一実施態様では、本発明の方法の組成物の野菜それ自体が野菜フレーバーである。野菜は、例えばニンニクまたはタマネギなどの単一野菜であってもよい。野菜はまた、例えばタマネギおよびニンニク、またはタマネギおよびニンニクおよびセイヨウネギなどの2、3、4種以上の野菜の混合物であってもよい。本発明の方法において2種以上の野菜を使用することで、当業者はフレーバーを調製してもよい。
【0013】
組成物中の野菜の量は、好ましくは10〜100%w/w、より好ましくは20〜98%w/w、より好ましくは30〜96%、なおもより好ましくは40〜94%w/w、なおもより好ましくは50〜92%w/w、最も好ましくは60〜90%w/wである。
【0014】
組成物の油は、あらゆる食用油であってもよい。本発明の文脈で、「油」はグリセロールと少なくとも1つの脂肪酸とのエステルと定義される。油は通常の室温において、固体または液体のどちらであってもよい。油は脂肪および脂質を含むものと理解される。油という用語は、一般に通常の室温において液体である脂肪酸グリセロールエステルのために使用されるのに対し、脂肪という用語は、通常の室温で固体の脂肪酸グリセロールエステルを指すのに使用される。油は、モノ、ジ、および/またはトリグリセリドであってもよい。モノ、ジ、および/またはトリグリセリドの組み合わせもまた、本発明の範囲に入る。好ましい実施態様では、油はゴマ油である。油は、有利には工程がより安定するように工程を滑らかにしてもよい。
【0015】
好ましい実施態様では、本発明の方法のステップb)のインキュベーション温度は、100℃〜160℃、好ましくは110〜150℃、より好ましくは120〜130℃である。インキュベーション温度が例えば100℃未満など、低すぎる場合、生成する野菜フレーバーは濃縮されないかもしれない。インキュベーション温度が高すぎる場合(例えば>160℃)、生成する野菜フレーバーは焦げた異臭を有するかもしれない。
【0016】
本発明に従った方法のステップb)の前またはその最中の組成物の含水量は、好ましくは組成物総重量を基準にして1%〜8%w/wである。本発明に従った方法のステップb)の前またはその最中の組成物の含水量は、所望のフレーバー、特にフレーバーの所望の濃度を得るために重要かもしれない。組成物の含水量が例えば8%を超えるなど、高すぎる場合、野菜フレーバーの濃度は低すぎるかもしれず、または押し出し機内の処理量が低下しまたは停止するかもしれない。含水量が例えば1%未満など、低すぎる場合、焦げた異臭が生じるかもしれない。
【0017】
当業者は、本発明の方法のステップb)のインキュベーション時間が、インキュベーション温度、ならびにステップb)中のまたはその前の組成物の含水量、および所望の濃縮野菜フレーバーに左右され、1秒間から1週間の範囲であってもよいことを理解するであろう。より高いインキュベーション温度では、所望の濃縮野菜フレーバーを得るために、インキュベーション時間がより短かくてもよいのに対し、より低いインキュベーション温度では、所望の濃縮野菜フレーバーを得るために、インキュベーション時間はより長くてもよい。同様に、より低い含水量ではインキュベーション時間がより短くてもよいのに対し、より高い含水量ではインキュベーション時間はより長くてもよい。したがって当業者は、所望の濃縮野菜フレーバーを得るための温度、時間、および含水量に関する適切な条件を過度の負担なしに確立してもよい。
【0018】
好ましい実施態様では、本発明の方法で使用される組成物は、酵母抽出物および/またはまたは(and/or or)酵母自己溶解物を含んでなる。Food Chemical Codexは、「酵母抽出物」を次のように定義する。「酵母抽出物は、酵母細胞の水溶性構成要素を含んでなり、その組成物は、主としてアミノ酸、ペプチド、炭水化物、および塩である。酵母抽出物は、食用酵母中に存在する天然酵素による、または食品等級酵素の添加による、ペプチド結合の加水分解を通じて生成する」。酵母抽出物は、例えばパン用酵母、ビール酵母またはワイン酵母などのあらゆるタイプの食品等級酵母から生成されてもよい。好ましくは、酵母抽出物は、サッカロミセス(Saccharomyces)、クリヴェロミセス(Kluyveromyces)、カンジダ(Candida)またはトルラ(Torula)属に属する酵母株から生成される、使用される(is used)。Food Chemical Codexは「自己溶解酵母」を「食品等級酵母から得られる濃縮された非抽出部分的可溶性消化物。可溶化は、酵母細胞の酵素加水分解または自己消化によって達成される。食品等級塩および酵素が添加されてもよい。自己溶解した酵母は、酵母細胞全体に由来する可溶性および不溶性双方の構成要素を含有する。それは主としてアミノ酸、ペプチド、炭水化物、脂肪、および塩から構成される」と定義する。好ましい実施態様では、酵母抽出物または酵母自己溶解物は、サッカロミセス(Saccharomyces)属に属する酵母株、すなわちサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)から生成される。酵母抽出物および/または酵母自己溶解物を本発明の方法のステップb)の前またはその最中に組成物に添加することで、ふくよかでよりバランスの取れたおよび/またはより濃厚なロースト野菜フレーバーを有する組成物をもたらしてもよく、または食品に添加した後に、ふくよかでよりバランスの取れたおよび/またはより濃厚なロースト野菜フレーバーを有する食品をもたらし得る組成物をもたらしてもよい。
【0019】
好ましくは酵母自己溶解物は、50%〜95%の乾燥固体比を有する。乾燥固体比が50%〜95%の酵母自己溶解物を生成する方法は、国際公開第2009/007424号パンフレットに記載される。
【0020】
好ましい実施態様では、酵母抽出物または酵母自己溶解物は、塩化ナトリウム非含有乾燥物質の少なくとも0.75%w/wの5’−GMPを含んでなる。5’−IMPおよび5’−GMPは、それらのフレーバー増強特性について知られている。好ましくは酵母抽出物または酵母自己溶解物は、少なくとも1%w/wの5’−GMP、より好ましくは少なくとも1.5%w/wの5’−GMP、より好ましくは少なくとも2%のw/wを含んでなり、最も好ましくは酵母抽出物または酵母自己溶解物は、塩化ナトリウム非含有乾燥物質の少なくとも2.5%w/wの5’−GMPを含んでなる。
【0021】
5’−リボヌクレオチドの重量百分率の計算は、特に断りのない限り、その二ナトリウム塩七水和物を基準にする。全ての百分率は、塩化ナトリウム非含有乾燥物質に対して計算される。酵母抽出物または酵母自己溶解物中の5’−リボヌクレオチドの重量百分率(%w/w)は、組成物のNaCl非含有乾燥物質重量を基準にして、二ナトリウム塩七水和物(2Na.7Aq)として計算される。「塩化ナトリウム非含有乾燥物質」という語句は、重量百分率の計算のために、本発明の酵母抽出物または酵母自己溶解物から、あらゆる存在する塩化ナトリウムの重量が除外されているという事実を指す。組成物中の塩化ナトリウムの測定および上述の計算は、当業者に知られている方法により実施し得る。
【0022】
好ましくは、酵母抽出物または酵母自己溶解物は、塩化ナトリウム非含有乾燥物質の少なくとも0,75%w/wの5’−IMP、より好ましくは少なくとも1%w/wの5’−IMP、より好ましくは少なくとも1.5%w/wの5’−IMP、より好ましくは少なくとも2%w/wの5’−IMPを含んでなり、最も好ましくは本発明の酵母自己溶解物は、塩化ナトリウム非含有乾燥物質の少なくとも2.5%w/wの5’−IMPを含んでなる。酵母抽出物または酵母自己溶解物が、5’−GMPと5’−IMPの双方を上述の濃度で含んでなることが高度に好ましいことは、当業者によって理解されるであろう。
【0023】
好ましい実施態様では、本発明の方法のステップb)の密接混合は、押し出し機内で実施される。押し出し機は、二軸押し出し機などの加工香料の製造に適したあらゆるタイプの押し出し機であってもよい。例えば二軸押し出し機などの押し出し機については、当該技術分野で知られている。押し出し機はあらゆる容量を有してもよく、容量は組成物が占めてもよい押し出し機内部の最大容量である。好ましくは容量は1g〜1000kgである。より好ましくは容量は5g〜100kg、より好ましくは10g〜10kgである。同一または別の供給口を通じて、ステップa)の組成物を押し出し機内に導入し、任意選択で水および/または油を導入してもよい。濃縮野菜フレーバーは、押し出し機外で、減圧(例えば5ミリバール)から大気圧(例えばおよそ1バール)に変動する圧力で押し出し機を出てもよい。本発明の方法によって生成される濃縮野菜フレーバーは、冷却ベルトまたは当該技術分野で知られているあらゆるその他の方法を使用して、さらに冷却および/または乾燥させ得る。本発明に従った方法がその中でより再現可能でありおよび/または安定していてもよいことから、押し出し機は有利かもしれない。また連続プロセスを可能にしてもよいことから、本発明の方法のステップb)で押し出し機を使用することも有利かもしれず、それは濃縮野菜フレーバーを有する組成物のより高い工程当たり収率をもたらし得る。本発明の方法のステップb)においてより高い圧力および/または加工温度が得られてもよいことから、本発明の方法のステップb)における押し出し機の使用は有利かもしれない。さらに密接混合を可能にしてもよいことから、押し出し機の使用は有利であるかもしれない。また濃縮野菜フレーバーを有する均質な組成物、すなわち押し出し機を出る製品全体に濃縮野菜フレーバーが均質に分布する野菜フレーバーをもたらし得ることから、本発明の方法のステップb)における押し出し機の使用は有利かもしれない。また本発明の方法のステップb)における押し出し機の使用は、例えば新鮮野菜、オーブン乾燥野菜、真空オーブン乾燥野菜、ベルト乾燥野菜、真空下で乾燥させたベルト乾燥野菜、またはロールドラム乾燥野菜の野菜フレーバーと比較して、より濃縮された野菜フレーバーを有利にもたらし得る。また濃縮野菜フレーバーを有する組成物が易流動性になるかもしれないことから、本発明の方法のステップb)における押し出し機の使用は有利かもしれない。また単純であることから、本発明の方法のステップb)における押し出し機の使用は有利かもしれない。またローストフレーバーをもたらしてもよく、すなわち本発明の方法によって生成される濃縮野菜フレーバーがロースト濃縮野菜フレーバーであることから、本発明の方法のステップb)における押し出し機の使用は有利かもしれない。
【0024】
別の態様では本発明は、本発明の方法によって得られる濃縮野菜フレーバーを提供する。
【0025】
本発明の方法によって得られる野菜フレーバーは、野菜フレーバーの強度が等しい食品を得るために、食品に添加される、本発明の方法によって生成されない野菜フレーバーの量と比較して、好ましくは食品中の最終濃度が≦50%w/w、より好ましくは≦33%w/w、≦0.25%w/w、なおもより好ましくは≦20%w/w、最も好ましくは≦12.5%w/wになる量で、濃縮野菜フレーバーが前記食品に添加されるような濃度である。本発明の方法によって生成されない野菜フレーバーとしては、新鮮野菜、オーブン乾燥野菜、真空オーブン乾燥野菜、ベルト乾燥野菜、真空下で乾燥させたベルト乾燥野菜、およびロールドラム乾燥野菜が挙げられる。本発明の方法によって得られる濃縮野菜フレーバーの絶対量は、用途のタイプ次第で変動してもよい。例えば所望の野菜フレーバーを得るために添加される、本発明の方法によって得られる濃縮野菜フレーバーの量は、例えばスープやソースよりも乾燥スナック中でより高くてもよく、地域的または個人的好みにも左右されてもよい。したがって本発明の方法によって得られる濃縮野菜フレーバーの量を変動させることで、当業者は、所望の野菜フレーバーの食品を得るために添加される、本発明の方法によって得られる濃縮野菜フレーバーの適切な量を過度の試行なしに容易に確立し得る。
【0026】
本発明の方法によって得られる濃縮野菜フレーバーは、例えば保存中に有利には安定している。安定しているとは、本発明の方法によって得られる濃縮野菜フレーバーの濃度が経時的に安定していること、すなわち野菜フレーバーを提供するために食品に添加される、本発明の方法によって得られる濃縮野菜フレーバーの量が、経時的に増大しないことを意味する。好ましくは本発明の方法によって得られる濃縮野菜フレーバーは、少なくとも1ヶ月、より好ましくは少なくとも2ヶ月、3ヶ月、より好ましくは少なくとも6ヶ月、最も好ましくは少なくとも12ヶ月にわたり安定しており、本発明の方法によって得られる濃縮野菜フレーバーは、暗所において20〜25℃で保存される。
【0027】
好ましい実施態様では、本発明の方法によって得られる野菜フレーバーは、顆粒または粉末である。顆粒または粉末は、有利には野菜フレーバーが食品中に均等に分布するように、本発明の方法によって得られる野菜フレーバーを食品と均質に混合できるようにする。
【0028】
別の態様では、本発明は、本発明の濃縮野菜フレーバーを含んでなる調味料、または本発明の方法によって得られる濃縮野菜フレーバーを提供する。調味料は食品または飼料成分の混合物であり、通常、ハーブおよび塩からなって、食品または飼料に添加されフレーバーを与えまたは増強する。調味料は好ましくは、食品または飼料調味料である。本発明の濃縮野菜フレーバーまたは本発明の方法によって得られる濃縮野菜フレーバーは非常に濃縮されていることから、本発明の濃縮野菜フレーバーまたは本発明の方法によって生成される濃縮野菜フレーバーの適切な量を食品に添加することはより容易であってもよく、本発明の調味料は有利かもしれない。好ましくは調味料中の本発明の濃縮野菜フレーバーまたは本発明の方法によって得られる濃縮野菜フレーバーの量は、調味料の総重量を基準にして、0.5〜10%w/w、より好ましくは1〜5%w/w、最も好ましくは2〜4%w/wである。
【0029】
別の態様では本発明は、本発明の濃縮野菜フレーバーまたは本発明の方法によって得られる濃縮野菜フレーバーを含んでなる容器を提供する。
【0030】
さらなる態様では、本発明は野菜フレーバーの食品を調製する方法を提供し、方法は、本発明の濃縮野菜フレーバーまたは本発明の方法によって得られる濃縮野菜フレーバーまたは本発明容器の内容物または本発明の調味料を食品に添加するステップを含んでなる。
【0031】
[実施例]
[材料]
オランダ国デルフト(Delft,the Netherlands)のDSM Food Specialtiesから得られるGistex(登録商標)XII、は、乾燥物質を基準にして40%w/wのNaClを含有するサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)からの酵母抽出物である。
【0032】
オランダ国デルフトのDSM Food Specialtiesから得られるPlantex(登録商標)MBE81粉末は、強い茹で肉フレーバーと味覚があるサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)からの酵母抽出物ベースの着香剤である。
【0033】
オランダ国デルフトのDSM Food Specialtiesから得られるGistex(登録商標)LSは、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)からの酵母抽出物である。
【0034】
オランダ国デルフトのDSM Food Specialtiesから得られるMaxarome(登録商標)Standard Powderは、総乾燥物質を基準にして40%w/wのNaClと、NaCl非含有乾燥物質を基準にして>3%w/wの5’−GMPを含有する、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)からの酵母抽出物である。
【0035】
Revel(商標)BCPN TFは、非ラウリン酸起源の非水素化植物性脂肪粉末であり、オランダ国ウォーマービア(Wormerveer)のLoders Croklaanから得られた。
【0036】
IDF Powdered Coocked Chickenは、米国ミズーリ州スプリングフィールド(Springfield,Missouri,USA.)のIDFから得られた。
【0037】
タマネギジュース粉末(Aloign5003)は、フランス国アントラン(Antrain,France)のDiana Naturalsから得られた。
【0038】
オランダ国デルフトのDSM Food Specialtiesから得られるMaxarome(登録商標)Plusは、総乾燥物質を基準にして40%w/wのNaClと、NaCl非含有乾燥物質を基準にして>6%w/wの(5’−GMP+5’−IMP)を含有する、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)からの酵母抽出物である。
【0039】
オランダ国デルフトのDSM Food Specialtiesから得られるMaxavor Rye Cは、ローストチキンフレーバーである。
【0040】
NaCl非含有とは、酵母抽出物がNaClを含まないまたは含むことができないことを意味せず、%w/wの計算のために酵母抽出物からNaClが除外されていることを意味する。計算は当業者に知られている方法によって実施し得る。
【0042】
[1.タマネギおよびニンニクフレーバー]
水投入ユニットおよび注入機と、油投入ユニットおよび注入機を装着した二軸スクリュー押し出し機に、別個の供給機を使用して、表2〜4に記載の組成物を入れた。形成された生成物は大気圧下で室内の押し出し機を出て、圧力ロールを装着した冷却ベルト上で冷却および乾燥されて、引き続いて粉砕されサンプル採取された。酵母抽出物はオランダ国デルフトのDSM Food Specialtiesから、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)からの酵母抽出物Gistex(登録商標)LSとして得られた。5%w/wの水を含有する乾燥タマネギパウダーは、オランダ国ネイケルク(Nijkerk)のUnifineから得られた。12%w/wの水を含有する乾燥ニンニクパウダーは、オランダ国ネイケルクのUnifineから得られた。50%〜95%の乾燥固体比を有する酵母自己溶解物は、オランダ国デルフトのDSM Food Specialtiesから得られる。
【0046】
実施例1〜4の加工香料は、全てローストタマネギフレーバーを有した。実施例1および2のローストタマネギフレーバーは、実施例3および4のローストタマネギフレーバーよりもふくよかでよりバランスが取れていた。
【0047】
実施例5〜8の加工香料は、全てローストニンニクフレーバーを有する。実施例5および6のローストニンニクフレーバーは、実施例7および8のローストニンイクフレーバーよりもふくよかでよりバランスが取れていた。
【0048】
実施例9の加工香料は、心地よい滑らかなタマネギフレーバーを有し、それは実施例1〜4のタマネギフレーバーよりもなおもより濃縮であった。ステップ(b)の前またはその最中に、タマネギパウダーおよび/または(and/ro)タマネギジュース粉末に加えて少量(例えば5%未満)のニンニクパウダーを組成物に添加することは、生成するタマネギフレーバー強度に対して相乗効果を有するようであるが、それ自体はいかなるニンニクフレーバーも提供しない。
【0049】
[2.官能試験]
良く知られ広く入手できる4種の市販のニンニクフレーバー(フレーバーI、II、III、IV)のフレーバー強度と対比して、実施例6のニンニクフレーバーのフレーバー強度を評価した。市販のフレーバーは、100g中に0.1%w/wの濃度で溶解した。フレーバーは訓練されたパネルによって評価された。
【0050】
[2.1チキンブイヨン]
乾燥即席ミックス(ミックスの組成については表5を参照されたい)から作ったチキンブイヨン中に、市販のフレーバーI〜IVを0.1%w/wの濃度で溶解した。ブイヨンは、8グラムの乾燥ミックスを200mLの沸騰水中に混合して作成した。ブイヨン中の実施例6のフレーバーの濃度は、実施例6のニンニクフレーバーを含有するブイヨンのニンニクフレーバー強度が、市販のサンプルを含有するブイヨンのニンニクフレーバーの強度と等しくなるように選択した。結果を表6に示す。
【0053】
実施例6のニンニクフレーバーのフレーバー強度は、市販のニンニクフレーバーと比較して3倍から4倍強力であることを認め得る。
【0054】
[2.2チキンブイヨン]
無脂肪乾燥即席ミックス(ミックスの組成については表7を参照されたい)から作ったチキンブイヨン中に、市販のフレーバーI〜IVを0.1%w/wの濃度で溶解した。ブイヨンは、8グラムの乾燥ミックスを200mLの沸騰水中に混合して作成した。ブイヨン中の実施例6のフレーバーの濃度は、実施例6のニンニクフレーバーを含有するブイヨンのニンニクフレーバー強度が、市販のサンプルを含有するブイヨンのニンニクフレーバーの強度と等しくなるように選択した。結果を表8に示す。
【0055】
実施例6のニンニクフレーバーのフレーバー強度は、市販のニンニクフレーバーと比較して、3倍から8倍強力であることを認め得る。
【0058】
[2.3牛肉麺類調味料]
牛肉麺類調味料(調味料の組成については表9を参照されたい)から作った溶液中に、0.1%w/wの濃度で市販のフレーバーI〜IVを溶解した。ブイヨン中の実施例6のフレーバーの濃度は、実施例6のニンニクフレーバーを含有する溶液のニンニクフレーバー強度が、市販のサンプルを含有する溶液のニンニクフレーバーの強度と等しくなるように選択した。結果を表10に示す。
【0061】
実施例6のニンニクフレーバーのフレーバー強度は、市販のニンニクフレーバーと比較して、3倍から8倍強力であることを認め得る。
【0062】
[3.ニンニクフレーバー官能試験]
良く知られ広く入手できる3種の市販のニンニクフレーバー(フレーバーI、II、V)に対比して、実施例6のニンニクフレーバー(水中0.125%w/w)の官能プロフィールを評価した。市販のフレーバーは、0.5%w/wの濃度で水に溶解した。
【0063】
フレーバーは、訓練されたパネルによって評価され評点された。以下の官能属性を評価した。芳香、味覚、口当たり、および外観。スコアの大きさは、知覚された官能属性強度の尺度である。
【0069】
[4.タマネギフレーバー官能試験]
水投入ユニットおよび注入機と、油投入ユニットおよび注入機を装着した二軸スクリュー押し出し機に、別個の供給機を使用して、表15に記載の組成物を入れた。形成された生成物は大気圧下で室内の押し出し機を出て、圧力ロールを装着した冷却ベルト上で冷却および乾燥されて、引き続いて粉砕されサンプル採取された。5%w/wの水を含有する乾燥タマネギパウダーは、オランダ国ネイケルクのUnifineから得られた。50%〜95%の乾燥固体比を有する酵母自己溶解物は、オランダ国デルフトのDSM Food Specialtiesから得られる。
【0071】
良く知られ広く入手できる3種の市販のニンニクフレーバー(フレーバーVI、VII、VIII)に対比して、実施例10のタマネギフレーバー(0.3%w/wのNaCl含有水中0.125%w/w)を評価した。市販のフレーバーは、0.3%w/wのNaCl含有水中0.5%w/wの濃度で溶解した。
【0072】
フレーバーは、訓練されたパネルによって評価され評点された。以下の官能属性を評価した。芳香、味覚、口当たり、および外観。スコアの大きさは、知覚された官能属性強度の尺度である。