特許第6192305号(P6192305)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192305
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】永久磁石型電磁駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/18 20060101AFI20170828BHJP
   G01N 3/08 20060101ALI20170828BHJP
   G01N 3/34 20060101ALI20170828BHJP
   G01M 7/02 20060101ALI20170828BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   H02K33/18 A
   G01N3/08
   G01N3/34 A
   G01M7/02 G
   B06B1/04 Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-20260(P2013-20260)
(22)【出願日】2013年2月5日
(65)【公開番号】特開2014-155241(P2014-155241A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】599142132
【氏名又は名称】株式会社サンエス
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(72)【発明者】
【氏名】山中 成浩
(72)【発明者】
【氏名】平井 三男
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−193561(JP,A)
【文献】 特開平10−201211(JP,A)
【文献】 特開平02−208903(JP,A)
【文献】 特開昭63−311673(JP,A)
【文献】 特開昭61−247263(JP,A)
【文献】 特開昭61−214380(JP,A)
【文献】 特開2012−118213(JP,A)
【文献】 実開平03−080680(JP,U)
【文献】 特開昭63−059786(JP,A)
【文献】 特開2012−075287(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/006383(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/18
B06B 1/04
G01M 7/02
G01N 3/08
G01N 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体板の片面にブロック状のネオジュウム磁石を複数個整列配置して固定してなり、前記ネオジュウム磁石の磁極面が対向するように組み立てられた一対の永久磁石体と、
一対の前記磁性体板の両端の間に介在するように設けられた一対の継鉄と、
整列配置された前記複数個のネオジュウム磁石のすべての磁極面を覆うように取り付けられて前記ネオジュウム磁石の境界面で生ずる磁束分布の不整脈を低減すると共に前記ネオジュウム磁石の表面を保護する一対の整磁板と、
互いに対向しあう前記一対の永久磁石体における前記複数個のネオジュウム磁石の磁極面の間に介在するように前記一対の継鉄の間に掛け渡された磁性体材料による中心磁極体と、を含む固定部と、
前記中心磁極体を内包するように組み立てられた可動線輪を有し、該可動線輪に流れる電流と前記一対の永久磁石体による磁束との相互作用により振動発生源として往復振動するように前記固定部に組み合わされた可動部と、
を備え、
前記一対の永久磁石体の一方において前記ネオジュウム磁石-ギャップ-前記中心磁極体-前記一対の継鉄-一方の前記磁性体板-前記ネオジュウム磁石という一方の磁気回路が形成されると共に、前記一対の永久磁石体の他方においても前記ネオジュウム磁石-ギャップ-前記中心磁極体-前記一対の継鉄-他方の前記磁性体板-前記ネオジュウム磁石という他方の磁気回路が形成され、
前記一方の磁気回路の前記ギャップ及び前記他方の磁気回路の前記ギャップ中に挿入された前記可動線輪に内包される前記中心磁極体の外周全面を直接、電気抵抗の低い金属板で被うことにより、前記可動線輪の交流抵抗の一部を打ち消して前記可動線輪の駆動電源の負担を低減する電気的な短絡回路を付加し
更に、前記可動線輪に電流を導く為の可動導線として、屈曲性に優れた極細撚り線の樹脂被覆線をジグザグ状に折り畳み可能に成型し、該折り畳み可能な前記可動導線を、その上部側、下部側において相互摩擦の少ない樹脂製の矩形状ポケットのガイド内に収納した可動導線案内機構と、
前記固定部の前部及び後部よりそれぞれ前記可動部を紐状の弾性ゴムで引っ張る構造とすることにより、停電や前記可動導線の断線の際に慣性力で前記可動部が前記固定部に衝突することを防止し、前記可動部の機械的な零点位置を保持する中心保持機構と、を備えたことを特徴とする永久磁石型電磁駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の永久磁石型電磁駆動装置において、
前記一対の継鉄にそれぞれコラムを取り付け、該一対のコラムの間に前記往復振動方向と同じ方向に延びる案内軸を掛け渡し、該案内軸を前記可動部に設けた軸受で支持することにより前記可動部のガイド機構を構成したことを特徴とする永久磁石型電磁駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石を用いた電磁駆動装置に関し、材料試験機、疲労試験機、振動試験機、起振機等における振動発生源としての使用に適した電磁駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
材料試験機、疲労試験機、振動試験機、起振機等における振動発生源として、ピストンとシリンダーによる油圧サーボ方式を採用したものが知られている。通常、油圧サーボ方式による材料試験機、疲労試験機等は、構成要素として本体のピストン、シリンダーのほか、電動機を含む油圧ポンプ、油圧タンク等で構成される油圧源、作動油を冷却する為の冷却塔等の冷却装置が必須である。従って、油圧サーボ方式を採用する場合には、ある程度大型の装置でないと設置自体が現実的でなく、小型の装置でも必要以上に大掛かりな装置になりがちである。また、作動油の品質維持を始めとして保守管理面でも大きな負担となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、中大型の振動試験機では円形の電磁石型磁気回路を用いた電磁方式が採用されている。円形の電磁石型磁気回路を用いた振動試験機では、磁気を発生させる為、励磁コイルに電流を流す必要がある。その為、電磁石型磁気回路では励磁用電源が必要であり、更に常時冷却が必要である。従って短時間の運転、小パワーの運転においても大風量の冷却用ブロワーを必要とし、冷却用ブロワーの騒音対策も不可避であり、そのための電力消費も無視できない。
【0004】
そこで、本発明の課題は、より推力が大きく且つ出力される加速度波形あるいは変位波形の再現精度の高い永久磁石型電磁駆動装置を提供しようとするものである。
【0005】
本発明の具体的な課題は、漏洩磁束を最小限にする効率的な閉鎖型磁気回路と、最大エネルギー積の高い希土類磁石であるネオジュウム磁石の採用により、従来の永久磁石型電磁駆動装置では実現困難であった長ストローク、且つ大推力の得られる永久磁石型電磁駆動装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様によれば、磁性体板の片面にブロック状のネオジュウム磁石を複数個整列配置して固定してなり、前記ネオジュウム磁石の磁極面が対向するように組み立てられた一対の永久磁石体と、一対の前記磁性体板の両端の間に介在するように設けられた一対の継鉄と、整列配置された前記複数個のネオジュウム磁石のすべての磁極面を覆うように取り付けられた一対の整磁板と、互いに対向しあう前記一対の永久磁石体における前記複数個のネオジュウム磁石の磁極面の間に介在するように前記一対の継鉄の間に掛け渡された磁性体材料による中心磁極体と、を含む固定部と、前記中心磁極体を内包するように組み立てられた可動線輪を有し、該可動線輪に流れる電流と前記一対の永久磁石体による磁束との相互作用により往復振動するように前記固定部に組み合わされた可動部と、を備えることを特徴とする永久磁石型電磁駆動装置が提供される。
【0007】
上記永久磁石型電磁駆動装置においては、前記一対の永久磁石体の一方において前記ネオジュウム磁石-ギャップ-前記中心磁極体-前記一対の継鉄-一方の前記磁性体板-前記ネオジュウム磁石という一方の磁気回路を形成すると共に、前記一対の永久磁石体の他方においても前記ネオジュウム磁石-ギャップ-前記中心磁極体-前記一対の継鉄-他方の前記磁性体板-前記ネオジュウム磁石という他方の磁気回路を形成し、前記一方の磁気回路の前記ギャップ及び前記他方の磁気回路の前記ギャップ中に挿入された前記可動線輪に内包されている前記中心磁極体の外周全面を電気抵抗の低い金属板で被うことにより、電気的な短絡回路を付加した磁気回路を用いることが望ましい。
【0008】
上記永久磁石型電磁駆動装置においてはまた、前記一対の継鉄にそれぞれコラムを取り付け、該一対のコラムの間に前記往復振動方向と同じ方向に延びる案内軸を掛け渡し、該案内軸を前記可動部に設けた軸受で支持することにより前記可動部のガイド機構を構成することが望ましい。
【0009】
上記永久磁石型電磁駆動装置においては更に、前記可動線輪に電流を導く為の可動導線として、屈曲性に優れた極細撚り線の樹脂被覆線を適度なピッチでジグザグ状に折り畳み可能に成型し、該折り畳み可能な前記可動導線を、相互摩擦の少ない樹脂で製作した箱状のガイド内に収納した可動導線案内機構を備えることが望ましい。
【0010】
上記永久磁石型電磁駆動装置においては更に、前記固定部の前部及び後部よりそれぞれ前記可動部を紐状の弾性ゴムで引っ張る構造とすることにより、前記可動部の機械的な零点位置を保持するための中心保持機構を備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、漏洩磁束を最小限にする効率的な閉鎖型磁気回路と、最大エネルギー積の高い希土類磁石であるネオジュウム磁石の採用により、従来の永久磁石型電磁駆動装置では実現困難であった長ストローク、且つ大推力を発生可能な永久磁石型電磁駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る永久磁石型電磁駆動装置の主要部を示した斜視図である。
図2図1に示された永久磁石型電磁駆動装置の主要部を、その一部の構成要素を除いて示した斜視図である。
図3図1に示された永久磁石型電磁駆動装置における可動部を示した斜視図である。
図4図1に示された永久磁石型電磁駆動装置において固定部となる磁気回路部を示した斜視図である。
図5図4に示された磁気回路部を分解して示した斜視図である。
図6図4に示された磁気回路部の正面図(図a)、縦断面図(図b)、横断面図(図c)、及び図(c)のD部を拡大して示した図(図d)である。
図7】本発明の実施形態に係る永久磁石型電磁駆動装置の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の概念)
本発明の実施形態を説明する前に、本発明の概念を説明する。
【0014】
本発明による永久磁石型電磁駆動装置は、閉鎖型磁気回路による固定部と可動線輪による可動部とを含む。特に、永久磁石型電磁駆動装置は、閉鎖型磁気回路を構成するための永久磁石として最大エネルギー積の高い希土類磁石であるネオジュウム磁石を使用することを前提としている。ネオジュウム磁石を採用するに当たり、大型ネオジュウム磁石の製造は技術的に困難である。従って、中型又は大型磁気回路を製作する場合、複数個の小型磁石を並列に並べて固定する事により、中型又は大型の磁石として使用する必要がある。小型磁石を複数個並べて磁気回路を構成した場合、磁石相互の接合部が増え、その接合部に磁束分布の不整脈が現れる。この不整脈は永久磁石型電磁駆動装置の運転時、出力される加速度波形あるいは変位波形の再現精度等に悪影響を及ぼし更には漏洩磁束の増加をもたらす。
【0015】
このような不整脈の対策として、1枚の適度な厚さの磁性体板を整磁板として複数の小型磁石の磁極面全体に固定することで不整脈を取り除くようにしている。複数の小型磁石の磁極面全体に固定された整磁板はまた、衝撃及び腐食等に弱いネオジュウム磁石の表面を保護する為にも非常に有効である。
【0016】
次に、閉鎖型磁気回路における永久磁石の磁極を良導電体の薄板で被覆する事により可動線輪の巻線方向と同方向の短絡回路を形成させ、可動線輪に流れる電流による誘導電流をこの短絡回路に流す事により可動線輪の交流抵抗の一部を打ち消し、駆動電源の負担を低減させる。
【0017】
本発明による永久磁石型電磁駆動装置の特徴である長ストロークでの運転時、長ストロークで往復運動をする可動線輪に電流を流すに当たり可動導線が必要となる。この可動導線は可動部の動きを妨げる事無く且つ駆動装置内にコンパクトに収納される事が望ましい。本発明による永久磁石型電磁駆動装置では、可動導線として、ナイロン等の樹脂被覆電線で且つ繰返し曲げ応力に強い極細の編素線ケーブルを適度なピッチでジグザグ状に折り畳み可能に加熱成型したケーブルを使用する。特に、この可動導線の設置場所として、固定部の左右両側の少なくとも一方に可動導線の収容場所を確保し、この収容場所には、可動導線の上部側、下部側に対応する箇所にそれぞれ、摩擦の少ない樹脂製の矩形状ポケットのガイドを設置することにより、可動導線がそのガイド内でスムースに伸縮して往復運動可能な可動導線案内機構を構成している。
【0018】
本発明による永久磁石型電磁駆動装置においては、可動部が往復運動を行なうに際し、往復運動のストロークを最大限に発揮させる為、可動部に取付けた変位計の変位信号を可動線輪への入力信号に負帰還させ、閉サーボループ制御系により可動部の機械的中心位置(零点位置)を保持するようにしている。なお、閉サーボループ制御系は本発明の要旨ではないので、図示、説明は省略する。
【0019】
本発明による永久磁石型電磁駆動装置では更に、安全性を確保する為、固定部における前後の固定端を基準点として複数の紐状の弾性ゴムで可動部を引っ張る構成とする事により概略の機械的な中心点(零点)を保持する中心保持機構を採用している。この弾性ゴムの収容場所も、上記可動導線の収容場所と同じ固定部の左右両側に確保している。この事によって停電又はサーボループ内の断線等不測の事態の際も慣性力で可動部が固定部に激突することによる装置又は試料に損傷を与える危険を防止する事ができる。この種の危険防止手段として、従来はストッパー用緩衝ゴム等で衝突エネルギーを吸収する方式が採用されているが、このような方式を本発明による方式と併用する事でより安全な運用が可能となる。
【0020】
(発明の実施形態)
図1図6を参照して、本発明の実施形態に係る永久磁石型電磁駆動装置について説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る永久磁石型電磁駆動装置を、その外側カバーを取り除いた状態で示している。固定部は、閉鎖型磁気回路10と、その長手方向の両端に固定された前コラム21及び後コラム22と、前コラム21と後コラム22の間に架け渡された案内軸23と、を含む。案内軸23は、後述する可動部の振動に伴う往復動作を案内するためのものであり、図示されている場所と反対側の前コラム21と後コラム22の間にも設けられる。以下では、閉鎖型磁気回路10の長手方向を前後方向、長手方向の両側を前後と呼び、この前後方向と直角な横方向を左右方向、左右方向の両側を左右と呼び、前後方向及び左右方向と直角な方向を上下方向と呼ぶ。
【0022】
図2は、図1に示された永久磁石型電磁駆動装置をより理解し易くするために、図1における永久磁石型電磁駆動装置から可動導線31や弾性ゴム32a、32b等の構成要素を取り除いた状態にて示している。
【0023】
図1図2を参照して、永久磁石型電磁駆動装置は、上述した固定部と可動部とを含む。可動部は、振動を取り出すための作動片40の両側に脚部41−1、41−2をボルト等で取り付けてなるコ字形状のフレーム41と、このフレーム41の2本の脚部41−1、41−2の開放端側に巻回した可動線輪42と、を含む。脚部41−1、41−2にはそれぞれ、可動線輪42の巻回部を間にした2箇所に、外方に突出した突出部を有し、これら2つの突出部には、案内軸23用の軸受43a、43bを装着している。2つの突出部の近傍にはそれぞれ、それらの上下にピン44a、44bが設けられている。また、前コラム21、後コラム22の左右両側端の上下にもそれぞれ、ピン44a、44bと同様のピン21a、22aが設けられている。前コラム21の上側のピン21aと後コラム22に近い方の上側のピン44bとの間、及び後コラム22の下側のピン22aと前コラム21に近い方の下側のピン44aとの間にはそれぞれ、リング状の弾性ゴム32a、32bを伸ばした状態、つまり引張り力を付与した状態で掛け渡している。
【0024】
以上の軸受43a、43bや、弾性ゴム32a、32bは、閉鎖型磁気回路10の左右両側、つまり図示されている場所と反対側の前コラム21と後コラム22の間にも設けられる。
【0025】
可動線輪42に電力を供給するために、後コラム22から可動線輪42に向けて可動導線31が設けられ、可動線輪42の巻線の始端に接続されている。特に、可動導線31は、可動部の前後方向の振動に伴う往復運動を妨げることなく、かつ可動部の長ストロークを保証しつつ可動線輪42に電力を供給するために、ナイロン等の樹脂被覆電線で且つ繰返し曲げ応力に強い極細の編素線ケーブルを適度なピッチでジグザグ状に折り畳み可能に加熱成型したケーブルを使用するようにしている。
【0026】
また、可動導線31の設置場所には、可動導線31の上部側、下部側に対応する箇所にそれぞれ、摩擦の少ない樹脂製の矩形状ポケットを長手方向に持つガイド45a、45bを設置することにより、可動導線31がガイド45a、45b内でスムースに伸縮して往復運動可能な可動導線案内機構を構成している。
【0027】
可動線輪42の終端に接続した可動導線は、図示されている可動導線31と並行するように可動導線31と同じ側に設置されても良いが、可動部の振動に伴う往復運動のバランスを考慮すると、軸受や弾性ゴムと同様、閉鎖型磁気回路10の左右両側、つまり図示されている場所と反対側に設けられるのが好ましい。
【0028】
図3は、図2に示されている永久磁石型電磁駆動装置における可動部を取外して示している。
【0029】
図4は、図2に示されている永久磁石型電磁駆動装置における固定部のうち、閉鎖型磁気回路10を取外して示した図であり、図5は閉鎖型磁気回路10の分解斜視図である。更に、図6(a)は閉鎖型磁気回路10の正面図、図6(b)は図6(a)のA-A'断面矢視図、図6(c)は図6(a)のB-B'断面矢視図、図6(d)は図6(b)のD部を拡大して示した図である。なお、図6(a)のC-C'断面矢視は、B-B'断面矢視と実質的に同じとなるので図示は省略する。
【0030】
図4図6を参照して、閉鎖型磁気回路10は、上磁極板11、下磁極板12、これらの上磁極板11と下磁極板12の前端、後端にそれぞれ介在するように設けられた継鉄13、14、継鉄13、14の間に掛け渡された中心磁極体15、上磁極板11の下面に前後左右に並ぶように設けられたブロック状の複数のネオジュウム磁石16a、下磁極板12の上面に、ネオジュウム磁石16aと同じ配列パターンで前後左右に並ぶように設けられたブロック状の複数のネオジュウム磁石16bを含む。上磁極板11、下磁極板12、継鉄13、14、中心磁極体15は、いずれも磁性体材料で作られる。ネオジュウム磁石16a、16bはそれぞれ、N極が中心磁極体15に対して所定のギャップをおいて対向するように配置される。ネオジュウム磁石16a、16bの磁極端面にはそれぞれ整磁板17a、17bが取り付けられている。一方、中心磁極体15の周囲には、その上下左右の4つの面を被覆するように、電気抵抗の小さな良導体によるショートリング18が巻かれている。その結果、閉鎖型磁気回路10には、図6(a)に矢印で示す磁束流による、ネオジュウム磁石16a-中心磁極体15-継鉄14及び15-上磁極板11-ネオジュウム磁石16aの磁気回路と、ネオジュウム磁石16b-中心磁極体15-継鉄14及び15-下磁極板12-ネオジュウム磁石16bの磁気回路と、が形成される。なお、ネオジュウム磁石16a、16bと中心磁極体15との間のギャップは、ネオジュウム磁石16a、16bの磁極端面と中心磁極体15の端面との間の距離から、整磁板17a(17b)とショートリング18の厚さを差し引いた値で規定される。
【0031】
上磁極板11、下磁極板12、継鉄13、14、中心磁極体15の組立てにはボルトが用いられ、ネオジュウム磁石16a、16bの取付けには接着剤が用いられる。
【0032】
図1図2に戻って、永久磁石型電磁駆動装置の可動部は、可動線輪42の線輪内空間を閉鎖型磁気回路10の中心磁極体15が挿通するように固定部に装着される。その結果、ネオジュウム磁石16a、16bと中心磁極体15との間のギャップには、可動線輪42が介在することになる。
【0033】
以下に、可動部と固定部の組立て作業の一例を説明する。
【0034】
(1)図3に示す可動部と図4に示す閉鎖型磁気回路を用意する。図3には説明を理解し易くするために案内軸23が示されているが、案内軸23は本組立て作業の後に取り付けられる。
【0035】
(2)可動線輪42内にショートリング18を巻回した中心磁極体15を通すために、継鉄13を上磁極板11、下磁極板12から取外す。この時、上磁極板11、下磁極板12はそれぞれ、図4に示す間隔を維持できるように保持治具で保持されている。また継鉄13の取外しに際しては、上磁極板11、下磁極板12に取り付けられたネオジュウム磁石16a、16bによる大きな吸引力が作用しているので、この吸引力を上回る引抜き力を持つ治具で継鉄13の引抜きが行われる。継鉄13を取外した後は、上磁極板11と下磁極板12の前端間に作用している大きな吸引力で上磁極板11と下磁極板12の間の間隔が狭くならないように上記保持治具による保持が維持されている。取外された継鉄13は一時、別場所に置かれる。
【0036】
(3)可動線輪42内を中心磁極体15が通るように可動部を固定部に組み合わせる。
【0037】
(4)作動片40をフレーム41から取り外し、これによってできる2本の脚部41−1、41−2の間のスペースを利用して継鉄13を上磁極板11と下磁極板12との間の元の位置に戻す。続いて、作動片40をフレーム41に戻して、図2に示される状態にする。図2でも説明を理解し易くするために案内軸23が示されているが、案内軸23は本組立て作業の後に取り付けられる。
【0038】
(5)上磁極板11及び下磁極板12の前端、上磁極板11及び下磁極板12の後端にそれぞれ、前コラム21、後コラム22を取り付ける。この取付けもボルトで行われるが、図示は省略している。図1から明らかなように、前コラム21には、可動部のフレーム41における作動片40を外方に突出させるための開口21−1が設けられている。前コラム21、後コラム22の取り付けの際に、軸受43a、43bを通して案内軸23も装着される。この案内軸23により、閉鎖型磁気回路10で発生する磁力と可動線輪42に流す電流の相互作用によって発生する力はその力の発生方向、つまり案内軸23の延在方向に規制される事となる。
【0039】
(6)可動導線31、中心保持機構を構成するための弾性ゴム32a、32bを実装し、可動部が静止状態で振動範囲の中間位置にあるように弾性ゴム312a、32bの引張り力と可動部の位置関係を調整する。
【0040】
すなわち、可動部に設けたピン44a、44bと、固定部に設けたピン21a、22aとの間に掛け渡した複数の弾性ゴム32a、32bによって、磁気回路端部における前コラム21、後コラム22を基準点にして互いに反対方向に引張り力を付与することにより、前後方向に変位可能な状態で可動部の移動中心を所望の位置(機械的な零点位置)に保持できるようにしている。
【0041】
(7)可動導線31を収容するように、上下にそれぞれガイド45a、45bを取り付け、前コラム21と後コラム22の間の外面を覆うように外側カバー(図示省略)を装着する。
【0042】
図7は、図1の構成に外側カバーを取り付けた外観を示す。図1の構成の少なくとも両側、すなわち案内軸23によるガイド機構や、可動導線31等を収容している部分を外側カバー50−1、50−2でカバーするようにしている。前コラム21から突出している作動片40は、振動試験機や起振機に用いる場合には被駆動部に連結され、材料試験機や疲労試験機に用いる場合には試料を載せる載置台が設けられる。
【0043】
以上のようにして組み立てられた永久磁石型電磁駆動装置は、可動導線31を通して可動線輪42に電流を流すことにより、その電流値と複数のネオジュウム磁石16a、16bによる磁界との相互作用により、可動線輪42を通してフレーム41、つまり可動部には前後方向に振動する力が作用する。これにより、作動片40を通して振動力を取り出すことができる。このような振動形態そのものは周知であるので、詳しい説明は省略する。また、可動線輪42に流す電流は、交流成分のみ、(直流成分+交流成分)の場合のほか、直流成分のみの場合もある。直流成分のみの場合は一方向への作動力を得る電磁駆動装置として利用される。
【0044】
(実施形態の効果)
以上の説明のように、本発明の実施形態による永久磁石型電磁駆動装置は、ネオジュウム磁石を使用した閉鎖型磁気回路の高性能化により、小型で且つ高性能な永久磁石型電磁駆動装置はもとより、従来永久磁石では困難であった大推力且つ大ストロークの大型永久磁石型電磁駆動装置の製作が可能となり、電磁石式電磁駆動装置あるいは油圧式駆動装置の分野での永久磁石型電磁駆動装置の採用により、省エネルギー化はもとより、省スペース化、低騒音化、メンテナンスの省力化等多大の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明による永久磁石型電磁駆動装置は、材料試験機、疲労試験機、振動試験機、起振機等への振動発生源としての適用に適している。
【符号の説明】
【0046】
10 閉鎖型磁気回路
11 上磁極板
12 下磁極板
13、14 継鉄
15 中心磁極体
16a、16b ネオジュウム磁石
17a、17b 整磁板
18 ショートリング
21 前コラム
22 後コラム
23 案内軸
31 可動導線
32a、32b 弾性ゴム
40 作動片
41 フレーム
41−1、41−2 脚部
42 可動線輪
43a、43b 軸受
45a、45b ガイド
50−1、50−2 外側カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7