【文献】
SmartBird-Festo,2012年 8月21日,URL,http://beamforbid.blogspot.jp/2012/08/smartbird-festo.html#!/2012/08/smartbird-festo.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係る羽ばたき機を説明する。
【0012】
1.羽ばたき機の構成
図1は、本実施の形態に係る羽ばたき機1を示す上面図である。まず、座標系の定義を行う。+X方向は、羽ばたき機1の進行方向(飛行方向)であり、前方を意味する。一方、−X方向は、後方を意味する。Y方向は、羽ばたき機1の側面方向であり、X方向と直交している。Z方向は、X方向及びY方向と直交する方向である。+Z方向は上方を意味し、−Z方向は下方を意味する。典型的には、XY面は水平面であり、+Z方向は鉛直上向き方向である。
【0013】
図1に示されるように、羽ばたき機1は、胴体2、尾翼3、及び一対の主翼10を備えている。尾翼3は、胴体2の後方部に取り付けられている。一対の主翼10は、胴体2の左側面及び右側面にそれぞれ取り付けられている。後に詳しく説明されるように、これら一対の主翼10が自動的に可動することにより、羽ばたき機1の羽ばたき動作が実現される。
【0014】
図2は、羽ばたき機1の主翼10の構成を示す概略図である。本実施の形態では、主翼10は、一枚翼ではなく、模擬された手首を備えており、折れ曲がり可能に構成される。より詳細には、主翼10は、内翼11と外翼12に区分される。内翼11は、主翼10のうち内側(より胴体2に近い側)の部分であり、胴体2の肩部につながっている。一方、外翼12は、主翼10のうち外側(より胴体2から遠い側)の部分であり、内翼11の外端部につながっている。
【0015】
主翼10は、骨組みとして主桁20を備えている。この主桁20は、胴体2の肩部から外側(胴体2から遠ざかる方向)に延伸するように設けられている。より詳細には、主桁20は、内桁21と外桁22を備えている。内桁21は、主桁20のうち内翼11に設けられた部分であり、胴体2の肩部から外側に延伸するように設けられている。一方、外桁22は、主桁20のうち外翼12に設けられた部分であり、内桁21よりも更に外側に延伸するように設けられている。
【0016】
主翼10には、更に、内桁21と外桁22との間に介在するように手首30が設けられている。つまり、内桁21と外桁22は、手首30を介して互いに接続されている。手首30は可動部分であり、主桁20はこの手首30の部分で折れ曲がり可能である。手首30の構成例については、後に説明する。
【0017】
内桁21の胴体側端部(付け根)は、胴体2の肩部に設けられたアクチュエータ120に接続されている。このアクチュエータ120は、胴体2の肩部を回転中心として、また、X軸を回転軸として、内桁21を上下方向に回転往復運動させる。それにより、内桁21(つまり主翼10)の「打ち下ろし動作」及び「打ち上げ動作」が実現される。
【0018】
次に、
図3を参照して、内桁21及び外桁22の可動範囲について説明する。
【0019】
内桁21は、胴体2の肩部を回転中心、X軸を回転軸として回転運動する。その回転角は、以下、「羽ばたき角θ」と参照される。内桁21が+Z方向(上方向)に向けて回転するにつれて、羽ばたき角θは大きくなる。逆に、内桁21が−Z方向(下方向)に向けて回転するにつれて、羽ばたき角θは小さくなる。
【0020】
羽ばたき角θの変動範囲RAは予め決められており、その所定の変動範囲RAの上限及び下限はそれぞれθH及びθLである。つまり、羽ばたき角θは、上限角度θHと下限角度θLとで規定される所定の変動範囲RA内で変動する。羽ばたき角θが上限角度θHであるとき、内桁21は最も上方(+Z方向側)に位置する。一方、羽ばたき角θが下限角度θLであるとき、内桁21は最も下方(−Z方向側)に位置する。
【0021】
内桁21の羽ばたき角θを変動させるのは、上述のアクチュエータ120である。アクチュエータ120は、内桁21を上下方向に回転往復運動させ、羽ばたき角θを所定の変動範囲RA内で変動させる。内桁21を下方向に回転運動させる動作、つまり、羽ばたき角θを下限角度θLに向けて小さくする動作は、「打ち下ろし動作」である。一方、内桁21を上方向に回転運動させる動作、つまり、羽ばたき角θを上限角度θHに向けて大きくする動作は、「打ち上げ動作」である。
【0022】
手首30を介して内桁21に接続されている外桁22は、内桁21に対して相対運動する。その内桁21と外桁22との間の相対角度は、以下、「折り曲げ角φ」と参照される。
【0023】
ここで、折り曲げ角φの説明を容易にするために、内桁21を基準とした相対座標系を定義する。
図3に示されるように、内桁21の延在方向はS方向である。このS方向は、X方向と直交している。また、T方向は、X方向及びS方向と直交する方向である。+T方向は上方を意味し、−T方向は下方を意味する。
【0024】
外桁22は、手首30を回転中心、X軸を回転軸として、回転運動する。その回転角が、上記の「折り曲げ角φ」である。外桁22が+T方向(上方向)に向けて回転するにつれて、折り曲げ角φは大きくなる。逆に、外桁22が−T方向(下方向)に向けて回転するにつれて、折り曲げ角φは小さくなる。
【0025】
折り曲げ角φの変動範囲RBは予め決められており、その所定の変動範囲RBの上限及び下限はそれぞれφH及びφLである。つまり、折り曲げ角φは、上限角度φHと下限角度φLとで規定される所定の変動範囲RB内で変動する。折り曲げ角φが上限角度φHであるとき、外桁22は最も上方(+T方向側)に位置する。典型的には、折り曲げ角φが上限角度φHであるとき、内桁21と外桁22は一直線になる、すなわち、外桁22の延在方向がS方向と一致する。但し、それに限定はされない。一方、折り曲げ角φが下限角度φLであるとき、外桁22は最も下方(−T方向側)に位置する。
【0026】
本実施の形態では、上述の内桁21の場合とは異なり、外桁22に対してアクチュエータは設けられていない。つまり、手首30には、外桁22を直接的且つ機械的に動かすアクチュエータは設けられていない。後に詳しく説明されるように、外桁22は、内桁21の打ち下ろし動作及び打ち上げ動作に追随して、“受動的”に運動するだけである。
【0027】
手首30は、外桁22の折り曲げ角φが所定の変動範囲RB内で可変となるように構成されている。
図4A及び
図4Bは、そのような手首30の構成の一例を概略的に示している。
図4Aは、
図4B中の線A−A’に沿ったSX断面図であり、
図4Bは、
図4A中の線B−B’に沿ったST断面図である。
【0028】
図4A及び
図4Bに示されるように、手首30には、内桁21の端部につながるコネクタ31が設けられている。また、外桁22の端部には、外桁22と一体的に動く軸32が形成されている。その軸32が、コネクタ31に開けられている孔と嵌合している。これにより、外桁22は、軸32を中心とした回転運動が可能となる。つまり、外桁22の折り曲げ角φが可変となる。折り曲げ角φの上限角度φH及び下限角度φLは、
図4Bに示されるように、コネクタ31の形状を調整することによって適宜設定可能である。つまり、折り曲げ角φの変動範囲RBは、機械的なリミッタにより適宜設定可能である。
【0029】
また、手首30には、折り曲げ角φを測定する角度センサ130が設けられている。
図4A及び
図4Bに示された例では、軸32の一端にギア33が形成されており、外桁22の回転と共にギア33も回転するように構成されている。角度センサ130は、そのギア33に隣接して設けられており、ギア33の回転に基づいて外桁22の折り曲げ角φを測定する。後に詳しく説明されるように、本実施の形態によれば、角度センサ130によって測定された折り曲げ角φが、内桁21の動作制御に用いられる。
【0030】
次に、
図5〜
図7を参照して、主翼10の他の骨組みであるリブについて説明する。
図5に示されるように、主桁20には複数のリブ25が取り付けられている。各々のリブ25は、主桁20から後方(−X方向)に延びるように設けられている。
【0031】
図6は、単一のリブ25の構成を示している。リブ25のうち前方側(+X方向側)の部分は、リブ前部25Fである。一方、リブ25のうち後方側(−X方向側)の部分は、リブ後部25Rである。
図6に示されるように、リブ前部25Fには孔26が形成されており、その孔26を主桁20が通っている。つまり、リブ25は、主桁20を中心として回転可能に設けられている。
【0032】
また、本実施の形態において、リブ25は、S字キャンバー(反転キャンバー)形状を有している。つまり、リブ後部25Rが上方に湾曲している。このS字キャンバー翼の作用について、
図7を参照して説明する。主翼10の打ち下ろし動作時、S字キャンバー形状のリブ25は、
図7に示されるように、自動的にX方向から傾く(ねじれる)。その傾き角(ねじれ量)は、羽ばたき機1の飛行速度とその位置における主翼10の打ち下ろし速度によって決まり、打ち下ろし速度が高くなるほど大きくなる。つまり、主翼10の打ち下ろし動作時、主翼10の翼面L(簡単のため、直線状に表されている)は、自動的に、X方向からある角度だけ傾く。そして、翼面LがX方向から傾くことにより、
図7に示されるように、+X方向(進行方向)の推力が発生する。つまり、風見方向に安定するよう翼面Lが自動的に傾いて、推力が発生する。
【0033】
尚、本実施の形態では、リブ25に対してアクチュエータは設けられていない。つまり、リブ25を直接的且つ機械的に動かすアクチュエータは設けられていない。上述の通り、リブ25は、S字キャンバー形状を有しており、主翼10の打ち下ろし動作時に自動的にX方向から傾く(ねじれる)。
【0034】
2.制御システム
本実施の形態に係る羽ばたき機1は、主翼10の羽ばたき動作を制御するための制御システム100を搭載している。
図8は、その制御システム100の機能構成を示すブロック図である。制御システム100は、制御装置110、アクチュエータ120、角度センサ130、及び角度センサ140を備えている。
【0035】
アクチュエータ120は、上述の通り、内桁21を動かす機械機構である。アクチュエータ120が内桁21を上下方向に回転運動させることにより、打ち上げ動作及び打ち下ろし動作が実現される。
【0036】
角度センサ130は、上述の通り、手首30に設けられており、外桁22の折り曲げ角φを測定する。そして、角度センサ130は、測定した折り曲げ角φを示す折り曲げ角データDBを、リアルタイムに制御装置110に送る。
【0037】
角度センサ140は、アクチュエータ120に設けられており、内桁21の羽ばたき角θを測定する。そして、角度センサ140は、測定した羽ばたき角θを示す羽ばたき角データDAを、リアルタイムに制御装置110に送る。尚、角度センサ140は、必ずしも必要ない。
【0038】
制御装置110は、胴体2の内部に搭載されたコンピュータである。この制御装置110は、アクチュエータ120を制御することにより、内桁21の打ち上げ動作及び打ち下ろし動作を制御する。より詳細には、制御装置110は、上記の羽ばたき角データDA及び折り曲げ角データDBを受け取り、羽ばたき角θ及び折り曲げ角φをリアルタイムにモニタする。そして、制御装置110は、少なくとも折り曲げ角φに応じて、アクチュエータ120を制御し、内桁21を動作させる。制御装置110による制御対象は、例えば、打ち上げ動作及び打ち下ろし動作のタイミングである。
【0039】
3.制御例
次に、打ち下ろし動作及び打ち上げ動作の制御例を説明する。
図9は、その制御例を示すタイミングチャートである。
図9には、内桁21の羽ばたき角θと外桁22の折り曲げ角φのそれぞれの遷移が示されている。また、状態S1〜S5が打ち下ろし動作に相当し、状態S6〜S10が打ち上げ動作に相当する。以下、打ち下ろし動作(状態S1〜S5)と打ち上げ動作(状態S6〜S10)のそれぞれについて詳しく説明する。
【0040】
3−1.打ち下ろし動作
図10は、打ち下ろし動作を説明するための概念図である。
図9と
図10を参照して、打ち下ろし動作について説明する。
【0041】
<状態S1>
状態S1は、内桁21及び外桁22共に最も高く上がっている状態であり、そのとき、羽ばたき角θは上限角度θHであり、折り曲げ角φも上限角度φHである。この状態S1において、打ち下ろし動作が開始する。具体的には、制御装置110は、アクチュエータ120を制御して、内桁21の打ち下ろし動作を開始させる。
【0042】
<状態S2>
状態S2は、アクチュエータ120によって内桁21が打ち下ろされている状態であり、そのときの羽ばたき角θは中間角度θM(θH>θM>θL)である。外桁22は、内桁21の打ち下ろし動作に追随して受動的に下方向に運動するが、そのときの折り曲げ角φは上限角度φHのままである。
【0043】
また、上記の
図7で説明されたように、S字キャンバー形状のリブ25は、自動的にX方向から傾く(ねじれる)。つまり、主翼10の翼面Lが、自動的に、X方向からある角度だけ傾く。それにより、+X方向(進行方向)の推力が発生する。尚、その傾き角(ねじれ量)は、羽ばたき機1の飛行速度とその位置における主翼10の打ち下ろし速度によって決まり、打ち下ろし速度が高くなるほど大きくなる。従って、翼端に近いほど(胴体2から離れるほど)、傾き角は大きくなり、得られる推力も大きくなる。
【0044】
<状態S3>
状態S3は、内桁21が下がりきった状態であり、そのときの羽ばたき角θは下限角度θLである。内桁21の運動はここで停止するが、内桁21に追随していた外桁22は、慣性により、そのまま運動し続ける。つまり、外桁22は、アクチュエータがなくても、内桁21の打ち下ろし動作の勢いによって、勝手に運動するのである。
【0045】
<状態S4>
状態S4は、内桁21が下がりきったまま、外桁22だけが運動している状態であり、そのときの折り曲げ角φは中間角度φM(φH>φM>φL)である。尚、このとき、アクチュエータ120は、内桁21を固定し、羽ばたき角θを下限角度θLに維持している。
【0046】
<状態S5>
状態S5は、内桁21も外桁22も下がりきった状態であり、そのとき、羽ばたき角θは下限角度θLであり、折り曲げ角φも下限角度φLである。角度センサ130、140を通して羽ばたき角θ及び折り曲げ角φをリアルタイムにモニタしている制御装置110は、この状態S5を検出すると、次の打ち上げ制御(状態S6参照)を開始する。つまり、内桁21の打ち下ろし動作の後、折り曲げ角φが下限角度φLになったことを検出すると、制御装置110は、アクチュエータ120を制御して、内桁21の打ち上げ動作を開始させる。
【0047】
3−2.打ち上げ動作
図11は、打ち上げ動作を説明するための概念図である。
図9と
図11を参照して、打ち上げ動作について説明する。
【0048】
<状態S6>
状態S6は、上記の状態S5と同じである。この状態S6において、内桁21の固定が解除され、打ち上げ動作が開始する。具体的には、制御装置110は、アクチュエータ120を制御して、内桁21の打ち上げ動作を開始させる。
【0049】
<状態S7>
状態S7は、アクチュエータ120によって内桁21が打ち上げられている状態であり、そのときの羽ばたき角θは中間角度θM(θH>θM>θL)である。外桁22は、内桁21の打ち上げ動作に追随して受動的に上方向に運動するが、そのときの折り曲げ角φは下限角度φLのままである。
【0050】
<状態S8>
状態S8は、内桁21が上がりきった状態であり、そのときの羽ばたき角θは上限角度θHである。内桁21の運動はここで停止するが、内桁21に追随していた外桁22は、慣性により、そのまま運動し続ける。つまり、外桁22は、アクチュエータがなくても、内桁21の打ち上げ動作の勢いによって、勝手に運動するのである。
【0051】
<状態S9>
状態S9は、内桁21が上がりきったまま、外桁22だけが運動している状態であり、そのときの折り曲げ角φは中間角度φM(φH>φM>φL)である。尚、このとき、アクチュエータ120は、内桁21を固定し、羽ばたき角θを上限角度θHに維持している。
【0052】
<状態S10>
状態S10は、内桁21も外桁22も上がりきった状態であり、そのとき、羽ばたき角θは上限角度θHであり、折り曲げ角φも上限角度φHである。角度センサ130、140を通して羽ばたき角θ及び折り曲げ角φをリアルタイムにモニタしている制御装置110は、この状態S10を検出すると、上述の打ち下ろし制御(状態S1参照)を開始する。つまり、内桁21の打ち上げ動作の後、折り曲げ角φが上限角度φHになったことを検出すると、制御装置110は、アクチュエータ120を制御して、内桁21の打ち下ろし動作を開始させる。
【0053】
尚、打ち上げ動作において、主翼10は空気力によって自動的に打ち上げられる可能性もある。そのような場合には、アクチュエータ120を用いて内桁21を能動的に動かす必要はない。状態S6において、制御装置110は、アクチュエータ120を制御して、内桁21の固定の解除だけすればよい。
【0054】
以上に説明された打ち下ろし動作と打ち上げ動作の繰り返しにより、本実施の形態に係る羽ばたき機1の羽ばたき動作が実現される。
【0055】
4.効果
本実施の形態によれば、羽ばたき1の主翼10は、模擬された手首30を備えており、折れ曲がり可能に構成される。従って、一枚翼の場合と比較して、擬態性が向上し、また、推力損失及び抵抗増加が抑制される。
【0056】
更に、本実施の形態によれば、次のような効果が得られる。その効果を説明するために、まず、次のような比較例を考える。
【0057】
比較例では、手首30に、外桁22を直接的且つ機械的に動かすアクチュエータ(モータ、リンク機構等)が設けられる。そして、内桁21だけでなく、外桁22もアクチュエータを用いて強制的に動作させる。また、リブ25に関してもアクチュエータが設けられ、リブ25を強制的に傾けることにより、翼面LがX方向から傾けられる。アクチュエータを用いた内桁21、外桁22、及びリブ25のそれぞれの動作状態(動作タイミング、動作周波数、動作速度)は、それぞれ適宜設定されるとする。
【0058】
このような比較例の場合、以下の問題が考えられる。それは、まず、余分なアクチュエータ及び配線が必要なことによる、重量の増加及び機構の複雑化である。また、外桁22やリブ25を強制的に動かすことは、自然の鳥の機構とは異なるため、擬態性が低下する。
【0059】
更に、外桁22が上がりきる前(折り曲げ角φが上限角度φHになる前)に打ち下ろし動作が開始したり、外桁22が下がりきる前(折り曲げ角φが下限角度φLになる前)に打ち上げ動作が開始したりすると、推力損失、抵抗増加、擬態性低下といった問題が発生する。そのような問題を防ぐためには、内桁21、外桁22、及びリブ25のそれぞれの動作を適切に制御する必要がある。しかしながら、適切な動作状態(動作タイミング、動作周波数、動作速度)は、飛しょう速度等の環境によって大きく異なってくる。よって、飛しょう速度等の環境の変化に応じて内桁21、外桁22、及びリブ25のそれぞれの動作状態を動的に制御する必要があるが、そのような動的制御は非常に困難である。すなわち、比較例は、環境への適応性が悪い。
【0060】
このような比較例に対し、本実施の形態では、手首30には、外桁22を直接的且つ機械的に動かすアクチュエータは設けられていない。外桁22は、内桁21の打ち下ろし動作及び打ち上げ動作に追随して受動的に運動するだけである。
図10及び
図11で説明されたように、内桁21に追随して動く外桁22は、アクチュエータがなくても、内桁21の打ち上げ動作あるいは打ち下げ動作の勢いによって、勝手に運動するのである。
【0061】
また、リブ25に対しても、アクチュエータは設けられていない。つまり、リブ25を直接的且つ機械的に動かすアクチュエータは設けられていない。
図6及び
図7で説明されたように、リブ25は、S字キャンバー形状を有しており、主翼10の打ち下ろし動作時に自動的にX方向から傾くのである。
【0062】
このように、外桁22やリブ25に対して余分なアクチュエータを設ける必要がないため、重量の低減及び機構の簡素化が可能となる。また、外桁22やリブ25が強制的に動かされることはないため、擬態性が向上し、また、推力損失及び抵抗増加が抑制される。
【0063】
更に、本実施の形態によれば、外桁22の折り曲げ角φを測定する角度センサ130が手首30に設けられている。そして、制御装置110は、角度センサ130によって測定された折り曲げ角φに応じて、アクチュエータ120を制御し、内桁21を動作させる。その結果、
図9〜
図11で示されたように、外桁22が上がりきった後(折り曲げ角φが上限角度φHになった後)に打ち下ろし動作を開始させることが可能となる。また、外桁22が下がりきった後(折り曲げ角φが下限角度φLになった後)に打ち上げ動作を開始させることが可能となる。すなわち、推力、抵抗、擬態性の観点から最適な羽ばたき動作が実現可能となる。角度センサ130を用いて折り曲げ角φそのものをモニタしているため、飛しょう速度等の環境にかかわらず、いつも最適な羽ばたき動作が実現されるのである。その意味で、本実施の形態は、環境への適応性が高いと言える。
【0064】
5.変形例
5−1.第1の変形例
上述の通り、本実施の形態によれば、外桁22は、内桁21の打ち下ろし動作及び打ち上げ動作に追随して受動的に運動する。しかし、そのままでは、外桁22の動きがカクカクしたものになる恐れがある。そこで、
図12に示されるように、手首30に緩衝材40が設けられてもよい。この緩衝材40は、内桁21に対する外桁22の相対運動の勢いを緩和する役割を果たす。例えば、緩衝材40は、外桁22と支持部材との間に接続されたバネである。このような緩衝材40により、外桁22の急激な動きを抑えることが可能になる。その結果、羽ばたき機1の擬態性が更に向上する。
【0065】
5−2.第2の変形例
図9〜
図11で説明された制御例では、φ=φHもしくはφ=φLの検出をトリガーとして、アクチュエータ120を作動させ、内桁21を動かしていた。しかし、トリガーとなる折り曲げ角φの基準値は、必ずしも上限角度φHや下限角度φLでなくてもよい。トリガーとなる折り曲げ角φの基準値は、羽ばたき機1の動作モードや使用目的に応じて、適宜設定されてもよい。
【0066】
以上、本発明の実施の形態が添付の図面を参照することにより説明された。但し、本発明は、上述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で当業者により適宜変更され得る。