(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステッピングモータの出力軸の回転を、直動機構により直動部材の軸方向の進退移動に変換し、前記直動部材の先端に設けた弁体を、流体の給排口を閉鎖する位置と開放する位置との間で進退移動させる弁体駆動装置において、
前記直動部材と前記弁体との係合部に、前記直動部材と前記弁体との前記軸方向の相対変位を可能にする隙間を設けると共に、
前記給排口を閉鎖する位置に向けて前記弁体を付勢する付勢手段を設け、
前記付勢手段を前記直動部材とは異なる固定側部材で支持させて、
前記弁体を弾性部材から構成して、前記直動部材が、前記給排口を閉鎖する位置に前記弁体を配置させた位置から、前記給排口を開放する位置に向けて前記弁体を移動させる方向に所定量移動しても、前記給排口が前記弁体により閉鎖されるようにしたことを特徴とする弁体駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態にかかる弁体駆動装置10は、ステッピングモータ1のロータ90の回転を、ネジ送り機構30により、キャリッジ3の軸線X方向の進退移動に変換し、キャリッジ3の先端に設けた弁体5を、流体の給排口(流体の流入口または流出口:
図1の場合にはガス流入口8c)を閉鎖する位置と開放する位置との間で進退移動させるように構成されている。
【0010】
弁体駆動装置10の構成を説明する。
図1は、弁体駆動装置10の断面図である。
以下、便宜上、
図1、
図8から
図11においては、図面の上方向を上、下方向を下として説明する。
【0011】
図1に示すように、弁体駆動装置10の筐体20は、底壁部6bと側壁部6aとからなる有底の円筒形状のケース6と、底壁部8bと側壁部8aとからなる有底の円筒形状のカバー8とを備えて構成され、ケース6とカバー8は、軸線Xの軸方向(
図1における上下方向)で、互いの開口部を向き合わされた状態で配置されている。
【0012】
ケース6の側壁部6aの先端には、縮径部6cが全周にわたって形成されており、底壁部6bには、ケース6内に突出して突起6dが形成されている。
突起6dは、プレート1bの嵌合穴1dを貫通して、後記する外ステータコア144の嵌合穴144bに嵌合している。
【0013】
カバー8の底壁部8bでは、その中央部にガス流入口8cが直径d1で開口しており、底壁部8bにおけるガス流入口8cの周囲の所定範囲が、弁体5が当接する弁座部8eとなっている。
側壁部8aのケース6側の先端には、側壁部8aの内径よりも内径の大きい拡径部8fが形成されている。この拡径部8fの内径は、前記したケース6の縮径部6cの外径と整合する径に形成されており、カバー8とケース6は、拡径部8fと縮径部6cをインロー嵌合させて、互いに結合されている。
【0014】
実施の形態では、カバー8の外周面には、カバー8をケース6に固定するためのフック(図示せず)が設けられている箇所があり、このフックは、軸線Xに沿ってケース6側に延びると共に、軸線X周りに所定間隔を空けて複数設けられている。
カバー8の側壁部8aでは、軸線Xの径方向におけるこのフックの内側となる位置に、嵌合壁部8gが設けられている。嵌合壁部8gは、側壁部8aの内径側を拡径部8fに対して平行に延びており、この嵌合壁部8gは、その先端8g1が、ケース6の縮径部6cよりも底壁部6b側の下方に及ぶ長さ(軸線X方向の長さ)で形成されている。
嵌合壁部8gの先端8g1は、後記するガイド9のフランジ部9aの周縁部に軸線Xの軸方向から当接しており、ステッピングモータ1とガイド9とが、嵌合壁部8gにより、図中下方向に押し込まれた状態で、ケース6に固定されている。
また、カバー8の側壁部8aでは、軸線X方向の略中間になる位置に、ガス流出口8dが開口している。
【0015】
実施の形態では、ケース6とカバー8とから形成される筐体20内の空間が、ガイド9を境にして上下に区画されており、ガス流入口8cとガス流出口8dとが設けられたカバー8側が、ガスが流入するバルブ室Sとなっている。そして、ガス流入口8cを通ってバルブ室S内に流入したガスが、このガス流出口8dから排出されるようになっている。
【0016】
ステッピングモータ1は、ステータ14と、ロータ90とを備えて構成される。
ステータ14は、軸線Xの軸方向に重ねて配置された、2つのステータ組14A、14Bにより構成されている。ステータ組14A、14Bは、いずれも内ステータコア141と、ボビン142に巻回された駆動コイル143と、駆動コイル143を内ステータコア141との間に挟む外ステータコア144とから構成されている。
【0017】
内ステータコア141と外ステータコア144のそれぞれには、その内周縁に等間隔で軸線方向に起立形成された極歯141a、144aが複数本形成されている。具体的には、内ステータコア141に形成された極歯141aが外ステータコア144に形成された極歯144aに対し、交互に入り組むように構成されている。
このように交互に入り組むように構成された内ステータコア141と外ステータコア144における極歯141a、144aの外周に、ボビン142を介して円環状の駆動コイル143配置されており、極歯141a、144aの内周側に、ロータ90が配置されている。
【0018】
また、外ステータコア144の外周縁は、折り曲げられて駆動コイル143の外周を覆うように起立形成されており、モータケース145として機能している。このモータケース145は、絞り加工により円筒形状に形成されている。
【0019】
外ステータコア144のケース6の底壁部6bに対向する部位では、ケース6の突起6dと整合する位置に、嵌合穴144bが形成されている。この嵌合穴144bには、前記したケース6の突起6dが嵌合しており、ステータ14は、軸線X回りの回転が規制された状態で、ケース6に固定されている。
【0020】
外ステータコア144のガイド9のフランジ部9aに対向する部位では、フランジ部9aの突起9hと整合する位置に嵌合穴144cが形成されている。この嵌合穴144cには、フランジ部9aの突起9hが嵌合しており、ガイド9とステータ14の軸線X回りの相対回転が規制されている。
【0021】
ロータ90は、筒状の本体部91と、本体部91の外周に設けられたロータマグネット95とを備えており、本体部91とロータマグネット95は、インサート成形により一体に形成されている。
ロータ90は、軸線X周りに回転可能に設けられており、ロータマグネット95が設けられた外周を、前記した極歯141a、144aの内周に対向させて設けられている。
ロータ90の中央開口92には、固定軸1aに外挿されたリードスクリュー2の基部2bが挿入されており、ロータ90が軸線X回りに回転すると、リードスクリュー2とロータ90とが軸線X回りに一体に回転するようになっている。
【0022】
固定軸1aは、リードスクリュー2を軸方向に貫通して設けられている。固定軸1aは、その一端が、ケース6の底壁部6bに例えばスポット溶接で固定されたプレート1bの支持穴1cに圧入固定されていると共に、他端が、ガイド9の支持穴9jに圧入固定されており、軸線X周りの回転が規制されている。
実施の形態では、この固定軸1aにおいて、リードスクリュー2が回転可能に支持されており、ロータ90とリードスクリュー2とが軸線X周りに回転する際の軸ぶれが、この固定軸1aにより軽減されるようになっている。
【0023】
次に、ステッピングモータ1のロータ90の回転を、キャリッジ3の軸線X方向の進退移動(直動)に変換するネジ送り機構30について説明する。
図2は、弁体駆動装置10の要部の分解斜視図である。
図3は、キャリッジ3を説明する図であって、(a)は、キャリッジ3を軸線Xの径方向見た平面図であり、(b)は、(a)におけるA−A矢視図である。
【0024】
図1に示すように、ネジ送り機構30は、ステッピングモータ1のロータ90と一体に回転するリードスクリュー2と、リードスクリュー2とネジ嵌合するキャリッジ3と、キャリッジ3の軸線X回りの回転を規制するガイド9と、を備えて構成される。
【0025】
リードスクリュー2は、ロータ90の中央開口92に圧入やインサート成型などで固定される基部2bと、基部2bの一端から基部2bから離れる方向に延出する小径軸部2cと、を備えており、小径軸部2cの外周に雄ねじ2aが形成されている。
リードスクリュー2では、基部2bと小径軸部2cとを貫通して貫通穴2dが形成されており、この貫通穴2dに、前記した固定軸1aが挿入されている。
ここで、圧入時の応力でリードスクリュー2の直線性が損なわれることを防止するために、リードスクリュー2の基部2bは、インサート成型により、ロータ90の本体部91と一体に形成されていることが好ましい。
かかる場合、この本体部91には、前記したロータマグネット95もまたインサート成形により一体に形成されている。そのため、リードスクリュー2の基部2bがインサート成型により本体部91と一体に形成される場合には、リードスクリュー2の基部2bとロータマグネット95のインサート成型による本体部91との一体形成が、同時に行われることになる。このように構成することで、1回のインサート成型で、2部材の固定を行うことができるので、作成工程の増加とこれに伴う作業コストの増加を好適に防ぐことができることになる。
【0026】
弁体駆動装置10においてリードスクリュー2は、軸線Xに沿って設けられており、小径軸部2cの外周に設けられた雄ねじ2aをキャリッジ3の雌ねじ3aに螺合させてキャリッジ3と連結されている。なお、実施の形態では、雄ネジ2aと雌ネジ3aが、軸線X方向に0.6mmの隙間を有した状態で螺合している。この隙間は、後述するロータ90の2ステップ分の回転に相当する。
【0027】
キャリッジ3は、軸線Xの軸方向に進退移動可能に設けられた直動部材である。
キャリッジ3は、その基本形状が円筒形状であり、
図3に示すように、その先端側に切欠き3eが形成されている。
切欠き3eは、キャリッジ3の先端側を、軸線Xを挟んで対称となる仮想線Im1、Im2に沿って形成されている。キャリッジ3において切欠き3eは、後記するフランジ3dの先端である上面3d1から所定範囲の長さW1に亘って設けられている。
【0028】
キャリッジ3の切欠き3eが設けられていない部分は、円筒形状の基部3cとなっており、基部3cの内周面には、軸線X方向の全長W2に亘って雌ねじ3aが形成されている。
【0029】
キャリッジ3では、軸線Xの径方向において切欠き3eの両側に位置する部分が、基部3cから離れる方向に延出する腕部3b、3bとなっている。
腕部3b、3bは、軸線Xを挟んで対称に位置しており、腕部3b、3bの軸線X側の内周面3b1は、軸線Xに平行な平坦面となっている。
【0030】
腕部3b、3bの先端には、後記する弁体5との係合部となるフランジ3dが設けられており、腕部3b、3bのフランジ3dが設けられた先端側は、軸線Xの直交方向に弾性変形可能となっている。
【0031】
フランジ3dは、腕部3bの外周面3b2から径方向外側に延出して、所定高さhで形成されている。このフランジ3dは、軸線Xの軸方向で、所定の厚みtを有しており、フランジ3dの上面3d1と、反対側の下面3d2は、それぞれ軸線Xに直交する平坦面となっている。
フランジ3dの外周縁3d3は、軸方向から見て、軸線Xを中心とした仮想円Im3に沿う弧状に形成されており、キャリッジ3におけるフランジ3dの外周縁3d3の離間距離d2は、ガス流入口8cの開口径d1(
図1参照)よりも小さい径に設定されている。
【0032】
図1に示すように、弁体駆動装置10においてキャリッジ3は、腕部3bのフランジ3d側を、後記するガイド9の開口9dから弁体5側に突出させた状態で設けられている。キャリッジ3は、ガイド9の開口9dにより、軸線X周りの回転が規制された状態で、軸線Xの軸方向に進退移動可能に支持されている。
【0033】
実施の形態では、ステッピングモータ1のロータ90と共にリードスクリュー2が軸線X周りに回転すると、ガイド9側で回り止めされたキャリッジ3が、リードスクリュー2の回転方向に応じて決まる方向(
図1において上下方向)に軸線Xに沿って移動して、腕部3bの先端に取り付けられた弁体5を、軸線Xの軸方向に進退移動させるようになっている。
【0034】
図4は、ガイド9を、ステッピングモータ1側から見た斜視図であり、
図5は、ガイドを説明する図であって、(a)は、カバー8側から見た平面図であり、(b)は、(a)におけるA−A断面図である。
【0035】
図1、
図4、
図5に示すように、ガイド9は、有底円筒形状の筒部9fと、筒部9fの開口端9iを全周にわたって囲むフランジ部9aとを備えており、その開口端9iをステッピングモータ1側に向けた状態で設けられている。
図1に示すように、筒部9fは、キャリッジ3を所定間隔で囲む周壁部9bと、円筒状の周壁部9bの一端を塞ぐ底壁部9eとを備えて構成される。
フランジ部9aは、筒部9fの開口端9i側から径方向外側に延出して、ケース6の側壁部6aの近傍に及ぶ直径W4(
図5参照)で形成されている。
【0036】
底壁部9eには、前記したキャリッジ3のフランジ3d側を挿通させる開口9d、9dが、底壁部9eを厚み方向に貫通して形成されている(
図2参照)。
軸線Xの軸方向から見て、開口9d(
図5参照)は、キャリッジ3のフランジ3dを軸線Xの軸方向から見た平面形状(
図3の(b)参照)と整合する形状および面積で形成されている。
【0037】
開口9d、9dは、軸線Xを挟んで対称となる位置に形成されており、開口9d、9dの離間距離W3は、キャリッジ3の腕部3b、3bの離間距離W3(
図3、
図5参照)と同じに設定されている。そのため、腕部3b、3bが軸線X側に撓むことが、開口9d、9dにより防止されている。
【0038】
図1に示すように、周壁部9bのフランジ部9aとの接続部には、周壁部9bよりも大径の拡径部9cが形成されている。この拡径部9cの弁体5側の上面9c1は、軸線Xに直交する平坦面となっており、ガイド9の周壁部9bに外挿されたスプリング4の一端が当接している。
【0039】
スプリング4は、ガス流入口8cの開口径d1よりも大きい径の圧縮コイルバネであり、このスプリング4の他端は、キャリッジ3の腕部3b、3bの先端側を挿通させたホルダ7の下面7a2に、軸線Xの軸方向から当接している。
【0040】
実施の形態では、スプリング4は、ガイド9の拡径部9cと、ホルダ7との間で圧縮された状態で保持されている。
【0041】
拡径部9cのステッピングモータ1側の面には、周壁部9bの開口を囲む凹穴部9gが形成されおり、この凹穴部9gにより、ロータ90の本体部91とガイド9との干渉が防止されている。
【0042】
図6の(a)は、弁体駆動装置10におけるホルダ7と弁体5の近傍を拡大して示す断面図であり、(b)は、(a)における領域Aの拡大図である。
ホルダ7は、後記する弁体5にスプリング4の付勢力を伝達する部材であり、リング状の円盤部7aと、フランジ部7bと、を備えて構成される。
【0043】
図6に示すように、円盤部7aは、前記したガイド9の筒部9fの外径D1よりも大きい外径D2で形成されており、円盤部7aの中央の開口部7cには、キャリッジ3の腕部3b、3bが挿通されている。
開口部7cの内径D3は、キャリッジ3におけるフランジ3dの外周縁3d3の離間距離(軸線Xの径方向における離間距離)d2よりも小さくされている。これにより、キャリッジ3が、フランジ部3がホルダ7から外れる方向(図中下方向)に移動すると、フランジ3dが円盤部7aの上面7a1に当接して、ホルダ7がキャリッジ3から容易に脱落しないようにされている。
【0044】
なお、実施の形態では、キャリッジ3の腕部3bにおけるフランジ3dが設けられた先端側が、軸線X側に撓むことができるようになっている。そのため、ホルダ7のキャリッジ3への取り付けが、腕部3bのフランジ3d側(先端側)を軸線X側に撓ませて、ホルダ7の開口部7cに挿通するだけで、簡単に行えるようになっている。
【0045】
円盤部7aの上面7a1は、弁体5に軸線Xの軸方向から当接する当接面となっており、下面7a2は、スプリング4の他端が当接する当接面となっている。
【0046】
実施の形態では、スプリング4の付勢力が、ホルダ7の円盤部7aを介して、弁体5に伝達されるようになっており、ホルダ7を介在させずに、スプリング4を弁体5に直接当接させた場合よりも、スプリング4の付勢力がより均等に弁体5に伝達されるようになっている。
【0047】
実施の形態では、スプリング4の外径が、弁座部8eの外径D4とほぼ整合する径に設定されており、円盤部7aの外径D2が、ガス流入口8cの弁座部8eの外径(軸線Xの径方向の外径)D4よりも大きくなるように設定されている。
そのため、軸線Xの軸方向(図中下方向)から見て、弁座部8eの全体が円盤部7aに覆われるようになっている。
実施の形態では、ホルダ7を介在させることで、弁座部8eにおけるスプリング4の付勢力が作用する位置を、軸線Xの径方向で、スプリング4の外径に合わせて移動させることができるようになっている。
【0048】
フランジ部7bは、円盤部7aの外周縁の全周に亘って設けられている。
フランジ部7bは、後記する弁体5の係合部5b(周壁部5b1)の外径と整合する内径D5で形成されていると共に、この係合部5bを径方向外側から支持可能な長さLで、ガイド9から離れる方向(ガス流入口8c側の方向)に延出している。
実施の形態では、弁体5がガス流入口8cを閉鎖する位置に配置されて弁座部8eからの反力が弁体5に作用した際に、弁体5が軸線Xの径方向に変形することがフランジ部7bにより防止されるようになっている。さらに、軸線Xの径方向におけるホルダ7と弁体5の位置決めが、フランジ部7bにより行われるようになっている。
【0049】
図7は、弁体5とキャリッジ3との係合部分を説明する図であり、弁体5の一部を断面で示した図である。
図6および
図7に示すように、弁体5は、キャリッジ3の腕部3b、3bの間で把持される被把持部5aと、キャリッジ3のフランジ3dに係合する係合部5bと、ガス流入口8cを閉鎖する弁部5cとを備えて構成され、例えばニトリルゴムのような弾性変形可能な材料で一体に形成されている。
【0050】
被把持部5aは、弁部5cからキャリッジ3側に延出しており、前記したキャリッジ3の腕部3b、3bの離間距離W3と整合する幅W3を有している。
軸方向から見て被把持部5aは、矩形形状を有しており、弁体5の中心を通る軸線Xに直交する向きで設けられている。この被把持部5aにおける腕部3bとの対向面5a1、5a1は、軸線Xを挟んで互いに平行かつ対称となっており、被把持部5aは、これら対向面5a1、5a1により、腕部3b、3bの間で把持される二面幅形状を有している。
【0051】
弁部5cは、ガス流入口8c側に向かうにつれて拡径しており、ガス流入口8cとの対向面である上面5fは、軸線Xに直交する平坦面となっている。
上面5fの周縁は、弁体5がガス流入口8cを閉鎖する位置に配置された際に、ガス流入口8cを囲む弁座部8eに当接する当接部5dとなっている。
【0052】
係合部5bは、筒状の周壁部5b1と、腕部3bのフランジ3dに係止される係止部5b2とを備えて構成される。
【0053】
周壁部5b1は、弁部5cのキャリッジ3側の面5eから、軸線Xに沿って延出しており、周壁部5b1は、前記した腕部3b、3bのフランジ3dの軸方向長さtよりも長い、軸方向長さLで形成されている。
実施の形態では、弁体5がキャリッジ3に取り付けられた状態で、キャリッジ3(フランジ3d)と弁部5cとの間に、軸線X方向の隙間Y(
図6の(b)参照)が確保されており、キャリッジ3と弁体5とが、軸線Xの軸方向で相対移動可能となっている。
【0054】
実施の形態では、この隙間Yの大きさは、ステッピングモータ1のロータマグネット95(
図1参照)が駆動停止した位置から移動することで生じるロータ90の角度位置の変化(進角、遅角)に応じた大きさとなっている。例えば、48ステップでロータ90が一回転するステッピングモータの場合に、ネジ(雄ねじ2a、雌ねじ3a)のリードが一周あたり1.5mmであるときには、ロータ90が1ステップ分回転する毎に、0.03125mm(=1.5mm/48ステップ)ずつ、キャリッジ3が軸線Xの軸方向に移動する。
このとき、ロータ90の角度位置の変化(進角、遅角)に対して6ステップ分(前後に3ステップ分ずつ)の隙間を設けるときは、隙間Yは、0.1875mmになる。
このように、ステッピングモータ1のロータ90の角度位置の変化(進角、遅角)に応じた大きさの隙間Yを設けることで、ステッピングモータ1が駆動停止したのちのロータ90の角度位置の変化(進角、遅角)で、弁体5が移動することが防止できるようになっている。
【0055】
周壁部5b1の内径d2は、前記した腕部3bのフランジ3dの外周を規定する仮想円Im3(
図4参照)と同一径に設定されており、フランジ3dの外周縁3d3(
図4参照)の全周に亘って、周壁部5b1が接触するようになっている。
そして、この周壁部5b1の内径d2は、ガス流入口8cの開口径d1よりも小さい径に設定されている。
【0056】
係止部5b2は、周壁部5b1の先端から径方向内側(軸線X側)に延出しており、周壁部5b1の先端の全周に亘って設けられている。
係止部5b2は、腕部3b、3bの外周面3b2に当接する位置まで延出しており、キャリッジ3が弁体5から離れる方向に移動した際に、フランジ3dの下面3d2(
図6の(b)参照)に当接するようになっている。
【0057】
実施の形態では、弁体5は、被把持部5aを腕部3b、3bの間に位置させると共に、係合部5bをキャリッジ3のフランジ3dに係止させた状態で、キャリッジ3の先端に取り付けられており、腕部3b、3bに把持された被把持部5aにより軸線X回りの回転が規制され、係合部5bにより、腕部3b(フランジ3d)のからの脱落が防止されている。
【0058】
以下、弁体駆動装置10の動作を説明する。
図8は、弁体5によるガス流入口8cの開閉を説明する図であって、(a)は、弁体5が、ガス流入口8cを開放する位置に配置された状態を示す図であり、(b)は、弁体5が、ガス流入口8cを閉鎖する位置に配置された状態を示す図である。
図9の(a)は、
図8の(a)における領域Aを拡大した図であり、(b)は、
図9の(a)における領域Cを拡大した図である。
図10の(a)は、
図8の(b)における領域Bを拡大した図であり、(b)は、
図10の(a)における領域Dを拡大した図であり、(c)は、
図10の(a)における領域Eを拡大した図である。
図11の(a)は、
図10の(a)の状態から、ステッピングモータ1のロータ90を8ステップ分逆回転(弁体5を弁座部8eから離す方向に移動)させた状態を示す図であり、(b)は、(a)における領域Fを拡大した図であり、(c)は、(a)における領域Gを拡大した図である。
【0059】
本実施形態の弁体駆動装置10によるガス流入口8cの開閉(バルブの開閉)は、ステッピングモータ1のロータ90の回転を、ネジ送り機構30により、キャリッジ3の軸線X方向の進退移動に変換し、キャリッジ3の先端に設けた弁体5を、ガス流入口8cを閉鎖する位置(
図8の(b)参照)と、開放する位置(
図8の(a)参照)との間で進退移動させることで実行される。
【0060】
弁体5が、ガス流入口8cを開放する位置(
図8の(a)参照)に配置されている状態では、ガス流入口8cが開放されており、図示しないガス導入管から供給されるガスは、ガス流入口8cから筐体20(バルブ室S)内に流入したのち、ガス流出口8dから筐体20の外部に排出される。
【0061】
この状態において弁体5には、スプリング4の付勢力がホルダ7を介して作用しており、弁体5は図中上方向に押し上げられている。そのため、弁体5の係止部5b2は、キャリッジ3のフランジ3dの下面3d2(
図9の(b)参照)に係合した状態となり、キャリッジ3は、弁体5により図中上方向に引っ張られた状態で保持されている。
そのため、フランジ3dの上面3d1と弁体5との間に隙間Yが生じ、係止部5b2と弁体5との間には生じていない状態となっている。
【0062】
弁体5が、ガス流入口8cを開放する位置(
図8の(a)参照)に配置されている状態で、ステッピングモータ1が駆動されて、ロータ90を軸線X回りの一方向(例えば、
図1におけるロータ90を下方向から見て反時計回り方向)に回転させると、ロータ90とリードスクリュー2とが軸線X回りに一体に回転する。
そうすると、リードスクリュー2の雄ねじ2aに雌ねじ3aを噛合させているキャリッジ3もまた、軸線X回りに回転しようとするが、キャリッジ3の腕部3bは、ガイド9の開口9dで回り止めされているので、リードスクリュー2がキャリッジ3に対して相対回転することになる。
【0063】
これにより、リードスクリュー2の雄ねじ2aとキャリッジ3の雌ねじ3aとのかみ合い位置が、軸線Xの軸方向に変位することになるので、キャリッジ3とリードスクリュー2とが、軸線Xの軸方向で相対移動して、キャリッジ3がリードスクリュー2から離れる方向(
図9の場合、上方向)に移動し、キャリッジ3の先端に設けた弁体5は、ガス流入口8cに近づく方向に移動させられることになる。
【0064】
キャリッジ3の移動が継続すると、弁体5の当接部5dがガス流入口8cを囲む弁座部8eに当接して、弁体5が、ガス流入口8cを閉鎖する位置(
図8の(b)参照)に達することになる。さらに、キャリッジ3の移動が継続すると、フランジ3dの上面3d1が弁体5のキャリッジ3側の面5eに当接する(
図9の(b)参照)。
この状態になると、弁体5の当接部5dは、弁座部8eに圧接されて、弁体5の弁部5cが軸線Xの軸方向に圧縮変形された状態となる(
図10参照)。なお、実施の形態では弁体5の圧縮変形量は0.1mmであり、ロータ90の3ステップ分の回転に相当する。
【0065】
そして、弁体5が
図10の(a)の状態になると、弁体駆動装置10は、ステッピングモータ1を脱調させたのちに、ステッピングモータ1のロータ90を逆回転させて、ステッピングモータ1の駆動を終了する(
図11参照)。
ステッピングモータ1のロータ90を逆回転させると、まず圧縮変形した弁体5の変形量が小さくなり元の形状に戻る。さらに逆回転させると雄ネジ2aの図中下側の面2a1が、雌ネジ3aの図中上側の面3a1に当接し、さらに逆回転させるとフランジ3dの上面3d1が弁体5(弁部5c)のキャリッジ3側の面5eから離れる。
ここで、前記したように、弁体5の変形量がステッピングモータ1のロータ90の3ステップ分に相当するので、
図10の(a)の状態から、始めにステッピングモータ1のロータ90を3ステップ分だけ逆回転させると、弁体5の変形が元に戻る。
また、軸線Xの軸方向における雄ネジ2aと雌ネジ3aとのかみ合い部分の隙間が、ステッピングモータ1のロータ90の2ステップ分に相当するので、さらにステッピングモータ1のロータ90を2ステップ分だけ逆回転させると、雄ネジ2aが、図中下方向(弁体5をガス流入口8cから離間させて、ガス流入口8cを開放する方向)移動して、雄ネジ2aの図中下側の面2a1が、雌ネジ3aの図中上側の面3a1に当接する。
この状態から、ステッピングモータ1のロータ90を、さらに3ステップ分逆回転させると、フランジ3dの上面3d1と弁体5(弁部5c)のキャリッジ3側の面5eとの間に、
図9の(b)に示した隙間Yの半分の大きさの隙間が生じることになる。また、フランジ3dの上面3d1と弁体5(弁部5c)の係止部5b2との間にも隙間Yの半分の大きさの隙間が生じることになる(
図11の(c)参照)。
【0066】
そのため、ステッピングモータ1のロータ90を逆回転させると弁体5の変形が小さくなり、スプリング4の付勢力を超える力で弁体5が閉鎖する方向に押し付けられることを低減できる。ステッピングモータ1のロータ90を8ステップ分だけ逆回転させると、キャリッジ3と弁体5との係合部では、弁体5とフランジ3dの上面3d1との間と、弁体5の係止部5d2との間にそれぞれ隙間が形成されるので(
図11の(c)参照)、弁体5とフランジ3dは非係合状態(弁体5が、キャリッジ3のフランジ3dに対して軸線Xの軸方向に相対移動可能な状態)となる。よって、スプリング4の付勢力を超える力で弁体5が閉鎖する方向に押し付けられることをさらに低減できる。
【0067】
ここで、弁体5は、スプリング4の付勢力によって、ガス流入口8cを閉鎖する位置に向けて付勢されている。そのため、フランジ3dと非係合状態となった弁体5は、スプリング4の付勢力のみで、ガス流入口8cを閉鎖する位置に保持されることになる。
【0068】
なお、弁体5を、ガス流入口8cを閉鎖する位置から、開放する位置(
図8の(a)参照)に移動させる場合には、ステッピングモータ1の回転方向を、上記の場合と逆方向に回転させることになる。
【0069】
以上の通り、実施の形態では、ステッピングモータ1のロータ90の回転を、ネジ送り機構30によりキャリッジ3の軸線X方向の進退移動に変換し、キャリッジ3の先端に設けた弁体5を、ガス流入口8c(給排口)を閉鎖する位置と開放する位置との間で進退移動させる弁体駆動装置10において、キャリッジ3と弁体5との係合部に軸線X方向の隙間を設けると共に、弁体5を、当該弁体5でガス流入口8cを閉鎖する位置に向けて付勢するスプリング4を設けた構成とした。
【0070】
このように構成すると、ガス流入口8cを閉鎖する位置に弁体5を移動させたのちに、ステッピングモータ1のロータ90の角度位置が変化して、キャリッジ3が弁体5をガス流入口8cから離す方向に移動しても、弁体5とキャリッジ3との係合部に軸線X方向の隙間が設けられており、弁体5とキャリッジ3とが一体になっていないので、弁体5がガス流入口8cを開放する位置に向けて移動することがない。そして、弁体5は、スプリング4により、ガス流入口8cを閉鎖する位置に向けて付勢されているので、キャリッジ3が移動しても、弁体5によるガス流入口8cの閉鎖状態が保持されるので、弁体5とキャリッジ3との係合部に軸線X方向の隙間を設けても、弁体駆動装置10の機能が損なわれることがない。
【0071】
また、弁体5が、ステッピングモータ1のトルクではなく、スプリング4の付勢力によって、ガス流入口8cを閉鎖する位置に保持されるので、ガス流入口8cを閉鎖するために弁体5に作用させる力を、ステッピングモータ1のロータマグネット95とステータ14の間で働く非励磁状態での磁気吸引力(ディテントトルク)に依存しないものとすることができる。
実施の形態では、磁気吸引力の代わりにスプリング4の付勢力としているので、弁体5をガス流入口8cに押しつけてガス流入口8cを閉鎖する力を、磁気吸引力の場合に比べて均一にすることができ、ガス流入口8cの閉鎖状態を安定して保持することができる。
【0072】
さらに、弁体5は、弾性変形可能なゴムから構成されて、ステッピングモータ1の駆動により、弁座部8eに当接してガス流入口8cを閉鎖する位置に配置された際に軸線X方向に変形(弾性変形)するようになっており、キャリッジ3が、ガス流入口8cを閉鎖する位置に弁体5を配置させた位置から、ガス流入口8cを開放する位置に向けて弁体5を移動させる方向に所定量移動しても、弾性変形した弁体5によりガス流入口8cが閉鎖される構成とした。
【0073】
このように構成すると、キャリッジ3から弁体5にさせる付勢力(ガス流入口8cを閉鎖する方向の付勢力)を作用させていなくても、ガス流入口8cを閉鎖した状態で保持することができる。
弁体5を弁座部8eに当接させた状態でステッピングモータ1を脱調させると、弁体5にはスプリング4の付勢力とキャリッジ3から押される力の両方が作用している。この状態から、ステッピングモータ1のロータ90を逆回転させて、キャリッジ3が、ガス流入口8cを閉鎖する位置に弁体5を配置させた位置から、ガス流入口8cを開放する位置に向けて弁体5を移動させる方向に所定量移動すると、キャリッジ3が弁体5を押す力を小さくすることができる。
【0074】
ゴム等の弾性体からなる弁体5は、1)ガス流入口8cを閉鎖する方向に作用する力(スプリング4の付勢力+キャリッジ3に作用するステッピングモータ1のディティントルク+直動機構の抗力)と、2)ガス流入口8cを開放する方向に作用する力(弁体5の弾性変形による復元力)と、3)弁体5に作用する流体の圧力の3者がバランスした位置で保持されている。
ステッピングモータ1のロータ90を逆回転させると、上記した2)の力が最初に小さくなると共に、ステッピングモータ1のディティントルクの位置による強弱の影響を小さくすることができる。これにより、弁体5の弾性変形が小さくなるとともに、弁体5を閉方向(ガス流入口8cの閉鎖方向)に作用する力はスプリング4の付勢力が支配的となり、ディティントルクのロータ90の位置による強弱の影響を受け難く、一定の力で弁体5を閉方向に付勢することができる。
【0075】
特に、キャリッジ3と弁体5の係合部に設けた隙間により、キャリッジ3と弁体5との係合が解除された状態で、弁体5が、スプリング4の付勢力でガス流入口8cを閉鎖する位置に配置される構成とした。
【0076】
このように構成すると、弁体5がスプリング4の付勢力のみでガス流入口8cを閉鎖する位置に保持されるので、弁体5によるガス流入口8cの閉鎖に、スプリング4以外の構成要素(キャリッジ3やステッピングモータ1)の影響が及ぶことを防止できるので、ガス流入口8cを閉鎖した状態で安定的に保持することができる。
【0077】
また、前記したように、弁体5とキャリッジ3のフランジ3dとの隙間Yが、ステッピングモータ1を脱調させてキャリッジ3により弁体5をガス流入口8cを閉鎖する位置に押圧させた際の弁体5の軸線X方向の変形量と、脱調させたステッピングモータ1を逆回転させてキャリッジ3が、ステッピングモータ1のロータ90が8ステップ回転することによるガイド9の移動量の和よりも大きいので、ステッピングモータ1のロータ90を回転させて、ガス流入口8cを閉鎖する位置に弁体5を移動させたのちに、ステッピングモータ1のロータ90を逆方向に5ステップ分回転させて、弁体5をガス流入口8cから離す方向にキャリッジ3を移動させると、弁体5を、ガス流入口8cを閉鎖する位置から移動させずに、弁体5とキャリッジ3のフランジ3dとの係合が解除される。
この状態にすると、弁体5が、スプリング4の付勢力によって、ガス流入口8cを閉鎖する位置に保持されることになり、ガス流入口8cを閉鎖するために弁体5に作用させる力(付勢力)を一定にすることができるので、弁体の過度の変形を防止できる。
また、ステッピングモータ1を駆動停止させたのちに、ロータ90の角度位置が変化しても、係る角度位置の変化により弁体5が移動することを好適に防止できるので、ガス流入口8cの閉鎖状態を安定して保持することができる。
【0078】
さらに、ガス流入口8cの周縁は、弁体5との弁座部8eとなっており、キャリッジ3が弁体5を付勢する位置は、キャリッジ3(軸線X)の径方向で、弁座部8eよりも内側であり、スプリング4が弁体5を付勢する位置は、キャリッジ3(軸線X)の径方向で、キャリッジ3が弁体5を付勢する位置よりも外側である構成とした。
【0079】
このように構成すると、スプリング4の付勢力で隙間Yが変化することを防止できる。
さらに、ガス流入口8cを閉鎖する位置に弁体5を移動させたのちに、弁体5とキャリッジ3のフランジ3dとの係合を解除すると、弁体5が、スプリング4の付勢力によって、ガス流入口8cの周縁の弁座部8eに当接して、ガス流入口8cを閉鎖する位置に保持されることになる。
キャリッジ3が弁体5を付勢する位置は、軸線Xの軸方向から見てガス流入口8cの内側であるので、キャリッジ3から作用する付勢力で、ガス流入口8cを閉鎖する位置に弁体5を配置すると、付勢力の大きさによっては、弁体5の一部がガス流入口8c内に膨出した状態でガス流入口8cを閉鎖することがある(
図10参照)。
この弁体5の膨出(変形)の程度は、キャリッジ3から弁体5に作用する付勢力により異なり、前記したようにステッピングモータの場合には、キャリッジ3から弁体5に作用する付勢力を常に一定にすることができないため、弁体5の決まった部分でガス流入口8cを閉鎖することができない。
最終的に、スプリング4の付勢力によって、ガス流入口8cを閉鎖する位置に弁体5を保持するようにすると(
図11参照)、弁体に作用する力(付勢力)が常に一定になるので、弁体5の決まった部分(弁座部8eに当接する部分)でガス流入口8cを閉鎖することができる。
これにより、弁体の過度の変形を防止しつつ、弁体5によるガス流入口8cの閉鎖を安定して行うことができる。
【0080】
特に、実施の形態では、スプリング4が弁体5を付勢する位置を、軸線Xの軸方向から見て、ガス流入口8cの周縁の弁座部8eと整合する位置に設定したので、弁体5の決まった部分(弁座部8eに当接する部分)で、ガス流入口8cを常に閉鎖することができるので、弁体5によるガス流入口8cの閉鎖をより安定して行うことができる。
【0081】
さらに、弁体5が弁座部8eに当接する当接部5dをキャリッジ3が弁体5を支持する位置と径方向に重ならない位置としたので、フランジ3dを当接部5dの裏側と径方向に重なった位置にして、フランジ3dが当接部5dの裏側を直接押すようにしなくても、スプリング4の付勢力により、安定してバルブを閉止することができる。そのため、フランジ3dの高さhを小くすることができる。
このように、フランジ3dの高さhを小さくすれば、組み付け時に弁体5を大きく変形させずにキャリッジ3に係合させることができるので、弁体5とキャリッジ3の組み付けが容易になる。
そして、本実施形態では、スプリング4の付勢力により、弁体5をガス流入口8cに当接させてバルブを閉止しているので、弁体5にかかる力は一定になる。そのため、バルブ閉止時の弁体5の弾性変形を予測することが容易になる。したがって、スプリング4に最適な付勢力を有するものを選択し、または弁体5に最適な材料を選択することで、弁体5のヒステリシスによる劣化を低減しやすくなる。
また、キャリッジ3(軸線X)の径方向において、弁体5の係止部5b2とキャリッジ3のフランジ3dよりも外側に、スプリング4の付勢力が作用するようになっており、これら係止部5b2およびフランジ3dが、スプリング4と便座部8eとの間に挟まれないようになっている。そのため、係止部5b2がスプリングの付勢力4で変形して、ランジ3dと弁体5との間に隙間Yが変化することが好適に防止されるようになっている。
【0082】
さらに、直動機構が、ステッピングモータ1のロータ90に取り付けられたリードスクリュー2外周の雄ねじ2aと、キャリッジ3の雌ねじ3aと、から構成されるものとした。
【0083】
このように構成すると、歯車輪列を用いずにステッピングモータ1のロータ90の回転を減速することができるので、ステッピングモータ1のロータ90の回転をキャリッジ3の直動移動に変換するための機構を、歯車輪列を用いる場合に比べて、小型化することができる。よって、弁体駆動装置10を小型化することができる。
【0084】
特に、スプリング4の径方向内側で、リードスクリュー2の雄ネジ2aとキャリッジ3の雌ネジ3aが噛合する構成としたので、弁体駆動装置10の軸線X方向のサイズが大きくなることを防止できる。
【0085】
さらに、キャリッジ3の先端側は、軸線X方向に沿って設けた切り欠き3eにより、二つに分岐した腕部3bとなっており、弁体5は、切り欠き3e(腕部3b、3bの間)に把持される被把持部5aを備えると共に、被把持部5aを切り欠き3e(腕部3b、3bの間)に嵌合させて、キャリッジ3の先端に回り止めされた状態で設けられている構成とした。
【0086】
このように構成すると、弁体5の被把持部5aによって、キャリッジ3の腕部3bのフランジ3d側の先端が、軸線X側に撓んで、弁体5がキャリッジ3から脱落することを防止できる。
また、弁体5の軸線X回りの回転が規制されるので、ガス流入口8cを閉鎖する位置に弁体5が配置された際に、弁体5とガス流入口8cとの位置関係がずれることが好適に防止されるので、弁体5によるガス流入口8cの閉鎖をより安定して行うことができる。
【0087】
スプリング4と弁体5の間に剛性部材であるホルダ7が設けられており、ホルダ7のリング状の円盤部7aは、軸線Xの軸方向から見て、ガス流入口8cを囲む弁座部8eと整合する位置に設けられており、スプリング4の付勢力がホルダ7を介して弁体5に作用して、弁体5が、ガス流入口8cを閉鎖する位置に向けて付勢されているものとした。
【0088】
このように構成すると、スプリング4の付勢力を均等に弁体5に作用させることができるので、弁体5が弁座部8eに対して偏って当接することや、ずれて当接することを防止することができる。
また、ホルダ7のフランジ部7bは、弁体5の周壁部5b1を径方向から支持しているので、弁体5がガス流入口8cを閉鎖する位置に配置されて、弁座部8eからの反力が弁体5に作用したときに、軸線Xから見て弁体5が径方向外側に変形することを防止できるので、弁体5によるガス流入口8cの閉鎖をより安定して行うことができる。
【0089】
さらに、弁体5の係止部5b2が、ホルダ7を介して作用するスプリング4の付勢力により、キャリッジ3のフランジ3dに押しつけられるので、弁体5がキャリッジ3から脱落することが好適に防止される。
【0090】
さらに、スプリング4とホルダ7が、キャリッジ3に対して着脱自在に設けられている構成としたので、円盤部7aの外径D2が異なるホルダを複数用意しておき、付勢力に応じて決まるスプリング4の外径に合わせて、適切なホルダを選択し、キャリッジ3に取り付けるようにしても良い。
【0091】
前記した実施の形態では、軸線Xに沿って進退移動する弁体が、軸線X上に位置するガス流入口を囲む弁座部に、ガス流入口の開口面の直交方向から当接して、ガス流入口を開閉する構成の弁体駆動装置を例示したが、弁体が、ガス流出口を開閉する構成の弁体駆動装置としても良い。かかる場合には、
図1における符号8cが、ガス流出口となり、符号8dが、ガス流入口となる。
かかる場合、ガス流入口となった符号8cで示す開口部が、発明における給排口となる。
【0092】
なお、本実施形態においては、ガス流入口8cが弁体5により閉じられている状態で、キャリッジ3のフランジ3dと弁体5との間に隙間Yが設けられて、フランジ3dと弁体5とが被係合状態となるように構成した。ここで、「非係合状態」とは、フランジ3dと弁体5とが全く接触しない場合が含まれるのはもちろんのこと、フランジ3dと弁体5とが一部で接触する場合も含まれるものとする。すなわち、フランジ3dと弁体5が一部で接触していても、その接触箇所が、弁体5を弁座部8eに当接させてガス流入口8cを閉止するときの閉止力に影響を与えない箇所であれば、ここでいう「非係合状態」に含まれるものとする。また、この「非係合状態」には、フランジ3dと弁体5が接触していても、弁体5に軸線Xの軸方向に向かう力がフランジ3dから作用していない状態が含まれるものとする。
【0093】
前記した実施の形態では、キャリッジ3が二つの腕部3bを備える場合を例示したが、ガイド9によりキャリッジ3の回り止めができる形状であれば、例えば、腕部3bの数は3つ以上であっても良い。
さらに、キャリッジ3の腕部3bや、その先端のフランジ3dの形状も、弁体5を回り止めすることができる形状であれば、適宜変更可能である。
たとえば、キャリッジ3に、軸線Xの軸方向から見て十字形状の切欠きを設けると共に、弁体5の被把持部5aを軸線Xの軸方向から見て十字形状として、キャリッジ3と弁体5とを係合させるようにしても良い。このようにすることによっても、弁体5の軸線X回りの回転を防止しつつ、キャリッジ3に取り付けることができる。この場合には、腕部の数が4つとなるので、ガイドの開口の数も4つとなる。
【0094】
また、実施の形態では、弁体5がゴムからなる弾性体である場合を例示したが、弁座部8eに対して当接した際に、弾性変形をしてガス流入口8cを確実に閉止できる物であれば、ゴム以外の部材、例えば板バネなどを用いることも可能である。さらに、ニードルバルブ等を用いるようにしても良い。
【0095】
さらに、前記した実施の形態では、発明における給排口が、ガス流入口8c(流体の流入口)である場合を例示したが、発明における給排口は、ガス流出口8d(流体の流出口)であっても良い。