特許第6192334号(P6192334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6192334電子制御装置のプログラム書き換え方法、電子制御装置、及び書き換え装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192334
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】電子制御装置のプログラム書き換え方法、電子制御装置、及び書き換え装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/00 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   G06F9/06 630A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-70947(P2013-70947)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-194688(P2014-194688A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2015年11月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】名取 拓志
【審査官】 塚田 肇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−287877(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0167071(US,A1)
【文献】 特開2008−193475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
書き換え可能な記憶媒体と、通信ネットワークを介して外部と通信するための通信手段を持つ車両用の電子制御装置に関して、
前記電子制御装置は、前記通信ネットワークに書き換え装置を接続し、前記通信手段を介して前記電子制御装置の記憶媒体のプログラムを書き換え可能に構成したプログラムを有し、
前記電子制御装置を複数個同一の通信ネットワークに接続し、
前記書き換え装置から、前記通信ネットワークに接続されている複数の電子制御装置に対して単一の識別子で同時にデータの送信を行い、
前記複数の電子制御装置はそれぞれ異なった識別子で前記書き換え装置に対して応答データを送信することで、
前記複数の同一電子制御装置に対して並列で同一プログラムの書き換え動作を実行し、
前記識別子は、前記電子制御装置が個体識別するために不揮発性メモリに保持している製造工場、製造ライン、製造番号、製造日のいずれかの個体識別データ、または前記個体識別データから生成した情報を含み、
前記電子制御装置は、自動車に搭載されるエンジン制御装置又は変速機制御装置であって、
前記プログラム書き換えは、前記電子制御装置が前記自動車に搭載される前に行われることを特徴とする電子制御装置のプログラム書き換え方法。
【請求項2】
前記個体識別データは、前記電子制御装置の不揮発性メモリのプログラム書き換えにより書き換わらない領域に保存することを特徴とする請求項に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記個体識別データは、電子制御装置の筐体外部に機械的読み取り手段に対応した形式で印字されていることを特徴とする請求項1からのいずれか記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記電子制御装置は、車両搭載時に一定の間隔で通信ネットワークにデータを送信する通常モードと、プログラムを書き換える場合のプログラム書き換えモードを有し、プログラム書き換えモード動作では、前記電子制御装置からの通信ネットワークへの定期的なデータ送信を停止することを特徴とする請求項1記載の電子制御装置。
【請求項5】
書き換え可能な記憶媒体と、通信ネットワークを介して外部と通信するための通信手段を持つ車両用の電子制御装置のプログラムを書き換える書き換え装置において、
前記書き換え装置は、前記通信ネットワークに接続され、前記通信手段を介して前記電子制御装置の記憶媒体のプログラムを書き換え、
前記電子制御装置は複数個同一の通信ネットワークに接続され、
前記書き換え装置から、前記通信ネットワークに接続されている複数の電子制御装置に対して単一の識別子で同時にデータの送信を行い、
前記複数の電子制御装置はそれぞれ異なった識別子で前記書き換え装置に対して応答データを送信することで、
前記複数の同一電子制御装置に対して並列で同一プログラムの書き換え動作を実行し、
前記書き換え装置は、プログラム書き換え前に、書き換え対象の前記電子制御装置の筐体に印字された個体識別データを機械的読み取り手段で読み取ることで、前記電子制御装置から応答される識別子を特定し、
前記電子制御装置の筐体に印字された前記個体識別データから特定した識別子と、プログラム書き換え時の前記電子制御装置の応答データに使用されている識別子を照合することで、前記電子制御装置の接続ミスや通信ネットワークの問題、電子制御装置の通信回路の故障を検出することを特徴とする書き換え装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両通信ネットワークに接続される電子制御装置等に関し、通信ネットワークを介して電子制御装置のプログラムを書き換える方法、書き換え機能を有する電子制御装置、書き換え装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行性能、安全性、快適性、省資源、省エネルギー等を追求する目的で、自動車等の車両にも多くのマイクロプロセッサを含む電子制御装置(ECU(Electronic Control Unit)) が搭載されている。
【0003】
車両のパワートレーン系、ボディ系、安全系、情報系等を制御するために複数のECUが搭載されており、これらECU同士が車載ネットワークシステム(CANプロトコル)で接続され、必要なデータのやりとりを実施し、車両全体の制御を行っている。
【0004】
この車載ネットワークシステムを使用して、ECUのプログラム書き換えを行うCANリプログラミングが公知である。
【0005】
特許文献1では、プログラム書き換え装置から取得された制御プログラムを、一旦ゲートウェイのRAMに蓄積し、その後ゲートウェイから各ECUをCANリプログラミングすることで、プログラムデータがゲートウェイのRAMに蓄積された後であれば、書き換え装置の接続状態を維持しなくても、ECUそれぞれに制御プログラムを書き込むことができるように構成したものである。
【0006】
特許文献2では、複数の異なるCANバスを介して接続された複数のECUにプログラムを書き換えるための書き換えデータを送信するゲートウェイにおいて、それぞれの異なるバスに接続されたECUの書き換えデータの送信を並行して行うように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−78324
【特許文献2】特開2010−271891
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述のプログラム書き換え方法は、書き換え装置から一旦ゲートウェイに高速通信を使用して書き換えデータを送信し、次にゲートウェイからそれぞれのECUにCAN通信を介して書き換えデータを送信し、ゲートウェイとECUの間でCANリプログラミングを行う構成である。そのため、書き換え装置と書き換え対象ECUの間にゲートウェイ装置が必要不可欠であり、ゲートウェイ分の部品コスト、製造コストが増加するという問題があった。
【0009】
また、書き換え装置からゲートウェイを介し、書き換えデータをECUに送信するため、書き換えシステム全体の構成が複雑になり、システムの故障率が上がってしまうといった問題もある。
【0010】
一方、ゲートウェイを使用せずに、複数のECUを並行でCANリプログラミングするには、書き換え装置を複数用意する必要があった。例えば10台のECUを並行でCANリプログラミングする場合には、10台の書き換え装置が必要になり、これもコストが増加する要因となる。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数のECUにCANリプログラミングを行う場合に、ゲートウェイなどの仲介装置を介さずに並行でプログラムを書き換えることで、プログラムの書き換え時間を短縮するようにした書き換え方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を達成するために、請求項1に係る車両用プログラム書き換え方法は、書き換え可能な記憶媒体と、通信ネットワークを介して外部と通信するための通信手段を持つ車両用の電子制御装置に関して、前記電子制御装置は、前記通信ネットワークに書き換え装置を接続し、前記通信手段を介して前記電子制御装置の記憶媒体のプログラムを書き換え可能に構成したプログラムを有し、前記電子制御装置を複数個同一の通信ネットワークに接続し、前記書き換え装置から、前記通信ネットワークに接続されている複数の電子制御装置に対して単一の識別子で同時にデータの送信を行い、前記複数の電子制御装置はそれぞれ異なった識別子で前記書き換え装置に対して応答データを送信することで、前記複数の同一電子制御装置に対して並列で同一プログラムの書き換え動作を実行することができるように構成している。
【0013】
これにより、書き換え装置からのデータ送信を複数の電子制御装置に同時に送信するとともに、複数の電子制御装置の応答それぞれを書込み装置が識別することが可能となり、複数の電子制御装置に対して並列でプログラムの書き換え動作が実施できるようになる。
【0014】
請求項2に係る電子制御装置が書き換え装置との通信で使用する通信ネットワークは、CANプロトコルによるバスであり、前記電子制御装置が応答に使用する識別子は、電子制御装置が個体識別するために不揮発性メモリに保持している個体識別データから生成することを特徴とする。
【0015】
これにより、電子制御装置自身の制御プログラムを変更することなく、個体識別データの設定を変更するのみで、複数の同一電子制御装置それぞれについて、重複しない識別子を割り当てることが可能となる。
【0016】
請求項3に係る電子制御装置が使用する個体識別データは、前記電子制御装置の不揮発性メモリのプログラム書き換えにより書き換わらない領域に保存することを特徴とする。
【0017】
これにより、プログラム書き換えを複数回実施する場合でも、同一の電子制御装置であれば、同一の個体識別データを使用することが可能となる。
【0018】
請求項4に係る電子制御装置が使用する個体識別データは、製造工場、製造ライン、製造番号、製造日のいずれかの情報を有していることを特徴とする。
【0019】
これにより、同一の電子制御装置であっても、重複しない個体識別データの設定が可能となる。
【0020】
請求項5に係る電子制御装置が使用する個体識別データは、電子制御装置の筐体外部に機械的読み取り手段に対応した形式で印字されていることを特徴とする。
【0021】
これにより、個体識別データを容易に取得可能となる。
【0022】
請求項6に係る電子制御装置は、車両搭載時に一定の間隔で通信ネットワークにデータを送信する通常モードと、プログラムを書き換える場合のプログラム書き換えモードを有し、プログラム書き換えモード動作では、前記電子制御装置からの通信ネットワークへの定期的なデータ送信を停止することを特徴とする。
【0023】
これにより、同一の識別子を複数の電子制御装置が送信することにより発生する通信ネットワークのエラー発生を防止することができ、複数の同一電子制御装置を同一の通信ネットワークに接続可能となる。
【0024】
請求項7に係る書き換え装置は、プログラム書き換え前に、書き換え対象の前記電子制御装置の筐体に印字された前記個体識別データを機械的読み取り手段で読み取ることで、前記電子制御装置から応答される識別子を特定することを特徴とする、
これにより、プログラム書き換え前に、効率的に電子制御装置が応答する識別子を特定可能となる。
【0025】
請求項8に係る書き換え装置は、前記電子制御装置の筐体に印字された前記個体識別データから特定した識別子と、プログラム書き換え時の前記電子制御装置の応答データに使用されている識別子を照合することで、前記電子制御装置の接続ミスや通信ネットワークの問題、電子制御装置の通信回路の故障を検出することを特徴とする。
【0026】
これにより、複数の電子制御装置を接続した場合でも、全ての電子制御装置に対して、接続ミスや通信ネットワークの問題、電子制御装置の通信回路の故障を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、複数のECUにCANリプログラミングを行う場合に、プログラムの書き換え時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態の書き換えシステムを示した概略ブロック図。
図2】本実施形態の書き換えシステムを示した詳細ブロック図。
図3】本実施形態の書き換え対象ECUの書き換え処理プログラムのフローチャートを示す図。
図4】本実施形態の書き換え対象ECUの書き換え処理プログラムのフローチャートを示す図。
図5】本実施形態の書き換え対象ECUのプログラム書き換えモード判別方法の実施例を示した概略図。
図6】本実施形態の書き換え対象ECUの個体識別データの構成と、個体識別データを使用して生成されたECU送信データ構成を示した概略図。
図7】本実施形態の書き換え装置の書き換え処理プログラムのフローチャートを示す図。
図8】本実施形態の書き換え装置の書き換え処理プログラムのフローチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を一層明らかにするために、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。
【0030】
図1は本実施形態の電子制御装置のプログラム書き換え方法、書き換え機能を有する電子制御装置、及び書き換え装置(これら全体を“書き換えシステム”とする)を示した概略ブロック図である。
【0031】
本実施形態の書き換えシステム1000は、書き換え装置100と、書き換え対象である電子制御装置(ECU)200a、200b、200cが、通信ネットワーク(CAN)300、を介して接続されている。ここで各電子制御装置は、例えば、後に自動車に搭載されるエンジン制御装置や変速制御装置などであり、搭載はプログラムの書き替え後に行われる。
【0032】
図1では、1つの書き換え装置100に対して、3つの書き換え対象ECUを接続したシステム構成を示したが、書き換え対象ECUの数は3つに限定することなく、1つから3つ以上の複数まで対応でき、特に書き換え対象ECU数の制限は無い。
【0033】
図2は本実施形態の書き換えシステムの書き換え装置100と書き換え対象のECU200aに対しての詳細を示した概略ブロック図である。
【0034】
書き換え対象ECU200aは、書き換え対象ECUの制御を司るCPU220aと、プログラムが格納された書き換え可能な記憶媒体であるFlash ROM230aと、通信でやり取りするデータを一時的に記憶するRAM240aと、ECUで使用する各種情報を保存するためのデータ記憶部250aと、ネットワークを介してデータ通信を行うための通信回路210aを備える。また、外部のセンサ入力などを処理する入力部260a、外部アクチュエータを駆動するための出力部270aも備える。図2では、書換え可能な記憶媒体230aの一例として、Flash ROMを記載しているが、これはプログラムを保存する書き換え可能な記憶媒体であればどのような物でも良く、EEPROM、ハードディスクなども適用可能である。
【0035】
書き換え装置100は、書き換え装置の制御を司るCPU120と、プログラムが格納されたROM130と、通信でやり取りするデータを一時的に記憶するRAM140と、書き換え結果などの過去情報を保存するためのデータ記憶部150と、ネットワークを介してデータ通信を行うための通信回路110と、書き換え対象ECUに印字された外部情報を読み取るための外部情報読み取り手段170と、外部情報読み取り手段から受け取った信号をCPUが理解可能なデジタルデータに変換する外部情報読み取り回路160を有する。
【0036】
書き換え装置100は、例えばパーソナルコンピュータなどに通信ネットワーク(CAN)に接続する通信インターフェースと、外部情報読み取り手段であるバーコードスキャン装置などを接続し、構成することも可能である。
【0037】
次に図3図4を用い、書き換え対象ECU200aの書き換え動作を説明する。CPU220aは、Flash ROM230aに記憶されているプログラムを読み出し、それをRAM240aに展開して実行する。RAM240aに展開してからプログラムを実行することで、プログラムが記憶されているFlash ROM230aを書き換えることが可能になる。このプログラムが実行されると、CPU220aはステップS100でプログラム書き換えモードか通常モードかを判断する。(このプログラム書き換えモードか否かの判断方法については、複数の判断方法があり、図5にて実施例1、2として後述する。)
【0038】
ステップS100で通常モードと判断された場合には車両搭載状態と判断し、ステップS105に遷移し、通信ネットワークへの定期データ送信を開始した後、図4のエンド処理に遷移し処理を終了する。一方、プログラム書き換えモードと判断された場合には、ステップS110に遷移し、通信ネットワークへの定期データ送信を停止し、プログラム書き換えモードへ遷移する。
【0039】
ステップS120では、通信ネットワークへの定期データ送信を停止した状態のまま、書き換え装置100からの書き換え開始要求データの受信を待つ。書き換え装置100から書き換え開始データを受信すると、ステップS130に遷移し、ECUの不揮発性メモリ(プログラム書き換えにより書き換わらないFlash ROM230a、あるいは、データ記憶部250aの領域)に記憶している個体識別データを使用してCAN識別子(CAN ID)を生成する。この個体識別データの詳細については、図6の説明として後述する。
【0040】
なお、この個体識別データはプログラム書き換えにより書き換わらないECU200aの不揮発性メモリの特定領域(Flash ROM230a、あるいは、データ記憶部250a)に保存すると共に、ECU200aの筐体外部に何かしらの形で印字される。これは、書き換え装置100が機械的に読み取れる形式であれば何でも良く、例えばバーコード(1次元、2次元)の形式でも良いし、ICタグの形式でも良い。
【0041】
次に、図3のステップS140にて、生成したCAN IDを使用して書き換え装置100に応答データを送信する。ここまでの処理が書き換えデータを受信するまでの前処理である。なお、次のステップS150以降の処理でECUが応答データに使用するCAN IDは、全てこのステップS130で生成したCAN IDを使用する。
【0042】
その後、ステップS150の判定処理で、全領域の書き込みが完了したか否か、又は、書き込みが失敗したか否か、を判断する。初回の場合には、まだ書き込みを実施していないため、次のステップS160に遷移する。
【0043】
ステップS160では、書き換えデータを受信するまで待機する。書き換え装置100から書き換えデータを受信すると、ステップS170に遷移し、受信したデータをFlash ROM230aに書き込み、続くステップS180にて、書き換えデータ受信に対する応答データを送信する。その後、再度ステップS150に戻り、全領域について書き込み実施するまで処理を繰り返す。
【0044】
ステップS150の判定処理で、全領域書き込み終了、又は、書き込み失敗と判断された場合、図4のステップS190に遷移する。
【0045】
ステップS190では、全領域の書き込みチェック要求を受信するまで待機する。書き換え装置100から書き込みチェック要求を受信すると、ステップS200で正常に全領域に書き込みが実施されたかを確認し、正常に全領域に書き込みが実施された場合には、ステップS210で書き換えOKの応答データを送信し、ステップS200で正常に全領域に書き込みが実施できなかった場合には、ステップS205で書き換えNGの応答データを送信し、書き換え処理を完了する。
【0046】
次に図5を使用してプログラム書き換えモードか通常モードかの判別方法の実施例を示す。
【0047】
(実施例1)
図5の(Flash ROMに保存する場合)(データ記憶部に保存する場合)は、プログラム書き換えモードか否かの判別フラグをFlash ROM230aかデータ記憶部250aに保存し、それを読み出して判別する方法である。この方法の場合、例えば、ECU製造時にこの判別フラグを読み出してプログラム書き換えモードの設定に使用とすることで、書き換え対象ECUは常にプログラム書き換えモードで動作するようになる。ECUがこの状態であれば、書き換えに使用する最低限の端子(電源端子、通信ネットワーク端子、GND端子など)のみを接続すればプログラム書き換えが実施できる状態となるため、プログラム書き換え時のECU端子接続状態を簡略化することができる。
【0048】
(実施例2)
図5の(入力センサ値が車両搭載状態ではありえない組み合わせで判断する場合)(入力センサ端子にセンサが接続されていない状態で判断する場合)は、ECUに備わっている入力端子の状態でプログラム書き換えモードか否かを判別する方法である。この方法は入力部260aで入力するセンサの状態が車両搭載状態ではありえない状態(例えば、トランスミッションをコントロールするECUの場合、入力レンジSWの状態が通常取りえない組み合わせとなっている状態など)の場合プログラム書き換えモードと判別する方法である。この方法の場合、書き換え対象ECUの端子状態のみでプログラム書き換えモード動作にするか、通常動作にするかを選択可能なため、不揮発性メモリに不要なデータを用意する必要がない。
【0049】
なお、本方法では入力端子の状態がオープン(センサが接続されていない状態)をプログラム書き換えモード動作にする判断条件に設定しても良い。この方法だと、ECUが車両搭載の状態ではセンサが接続される状態となるため通常動作モードで動作し、プログラム書き換え時にはセンサ入力を全てオープン状態とすることで、プログラム書き換えモード動作で使用することができる。
【0050】
次に図6を使用して、個体識別データの構成と、個体識別データを使用して生成されたECU送信データ構成について示す。
【0051】
図6に示した個体識別データは、29bitの拡張CAN IDに対応したデータ構成の例を示しており、個体識別データの全bit数が拡張CAN IDのIDで使用するbit数と同じ29bitになっている。
【0052】
個体識別データにはECUの個体識別が可能なように、製造工場、製造ライン、製造番号、製造日(年、日)の情報を含んでいる。
【0053】
このデータをCAN IDとして使用することで、複数の同一ECUを使用する場合でも、ECU毎に全て異なったCAN IDを生成することが可能となる。
【0054】
なお、図6では拡張CAN IDで使用する29bitのデータ構成を示したが、生産規模が小さいECUに対しては、最低限必要なデータのみを個体識別データに使用することで標準CAN IDの11bitのデータ構成として、使用することも可能である。また、CANデータ構成のDLC(4bit)の値、ECU送信データ(0〜64bit)のデータサイズと値については、送信する内容によって適した値とサイズで使用することが可能である。
【0055】
次に、図7図8を使用し書き換え装置の動作を説明する。図7のステップS300で外部情報読み取り手段170を使用し書き換え対象ECUの筐体外部に印字された個体識別データを読出し、外部情報読み取り回路160とCPU120を介し、RAM140に書き換え対象ECU100の固体識別データを格納する。外部情報読み取り手段170はECU200aが使用している固体識別データの印字形式に合わせた装置を使用する。例えばバーコード(1次元、2次元)形式の場合は、バーコードリーダとなり、ICタグ形式の場合にはICタグリーダとなる。
【0056】
次のステップS310では、書き換え対象全てのECUに対してこのステップS300を実施したか否かを判別する。例えば書き換え対象ECUを5台並列接続して書き換えを実施する場合、ステップS300を5回(ECU5台分)実施後にステップS320に遷移する。
【0057】
ステップS320では、通信ネットワークに接続されている全ECUに対して同一のCAN IDを使用して、書き換え開始要求のデータを送信する。CANプロトコルでは同一のネットワークに接続されている複数のECUに対して、同一のCAN IDを使用した場合には、1回のデータ送信で全てのECUに同一のデータを送信することができる。なお、書き換え装置からECUに対して送信するCAN IDは、ある特定のID値に予め決められている。
【0058】
次に、ステップS330で接続されている全てのECUから応答のデータを受信したかを確認する。各ECUが応答で使用するCAN IDは、ステップS300で読み出した個体識別データと等しいので、受信するCAN IDによってそれぞれのECUからの応答があるかないかを識別することができる。
【0059】
ステップS330で全てのECUからの応答データを受信後に次のステップS340に遷移する。ステップS340では、書き換えデータ(書き換え対象ECUのプログラム)を全て送信したか否かを判定する。ステップS340への初回遷移時は、まだ書き換えデータを送信していない状態なので、次のステップS350に遷移する。
【0060】
S350では通信ネットワークに接続されている全ECUに対して同一のCAN IDを使用して、書き換えデータを送信する。その後、ステップS360で接続されている全てのECUから応答のデータを受信したかを確認し、全てのECUから応答を受信した場合は、再度ステップS340に戻り、書き換えデータを全て送信したか否かを確認し、書き換えデータを全て送信していない場合には、再度ステップS350の処理を実施し、次の書き換えデータを送信する。CANプロトコルでは、一度の書き換えデータの送信では最大8byte(64bit)のデータしか送信できないため、この書き換えデータ送信を複数回実行することで、全ての書き換えデータを送信する。
【0061】
書き換えデータを全て送信実施後は、ステップS340から図8のステップS370に遷移し、通信ネットワークに接続されている全ECUに対して同一のCAN IDを使用して、書き込みチェック要求を送信する。その後、ステップS380で接続されている全てのECUから応答のデータを受信したかを確認し、全てのECUから応答を受信した場合は、ステップS390に遷移する。
【0062】
ステップS390では、各ECUの受信データを確認する。この時点で、書き換えOKの応答を返信したECUに対しては書き換えが正常に完了したと判断し、書き換えNGの応答を返信したECUに対しては書き換え失敗したと判断する。
【0063】
なお、図7図8の全ての書き換え対象ECUから応答データ受信を確認するステップS310、S330、S360、S380にて、ある特定のECUの応答データを受信できない状態が一定時間継続する場合には、その特定ECUに対して、通信ネットワークの接続ミスや通信ネットワークの問題、ECUの通信回路の故障などが発生していると判断し、処理を中断する構成としても良い。
【0064】
以上のようにして、本実施の形態に係る電子制御装置のプログラム書き換え方法、書き換え機能を有する電子制御装置、及び書き換え装置によると、複数のECUにCANリプログラミングを行う場合に、ゲートウェイなどの仲介装置を介さずに複数台のECUに対して、並行でプログラムを書き換えることが可能となり、プログラムの書き換え時間を短縮することができる。
【0065】
上記で開示した実施形態はすべての点で例示であり、制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明だけではなく、特許請求の範囲によって示され、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて様々な変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
1000・・・プログラム書き換えシステム、100・・・書き換え装置、200a,200b,200c・・・書き換え対象電子制御装置(ECU)、110,210a・・・通信回路、120,220a・・・CPU、130・・・ROM、230a・・・Flash ROM、140,240a・・・RAM、150,250a・・・データ記憶部、260a・・・入力部、270a・・・出力部、300・・・通信ネットワークバス、160・・・外部情報読み取り回路、170・・・外部情報読み取り手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8