特許第6192344号(P6192344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192344
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】踏切物体検知装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/00 20060101AFI20170828BHJP
   B61L 29/00 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   B61L23/00 A
   B61L29/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-84642(P2013-84642)
(22)【出願日】2013年4月15日
(65)【公開番号】特開2014-205444(P2014-205444A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207470
【氏名又は名称】大同信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106345
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 香
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 成人
(72)【発明者】
【氏名】播磨 義憲
(72)【発明者】
【氏名】村松 鋼二郎
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−138860(JP,U)
【文献】 特開2000−255432(JP,A)
【文献】 特開平11−278274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/00 − 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道の線路に設置された踏切の踏切道上における物体の有無を検知する感応部と、前記踏切から列車進入側へ且つ列車長より遠くへ離れて前記線路に設定された警報始動点に係る列車検知結果である始動点検知結果を取得する手段と、前記踏切から列車長より近くへ離れて前記線路に設定された警報終止点に係る列車検知結果である終止点検知結果を取得する手段と、前記感応部の物体検知結果と前記始動点検知結果と前記終止点検知結果とに基づいて前記警報始動点への列車進入とその後の前記踏切への列車進入とその後の前記踏切からの列車進出とを検知する物体検知論理判定部とを備えた踏切物体検知装置であって、前記物体検知論理判定部は、前記警報始動点への列車進入の検知から前記踏切への列車進入の検知までの間は前記感応部の検知した物体を障害物と判定し、前記踏切への列車進入の検知から前記踏切からの列車進出の検知までの間は前記感応部の検知した物体を列車と判定することにより、前記感応部にて検知された物体が障害物であるか列車であるかを弁別するようになっており、更に、前記終止点検知結果に基づく前記警報終止点に係る列車検知の成立と前記物体検知結果に基づく前記踏切に係る物体検知の成立とが共に成り立ったことを条件として前記踏切への列車進入の検知を行うとともに、前記踏切への列車進入の検知の後に前記終止点検知結果に基づく前記警報終止点に係る列車検知の不成立が煽り影響排除用の所定時間に亘って継続したことを条件として前記踏切からの列車進出の検知を行うようになっていることを特徴とする踏切物体検知装置。
【請求項2】
前記踏切への列車進入が先に検知され、その後に前記踏切からの列車進出が検知されたときのみ、踏切警報停止条件を踏切制御装置に提供するようになっていることを特徴とする請求項1記載の踏切物体検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道の複線区間や単線区間の踏切に設置される踏切保安装置に組み込まれて踏切道上の物体を検知する踏切物体検知装置に関し、詳しくは、検知した物体が列車なのか踏切障害物なのかの判別まで行うことにより、警報終止点に係るいわゆる煽り対策を強化して、踏切警報制御の質の向上に資する踏切物体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の線路の踏切に設置される踏切保安装置は(例えば非特許文献1,2参照)、列車を検知するための踏切制御子と、音響にて警報を発するためのスピーカとせん光にて警報を発するための警報灯を装備した踏切警報機と、第3種の踏切には無いが第1種の踏切では踏切遮断機と、踏切制御子の検知結果に基づいて踏切警報機や踏切遮断機の動作を制御する踏切制御装置とを具えている。
そして、踏切の手前の始動点に設置された踏切制御子で列車を検知すると、踏切警報機にて警報を発するとともに、少し時間をおいて第1種の踏切では踏切遮断機を降下させ、踏切通過後の終止点に設置された踏切制御子で列車通過を検知すると、警報等を止めるとともに、第1種の踏切では踏切遮断機を上昇させるようになっている。
【0003】
以下、そのような踏切保安装置の概要構成を、図面を引用して説明する。図6は、(a)が複線区間における踏切制御子等の配置図、(b)が踏切制御装置20と踏切障害物検知装置30の概要ブロック図、(c)が踏切制御装置20における下り側制御部23と下り側及び上り側の両方の警報制御部21のリレー回路図である。
【0004】
複線区間の踏切13に係る踏切保安装置では(図6(a)参照)、線路10のうち下り線11について、踏切13の起点側で手前位置の下り始動点ADCに始動点用踏切制御子が設置されるとともに、踏切13の終点側で列車通過後位置の下り終止点BDCに終止点用踏切制御子が設置される。また、線路10のうち上り線12についても、踏切13の終点側で手前位置の上り始動点CDCに始動点用踏切制御子が設置されるとともに踏切13の起点側で列車通過後位置の上り終止点DDCに終止点用踏切制御子が設置される。そして、何れの踏切制御子の列車検知区間も踏切道に掛からないよう、何れの踏切制御子も踏切道から離れた所に設置されるが、警報始動点ADC,CDC即ち下り始動点ADC及び上り始動点CDCと、警報終止点BDC,DDC即ち下り終止点BDC及び上り終止点DDCとで、踏切13からの離隔距離が異なっている。
【0005】
詳述すると、列車長が20〜600mであるところ、警報始動点ADC,CDCは、踏切警報を発してから列車が踏切13に到達するまでの時間を確保するために、例えば列車の走行速度が100km/Hの場合には踏切13から650〜850m程の遠くに設定される。そして、そこに設置された始動点用踏切制御子は、鉄道の線路10に設置された踏切13から列車進入側へ且つ列車検知長すなわち列車検知区間Sa,Scの幅より遠くへ離れて線路10に設置された警報始動点に係る列車検知を行う。また、警報終止点BDC,DDCは、踏切横断物等による誤作動を避けつつも列車の通過を早く検出するために、踏切13から例えば20〜25m程の近くに設定されるが、終止点用踏切制御子の列車検知長の半分すなわち列車検知区間Sb,Sdの幅の半分の長さ約15mよりは遠くに設定される。そして、そこに設置された終止点用踏切制御子は、踏切13から列車長より近くへ離れて線路13に設定された警報終止点に係る列車検知を行うものとなる。
【0006】
さらに、そのような踏切制御子の設置状況に基づき、複線区間の踏切13に係る踏切保安装置、中でも踏切制御装置20は(図6(b)参照)、下り始動点ADCに設置された始動点用踏切制御子からリレーで出力された列車検知結果をリレー出力そのままか或いは適宜な中継リレーを介して入力することにより下り始動点ADCに係る始動点検知結果APR(下始動R)を取得するとともに、同様のリレー出力・入力によって、下り終止点BDC,上り始動点CDC,上り終止点DDCに設置された夫々の踏切制御子から下り終止点BDCに係る終止点検知結果BPR(下終止R),上り始動点CDCに係る始動点検知結果CPR(上始動R),上り終止点DDCに係る終止点検知結果DPR(上終止R)を取得して、それに基づく論理判定を行うようになっている。
【0007】
具体的には、踏切制御装置20は、警報始動点ADC,CDCへの列車進入を検知することで列車の踏切13への接近を判定するとともに、引き続いて警報終止点BDC,DDCへの列車進入および列車進出を検知することで、その後の踏切13に係る列車通過を判定し、さらに、列車運転方向も検知して、踏切制御区間の始点である警報始動点ADC,CDCに列車が進入してから踏切制御区間の終点の警報終止点BDC,DDCを列車が進出するまでの期間は踏切警報Rリレーの出力にて警報灯14等に警報を発しさせる制御を行うようになっており、そのために(図6(b)参照)、警報制御部21と上り側制御部22と下り側制御部23とを具えている。
【0008】
下り側制御部23は(図6(b),(c)参照)、始動点検知結果APRと終止点検知結果BPRのリレー出力を条件とする下りSRリレーの自己保持回路で構成されていて、始動点検知結果APRが落下(非励磁)すると下りSRリレーが落下(非励磁)し、終止点検知結果BPRが動作(励磁)すると下りSRリレーが動作(励磁)するようになっている。この下りSRリレーの出力は、下り列車の下り始動点ADC進入から下り終止点BDC進入までの間だけ落下(非励磁)状態になり、それ以外は動作(励磁)状態になるので、下りの列車運転方向指示として用いられる。上り側制御部22も、同様に(詳細回路は図示せず)、始動点検知結果CPRの落下(非励磁)で落下(非励磁)し、終止点検知結果DPRの動作(励磁)で動作(励磁)する上りSRリレーの自己保持回路で構成されている。この上りSRリレーの出力は、上り列車の上り始動点CDC進入から上り終止点DDC進入までの間だけ落下(非励磁)状態になり、それ以外は動作(励磁)状態になるので、上りの列車運転方向指示として用いられる。
【0009】
警報制御部21は(図6(b),(c)参照)、下りSRリレーの出力と終止点検知結果BPRのリレー出力と上りSRリレーの出力と終止点検知結果DPRのリレー出力を条件とする踏切警報Rリレーで構成されていて、下りSRリレーが落下(非励磁)状態であるか終止点検知結果BPRが動作(励磁)状態であるときと、上りSRリレーが落下(非励磁)状態であるか終止点検知結果DPRが動作(励磁)状態であるときに、踏切警報Rリレーが落下(非励磁)状態になることで、列車が警報始動点ADC,CDCの列車検知区間Sa,Scに進入してから警報終止点BDC,DDCの列車検知区間Sb,Sdを進出するまで踏切警報を出させるようになっている。また、それ以外のときには、踏切警報Rリレーが動作(励磁)状態を採るので、列車が警報終止点BDC,DDCの列車検知区間Sb,Sdを進出すると踏切警報Rリレーが動作(励磁)するが、予め設定された所定時間たとえば1〜4秒の緩動性(警報停止の時素,遅延手段)を持ったリレーが踏切警報Rリレーに採用されているため、その所定時間が経過した後に、踏切警報Rリレーが動作(励磁)して、踏切警報を停止させるようになっている。
【0010】
このような踏切制御装置20や、上述した警報始動点ADC,CDC及び警報終止点BDC,DDCに設置された踏切制御子に加えて、踏切保安装置は(図6(a),(b)参照)、せん光にて警報を発するための警報灯14と、音響にて警報を発するための図示しないスピーカと、第1種の踏切では図示しない踏切遮断機とを具えている。これらの警報灯14等は、踏切13の両端部それぞれの脇に配設されていて(図6(a)では上り線側だけを図示した)、踏切制御装置20の踏切警報Rリレーの出力に従って警報を発するようになっている。さらに、この踏切保安装置は、踏切13に係る障害物検知を行う踏切障害物検知装置30も具えている。ここでは(図6(a),(b)参照)、感応部31が投光器32と受光器33との組からなるものを示したが、他の感応方式も用いられる。
【0011】
すなわち、踏切障害物検知装置30は、踏切道を通る人や車などの障害物を非接触で検知できるものであれば良く、赤外光・レーザ光での送受光に係る遮断の有無や(例えば非特許文献2参照)、レーダ方式で測定した距離の遠近(例えば特許文献1参照)などに応じて、踏切の中の障害物を検知するために、踏切13(踏切道)に臨んで設置された感応部31と、踏切13に接近して来る列車に停止信号を現示するための他装置(説明は割愛する)にその条件を出力する発報部と、それらの動作を制御する論理部(制御部)とを具えている。そのうち、感応部31は、上述した赤外光・レーザ光の送受光部(例えば非特許文献2参照)やレーダ方式の測距部(例えば特許文献1参照)を具備したものであり、障害物(物体)に対する遮断検出や遠近測定に基づく判別結果(障害物検知結果,物体検知結果)を障検Rリレーの出力(障害物検知出力,物体検知出力)で論理部(制御部)へ送出するようになっている。また、論理部(制御部)は、障検Rリレーの出力に応じて発報制御信号BZを生成し、この発報制御信号BZを発報部に送出することで、発報部による警報の開始や停止を制御するようになっている。発報部は、他装置(詳細は割愛する)を介して踏切に接近して来る列車に停止信号を現示する。
【0012】
さらに、踏切障害物検知装置30の論理部(制御部)は、設置先の踏切13を通過する列車(物体)を障害物として検知するのを回避するために、上述した下りSRリレーの出力と終止点検知結果BPRとを入力して、下りSRリレーの出力である下りの列車運転方向指示を踏切障害物検知の下り側ウィンドウとするとともに、終止点検知結果BPRを下り列車の到来時における踏切障害物検知の下り側マスクとすることで下り終止点BDCに係る列車検知区間Sbを下りの障検マスク区間とする。そして、下り列車の到来時には、すなわち下り列車が下りの踏切制御区間に進入して下りSRリレーが落下(無励磁)しているときには、終止点検知結果BPRが落下(無励磁)していれば障検Rリレーに応じた発報制御信号BZの生成を行うが、下り列車が下りの障検マスク区間に進入して終止点検知結果BPRが動作(励磁)すると障検Rリレーの状態にかかわらず発報制御信号BZを警報状態にすることなく発報制御信号BZを無警報状態にし続けるようになっている。
【0013】
また、繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、踏切障害物検知装置30の論理部(制御部)は、上りSRリレーの出力である上りの列車運転方向指示を踏切障害物検知の上り側ウィンドウとするとともに、終止点検知結果DPRを踏切障害物検知の上り側マスクとすることで上り終止点DDCに係る列車検知区間Sdを上りの障検マスク区間とし、上り列車の到来時すなわち上り列車が上りの踏切制御区間に進入したときにも、下り列車のときと同様に、発報制御信号BZの生成を行うようになっている。
さらに、踏切障害物検知装置30の論理部(制御部,論理判定部)は、障検Rリレーの出力状態に応じて発報制御信号BZを生成する際、予め設定された所定時間の緩動性(障害物検知の時素,遅延手段)を示すようにもなっている。踏切道を速やかに通り抜けるものは踏切障害物としないでエンスト等で踏切道内に滞留している自動車などを踏切障害物とする判別を簡便に行うために、障害物検知の時素が利用されており、その時間は6秒程度に設定されている。
【0014】
このような踏切保安装置について、その動作を、図面を引用して説明する。図7(a)は、下り列車の検知が正常になされた時のリレー信号のタイムチャート、同図(b)は、下り終止点BDCでの列車検知が良くなかった時のリレー信号のタイムチャートである。なお、両タイムチャートで時間軸の長さ言い換えれば単位長当りの時間が異なっており、(b)の時間軸の全長は、(a)の時間t7の部分を拡大したものとなっている。
ここでは、下り列車の場合だけ説明するが、上り列車の場合も同様である。
【0015】
先ず列車検知正常時の動作を説明する(図7(a)参照)。踏切13の踏切制御区間に列車の在線が全く無い状態では(図7(a)の左端部を参照)、下り始動点ADCでの列車検知の不成立に対応して始動点検知結果APRが動作(励磁)し続け、下り終止点BDCでの列車検知の不成立に対応して終止点検知結果BPRが落下(非励磁)し続ける。そして、それに応じて、下りSRリレーが動作(励磁)し続けるので、下りの列車運転方向指示は列車踏切通過の無いことを示し、踏切警報Rリレーが動作(励磁)し続けて、警報灯14等が踏切警報を出さないので、踏切13が開放状態・道路通行可能状態を維持する。人や車が踏切道を通行しても、下りSRリレーが動作(励磁)状態であるため、障検Rリレーの状態に拘わらず発報制御信号BZが落下(非励磁)状態を維持するので、踏切障害物に対する警報である障検警報が発せられることもない。
【0016】
そこに下り列車が走行して来て下り列車が下り始動点ADCの列車検知区間Saに進入すると(図7(a)の中央部を参照)、下り始動点ADCでの列車検知の成立に対応して始動点検知結果APRが落下(非励磁)し、それに応じて下りSRリレーが落下(非励磁)し、更にそれに応じて踏切警報Rリレーも落下(非励磁)するので、下りの列車運転方向指示が列車踏切通過の有ることを示すとともに、踏切警報Rリレーの落下(非励磁)に応じて警報灯14等が踏切警報を出すので、踏切13が遮断状態・通行禁止状態になる。このとき、人や車といった障害物が踏切道に進入すると、障検Rリレーが落下(非励磁)するが、このときは下りSRリレーが落下(非励磁)しているため、障害物の滞留時間ひいては障検Rリレーの落下継続時間が障害物検知の時素を上回った時点で、発報制御信号BZが動作(励磁)するので、障検警報が発せられる。障検警報は障害物の踏切道脱出まで続く。
【0017】
それから、下り列車の走行が続いて、下り列車の先頭が踏切13を通過して更に下り終止点BDCの列車検知区間Sbに進入すると(図7(a)の右側部分を参照)、下り終止点BDCでの列車検知の成立に対応して終止点検知結果BPRが動作(励磁)し、それに応じて下りSRリレーが動作(励磁)するが、終止点検知結果BPRの動作(励磁)に応じて踏切警報Rリレーが落下(非励磁)状態を継続するので、警報灯14等が踏切警報を出し続け、踏切13が遮断状態・通行禁止状態を維持する。また、下り列車が踏切道を通過している間は障検Rリレーが落下(非励磁)するが、下り列車の速度が余程遅くない限り、障検Rリレーの時素(障害物検知の時素)の時間が経過する前に終止点検知結果BPR利用の下り側マスクによる抑制が働いて、発報制御信号BZが落下(非励磁)状態を維持するので、下り列車を障害物と誤検出して余分な障検警報が発せられることもない。
【0018】
そして、下り列車の最後尾が踏切13を通過して更に下り終止点BDCの列車検知区間Sbから進出すると、下り終止点BDCでの列車検知の不成立に対応して終止点検知結果BPRが落下(非励磁)し、それから更に警報停止の時素の時間が経過すると踏切警報Rリレーが動作(励磁)して、警報灯14等が踏切警報を停止するので、踏切13が開放状態・道路通行可能状態に戻る。
このように、下り始動点ADCへの列車進入と下り終止点BDCへの列車進入および列車進出が的確に検知されれば、踏切警報も障検警報も適切に発せられる。
【0019】
次に下り終止点BDCで列車検知不良が起きた時の動作を説明する(図7(b)参照)。ここでは、下り終止点BDCの踏切制御子が故障して列車検知が全く成立しないため修理が必要になった重篤な場合には触れず、踏切制御子が正常であっても発生しうる列車検知不良について述べる。踏切制御のための列車検知装置として多用されている上述の踏切制御子や他の一般的な軌道回路は、列車の車輪と線路のレールとが接触して電気導通可能な短絡状態になることを前提として列車検知を行うため、列車走行の位置や状態によって不定期に一時的な接触不良が発生すると、踏切制御子に異常が無くても、そして終止点BDCの列車検知区間Sbに列車が在線しているにも拘わらず、列車検知の成立を示す動作(励磁)状態であるべき終止点検知結果BPRに、列車検知の不成立を示す落下(非励磁)状態への揺らぎが、発現する(図7(b)のBPR波形の*や**部分を参照)。これがいわゆる“煽り”であり、その悪影響を軽減する試み等が煽り対策と呼ばれている。
【0020】
そのような終止点検知結果BPRの一時的な落下(非励磁)が短時間であれば(図7(b)のBPR波形の*部分を参照)、踏切制御装置20の踏切警報Rリレーも、踏切障害物検知装置30の発報制御信号BZも、それぞれに設定された時素の働きによって応動が抑制(マスク)されるので、適切な落下(非励磁)を維持し続ける。これに対し、終止点検知結果BPRの一時的な落下(非励磁)が警報停止の時素や障害物検知の時素の時間より長いと(図7(b)のBPR波形の**部分を参照)、列車の踏切通過完了前に踏切制御装置20の踏切警報Rリレーが動作(励磁)して踏切警報が早過ぎるタイミングで停止したり、列車の踏切通過途中で終止点検知結果BPR利用の障検マスクが一時的に機能を喪失して列車が踏切障害物として誤検知されるため踏切障害物検知装置30の発報制御信号BZが動作(励磁)して障検警報が過剰に発せられることになる。
【0021】
もっとも、そのような不所望な事態の発生は、警報停止の時素や障害物検知の時素を適切な値に設定することで、防止・回避されている。上述したような“煽り”すなわち警報終止点に係る一時的な列車検知の不成立は、レール踏頂面(踏面)に錆が発生していたり昆虫の体内からの脂肪分などが付着していたり、さらには列車の揺れ等で車輪がレールから浮き上がったりすることで、生じるのが大半であるが、そのようなことが原因で列車の車輪と線路のレールとが電気導通不能に陥る時間は上記の各時素を超えて長時間に及ぶことが想定しえないほど短いため、各時素の設定値の決定や調整は比較的容易であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2006−214961号公報
【特許文献2】特開2007−015645号公報
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】鉄道技術者のための信号概論 信号シリーズ1 「鉄道信号一般」社団法人日本鉄道電気技術協会2005年3月18日発行、改訂版p.107〜118
【非特許文献2】鉄道技術者のための電気概論 信号シリーズ8 「踏切保安装置」社団法人日本鉄道電気技術協会2007年10月30日発行、4版p.35〜120
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、列車車両の軽量化や列車運行の高速化が進んだことにより、レール踏頂面から錆や脂肪分などの絶縁物を車両の重みで破壊や除去する能力が低下する一方、レールからの車輪浮上は頻度も時間長も増加傾向にある。
このため、警報終止点に係る一時的な列車検知の不成立による不所望な事態の発生を防止・回避する煽り対策に利用されている踏切制御装置の警報停止の時素や踏切障害物検知装置の障害物検知の時素について、時間長を増やす対策を採ることになるので、調整代が減る傾向にあり、それだけに頼るのでは適正値の設定が難しくなりかねない。また、警報停止の時素を長くすると、列車が踏切を通過してから踏切が開くまでの時間まで延びるので、踏切通行の円滑化の要請に反することとなる。さらに、障害物検知の時素を長くすると、真の踏切障害物に対する障検警報が遅れるので、これも好ましくない。
【0025】
これに対しては、車輪とレールとの短絡によらない列車検知装置が求められ、例えば車軸検知装置が実用化されているが、これは、設備費が高いことや、レールに検知器を取り付けなければならないので保線の保全作業に支障が生じることなどの理由から、さほど普及していない。他の列車検知装置についても、レールの短絡によらない装置は、ほぼ同様の理由で、やはり普及していない。
また(例えば特許文献2参照)、列車を非接触センサで検知して、そのセンサ出力状態と終止点条件とにより、踏切列車通過を判定するようになった踏切列車通過検知装置も、提案されているが、この装置は、踏切道を列車の最後尾が通過し終わるのをいち早く検知することを目的として開発されたものなので、非接触センサが踏切道から外れた所に設置されており、その非接触センサの検知出力の立ち下がり即ち列車検知の成立から不成立への状態遷移に応じて直ちに列車踏切通過を判定するようになっている。
【0026】
しかも、この装置では、非接触センサの検知出力の立ち下がり時に踏切列車通過を判定するに際して終止点条件が列車の存在を示していることを条件とすること以外は、終止点条件の役目が非接触センサの故障判定に変更されていて、踏切警報停止の条件として踏切道への列車の進入および進出に係るシーケンスチェックを終止点条件でなく非接触センサの検知出力に基づいて行うようになっており、終止点条件に係る列車検知の不成立は、最早、列車の踏切道の完全通過の確認に用いられるものでは無くなっている。このように警報終止点に係る一時的な列車検知の不成立による悪影響は考慮されていないので、終止点用踏切制御子による列車検知が煽った場合、非接触センサが列車を検知しているときに警報終止点での列車検知が一時的だが時素より長い時間に亘って不成立になると、非接触センサが故障したとの誤判定が下されてしまう。
【0027】
さらに、この装置でも、上述した車軸検知装置が検知器を追加設置しなければならないのと同様、踏切道を通る障害物を非接触で検知できる踏切障害物検知装置が踏切に設置されている場合でも、非接触センサは別に設けなければならない。
そこで、車輪とレールとの短絡を前提にした列車検知であっても警報終止点に係る一時的な列車検知の不成立による悪影響が少ない踏切制御を可能とする踏切物体検知装置を踏切道上の物体有無の検知結果の利用にて簡便に実現することが、技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の踏切物体検知装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、踏切道上に滞留する物体を、列車の走行を阻害する障害物として検知し、前記踏切に接近して来る列車に停止信号を現示することにより、障害物を検知する踏切障害物検知装置としての機能を発揮する踏切物体検知装置であって、列車が前記踏切道を通過したことを検知し、これを踏切警報停止条件として踏切制御装置に提供することにより、踏切警報制御支援機能を発揮するものであることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の踏切物体検知装置は(解決手段2)、鉄道の線路に設置された踏切の踏切道上における物体の有無を検知する感応部と、前記踏切から列車進入側へ且つ列車長より遠くへ離れて前記線路に設定された警報始動点に係る列車検知結果である始動点検知結果を取得する手段と、前記踏切から列車長より近くへ離れて前記線路に設定された警報終止点に係る列車検知結果である終止点検知結果を取得する手段と、前記感応部の物体検知結果と前記始動点検知結果と前記終止点検知結果とに基づいて前記警報始動点への列車進入とその後の前記踏切への列車進入とその後の前記踏切からの列車進出とを検知する物体検知論理判定部とを備えた踏切物体検知装置であって、前記物体検知論理判定部は、前記警報始動点への列車進入の検知から前記踏切への列車進入の検知までの間は前記感応部の検知した物体を障害物と判定し、前記踏切への列車進入の検知から前記踏切からの列車進出の検知までの間は前記感応部の検知した物体を列車と判定することにより、前記感応部にて検知された物体が障害物であるか列車であるかを弁別するようになっていることを特徴とする。
【0030】
さらに、本発明の踏切物体検知装置は(解決手段3)、上記解決手段2の踏切物体検知装置であって、前記物体検知論理判定部は、前記終止点検知結果に基づく前記警報終止点に係る列車検知の成立と前記物体検知結果に基づく前記踏切に係る物体検知の成立とが共に成り立ったことを条件として前記踏切への列車進入の検知を行うとともに、前記踏切への列車進入の検知の後に前記終止点検知結果に基づく前記警報終止点に係る列車検知の不成立が煽り影響排除用の所定時間に亘って継続したことを条件として前記踏切からの列車進出の検知を行うものであることを特徴とする。
【0031】
また、本発明の踏切物体検知装置は(解決手段4)、上記解決手段1〜3の踏切物体検知装置であって、前記踏切への列車進入が先に検知され、その後に前記踏切からの列車進出が検知されたときのみ、踏切警報停止条件を踏切制御装置に提供するようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
このような本発明の踏切物体検知装置にあっては(解決手段1)、踏切障害物検知装置として機能する踏切物体検知装置に踏切警報制御支援機能も持たせたことにより、踏切道上の物体を検知する踏切物体検知装置が有れば、踏切外の物体を検知する非接触センサや車軸検知装置を追加設置しなくても、列車の踏切進入および踏切進出を論理判定にて検知することができる。踏切障害物検知装置用のセンサは一般に非接触センサであって列車の煽りの影響を受け難いので、列車の煽りの影響を受け易い接触式の踏切制御子で得た終止点検知結果だけから踏切警報停止条件を確定するのに比べ、警報停止の時素を長くするまでもなく、列車の踏切進出をより的確に検知することができる。したがって、この発明によれば、車輪とレールとの短絡を前提にした列車検知であっても警報終止点に係る一時的な列車検知の不成立による悪影響が少ない踏切制御を可能とする踏切物体検知装置を、踏切道上の物体有無の検知結果の利用にて簡便に実現することができる。
【0033】
また、本発明の踏切物体検知装置にあっては(解決手段2)、踏切道上の物体を検知する感応部が、始動点検知結果と終止点検知結果とに基づく論理判定での弁別によって踏切障害物の検知と踏切通過列車の検知とに共用されるとともに、始動点検知結果に基づく警報始動点への列車進入の検知に後続する踏切への列車進入および列車進出の検知が、終止点検知結果だけでなく感応部の物体検知結果も用いる論理判定にて行われるようにしたことにより、踏切外の物体を検知する非接触センサや車軸検知装置を追加設置しなくても、列車の踏切進入および踏切進出を的確に検知することができる。
【0034】
すなわち、感応部のセンサは、踏切障害物検知用でもあるので踏切横断を邪魔しないよう一般に非接触センサが採用されることから、その物体検知結果が列車の煽りの影響を受け難いため、列車の煽りの影響を受け易い接触式の踏切制御子で得た終止点検知結果だけから踏切警報停止条件を確定していた従来に比べ、本発明では、異質な両方式での検知結果を論理判定にて統合して障害物と列車とを弁別したうえで列車の踏切進出を確定していることも相まって、例え踏切制御用の警報停止時素や踏切障害物検知用の障害物検知時素が従来のままであっても、列車の踏切進出の検知確度が向上することとなる。したがって、この発明によれば、車輪とレールとの短絡を前提にした列車検知であっても警報終止点に係る一時的な列車検知の不成立による悪影響が少ない踏切制御を可能とする踏切物体検知装置を、踏切道上の物体有無の検知結果の利用にて簡便に実現することができる。
【0035】
また、本発明の踏切物体検知装置にあっては(解決手段3)、煽り対策用の時素と論理判定との好適な組み合わせ態様を細分化して規定したことにより、警報終止点に係る一時的な列車検知の不成立による悪影響を少なくすることができる物体検知論理判定部が具体化されて、踏切物体検知装置をより簡便に実現することができることとなる。
【0036】
さらに、本発明の踏切物体検知装置にあっては(解決手段4)、踏切警報停止条件を踏切制御装置に提供するに際して提供実施の条件として踏切からの列車進出の検知だけでなくそれに先行する踏切への列車進入の検知も用いられるようにしたことにより、列車の踏切道の完全通過を正確に確認することができるので、終止点検知結果に基づく警報終止点に係る列車検知の不成立を踏切からの列車進出の検知条件としていても、踏切警報の早過ぎる停止を的確に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施例1について、踏切物体検知装置の構造を示し、(a)が踏切物体検知装置の一部を担う踏切制御装置の概要ブロック図、(b)が踏切物体検知装置の大部を担う踏切障害物検知装置の概要ブロック図、(c)が踏切障害物検知装置の物体検知論理判定部のうち下り列車に係る部分のブロック図である。
図2】(a)が踏切制御装置の下り側制御部と警報制御部のリレー回路図、(b)が踏切障害物検知装置の物体検知論理判定部のリレー回路図である。
図3】列車検知正常時のリレー信号のタイムチャートである。
図4】警報終止点での列車検知不良時のリレー信号のタイムチャートである。
図5】本発明の実施例2について、物体検知論理判定部をユニット化した片側制御代替装置と既存の踏切制御装置および踏切障害物検知装置とを組み合わせた踏切保安装置の概要ブロック図である。
図6】従来の踏切保安装置を示し、(a)が複線区間における踏切制御子等の配置図、(b)が踏切制御装置と踏切障害物検知装置の概要ブロック図、(c)が踏切制御装置における下り側制御部と警報制御部のリレー回路図である。
図7】(a)が列車検知正常時のリレー信号のタイムチャート、(b)が警報終止点での列車検知不良時のリレー信号のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
このような本発明の踏切物体検知装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜2により説明する。
図1図4に示した実施例1は、上述した解決手段1〜解決手段4(出願当初の請求項1〜請求項4)を踏切障害物検知装置を改造する態様で具現化したものであり、図5に示した実施例2は、上述した解決手段1〜4(出願当初の請求項1〜4)を上り用と下り用とに分けてユニット化してから踏切制御装置や踏切障害物検知装置と組み合わせる態様で具現化したものである。
【0039】
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、筐体や機械部などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に記号図や回路図を多用した。また、それらの図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示したので、さらに、それらについて背景技術の欄で述べたことは以下の各実施例についても共通するので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【実施例1】
【0040】
本発明の踏切物体検知装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が踏切物体検知装置40+50の一部をなす踏切制御装置40の概要ブロック図、(b)が踏切物体検知装置40+50の大部をなす踏切障害物検知装置50の概要ブロック図、(c)が踏切障害物検知装置50の物体検知論理判定部56〜59のうち下り列車に係る部分のブロック図である。また、図2は、(a)が踏切制御装置40の下り側制御部43と警報制御部21のリレー回路図、(b)が踏切障害物検知装置50の物体検知論理判定部56〜59のリレー回路図である。
【0041】
この実施例に係る踏切保安装置が既述した従来装置と相違するのは、既述した踏切制御装置20に代えて又はそれを少しだけ改造することで新たな踏切制御装置40が導入された点と(図1(a),図2(a)参照)、踏切障害物検知装置30に代えて又はその論理部(物体検知論理判定部)を改造して踏切警報制御支援機能を追加することで新たな踏切障害物検知装置50が導入された点である(図1(b),(c),図2(b)参照)。
【0042】
なお、線路10に踏切13が設置されていることや、踏切13に警報灯14が設置されていること、走行列車からみて踏切13の手前に位置する下り始動点ADC及び上り始動点CDC(踏切警報始動点)の所で線路10に始動点用踏切制御子が設置されていること、走行列車からみて踏切13の通過先に位置する下り終止点BDC及び上り終止点DDC(踏切警報終止点)の所で線路10に終止点用踏切制御子が設置されていることは、従来のままである(図6(a)参照)。
【0043】
踏切物体検知装置40+50のうち従来との相違が小さい踏切制御装置40を先に説明すると、踏切制御装置40が既述した踏切制御装置20と相違するのは、下り側制御部23が終止点検知結果BPRに代えて踏切障害物検知装置50のリレー出力の下り警報停止R(踏切警報停止条件)を入力する下り側制御部43になっている点と、上り側制御部22が終止点検知結果DPRに代えて踏切障害物検知装置50のリレー出力の上り警報停止R(踏切警報停止条件)を入力する上り側制御部42になっている点である。警報制御部21は、そのまま踏切制御装置20から引き継がれており、下りSRリレー及び終止点検知結果BPRや上りSRリレー及び終止点検知結果DPRを入力している。
【0044】
下り側制御部43は(図1(a),図2(a)参照)、始動点検知結果APRと下り警報停止Rを条件とする下りSRリレーの自己保持回路で構成されていて、始動点検知結果APRが落下(非励磁)すると下りSRリレーが落下(非励磁)し、下り警報停止Rが動作(励磁)すると下りSRリレーが動作(励磁)するようになっている。
この下りSRリレーの出力は、下り列車の下り始動点ADC進入から下り警報停止Rの動作(励磁)までの間だけ落下(非励磁)状態になり、それ以外は動作(励磁)状態になるが、後で詳述するように踏切障害物検知装置50が踏切13からの列車進出を検知すると下り警報停止Rリレーを動作(励磁)させるようになっているので、引き続き下りの列車運転方向指示として機能する。
【0045】
上り側制御部42も、同様に(詳細回路は図示せず)、始動点検知結果CPRの落下(非励磁)で落下(非励磁)し、上り警報停止Rの動作(励磁)で動作(励磁)する上りSRリレーの自己保持回路で構成されている。この上りSRリレーの出力は、上り列車の上り始動点CDC進入から上り警報停止Rの動作(励磁)までの間だけ落下(非励磁)状態になり、それ以外は動作(励磁)状態になるが、やはり後で詳述するように踏切障害物検知装置50が踏切13からの列車進出を検知すると上り警報停止Rリレーを動作(励磁)させるようになっているので、引き続き上りの列車運転方向指示として機能する。
【0046】
警報制御部21は、既述したように上り側か下り側の制御部42,43によって警報始動点ADC,CDCへの列車進入が検知されてからその後に踏切13に係る列車通過が検知されるまでの間に加えて終止点検知結果BPR,DPRに基づいて警報終止点BDC,DDCに係る列車検知が成立している間も踏切13に係る踏切警報を出させる制御を行うもののままであるが、踏切障害物検知装置50による踏切13からの列車進出の検知に応じて下り警報停止Rリレーや上り警報停止Rリレーさらには下りSRリレーや上りSRリレーが動作(励磁)することで踏切13に係る列車通過が分かるようになっているため、下りSRや上りSRを介して間接的に踏切障害物検知装置50の利点を享受することで煽り対策の強化されたものとなっている。
【0047】
踏切障害物検知装置50が(図1(b),(c),図2(b)参照)、既述した踏切障害物検知装置30と相違するのは、その論理部が機能強化されて物体検知論理判定部56〜59になっている点である。
踏切13の踏切道上における物体の有無を検知する感応部31と、踏切に接近して来る列車に対して他装置(詳細は割愛する)を介して停止信号を現示する発報部は、踏切障害物検知装置30からそのまま踏切障害物検知装置50に引き継がれている。
【0048】
下り終止点BDCに係る終止点検知結果BPRを取得する下り終止点信号入力回路55や,終止点検知結果DDCに係る終止点検知結果DPRを取得する上り終止点信号入力回路は、踏切障害物検知装置30の下り側マスクや上り側マスクの入力回路が転用されている。下り終止点信号入力回路55は、上述した下り始動点信号入力回路44と同様に中継リレーで具体化したものを図示したが、この回路44も、図示を割愛した上り終止点信号入力回路も、中継不要の場合、中継リレーを省いて、踏切制御子の出力を入力する配線や接続だけで具体化することが可能である。踏切13の踏切道上の物体を検知する感応部31から物体検知結果を取得する手段は、感応部31の障検Rリレーの出力(物体検知結果)を配線や接続だけで入力する回路を図示したが、上記の信号入力回路44,55と同様に中継リレーで中継することで具体化しても良い。
【0049】
物体検知論理判定部56〜59は、設置先の踏切13の踏切道に滞留している障害物を判別検知するのに加えて、踏切13を通過する列車をも判別検知するため、それもシーケンスチェックにて的確に弁別して検知するために、上述した下り・上りSRリレーの出力と終止点検知結果BPR,DPRと感応部31からの障検Rリレー出力とを入力し、下り・上りSRに基づいて警報始動点ADC,CDCへの列車進入を把握するとともに、障検Rリレー出力と終止点検知結果BPR,DPRとに基づいて踏切13への列車進入が行われたことを確認し、更に終止点検知結果BPR,DPRと下り・上りSRと障検Rとに基づいて踏切13からの列車進出を確認するようになっている。その際、障害物を検知したときには踏切障害物検知装置30と同様に発報制御信号BZを出力し、警報始動点ADC,CDCへの列車進入後に踏切13への列車進入および列車進出を検知したときには従来は無かった上り警報停止Rや下り警報停止Rをリレー出力するようにもなっている。
【0050】
上りと下りに分けて説明すると、物体検知論理判定部56〜59のうち、下り列車の検知に係る部分は、始動点検知結果APRに基づく下り始動点ADC(警報始動点)への列車進入を踏切制御装置40の下り側制御部43の下りSRリレー出力に基づいて把握するとともに、その後の踏切13に係る下り列車の通過を下り終止点BDC(警報終止点)に係る終止点検知結果BPRと感応部31の障検Rリレーの出力(物体検知結果)とに基づいて検知するものであり、特に後者の踏切13に係る列車通過の検知については、終止点検知結果BPRに基づく下り終止点BDCに係る列車検知の成立と障検Rリレー出力の物体検知結果に基づく踏切13に係る物体検知の成立とを加重条件として踏切13への列車進入の検知を行うとともに、終止点検知結果BPRに基づく下り終止点BDCに係るに係る煽り影響排除用時素経過後の列車検知の不成立と上述した踏切13への列車進入の検知済みと障検Rリレー出力の物体検知結果に基づく踏切13に係る物体検知の不成立とを加重条件として踏切13からの下り列車進出の検知を行うようになっている。
【0051】
同様に、物体検知論理判定部56〜59のうち、上り列車の検知に係る部分は、始動点検知結果CPRに基づく上り始動点CDC(警報始動点)への列車進入を踏切制御装置40の上り側制御部42の上りSRリレー出力に基づいて把握するとともに、その後の踏切13に係る上り列車の通過を上り終止点DDC(警報終止点)に係る終止点検知結果DPRと感応部31の障検Rリレーの出力(物体検知結果)とに基づいて検知するものであり、特に後者の踏切13に係る列車通過の検知については、終止点検知結果DPRに基づく上り終止点DDCに係る列車検知の成立と障検Rリレー出力の物体検知結果に基づく踏切13に係る物体検知の成立とを加重条件として踏切13への列車進入の検知を行うとともに、終止点検知結果DPRに基づく上り終止点DDCに係る煽り影響排除用時素経過後の列車検知の不成立と上述した踏切13への列車進入の検知済みと障検Rリレー出力の物体検知結果に基づく踏切13に係る物体検知の不成立とを加重条件として踏切13からの上り列車進出の検知を行うようになっている。
【0052】
このように下り列車の検知に係る部分と上り列車の検知に係る部分は、下り線11用か上り線12用かという相違はあるものの、踏切13の設置された線路10を走行する列車について同様の検知を行うものであり、回路構成も同様のもので良いので、以下、ブロック図とリレー回路とを図示した下り列車の検知に係る部分について詳述する。
物体検知論理判定部56〜59のうち下り列車に係る部分は(図1(c),図2(b)参照)、何れもリレー回路からなる下り終止点信号入力回路55と障検列車進入検知回路56と障害物検知回路57と列検期間リセット回路58と警報停止Rリレー回路59とを具備している。
【0053】
障検列車進入検知回路56は、常時落下している即ち常態では励磁されない障検列車進入検知Rリレーを主体としたリレー回路であり、後述する列検期間リセットRリレーの落下接点と終止点検知結果BPRの扛上接点と障検Rリレーの落下接点とを条件としており、下り列車が下り終止点BDCの列車検知区間Sbに進入して、終止点検知結果BPRが動作(励磁)したとき、そのときには既に感応部31が正常であれば下り列車を検知していて、障検Rリレーが落下(非励磁)しているはずなので、終止点検知結果BPRの動作(励磁)と障検Rリレーの落下(非励磁)との双方成立をもって、障検列車進入検知Rリレーが動作(励磁)するようになっている。このような障検列車進入検知回路56は、下り列車が踏切道に進入したことを従来より厳密にチェック(的確に検知)することになる。なお、この回路56は、自己保持回路になっていて、下り列車の踏切13への進入検知の成立結果である障検列車進入検知Rリレーの動作(励磁)を、後述する列検期間リセットRリレーが動作(励磁)するまでの間、維持するようになっている。
【0054】
障害物検知回路57は、約6秒の障害物検知時素を持った常時動作の発報制御信号BZリレーを主体としたリレー回路であり、障検列車進入検知回路56の障検列車進入検知Rリレーの扛上接点と障検Rリレーの扛上接点とを条件としており、障検列車進入検知Rの落下(非励磁)と障検Rリレーの落下(非励磁)との双方成立が障害物検知時素を超えて継続したことをもって発報制御信号BZリレーが落下するようになっている。このような障害物検知回路57は、下り列車が踏切13の踏切道に進入したことが検知されたときから進出が検知されるまでの間を除き、換言すると下り列車が踏切13の踏切道に進入したことが検知されるまでは、感応部31の物体検知結果に基づいて踏切障害物の検知を行い、踏切道上に物体の有ることが感応部31によって検知されると、踏切障害物が存在していると判定するものとなっている。なお、下り列車の踏切13への進入検知から進出検知までの間は、踏切障害物の検知が行われないので、踏切道上に物体の有ることが感応部31によって検知されると、列車が踏切13を通過していると判定されることとなる。
【0055】
列検期間リセット回路58は、常時落下している即ち常態では励磁されない列検期間リセットRリレーを主体としたリレー回路であり、上述した下りSRリレーの扛上接点と終止点検知結果BPRの扛上接点とを条件としており、下り列車が下り始動点ADCに進入して下りSRリレーが落下(非励磁)した後に、下り列車が下り終止点BDCを進出して終止点検知結果BPRが落下(非励磁)すると、列検期間リセットRリレーが動作(励磁)するが、1〜4秒程度の煽り影響排除用時素を持った時素リレーBPSLRや,適宜な時素BPSLURを利用して動作タイミングが調整されているので、列検期間リセットRリレーは、下り列車が終止点BDCの列車検知区間Sdを進出して、煽り影響排除用時素(1〜4秒)後に一瞬だけ動作し、上述した障検列車進入検知Rリレーの自己保持を断つものとなっている。
【0056】
警報停止Rリレー回路59は、常時落下している即ち常態では励磁されない下り警報停止Rリレーを主体としたリレー回路であり、上述した煽り影響排除用時素リレーBPSLRの扛上接点と障検列車進入検知Rの扛上接点と障検Rリレーの扛上接点とを条件としており、それらのリレーが総て動作(励磁)したときに下り警報停止Rリレーが動作(励磁)するようになっている。このような警報停止Rリレー回路59は、踏切13に係る下り列車の通過を検知するに際し、終止点検知結果BPRに遅れて応動する時素リレーBPSLRの動作(励磁)によって下り列車が下り終止点BDCの列車検知区間Sb内に在線することをチェックすることに加えて、障検列車進入検知Rリレーの出力に基づいて下り列車が踏切道に進入していたことをチェックするとともに、障検Rリレーの出力に基づいて下り列車が踏切道を進出したことまでチェックするものとなっている。これらの三重の条件により、警報停止Rリレー回路59は、下り列車が踏切道を通過したことを従来より厳密にチェック(的確に検知)することになり、ひいては、下り列車の接近時や通過時の下り終止点BDCに係る列車検知の不良動作による踏切警報の早過ぎる停止の防止に寄与するものとなっている。
【0057】
この実施例1の踏切物体検知装置40+50について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図3は、下り列車の検知が正常になされた時のリレー信号のタイムチャートであり、図4は、下り終止点BDCでの列車検知が良くなかった時のリレー信号のタイムチャートである。
なお、両図のタイムチャートで時間軸の長さ言い換えれば単位長当りの時間が異なっており、図4の時間軸の全長は、図3の時間t3の部分を拡大したものとなっている。
【0058】
踏切物体検知装置40+50を使用するには、従来の踏切制御装置20と踏切障害物検知装置30をそれぞれ新たな踏切制御装置40と踏切障害物検知装置50で置き換えれば良く(図1(a),(b)参照)、それ以外は、既述した踏切保安装置がそのまま使用される(図6(a)参照)。踏切制御子や警報灯14も従来同様に設置され、各装置間の配線接続も従来同様になされる。
なお、踏切障害物検知装置30から踏切障害物検知装置50への更新については、論理部を物体検知論理判定部56〜59に更新するだけでも足り、その場合、感応部31や発報部は踏切障害物検知装置30の物を継続使用することができる。
【0059】
また、踏切制御装置20から踏切制御装置40への更新については、上り側制御部42の入力のうち終止点検知結果DPRの入力を踏切障害物検知装置50の上り警報停止Rの入力に変更するとともに、下り側制御部43の入力のうち終止点検知結果BPRの入力を踏切障害物検知装置50の下り警報停止Rの入力に変更することにより、旧い踏切制御装置20が新たな踏切制御装置40に更新されるため、大抵は信号線の接続変更か僅かな入力回路の追加で済むので、実質的には踏切制御装置20が継続使用できると言える。
以下、それらの動作については、従来例と同様、下り列車の場合だけ説明するが、上り列車の場合も同様である。また、動作説明は、多くが既述したものと重複するが、それを省くと一連の動作が分かり難くなってしまうので、重複記載を厭わず詳述する。
【0060】
先ず列車検知正常時の動作を説明する(図3参照)。踏切13の踏切制御区間に列車の在線が全く無い状態では(図3の左端部を参照)、下り始動点ADCでの列車検知の不成立に対応して始動点検知結果APRが動作(励磁)し続け、下り終止点BDCでの列車検知の不成立に対応して終止点検知結果BPRが落下(非励磁)し続ける。そして、それに対応して、下りSRリレーが動作(励磁)し続けるので、下りの列車運転方向指示は列車踏切通過の無いことを示し、踏切警報Rリレーが動作(励磁)し続けて、警報灯14等が踏切警報を出さないので、踏切13が開放状態・道路通行可能状態を維持する。踏切警報Rリレーが動作(励磁)し続けるため、人や車が踏切道を通行して障検Rリレーの状態(物体検知結果)が変化しても、発報制御信号BZが動作(励磁)状態を維持するので、踏切障害物に対する警報である障検警報が発せられることもない。なお、障検列車進入検知Rリレーと同じく新たに導入された列検期間リセットRリレーは落下(非励磁)状態を維持し続ける。
【0061】
そこに下り列車が走行して来て下り列車が下り始動点ADCの列車検知区間Saに進入すると(図3の中央部を参照)、下り始動点ADCでの列車検知の成立に対応して始動点検知結果APRが落下(非励磁)し、それに応じて下りSRリレーが落下(非励磁)し、更にそれに応じて踏切警報Rリレーも落下(非励磁)するので、下りの列車運転方向指示が列車踏切通過の有ることを示すとともに、踏切警報Rリレーの落下(非励磁)に応じて、警報灯14等が踏切警報を出すので、踏切13が遮断状態・通行禁止状態になる。このとき、人や車といった物体が踏切道に進入すると、感応部31がこれを検知して障検Rリレーが落下(非励磁)するが、このときは障検列車進入検知Rリレーが落下(非励磁)しているため、物体の滞留時間ひいては障検Rリレーの落下継続時間が障害物検知時素を上回った時点で、物体を障害物と看做して、発報制御信号BZが落下(非励磁)するので、障検警報が発せられる。障検警報は障害物の踏切道脱出まで続く。障検列車進入検知Rリレーと列検期間リセットRリレーは落下(非励磁)状態を維持する。
【0062】
それから、下り列車の走行が続いて、下り列車の先頭が踏切13の踏切道に進入すると(図3の右側部分を参照)、感応部31が下り列車を検知して障検Rリレーが落下(非励磁)する。そして、もう少し下り列車が走行して、下り列車の先頭が踏切13を通過し更に下り終止点BDCの列車検知区間Sbに進入すると、下り終止点BDCでの列車検知の成立に対応して終止点検知結果BPRが動作(励磁)する。障検Rリレーが落下(非励磁)してから終止点検知結果BPRが動作(励磁)するまでの時間は、下り列車の速度が余程遅くない限り、障害物検知時素の時間より短くなるので、下り列車を誤って障害物と検知することも余分な障検警報の発報も従来通り的確に防止される。
【0063】
そして、上述のように終止点検知結果BPRが動作(励磁)すると、障検Rリレーが落下(非励磁)状態であることを加重条件として、初めて、障検列車進入検知Rリレーが動作(励磁)する。このように、下り終止点BDCに係る列車検知の成立を示す終止点検知結果BPRの動作(励磁)と、踏切13に係る物体検知の成立を示す障検Rリレーの落下(非励磁)とが、共に満たされることを条件として、障検列車進入検知Rリレーが動作(励磁)するので、下り列車により障検Rリレーが落下しても発報制御信号BZが動作(励磁)し続けることにより踏切障害物検知の機能が抑制(マスク)され、下り列車を誤って障害物と検知することも余分な障検警報の発報も従来通り的確に防止される。
つまり、障検列車進入検知Rリレーは、感応部31の検知した物体が人や車でなく踏切道に進入した列車であることと、その列車が踏切道を通過中であることを的確に示すこととなる。また、障検列車進入検知Rリレーが動作(励磁)している期間は、感応部31の障検Rが人や車の存否確認でなく列車の存否確認に用いられることとなる。
【0064】
そのため、従来と異なり、終止点検知結果BPRが動作(励磁)しても直ぐに下りSRリレーが動作(励磁)する訳でなく、終止点検知結果BPRが動作(励磁)し、これによりBPSLRが動作(励磁)してから更に下り列車が走行してその最後尾が踏切13の踏切道を通過し終わり、それによって列車を検知できなくなった感応部31の障検Rリレーが動作(励磁)して列車検知(物体検知)の不成立を示すと、障検列車進入検知Rリレーが動作(励磁)状態で踏切通過列車を監視中であることを示していることも条件として、下り警報停止Rが動作(励磁)し、これによって下りSRリレーが動作(励磁)する。このように、下り列車が踏切道を完全に通過し終えてから下りSRリレーが動作(励磁)するので、その下りSRリレーの出力を下りの列車運転方向指示とすることで下り列車の踏切接近から踏切道進出までの期間を従来より的確に示すことができる。なお、下りSRリレーが動作(励磁)しても、未だ終止点検知結果BPRが動作(励磁)状態の間は、従来通り、踏切警報Rリレーが落下(非励磁)状態を継続するので、警報灯14等が踏切警報を出し続け、踏切13が遮断状態・通行禁止状態を維持する。
【0065】
下り列車の最後尾が下り終止点BDCの列車検知区間Sbから進出すると、下り終止点BDCでの列車検知の不成立に対応して終止点検知結果BPRが落下(非励磁)し、それから踏切警報Rリレーの警報停止時素の時間が経過すると踏切警報Rリレーが動作(励磁)して、警報灯14等が踏切警報を停止するので、踏切13が開放状態・道路通行可能状態に戻る。また、終止点検知結果BPRの落下(非励磁)に応じてBPSLR,BPSLURでのタイミング調整後に列検期間リセットRリレーが一瞬だけ動作(励磁)し、これにより障検列車進入検知Rリレーが落下(非励磁)するので、感応部31で列車の存否を監視する期間が終了し、次の列車の接近や進入に備えることとなる。このように、下り始動点ADCへの列車進入と下り終止点BDCへの列車進入および列車進出とが的確に検知されれば、踏切警報も障検警報も適切に発せられる。
【0066】
次に下り終止点BDCで列車検知不良が起きた時の動作を説明する(図4参照)。ここでも、従来との対比のため、踏切制御子が正常であっても発生しうる列車検知不良について述べる。従来例のときと同様、下り終止点BDCで下り列車を検知する踏切制御子が列車の車輪と線路のレールとが接触して電気導通可能な短絡状態になることを前提として列車検知を行うため、列車走行の位置や状態によって不定期に一時的な接触不良が発生して、踏切制御子に異常が無くても、そして終止点BDCの列車検知区間Sbに列車が在線していても、列車検知の成立を示す動作(励磁)状態であるべき終止点検知結果BPRに、列車検知の不成立を示す落下(非励磁)状態への揺らぎが、発現するものとする(図4で上から1番目のBPR波形の*や**部分を参照)。
【0067】
そのような一時的な接触不良が終止点検知結果BPRに発生する状況であっても、下り列車が踏切道に進入し、それを踏切障害物検知装置50が検知して障検Rリレーが落下(非励磁)しても(図4で上から2番目の障検R波形を参照)、障検Rリレーに係る障害物検知時素の経過前に、下り列車が下り終止点BDCの列車検知区間Sbまで進んで下り終止点BDCに係る列車検知が成立し更に終止点検知結果BPRが動作(励磁)すると、障検列車進入検知Rリレーが動作(励磁)するので(図4で上から3番目の障検列車進入検知R波形を参照)、踏切道に存在しているものが下り列車であると判定されて、踏切障害物検知の機能が抑制(マスク)されるので(図4で下から2番目の障検R抑制(マスク)波形を参照)、障検警報が発報されることなく(図4で下から1番目の発報BZ波形を参照)、踏切道の列車通過が監視されることとなる。この監視は、下り列車の最後尾が下り終止点BDCの列車検知区間Sbを進出しBPSLRの煽り影響排除用時素の時間の経過するまで継続される。具体的には、感応部31での列車検知が成立しなくなって、障検Rリレーが動作(励磁)するまで続くので(図4で上から2番目の障検R波形を参照)、下り列車が踏切道から完全に進出したことが確認されることとなる。
【0068】
そして、障検Rリレーが動作(励磁)するとともに、障検列車進入検知Rリレーも終止点検知結果BPRも動作(励磁)していることで、下り列車が踏切道から完全に進出して下り終止点BDCの列車検知区間Sbに移動したことまで念入りに確認できた時点で、下り警報停止Rリレーが動作し、これにより下りSRリレーが動作(励磁)するので(図4で上から5番目の下りSR波形を参照)、下りの列車運転方向指示が下り列車の踏切道通過完了まで的確な指示を出すこととなる。下り列車の最後尾が下り終止点BDCの列車検知区間Sbから進出すると、下り終止点BDCでの列車検知の不成立に対応して終止点検知結果BPRが落下(非励磁)し、それから踏切警報Rリレーの警報停止時素の時間が経過すると踏切警報Rリレーが動作(励磁)して、警報灯14等が踏切警報を停止するので、踏切13が開放状態・道路通行可能状態に戻る。また、下りSRリレーと終止点検知結果BPRとの双方が動作(励磁)になった後、更にBPSLRの煽り影響排除用時素の時間の経過を待って(図4で上から7番目のBPSLR波形を参照)、リレーBPSLURの時素に対応した短時間だけ列検期間リセットRリレーが動作(励磁)するので(図4で上から8番目の列検期間リセットR波形を参照)、これにより障検列車進入検知Rリレーが落下(非励磁)し、感応部31で列車の存否を監視する期間が終了し、次の列車の接近や進入に備えることとなる。
【0069】
このように、下り列車の下り終止点BDC進入により動作(励磁)した終止点検知結果BPRに一時的な落下(非励磁)が生じたとしても(図4で上から1番目のBPR波形の*や**部分を参照)、障検Rリレーでの列車検知結果や障検列車進入検知Rリレーでの列車進入検知にて下り列車の踏切道通過完了が確認されるまでは、下りSRリレーが動作(励磁)しないで落下(非励磁)状態を維持するため、列車の踏切通過が完全に終わる前に踏切警報Rリレーが動作(励磁)して不所望に早く踏切警報が停止するのを防止することができる(図4で上から6番目の踏切警報R波形を参照)。また、踏切障害物検知機能を担う障害物検知回路57が、障害物検知の抑制(マスク)としては不良になる終止点検知結果BPRに代えて(図4で下から2番目の障害物検知抑制(マスク)波形の上方のコメントと下向き矢印を参照)、断続せず良好な状態を維持する障検列車進入検知Rリレーの出力が障害物検知の抑制(マスク)に使用されているため(図4で下から2番目の障害物検知抑制(マスク)波形を参照)、障検Rリレーの列車検知(物体検知)の成立では発報制御信号BZが動作(励磁)しないので(図4で下から1番目の発報BZ波形を参照)、障検警報が不所望に発せられることもない。
【実施例2】
【0070】
本発明の踏切物体検知装置の実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図5は、上述した踏切障害物検知装置50の信号入力回路や物体検知論理判定部をユニット化した下り用の片側制御代替装置60とやはり踏切障害物検知装置50の信号入力回路や物体検知論理判定部をユニット化した上り用の片側制御代替装置70と上述した踏切制御装置40とほんの少しだけ改造した既存の踏切障害物検知装置30とを組み合わせた踏切保安装置の概要ブロック図である。
【0071】
この踏切保安装置は、上述した解決手段1〜4の要部を上り用と下り用とに分けてユニット化した片側制御代替装置60,70を、踏切障害物検知装置30を少しだけ改造して障検Rリレーの状態を片側制御代替装置60,70に送出するようにした既存の踏切障害物検知装置30と、既存の踏切制御装置20を少し改造した踏切制御装置40とに、追加設置する態様で具現化することにより、踏切障害物検知および踏切制御に係る煽り対策を強化したものである。
【0072】
片側制御代替装置60は、上述した下り始動点信号入力回路54と下り終止点信号入力回路55と障検列車進入検知回路56と列検期間リセット回路58と警報停止Rリレー回路59とを具備していて、終止点検知結果BPRと下りSRと障検Rとを入力し、上述した踏切障害物検知装置50のうち下り列車の検知に係る部分について述べたのと同様にして、下り警報停止Rを出力するものとなっている。片側制御代替装置70も、同様のものであるが、上り列車の検知に係り、終止点検知結果DPRと上りSRと障検Rとを入力して、上り警報停止Rを出力するものとなっている。
【0073】
この場合、繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、機能や動作は、実施例1のそれとほとんど同じである。踏切障害物検知装置30の論理部には直接の変更が無いが、踏切障害物検知の上り側ウィンドウ・下り側ウィンドウとされる上りSR・下りSRについて煽り対策が強化されているので、踏切障害物検知装置30の性能も向上することとなる。
また、踏切制御装置20から踏切制御装置40への改造は配線変更だけの簡単なものであり、踏切障害物検知装置30から障検Rリレーの出力を取り出すのも配線変更か中継リレーの追加といった容易なものであり、踏切障害物検知装置30や踏切制御装置20(40)は既存のものを使い続けることができ、新規に総て追加するのは片側制御代替装置60,70だけで済むので、既存設備の改良が低コストで行えることとなる。
【0074】
[各実施例に関する纏め]
本発明の踏切物体検知装置にあっては、列車の踏切道通過検知や、警報停止条件、障害物検知の抑制(マスク)条件が、以下の考え方に則って処理されるようになっている。
第1に、既設の警報終止点用踏切制御子で列車を検知(制御子の出力リレーが動作)したことにより、列車が踏切道に到達したことを検知する。
第2に、これ以降、踏切障害物検知装置からの“物体検知出力”、すなわち自列車の存在を検知する。
第3に、踏切障害物検知装置からの“物体検知出力”がなくなった時点で、警報終止点用踏切制御子が列車を検知(制御子の出力リレーが動作)していることとのAND条件により、当該列車が踏切道を通過し終わったものと判断する。
第4に、その後、警報終止点用踏切制御子が列車の進出を検知(制御子の出力リレーが落下)し、警報停止の時素(緩動時素)後に警報を停止する。
【0075】
そして、そのような処理によって、本発明の踏切物体検知装置は、以下の作用効果を奏する。
第1に、既設の踏切障害物検知装置による物体(列車)検知条件と、既設の終止点用踏切制御子による列車車検知の条件とを組み合わせることにより、踏切障害物検知装置が検出した物体が、踏切道上に滞留した自動車などを障害物であるか、列車であるかの判別が厳格に行える。
【0076】
第2に、既設の踏切障害物検知装置によるレールの短絡によらない物体(列車)検知条件と、既設の終止点用踏切制御子によるレールの短絡による列車検知の条件とを組み合わせ、その協同により、踏切障害物検知装置により、列車が踏切道に進入したこと、その後に踏切道を進出(通過)したことを、厳密にチェックすることにより、踏切制御子における、いわゆる“煽り”により踏切警報が途中で停止することを排除できるので、踏切制御における安全性が向上する。
【0077】
第3に、上述した第1〜第4の一連処理から第4の処理を省いて第1〜第3の一連処理で踏切警報を停止させることにより、列車が踏切道を通過後、素早く踏切警報が停止する仕組みが構成できるので、警報停止を待っている道路通行者のイライラ感、焦燥感を緩和できる。社会的要請に応えられる。
第4に、既設の踏切障害物検知装置を、列車検知装置として活用することにより、安価にレールの短絡によらない列車を検知する手段を提供することができる。
【0078】
第5に、実績のある光ファイバ式の障害物検知装置(一般障検)が対応できるが、これが既に設置してある踏切においては、これを活用できるので、安価に実現できる。
第6に、車軸検知器などレールの短絡によらない他の列車検知装置では、列車検知の機能のみで踏切障害物検知装置としての機能をもたないが、本発明では、1台の踏切障害物検知装置で、両方の役割(機能)を果たすことが出来、コストパフォーマンスが非常に大きい。
【0079】
[その他]
上記実施例では、踏切物体検知装置40+50が踏切制御装置40と踏切障害物検知装置50とに分散して実装されていたが、例えば踏切制御装置40の下り側制御部43や下り始動点信号入力回路44を踏切障害物検知装置50に移設あるいは並設する等のことにより、踏切障害物検知装置50だけに実装することも可能である。
上記実施例では、警報始動点ADC,CDCや警報終止点BDC,DDCで列車を検知するものとして、列車検知長の短い軌道回路である踏切制御子を挙げたが、列車検知長の長い一般的な軌道回路も使用することができる。
上記実施例では、踏切物体検知装置がリレー回路で具体化されていたが、リレーは電磁リレーでも半導体リレーでも良い。また、デジタル回路やプログラマブルなマイクロプロセッサといった電子回路で踏切物体検知装置を具体化しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の踏切物体検知装置は、複線区間の踏切に係る踏切保安装置に適用が限られる訳でなく、単線区間の踏切に係る踏切保安装置にも適用することができる。単線区間の場合、警報始動点が踏切道から遠く両側に分かれて一つずつ設定されるとともに、警報終止点が一つだけ踏切道のどちら側か一方だけに近づけて設定され、二つのうち一方の警報始動点と一つだけの警報終止点とに対して本発明の踏切物体検知装置が適用され、二つのうち他方の警報始動点と同じ警報終止点とに対しても本発明の踏切物体検知装置が適用される。なお、通常は上り用と下り用とがセットで用いられるが、上下セットでの使用に限定される訳でなく、本発明の踏切物体検知装置を、上り用にだけ用いても良く、下り用にだけ用いても良い。
【符号の説明】
【0081】
10…線路、11…下り線、12…上り線、13…踏切、14…警報灯、
ADC…下り始動点、BDC…下り終止点、CDC…上り始動点、
DDC…上り終止点、Sa,Sb,Sc,Sd…列車検知区間(検知長)、
20…踏切制御装置、21…警報制御部、22…上り側制御部、23…下り側制御部、
30…踏切障害物検知装置、31…感応部、32…投光器、33…受光器、
40…踏切制御装置(踏切物体検知装置)、
42…上り側制御部、43…下り側制御部、44…下り始動点信号入力回路、
50…踏切障害物検知装置(踏切物体検知装置)、
55…下り終止点信号入力回路、56〜59…物体検知論理判定部、
56…障検列車進入検知回路、57…障害物検知回路、
58…列検期間リセット回路、59…警報停止Rリレー回路、
60,70…片側制御代替装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7