(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192387
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】トラフ式太陽熱集熱装置
(51)【国際特許分類】
F24J 2/14 20060101AFI20170828BHJP
F03G 6/00 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
F24J2/14
F03G6/00 501
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-135737(P2013-135737)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2015-10748(P2015-10748A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一雄
(72)【発明者】
【氏名】小山 一仁
(72)【発明者】
【氏名】片桐 幸徳
(72)【発明者】
【氏名】関合 孝朗
【審査官】
礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0047978(US,A1)
【文献】
実開昭52−110850(JP,U)
【文献】
特開2012−122642(JP,A)
【文献】
特開昭60−156224(JP,A)
【文献】
特表2010−539724(JP,A)
【文献】
特開2013−076507(JP,A)
【文献】
特開2013−061080(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/070436(WO,A1)
【文献】
特開2013−019640(JP,A)
【文献】
特開2012−242043(JP,A)
【文献】
特開2012−242042(JP,A)
【文献】
特開昭55−116052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24J 2/00 − 2/52
F03G 6/00 − 6/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が管内を流下する集熱配管と、
曲率を有し太陽光を反射して前記集熱配管へ集光照射する鏡面板とを備えたトラフ式太陽熱集熱装置において、
前記鏡面板は複数個の通風孔を有しており、該通風孔は前記鏡面板の太陽光反射面から前記鏡面板の裏面へと貫通して形成され、
前記通風孔は一方向に細長い孔形状であり、該孔形状の長軸方向を前記集熱配管の軸手方向と角度を有して配置したことを特徴とするトラフ式太陽熱集熱装置。
【請求項2】
流体が管内を流下する集熱配管と、
曲率を有し太陽光を反射して前記集熱配管へ集光照射する鏡面板とを備えたトラフ式太陽熱集熱装置において、
前記鏡面板は複数個の通風孔を有しており、該通風孔は前記鏡面板の太陽光反射面から前記鏡面板の裏面へと貫通して形成され、
前記通風孔の孔貫通方向は、前記集熱配管の軸手方向から見て前記鏡面板の太陽光反射面の垂直方向に対して角度を有していることを特徴とするトラフ式太陽熱集熱装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のトラフ式太陽熱集熱装置において、
前記通風孔は、前記鏡面板が前記集熱配管に太陽光を集光照射しているときに前記集熱配管の影となる部分に配置することを特徴とするトラフ式太陽熱集熱装置。
【請求項4】
請求項2に記載のトラフ式太陽熱集熱装置において、
前記通風孔は、前記集熱配管の軸手方向に沿って直線状に複数列に並んで配置することを特徴とするトラフ式太陽熱集熱装置。
【請求項5】
請求項2に記載のトラフ式太陽熱集熱装置において、
複数の前記通風孔は、その孔貫通方向を複数種類としたことを特徴とするトラフ式太陽熱集熱装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載のトラフ式太陽熱集熱装置において、
前記鏡面板を前記集熱配管の軸回転方向に回転可能と駆動するとともに前記鏡面板を加振する駆動装置を有することを特徴とするトラフ式太陽熱集熱装置。
【請求項7】
請求項1から5の何れかに記載のトラフ式太陽熱集熱装置において、
前記鏡面板を前記トラフ式太陽熱集熱装置の設置面と水平な方向に回転可能な位置変更機構と、前記トラフ式太陽熱集熱装置の設置場所の風向き計測手段とを有し、
前記位置変更機構により前記鏡面板を風向き方向へ向けるようにしたことを特徴とするトラフ式太陽熱集熱装置。
【請求項8】
請求項7に記載のトラフ式太陽熱集熱装置において、
前記位置変更機構は前記鏡面板を加振する機能を有することを特徴とするトラフ式太陽熱集熱装置。
【請求項9】
請求項1から5の何れかに記載のトラフ式太陽熱集熱装置において、
前記鏡面板の太陽光反射面へ空気を吹き付ける放風ヘッドを備えたことを特徴とするトラフ式太陽熱集熱装置。
【請求項10】
請求項9に記載のトラフ式太陽熱集熱装置において、
前記放風ヘッドの取り付け位置が、太陽熱集熱装置の設置面に近い鏡面板の下端側であることを特徴とするトラフ式太陽熱集熱装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載のトラフ式太陽熱集熱装置において、
DDS運転の太陽熱発電プラントに適用される太陽熱集熱装置であって、前記放風ヘッドは、前記太陽熱発電プラントの停止前に、余剰回収熱分の発電による駆動されることを特徴とするトラフ式太陽熱集熱装置。
【請求項12】
請求項7に記載のトラフ式太陽熱集熱装置において、
前記鏡面板の反射面側に電気集塵機を取り付けたこと特徴とするトラフ式太陽熱集熱装置。
【請求項13】
請求項7に記載のトラフ式太陽熱集熱装置において、
ブラシ、布またはスポンジを鏡面板表面に接触させる機構を有することを特徴とするトラフ式太陽熱集熱装置。
【請求項14】
請求項6から13の何れかに記載のトラフ式太陽熱集熱装置において、
前記集熱配管内の加熱対象物の温度計測機能と、
前記トラフ式太陽熱集熱装置の設置場所の太陽光照射光度計測機能を有すると共に、
運転モードとして前記鏡面板の清掃モードを具備し、
前記温度計測機能と、前記太陽光照射光度計測機能による測定値に基づき前記清掃モードに移行する機能を有することを特徴とするトラフ式太陽熱集熱装置。
【請求項15】
請求項14に記載のトラフ式太陽熱集熱装置において、
前記トラフ式太陽熱集熱装置は複数台あり、
前記トラフ式太陽熱集熱装置が複数のグリッドに分類されており、
前記グリッド毎に前記集熱配管内の加熱対象物の温度計測機能と、
前記温度計測機能と、前記太陽光照射光度計測機能による測定値に基づき前記グリット毎に前記清掃モードに移行する機能を有することを特徴とするトラフ式太陽熱集熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲率を有する鏡面板で太陽光を集熱配管に集光照射するトラフ式太陽熱集熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の消費量抑制や二酸化炭素の排出量低減を目的に、再生可能エネルギーを利用した発電・給湯・冷暖房に関する製品が開発され、実用化している。なかでも、太陽光により集熱器を加熱することで熱を得る太陽熱集熱装置は、集光過程でエネルギー密度の低い太陽光を集中可能な点、蓄熱によりエネルギーを貯蔵可能な点で優れる。太陽熱集熱装置の形式としてはタワー式、ディッシュ式、トラフ式等が提案されている。例としてトラフ式太陽熱集熱装置の構成を以下に述べる。
【0003】
トラフ式太陽熱集熱装置は、曲率を持った鏡面板を太陽に向けて配置し、鏡面板からの反射光を、焦点に設置した集熱配管へ照射する。集熱配管内には、熱の利用用途に応じて溶融塩等の熱媒体や水、油などが流れており、集熱配管内部を流れる流体が、加熱された集熱配管との熱交換により熱を回収する。
【0004】
なお、鏡面板は、太陽光の入射角を調整可能な可動式が一般的である。また、集熱配管は熱が効果的に回収されるよう、ガラス等の光透過性の高い材料で構成された透明断熱管を用い、管を真空断熱する。
【0005】
ここで、太陽熱集熱装置の熱回収性能は、太陽光を反射する鏡面板の反射率、透明断熱管の光透過率の影響を受ける。熱回収性能を良好な状態に保つためには、鏡面板や透明断熱管の表面汚れを低減する必要がある。特に、太陽熱集熱装置を発電設備として適用する場合は、熱回収装置を大量に敷設しなければならず、熱回収性能を良好な状態に保つ清掃保守作業の省力化が課題となる。
【0006】
なお、特許文献1には、パネル状の集熱部を内部に配設した集熱箱に透光孔を開孔した太陽熱温水装置の例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−117703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1が提案する方法は、筐体である集熱箱の透光採入部(平板)に透光孔を設けることで、集熱箱を境界壁として使用するときに外面側の透視確認を容易にするものであり、トラフ式太陽熱集熱装置の主要部品たる曲率を有する鏡面板の汚れ低減に関する技術ではない。
【0009】
トラフ式太陽熱集熱装置は、太陽熱発電設備として利用されることが多い。この場合、太陽光の照射が強く、敷地の確保が可能な砂漠,荒野地帯に設置する。砂漠,荒野地帯では、風が土埃や砂粒を巻き上げ鏡面板に吹き付ける。鏡面板の太陽光反射面に土埃や砂粒が付着すると、太陽光の反射率が低下し熱回収性能が低下する課題がある。
【0010】
また、鏡面板を利用した太陽熱集熱装置は、集光量の増加を目的に、近年鏡面板1枚辺りの寸法が大型化している。鏡面板の大型化により鏡面板の風に対する抵抗が増大する。特に、トラフ式太陽熱集熱装置の鏡面板は曲率を有しているため、風向によっては空気の流れが阻害され大きな空気抵抗が生じる。空気抵抗が増大すると、鏡面板を始めとする装置強度を高める必要が生じる。しかし、特許文献1が提案する方法は集熱板を自然風が吹きぬける流路上に設置する目的のものではない。
【0011】
本発明の目的は、曲率を持った鏡面板表面の汚れを低減するトラフ式太陽熱集熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のトラフ式太陽熱集熱装置は、流体が管内を流下する集熱配管と、曲率を有し太陽光を反射して前記集熱配管へ集光照射する鏡面板とを備えたトラフ式太陽熱集熱装置において、前記鏡面板は複数個の通風孔を有しており、該通風孔は前記鏡面板の太陽光反射面から該裏面へと貫通して形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、曲率を持った鏡面板表面の汚れを低減するトラフ式太陽熱集熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】通気孔を適用したトラフ式太陽熱集熱装置の概略図である。
【
図2】本実施例のトラフ式太陽熱集熱装置の概略図である(実施例1)。
【
図3】本実施例のトラフ式太陽熱集熱装置の概略図である(実施例2)。
【
図4】本実施例のトラフ式太陽熱集熱装置の概略図である(実施例3)。
【
図5】本実施例のトラフ式太陽熱集熱装置の概略図である(実施例4)。
【
図6】本実施例のトラフ式太陽熱集熱装置の概略図である(実施例4)。
【
図7】本実施例のトラフ式太陽熱集熱装置の概略図である(実施例5)。
【
図8】本実施例のトラフ式太陽熱集熱装置の概略図である(実施例6)。
【
図9】本実施例のトラフ式太陽熱集熱装置の概略図である(実施例6)。
【
図10】本実施例のトラフ式太陽熱集熱装置の概略図である(実施例7)。
【
図11】本実施例のトラフ式太陽熱集熱装置の概略図である(実施例8)。
【
図12】本実施例のトラフ式太陽熱集熱装置を採用した温水生成プラントの概略図である(実施例9)。
【
図13】本実施例の制御器の清掃モード指令生成ロジックの概略図である(実施例9)。
【
図14】本実施例のトラフ式太陽熱集熱装置を採用した温水生成プラントの概略図である(実施例10)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のトラフ式太陽熱集熱装置は、曲率を有する鏡面板について、鏡面板の表裏を貫通する通気孔を複数設けている。この通気孔は鏡面板表面から裏面への空気の通過を可能とする。また、通気孔は土埃、砂粒など鏡面板表面に付着する汚れが通過可能な大きさとする。
【0016】
本発明によれば、トラフ式太陽熱集熱装置において、鏡面板表面から通気孔を介して鏡面板裏面へ抜ける空気流を発生させる。この空気流により、鏡面板表面に付着する土埃や砂粒等の表面汚れを前記通気孔から空気とともに排出することで鏡面板表面の汚れを低減する。砂が曲率を持った鏡面板に堆積することも防げる。
【0017】
汚れの低減により熱回収性能を良好な範囲に保ち長時間に渡り、トラフ式太陽熱集熱装置の運転継続が可能である。さらに、汚れを低減することで、定期的に実施しなければならない鏡面板の清掃保守期間を引き延ばし、清掃に係る労力の省力化が可能である。
【0018】
また、鏡面板に強風が吹きつけた場合、通気孔を介して一部の空気を通過させることが可能であるため、鏡面板に生じる空気抵抗を低減する。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0020】
先ず、本発明の適用対象とするトラフ式太陽熱集熱装置の概要、並びに後述する各実施例に共通する基本構造について
図1(a)、(b)により説明する。
図1(a)は通気孔を適用したトラフ式太陽熱集熱装置の概略図である。太陽熱により加熱する熱媒体が流れる集熱配管101は内部を真空とし、断熱性能を高めたガラス製の透明断熱管102に納められ、支持脚103によって固定される。支持脚103は地面へと固定される。鏡面板104は太陽光の反射し、集熱配管101へ照射する。
【0021】
ここで
図1(b)を参照する。
図1(b)は通気孔を適用したトラフ式太陽熱集熱装置を集熱配管101の軸手方向に対し垂直な方向に切断した断面図である。通気孔105は鏡面板104を貫通し、太陽光を反射する表面から裏面へと空気が通過可能である。鏡面板104の表面は、集熱配管101へ反射光を集めるため一点鎖線106を軸とする双曲線を形成する曲率を有する。鏡面板104が一点鎖線106と太陽光107の照射角度の差が小さいほど、集熱配管101に反射光が集中する。
【0022】
再び
図1(a)による説明に戻る。鏡面板104は前記曲率を維持するため側板108にて軸手方向の両端から形状を固定された上で補強される。鏡面板104は、反射光の焦点位置が集熱配管101に定まる軌道上を移動可能な状態で支持脚103に支持される。駆動装置109は電線110より供給される電力でモーターを駆動し、該電線110を介して送信される制御信号に従い前記鏡面板104の位置を変更および保持する。本発明における通気孔105はこの鏡面板104に複数個設けられ、これにより鏡面板表面の汚れを低減することを可能とする。上述の内容を基本構成とし、以下、本発明の各実施例について説明する。
【実施例1】
【0023】
本発明の実施例1を
図2(a)、(b)により説明する。トラフ式太陽熱集熱装置の概要は先述した
図1の説明の通りなので省略する。
図2(a)は通気孔105を適用したトラフ式太陽熱集熱装置を、太陽光照射方向から見た概略図である。
【0024】
図2(b)は通気孔105の配置を示すため、
図2(a)より集熱配管101、透明断熱管102を除した概略図である。破線201は集熱配管101の軸手方向中心線を表す。複数個の通気孔105は、集熱配管101の軸手方向に沿って、鏡面板104を貫通するように設けられる。なお、通気孔105は、鏡面板104による太陽光の集光を阻害しないよう、鏡面板104が集熱配管101に太陽光を集光照射しているときに集熱配管101の影となり、太陽光の反射量が少ない、破線201の鏡面板104への投影線上、若しくはその近傍の部分に設けるのが良い。ただし、通気孔105の面積が小さいのであればこの限りではない。なお、通気孔105が砂粒で閉塞すると本発明が期待する効果が失われる。従って、砂粒の大きさを勘案して、通気孔105の大きさについては少なくとも5mm以上を有していることが望ましい。
【0025】
また、矢印202は空気の流れを示している。空気は鏡面板104の表面上を、曲率に沿って流れながら土埃、砂粒等の汚れを吹き飛ばす。従って、通気孔105は集熱配管101の軸手方向に広く分布するのが良い。前記分布により、通気孔105へと導かれる空気の流量が増大し、鏡面板104の裏面へ土埃、砂粒等の汚れを効果的に排出でき、鏡面板104に生じる空気抵抗を緩和しやすい構成とすることが可能である。
【0026】
本実施例によれば、鏡面板104の表面から通気孔105を介して鏡面板裏面へ抜ける空気流を発生させる。この空気流により、鏡面板104の表面に付着する土埃や砂粒等の表面汚れを通気孔105から空気とともに排出することで、鏡面板表面の汚れを低減することができる。また、通気孔105の存在により、砂が曲率を持った鏡面板に堆積することも抑制可能となる。
【実施例2】
【0027】
本発明の実施例2を
図3により説明する。トラフ式太陽熱集熱装置の概要は先述した
図1の説明の通りなので省略する。
図3は、
図2(b)と同じくトラフ式太陽熱集熱装置を、集熱配管101、透明断熱管102を除した上で太陽光照射方向から見た概略図である。
【0028】
本実施例においては、通気孔105Aを集熱配管101の軸手方向に平行な、複数列の直線上に配した点が特徴である。配置の際、通気孔105Aは集熱配管101の影になり光量が低下する部分に配し、集熱配管101の集光を阻害しない位置とする。異なる直線状に配される通気孔105A同士は、集熱配管101の軸手方向に関して、互いに開口部をオーバーラップさせた状態で位置をずらして配置する(
図3では通気孔105Aを2列で且つ千鳥状に配置した例を示している)。該配置方法により、鏡面板104の両端(側板108側)を除き、鏡面板104に対して、集熱配管101の軸手方向全体にわたって通気孔105Aが設けられる。これにより、実施例1にて説明した通気孔108に比して、より効果的に土埃、砂粒等の汚れを排出可能で、鏡面板104に生じる空気抵抗を緩和しやすい構成とすることが可能である。
【実施例3】
【0029】
本発明の実施例3を
図4(a)、(b)により説明する。トラフ式太陽熱集熱装置の概要は先述した
図1の説明の通りなので省略する。
図4(a)は、
図2(b)と同じくトラフ式太陽熱集熱装置を、集熱配管101、透明断熱管102を除した上で太陽光照射方向から見た概略図である。
【0030】
本実施例においては、通気孔105Bの孔形状の長軸方向を集熱配管101の軸手方向に対して角度をつけて配した点が特徴である。なお、通気孔105を集熱配管101の軸手方向に沿って複数設ける点は前述の実施例と同様である。配置の際、通気孔105Bは集熱配管101の影になり光量が低下する部分に配し、集熱配管101の集光を阻害しない位置とする。
【0031】
ここで
図4(b)を参照する。
図4(b)は実施例2による通気孔105Aおよび実施例3による通気孔105Bを拡大比較した図である。点線401は各々の通気孔の長軸を示している。実施例3による通気孔105Bの配置方法によれば、同一列の個々の通気孔の長軸方向(点線401)が同一線上になることを防ぐことができる。風が吹き付けることにより生じる空気抵抗により、鏡面板104に応力が生じ、亀裂が進展してしまった場合、実施例2の通気孔105Aの配置方法は各々の通気孔105Aの亀裂がつながってしまう可能性があるが、実施例3の通気孔105Bの配置方法によれば、各々の通気孔105Bの長軸が同一線上にならないため、実施例2の配置方法に比して鏡面板104の空気抵抗に対する強度を向上できる。
【0032】
また、集熱配管101の軸手方向(破線201方向)に配される通気孔105Bは、各々の通気孔105Bの長軸方向(点線401方向)を平行配置としつつ、集熱配管101の軸手方向(破線201方向)に隣接する通気孔105Bの両端を互いにオーバーラップさせた状態とすることにより、実施例2と同様に効果的に土埃、砂粒等の汚れを排出することができる。
【実施例4】
【0033】
本発明の実施例4を
図5(a)、(b)、
図6により説明する。トラフ式太陽熱集熱装置の概要は先述した
図1の説明の通りなので省略する。
図5(a)は鏡面板104の表面に対し鉛直または鉛直に近い角度で通気孔105を貫通させた場合の概略図である。鏡面板104周囲の空気の流れは通気孔105の貫通方向に沿って形成される。このため、
図5(a)の貫通方式の場合、空気の流れが鏡面板104表面上だけでなく、矢印501に示す空気の流れが発生し、集熱配管101を納めた透明断熱管102周囲の空気の流れまで引き起こす要因となる。透明断熱管102周囲の空気の流れが強くなると、空気と透明断熱管102との熱交換により、熱回収性能が低下する可能性がある。
【0034】
一方、本発明の実施例4の通気孔105C貫通方向を
図5(b)により説明する。本実施例の通気孔105Cは、鏡面板104の表面(反射面)に対し、鏡面板104の曲率方向(鏡面板表面の曲面の接線の垂直方向)に角度をもって貫通する。このような貫通方向とすることにより、空気の流れは矢印501Cに示すように変化し、
図5(a)の貫通方式の場合に比して鏡面板104の表面近くの空気の流れを強く引き起こすことができる。これにより、空気と透明断熱管102との熱交換により、熱回収性能が低下する可能性を低減できるほか、鏡面板104の表面汚れを空気の流れにより吹き飛ばす効果も大きくなる。
【0035】
なお、通気孔105C貫通方向を鏡面板104の表面鉛直方向に対し傾ける場合、複数個ある通気孔105Cの傾き方向を
図6に示すように複数種類(通気孔105Cの傾き方向を交互に異なる方向)とすることで、鏡面板104表面の広い範囲へ空気流の発生を促すことができる。
【実施例5】
【0036】
本発明の実施例5を
図7(a)、(b)により説明する。発明を実施するための形態で前述した通り、一般にトラフ式太陽熱集熱装置は鏡面板104の駆動装置109を備えている。
図7(a)に示すように、通常は鏡面板104が有する曲率の軸方向(一点鎖線106方向)と、太陽光の入射角とを近づけることができるよう位置を調整し、太陽光の反射光焦点位置を集熱配管101に定め熱回収性能を向上する。
【0037】
本発明の実施例5では、トラフ式太陽熱集熱装置の運転モードの一つとして清掃モードを有し、清掃モードに移行した場合、制御指令により
図7(b)に示すように駆動装置109により鏡面板104を加振し、鏡面板104の表面上に堆積する土埃、砂粒等の汚れを振るい落とす。なお、
図7(b)では状態を比較しやすいように鏡面板104は表面の外形線104A、104B、104Cのみ表記している。外形線104Aが熱回収性能を高めるため鏡面板104が有する曲率の軸方向と、太陽光の入射角とを近づけた位置である。鏡面板104が通気孔105を有していない場合は、汚れを鏡面板104の外縁から落とすので鏡面板104を大きく傾ける必要がある。一方、通気孔105を有する本実施例の場合には、鏡面板104の中央付近からも汚れを排出できるため、通気孔105を有していない場合に比して効率よく汚れを排出できる。また、鏡面板104を大きく傾けずとも、通気孔105から汚れを排出できるため、駆動装置109が消費する電力を抑えることもでき経済的である。
【実施例6】
【0038】
本発明の実施例6を
図8、
図9(a)、(b)により説明する。トラフ式太陽熱集熱装置の概要は先述した
図1の説明の通りなので省略するが、
図8に示すように本実施例の太陽熱集熱装置は水平方向駆動装置801(位置変更機構)により、鏡面板104を水平方向に回転可能な構成とし、風向計802により、太陽熱集熱装置設置環境における風向きを計測し、水平方向駆動装置801へと送信可能である。
図9(a)に示すように、通常の通常運転モードでは、鏡面板104が風から受ける空気抵抗を低減するため、風向きと集熱配管101の軸手方向とを近づけるよう角度調整する。
【0039】
一方で、清掃モードに移行した場合、制御指令により
図9(b)に示すように水平方向駆動装置801により鏡面板104を水平方向に回転させ、矢印901にて示した風向きと、破線201にて示した集熱配管101の軸手方向とが垂直に近づくよう角度調整する。これにより、鏡面板104の表面に吹き付ける空気流量が増加し、通気孔105から土埃、砂粒等の汚れを排出する効果を高めることができる。さらに、水平方向駆動装置701による鏡面板104の加振機能により鏡面板104の表面上に堆積する土埃、砂粒等の汚れを通気孔105から振るい落とすことが可能となり、効果的に鏡面板104の汚れを低減できる。
【0040】
一般にトラフ式太陽熱集熱装置はアレイ構成されることが多い。アレイ構成された場合は水平方向の回転は透明断熱管の形状自由度が低いためアレイ全体を1つの装置として水平方向に回転させる構成とする。一般家庭向けなど、トラフ式太陽熱集熱装置が単体構成となった場合、
図7(a)に示す構成をとることができ水平方向の回転自由度が高いため、清掃モードに移行した場合に鏡面板104の汚れを低減する効果が高い。
【実施例7】
【0041】
本発明の実施例7を
図10(a)、(b)により説明する。トラフ式太陽熱集熱装置の概要は先述した
図1の説明の通りなので省略する。
図10(a)は放風ヘッド1001を取り付けたことを特徴とする、通風孔105を有するトラフ式太陽熱集熱装置である。放風ヘッド1001は鏡面板104に固定され、送風配管1002が接続される。送風配管1002はブロワ等の送風装置(図示省略)に接続されており、空気を放風ヘッド1001へと送ることが可能である。送風配管1002の材質は、鏡面板104が可動であることを考慮してフレキシブル性を有しているものが良い。
【0042】
ここで
図10(b)を参照する。
図10(b)は放風ヘッド1001を鏡面板104側から見た概略図である。放風ヘッド1001には放風口1003が設けてあり、送風配管1002から送られる空気は放風口1003から鏡面板104に吹き付け、矢印1004で示した空気の流れを発生させる。放風口1003は、鏡面板104に対して空気の流れが集熱配管101の軸手方向に広がるように配する。
【0043】
再び
図10(a)による説明に戻る。通常はブロワを駆動させず、放風口1003から空気を放風しない。鏡面板104の汚れを低減するため清掃モードに移行した場合、制御指令によりブロワを駆動し、放風口1003より空気を吹き付ける。放風口1003から吹き付けられる空気により、鏡面板104の表面に吹き付ける空気流量が増加し、通気孔105から土埃、砂粒等の汚れを排出する効果を高めることができる。なお、放風ヘッド1001を取り付けるのは鏡面板104の地面に近い側が良い。これは、送風配管1002の引き回しが容易となる点、鏡面板104の上端部に付着した土埃、砂粒等の汚れは重力の効果で通気孔105へ流れやすいが、下端側は土埃、砂粒等の汚れが堆積しやすく、前記汚れを吹き飛ばすことが可能となるためである。
【0044】
また、ブロワを駆動して送風を行うタイミングは任意であるが、例えば、DSS(daily start and stop:毎日発停)運転向けの太陽熱発電に適用する場合は、夕刻のプラント停止直前に太陽熱集熱装置の余剰の回収熱によりブロワを駆動し送風することで、日々、鏡面板104の表面を太陽光反射に良好な状態に維持することができる。
【実施例8】
【0045】
本発明の実施例8を
図11(a)、(b)により説明する。トラフ式太陽熱集熱装置の概要は先述した
図1の説明の通りなので省略する。
図11(a)は鏡面板の反射面側に電機集塵機1101を取り付けたことを特徴とする、通風孔105を有するトラフ式太陽熱集熱装置の概略図である。電気集塵機1101は集熱配管101の軸手方向と平行に配置し、通気孔105の近傍に配置する。電源は駆動装置109から分岐する。
【0046】
通常運転の場合、電気集塵機1101は停止している。
【0047】
図11(b)は前記太陽熱集熱装置の断面図である。清掃モードに移行した場合に電気集塵機1101の電源を入力し、鏡面板104の表面上に付着する汚れを吸着する。図中に示すように、例えば砂粒1102を吸着し、通気孔105付近で再び電源を電気集塵機1101の電源を切断することで、砂粒1102は電気集塵機1101を離れ、通気孔105を通過して鏡面板104の裏側へ排出される。
【0048】
さらに、駆動装置109により鏡面板104を動作させることで鏡面板104表面の広い範囲に電気集塵機1101を近づけ、汚れを吸着可能である。以上の操作により、電気集塵機1101を有していない場合に比して効率よく汚れを排出できる。本実施例においては汚れの吸着機構として電気集塵機1101を設置したが、代替機構としてブラシ、布、スポンジ等、鏡面板104の表面を傷つけない素材を電気集塵機1101配置部分に配置し、清掃モードのオンオフにより出し入れする機構としても良い。
【実施例9】
【0049】
本発明の実施例9を
図12、13により説明する。トラフ式太陽熱集熱装置の概要は先述した
図1の説明の通りなので省略する。
図12は本発明のトラフ式太陽熱集熱装置を採用した温水生成プラントの概略図である。給水タンク1201には加熱対象である真水が充填されている。真水は給水配管から送水ポンプ1202を経由してトラフ式太陽熱集熱装置1203のグリッドへと送水される。トラフ式太陽熱集熱装置1203にて加熱された真水は温水として温水タンク1204に貯蔵される。貯蔵された温水は需要が生じる度に、流量調整弁1205を介して供給される。温度計1206は温水タンク1204へ流入する温水温度を計測し、光度計1207はトラフ式太陽熱集熱装置1203へ照射する太陽光の光度を計測する。温度計1206、光度計1207の計測値は制御器1208へと送信される。制御器1208は各トラフ式太陽熱集熱装置に対し、鏡面板104の位置指令を出力する他、実施例5、6、7、8にて述べた清掃モードの制御指令を送信可能である。
【0050】
図13は制御器1208の清掃モード指令生成ロジックの概略図である。制御器1208には実測結果に基づく、あるいは解析によって予め計算した関数1301が設定されている、関数1301は光度計1207の計測値に対し、温度計1206で計測する温水温度の予測値を出力する。バイアス信号発生器1302は温水温度の許容できる低下量が設定されている。関数1301の出力からバイアス信号発生器1302の出力を差し引いた値と温度計1206の計測値を比較器1303にて比較し、温度計1206の計測値の方が小さい場合には臨時清掃モード指令を出力し、清掃モード発令ロジック1304へ送信する。清掃モード発令ロジック1304は定期清掃などのスケジュールに則って清掃モード指令を生成するが、比較器1303より臨時清掃モード指令を受信した場合、実施例5、6、7、8にて述べた清掃モードを実施すべくトラフ式太陽熱集熱装置1203へ清掃モード指令を送信可能である。
【0051】
以上により、鏡面板104表面に汚れが付着し、トラフ式太陽熱集熱装置1203の熱回収性能が低下した場合、制御器1208が有する機能により清掃モード指令を出力しトラフ式太陽熱集熱装置1203の熱回収性能の改善を図る運転が可能となり、保守性能を向上した温水生成プラントの提供が可能である。
【実施例10】
【0052】
本発明の実施例10を
図14により説明する。トラフ式太陽熱集熱装置の概要は先述した
図1の、温水生成プラントの概要は先述した
図12の、制御器の清掃モード指令生成ロジックの概要は先述した
図13の説明の通りなので省略する。
図14は本実施例のトラフ式太陽熱集熱装置を採用した温水生成プラントのトラフ式太陽熱集熱装置構成の概略図である。
【0053】
本実施例ではトラフ式太陽熱集熱装置をグリット1集熱装置1401、グリット2集熱装置1402、グリットN集熱装置1403にグループ分けする。本実施例のグループ分けはN組としたが、数は特定するもののではなく前記温水生成プラントの形式に合わせて自由に変更できる。各グリッドにはグリット1温度計1404、グリット2温度計1405、グリットN温度計1406が設けられており各グリットで加熱した温水温度を計測可能である。グリット1温度計1404、グリット2温度計1405、グリットN温度計1406、光度計1207の計測値は制御器1208へと送信される。制御器1407は前記グリッド毎に実施例で説明した清掃モード指令を送信可能である。
【0054】
以上により、鏡面板104表面に汚れが付着し、グリット1集熱装置1401、グリット2集熱装置1402、グリットN集熱装置1403いずれかの熱回収性能が低下した場合、制御器1407が有する機能により該当するグリット集熱装置に清掃モード指令を出力し、該当するグリット集熱装置の熱回収性能の改善を図る運転が可能となり、保守性能を向上した温水生成プラントの提供が可能である。
【0055】
清掃モード指令出力先を各々のグリッドへと別々に出力できることから、清掃モードを実施するトラフ式太陽熱集熱装置の数を低減でき、清掃モード実施中による温水生成プラントの熱回収性能低下量を実施例9に比して縮小できる。また、清掃モードを実施するトラフ式太陽熱集熱装置の数を必要以上に増やさないため省電力化可能である。
【0056】
本実施例ではグリッドを並列に構成したが、直列のグリッド構成でも適用可能である。直列グリッド構成の場合は、関数1301で出力する値を各グリッドにおける温水の温度上昇量の予測値に変更し、比較対象となる計測温度についてもグリッド前後の計測温度の差分に変更すると良い。
【符号の説明】
【0057】
101…集熱配管、102…透明断熱管、103…支持脚、104…鏡面板、
104A…実線(鏡面板表面の外形線を表す)、
104B…破線(鏡面板表面の外形線を表す)、
104C…破線(鏡面板表面の外形線を表す)、
105…通気孔、105A…通気孔、105B…通気孔、105C…通気孔、
106…一点鎖線(鏡面板曲率の双曲線軸を表す)、107…太陽光、
108…側板、109…駆動装置、110…電線
201…破線(集熱配管の軸手方向中心線を表す)、
202…矢印(空気の流れを表す)、
401…点線(各通気孔の長軸方向を表す)
501…矢印(空気の流れを表す)、501C…矢印(空気の流れを表す)
801…水平方向駆動装置、802…風向計
901…矢印(風向きを表す)
1001…放風ヘッド、1002…送風配管、
1003…矢印(放風される空気の流れを表す)、1004…放風口
1101…電気集塵機、1102…砂粒
1201…給水タンク、1202…送水ポンプ、
1203…トラフ式太陽熱集熱装置、1204…温水タンク、
1205…流量調整弁、1206…温度計、
1207…光度計、1208…制御器
1301…関数、1302…バイアス信号発生器、1303…比較器、
1304…清掃モード発令ロジック
1401…グリット1集熱装置、1402…グリット2集熱装置、
1403…グリットN集熱装置、1404…グリット1温度計、
1405…グリット2温度計、1406…グリットN温度計、
1407…制御器