特許第6192408号(P6192408)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6192408高湿分空気利用ガスタービンの水回収装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192408
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】高湿分空気利用ガスタービンの水回収装置
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/32 20060101AFI20170828BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20170828BHJP
   F02C 3/30 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   F01D25/32 C
   B01D53/26 100
   F02C3/30 C
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-155319(P2013-155319)
(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公開番号】特開2015-25416(P2015-25416A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】池田 博行
(72)【発明者】
【氏名】福士 一徳
(72)【発明者】
【氏名】有安 一夫
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−126022(JP,A)
【文献】 特開2005−307861(JP,A)
【文献】 特開2003−027959(JP,A)
【文献】 特開昭53−070540(JP,A)
【文献】 特公昭44−031927(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/32
B01D 53/26
F02C 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高湿分空気利用ガスタービンからの排ガスを受けて水回収を行う高湿分空気利用ガスタービンの水回収装置であって、
水回収装置は、高湿分空気利用ガスタービンからの排ガスを下部の側方部に設けられた前記排ガスの導入口から受け、水回収装置に導入された排ガスが90度上方に曲げられる排ガス流路を形成しており、上部から排出するとともに、上段に散水ノズル、中段に水とガスの気液接触を行う第1と第2の充填層、下部に前記排ガスの導入口を配置し、
中段下側の第1の充填層は、前記排ガスの導入口から遠い位置の上方にあるほど充填層内の充填剤の厚さが厚くなるように配置されており、中段上側の第2の充填層は、充填層内の充填剤の厚さが均一に配置されていることを特徴とする高湿分空気利用ガスタービンの水回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高湿分空気利用ガスタービンの水回収装置であって、
水回収装置の下部には、前記排ガスの導入口から流入した排ガスを90度上方に向けるための整流板を備えていることを特徴とする高湿分空気利用ガスタービンの水回収装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の高湿分空気利用ガスタービンの水回収装置であって、
水回収装置の散水ノズルの上段に液体微粒子を取り除くためのデミスタを配置していることを特徴とする高湿分空気利用ガスタービンの水回収装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の高湿分空気利用ガスタービンの水回収装置であって、
第1と第2の充填層内の充填剤が、第1の充填層では高温用ステンレス系材料であり、第2の充填層では高温用ステンレス系以外の材質の充填材を使用することを特徴とする高湿分空気利用ガスタービンの水回収装置。
【請求項5】
高湿分空気利用ガスタービンからの排ガスを受けて水回収を行う高湿分空気利用ガスタービンの水回収装置であって、
水回収装置は、高湿分空気利用ガスタービンからの排ガスを下部の側方部に設けられた前記排ガスの導入口から受け、水回収装置に導入された排ガスが90度上方に曲げられる排ガス流路を形成しており、上部から排出するとともに、上段に散水ノズル、中段に水とガスの気液接触を行う第1と第2の充填層、下部に前記排ガスの導入口を配置し、
中段上側の第2の充填層に流入する排ガスの流速分布が均一化するように、前記第1の充填層内の充填剤の厚さが配置されていることを特徴とする高湿分空気利用ガスタービンの水回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高湿分の作動空気を利用したガスタービンの水回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高湿分空気利用ガスタービンに関する従来技術としては、たとえば特許文献1、特許文献2に記載のものがある。これらに記載の高湿分空気利用ガスタービンでは、出力増加、効率向上を目的としてタービンの作動空気を高湿分に加湿する。この場合、加湿に使用される水は純水であり、その再利用のためにタービン排ガスの排出に際し水回収装置により水分を回収するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−162100号公報
【特許文献2】特開2009−174542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水回収装置では、その下部からガスタービン排ガスを投入し、上部から排出する。このため水回収装置の容器上方部に設置した散水ノズルから冷却水を散水する。水回収装置中には充填剤が配置されており、下方からのガスタービン排ガスは充填剤を通過して上方に抜ける。他方、上方からの冷却水は充填剤の情報から下方に落下する。
【0005】
この過程において、水回収装置中に配置された充填剤の表面においてタービン排ガスと気液接触させて、一部蒸発した水の蒸発潜熱も利用して排ガスを冷却することにより、排ガス中の湿分を凝縮させて凝縮水として回収している。
【0006】
ところで、タービン排ガスは水回収装置の下部に流入する際に、水回収装置入口にて、排ガス流路が90度上方に曲げられることにより、排ガス流速分布に偏りが生じる。タービン排ガスの水回収装置入口に近い領域では排ガス流速が低く、タービン排ガスの水回収装置入口から遠い領域ほど排ガス流速が速くなるという分布を示す。
【0007】
このため、特許文献1、2のような従来の水回収装置では、入口に整流ノズルを設置して排ガス流速分布の均一化を図っていたが、水回収装置本体の寸法が大きくなる。このことから、水回収装置本体の寸法を小さくするためには整流ノズル配置スペースの制約が課題であった。
【0008】
仮に、より最適な充填剤の配置によって排ガス流速分布の均一化を図ることによって整
流ノズルを省くことができれば、水回収装置寸法低減について改善の余地があると考えら
れる。
【0009】
以上のことから本発明の目的は、本体寸法を低減した、高湿分空気利用ガスタービンの水回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では高湿分空気利用ガスタービンからの排ガスを受けて水回収を行う高湿分空気利用ガスタービンの水回収装置であって、水回収装置は、高湿分空気利用ガスタービンからの排ガスを下部から受け、上部から排出するとともに、上段に散水ノズル、中段に水とガスの気液接触を行う第1と第2の充填層、下部に排ガスの導入口を配置し、中段下側の第1の充填層は、排ガスの導入口から遠い位置の上方にあるほど充填層内の充填剤の厚さが厚くなるように配置されており、中段上側の第2の充填層は、充填層内の充填剤の厚さが均一に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、本体寸法を低減した、高湿分空気利用ガスタービンの水回収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】水回収装置を含むガスタービンシステムの全体系統を示す図。
図2】従来の水回収装置3の概略構造を示した図。
図3】本発明のの水回収装置3の概略構造を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施形態について、図を用いて説明する。
【実施例】
【0014】
図1は本発明の水回収装置を含むガスタービンシステムの全体系統を示す図である。
【0015】
ガスタービンシステムは、高湿分空気利用ガスタービン1、その排ガス下流側に設置される廃熱回収ボイラ2、さらにその下流に設置されタービンから排出した排ガス中の湿分を回収する水回収装置3を主な構成機器として構成されている。
【0016】
また水回収装置3で回収された水は、冷却装置4にて冷却水としての運用温度にまで冷却され、水処理装置5にて不純物を取り除いた後、廃熱回収ボイラ2に供給され、再利用される。廃熱回収ボイラ2は、高湿分空気利用ガスタービン1の排ガス熱エネルギーを回収して蒸気を発生し、発生蒸気は高湿分空気利用ガスタービン1の燃焼用空気として利用される。
【0017】
図2は、比較例として、特許文献1、特許文献2に示すような従来の水回収装置3の構造を示した概略図である。図2において、6は整流ノズル、7は充填層、8は散水ノズル、9はデミスタである。
【0018】
従来の考え方によれば、水回収装置3の下部において、装置内部に挿入された入口配管100から約140度の排ガスGが流入する。入口配管100には整流ノズル6が設置されており、流入した排ガスGは、整流ノズル6により均一な流速Goの分布とされて装置上部方向に導かれる。
【0019】
充填層7に到達した排ガスGは、充填剤表面において、散水ノズル8から散水された冷
却水Wと気液接触し、一部蒸発した水の蒸発潜熱も利用して約35度まで冷却される。凝
縮した排ガス中の湿分は凝縮水として回収される。
【0020】
湿分を回収された排ガスG1は、装置内上部に設置されたデミスタ9によって液体微粒子が取り除かれた後、装置最上部の出口より大気に排気される。
【0021】
図3は、本発明の水回収装置の構造を示した概略構造図である。図3において10は整流板、11は第1充填層、12は第2充填層、8は散水ノズル、9はデミスタである。
【0022】
水回収装置3の下部に接続されたダクトより流入した約140度の排ガスGは、まず、整流板10によって装置上部方向に流れ方向を90度曲げるよう導かれる。この場合整流板10はガスの流れ方向を上方に向けたのみであって、水回収装置3の狭い容器の中で、ガス入口から遠いほど流速を増すような分布となる。この点、各部の流速を均一に分布させる従来の整流ノズル6とはその機能が相違する。
【0023】
本発明では充填層は上下2層に構成されており、上側の第2充填層12は水回収装置3の容器全体に均一に、同じ厚さに敷設されている。これに対し下側の第1充填層11は、流速分布に合せて排ガス導入部から遠い方に向けて充填層の厚さが大きくなるように敷設されている。
【0024】
上昇した排ガスG1は最初に下層の第1充填層11に到達する。第1充填層11に到達
した排ガスは、充填剤表面において、散水ノズル8より散水された冷却水と気液接触し、
一部蒸発した水の蒸発潜熱も利用して約80度まで冷却される。凝縮した排ガス中の湿分
は凝縮水として回収される。
【0025】
なお、第1充填層11に排ガスが到達した段階では、排ガス導入部から遠い方に向けて排ガス流速は大きくなっており、流速分布に偏りがある。図3において排ガス導入部に近い側の排ガス流速G1に対し、排ガス導入部から遠い側の排ガス流速Gnは、Gn>G1とされている。
【0026】
これに対し、先に説明したように、流速分布に合せて排ガス導入部から遠い方に向けて
第1充填層11の厚さを大きくするように充填剤を敷設している。このことにより、充填
の圧力損失の差異によって、第1充填層11上部の排ガス流速分布が流速G0に均一化
される。
【0027】
次に、第2充填層12に排ガスが到達した段階では、排ガスの流速分布は均一であるため、第2充填層12の厚さは均一とされている。ただし、第1充填層11にて排ガスが約80度まで冷却されているため、設計温度を第1充填層11のそれより小さくとることができ、高温用ステンレス系以外の材質の充填剤使用も選択可能である。
【0028】
なお、第2充填層12の充填剤表面において散水ノズル8より散水された冷却水と気液接触し、約35度まで冷却され、湿分を回収された排ガスは、装置内上部に設置されたデミスタ9によって液体微粒子が取り除かれた後、装置最上部の出口より大気に排気される。
【0029】
このように本発明では、水回収装置入口の整流ノズルを省くかわりに、充填層を2つの
層に分けて、第1の充填層の厚さを、排ガスの流速分布に合せて排ガス導入部から遠い方
に向けて厚く配置した。これにより第2の充填層に流入するガス流速の分布を均一化した
ものである。
【0030】
以上詳細に説明した本発明によれば、水回収装置入口の整流ノズルを省くことができる。この部分には代わりに整流板10を設置すればよい。このため水回収装置の下部の構成を著しく小型化することができ、水回収装置の小型化に貢献するところ大である。
【符号の説明】
【0031】
1:高湿分空気利用ガスタービン
2:廃熱回収ボイラ
3:水回収装置
4:冷却装置
5:水処理装置
6:整流ノズル
7:充填層
8:散水ノズル
9:デミスタ
10:整流板
11:第1充填層
12:第2充填層
図1
図2
図3