特許第6192421号(P6192421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192421
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】ランキンサイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F01D 19/00 20060101AFI20170828BHJP
   F01D 21/00 20060101ALI20170828BHJP
   F01K 13/02 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   F01D19/00 P
   F01D19/00 K
   F01D21/00 P
   F01D21/00 W
   F01K13/02 C
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-165334(P2013-165334)
(22)【出願日】2013年8月8日
(65)【公開番号】特開2015-34497(P2015-34497A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098361
【弁理士】
【氏名又は名称】雨笠 敬
(72)【発明者】
【氏名】原口 智規
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−68459(JP,A)
【文献】 特開2013−57264(JP,A)
【文献】 特開2013−7369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/00−21/20
F01K 13/02
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源からの熱により液相の作動媒体を加熱して気相に相変化させる蒸発器と、
該蒸発器を出た気相の作動媒体の熱エネルギを機械エネルギに変換する膨張機と、
該膨張機を出た気相の作動媒体を冷却して液相に相変化させる凝縮器と、
該凝縮器を出た液相の作動媒体を加圧して前記蒸発器に供給するポンプとを閉回路内に備えたランキンサイクル装置において、
前記膨張機をバイパスするバイパス回路と、該バイパス回路の流路を開閉するバイパス弁と、前記閉回路の高圧側回路の高圧側圧力を検出する高圧側圧力センサと、制御装置とを備え、
該制御装置は、起動時に前記バイパス弁を開き、起動準備完了後に閉じると共に、
前記高圧側圧力センサの出力に基づき、前記高圧側圧力が所定の上限値より高くなった場合に運転を停止し、
前記バイパス弁を閉じているときは前記上限値を所定の通常上限値PHとし、開放しているときは、前記上限値を前記通常上限値PHより低い所定の起動時上限値PLに変更することを特徴とするランキンサイクル装置。
【請求項2】
前記制御装置は、起動から所定時間経過した場合に起動準備完了と判断することを特徴とする請求項1に記載のランキンサイクル装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記高圧側圧力が所定の起動準備完了値以上となった場合、及び/又は、前記膨張機の入口側の作動媒体の温度が所定値以上となった場合に起動準備完了と判断することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のランキンサイクル装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記パイパス弁を閉じてから所定時間経過するまでに、前記高圧側圧力が所定の起動完了値以上とならない場合、前記バイパス弁を開いて起動を再開することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載のランキンサイクル装置。
【請求項5】
前記通常上限値PHを、前記高圧側回路で想定される最大値よりも高い値とすることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかに記載のランキンサイクル装置。
【請求項6】
前記起動時上限値PLを、前記閉回路の低圧側回路の耐圧上限より低い値とすることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちの何れかに記載のランキンサイクル装置。
【請求項7】
前記低圧側回路の低圧側圧力を検出する低圧側圧力センサを備え、
前記制御装置は、前記低圧側圧力センサの出力に基づき、前記低圧側圧力が前記起動時上限値PLよりも低い所定の低圧側上限値PLLより高くなった場合、運転を停止することを特徴とする請求項6に記載のランキンサイクル装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記高圧側圧力又は低圧側圧力が前記上限値より高くなったことで運転を停止する場合に異常を報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のうちの何れかに記載のランキンサイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動媒体の熱エネルギを膨張機にて機械エネルギに変換するランキンサイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱サイクル装置の一つであるランキンサイクル装置は、太陽熱や車両のエンジン廃熱を回収し、熱エネルギを機械エネルギに変換して発電するために用いられる。この場合、ランキンサイクル装置は、蒸発器、膨張機、凝縮器、及び、ポンプとを備えた作動媒体の閉回路から成り、蒸発器において上記のような熱源からの熱(廃熱)で高温となった高温流体により液相の作動媒体を気相に相変化させ、膨張機にてこの気相の作動媒体の熱エネルギを機械エネルギに変換する。この機械エネルギで発電機を駆動して発電する。膨張機を出た気相の作動媒体は凝縮器にて冷水や通風等の低温流体により冷却されて液相に相変化された後、ポンプに吸い込まれ、再度蒸発器に加圧供給されるものであった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ランキンサイクル装置の起動時には、上記高温流体と低温流体を蒸発器と凝縮器に流した状態で高圧側回路と低圧側回路とをバイパスするバイパス弁を開き、ポンプを起動して作動媒体を蒸発器に加圧供給する。バイパス弁は膨張機をバイパスしており、所定時間バイパスした後、バイパス弁を閉じる。バイパス弁が閉じると高低圧差が大きくなるので、膨張機にて動力が発生する。この動力で発電機等を駆動するというものであった。
【0004】
また、ランキンサイクル装置の凝縮器への低温流体の流れに不具合が発生した場合(低温流体を流すポンプの故障等)、凝縮器にて作動媒体の冷却が行われないため(冷却不良)、蒸発器での作動媒体への熱入力により、閉回路内の高圧側圧力が異常に上昇してしまう。そこで、従来では係る高圧側圧力の上昇をセンサにて検出し、上限値に上昇した時点でランキンサイクル装置を停止する対策が採られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−9897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、起動時に係る低温流体の不具合が生じて凝縮器における冷却不良が発生した場合、閉回路内の高圧側回路と低圧側回路とはバイパス弁によって連通されたかたちとなっているため、回路内は略同等の圧力まで上昇することになる。そのため、低圧側回路では耐圧上限(低圧側回路の許容圧力)を超えて作動媒体の圧力が上昇してしまう問題がある。係る場合に低圧側回路が圧力に耐えられるように低圧側回路の耐圧性能を向上させると、今度はコストが高騰する等の問題が生じる。
【0007】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、起動時に凝縮器の冷却不良が発生した場合にも、低圧側回路を支障無く保護することができるランキンサイクル装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のランキンサイクル装置は、熱源からの熱により液相の作動媒体を加熱して気相に相変化させる蒸発器と、この蒸発器を出た気相の作動媒体の熱エネルギを機械エネルギに変換する膨張機と、この膨張機を出た気相の作動媒体を冷却して液相に相変化させる凝縮器と、この凝縮器を出た液相の作動媒体を加圧して蒸発器に供給するポンプとを閉回路内に備えたものであって、膨張機をバイパスするバイパス回路と、このバイパス回路の流路を開閉するバイパス弁と、閉回路の高圧側回路の高圧側圧力を検出する高圧側圧力センサと、制御装置とを備え、この制御装置は、起動時にバイパス弁を開き、起動準備完了後に閉じると共に、高圧側圧力センサの出力に基づき、高圧側圧力が所定の上限値より高くなった場合に運転を停止し、バイパス弁を閉じているときは上限値を所定の通常上限値PHとし、開放しているときは、上限値を通常上限値PHより低い所定の起動時上限値PLに変更することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明のランキンサイクル装置は、上記発明において制御装置は、起動から所定時間経過した場合に起動準備完了と判断することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明のランキンサイクル装置は、上記各発明において制御装置は、高圧側圧力が所定の起動準備完了値以上となった場合、及び/又は、膨張機の入口側の作動媒体の温度が所定値以上となった場合に起動準備完了と判断することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明のランキンサイクル装置は、上記各発明において制御装置は、パイパス弁を閉じてから所定時間経過するまでに、高圧側圧力が所定の起動完了値以上とならない場合、バイパス弁を開いて起動を再開することを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明のランキンサイクル装置は、上記各発明において通常上限値PHを、高圧側回路で想定される最大値よりも高い値とすることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明のランキンサイクル装置は、上記各発明において起動時上限値PLを、閉回路の低圧側回路の耐圧上限より低い値とすることを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明のランキンサイクル装置は、上記発明において低圧側回路の低圧側圧力を検出する低圧側圧力センサを備え、制御装置は、低圧側圧力センサの出力に基づき、低圧側圧力が起動時上限値PLよりも低い所定の低圧側上限値PLLより高くなった場合、運転を停止することを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明のランキンサイクル装置は、上記各発明において制御装置は、高圧側圧力又は低圧側圧力が上限値より高くなったことで運転を停止する場合に異常を報知する報知手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱源からの熱により液相の作動媒体を加熱して気相に相変化させる蒸発器と、この蒸発器を出た気相の作動媒体の熱エネルギを機械エネルギに変換する膨張機と、この膨張機を出た気相の作動媒体を冷却して液相に相変化させる凝縮器と、この凝縮器を出た液相の作動媒体を加圧して蒸発器に供給するポンプとを閉回路内に備えたランキンサイクル装置において、膨張機をバイパスするバイパス回路と、このバイパス回路の流路を開閉するバイパス弁と、閉回路の高圧側回路の高圧側圧力を検出する高圧側圧力センサと、制御装置とを備え、この制御装置は、起動時にバイパス弁を開き、起動準備完了後に閉じると共に、高圧側圧力センサの出力に基づき、高圧側圧力が所定の上限値より高くなった場合に運転を停止し、バイパス弁を閉じているときは上限値を所定の通常上限値PHとし、開放しているときは、上限値を通常上限値PHより低い所定の起動時上限値PLに変更するようにしたので、請求項5の発明の如く通常上限値PHを、高圧側回路で想定される最大値よりも高い値とし、請求項6の発明の如く起動時上限値PLを、閉回路の低圧側回路の耐圧上限より低い値とすることで、起動時のバイパス弁が開いている状態でも、或いは、起動準備完了後にバイパス弁が閉じられても、凝縮器での作動媒体の冷却不良で閉回路の高圧側回路と低圧側回路の双方の耐圧上限を超える圧力まで作動媒体が高圧となる不都合を未然に回避しながら、支障無く起動することが可能となる。
【0017】
また、起動時にバイパス弁に不具合が発生して開放されない等の問題が生じた場合にも、より迅速にランキンサイクル装置の運転を停止することができるようになる。これにより、ランキンサイクル装置の安全性を著しく向上させることができるようになる。
【0018】
この場合、請求項2の発明の如く起動から所定時間が経過したことや、請求項3の発明の如く高圧側圧力が所定の起動準備完了値以上となったこと、及び/又は、膨張機の入口側の作動媒体の温度が所定値以上となったことで起動準備完了と判断するようにすれば、バイパス弁を閉じるための起動準備完了判断を的確に行うことが可能となる。
【0019】
また、請求項4の発明の如くパイパス弁を閉じてから所定時間経過するまでに、高圧側圧力が所定の起動完了値以上とならない場合、バイパス弁を開いて起動を再開するようにすれば、起動準備完了判断のみによらず、実際に膨張機の入口に作動媒体が十分供給されているか否かによって的確に起動完了と判定することが可能となる。
【0020】
更に、請求項7の発明の如く低圧側回路の低圧側圧力を検出する低圧側圧力センサを設け、制御装置が、低圧側圧力センサの出力に基づき、低圧側圧力が起動時上限値PLよりも低い所定の低圧側上限値PLLより高くなった場合、運転を停止することにより、バイパス弁の開閉状態にかかわらず、低圧側圧力が低圧側上限値PLLに上昇したことで、運転を停止することが可能となる。
【0021】
これにより、万一高圧側圧力センサが故障した場合にも、異常を検出してランキンサイクル装置を停止することが可能となり、より安全性が向上する。
【0022】
更にまた、請求項8の発明の如く制御装置に、高圧側圧力又は低圧側圧力が上限値より高くなったことで運転を停止する場合に異常を報知する報知手段を設ければ、凝縮器での作動媒体の冷却不良の発生を的確に使用者に把握させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明を適用した実施例のランキンサイクル装置の構成図である。
図2図1のランキンサイクル装置の制御装置のブロック図である。
図3図2の制御装置の動作を説明するフローチャートである。
図4図2の制御装置の他の実施例の動作を説明するフローチャートである。
図5図2の制御装置のもう一つの他の実施例の動作を説明するフローチャートである。
図6図2の制御装置の更にもう一つの他の実施例の動作を説明するフローチャートである。
図7】本発明を適用した他の実施例のランキンサイクル装置の構成図である。
図8】本発明を適用したもう一つの他の実施例のランキンサイクル装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
実施例のランキンサイクル装置1は、例えば太陽熱を回収して発電するもので、例えばR134a等の冷媒を作動媒体とし、この作動媒体を循環させるポンプ2と、蒸発器3の作動媒体流と3Aと、膨張機4と、凝縮器6の作動媒体流路6Aとを冷媒流路(配管)7により順次環状に接続して閉回路8を成すことにより、ランキンサイクル(熱サイクル)が構成されている。
【0026】
蒸発器3の高温流体流路3Bには、例えば太陽熱等を利用して昇温された温水が高温流体として高温流体回路9のポンプ23により流通され、この高温流体流路3Bを流れる温水と作動媒体流路3Aを流れる作動媒体とを熱交換させる。凝縮器6の低温流体流路6Bには冷水が低温流体として低温流体回路11のポンプ24により流通され、この低温流体流路6Bを流れる冷水と作動媒体流路6Aを流れる作動媒体とを熱交換させる。
【0027】
膨張機4はモータ(発電機)12を備えており、ポンプ2と一体に構成され、モータ12が軸13を介してポンプ2を駆動する。膨張機4には更にバイパス回路14が並列に接続されており、このバイパス回路14には電磁弁から成るバイパス弁16が介設されている。このバイパス弁16はバイパス回路14の流路を開閉するものである。
【0028】
尚、17は蒸発器3を出た作動媒体(冷媒)の高圧側圧力、即ち、閉回路8の高圧側回路8Aの高圧側圧力Prefを検出する高圧側圧力センサである。また、18は膨張機4の入口側の高圧側回路8Aの作動媒体の温度を検出する高圧側温度センサである。
【0029】
次に、図2においてランキンサイクル装置1の制御装置Cはマイクロコンピュータにより構成されている。この制御装置Cには前述した高圧側圧力センサ17の出力と高圧側温度センサ18の出力が入力される。また、制御装置Cには前述したモータ12とバイパス弁16が接続されている。更に、制御装置Cにはバッテリ21と報知手段としての警報器22が接続されている。
【0030】
ここで、ランキンサイクル装置1の閉回路8の高圧側回路8Aの耐圧上限は4.0MPaG以上に設計されており、低圧側回路8Bの耐圧上限はそれより低い2.0MPaG以上に設計されているものとする。また、制御装置Cには高圧側圧力センサ17が検出する高圧側回路8Aの高圧側圧力の想定される最大値より低い値、例えば3.1MPaG〜3.6MPaG程(高圧側回路8Aの耐圧上限より低い値)のうちの何れかの値が通常上限値PHとして設定されており、更に、低圧側回路8Bの上記耐圧上限よりも低い値、例えば1.6MPaG〜2.0MPaG程のうちの何れかの値が起動時上限値PLとして設定されている。
【0031】
以上の構成で、次に図3を参照しながら制御装置Cの制御によるランキンサイクル装置1の動作を説明する。図3は制御装置Cによるランキンサイクル装置1の起動動作の流れを示している。先ず、制御装置Cはランキンサイクル装置1の停止中はバイパス弁16を開放している。起動開始すると制御装置CはステップS1で改めてバイパス弁16を開く。次に、ステップS2で高圧側圧力の上限値Pmaxとして前記起動時上限値PLを設定する。
【0032】
そして、モータ12に通電し、ポンプ2を作動させる。ポンプ2は駆動されて作動媒体(冷媒:R134a)を冷媒流路7に循環させる。そして、ポンプ2から出た作動媒体は蒸発器3に加圧供給され、当該蒸発器3の作動媒体流路3A内を通過し、高温流体流路3B内を流れる温水から吸熱して温度が上昇し、蒸発する。
【0033】
蒸発器3の作動媒体流路3Aを出た気液二相の作動媒体は、バイパス回路14、バイパス弁16を経て凝縮器6に至る。そこで、凝縮器6を構成する作動媒体流路6A内を通過する過程で、低温流体流路6B内を流れる冷水により冷やされ、自らは凝縮すると共に、放熱して冷水を加熱する。その後、冷媒はポンプ2に再び吸い込まれる。
【0034】
制御装置Cは次にステップS4で高圧側圧力センサ17が検出する閉回路8の高圧側回路8Aの高圧側圧力Prefと上限値Pmaxを比較する。このときのPmaxはステップS2で設定された起動時上限値PLである。そして、高圧側圧力Prefが上限値Pmax(起動時上限値PL)以下である場合にはステップS5に進み、モータ12が作動開始してから所定時間経過したか否か判断する。
【0035】
この場合の所定時間は、例えば5秒〜60秒程度である。そして、所定時間経過するまでステップS4とステップS5を繰り返す。モータ12の作動開始から所定時間経過した場合、制御装置Cは起動準備完了と判断してステップS5からステップS6に進み、バイパス弁16を閉じる。次に、ステップS7に進んで高圧側圧力の上限値Pmaxを前記通常上限値PHに切り換えて設定する。
【0036】
バイパス弁16が閉じられると、高低圧の圧力差が大となり、膨張機4にて動力が発生する。膨張機4にて動力が発生することで、モータ12の電力が零となるので、そこでモータ12を発電機に切り換えて発電を行う。発電された電力は制御装置Cによりバッテリ21に貯えられ、例えば家庭用の電力として用いられる。
【0037】
ここで、起動から所定時間経過する前に(ステップS4〜ステップS5を繰り返している途中で)、例えば低温流体回路11のポンプ24に故障等の不具合が発生して冷水が凝縮器6の低温流体流路6Bに流れなくなった場合、或いは、その流量が低下した場合、凝縮器6の作動媒体流路6Aにて作動媒体の冷却が行われなくなり、或いは、冷却不良が発生するため、蒸発器3での作動媒体への熱入力により、閉回路7内の高圧側圧力が上昇してくる。
【0038】
この場合、バイパス弁16は開放されているので、閉回路7の低圧側回路8Bの低圧側圧力も同等に上昇してくる。そして、係る不具合の発生により、高圧側圧力センサ17が検出する閉回路8の高圧側回路8Aの高圧側圧力Prefが上限値Pmaxより高くなると(Pref>Pmax)、制御装置CはステップS8に進み、モータ12を停止してランキンサイクル装置1の運転を停止する。そして、制御装置Cが警報器22を動作させて使用者に異常発生を報知する。
【0039】
このときの上限値Pmaxは起動時上限値PLである。従って、バイパス弁16が開放されていて低圧側回路8Bの低圧側圧力が上昇しても、低圧側回路8Bの耐圧上限より低い起動時上限値PLまで上昇したところでランキンサイクル装置1は停止される。これにより、凝縮器6における作動媒体の冷却不良で、閉回路7の低圧側回路8Bの耐圧上限より高く低圧側圧力が上昇してしまう不都合を防止し、安全性の高いランキンサイクル装置1とすることができる。
【0040】
また、係るランキンサイクル装置1の起動動作において、バイパス弁16が閉じたまま固着してしまう閉固着や、異物の詰まり等の不具合が発生した場合、ステップS1で制御装置Cがバイパス弁16を開く制御(指令を出す)を行っても、実際にはバイパス回路14は流路が閉じたままとなっているため、閉回路8内では高低圧の圧力差がつき、高圧側圧力Prefは運転中と同レベルまで上昇してしまう。そして、係る場合には直ぐに閉回路8内の圧力を下げられない危険性がある。
【0041】
しかしながら、実施例ではステップS4で高圧側圧力センサ17が検出する閉回路8の高圧側回路8Aの高圧側圧力Prefが上限値Pmaxより高くなった時点で(Pref>Pmax)、制御装置CはステップS8に進み、モータ12を停止してランキンサイクル装置1の運転を停止すると共に、このときの上限値Pmaxは起動時上限値PLとされているので、より早い段階で(圧力が異常に上がる前に)ランキンサイクル装置1を停止することができる効果がある。
【0042】
尚、起動時に係る圧力異常が発生せず、起動完了してバイパス弁16が閉じられた後は、上限値PmaxはステップS7で通常上限値PHに切り換えられる。従って、以後は高圧側圧力センサ17が検出する閉回路8の高圧側回路8Aの高圧側圧力Prefが上限値Pmax=PHより高くなった場合に、制御装置Cはランキンサイクル装置1を停止する動作を実行する。
【0043】
この通常上限値PHは、高圧側回路8Aで想定される最大値よりも高い値であるので、異常では無いのにランキンサイクル装置1が停止されてしまう不都合も発生しない。
【実施例2】
【0044】
次に、図4は制御装置Cによるランキンサイクル装置1の起動動作の他の実施例を示している。尚、この図において図3と同一符号で示すステップは同一の動作であるのものとし、説明を省略する。この実施例ではステップS5とステップS6の間にもう一つ起動準備完了の判断を行う。即ち、ステップS5で行うモータ12の作動開始から所定時間(5秒〜60秒)経過したか否かの判断を行い、所定時間経過した後、それだけでは起動準備完了と判定せず、ステップS5Aの起動準備完了の判断を行う。
【0045】
このステップS5Aの起動準備完了の判定方法は、例えば、条件1:高圧側圧力センサ17が検出する閉回路8の高圧側回路8Aの高圧側圧力Prefが所定の起動準備完了値(例えば0.7MPaG)以上となっているか、条件2:高圧側温度センサ18が検出する膨張機4の入口側の高圧側回路8Aの作動媒体の温度が所定値以上に上昇しているか、の何れか若しくは双方が成立しているか、とする。
【0046】
そして、ステップS5Aで起動準備完了でなければ、各条件1及び/又は条件2が成立するまでステップS5Aを繰り返す。このような条件1及び/又は条件2が成立しているか否かで判断することで、時間だけによらず、実際に膨張機4の入口に作動媒体が十分に供給されているか否かを判断でき、より的確に起動準備完了の判定を行うことができる。
【実施例3】
【0047】
次に、図5は制御装置Cによるランキンサイクル装置1の起動動作のもう一つの他の実施例を示している。尚、この図において図3図4と同一符号で示すステップは同一の動作であるのものとし、説明を省略する。この実施例ではステップS5を省略し、ステップS4とステップS6の間に起動準備完了の判断の前記ステップS5Aを行う。即ち、ステップS5でモータ12の作動開始から所定時間(5秒〜60秒)経過したか否かの判断を行う代わりに、前述したステップS5Aの起動準備完了の判断を行い、ステップS5Aで起動準備完了でなければ、各条件1及び/又は条件2が成立するまでステップS4からステップS5Aを繰り返す。
【0048】
当然にその間に高圧側圧力センサ17が検出する閉回路8の高圧側回路8Aの高圧側圧力Prefが上限値Pmaxより高くなると(Pref>Pmax)、制御装置CはステップS8に進み、モータ12を停止してランキンサイクル装置1の運転を停止する。そして、制御装置Cが警報器22を動作させて使用者に異常発生を報知する。このように、モータ12の作動開始からの時間によらず、条件1及び/又は条件2が成立しているか否かの判断のみでも、実際に膨張機4の入口に作動媒体が十分に供給されているか否かを判断できるので、的確に起動準備完了の判定を行うことが可能である。
【実施例4】
【0049】
次に、図6は制御装置Cによるランキンサイクル装置1の起動動作の更にもう一つの他の実施例を示している。尚、この図において図3と同一符号で示すステップは同一の動作であるのものとし、説明を省略する。この実施例ではステップS7の後に再度起動完了の判断を行う。即ち、ステップS5で行うモータ12の作動開始から所定時間(30秒〜60秒)経過したか否かの判断を行い、所定時間経過した後、ステップS6でバイパス弁16を閉じ、ステップS7で上限値Pmaxを通常上限値PHに切り換えるが、その次に、ステップS7Aの起動完了の判断を行う。
【0050】
このステップS7Aの起動完了の判定方法は、例えば、条件1:バイパス弁16を閉じてから所定時間(例えば30秒等)経過するまでに、高圧側圧力センサ17が検出する閉回路8の高圧側回路8Aの高圧側圧力Prefが所定の起動完了値(例えば2.0MPaG)以上となっているか、とする。
【0051】
そして、ステップS7Aで起動完了でなければ、即ち、条件1が成立しないときには、ステップS7AからステップS1に戻り、再度バイパス弁16を開き、ステップS2で上限値Pmaxを起動時上限値PLに切り換える起動動作を再開する。このような条件1が成立しているか否かをバイパス弁16を閉じた後に判断することで、起動準備完了判断だけによらず、実際に膨張機4の入口に作動媒体が十分に供給されているか否かを判断でき、的確に起動完了の判定を行うことができる。
【0052】
尚、ステップS7Aで所定時間経過する前に高圧側圧力Prefが前記起動完了値以上となった場合には、その時点で起動完了と判断するものとする。また、この例ではステップS7Aを図3のフローチャートに追加したが、それに限らず、図4図5のフローチャートのステップS7の後に追加してもよい。
【実施例5】
【0053】
次に、図7はランキンサイクル装置1の他の実施例を示している。尚、この図において図1と同一符号で示すものは同一のものとする。この実施例の場合、閉回路7の低圧側回路8B、実際には凝縮器6の作動媒体流路6Aとポンプ2の間の冷媒流路7に、当該閉回路8の低圧側回路8Bの低圧側圧力PrefLを検出する低圧側圧力センサ26が追加されている。
【0054】
そして、制御装置Cにはこの低圧側回路8Bの低圧側圧力PrefLの上限値、即ち、低圧側上限値PLLが設定されており、この低圧側上限値PLLは前述した起動時上限値PLよりも低い値、例えば1.5MPaG(1.5MPaG〜1.9MPaGのうちで起動時上限値PLより低い値)とされている。これにより、通常上限値PH>起動時上限値PL>低圧側上限値PLLの関係となる。
【0055】
そして、制御装置Cは低圧側圧力センサ26が検出する閉回路8の低圧側回路8Bの低圧側圧力PrefLが上記低圧側上限値PLLより高くなった場合(PrefL>PLL)、バイパス弁16が開放されていても、或いは、閉じられていてもモータ12を停止してランキンサイクル装置1を停止する。これにより、バイパス弁16の開閉状態にかかわらず、低圧側圧力PrefLが低圧側上限値PLLまで上昇したことで、運転を停止することが可能となる。また、万一高圧側圧力センサ17が故障した場合にも、異常を検出してランキンサイクル装置1を停止することが可能となり、より安全性が向上する。
【0056】
ここで、この実施例の場合の起動動作については、前述した各フローチャートを適用可能である。即ち、図3のフローチャートはそのまま適用できる。この場合は、図3のフローチャートと並行して低圧側圧力PrefLと低圧側上限値PLLとの比較を行えばよい。
【0057】
また、図4図5のフローチャートについては、ステップS5Aの起動準備完了の判断に、例えば条件3:高圧側圧力Prefと低圧側圧力PrefLの差ΔPが、所定値以上となったか、を追加し、条件1〜3のうちの何れか若しくはそれらの組み合わせが成立したか否かで起動準備完了を判定するとよい。尚、上記ΔPについての所定値は0.1MPaG〜0.5MPaGとする。
【0058】
また、図6のフローチャートについては、ステップS7Aの起動準備完了の判断で、上記差ΔPが所定値以上となったか、を条件とすればよい。これは閉回路8内の作動媒体の循環量が増えてくれば、圧損がついてΔPが拡大するからである。そして、その場合の差ΔPの所定値は1.0MPaG程度にするとよい。
【実施例6】
【0059】
次に、図8は本発明のランキンサイクル装置1の適用例を示したものである。この図において図1図7と同一符号で示すものは同一とする。この例は、低温流体回路11においてクーリングタワー29を用いて冷水を冷やすものである。このようなクーリングタワー29を用いて凝縮器6の低温流体流路6Bを流れる冷水を冷やす場合、温度センサ28等を用いてクーリングタワー29やポンプ24の作動状態を監視することが可能であるが、ポンプ24や低温流体回路11の詰まりにより流量が低下したときには、温度センサ28による不具合の判定は困難である。
【0060】
しかしながら、本発明ではランキンサイクル装置1の高圧側圧力Prefや低圧側圧力PrefLで不具合の発生を判断できるので、安全性が向上する。
【0061】
尚、低温流体回路11としては上記各実施例以外にも、地下水や工業用水、河川の水をそのまま低温流体回路11に流してもよい。
【0062】
また、上記各実施例では膨張機4とポンプ2が一体化されたもので説明したが、別体とし、ポンプ2を別のモータで駆動してもよい。また、実施例では膨張機4でモータ12を駆動し、発電機として発電を行うようにしたが、膨張機4の機械出力をプーリとベルト等を介して自動車のエンジン等のアシスト動力として利用してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 ランキンサイクル装置
2 ポンプ
3 蒸発器
3A、6A 作動媒体流路
4 膨張機
6 凝縮器
7 冷媒流路
8 閉回路
8A 高圧側回路
8B 低圧側回路
9 高温流体回路
11 低温流体回路
12 モータ
14 バイパス回路
16 バイパス弁
17 高圧側圧力センサ
18 高圧側温度センサ
22 警報器
26 低圧側圧力センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8