(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は実施形態である有機EL表示装置の表示パネル2の模式的な平面図である。本実施形態の表示パネル2はカラー画像を表示し、カラー画像における画素は例えば、R、G、Bに対応する光を出射する画素(サブピクセル)で構成される。以下の説明では、記載を簡潔にするためにRGBサブピクセルをRGB画素と表す。
【0020】
本実施形態ではR画素4R、G画素4G、B画素4Bが表示領域にストライプ配列される例を説明する。当該配列では、画像の垂直方向に同じ種類(色)の画素が並び、水平方向にRGBが周期的に並ぶ。なお、
図1においてR画素4R、G画素4G、B画素4Bはそれぞれ有効な発光領域を模式的に示しており、それらの間の領域はバンクに対応している。
【0021】
図2は
図1に示すII−II線に沿った位置での表示パネル2の模式的な垂直断面図である。表示パネル2は、TFT基板10とカラーフィルタ基板12とを、充填材14を間に挟んで貼り合わせた構造を有する。
【0022】
TFT基板10はガラス基板20上に回路部22、絶縁膜24、OLED部26及び封止膜28などを積層される。
【0023】
回路部22は映像信号に応じた電流をOLED部26に供給して発光させる電子回路であり、配線やTFTなどの回路素子からなり、ガラス基板20の表面に形成される。例えば、表示領域には電源線や画素回路などが形成される。また、表示領域の外側には表示領域の駆動回路が形成されたり、外部回路につながるフレキシブル基板等が接続されたりする。
【0024】
絶縁膜24は回路部22を覆ってガラス基板20表面に積層されれ、画素ごとに設けられる画素回路の相互間や、下部電極30と回路部22との間などを電気的に絶縁する。絶縁膜24は例えば酸化シリコン(SIO
2)や窒化シリコン(SIN)等で形成される。
【0025】
OLED部26は下部電極30、有機材料積層部32、上部電極34及びバンク36を含んで構成される。
【0026】
下部電極30及び上部電極34とこれらの間に挟持される有機材料積層部32とはOLEDを構成する。上部電極34は基本的に表示領域の全画素の有機材料積層部32に共通に接触する共通電極である。一方、下部電極30は画素ごとに分離して形成され、コンタクトホール38を介して回路部22と電気的に接続される。本実施形態では上部電極34がOLEDの陰極をなし、下部電極30が陽極をなす。上部電極34及び下部電極30は例えば、IZO(INDIUM ZINC OXIDE)やITO(INDIUM TIN OXIDE)等の透明導電材を用いて形成される。有機材料積層部32は後述する発光層を備え、発光層は両電極に印加される電圧に応じて正孔及び電子を注入され、それらの再結合により発光する。
【0027】
バンク36はRGB各画素の境界に絶縁層で形成され、下部電極30間を電気的に分離する。
【0028】
封止膜28はOLED部26の上に積層される。OLEDの特性が水分によって劣化することに対応して、封止膜28は充填材14に含まれる水分からOLEDを保護する防湿機能を有する。例えば、封止膜28はSINからなる。
【0029】
カラーフィルタ基板12は、ガラス基板40上にカラーフィルタ42、ブラックマトリクス44、オーバーコート層46を含む積層構造を形成される。
【0030】
カラーフィルタ42はガラス基板40の表面に積層される。カラーフィルタ42は光透過性の樹脂材料等で形成され、顔料等により複数の色に着色される。例えば、カラーフィルタ42は色レジストで形成される。本実施形態ではR画素4R、G画素4G、B画素4Bに対応してカラーフィルタ42として赤色(R)フィルタ42R、緑色(G)フィルタ42G及び青色(B)フィルタ42Bが設けられる。
【0031】
カラーフィルタ間の境界にはブラックマトリクス44がクロム(CR)等からなる遮光膜をパターニングして形成される。
【0032】
オーバーコート層46は、上述したカラーフィルタ42及びブラックマトリクス44が積層されたガラス基板40の表面を覆う。オーバーコート層46は例えばアクリル樹脂等の透明な樹脂材料で作られる。
【0033】
TFT基板10とカラーフィルタ基板12とは間隙を設けて対向配置され、表示領域を囲んで当該間隙にはダム材(シール材)(不図示)が配され、表示領域の間隙を密閉する。充填材14(フィル材)はダム材の内側の間隙に充填される。ダム材及び充填材14は硬化して両基板を接着する。
【0034】
図3は表示パネル2におけるOLEDの構造を示す模式図であり、
図2のIII−III線に沿った垂直断面を表している。なお、
図3ではG画素での垂直断面を示しているが、OLEDの構造はRGB各画素で共通である。
【0035】
本実施形態のOLEDはタンデム構造であり、下部電極30と上部電極34との間には有機材料積層部32として複数の発光ユニット50が光透過性かつ導電性の中間層52を介して直列接続される。具体的には、表示パネル2の各画素のOLEDには青色発光ユニット(B発光ユニット)50Dと赤緑色発光ユニット(RG発光ユニット)50Uとが積層される。
【0036】
各発光ユニット50は発光層(EMISSIVE LAYER:EML)54とその両側に設けられる正孔輸送層(HOLE TRANSPORT LAYER:HTL)56及び電子輸送層(ELECTRON TRANSPORT LAYER:ETL)58からなる。具体的には、B発光ユニット50Dは、B色を発光するB発光層(B−EML)54Bと正孔輸送層56D及び電子輸送層58Dとを備え、下部電極30の上に、正孔輸送層56D、B発光層54B、電子輸送層58Dの順に積層される。またRG発光ユニット50Uは、R色を発光するR発光層(R−EML)54R及びG色を発光するG発光層(G−EML)54Gと、正孔輸送層56D及び電子輸送層58Dとを備え、B発光ユニット50Dの電子輸送層58Dに積層された中間層52の上に、正孔輸送層56U、G発光層54G、R発光層54R、電子輸送層58Uの順に積層される。各色別発光層はホスト材料と、その中に分散されたドーパント材料とからなり、例えば、B発光層のドーパント材料として蛍光材料を用い、R発光層及びG発光層のドーパント材料として燐光材料を用いたタンデム構造の白色発光OLEDとすることができる。
【0037】
図4は、本実施形態の有機EL表示装置の主に表示パネル2に形成される部分の概略の構成を示す模式的な回路図である。有機EL表示装置には表示パネル2の駆動回路として制御部60、記憶部62、垂直走査回路64、水平走査回路66、発光基準信号生成回路68及びOLED駆動電圧源70が設けられる。表示パネル2の表示領域80には画素回路82がマトリクス状に配置される。画素回路82の水平方向の並び(画素行)ごとに制御線90,92が設けられ、画素行を構成する各画素回路82は共通の制御線90,92に接続される。各行の制御線90,92は垂直走査回路64に接続される。画素回路82の垂直方向の並び(画素列)ごとに信号線94が設けられ、画素列を構成する各画素回路82は共通の信号線94に接続される。各列の信号線94はスイッチSWAを介して水平走査回路66に接続され、またスイッチSWBを介して発光基準信号生成回路68に接続される。また、各画素回路82は、OLED駆動電圧源70から電源線96を介して正電圧V
OLEDを供給され、共通接地線を介して接地電位(GND)を供給される。
【0038】
図5は画素回路82の概略の回路図である。各画素回路82に設けられるOLED100は、上述した白色発光OLEDである。OLED100の陰極は共通接地線に接続される。また、OLED100の陽極は、N型TFTからなる点灯スイッチ102と、P型TFT(以下、駆動TFTという。)104を介して電源線96に接続される。
【0039】
また、駆動TFT104のゲート電極は、記憶容量106を介して信号線94に接続され、駆動TFT104のドレイン電極とゲート電極との間には、N型TFTからなるリセットスイッチ108が設けられる。なお、駆動TFT104のソース電極はOLED駆動電圧源70からV
OLEDを印加される。また、リセットスイッチ108のゲート電極は、リセット制御線92に接続され、点灯スイッチ102のゲート電極は、点灯制御線90に接続される。
【0040】
垂直走査回路64はそれぞれ点灯制御線90、リセット制御線92を介して点灯スイッチ102、リセットスイッチ108のオン/オフを制御する点灯制御信号、リセット制御信号を供給する。具体的には、垂直走査回路64はシフトレジスタを用いて表示領域80にて動作対象となる画素回路の行を列方向(例えば、画面上側から下側への向き)に順番に選択し、当該選択した行の点灯制御線90及びリセット制御線92に点灯スイッチ102、リセットスイッチ108をオンするパルスを出力する。
【0041】
水平走査回路66は、垂直走査回路64による垂直走査にて選択された行の各画素(サブピクセル)の画像信号を表すデータ(画素データ)を入力され、当該データをD/A変換器でアナログ電圧に変換して画像信号に応じた画素信号電圧を生成する。水平走査回路66は当該画素信号電圧を表示領域80の画素回路82の列ごとに生成し、各列の信号線94に、選択された行の各画素の画素信号電圧を並列して出力する。
【0042】
既に述べたように信号線94にはスイッチSWA,SWBが設けられる。これらスイッチSWA,SWBを用いて、水平走査回路66に代えて発光基準信号生成回路68を信号線94に接続することが可能である。具体的には、スイッチSWAがオン状態にあるとき、信号線94に水平走査回路66が接続される。スイッチSWBがオン状態にあるときは、信号線94に発光基準信号生成回路68が接続される。これらスイッチSWA,SWBの切り換えは制御部60により行われる。
【0043】
発光基準信号生成回路68は画素回路82の発光基準信号を生成する。発光基準信号生成回路68の出力電圧は信号線94を介して各画素回路82に供給される。
【0044】
次に、画素回路の動作を説明する。
図6は画素回路82の動作を説明する模式的なタイミング図であり、垂直走査期間の1周期(1V)における各種信号の波形が示されている。具体的には、
図6には、垂直同期信号(VSYNC)、スイッチSWAに対する制御信号SA、スイッチSWBに対する制御信号SB、点灯制御信号S
ILM、リセット制御信号S
RST、信号線94の電圧V
Sが示されている。ここで、点灯制御信号S
ILM及びリセット制御信号S
RSTは任意の1ラインである第N行に関する波形を示している。VSYNCの垂直同期パルスの立ち上がりタイミング間の期間が1Vに相当し、当該期間に1フレームの画像についての表示処理が行われる。1フレームの表示処理では、まず書き込み期間PWにて、1行ずつ画素回路82へ画素信号電圧を書き込む処理が行われ、続く発光期間PE内にて全ラインを一斉に発光させる。
【0045】
書き込み期間PWのうち期間P2,P3が第N行への書き込み動作の期間であり、その前後の期間P1,P4はそれぞれ、第(N−1)行まで、及び第(N+1)行以降の書き込み動作の期間である。垂直走査回路64は当該期間P1,P4では、第N行の画素回路82に対する点灯制御信号S
ILM及びリセット制御信号S
RSTを所定の低電位であるLOWレベル(以下、Lレベル)に維持する。これにより、点灯スイッチ102及びリセットスイッチ108はオフ状態に保たれ、駆動TFT104のゲート電極は前フレームの書き込み動作にて設定された電荷蓄積状態を維持する。
【0046】
第N行への書き込み動作の期間である期間P2,P3においては、水平走査回路66から信号線94に第N行の画素信号電圧V
DATA(N)が印加される。期間P2では、垂直走査回路64が点灯制御信号S
ILM及びリセット制御信号S
RSTを所定の高電位であるHIGHレベル(以下、Hレベル)にする。これにより点灯スイッチ102及びリセットスイッチ108がオン状態となり、駆動TFT104のゲート側に前フレームの画素信号電圧に応じて蓄積されていた電荷がOLED100を介して接地電位(GND)へ排出される。この動作をリセット動作と呼び、現フレームの画素信号電圧V
DATA(N)に応じた信号を記憶容量106へ書き込む準備が行われる。なお、このとき、駆動TFT104のゲートからの放電と、ゲート電位V
Gが下がり駆動TFT104がオンすることにより、OLED100には電流が流れる。これにより、OLED100は発光するが、その発光はごく短時間であり映像に与える影響は軽微である。
【0047】
期間P3では、点灯制御信号S
ILMがLレベルとされ、点灯スイッチ102がオフ状態となる。リセットスイッチ108はオン状態を維持し、駆動TFT104のゲートとドレインとを接続する。これにより、駆動TFT104はいわゆるダイオード接続の状態となり、電源線96からオン状態である駆動TFT104を介して記憶容量106へ電流が流れる。当該電流は駆動TFT104のゲート−ソース間電圧V
GSが閾値電圧V
THになるまで流れる。当該電流が停止又は十分に小さくなった状態では、駆動TFT104のゲート及び記憶容量106の一方端子の電位は(V
OLED+V
TH)になる。
【0048】
この期間P3にて、信号線94に接続される記憶容量106の他方端子は電圧V
DATA(N)を印加されるので、記憶容量106の端子間には電位差(V
OLED+V
TH−V
DATA(N))が設定される。期間P3が終了すると、リセット制御信号S
RSTがLレベルとされ、リセットスイッチ108がオフ状態となり、駆動TFT104のゲート及び記憶容量106の一方端子はフローティングの状態となり、記憶容量106は第N行の画素信号電圧に応じた電位差(V
OLED+V
TH−V
DATA(N))を保持する。
【0049】
発光期間PEに入るとスイッチSWAがオフし、スイッチSWBがオンする。これにより、各列の信号線94に発光基準信号生成回路68から発光基準電圧V
REFを有するパルスが供給される。当該パルスは各列の画素回路82の記憶容量106に共通に印加される。ここで、画素回路82のリセットスイッチ108はオフしており、記憶容量106の駆動TFT104側の端子はフローティング状態であるので、当該端子の電位は記憶容量106の信号線94側の端子の電位、つまりV
REFに応じてシフトする。その結果、例えば、第N行の駆動TFT104のゲート電位V
Gは(V
OLED+V
TH−V
DATA(N)+V
REF)となり、ゲート−ソース間電圧V
GSは(V
TH−V
DATA(N)+V
REF)となる。
【0050】
このようにV
GSが設定された状態で、垂直走査回路64は各画素行の点灯制御信号S
ILMをHレベルにし、点灯スイッチ102をオンする。これにより、駆動TFT104には、その上記V
GSに応じたドレイン電流が流れる。そして、当該ドレイン電流はOLED100に供給され、OLED100は電流量に応じて発光する。
【0051】
ちなみに、V
GSが(V
TH−V
DATA(N)+V
REF)に設定されることにより、駆動TFT104の閾値電圧V
THにばらつきがあってもOLED100に供給される電流量はV
THの影響を受けず、画素信号電圧V
DATA(N)及び発光基準電圧V
REFに応じて定まる。また、V
REFはOLED100が発光する画素信号電圧V
DATAの閾値を定めるものであることが理解される。すなわち、V
DATA(N)≧V
REFであれば、Pチャネルである駆動TFT104はオンしOLED100は発光するが、V
DATA(N)<V
REFであれば、駆動TFT104はオンせずOLED100は発光しない。
【0052】
発光基準信号生成回路68は、発光期間PEに包含される実発光期間PDにてOLED100が発光し得るV
REFを出力し、PD以外の発光期間PEでは基本的に画素データの最大値に対応する画素信号電圧V
DATAに対してもOLED100が発光しない電圧を出力する。
【0053】
発光基準信号生成回路68の出力パルスの幅及び電圧、つまり期間PDの長さ及びV
REFの値は制御部60により制御される。本実施形態に係る有機EL表示装置は、ユーザから表示画像の色温度(色合い)に関する指示を入力可能とし、その色温度指示は制御部60に入力される。制御部60は色温度指示に基づいて、期間PDの長さ及びV
REFを制御する。
【0054】
ここで、V
REFを変化させるとOLED100に流れる駆動電流が変化し、駆動電流の電流密度の変化はOLED100の発光色の変化を生じる。表示パネル2はこの現象を利用して、色温度指示に基づいて発光の色合いを変化させ、色温度を調節することを可能としている。
【0055】
具体的には、電流密度を変えてOLED100の発光スペクトルを測定したところ、電流密度が高くなるにつれ、赤色、緑色発光の発光量の変化に比べて青色発光の増加が顕著であった。
図7はOLED100に供給する駆動電流の電流密度とOLED100の色度との関係の測定結果の一例を示すグラフである。横軸は電流密度を対数スケールで表しており、縦軸はOLED100の発光色のXY色度図上での座標(X,Y)のX値及びY値をそれぞれ示している。電流密度を0.08〜100MA/CM
2まで変えたとき、白色発光OLEDの色度は、X値が0.36から0.30まで、Y値が0.45から0.34までそれぞれ変化した。これは相関色温度ではおよそ5200Kから7000Kへの変化に当たる。この電流密度に応じた色合いの変化は、各発光ユニットへ流れるキャリア(正孔、電子)のバランスが変化することに起因すると考えられる。
【0056】
さて、電流密度が変化すると、それに応じてOLEDの発光強度も変化する。基本的には、発光強度は電流密度に比例して変化する。そこで、制御部60は、OLEDの発光を色温度指示に応じた色合いにするべくOLEDの駆動電流を変化させる際に、駆動電流の変化前後にて発光輝度を維持するべく、駆動電流の変化に反比例して実発光期間PDを変化させる、つまり、発光期間PEにおける発光デューティを変化させる。
【0057】
図8は電流密度の変化に応じた発光デューティの変化の例を示す模式図であり、図の縦軸が電流密度、横軸が駆動時間PDに対応している。この例では最大画素値での電流密度を10MA/CM
2とするときにPD/PEで定義される発光デューティを50%に設定している。ちなみに
図7に示す例では、この駆動条件でのXY色度は(0.31,0.36)であり、相関色温度にしておよそ6500Kに相当する。
【0058】
制御部60は例えば、最大画素値での輝度(発光期間PE内における発光量)が電流密度に依存せず一定となるように各電流密度における実発光期間PDを設定する。例えば、制御部60はXY色度が(0.30,0.34)、相関色温度にしておよそ7000Kとなる発光を得るために電流密度を100MA/CM
2に設定する際には、発光デューティを5%とする。また、XY色度が(0.32,0.37)、相関色温度にしておよそ6000Kとなる発光を得るために電流密度を5.6MA/CM
2に設定する場合には、発光デューティは90%に設定される。このように、電流密度が変化しても発光デューティの調整により1フレーム期間内の平均電流密度を不変としているので、画像表示上の輝度は一定に保たれる。
【0059】
なお、ここでは最大画素値での輝度を基準として当該輝度が一定となるようにしたが、他の画素値での輝度を基準としてもよい。また、制御部60は一定とする輝度のレベルを変更できるようにすることもできる。例えば、有機EL表示装置において画面の明るさはユーザにより、または周囲の明るさを検知して自動的に調節・設定することができ、そのように設定された明るさを電流密度の変化時に維持するように構成することができる。
【0060】
ちなみに上述した駆動電流と実発光期間PDとの反比例関係は厳密な意味に解釈すべきではなく、電流密度の変化前後にて発光輝度を維持するという目的に即して解釈されるべきものであり、近似的な反比例関係も含む。例えば、OLED100の発光効率は電流密度に対し必ずしも一定ではなく、電流密度と発光強度とが正確に比例するとは限らない。また、V
REFと電流密度との関係も線形であるとは限らない。そこで、制御部60は例えば、色温度と輝度の制御の精度が低くてもよい場合などにはV
REFや電流密度に対応する実発光期間PDの長さを比例反比例の関係に基づいて演算により求める構成とすることができるが、高い精度を要求される場合には予め測定した結果に基づいて色温度と輝度の制御を行うように構成される。
【0061】
具体的には、予めV
REFや電流密度と実発光期間PDとの対応関係、または発光効率の電流密度依存性を測定により評価して、その測定結果を記憶部62に格納する。そして制御部60は当該測定結果に基づいて輝度を一定にしつつ色温度を調節する制御を行う。
【0062】
ここで、色温度指示、V
REF、電流密度、色温度及び発光デューティは互いに相関しており、記憶部62に予め格納する相関関係は種々の形態とすることができる。例えば、記憶部62は、色温度指示に対応するV
REFを表す値とPDを表す値とを予め記憶することができる。この場合、制御部60は色温度指示を入力されると、それをキーにして記憶部62からV
REF及びPDそれぞれを表す値を読み出し、それら値に基づいて発光基準信号生成回路68を制御し、当該値に対応するV
REF,PDをそれぞれパルス電圧、パルス幅とするパルスを発光期間PE内に出力させる。
【0063】
上記実施形態の有機EL表示装置によれば、表示パネル2を用いて有機EL表示装置を製造するセットメーカーは、当該有機EL表示装置を設計する際に表示パネル2の色温度を調節して画像の色合いに関して所望の特性を得ることができる。つまり、製品に応じて、白色発光OLEDの色温度を変えた表示パネルを設計したり製造したりしなくても済むようになり、低コスト化に有利である。例えば、セットメーカーは製品の品種に応じて好適な色温度が得られるように電流密度を初期設定したり、個別の製品ごとに出荷検査時に目的とする色温度が得られるように電流密度を調節したりする。さらに、上述したOLEDの駆動で色温度調整することで周辺システムで映像信号処理により画像の色合いを調節する処理を省略したりその負荷軽減を図ることが可能となる。また、映像信号処理での色合いの調節とOLED駆動による上述の色温度調整とを組合せることでより繊細な調整を可能とすることもできる。
【0064】
また、色温度指示を与えるユーザは、セットメーカーだけでなく、有機EL表示装置を利用するエンドユーザであってもよい。例えば、ユーザは観る画像や設置場所の照明などに応じて好みの色温度に調節することができる。このように表示パネル2の色温度をエンドユーザが調整できるようにした有機EL表示装置は製品としての付加価値が高まる。
【0065】
有機EL表示装置は例えば、オンスクリーンディスプレイ(OSD)により色温度指示の入力を可能とすることができる。色温度指示の入力手段はその他の構成であってもよく、例えば、専用のつまみやスイッチなどのハードウェア部品をユーザに操作させ、それにより生成される電気信号を制御部60に入力したり、有機EL表示装置のリモコンから操作させたりすることができる。
【0066】
なお、上記実施形態では白色発光OLEDが2つの発光ユニットからなるタンデム構造である場合を説明したが、本発明はこれには限定されない。例えば、白色発光OLEDは発光ユニットが3つ以上のタンデム構造であってもよい。また、白色発光OLEDが単層に複数色のドーパント材料(発光材料)を混ぜたOLEDである場合や、複数色の発光層を直接積層したOLEDである場合にも本発明を適用することができる。
【0067】
ここで、互いに異なる色で発光する複数種類のドーパントからの光を混ぜて白色光を生成するOLEDにおいて、発光色の波長が長い、つまり励起エネルギーレベルが低いドーパント分子から優先的に発光することが知られている。そこで、発光層における複数種類のドーパント材料の含有量は、発光色の波長が短いものほど多くすることで、色温度の調節幅を拡大することが可能である。例えば、RGBのドーパントを含有するOLEDにおいて、Bのドーパント量をR,Gより多くすることで、電流密度を大きくしていったときにR,Gのドーパントの発光が飽和した後のBの発光増加可能範囲を広げ、より高い色温度を得ることが可能となって色温度の調整範囲が広がる。