特許第6192444号(P6192444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192444
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】微細パターン塗布用はんだ組成物
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   B23K35/363 D
   B23K35/363 E
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-180135(P2013-180135)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-47614(P2015-47614A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 義信
(72)【発明者】
【氏名】林田 喜任
(72)【発明者】
【氏名】谷口 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】土屋 雅裕
【審査官】 大畑 通隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−092296(JP,A)
【文献】 特開2010−126719(JP,A)
【文献】 特表2002−514973(JP,A)
【文献】 特開2011−009184(JP,A)
【文献】 特開昭57−052588(JP,A)
【文献】 特開平03−184695(JP,A)
【文献】 特開平05−169289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00−35/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェットディスペンサーによりはんだ組成物を微細パターンに塗布するための微細パターン塗布用はんだ組成物であって、
(A)240℃以下の融点を有する鉛フリーはんだ粉末70質量%以上85質量%以下と、(B)エポキシ樹脂、(C)単量体であり、25℃において液状のグリシジル基含有化合物、(D)活性剤、(E)硬化剤および(F)チクソ剤を含有する熱硬化性樹脂組成物15質量%以上30質量%以下とを含有し、
前記(A)鉛フリーはんだ粉末は、1分子中に1つ以上の水酸基を有する、脂肪族モノカルボン酸または芳香族モノカルボン酸を、被処理はんだ粉末の表面に、付着させ、吸着させ、または、結合させてなるものであり、
前記(A)鉛フリーはんだ粉末の平均粒子径が、1μm以上12μm以下であり、
前記微細パターン塗布用はんだ組成物のE型粘度計により測定した25℃における粘度が、10Pa・s以上60Pa・s未満である
ことを特徴とする微細パターン塗布用はんだ組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の微細パターン塗布用はんだ組成物において、
前記(C)グリシジル基含有化合物は、温度25℃にてE型粘度計で測定した粘度が、1mPa・s以上2000mPa・s以下であるものである
ことを特徴とする微細パターン塗布用はんだ組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の微細パターン塗布用はんだ組成物において、
前記(A)鉛フリーはんだ粉末は、スズとビスマスとの合金からなる
ことを特徴とする微細パターン塗布用はんだ組成物。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の微細パターン塗布用はんだ組成物において、
前記(B)エポキシ樹脂は、25℃において液状のものである
ことを特徴とする微細パターン塗布用はんだ組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の微細パターン塗布用はんだ組成物において、
前記(D)活性剤は、(D1)ジカルボン酸と、(D2)有機酸アミン塩とを含有する
ことを特徴とする微細パターン塗布用はんだ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェットディスペンサーなどによりはんだ組成物を微細パターンに塗布するためのはんだ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型軽量化が進むと同時に、配線基板の高密度実装化が進んでいる。そして、実装する電子部品も小型化が進むにつれ、接続端子ピッチも小さくなっている。その結果、接続端子自身も小さくする必要があるため、電子部品と配線基板との接続強度が弱くなってしまう。その強化策の一つとして、電子部品と配線基板との間にアンダーフィル剤を入れて硬化させる方法も実用化されている。しかし、実装工程が長くなる、或いは電子部品または接合不良が発見されたときにリペアーができないという欠点がある。
【0003】
そこで、電子部品と配線基板との接続強度をはんだペーストにより向上することが求められており、例えば、熱硬化性樹脂、有機酸、溶剤および硬化剤を含有するフラックスと、はんだ粉末とを含有するはんだペーストが提案されている(例えば、特許文献1)。
また、このようなはんだペーストでは、様々な塗布形式で塗布することが求められている。そのうちの一つとして、近年、ジェットディスペンサーによりはんだペーストを微細パターンに塗布することが求められている。また、この場合、微細パターンのサイズに応じて、はんだ粉末の粒子径を小さくする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−219294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のはんだペーストでは、熱硬化性があるために、電子部品と配線基板との接続強度を補強できる(このようなはんだペーストを、熱硬化性のはんだ組成物ともいう)。しかしながら、特許文献1に記載のはんだペーストを用いてジェットディスペンサーによりはんだペーストを微細パターンに塗布する(このような塗布形式を、微細パターン塗布ともいう)場合には以下の(i)および(ii)のような問題がある。
(i)微細パターン塗布での塗布性の観点から、はんだ粉末の粒子径を小さくする必要がある。しかし、この場合、はんだ粉末の表面積が増加し、表面の酸化膜が増えるために、はんだ溶融性が低下してしまう。一方で、はんだ溶融性を高めるために、有機酸などの活性剤の酸価を高めることや配合量を多くすることなどが考えられる。しかし、このようにすると、ポットライフが著しく低下するという問題がある。
(ii)微細パターン塗布での塗布性の観点から、はんだ粉末の粒子径を小さくすると、はんだペーストの粘度が高くなってしまう。そこで、はんだペーストの粘度を低くする必要があるために、組成物中の溶剤比率を高めなければならない。しかし、この場合、樹脂中に残存する溶剤が多くなるために、樹脂硬化性が低下してしまう。
以上のように、はんだペーストを用いて微細パターン塗布をする場合には、塗布性、樹脂硬化性、ポットライフおよびはんだ溶融性の全てを満たすことは困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、微細パターン塗布をする場合に、塗布性、樹脂硬化性、ポットライフおよびはんだ溶融性が優れた微細パターン塗布用はんだ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の微細パターン塗布用はんだ組成物は、ジェットディスペンサーによりはんだ組成物を微細パターンに塗布するための微細パターン塗布用はんだ組成物であって、(A)240℃以下の融点を有する鉛フリーはんだ粉末70質量%以上85質量%以下と、(B)エポキシ樹脂、(C)単量体であり、25℃において液状のグリシジル基含有化合物、(D)活性剤、(E)硬化剤および(F)チクソ剤を含有する熱硬化性樹脂組成物15質量%以上30質量%以下とを含有し、前記(A)鉛フリーはんだ粉末は、1分子中に1つ以上の水酸基を有する、脂肪族モノカルボン酸または芳香族モノカルボン酸を、被処理はんだ粉末の表面に、付着させ、吸着させ、または、結合させてなるものであり、前記(A)鉛フリーはんだ粉末の平均粒子径が、1μm以上12μm以下であり、前記微細パターン塗布用はんだ組成物のE型粘度計により測定した25℃における粘度が、10Pa・s以上60Pa・s未満であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の微細パターン塗布用はんだ組成物においては、前記(C)グリシジル基含有化合物は、温度25℃にてE型粘度計で測定した粘度が、1mPa・s以上2000mPa・s以下であるものであることが好ましい。
本発明の微細パターン塗布用はんだ組成物においては、前記(A)鉛フリーはんだ粉末は、スズとビスマスとの合金からなることが好ましい。
本発明の微細パターン塗布用はんだ組成物においては、前記(B)エポキシ樹脂は、25℃において液状のものであることが好ましい。
本発明の微細パターン塗布用はんだ組成物においては、前記(D)活性剤は、(D1)ジカルボン酸と、(D2)有機酸アミン塩とを含有することが好ましい。
【0009】
なお、本発明の微細パターン塗布用はんだ組成物が、塗布性、樹脂硬化性、ポットライフおよびはんだ溶融性の全てにおいて優れる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
すなわち、本発明のはんだ組成物では、微細パターン塗布での塗布性の観点から、(A)鉛フリーはんだ粉末の粒子径を十分に小さくしている。一方で、この場合、はんだ粉末の表面積が増加し、表面の酸化膜が増えるために、はんだ溶融性が低下する傾向がある。しかし、本発明のはんだ組成物においては、(A)鉛フリーはんだ粉末は、1分子中に1つ以上の水酸基を有する、脂肪族モノカルボン酸または芳香族モノカルボン酸を、被処理はんだ粉末の表面に、付着させ、吸着させ、または、結合させている。このような場合、(A)鉛フリーはんだ粉末の表面では、金属とカルボン酸との間で結合のような状態となっており、はんだ粉末の表面は、1分子中に1つ以上の水酸基を有する、脂肪族モノカルボン酸または芳香族モノカルボン酸の皮膜により覆われている。これにより、はんだ粉末の表面の酸化を抑制でき、はんだ溶融性を向上できる。また、はんだ粉末の酸化による特性の劣化を防止でき、はんだ組成物のポットライフを向上できる。
また、本発明のはんだ組成物は、必須成分として溶剤を含有していない。本発明のような熱硬化性のはんだ組成物においては、リフロー時などに溶剤が残留していると、樹脂硬化性が不十分となるという問題がある。しかし、本発明のはんだ組成物では、リフロー時などに溶剤が残留していないために、樹脂硬化性が高くなる。一方で、溶剤により粘度を調整できない場合には、粒子径が小さいはんだ粉末を使用したはんだ組成物を低粘度とすることができず、微細パターン塗布での塗布性が悪くなる。しかし、本発明のはんだ組成物では、(B)エポキシ樹脂、(D)活性剤および(F)チクソ剤の他に、(C)グリシジル基含有化合物で粘度を調整することができ、十分に低い粘度とできる。上記のようにして、本発明のはんだ組成物では、塗布性、樹脂硬化性、ポットライフおよびはんだ溶融性の全てを満たすことができるものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、微細パターン塗布をする場合に、塗布性、樹脂硬化性、ポットライフおよびはんだ溶融性が優れた微細パターン塗布用はんだ組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のはんだ組成物は、以下説明する(A)鉛フリーはんだ粉末70質量%以上92質量%以下と、以下説明する(B)エポキシ樹脂、(C)グリシジル基含有化合物、(D)活性剤、(E)硬化剤および(F)チクソ剤を含有する熱硬化性樹脂組成物8質量%以上30質量%以下とを含有するものである。
前記(A)鉛フリーはんだ粉末の含有量が70質量%未満の場合(熱硬化性樹脂組成物の含有量が30質量%を超える場合)には、得られるはんだ組成物にて接着した場合に、電子部品および配線基板の間に十分なはんだ接合を形成できず、電子部品および配線基板の間の導電性が不十分となる。他方、前記(A)鉛フリーはんだ粉末の含有量が92質量%を超える場合(熱硬化性樹脂組成物の含有量が8質量%未満の場合)には、はんだ粉末の粒子径を大きくしなければならず、微細パターン塗布が困難になる。また、得られるはんだ組成物において、微細パターン塗布での塗布性の観点から、前記(A)鉛フリーはんだ粉末の含有量は、75質量%以上90質量%以下であることが好ましく、80質量%以上85質量%以下であることがより好ましい。
【0012】
[(A)鉛フリーはんだ粉末]
本発明に用いる(A)鉛フリーはんだ粉末は、脂肪族モノカルボン酸または芳香族モノカルボン酸を、被処理はんだ粉末の表面に、付着させ、吸着させ、または、結合させてなるものである。
【0013】
本発明に用いる脂肪族モノカルボン酸または芳香族モノカルボン酸は、1分子中に1つ以上の水酸基を有するものであることが必要である。
前記脂肪族モノカルボン酸における炭化水素基の炭素数は、12以上20以下であることが好ましい。前記芳香族モノカルボン酸における炭化水素基の炭素数は、6以上であることが好ましく、6以上18以下であることがより好ましい。炭素数が前記下限未満では、はんだ粉末の酸化による物性の劣化を防止できない傾向にある。
【0014】
前記脂肪族モノカルボン酸としては、ヒドロキシエナント酸、ヒドロキシカプリン酸、ヒドロキシラウリル酸、ヒドロキシミリスチン酸、ヒドロキシペンタデシル酸、ヒドロキシパルミチン酸、ヒドロキシマルガリン酸、ヒドロキシステアリン酸などが挙げられる。
前記芳香族モノカルボン酸としては、ヒドロキシ安息香酸(4−ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸など)、ジヒドロキシ安息香酸(2,4−ヒドロキシ安息香酸など)、ヒドロキシナフタレン酸、ジヒドロキシヒドロキシナフタレン酸などが挙げられる。
【0015】
本発明に用いる被処理はんだ粉末は、240℃以下の融点を有するものである。この被処理はんだ粉末の融点が240℃を超えるものを用いる場合には、はんだ組成物における通常の接着温度では鉛フリーはんだ粉末を溶融させることが困難となる。また、この被処理はんだ粉末の融点は、接着温度を低くするという観点から、180℃以下であることが好ましく、170℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることが特に好ましい。
なお、鉛フリーはんだ粉末とは、鉛を添加しないはんだ金属または合金の粉末のことをいう。ただし、鉛フリーはんだ粉末中に、不可避的不純物として鉛が存在することは許容されるが、この場合に、鉛の量は、100質量ppm以下であることが好ましい。
【0016】
前記(A)鉛フリーはんだ粉末は、スズ(Sn)、銅(Cu)、銀(Ag)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)および亜鉛(Zn)からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。これらの中でも、はんだ粉末の融点の観点から、スズとビスマスとの合金からなることがより好ましい。
また、前記(A)成分がスズとビスマスとの合金からなる場合、前記(A)成分におけるビスマスの含有量は、スズとビスマスとの合計量100質量%に対して、58質量%以下であることが好ましい。
【0017】
前記(A)鉛フリーはんだ粉末における具体的なはんだ組成(質量比率)としては、以下のようなものを例示できる。
2元系合金としては、例えば、95.3Ag/4.7BiなどのAg−Bi系、66Ag/34LiなどのAg−Li系、3Ag/97InなどのAg−In系、67Ag/33TeなどのAg−Te系、97.2Ag/2.8TlなどのAg−Tl系、45.6Ag/54.4ZnなどのAg−Zn系、80Au/20SnなどのAu−Sn系、52.7Bi/47.3InなどのBi−In系、35In/65Sn、51In/49Sn、52In/48SnなどのIn−Sn系、8.1Bi/91.9ZnなどのBi−Zn系、43Sn/57Bi、42Sn/58BiなどのSn−Bi系、98Sn/2Ag、96.5Sn/3.5Ag、96Sn/4Ag、95Sn/5AgなどのSn−Ag系、91Sn/9Zn、30Sn/70ZnなどのSn−Zn系、99.3Sn/0.7CuなどのSn−Cu系、95Sn/5SbなどのSn−Sb系が挙げられる。
3元系合金としては、例えば、95.5Sn/3.5Ag/1InなどのSn−Ag−In系、86Sn/9Zn/5In、81Sn/9Zn/10InなどのSn−Zn−In系、95.5Sn/0.5Ag/4Cu、96.5Sn/3.0Ag/0.5Cu、98.3Sn/1.0Ag/0.7Cu、99.0Sn/0.3Ag/0.7CuなどのSn−Ag−Cu系、90.5Sn/7.5Bi/2Ag、41.0Sn/58Bi/1,0AgなどのSn−Bi−Ag系、89.0Sn/8.0Zn/3.0BiなどのSn−Zn−Bi系が挙げられる。
その他の合金としては、Sn/Ag/Cu/Bi系などが挙げられる。
【0018】
また、前記(A)鉛フリーはんだ粉末の平均粒子径は、1μm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上15μm以下であることがより好ましく、2μm以上12μm以下であることが特に好ましい。鉛フリーはんだ粉末の平均粒子径が前記下限未満では、はんだ粉末の溶融性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、微細パターン塗布での塗布性が低下する傾向にある。なお、平均粒子径は、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置により測定できる。
【0019】
前記(A)鉛フリーはんだ粉末を作製する方法としては、例えば、次のような方法を採用できる。
例えば、前記脂肪族モノカルボン酸または前記芳香族モノカルボン酸を含有する溶液を準備し、この溶液中に前記被処理はんだ粉末を浸漬し、その後、洗浄して乾燥することで、前記(A)鉛フリーはんだ粉末を作製できる。なお、前記(A)鉛フリーはんだ粉末の製造方法は、この方法に限定されない。
【0020】
前記溶液に用いる溶媒は、前記脂肪族モノカルボン酸または前記芳香族モノカルボン酸を溶解できるものであれば特に限定されない。このような溶媒としては、アルコール類などが挙げられる。
はんだ粉末の処理条件については、適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば、前記溶液の濃度は、5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。また、前記溶液の温度は、20℃以上80℃以下であることが好ましい。前記溶液への浸漬時間は、10分間以上5時間以下であることが好ましい。
【0021】
[(B)エポキシ樹脂]
本発明に用いる(B)エポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂を適宜用いることができる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、ナフタレン型、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型、およびジシクロペンタジエン型などのエポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらのエポキシ樹脂は、金属粒子の分散性およびペースト粘度を調整できるという観点から、液状ビスフェノールA型、液状ビスフェノールF型、液状水添タイプのビスフェノールA型などの常温(25℃)で液状のものを含有することが好ましく、常温で固形のものを用いる場合には、常温で液状のものと併用することが好ましい。
【0022】
前記(B)エポキシ樹脂の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、30質量%以上80質量%以下であることが好ましく、40質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上65質量%以下であることが特に好ましい。エポキシ樹脂の含有量が前記下限未満では、電子部品を固着させるために十分な強度が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱硬化性樹脂組成物中の硬化成分の含有量が減少し、熱硬化性樹脂を硬化せしめる速度が遅延しやすい傾向にある。
【0023】
[(C)グリシジル基含有化合物]
本発明に用いる(C)グリシジル基含有化合物は、単量体であり、25℃において液状のものである。本発明における熱硬化性樹脂組成物においては、前記エポキシ樹脂の一部を、このようなグリシジル基含有化合物に置き換えることにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化性等の諸特性を維持しつつ、熱硬化性樹脂組成物における粘度をより好適な範囲に調整することができる。
このような(C)グリシジル基含有化合物においては、温度25℃にてE型粘度計で測定した粘度が、1mPa・s以上2000mPa・s以下であることが好ましく、5mPa・s以上100mPa・s以下であることがより好ましい。
【0024】
前記(C)グリシジル基含有化合物としては、公知のグリシジル基含有化合物を適宜用いることができる。このようなグリシジル基含有化合物としては、単官能であってもよく、多官能であってもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
単官能グリシジル基含有化合物としては、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、エトキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、p−ターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、n−ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルフェノールグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの単官能グリシジル基含有化合物の中でも、粘度の調整のしやすさの観点から、フェニルグリシジルエーテルが特に好ましい。
多官能グリシジル基含有化合物としては、シクロヘキシルジメタノールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0025】
前記(C)グリシジル基含有化合物の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。グリシジル基含有化合物の含有量が前記下限未満では、熱硬化性樹脂組成物の粘度を調整するという効果が得られにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱硬化性樹脂組成物の硬化性などの諸特性が低下する傾向にある。
【0026】
[(D)活性剤]
本発明に用いる(D)活性剤は、(D1)炭素数4〜7のジカルボン酸と、(D2)アミンと有機酸との塩である有機酸アミン塩とを含有することが好ましい。なお、前記(D1)成分および前記(D2)成分以外の公知の活性剤をさらに含有していてもよい。
前記(D1)成分は、炭素数4〜7のジカルボン酸であることが好ましい。炭素数が4未満であると、はんだ組成物におけるポットライフが不十分となる傾向にある。他方、炭素数が7を超えると、はんだ組成物におけるはんだぬれ性が不十分となる傾向にある。
前記(D1)成分としては、アジピン酸、2,4−ジエチルグルタル酸、2,2−ジエチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、グルタル酸、コハク酸が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの(C1)成分の中でも、ポットライフとはんだぬれ性とのバランスの観点から、アジピン酸、グルタル酸などが好ましい。
【0027】
前記(D1)成分の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上6質量%以下であることがより好ましい。(D1)成分の含有量が前記下限未満では、はんだぬれ性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ポットライフが低下する傾向にある。
【0028】
前記(D2)成分は、アミンと有機酸との塩である有機酸アミン塩であることが好ましい。
前記(D2)成分は、熱重量示差熱分析(TG/DTA)にて測定した軟化点(溶融・分解開始温度ともいう)が、90℃以上210℃以下であることが好ましく、110℃以上150℃以下であることがより好ましい。軟化点が前記下限未満では、ポットライフが低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、はんだぬれ性が低下する傾向にある。ここで、軟化点は、以下のようなに方法より測定できる。
有機酸アミン塩を試料として10mg±3mg秤量し、30℃〜250℃まで加熱しつつ、下記条件にて、TG/DTA測定を行う。なお、リファレンスとしては、不活性なアルミナ粉末を10mg±3mg秤量し使用する。
測定装置:セイコーインスツルメンツ社製の「TG/DTA6200」
雰囲気:大気
昇温レート:10℃/min
【0029】
前記アミンとしては、適宜公知のアミンを用いることができる。このようなアミンは、芳香族アミンであってもよく、脂肪族アミンであってもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。このようなアミンとしては、有機酸アミン塩の安定性などの観点から、炭素数3〜13のアミンを用いることが好ましく、炭素数4〜7の1級アミンを用いることがより好ましい。
前記芳香族アミンとしては、ベンジルアミン、アニリン、1,3−ジフェニルグアニジンなどが挙げられる。
前記脂肪族アミンとしては、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0030】
前記有機酸としては、適宜公知の有機酸を用いることができる。このような有機酸は、モノカルボン酸であってもよく、ジカルボン酸であってもよく、これら以外のカルボン酸であってもよい。また、このような有機酸は、脂肪族カルボン酸であってもよく、芳香族カルボン酸であってもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。このような有機酸としては、有機酸アミン塩の安定性などの観点から、炭素数3〜7のジカルボン酸であることが好ましく、炭素数5〜6のジカルボン酸であることがより好ましい。
前記ジカルボン酸としては、アジピン酸、2,4−ジエチルグルタル酸、2,2−ジエチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、グルタル酸、コハク酸、マロン酸が挙げられる。
前記モノカルボン酸としては、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸などが挙げられる。
前記トリカルボン酸としては、トリメリット酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、クエン酸などが挙げられる。
【0031】
前記(D2)成分の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、0.5質量%以上15質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。(D2)成分の含有量が前記下限未満では、はんだぬれ性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ポットライフが低下する傾向にある。
【0032】
[(E)硬化剤]
本発明に用いる(E)硬化剤としては、適宜公知の硬化剤を用いることができ、例えば、以下のようなものを用いることができる。これらの硬化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
潜在性硬化剤としては、例えば、ノバキュアHX−3722、HX−3721、HX−3748、HX−3088、HX−3613、HX−3921HP、HX−3941HP(旭化成エポキシ社製、商品名)、ジシアンジアミド(DICY)などが挙げられる。
脂肪族ポリアミン系硬化剤としては、例えば、フジキュアFXR−1020、FXR−1030、FXR−1050、FXR−1080(富士化成工業社製、商品名)が挙げられる。
エポキシ樹脂アミンアダクト系硬化剤としては、例えば、アミキュアPN−23、PN−F、MY−24、VDH、UDH、PN−31、PN−40(味の素ファインテクノ社製、商品名)、EH−3615S、EH−3293S、EH−3366S、EH−3842、EH−3670S、EH−3636AS、EH−4346S、EH−5016S(ADEKA社製、商品名)が挙げられる。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2P4MHZ、1B2PZ、2MZA、2PZ、C11Z、C17Z、2E4MZ、2P4MZ、C11Z−CNS、2PZ−CNZ(四国化成工業社製など、商品名)が挙げられる。
【0033】
前記(E)硬化剤の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上9質量%以下であることがより好ましい。硬化剤の含有量が前記下限未満では、熱硬化性樹脂を硬化せしめる速度が遅延しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、反応性が速くなり、ペースト使用時間が短くなる傾向にある。
【0034】
[(F)チクソ剤]
本発明に用いる(F)チクソ剤としては、公知のチクソ剤を適宜用いることができる。このようなチクソ剤としては、例えば、有機系チクソ剤(脂肪酸アマイド、水添ヒマシ油、オレフィン系ワックスなど)、無機系チクソ剤(コロイダルシリカ、ベントンなど)が挙げられる。これらのチクソ剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、脂肪酸アマイド、コロイダルシリカ、ベントンが好ましい。また、得られるはんだ組成物のにじみにくさの観点からは、有機系チクソ剤と無機系チクソ剤との組み合わせで使用することが好ましい。具体的には、脂肪酸アマイドとコロイダルシリカとの組み合わせ、脂肪酸アマイドとベントンとの組み合わせが挙げられる。
【0035】
前記チクソ剤の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上8質量%以下であることがより好ましい。チクソ剤の含有量が前記下限未満では、チクソ性が得られず、ジェットディスペンサーなどでの塗布の際に、ノズルとの切れが低下して塗布形状が悪くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、チクソ性が高すぎてシリンジニードルの詰まりにより塗布不良となりやすい傾向にある。
【0036】
本発明に用いる熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、前記(B)成分、前記(C)成分、前記(D)成分、前記(E)成分および前記(F)成分以外に、界面活性剤、カップリング剤、消泡剤、粉末表面処理剤、反応抑制剤、沈降防止剤などの添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。添加剤の含有量が前記下限未満では、それぞれの添加剤の効果を奏しにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱硬化性樹脂組成物による接合強度が低下する傾向にある。
【0037】
次に、本発明のはんだ組成物を用いた、配線基板および電子部品などの電極同士の接続方法について説明する。ここでは、配線基板および電子部品の電極同士を接続する場合を例に挙げて説明する。
このように配線基板および電子部品の電極同士を接続する方法としては、前記配線基板上に前記はんだ組成物を塗布する塗布工程と、前記はんだ組成物上に前記電子部品を配置し、リフロー炉により所定条件にて加熱して、前記電子部品を前記配線基板に実装するリフロー工程と、を備える方法を採用できる。
【0038】
塗布工程においては、前記配線基板上に前記はんだ組成物を塗布する。
ここで用いる塗布装置としては、微細パターン塗布が可能な装置であればよいが、例えばジェットディスペンサーである。前記本発明のはんだ組成物は、樹脂硬化性および塗布性などに優れており、このようなジェットディスペンサーで良好に塗布可能なものである。
【0039】
リフロー工程においては、前記はんだ組成物上に前記電子部品を配置し、リフロー炉により所定条件にて加熱する。このリフロー工程により、電子部品および配線基板の間に十分なはんだ接合を行うことができ、また、樹脂硬化を進行させることもできる。その結果、前記電子部品を前記配線基板に実装することができる。
リフロー条件は、はんだの融点に応じて適宜設定すればよい。例えば、Sn−Bi系のはんだ合金を用いる場合には、プリヒートを温度90〜120℃で60〜120秒行い、ピーク温度を150〜180℃に設定すればよい。
【0040】
また、本発明のはんだ組成物を用いた接続方法は、前記接続方法に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
例えば、前記接続方法では、リフロー工程により、配線基板と電子部品とを接着しているが、これに限定されない。例えば、リフロー工程に代えて、レーザー光を用いてはんだ組成物を加熱する工程(レーザー加熱工程)により、配線基板と電子部品とを接着してもよい。この場合、レーザー光源としては、特に限定されず、金属の吸収帯に合わせた波長に応じて適宜採用できる。レーザー光源としては、例えば、固体レーザー(ルビー、ガラス、YAGなど)、半導体レーザー(GaAs、InGaAsPなど)、液体レーザー(色素など)、気体レーザー(He−Ne、Ar、CO、エキシマーなど)が挙げられる。
【実施例】
【0041】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
((A)成分)
鉛フリーはんだ粉末A:下記作製例1で得られた表面処理はんだ粉末、平均粒子径10μm、はんだの融点は139℃、はんだの組成は42Sn/58Bi
鉛フリーはんだ粉末B:下記作製例2で得られた表面処理はんだ粉末、平均粒子径5μm、はんだの融点は139℃、はんだの組成は42Sn/58Bi
鉛フリーはんだ粉末C:平均粒子径10μm、はんだの融点は139℃、はんだの組成は42Sn/58Bi
鉛フリーはんだ粉末D:平均粒子径21μm、はんだの融点は139℃、はんだの組成は42Sn/58Bi
((B)成分)
エポキシ樹脂:ビスフェノールA型およびビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、商品名「EXA−830LVP」、DIC社製
((C)成分)
グリシジル基含有化合物A:フェニルグリシジルエーテル、粘度は8mPa・s、商品名「EX−141」、ナガセケムテックス社製
グリシジル基含有化合物B:1,4−シクロヘキシルジメタノールジグリシジルエーテル、粘度は50mPa・s、商品名「EP−4085S」、ADEKA社製
((D1)成分)
ジカルボン酸:アジピン酸
((D2)成分)
有機酸アミン塩:n−ブチルアミンアジピン酸塩、軟化点は120℃
((E)成分)
硬化剤A:2P4MHZ−PW、四国化成工業社製
硬化剤B:2MZA−PW、四国化成工業社製
((F)成分)
チクソ剤:商品名「ゲルオールD」、新日本理化社製
(他の成分)
消泡剤:商品名「フローレンAC326F」、共栄社化学社製
【0042】
[作製例1]
12−ヒドロキシステアリン酸150g、および工業用エタノール1000mLをフラスコへ入れ、50℃に加熱し、窒素雰囲気条件下にて150rpmの回転数で撹拌し、12−ヒドロキシステアリン酸を溶解させて、表面処理液を得た。この表面処理液中に、被処理はんだ粉末(合金組成:42Sn/58Bi、平均粒子径:10μm、はんだ融点:139℃)1000gを投入し、3時間撹拌した。撹拌終了後のはんだ粉末をイソプロピルアルコールで洗浄しながら、吸引ろ過した後に、70℃空気乾燥オーブンで乾燥させて、表面処理はんだ粉末を得た。
[作製例2]
作製例1で用いた被処理はんだ粉末に代えて、被処理はんだ粉末(合金組成:42Sn/58Bi、平均粒子径:5μm、はんだ融点:139℃)を用いた以外は、作製例1と同様にして、表面処理はんだ粉末を得た。
【0043】
[実施例1]
エポキシ樹脂61.8質量%、チクソ剤1.2質量%、グリシジル基含有化合物A20質量%、ジカルボン酸3.5質量%、有機酸アミン塩5質量%、硬化剤A4質量%、硬化剤B4質量%および消泡剤0.5質量%を容器に投入し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールを用いて室温にて混合し分散させて熱硬化性樹脂組成物を得た。
次に、得られた熱硬化性樹脂組成物20質量%および鉛フリーはんだ粉末A80質量%(合計で100質量%)を容器に投入し、混練機にて混合することではんだ組成物を調製した。
【0044】
[実施例2〜3]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にしてはんだ組成物を得た。
[比較例1〜4]
表2に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にしてはんだ組成物を得た。
【0045】
<はんだ組成物の評価>
はんだ組成物の性能(洋白基板へのはんだぬれ性、はんだ溶融性、樹脂硬化性、絶縁性、粘度、ジェットディスペンサーでの塗布性(吐出性)、ポットライフ)を以下のような方法で評価または測定した。得られた結果を表1および表2に示す。
(1)洋白基板へのはんだぬれ性
洋白基板(30mm×30mm×0.3mmt)に、はんだ組成物を0.30g±0.03gになるように乗せ、その後ホットプレートで温度160℃にて30秒間加熱する。マイクロメーターで広がったはんだの高さ(H)を測定し、広がり率(Sr)を下記式(F1)より求める。この操作を、5枚繰り返し平均値を試料の広がり率とする。
Sr=(D−H)/D×100 ・・・(F1)
D=1.24V1/3 ・・・(F2)
Sr:広がり率(%)
H:広がったはんだの高さ(mm)
D:試験に用いたはんだを球とみなした場合の直径(mm)
V:試験に用いたはんだの質量/密度
そして、広がり率(Sr)の結果に基づいて下記の基準に従って、洋白基板へのはんだぬれ性を評価した。
○:75%以上である。
△:70%以上75%未満である。
×:70%未満である。
(2)はんだ溶融性
回路パターンとして直径1mm〜2mmの複数のランドを有する配線基板上(ランド上)に、はんだ組成物を塗布した(厚み:0.1mm)。その後、昇温1.8℃/s、160℃4分間保持の条件でリフロー処理を行い、試験基板を作製した。得られた試験基板について、以下の基準に従って、はんだの溶融性を評価した。
○:はんだボールがない。
△:はんだボールが5個以下である。
×:はんだボールが6個以上、または、はんだが溶融しない。
(3)樹脂硬化性
はんだ組成物を基板上に塗布し、昇温1.8℃/s、160℃4分間保持の条件でリフロー処理を行い、試験基板を作製した。加熱後の樹脂の硬さを観察し、以下の基準に従って、樹脂硬化性を評価した。
○:樹脂が硬い。
△:樹脂を強く押すと、跡がのこる。
×:樹脂が柔らかく、タックがある。
(4)絶縁性
JIS Z 3284に記載の方法に準拠して、絶縁性を評価した。すなわち、JIS2型基板の銅箔ランド上(導体幅0.318mm、導体間隔0.318mmの銅箔ランドを有するガラスエポキシ樹脂基板上)に、100μmtメタルマスクを用いて、はんだ組成物を印刷し、昇温1.8℃/s、160℃4分間保持の条件でリフロー処理を行い、試験基板を作製した。この試験基板を85℃、85%RH(相対湿度)中、50V電圧を印加し、168時間後の銅箔ランド表面間における絶縁抵抗値を100V印加にて測定した。そして、以下の基準に従って、絶縁性を評価した。
○:絶縁抵抗値が1.0×10Ω以上である。
△:絶縁抵抗値が1.0×10Ω以上1.0×10Ω未満である。
×:絶縁抵抗値が1.0×10Ω未満である。
【0046】
(5)粘度試験(粘度およびチクソ指数)
JIS Z3284付随書6に準拠し、E型粘度計により測定を行った。回転数を10rpm、温度を25℃にして、粘度値ηを読み取る。そして、粘度値ηの結果に基づいて下記の基準に従って、粘度を評価した。
◎:10Pa・s以上30Pa・s未満である。
○:30Pa・s以上60Pa・s未満である。
△:60Pa・s以上100Pa・s未満である。
×:10Pa・s未満、或いは、100Pa・s以上である。
また、上記と同様にして、回転数を10rpmに調整した場合の粘度値(10rpm粘度)と、回転数を2.5rpmに調整した場合の粘度値(2.5rpm粘度)とを読み取った。そして、下記式に基づいて、チクソ指数を算出した。
チクソ指数=log[(2.5rpm粘度)/(10rpm粘度)]/log[20/5]
(6)ジェットディスペンサーでの塗布性(吐出性)
直径0.15mmφのノズルを有するジェットディスペンサーにて吐出を行い、以下の基準に従って、塗布性(吐出性)を評価した。
◎:特に良好な形状(球状)で吐出可能である。
○:良好な形状で吐出可能である。
△:楕円になるが吐出可能である。
×:吐出ができない。
(7)ポットライフ
温度40℃にて12時間放置後に、前記粘度試験(5)の粘度測定と同様にして、粘度測定を行う。そして、前記粘度試験(5)での粘度値を初期粘度値η1とし、温度40℃にて12時間放置後の粘度値を放置後粘度値η2とした時に、下記式(F3)より粘度変化率を求める。
変化率(%)={(η2−η1)/η1}×100 ・・・(F3)
そして、変化率の結果に基づいて下記の基準に従って、ポットライフを評価した。
○:変化率が20%以下である。
×:変化率が20%超である。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
表1および表2に示す結果からも明らかなように、本発明のはんだ組成物(実施例1〜4)は、洋白基板へのはんだぬれ性、はんだ溶融性、樹脂硬化性、絶縁性、粘度、ジェットディスペンサーでの塗布性、ポットライフが全て良好であることが確認された。従って、本発明のはんだ組成物は、ジェットディスペンサーによりはんだ組成物を微細パターンに塗布する場合に、塗布性、樹脂硬化性、ポットライフおよびはんだ溶融性が優れることが確認された。
これに対し、表面処理が施されていない平均粒子径10μmのはんだ粉末を含有するはんだ組成物を用いた場合(比較例1)には、はんだ溶融性が不十分であることが分かった。また、平均粒子径21μmと粒子径が大きいはんだ粉末を含有するはんだ組成物を用いた場合(比較例1)には、ジェットディスペンサーでの塗布性が不十分であることが分かった。さらに、表面処理が施されていない平均粒子径10μmのはんだ粉末を含有するはんだ組成物において、活性剤量を多くしたものを用いた場合(比較例3)には、絶縁性およびポットライフが不十分であることが分かった。また、グリシジル基含有組成物を含まないはんだ組成物を用いた場合(比較例4)には、粘度が高すぎるために、ジェットディスペンサーでの塗布性が不十分であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の微細パターン塗布用はんだ組成物は、電子部品と配線基板とを接続する技術として好適に用いることができる。